(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
母体となる原料酸化亜鉛粒子と、母体粒子表面に被覆形成された酸化セリウム層からなる酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子であって、酸化セリウムの割合が、酸化亜鉛100重量%に対し酸化セリウム量が5〜30重量%、かつ当該酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子の粒子径が0.01μm以上であり、
当該酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子の比表面積が5.0m2/g以上であり、
X線回折における回折角2θ=28.6±0.3°の範囲に出現するCeO2の最大ピークの半価幅が0.4以上となることを特徴とする酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子。
母体となる原料酸化亜鉛粒子の水性スラリーに、セリウム塩の水溶液とアルカリ水溶液を温度10℃以上から90℃以下の範囲でpH9±3を保ちながら添加する工程(1)を含み、350℃以上の温度で加熱処理する工程を含まないことを特徴とする酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、母体となる原料酸化亜鉛粒子と、母体粒子表面に被覆形成された酸化セリウム層からなる酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子であって、当該酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子の粒子径が0.01μm以上であり、当該酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子の比表面積が5.0m
2/g以上であることを特徴とする酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子である。
【0017】
すなわち、本発明においては、酸化亜鉛粒子を母体とし、母体である酸化亜鉛粒子表面を酸化セリウムで被覆することにより、酸化亜鉛の電子励起の直接遷移の性質を損なうことなく400nm以下の波長の紫外線の遮蔽率を向上させることを見出した。更に、酸化亜鉛粒子を母体とした酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子の紫外線遮蔽率が、酸化亜鉛粒子と酸化セリウムを単純に混合した混合物や複合酸化物の紫外線遮蔽率よりも高い遮蔽性能を示すことを見出し、本発明を完成した。
【0018】
本発明の酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子は、酸化亜鉛粒子表面に酸化セリウムが被覆されたものである。これらは複合酸化物を形成するものではなく、それぞれが別個の粒子として存在しており、母体となる原料酸化亜鉛粒子表面に酸化セリウムの粒子が存在している。
【0019】
このような状態の酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子の紫外線遮蔽能が優れたものとなる理由は明確ではないが、被覆酸化亜鉛粒子の母体となる原料酸化亜鉛粒子の形状と粒子径を保持することで、母体の酸化亜鉛粒子が有する紫外線吸収特性と光散乱特性を損なうことなく、その表層に被覆された酸化セリウム粒子の紫外線吸収特性及び光散乱特性により更に紫外線を遮蔽するという作用によるものと推測される。
【0020】
一方、単純な酸化亜鉛粒子と酸化セリウムの混合物や複合酸化物においては、各々の粒子の性能の加重平均の性能を付与するに留まり、酸化セリウムの混合量、すなわち酸化亜鉛粒子の減少量に相当する酸化亜鉛の紫外線吸収特性及び光散乱特性を失うことになると推測される。また、酸化セリウムのみを中和沈殿法により調製した場合、酸化セリウム粒子が超微粒子の凝集体となるため充分に分散することが困難となり、その粒子凝集によって微粒子としての機能性が失われ紫外線遮蔽性能の低下を招くことになると推測される。
これによって、酸化亜鉛と酸化セリウムとの単純な混合物や、酸化セリウムが酸化亜鉛粒子中に存在する紫外線遮蔽剤よりも優れた性能が得られるものであると推測される。
【0021】
このような酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子の粒子径は、0.01μm以上である。当該範囲内のものとすることで、化粧料等に配合して使用する際に酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子が有する紫外線遮蔽性能や物理的特性を充分に機能させることができるという点で好ましいものである。上記粒子径は、0.02μm以上であることがより好ましく、0.05μm以上であることが更に好ましい。上記粒子径の上限は特に限定されるものではないが、20μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。なお、本明細書において、粒子の粒子径は、透過型電子顕微鏡JEM−2100(日本電子社製)写真の2000〜50000倍の視野での定方向径(粒子を挟む一定方向の二本の平行線の間隔;画像上のどのような形状の粒子についても、一定方向で測定した)で定義される粒子径(μm)であって、TEM写真内の粒子250個の定方向径を計測し、その累積分布の平均値を求める、という方法によって測定した値である。上記粒子径の測定方法については、
図23を添付した。
【0022】
本発明の酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子は、当該酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子の比表面積が5.0m
2/g以上、より好ましくは6.0m
2/g以上であることを特徴とする。比表面積が5.0m
2/g未満になると、酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子の表面に被覆された酸化セリウム粒子が粗大化し、特にUV−A波の領域における紫外線遮蔽性能が充分ではなくなるため好ましくない。
上記比表面積(m
2/g)は、全自動BET比表面積測定装置Macsorb(Mountech社製)により測定した値である。
【0023】
さらに本発明の酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子は、当該酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子の酸化セリウム量/比表面積が2.0g%/m
2以下であることが好ましい。このような酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子とすることによって、酸化亜鉛粒子表面に緻密な酸化セリウム層が形成され、特にUV−A波の領域における紫外線遮蔽性能に優れたものとすることができる。
【0024】
すなわち、このような優れた紫外線遮蔽能を有するものとすることで、化粧料、インキ、塗料等に配合した際に優れた紫外線遮蔽能を発揮することができる。上記紫外線遮蔽能は、実施例において後述する塗膜を作成し、その塗膜を分光光度計V−570(日本分光社製)で測定した値である。
【0025】
本発明の酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子は、酸化セリウムの割合が、酸化亜鉛(母体となる酸化亜鉛粒子)100重量%に対し酸化セリウム量が5〜30重量%である。当該範囲内のものとすることで、被覆酸化亜鉛粒子の母体となる原料酸化亜鉛粒子の紫外線遮蔽性能を損なうことなく、更に紫外線遮蔽性能を高めることができるという点で好ましいものである。酸化セリウム量が5重量%を下回ると紫外線遮蔽性能が不十分であり、酸化セリウム量が30重量%を上回ると、酸化亜鉛粒子に酸化セリウムが全量被覆されず混合したような状態になるため、紫外線遮蔽性能が低下してしまう。上記酸化セリウム量とは蛍光X線分析装置ZSX PrimusII(リガク社製)によって酸化物換算でZn量とCe量を測定した値であり、適用したソフトウェアはEZスキャン(SQX)である。
【0026】
本発明の酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子は、その表面被覆が緻密なものであることが好ましい。具体的には、酸化セリウム粒子が連続的な層を形成するように密集した形態を指す。表面被覆層においては、被覆層内部にボイド等が形成されないことがより好ましく、また、連続した層が途切れずに存在することがより好ましい。
【0027】
本発明の酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子は、酸化セリウム量/比表面積(g%/m
2)が0.01g%/m
2以上、2.0g%/m
2以下であることが好ましく、0.05g%/m
2以上1.5g%/m
2以下であることがより好ましい。上記の範囲にすることによって、母体となる原料酸化亜鉛粒子表面にCeO
2層が緻密に不足分なく被覆することができる。0.01g%/m
2未満の場合は、母体となる酸化亜鉛粒子と被覆酸化セリウム粒子との粒子サイズの違いが小さくなることで混合物の様な形態となってしまい、また、2.0g%/m
2を超える場合は好適な紫外線遮蔽性能を得られない。酸化セリウム量/比表面積(g%/m
2)は、上記蛍光X線分析値(%)(CeO
2換算)の値を、上記比表面積(m
2/g)の値で除した値である。
【0028】
本発明の酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子は、X線回折における回折角2θ=28.6±0.3°の範囲に出現するCeO
2の最大ピークの半価幅が0.4以上となることが好ましく、0.5以上となることがさらに好ましい。上記の範囲にすることによって、粒子が粗大化せず微細な酸化セリウム粒子を酸化亜鉛粒子表面に被覆することができる。半価幅が0.4未満の場合は好適な紫外線遮蔽性能が得られない。CeO
2の最大ピークの半価幅は、銅管球をもつX線回折装置UltimaIII(リガク社製)で測定した値である。
【0029】
本発明の酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子において、表面被覆を構成する酸化セリウムは、粒子形状のものであることが好ましい。当該粒子形状の酸化セリウムは、粒子径が1〜20nmであることが好ましい。なお、当該酸化セリウムの粒子径は、透過型電子顕微鏡JEM−2100(日本電子社製)写真の2000〜50000倍の視野での定方向径(粒子を挟む一定方向の二本の平行線の間隔;画像上のどのような形状の粒子についても、一定方向で測定した)で定義される粒子径(μm)であって、TEM写真内の粒子250個の定方向径を計測し、その累積分布の平均値を求める、という方法によって測定した値である。
【0030】
上記母体となる原料酸化亜鉛粒子は、粒子径0.01〜20μmのものを使用することが好ましい。
上記範囲内のものとすることで、酸化セリウム粒子よりも粒子径が大きい酸化亜鉛粒子を酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子の母体粒子とすることができ、それにより母体酸化亜鉛粒子の特性を保持した上で紫外線遮蔽性能を更に向上させることができるという点で好ましいものである。上記下限は、0.02μmであることがより好ましく、0.05μmであることが更に好ましい。上記上限は、10μmであることがより好ましく、5μmであることが更に好ましい。
【0031】
上記母体となる原料酸化亜鉛粒子としてより好適には、国際公開2012/147886号に開示した六角板状酸化亜鉛粒子、国際公開2012/147887号に開示した六角柱状酸化亜鉛粒子を使用することが好ましい。
【0032】
上記母体となる原料酸化亜鉛粒子として六角板状酸化亜鉛粒子、六角柱状酸化亜鉛粒子を使用することによって、優れた紫外線遮蔽性能を示すだけでなく、特定の粒子形状を有することに由来する物理的効果によって、化粧料素材として優れた機能を発揮する。特に、六角板状酸化亜鉛粒子は、六角板状の形状に由来する滑らかな感触が得られ、またソフトフォーカス性においても優れる粒子である。本発明の酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子は、このような優れた効果を有する、六角板状酸化亜鉛粒子又は六角柱状酸化亜鉛粒子を母体とすることによって、400nm以下の領域における紫外線吸収能をより優れたものとするだけでなく、上述のような様々な機能性を付与することも出来るという点で好ましいものである。以下、これらの六角板状酸化亜鉛粒子及び六角柱状酸化亜鉛粒子について詳述する。なおこれらの製造方法は、国際公開2012/147886号、国際公開2012/147887号においてそれぞれ具体的に記載されている。
【0033】
上記母体となる六角板状酸化亜鉛粒子は、粒子径が0.01μm以上であることが好ましい。酸化亜鉛粒子の粒子径を適宜コントロールすることにより、良好な滑り性、ソフトフォーカス効果、紫外線遮蔽性、可視光透明性などの様々な性能を選択的に付与することができる。上記粒子径は、0.02μm以上であることがより好ましく、0.03μm以上であることが更に好ましい。
上記粒子径の上限は20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることが更に好ましい。
【0034】
更に、上記母体となる六角板状酸化亜鉛粒子は、アスペクト比が2.5以上であることが好ましい。すなわち、六角板状の形状を有する酸化亜鉛粒子であり、このような形状によって、特に化粧料に使用した場合に、滑りがよく、優れた使用感を得ることができる。上記母体となる六角板状酸化亜鉛粒子のアスペクト比は、透過型電子顕微鏡JEM−2100(日本電子社製)写真の2000〜50000倍の視野において、六角板状酸化亜鉛粒子の六角形状面が手前を向いている粒子についてはその定方向径(粒子を挟む一定方向の二本の平行線の間隔;画像上の六角形状面が手前を向いている粒子について、一定方向で測定した)で定義される粒子径(μm)を粒子250個分計測した平均値をL、六角板状酸化亜鉛粒子の側面が手前を向いている粒子(長方形に見える粒子)についてはその厚み(μm)(長方形の短い方の辺の長さ)を粒子250個分計測した平均値をTとしたとき、それらの値の比;L/Tとして求めた値である。上記アスペクト比の測定方法については、
図24を添付した。上記アスペクト比は、2.7以上であることがより好ましく、3.0以上であることが更に好ましい。
【0035】
六角柱状である上記母体となる原料酸化亜鉛粒子は、粒子径が0.1μm以上0.5μm未満であることが好ましい。このような六角柱状酸化亜鉛粒子は、高い紫外線遮蔽性と透明性を併せ持つ粒子とすることができる。
【0036】
更に、上記六角柱状形状は、アスペクト比が2.5未満であることが好ましい。すなわち、六角柱状の酸化亜鉛粒子であり、このようなアスペクト比の小さい六角柱状の酸化亜鉛粒子を、特に化粧料に使用した場合に、透明性及び紫外線遮蔽性に優れたものとすることができる。
【0037】
上記母体となる六角柱状酸化亜鉛粒子のアスペクト比は、以下の方法により求められる。六角柱状酸化亜鉛粒子のアスペクト比については、透過型電子顕微鏡JEM−2100(日本電子社製)写真の2000〜50000倍の視野において、六角柱状酸化亜鉛粒子の側面が正面を向いている粒子(長方形や正方形の形状として観察される粒子)について、長径と短径を計測し、長径と短径の長さの比;長径/短径を求める。そのようにしてTEM写真内の六角柱状酸化亜鉛粒子250個について長径/短径を計測し、その累積分布の平均値をアスペクト比として求めたものである。なお、六角形状面が正面を向いている六角板状酸化亜鉛粒子については、その厚みを確認することが困難であるため、計測の対象から除外した。六角柱状酸化亜鉛粒子のアスペクト比の計測方法について
図25に示した。
【0038】
本発明の酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子は、その製造方法を特に限定されるものではないが、例えば、以下に示す第二の本発明である酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子の製造方法によって製造することができる。
【0039】
本発明は酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子の製造方法でもある。当該製造方法は、母体となる原料酸化亜鉛粒子の水性スラリーに、セリウム塩の水溶液とアルカリ水溶液とを添加する工程を含み、かつ350℃以上の加熱処理工程を含まない酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子の製造方法である。このような製造方法により、高い紫外線遮蔽率を持つ酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子を得ることができる。
【0040】
このような製造方法は、350℃以上の加熱処理工程を含まないものである。
原因は不明であるが、350℃以上で熱処理を行った場合には、酸化セリウム粒子が互いに融着することで粗大化し、酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子表面における単位面積当たりの酸化セリウム粒子個数が減少することで、紫外線を酸化セリウム層において遮蔽する面積が減少してしまい紫外線吸収能が低下する。また、酸化セリウム粒子の粗大化により紫外線波長域の光の散乱効果が低下してしまう。したがって、350℃以上の加熱処理工程を含まない当該製造方法により、酸化セリウム粒子が粗大化せず紫外線遮蔽性能の高い酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子を得ることができる。
【0041】
上記母体となる原料酸化亜鉛粒子は、その粒子径、粒子形状等において特に限定されるものではなく、六角板状、六角柱状、球状、棒状、針状、紡錘状、板状等の任意の形状のものを使用することができる。なかでも、上述した六角板状、六角柱状のものを使用することが好ましい。
【0042】
上記母体となる原料酸化亜鉛粒子を液体媒体に添加し、水性スラリーを調製する。水性スラリーを構成する液体媒体は、水又は水と水溶性有機溶媒の混合液体であることが好ましく、水であることが最も好ましい。水と水溶性有機溶媒の混合液体を使用する場合は、水溶性有機溶媒として、メタノール、エタノール等の低級アルコール、アセトン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール等の水と任意の割合で混合させることができる溶媒を使用することができ、水溶性有機溶媒の使用量は、混合溶媒全量に対して1〜30重量%であることが好ましい。
【0043】
亜鉛塩水溶液中に母体となる原料酸化亜鉛粒子を添加してスラリーとする場合、酸化亜鉛の濃度が10〜500g/lであることが好ましい。また、必要に応じて分散剤を添加してもよい。
【0044】
スラリーの調製方法は特に限定されず、例えば、上記成分を水に添加し、10〜90℃で5〜60分間、分散させることによって、酸化亜鉛の濃度が10〜500g/lの均一なスラリーとすることができる。
【0045】
上記スラリーにおいては、反応開始前に好適な反応を生じるように、酸又は塩基を添加することでスラリーのpHを所定の値としてもよい。具体的には、反応前のpHを6以上13未満とすることが好ましい。このためには、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等の塩基性化合物又はその水溶液を添加することが好ましい。
【0046】
本発明の被覆酸化亜鉛粒子の製造方法においては、上記スラリーに対してセリウム塩の水溶液とアルカリ水溶液とをpH、温度の条件を保ちながら同時に添加することが好ましい。これによって、母体となる原料酸化亜鉛粒子が溶解することなく、酸化亜鉛粒子表面に緻密な酸化セリウム層を形成させることができるという点で優れた被覆酸化亜鉛粒子を得ることができる。上記スラリーにセリウム塩の水溶液とアルカリ水溶液とを同時に添加する際は、上記スラリーは撹拌しておくことが好ましい。これによって、酸化亜鉛粒子表面に均一な酸化セリウム層を形成させることができる。上記スラリーの撹拌は、撹拌機等を用いた通常の撹拌方法で行うことができる。
【0047】
上記セリウム塩の水溶液において使用されるセリウム塩としては特に限定されず、塩化セリウム、硝酸セリウム、臭化セリウム、硫酸セリウム、炭酸セリウム等のセリウム塩を挙げることができる。
【0048】
セリウム塩水溶液の濃度は、5〜60重量%(酸化セリウム換算)であることが好ましい。当該範囲のものを使用することで、好適な被覆を行うことができる。
【0049】
上記アルカリ水溶液中のアルカリ性化合物としては特に限定されず、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア等を使用することができる。上記アルカリ水溶液の濃度は特に限定されないが、例えば、10〜500g/lとすることができる。
【0050】
本発明の製造方法においては、pH及び温度の条件を保ちながら、セリウム塩の水溶液とアルカリ水溶液とを添加することが好ましい。これによって、一定の割合で均一にセリウムが析出することによって、好適に目的を達成することができる。
【0051】
上記pHと温度の条件としては、pHを9±3で温度10℃以上90℃以下の条件を維持しながら、セリウム塩の水溶液と上記アルカリ水溶液を添加することが好ましい。反応時間は特に限定されず、例えば、10〜360分で行うことができる。
【0052】
上記セリウム塩の水溶液と上記アルカリ水溶液の添加は、各々の水溶液を添加対象となる上記スラリーの液面の異なる位置に同時に添加する方法が好ましい。同時に添加することによって形状および粒子径が均一な酸化セリウム粒子を析出させ、酸化亜鉛粒子表面に被覆することができる。このような添加の方法としては特に限定されず、例えば、ポンプによって一定量を連続的に添加する方法等を挙げることができる。上記水溶液の添加量は、目的とする酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子のセリウムの量に応じた量とすることが好ましい。
【0053】
上述した反応を行った後のスラリーに対して、その後、濾過を行い、必要に応じて水洗を行い、得られた粒子を100℃以上350℃未満で1〜24時間乾燥する工程を行うことが好ましい。上記乾燥温度は100〜200℃の範囲であることがより好ましく、100〜150℃の範囲であることが更に好ましい。
このような処理を行うことによって、酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子の粒子径や粒子形状を保持しつつ水分の充分な除去を行うことができ、それにより当該酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子の比表面積が5.0m
2/g以上となる要件を満たすことができるという点で好ましいものである。当該処理は、箱型乾燥機、バンド乾燥機、トンネル乾燥機、回転式乾燥機、気流乾燥機、噴霧乾燥機等を使用した通常の乾燥方法によって行うことができる。
【0054】
なお、本発明の酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子を得るためには、350℃以上の温度での加熱は行わない。上記工程を行った後に350℃以上の温度で加熱を行った場合は、酸化セリウム粒子が粗大化した状態になることから好適な紫外線遮蔽性能が得られない。
【0055】
本発明の酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子は、母体となる原料酸化亜鉛粒子より紫外線遮蔽率が高いものであることが好ましい。すなわち、酸化セリウム被覆を行うことで、紫外線遮蔽率が高くなることが好ましい。具体的には、後述する((被覆酸化亜鉛粒子を含有する塗膜の紫外線遮蔽率(%))/(被覆酸化亜鉛粒子の母体となる原料酸化亜鉛粒子を含有する塗膜の紫外線遮蔽率(%))の比)が1.1以上となることが好ましい。なお、本明細書において、紫外線遮蔽率は、実施例に記載した方法で作成した塗膜について、以下の条件で測定した全光線透過率を元に算出した値である。
【0056】
(全光線透過率1、全光線透過率2)
本明細書において、実施例で詳述した全光線透過率1(%)、全光線透過率2(%)は、作成した塗膜を分光光度計V−570(日本分光社製)で測定した値である。なお、全光線透過率1(%)の値は波長300nmにおける全光線透過率の値、全光線透過率2(%)の値は波長360nmにおける全光線透過率の値である。全光線透過率1(%)の値が小さい程、UV−Bの波長の紫外線に対する紫外線遮蔽効果が高いことを意味し、全光線透過率2(%)の値が小さい程、UV−Aの波長の紫外線に対する紫外線遮蔽効果が高いことを意味する。
【0057】
(紫外線遮蔽率1、紫外線遮蔽率2)
本明細書において紫外線遮蔽率を上記の全光線透過率を元に以下の式により算出した。
紫外線遮蔽率1(%)=100%−全光線透過率1(%)
紫外線遮蔽率2(%)=100%−全光線透過率2(%)
つまり、紫外線遮蔽率1(%)の値は波長300nmにおける紫外線に対する遮蔽率を意味し、この値が大きい程UV−B波に対する紫外線遮蔽性が高いことを意味する。
また、紫外線遮蔽率2(%)の値は波長360nmにおける紫外線に対する遮蔽率を意味し、この値が大きい程UV−A波に対する紫外線遮蔽性が高いことを意味する。
全光線透過率1(%)、全光線透過率2(%)、紫外線遮蔽率1(%)、紫外線遮蔽率2(%)については、各々の関係性についてより理解し易くするため、説明図を
図26に添付した。
【0058】
((被覆酸化亜鉛粒子を含有する塗膜の紫外線遮蔽率1(%))/(被覆酸化亜鉛粒子の母体となる原料酸化亜鉛粒子を含有する塗膜の紫外線遮蔽率1(%))の比)
本発明の酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子はUV−B波における((被覆酸化亜鉛粒子を含有する塗膜の紫外線遮蔽率1(%))/(被覆酸化亜鉛粒子の母体となる原料酸化亜鉛粒子を含有する塗膜の紫外線遮蔽率1(%))の比)が1.1以上となることが好ましい。
【0059】
((被覆酸化亜鉛粒子を含有する塗膜の紫外線遮蔽率2(%))/(被覆酸化亜鉛粒子の母体となる原料酸化亜鉛粒子を含有する塗膜の紫外線遮蔽率2(%))の比)
本発明の酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子はUV−A波における((被覆酸化亜鉛粒子を含有する塗膜の紫外線遮蔽率2(%))/(被覆酸化亜鉛粒子の母体となる原料酸化亜鉛粒子を含有する塗膜の紫外線遮蔽率2(%))の比)が1.1以上となることが好ましい。
【0060】
(表面処理)
本発明の酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子は、更に表面処理を施したものであってもよい。上記表面処理としては特に限定されず、ケイ素酸化物、ケイ素酸化物の水和物、アルミニウムの酸化物及びアルミニウムの水酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物による皮膜を形成させる表面処理、撥水性有機化合物による表面処理、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等のカップリング剤による表面処理等を挙げることができる。これらの2種以上の表面処理を組み合わせて行うものであってもよい。
【0061】
上記ケイ素酸化物、ケイ素酸化物の水和物、アルミニウムの酸化物及びアルミニウムの水酸化物からなる群から選択される少なくとも1種の化合物による皮膜の形成は、Si源化合物及び/又はAl源化合物を、加水分解や加熱分解などにより粉体表面に析出させる等の方法で行うことができる。上記Si源化合物及び/又はAl源化合物としては、テトラアルコキシシランやその加水分解縮合物、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、アルミニウムアルコキシドやその加水分解縮合物、アルミン酸ナトリウム等、容易にSiO
2やAl(OH)
3、Al
2O
3に変換する化合物等を使用することができる。
【0062】
上記加水分解としては特に限定されないが、硫酸、塩酸、酢酸、硝酸などの酸を使用した方法が挙げられる。この水分散体を用いたシリカの処理方法における中和方法は、分散体に酸を入れてからSi源化合物及び/又はAl源化合物を添加する方法、分散体にSi源化合物及び/又はAl源化合物を入れてから酸を添加する方法、分散体にSi源化合物及び/又はAl源化合物と酸を同時に添加する方法のいずれでも良い。
【0063】
上記撥水性有機化合物による処理としては、特に限定されるものではないが、例えば、シリコーンオイル、アルキルシラン、アルキルチタネート、アルキルアルミネート、ポリオレフィン、ポリエステル、金属石鹸、アミノ酸、アミノ酸塩などが挙げられる。なかでも、化学的な安定性からシリコーンオイルが好ましい。このシリコーンオイルの具体例としては、ジメチルポリシロキサン(例えば、信越化学工業製KF−96A−100cs、旭化成ワッカーシリコーン製DM10)、メチルハイドロジェンポリシロキサン(例えば、信越化学工業製KF−99P、東レ・ダウコーニング製SH1107C)、(ジメチコン/メチコン)コポリマー(例えば、信越化学工業製KF−9901)、メチルフェニルシリコーン(例えば、信越化学工業製KF−50−100cs)、アミノ変性シリコーン(例えば、信越化学工業製KF−8015、東レ・ダウコーニング製JP−8500 Conditioning Agent、旭化成ワッカーシリコーン製ADM6060)、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン(例えば、信越化学工業製KF−9908)、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン(例えば、信越化学工業製KF−9909)による処理等を挙げることができる。
【0064】
上記シランカップリング剤による処理としては、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノトリエトキシシラン、3−トリエトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、N−フェニル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(ビニルベンジル)−2−アミノエチル−3−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3−クロロプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン、ヘキシルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシランを挙げることができる。
上記チタンカップリング剤による処理としては、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、テトラメチルチタネート、チタンアセチルアセトネート、チタンテトラアセチルアセトネート、チタンエチルアセトアセテート、チタンオクタンジオレート、チタンラクテート、チタントリエタノールアミネート、ポリヒドロキシチタンステアレートを挙げることができる。
【0065】
上記表面処理を行う場合は、表面処理は、処理後の粉体の全量に対して1〜10重量%となる割合で行うことが好ましい。当該範囲内のものとすることで、滑り性が向上し、かつ耐湿性が向上し、樹脂への分散性が向上するという点で好ましい。
【0066】
本発明の酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子は、その他の成分と混合して、化粧料、インキ、塗料、プラスチック等に配合することもできる。特に、上述の特性を有しているため、安定性及び紫外線遮蔽効果に優れた化粧料を得ることができる点で好ましいものである。
【0067】
上記化粧料としては特に限定されず、このような複合粉体に、必要に応じて化粧品原料を混合することによって、サンスクリーン剤等の紫外線防御用化粧料;ファンデーション等のベースメイク化粧料;口紅等のポイントメイク化粧料等を得ることができる。また、紫外線遮蔽能という特徴を有するものであることから、化粧品に使用した場合に優れた性能を有するものである。
【0068】
上記化粧料は、油性化粧料、水性化粧料、O/W型化粧料、W/O型化粧料の任意の形態とすることができる。
【0069】
上記化粧料は、化粧品分野において使用することができる任意の水性成分、油性成分を併用するものであってもよい。上記水性成分及び油性成分としては特に限定されず、例えば、油剤、界面活性剤、保湿剤、高級アルコール、金属イオン封鎖剤、天然及び合成高分子、水溶性及び油溶性高分子、紫外線遮蔽剤、各種抽出液、有機染料等の色剤、防腐剤、酸化防止剤、色素、増粘剤、pH調整剤、香料、冷感剤、制汗剤、殺菌剤、皮膚賦活剤、各種粉体等の成分を含有するものであってもよい。
【0070】
上記油剤は特に限定はないが、例えば、天然動植物油脂(例えば、オリーブ油、ミンク油、ヒマシ油、パーム油、牛脂、月見草油、ヤシ油、ヒマシ油、カカオ油、マカデミアナッツ油等);蝋(例えば、ホホバ油、ミツロウ、ラノリン、カルナウバロウ、キャンデリラロウ等);高級アルコール(例えば、ラウリルアルコール、ステアリルアルコール、セチルアルコール、オレイルアルコール等);高級脂肪酸(例えば、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸、ラノリン脂肪酸等;高級脂肪族炭化水素例えば、流動パラフィン、固形パラフィン、スクワラン、ワセリン、セレシン、マイクロクリスタリンワックス等);合成エステル油(例えば、ブチルステアレート、ヘキシルラウレート、ジイソプロピルアジペート、ジイソプロピルセバケート、ミリスチン酸オクチルドデシル、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテートイソプロピルミリステート、セチルイソオクタノエート、ジカプリン酸ネオペンチルグリコール);シリコーン誘導体(例えば、メチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン等のシリコーン油)などが例示できる。さらに、油溶性のビタミン、防腐剤、美白剤などを配合することもできる。
【0071】
上記界面活性剤としては、親油性非イオン界面活性剤、親水性非イオン界面活性剤等を挙げることができる。上記親油性非イオン界面活性剤としては特に限定されず、例えば、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノイソステアレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート、ペンタ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン、テトラ−2−エチルヘキシル酸ジグリセロールソルビタン等のソルビタン脂肪酸エステル類、モノ綿実油脂肪酸グリセリン、モノエルカ酸グリセリン、セスキオレイン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、α,α’−オレイン酸ピログルタミン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリンリンゴ酸等のグリセリンポリグリセリン脂肪酸類、モノステアリン酸プロピレングリコール等のプロピレングリコール脂肪酸エステル類、硬化ヒマシ油誘導体、グリセリンアルキルエーテル等を挙げることができる。
【0072】
親水性非イオン界面活性剤としては特に限定されず、例えば、POEソルビタンモノオレエート、POEソルビタンモノステアレート、POEソルビタンテトラオレエート等のPOEソルビタン脂肪酸エステル類、POEソルビットモノラウレート、POEソルビットモノオレエート、POEソルビットペンタオレエート、POEソルビットモノステアレート等のPOEソルビット脂肪酸エステル類、POEグリセリンモノステアレート、POEグリセリンモノイソステアレート、POEグリセリントリイソステアレート等のPOEグリセリン脂肪酸エステル類、POEモノオレエート、POEジステアレート、POEモノジオレエート、システアリン酸エチレングリコール等のPOE脂肪酸エステル類、POEラウリルエーテル、POEオレイルエーテル、POEステアリルエーテル、POEベヘニルエーテル、POE2−オクチルドデシルエーテル、POEコレスタノールエーテル等のPOEアルキルエーテル類、POEオクチルフェニルエーテル、POEノニルフェニルエーテル、POEジノニルフェニルエーテル等のPOEアルキルフェニルエーテル類、ブルロニック等のプルアロニック型類、POE・POPセチルエーテル、POE・POP2−デシルテトラデシルエーテル、POE・POPモノブチルエーテル、POE・POP水添ラノリン、POE・POPグリセリンエーテル等のPOE・POPアルキルエーテル類、テトロニック等のテトラPOE・テトラPOPエチレンジアミン縮合物類、POEヒマシ油、POE硬化ヒマシ油、POE硬化ヒマシ油モノイソステアレート、POE硬化ヒマシ油トリイソステアレート、POE硬化ヒマシ油モノピログルタミン酸モノイソステアリン酸ジエステル、POE硬化ヒマシ油マレイン酸等のPOEヒマシ油硬化ヒマシ油誘導体、POEソルビットミツロウ等のPOEミツロウ・ラノリン誘導体、ヤシ油脂肪酸ジエタノールアミド、ラウリン酸モノエタノールアミド、脂肪酸イソプロパノールアミド等のアルカノールアミド、POEプロピレングリコール脂肪酸エステル、POEアルキルアミン、POE脂肪酸アミド、ショ糖脂肪酸エステル、POEノニルフェニルホルムアルデヒド縮合物、アルキルエトキシジメチルアミンオキシド、トリオレイルリン酸等を挙げることができる。
【0073】
その他の界面活性剤としては、例えば、脂肪酸セッケン、高級アルキル硫酸エステル塩、POEラウリル硫酸トリエタノールアミン、アルキルエーテル硫酸エステル塩等のアニオン界面活性剤、アルキルトリメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキル四級アンモニウム塩、アルキルジメチルベンジルアンモニウム塩、POEアルキルアミン、アルキルアミン塩、ポリアミン脂肪酸誘導体等のカチオン界面活性剤、及び、イミダゾリン系両性界面活性剤、ベタイン系界面活性剤等の両性界面活性剤を安定性及び皮膚刺激性に問題のない範囲で配合してもよい。
【0074】
上記保湿剤としては特に限定されず、例えば、キシリトール、ソルビトール、マルチトール、コンドロイチン硫酸、ヒアルロン酸、ムコイチン硫酸、カロニン酸、アテロコラーゲン、コレステリル−12−ヒドロキシステアレート、乳酸ナトリウム、胆汁酸塩、dl−ピロリドンカルボン酸塩、短鎖可溶性コラーゲン、ジグリセリン(EO)PO付加物、イサイヨバラ抽出物、セイヨウノコギリソウ抽出物、メリロート抽出物等を挙げることができる。
【0075】
上記高級アルコールとしては特に限定されず、例えば、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ベヘニルアルコール、ミリスチルアルコール、オレイルアルコール、セトステアリルアルコール等の直鎖アルコール、モノステアリルグリセリンエーテル(バチルアルコール)、2−デシルテトラデシノール、ラノリンアルコール、コレステロール、フィトステロール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール等の分枝鎖アルコール等を挙げることができる。
【0076】
金属イオン封鎖剤としては特に限定されず、例えば、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジフォスホン酸、1−ヒドロキシエタン−1,1−ジフォスホン酸四ナトリウム塩、クエン酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム、グルコン酸、リン酸、クエン酸、アスコルビン酸、コハク酸、エデト酸等を挙げることができる。
【0077】
上記天然の水溶性高分子としては特に限定されず、例えば、アラアビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアガム、キャロブガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、カンテン、クインスシード(マルメロ)、アルゲコロイド(カッソウエキス)、デンプン(コメ、トウモロコシ、バレイショ、コムギ)、グリチルリチン酸等の植物系高分子、キサンタンガム、デキストラン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子を挙げることができる。
【0078】
半合成の水溶性高分子としては特に限定されず、例えば、カルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、結晶セルロース、セルロース末等のセルロース系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子等を挙げることができる。
【0079】
合成の水溶性高分子としては特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン等のビニル系高分子、ポリエチレングリコール20,000、40,000、60,000等のポリオキシエチレン系高分子、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合体共重合系高分子、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート、ポリアクリルアミド等のアクリル系高分子、ポリグリセリン、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー、カルボキシビニルポリマー、アルキル変性カルボキシビニルポリマー、(アクリル酸ヒドロキシエチル/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリル酸Na/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウム/ビニルピロリドン)コポリマー、(アクリロイルジメチルタウリンアンモニウムメタクリル酸ベヘネス−25)クロスポリマー等を挙げることができる。
【0080】
無機の水溶性高分子としては特に限定されず、例えば、ベントナイト、ケイ酸AlMg(ビーガム)、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸等を挙げることができる。
【0081】
紫外線遮蔽剤としては特に限定されず、例えば、パラアミノ安息香酸(以下PABAと略す)、PABAモノグリセリンエステル、N,N−ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N−ジエトキシPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAエチルエステル、N,N−ジメチルPABAブチルエステル等の安息香酸系紫外線遮蔽剤;ホモメンチル−N−アセチルアントラニレート等のアントラニル酸系紫外線遮蔽剤;アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p−イソプロパノールフェニルサリシレート等のサリチル酸系紫外線遮蔽剤;オクチルシンナメート、エチル−4−イソプロピルシンナメート、メチル−2,5−ジイソプロピルシンナメート、エチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、メチル−2,4−ジイソプロピルシンナメート、プロピル−p−メトキシシンナメート、イソプロピル−p−メトキシシンナメート、イソアミル−p−メトキシシンナメート、2−エトキシエチル−p−メトキシシンナメート、シクロヘキシル−p−メトキシシンナメート、エチル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、2−エチルヘキシル−α−シアノ−β−フェニルシンナメート、グリセリルモノ−2−エチルヘキサノイル−ジパラメトキシシンナメート等のケイ皮酸系紫外線遮蔽剤;2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−4’−メチルベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸塩、4−フェニルベンゾフェノン、2−エチルヘキシル−4’−フェニル−ベンゾフェノン−2−カルボキシレート、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン、4−ヒドロキシ−3−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線遮蔽剤;3−(4’−メチルベンジリデン)−d,l−カンファー、3−ベンジリデン−d,l−カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2−フェニル−5−メチルベンゾキサゾール、2,2’−ヒドロキシ−5−メチルフェニルベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニルベンゾトリアゾール、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4−メトキシ−4’−t−ブチルジベンゾイルメタン、5−(3,3−ジメチル−2−ノルボルニリデン)−3−ペンタン−2−オン等を挙げることができる。
【0082】
その他薬剤成分としては特に限定されず、例えば、ビタミンA油、レチノール、パルミチン酸レチノール、イノシット、塩酸ピリドキシン、ニコチン酸ベンジル、ニコチン酸アミド、ニコチン酸DL−α−トコフェロール、アルコルビン酸リン酸マグネシウム、2−O−α−D−グルコピラノシル−L−アスコルビン酸、ビタミンD2(エルゴカシフェロール)、dl−α−トコフェロール、酢酸dl−α−トコフェロール、パントテン酸、ビオチン等のビタミン類;エストラジオール、エチニルエストラジオール等のホルモン;アルギニン、アスパラギン酸、シスチン、システイン、メチオニン、セリン、ロイシン、トリプトファン等のアミノ酸;アラントイン、アズレン等の抗炎症剤、アルブチン等の美白剤、;タンニン酸等の収斂剤;L−メントール、カンフル等の清涼剤やイオウ、塩化リゾチーム、塩化ピリドキシン等を挙げることができる。
【0083】
各種の抽出液としては特に限定されず、例えば、ドクダミエキス、オウバクエキス、メリロートエキス、オドリコソウエキス、カンゾウエキス、シャクヤクエキス、サボンソウエキス、ヘチマエキス、キナエキス、ユキノシタエキス、クララエキス、コウホネエキス、ウイキョウエキス、サクラソウエキス、バラエキス、ジオウエキス、レモンエキス、シコンエキス、アロエエキス、ショウブ根エキス、ユーカリエキス、スギナエキス、セージエキス、タイムエキス、茶エキス、海藻エキス、キューカンバーエキス、チョウジエキス、キイチゴエキス、メリッサエキス、ニンジンエキス、マロニエエキス、モモエキス、桃葉エキス、クワエキス、ヤグルマギクエキス、ハマメリスエキス、プラセンタエキス、胸腺抽出物、シルク抽出液、甘草エキス等を挙げることができる。
【0084】
上記各種粉体としては、ベンガラ、黄酸化鉄、黒酸化鉄、雲母チタン、酸化鉄被覆雲母チタン、酸化チタン被覆ガラスフレーク等の光輝性着色顔料、マイカ、タルク、カオリン、セリサイト、二酸化チタン、シリカ等の無機粉末やポリエチレン末、ナイロン末、架橋ポリスチレン、セルロースパウダー、シリコーン末等の有機粉末等を挙げることができる。好ましくは、官能特性向上、化粧持続性向上のため、粉末成分の一部又は全部をシリコーン類、フッ素化合物、金属石鹸、油剤、アシルグルタミン酸塩等の物質にて、公知の方法で疎水化処理して使用される。また、本発明に該当しない他の複合粉体を混合して使用するものであってもよい。
【0085】
本発明の酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子をインキへの添加成分として使用する場合は、酸化チタン、ベンガラ、アンチモンレッド、カドミウムイエロー、コバルトブルー、紺青、群青、カーボンブラック、黒鉛などの有色顔料、及び、炭酸カルシウム、カオリン、クレー、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、タルク等の体質顔料を挙げることができる。さらに有機顔料としては、溶性アゾ顔料、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料、縮合多環顔料等の顔料成分;シェラック樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、スチレン−マレイン酸樹脂、スチレン−アクリル−マレイン酸樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂等のバインダー樹脂等のバインダー樹脂;水混和性有機溶剤等と併用して使用することができる。
【0086】
本発明の酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子を塗料組成物への添加成分として使用する場合は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等の塗膜形成樹脂;着色顔料、体質顔料、光輝性顔料等の各種顔料;硬化触媒、表面調整剤、消泡剤、顔料分散剤、可塑剤、造膜助剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤等と併用して使用することができる。また、塗料中の樹脂は、硬化性を有するものであっても、硬化性を有さないものであってもよい。
【実施例】
【0087】
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0088】
(実施例1)
粒子径1.05μmの六角板状酸化亜鉛 (XZ−1000F、堺化学工業社製)150gを水723.21gに添加し、充分に撹拌することによりZnO濃度200g/lの水性スラリーを得た。続いて、スラリーを撹拌しながら45℃に昇温した後、この温度を維持しながら、5重量%のNaOH水溶液を添加することでスラリーのpHを10に調整した。前述のスラリーに対し、CeO
2換算濃度が42g/lである硝酸セリウム水溶液357ml(母体ZnOに対しCeO
2換算で10重量部に相当)と、該硝酸セリウム水溶液を中和する為の10重量%のNaOH水溶液とを、スラリーの温度45℃、pH10の条件を保ちながら180分間かけて同時に添加した。中和完了後、30分間熟成した後、濾過、水洗を行い、120℃で12時間乾燥することにより、母体となる粒子径1.05μmの六角板状酸化亜鉛粒子表面が酸化セリウムによって被覆された粒子径1.09μmの酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子を得た。得られた粒子のサイズ・形態を透過型電子顕微鏡JEM−2100(日本電子社製)で観察した。得られた電子顕微鏡写真を
図1に示した。また、得られた粒子をX線回折装置UltimaIII(リガク社製)で分析した。得られたX線回折のスペクトルを
図2に示した。また、得られた粒子の物性及び塗膜の物性を表1に示した。
【0089】
(実施例2)
粒子径0.11μmの六角柱状酸化亜鉛 (XZ−100P、堺化学工業社製)150gを水723.21gに添加し、充分に撹拌することによりZnO濃度200g/lの水性スラリーを得た。続いて、スラリーを撹拌しながら45℃に昇温した後、この温度を維持しながら、5重量%のNaOH水溶液を添加することでスラリーのpHを10に調整した。前述のスラリーに対し、CeO
2換算濃度が42g/lである硝酸セリウム水溶液357ml(母体ZnOに対しCeO
2換算で10重量部に相当)と、該硝酸セリウム水溶液を中和する為の10重量%のNaOH水溶液とを、スラリーの温度45℃、pH10の条件を保ちながら180分間かけて同時に添加した。中和完了後、30分間熟成した後、濾過、水洗を行い、120℃で12時間乾燥することにより、母体となる粒子径0.11μmの六角柱状酸化亜鉛粒子表面が酸化セリウムによって被覆された粒子径0.12μmの酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子を得た。得られた粒子のサイズ・形態を透過型電子顕微鏡JEM−2100(日本電子社製)で観察した。得られた電子顕微鏡写真を
図3に示した。また、得られた粒子をX線回折装置UltimaIII(リガク社製)で分析した。得られたX線回折のスペクトルを
図4に示した。また、得られた粒子の物性及び塗膜の物性を表1に示した。
【0090】
(実施例3)
粒子径2.15μmの酸化亜鉛 (LPZINC−2、堺化学工業社製)150gを水723.21gに添加し、充分に撹拌することによりZnO濃度200g/lの水性スラリーを得た。続いて、スラリーを撹拌しながら45℃に昇温した後、この温度を維持しながら、5重量%のNaOH水溶液を添加することでスラリーのpHを10に調整した。前述のスラリーに対し、CeO
2換算濃度が42g/lである硝酸セリウム水溶液357ml(母体ZnOに対しCeO
2換算で10重量部に相当)と、該硝酸セリウム水溶液を中和する為の10重量%のNaOH水溶液とを、スラリーの温度45℃、pH10の条件を保ちながら180分間かけて同時に添加した。中和完了後、30分間熟成した後、濾過、水洗を行い、120℃で12時間乾燥することにより、母体となる粒子径2.15μmの酸化亜鉛粒子表面が酸化セリウムによって被覆された粒子径2.26μmの酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子を得た。得られた粒子のサイズ・形態を透過型電子顕微鏡JEM−2100(日本電子社製)で観察した。得られた電子顕微鏡写真を
図5に示した。また、得られた粒子をX線回折装置UltimaIII(リガク社製)で分析した。得られたX線回折のスペクトルを
図6に示した。また、得られた粒子の物性及び塗膜の物性を表1に示した。
【0091】
(比較例1)
粒子径1.05μmの六角板状酸化亜鉛(XZ−1000F、堺化学工業社製)を比較対象の紫外線遮蔽剤とした。粒子の透過型電子顕微鏡写真を
図7に示した。また、粒子の物性及び塗膜の物性を表1に示した。なお、当該粒子は実施例1及び比較例9で得られた被覆酸化亜鉛粒子の母体となる原料酸化亜鉛粒子でもある。
【0092】
(比較例2)
粒子径0.11μmの六角柱状酸化亜鉛(XZ−100P、堺化学工業社製)を比較対象の紫外線遮蔽剤とした。粒子の透過型電子顕微鏡写真を
図8に示した。また、粒子の物性及び塗膜の物性を表1に示した。なお、当該粒子は実施例2、比較例3及び6で得られた被覆酸化亜鉛粒子の母体となる原料酸化亜鉛粒子でもある。
【0093】
(比較例3)
粒子径0.11μmの六角柱状酸化亜鉛 (XZ−100P、堺化学工業社製)30gを水144.64gに添加し、充分に撹拌することによりZnO濃度200g/lの水性スラリーを得た。続いて、スラリーを撹拌しながら45℃に昇温した後、この温度を維持しながら、5重量%のNaOH水溶液を添加することでスラリーのpHを10に調整した。
前述のスラリーに対し、CeO
2換算濃度が42g/lである硝酸セリウム水溶液143ml(母体ZnOに対しCeO
2換算で20重量部に相当)と、該硝酸セリウム水溶液を中和する為の5重量%のNaOH水溶液とを、スラリーの温度45℃、pH10の条件を保ちながら180分間かけて同時に添加した。中和完了後、30分間熟成した後、濾過、水洗、120℃で12時間乾燥した。続いて、酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子を電気炉で1000℃、2時間焼成することにより、酸化亜鉛粒子と酸化セリウム粒子が一体化した粒子径0.13μmの酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子を得た。得られた粒子のサイズ・形態を透過型電子顕微鏡JEM−2100(日本電子社製)で観察した。得られた電子顕微鏡写真を
図9に示した。また、得られた粒子をX線回折装置UltimaIII(リガク社製)で分析した。得られたX線回折のスペクトルを
図10に示した。また、得られた粒子の物性及び塗膜の物性を表1に示した。紫外線遮蔽性能は粒子径によって異なるため、ほぼ同じ粒子径である実施例2と比較すると、得られた粒子の紫外線遮蔽率は低いことがわかる。
【0094】
(比較例4)
水750gを撹拌しながら45℃に昇温した後、この温度を維持しながら、5重量%のNaOH水溶液を添加することで水のpHを10に調整した。前述の水に対し、CeO
2換算濃度が42g/lである硝酸セリウム水溶液357mlと、該硝酸セリウム水溶液を中和する為の10重量%のNaOH水溶液とを、45℃、pH10の条件を保ちながら180分間かけて同時に添加した。中和完了後、30分間熟成した後、濾過、水洗、120℃で12時間乾燥することにより、粒子径0.007μmの微細な酸化セリウム粒子を得た。得られた粒子のサイズ・形態を透過型電子顕微鏡JEM−2100(日本電子社製)で観察した。得られた電子顕微鏡写真を
図11に示した。また、得られた粒子をX線回折装置UltimaIII(リガク社製)で分析した。得られたX線回折のスペクトルを
図12に示した。また、得られた粒子の物性及び塗膜の物性を表1に示した。
【0095】
(比較例5)
比較例2の0.11μmの六角柱状酸化亜鉛(XZ−100P、堺化学工業社製)9.13gと、比較例4により得られた粒子径0.007μmの酸化セリウム粒子0.97gとを混合し、混合粉体として比較対象の紫外線遮蔽剤とした。粒子の物性及び塗膜の物性を表1に示した。
【0096】
(比較例6)
粒子径0.11μmの六角柱状酸化亜鉛 (XZ−100P、堺化学工業社製)150gを水723.21gに添加し、充分に撹拌することによりZnO濃度200g/lの水性スラリーを得た。続いて、スラリーを撹拌しながら45℃に昇温した後、この温度を維持しながら、5重量%のNaOH水溶液を添加することでスラリーのpHを10に調整した。
前述のスラリーに対し、CeO
2換算濃度が42g/lである硝酸セリウム水溶液357ml(母体ZnOに対しCeO
2換算で10重量部に相当)と、該硝酸セリウム水溶液を中和する為の10重量%のNaOH水溶液とを、スラリーの温度45℃、pH10の条件を保ちながら180分間かけて同時に添加した。中和完了後、30分間熟成した後、濾過、水洗、120℃で12時間乾燥した。続いて、酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子を電気炉で900℃、2時間焼成することにより、粒子径0.14μmの酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子を得た。被覆されていた酸化セリウムは焼成により粒子成長し、緻密な表面処理層ではなくなった。得られた粒子のサイズ・形態を透過型電子顕微鏡JEM−2100(日本電子社製)で観察した。得られた電子顕微鏡写真を
図13に示した。また、得られた粒子をX線回折装置UltimaIII(リガク社製)で分析した。得られたX線回折のスペクトルを
図14に示した。また、得られた粒子の物性及び塗膜の物性を表1に示した。
【0097】
(比較例7)
粒子径2.15μmの酸化亜鉛(LPZINC−2、堺化学工業社製)を比較対象の紫外線遮蔽剤とした。粒子の透過型電子顕微鏡写真を
図15に示した。また、粒子の物性及び塗膜の物性を表1に示した。なお、当該粒子は実施例3及び比較例8で得られた被覆酸化亜鉛粒子の母体となる原料酸化亜鉛粒子でもある。
【0098】
(比較例8)
粒子径2.15μmの酸化亜鉛 (LPZINC−2、堺化学工業社製)150gを水723.21gに添加し、充分に撹拌することによりZnO濃度200g/lの水性スラリーを得た。続いて、スラリーを撹拌しながら45℃に昇温した後、この温度を維持しながら、5重量%のNaOH水溶液を添加することでスラリーのpHを10に調整した。
前述のスラリーに対し、CeO
2換算濃度が42g/lである硝酸セリウム水溶液357ml(母体ZnOに対しCeO
2換算で10重量部に相当)と、該硝酸セリウム水溶液を中和する為の10重量%のNaOH水溶液とを、スラリーの温度45℃、pH10の条件を保ちながら180分間かけて同時に添加した。中和完了後、30分間熟成した後、濾過、水洗、120℃で12時間乾燥した。続いて、酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子を電気炉で900℃、2時間焼成することにより、粒子径2.34μmの酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子を得た。被覆されていた酸化セリウムは焼成により粒子成長し、緻密な表面処理層ではなくなった。得られた粒子のサイズ・形態を透過型電子顕微鏡JEM−2100(日本電子社製)で観察した。得られた電子顕微鏡写真を
図16に示した。また、得られた粒子をX線回折装置UltimaIII(リガク社製)で分析した。得られたX線回折のスペクトルを
図17に示した。また、得られた粒子の物性及び塗膜の物性を表1に示した。紫外線遮蔽性能は粒子径によって異なるため、ほぼ同じ粒子径である実施例3と比較すると、得られた粒子の紫外線遮蔽率は低いことがわかる。
【0099】
(比較例9)
粒子径1.05μmの六角板状酸化亜鉛 (XZ−1000F、堺化学工業社製)150gを水723.21gに添加し、充分に撹拌することによりZnO濃度200g/lの水性スラリーを得た。続いて、スラリーを撹拌しながら45℃に昇温した後、この温度を維持しながら、5重量%のNaOH水溶液を添加することでスラリーのpHを10に調整した。
前述のスラリーに対し、CeO
2換算濃度が42g/lである硝酸セリウム水溶液357ml(母体ZnOに対しCeO
2換算で10重量部に相当)と、該硝酸セリウム水溶液を中和する為の10重量%のNaOH水溶液とを、スラリーの温度45℃、pH10の条件を保ちながら180分間かけて同時に添加した。中和完了後、30分間熟成した後、濾過、水洗、120℃で12時間乾燥した。続いて、酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子を電気炉で900℃、2時間焼成することにより、粒子径1.18μmの酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子を得た。被覆されていた酸化セリウムは焼成により粒子成長し、緻密な表面処理層ではなくなった。得られた粒子のサイズ・形態を透過型電子顕微鏡JEM−2100(日本電子社製)で観察した。得られた電子顕微鏡写真を
図18に示した。また、得られた粒子をX線回折装置UltimaIII(リガク社製)で分析した。得られたX線回折のスペクトルを
図19に示した。また、得られた粒子の物性及び塗膜の物性を表1に示した。紫外線遮蔽性能は粒子径によって異なるため、ほぼ同じ粒子径である実施例1と比較すると、得られた粒子の紫外線遮蔽率は低いことがわかる。
【0100】
(比較例10)
硝酸亜鉛六水和物(関東化学社製、純度96%)70.04g及び硝酸セリウム(III)六水和物(和光純薬工業社製、和光特級、純度98%)200gをイソブタノール(2−メチル−1−プロパノール、キシダ化学社製、純度99.5%以上)1200mlに入れ、これを30分間撹拌混合し、尿素(和光純薬工業社製、試薬特級、純度99%)262gと水1600mlとの水溶液を添加して撹拌し、これを温度約90℃にて約4時間、続いて温度約100℃で1時間加水分解反応を行い、加水分解生成物を得た。これを濾過し、水1000mlで洗浄し、温度150℃で乾燥後、ハンマーミル及び振動ミルで粉砕した。次いで温度600℃、1時間焼成して粒子径0.03μmである酸化亜鉛と酸化セリウムの複合酸化物95.2gを得た。得られた粒子のサイズ・形態を透過型電子顕微鏡JEM−2100(日本電子社製)で観察した。得られた電子顕微鏡写真を
図20に示した。また、得られた粒子をX線回折装置UltimaIII(リガク社製)で分析した。得られたX線回折のスペクトルを
図21に示した。また、得られた粒子の物性及び塗膜の物性を表1に示した。
【0101】
【表1】
【0102】
(評価方法)
(得られた粒子の組成)
図2、4、6、10、12、14、17、19、21に示すX線回折のスペクトル、及び表1における得られた粒子の組成は、銅管球をもつX線回折装置UltimaIII(リガク社製)により分析した結果を示したものである。
【0103】
(塗膜の作成)
実施例又は比較例の粒子2g、ワニス10g(アクリディック A−801−P DIC社製)、酢酸ブチル5g(試薬特級 和光純薬工業社製)、キシレン5g(純正特級 純正化学社製)、ガラスビーズ38g(1.5mm ポッターズ・バロティーニ社製)を容積75mlのマヨネーズ瓶に入れ、良くかき混ぜた後、ペイントコンディショナー5410型(RED DEVIL社製)に固定し、90分間振動を与えて分散処理することにより塗料を作成した。次に、作成した塗料をスライドガラス(縦・横・厚み=76mm・26mm・0.8〜1.0mm 松浪硝子工業社製)の上に少量滴下し、バーコーター(No.579 ROD No.6 安田精機製作所社製)で塗膜を作成した。作成した塗膜を20℃で12時間乾燥した後、測定に用いた。
【0104】
実施例1の酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子、比較例1の六角板状酸化亜鉛粒子、比較例5の六角板状酸化亜鉛粒子と酸化セリウム粒子との混合物を用いて、上記配合によりそれぞれ塗膜を作成し、各々の塗膜を分光光度計V−570(日本分光社製)により測定した、光の波長300〜400nmの紫外線波長領域における全光透過率曲線を比較した結果を
図22に示す。なお、実施例1の粒子及び比較例5の粒子混合物に含まれるZnとCeの量は、表1の蛍光X線分析値よりほぼ等しくなっていることがわかる。
図22の結果から、本発明の被覆酸化亜鉛粒子は、母体となる原料酸化亜鉛粒子よりもUV−A波に対する紫外線遮蔽率が優れたものとなり、かつ、単純な混合物よりも優れたUV−A波に対する紫外線遮蔽性能を有するものであることが明らかである。
一方、焼成により被覆されていた酸化セリウム粒子が粗大化し緻密な表面処理層ではなくなった比較例6の酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子を含有する塗膜の紫外線遮蔽率、及び焼成により酸化亜鉛粒子と酸化セリウム粒子が一体化してしまった比較例3の酸化セリウム含有酸化亜鉛粒子を含有する塗料の紫外線遮蔽率は、母体を同じくする実施例2の酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子を含有する塗膜の紫外線遮蔽率に及ばないことが明らかであり、緻密な酸化セリウム層を有する実施例2の酸化セリウム被覆酸化亜鉛粒子が、紫外線遮蔽性能に優れた粒子であることが明らかである。