特許第6489025号(P6489025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6489025
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】マイクロニードルユニット
(51)【国際特許分類】
   A61M 37/00 20060101AFI20190318BHJP
【FI】
   A61M37/00 510
【請求項の数】6
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2015-559114(P2015-559114)
(86)(22)【出願日】2015年1月22日
(86)【国際出願番号】JP2015051732
(87)【国際公開番号】WO2015111672
(87)【国際公開日】20150730
【審査請求日】2017年12月20日
(31)【優先権主張番号】特願2014-11523(P2014-11523)
(32)【優先日】2014年1月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】加藤 洋行
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 利幸
【審査官】 安田 昌司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−244341(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/016230(WO,A1)
【文献】 特表2009−507576(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/107806(WO,A2)
【文献】 特表2008−543528(JP,A)
【文献】 特開2013−215621(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/096026(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイクロニードルが刺される穿刺対象と対向する対向面と、前記対向面とは反対側の面である被接着面とを備え、前記対向面に1以上の突起部を有する前記マイクロニードルと、
前記マイクロニードルを収容する凹状容器であって、前記マイクロニードルを囲む開口部を備える前記凹状容器と、
前記開口部を塞ぐように前記凹状容器と接続し、これによって前記凹状容器が前記突起部を覆う、板形状を有する蓋部であって、前記被接着面から前記被接着面の周囲に広がる前記蓋部と、
前記蓋部と前記被接着面との間に位置して、前記蓋部と前記被接着面とを接着する接着部と、を備え、
前記凹状容器は、前記蓋部から離れる方向の力を受けることによって、前記マイクロニードルが前記接着部によって前記蓋部に接着された状態で、前記蓋部との接続を解除するように構成され、
前記接着部は、前記蓋部に接触する第1接触面と、前記被接着面に接触し、かつ、前記被接着面から前記被接着面の周囲に広がり、前記突起部が前記穿刺対象に刺さるとき、前記穿刺対象の中で前記対向面の周囲に位置する部分と接触する第2接触面とを有し
前記接着部は、
前記第1接触面を有する第1部分と、
前記第2接触面を有する第2部分と、
前記マイクロニードルと前記穿刺対象とが対向する方向において、前記第1部分と前記第2部分との間に位置して、前記第2部分よりも剛性が高い第3部分と、を備え、
前記突起部が前記穿刺対象に刺さるとき、前記第2接触面の中で前記被接着面の周囲に位置する部分が前記穿刺対象に接着し、かつ、前記蓋部が前記穿刺対象から離れる方向の力を受けるとき、前記第2接触面の中で前記被接着面の周囲に位置する部分と、前記穿刺対象との接着を保ち、かつ、前記第2部分が前記第3部分から剥がれるように、前記接着部が構成されている
マイクロニードルユニット。
【請求項2】
前記接着部において、前記第2接触面の前記穿刺対象に対する接着力は、前記第2接触面と前記蓋部との間の距離を大きくすることに要する力よりも大きい
請求項1に記載のマイクロニードルユニット。
【請求項3】
前記蓋部は、前記突起部が前記穿刺対象に刺さるとき、前記穿刺対象の中で前記接着部の周囲に位置する部分と接触する第3接触面を備え、
前記第3接触面の少なくとも一部は、前記穿刺対象に対する粘着性を有し、
前記穿刺対象に対する前記第3接触面の接着力は、前記第2接触面の中で前記被接着面の周囲に位置する部分の前記穿刺対象に対する接着力よりも小さい
請求項1または2に記載のマイクロニードルユニット。
【請求項4】
前記第1接触面の形成材料と前記第2接触面の形成材料とが相互に異なる
請求項1からのいずれか一項に記載のマイクロニードルユニット。
【請求項5】
前記蓋部は、前記第1接触面と接触する部分の少なくとも一部に複数の段差を有する
請求項1からのいずれか一項に記載のマイクロニードルユニット。
【請求項6】
前記凹状容器は、前記開口部の縁から外側に向けて延びるフランジ部をさらに備え、
前記蓋部は、前記フランジ部と対向するフランジ対向部をさらに備え、
前記フランジ部と前記フランジ対向部とが相互に接続する
請求項1からのいずれか一項に記載のマイクロニードルユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、マイクロニードルと、マイクロニードルを収容する容器とを備えるマイクロニードルユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
経皮吸収法は、人などの投与対称に痛みを与えず、薬剤などの投与物質を皮膚から身体の内部に浸透させることを含む。
経皮吸収法においては、マイクロニードルを皮膚に刺すことによって、皮膚の内部に薬剤などを投与する方法が提案されている。マイクロニードルは、投与対象に痛みを与えない程度の大きさを有した突起部を備え、突起部が皮膚のバリア層である角質層を貫通する。そして、マイクロニードルが皮膚に形成した孔から薬剤が皮膚の内部に吸収されることによって、薬剤が経皮吸収される。
【0003】
マイクロニードルの突起部は、例えば、特許文献1に記載のように、マイクロニードルが使用者に使用される前の状態では、突起部を保護するカバーによって覆われている。カバーは、接着剤によって、突起部を支持する基体に接着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2008/020632号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、使用者は、マイクロニードルを使用するとき、マイクロニードルからカバーを取り外す。カバーは、マイクロニードルの基体に直に接着しているため、使用者の取り外し方によっては、マイクロニードルの基体の形状が変わる。これにより、マイクロニードルの突起部が、使用者の指あるいはカバーに接することがある。マイクロニードルの突起部は、穿刺対象に痛みを与えない程度の大きさを有するため、穿刺対象の皮膚にマイクロニードルを刺す前に、使用者の指あるいはカバーがマイクロニードルに触れてしまうと、突起部の先端が対象に刺されることに適していない方向へ曲がってしまうことがある。このように、使用者が穿刺対象の皮膚に刺すときの取り扱いが難しいことから、マイクロニードルにおいては、使用者の指やカバーが突起部に触れることを抑える構造が求められている。
【0006】
本開示の技術は、マイクロニードルが穿刺対象に刺されるときの取り扱い性を高めることの可能なマイクロニードルユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の技術におけるマイクロニードルユニットの一態様は、マイクロニードルが刺される穿刺対象と対向する対向面と、前記対向面とは反対側の面である被接着面とを備え、前記対向面に1以上の突起部を有する前記マイクロニードルと、前記マイクロニードルを収容する凹状容器であって、前記マイクロニードルを囲む開口部を備える前記凹状容器と、前記開口部を塞ぐように前記凹状容器と接続する、板形状を有する蓋部であって、前記被接着面から前記被接着面の周囲に広がる前記蓋部と、前記蓋部と前記被接着面との間に位置して、前記蓋部と前記被接着面とを接着する接着部と、を備える。前記凹状容器は、前記蓋部から離れる方向の力を受けることによって、前記マイクロニードルが前記接着部によって前記蓋部に接着された状態で、前記蓋部との接続を解除するように構成され、前記接着部は、前記蓋部に接触する第1接触面と、前記被接着面に接触し、かつ、前記被接着面から前記被接着面の周囲に広がり、前記突起部が前記穿刺対象に刺さるとき、前記穿刺対象の中で前記対向面の周囲に位置する部分と接触する第2接触面とを有している。
【0008】
本開示の技術におけるマイクロニードルユニットの一態様によれば、マイクロニードルに接着している蓋部が穿刺対象に向かって押されることによって、突起部が対象に刺さる。そのため、マイクロニードルが穿刺対象に刺されるとき、使用者がマイクロニードルに触れにくくなる。結果として、使用者がマイクロニードルを穿刺対象に刺すとき、マイクロニードルユニットの取り扱いがより容易になる。
【0009】
本開示の技術におけるマイクロニードルユニットの他の態様において、前記接着部は、前記突起部が前記穿刺対象に刺さるとき、前記第2接触面の中で前記被接着面の周囲に位置する部分が前記穿刺対象に接着し、かつ、前記蓋部が前記対象から離れる方向の力を受けるとき、前記第1接触面が前記蓋部から剥がれるように、前記接着部が構成されていることが好ましい。
【0010】
本開示の技術におけるマイクロニードルユニットの他の態様によれば、突起部が穿刺対象に刺さった後、マイクロニードルが蓋部から剥がれる。そのため、使用者がマイクロニードルを穿刺対象に刺すとき、マイクロニードルの取り扱いが容易である。
【0011】
本開示の技術におけるマイクロニードルユニットの他の態様は、前記第2接触面の前記穿刺対象に対する接着力は、前記第2接触面と前記蓋部との間の距離を大きくすることに要する力よりも大きいことが好ましい。
【0012】
本開示の技術におけるマイクロニードルユニットの他の態様によれば、穿刺対象に対する第2接触面の接着力が、第2接触面と蓋部との間の距離を大きくすることに要する力よりも大きいため、マイクロニードルから蓋部が剥がれやすい。
【0013】
本開示の技術におけるマイクロニードルユニットの他の態様は、前記蓋部が、前記突起部が前記穿刺対象に刺さるとき、前記穿刺対象の中で前記接着部の周囲に位置する部分と接触する第3接触面を備える。前記第3接触面の少なくとも一部は、前記穿刺対象に対する粘着性を有し、前記穿刺対象に対する前記第3接触面の接着力は、前記第2接触面の中で前記被接着面の周囲に位置する部分の前記穿刺対象に対する接着力よりも小さいことが好ましい。
【0014】
本開示の技術におけるマイクロニードルユニットの他の態様は、第3接触面の少なくとも一部が穿刺対象に対する粘着性を有する構成では、マイクロニードルが穿刺対象に刺されるとき、接着部における第2接触面の一部に加えて、第3接触面も穿刺対象に接着する。そのため、マイクロニードルは、穿刺対象における位置が第3接触面によって位置決めされた状態で、穿刺対象に刺される。それゆえに、マイクロニードルは、穿刺対象に対して押し付ける方向の力を受けたときに、穿刺対象に刺さりやすくなる。
【0015】
本開示の技術におけるマイクロニードルユニットの他の態様は、前記第1接触面の形成材料と前記第2接触面の形成材料とが相互に異なることが好ましい。
本開示の技術におけるマイクロニードルユニットの他の態様によれば、2つの接触面が相互に異なる形成材料で形成されるため、2つの接触面が相互に同じ形成材料で形成される構成と比べて、接着部の形成材料における自由度が高まる。
【0016】
本開示の技術におけるマイクロニードルの他の態様は、前記蓋部が、前記第1接触面と接触する部分の少なくとも一部に複数の段差を有することが好ましい。
本開示の技術におけるマイクロニードルユニットの他の態様によれば、蓋部に段差を形成するという容易な方法によって、蓋部に対する第1接触面の接着力を、第2接触面の中で被接着面の周囲に位置する部分の対象に対する接着力よりも小さくすることが可能になる。
【0017】
本開示の技術におけるマイクロニードルユニットの他の態様は、前記接着部が、前記第1接触面を有する第1部分と、前記第2接触面を有する第2部分と、前記マイクロニードルと前記穿刺対象とが対向する方向において、前記第1部分と前記第2部分との間に位置して、前記第2部分よりも剛性が高い第3部分と、をさらに備えることが好ましい。
【0018】
本開示の技術におけるマイクロニードルユニットの他の態様によれば、マイクロニードルと穿刺対象とが対向する方向において、蓋部から剥がれる第1接触面に近い位置に、マイクロニードルに接触する第2部分よりも剛性の高い第3部分が位置する。そのため、マイクロニードルから蓋部が剥がれるとき、接着部が第3部分を有する分、第2部分の変形が抑えられる。それゆえに、マイクロニードル、ひいては、マイクロニードルの備える突起部の形状が変わりにくくなり、穿刺対象に刺さったマイクロニードルが、穿刺対象から抜けにくくなる。
【0019】
本開示の技術におけるマイクロニードルユニットの他の態様は、前記凹状容器が、前記開口部の縁から外側に向けて延びるフランジ部をさらに備える。前記蓋部は、前記フランジ部と対向するフランジ対向部をさらに備え、前記フランジ部と前記フランジ対向部とが相互に接続することが好ましい。
【0020】
本開示の技術におけるマイクロニードルユニットの他の態様によれば、使用者は、フランジ部とフランジ対向部とを摘み、フランジ部をフランジ対向部から離れる方向に引っ張ることによって、凹状容器と蓋部との接続を解除することができる。そのため、凹状容器と蓋部との接続の解除が行われやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本開示のマイクロニードルユニットにおける一実施形態の分解斜視構造を示す分解斜視図である。
図2】マイクロニードルユニットの断面構造を示す断面図である。
図3】マイクロニードルユニットの断面構造を示す断面図である。
図4】マイクロニードルユニットの作用を説明するための作用図である。
図5】マイクロニードルユニットの作用を説明するための作用図である。
図6】マイクロニードルユニットの作用を説明するための作用図である。
図7】マイクロニードルユニットの作用を説明するための作用図である。
図8】変形例におけるマイクロニードルの作用を説明するための作用図である。
図9】変形例におけるマイクロニードルの作用を説明するための作用図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
図1から図7を参照して、本開示のマイクロニードルユニットを具体化した一実施形態を説明する。以下では、マイクロニードルユニットの全体構成、接着部の構成、マイクロニードルの構成、マイクロニードルの構成材料、および、マイクロニードルの作用を順番に説明する。
【0023】
[マイクロニードルユニットの全体構成]
図1を参照してマイクロニードルユニットの構成を説明する。
図1が示すように、マイクロニードルユニット10は、マイクロニードル11、収容部21、蓋部31、および、接着部41を備えている。マイクロニードル11は、マイクロニードル11が刺される穿刺対象と対向する対向面12aと、対向面12aとは反対側の面である被接着面12bとを備えている。対向面12aには、1以上の突起部13が位置している。
【0024】
収容部21は、マイクロニードル11を収容する凹状容器であって、マイクロニードル11を囲む開口部21aを備えている。蓋部31は、収容部21の開口部21aを塞ぐ板形状を有して収容部21と接続している。蓋部31は、マイクロニードル11における基体12の被接着面12bから被接着面12bの周囲に広がって被接着面12bを支持している。接着部41は、蓋部31と、基体12の被接着面12bとを接着している。
【0025】
収容部21は、蓋部31から離れる方向の力を受けることによって、マイクロニードル11が接着部41によって蓋部31に接着された状態で、蓋部31との接続を解除する。接着部41は、蓋部31に接触する蓋部接触面41aを有する。接着部41は、基体12の被接着面12bに接触し、かつ、被接着面12bから被接着面12bの周囲に広がり、マイクロニードル11の突起部13が穿刺対象に刺さるとき、穿刺対象の中で基体12の対向面12aの周囲に位置する部分と接触する対象接触面41bとを有する。
【0026】
そして、対象接触面41bの中で基体12の被接着面12bの周囲に位置する部分が穿刺対象に接着し、かつ、蓋部31が穿刺対象から離れる方向の力を受けるとき、蓋部接触面41aが蓋部31から剥がれる。蓋部接触面41aが第1接触面の一例であり、対象接触面41bが第2接触面の一例である。
【0027】
マイクロニードル11の基体12は、矩形板形状を有している。基体12は、円板形状を有してもよいし、矩形以外の多角形板形状を有してもよい。基体12における対向面12aの面積は、1つ以上の突起部13が位置することのできる面積以上であればよい。基体12の対向面12aは、平面形状を有している。対向面12aは、曲面形状を有してもよいし、平面形状と曲面形状との両方を有してもよい。基体12の被接着面12bは、平面形状を有している。被接着面12bは、曲面形状を有してもよいし、平面形状と曲面形状との両方を有してもよい。
【0028】
基体12の対向面12aには、複数の突起部13が位置している。複数の突起部13は規則的に、例えば、格子形状に沿って並んでいる。複数の突起部13は、不規則に並んでもよいし、複数の突起部13が規則的に並ぶ場合であっても、最密充填の状態で並んだり、同心円状に並んだりしてもよい。
【0029】
各突起部13は、1つの方向である延設方向に沿って延びる形状であって、例えば、四角錐形状を有する。各突起部13の形状は、穿刺対象に刺さる形状を有していればよく、四角錐形状に限らず、例えば、他の錐体形状、錘台形状、柱体形状、あるいは、刃形状でもよい。各突起部13が他の錐体形状を有するとき、各突起部13は、円錐形状あるいは四角錐形状以外の多角錐形状を有する。各突起部13が錘台形状を有するとき、各突起部13は、円錐台形状あるいは多角錘台形状を有していればよい。各突起部13が柱体形状を有するとき、各突起部13は、円柱形状あるいは多角柱形状を有していればよい。
【0030】
各突起部13は、延設方向において相互に異なる2つ以上の形状を有してもよく、この場合には、上述した錐体形状、錘台形状、および、柱体形状に含まれる2つ以上の形状を有していればよい。各突起部13の外周面は、捻れや段差を有してもよい。各突起部13が穿刺対象に刺さる上では、少なくとも突起部13の先端が、錐体形状を有することが好ましい。
【0031】
なお、複数の突起部13は、相互に異なる形状であってもよいし、複数の突起部13において、延設方向における長さが相互に異なってもよい。複数の突起部13の形成を容易にする上では、複数の突起部13が、相互に同じ形状を有することが好ましい。また、複数の突起部13は、相互に交差する方向に沿って延びてもよく、複数の突起部13が相互に交差する方向に沿って延びるとき、相互に隣り合う突起部13の先端が相互に接しない。また、複数の突起部13の先端は、相互に同じ平面上に位置することが好ましい。
【0032】
また、基体12は1つの突起部13を対向面12aに有してもよく、この場合には、突起部13は、対向面12aにおける中央に位置してもよいし、中央以外のいずれかの部位に位置してもよい。
【0033】
凹状容器の一例である収容部21は、四角筒形状を有する筒体23と、筒体23の2つの筒端のうち、一方の筒端を閉じる矩形板形状を有する底部22とを有している。なお、収容部21は、半球体形状を有してもよいし、半楕円体形状を有してもよいし、四角形以外の多角形筒形状を有してもよい。底部22は、開口部21aに向けて窪んだ曲板形状を有してもよいし、開口部21aから離れる方向に突出した曲板形状を有してもよい。
【0034】
収容部21に対して、マイクロニードル11は、底部22における中央に向かい合う位置に配置される。マイクロニードル11は、底部22における中央以外の部位に向かい合う位置に配置されてもよい。収容部21における延設方向に沿った長さは、マイクロニードル11における延設方向に沿った長さよりも大きい。
【0035】
収容部21は、フランジ部24を有し、フランジ部24は、開口部21aの縁の全体から、収容部21の内側面によって囲まれる収容空間21bの外側に向けて延びる。すなわち、フランジ部24は、開口部21aの縁から、開口部21aの縁よりも外側に向けて延びる。フランジ部24は、開口部21aの縁のうち、一部に位置してもよい。
【0036】
蓋部31は矩形板形状を有する。蓋部31は、円板形状を有してもよいし、矩形以外の多角形板形状を有してもよい。蓋部31において、蓋部31の面積が、収容部21における開口部21aの縁が囲む面積よりも大きい。蓋部31に対して、マイクロニードル11は、蓋部31における中央に位置している。マイクロニードル11は、蓋部31における中央以外の部位に位置してもよい。
【0037】
収容部21と蓋部31とは、接着剤で接着されることによって相互に接続してもよいし、ヒートシールによって接着されることによって相互に接続してもよい。あるいは、収容部21と蓋部31との各々が嵌合部を有し、収容部21の嵌合部と蓋部31の嵌合部とが相互に嵌り合うことによって収容部21と蓋部31とが相互に接続してもよい。収容部21は、蓋部31から離れる方向の力を受けることによって、蓋部31との接続を解除することができる。
【0038】
蓋部31のうち、収容部21と対向する面に、フランジ部24と対向するフランジ対向部31aが位置する。蓋部31において、収容部21と対向する面の面積が、フランジ部24の外縁によって囲まれる面積以上であることが好ましい。
【0039】
フランジ対向部31aは、フランジ部24と相互に接続している。これにより、使用者は、フランジ部24とフランジ対向部31aとを摘み、フランジ部24をフランジ対向部31aから離れる方向に引っ張ることによって、収容部21と蓋部31との接続を解除することができる。そのため、収容部21と蓋部31との接続の解除が行われやすくなる。
【0040】
蓋部31は、外周接触面31bを備え、マイクロニードル11の突起部13が穿刺対象に刺さるとき、外周接触面31bは、穿刺対象の中で接着部41の周囲に位置する部分と接触する。外周接触面31bは、第3接触面の一例である。
【0041】
外周接触面31bの少なくとも一部は、穿刺対象に対する粘着性を有する。なお、蓋部31の形成材料が、穿刺対象に対して粘着性を有する材料であってもよいし、外周接触面31bに、穿刺対象に対して粘着性を有する部材が位置してもよい。
【0042】
穿刺対象に対する外周接触面31bの接着力は、対象接触面41bの中で基体12の被接着面12bの周囲に位置する部分における穿刺対象に対する接着力よりも小さい。外周接触面31bの少なくとも一部が穿刺対象に対する粘着性を有する構成によれば、マイクロニードル11が穿刺対象に刺されるとき、マイクロニードル11の接着部41の一部とともに、外周接触面31bも穿刺対象に接着する。そのため、穿刺対象に対するマイクロニードル11の位置が外周接触面31bによって位置決めされた状態で、マイクロニードル11が穿刺対象に刺される。それゆえに、マイクロニードル11は、穿刺対象に対して押し付ける方向の力を受けたときに、穿刺対象に刺さりやすくなる。
【0043】
蓋部31におけるフランジ対向部31aと、外周接触面31bにおいて粘着性を有する部分とは、相互に重なってもよい。この場合には、外周接触面31bにおける粘着性を有する部分は、収容部21に対する粘着性も有することが好ましく、かつ、外周接触面31bの全体に位置することが好ましい。あるいは、外周接触面31bとフランジ部24との間に、外周接触面31bとフランジ部24とを接着する接着部材が位置してもよい。この場合には、外周接触面31bとフランジ部24とを接着する接着部材が、蓋部31と収容部21との接続が解除されるとき、外周接触面31bから剥がれて、かつ、フランジ部24に位置する部材であってもよい。また、接着部材は、蓋部31と収容部21との接続が解除されるとき、フランジ部24から剥がれて、かつ、外周接触面31bに位置する部材であってもよい。
【0044】
あるいは、蓋部31におけるフランジ対向部31aと、外周接触面31bにおいて穿刺対象に対して粘着性を有する部分とは、蓋部31において相互に重ならなくてもよい。すなわち、蓋部31は、フランジ対向部31aと、外周接触面31bにおいて穿刺対象に対して粘着性を有する部分とを各別に有してもよい。
【0045】
[接着部の構成]
次に、図1および図2を参照して、マイクロニードルユニット10の備える接着部41を詳しく説明する。
【0046】
図1が示すように、接着部41は例えば板形状を有し、接着部41において、蓋部31に対する蓋部接触面41aの接着力は、蓋部接着力である。また、対象接触面41bの中で被接着面12bの周囲に位置する部分における穿刺対象に対する接着力は、対象接着力である。
【0047】
マイクロニードル11の突起部13が穿刺対象に刺されたとき、蓋部接着力が、対象接着力よりも小さいことが好ましい。なお、蓋部接着力とは、蓋部接触面41aが蓋部31に接触する面積の全体によって発現される接着力である。また、対象接着力とは、対象接触面41bの中で、被接着面12bの周囲に位置する部分の面積の全体によって発現される接着力である。
【0048】
接着部41において、蓋部接着力と、対象接着力との差は、以下に列挙する構成によって生じる。すなわち、2つの接着力の差は、各面が接着する接着対象の違いによって生じてもよいし、各面の形成材料が相互に異なることによって生じてもよいし、各面と接着対象との接触する面積が相互に異なることによって生じてもよいし、これらの組合せによって生じてもよい。
【0049】
接着部41は、延設方向に沿って重なる複数の層から構成され、かつ、接着部41は、蓋部31と、基体12の被接着面12bとを接着する1つの積層体として機能する。接着部41は、蓋部31に接触する蓋部接触面41aを有する蓋部接触部42と、基体12の被接着面12bと穿刺対象とに接触する対象接触面41bを有する対象接触部43とを備えている。蓋部接触部42と対象接触部43との各々は、層形状を有している。蓋部接触部42が第1部分の一例であり、対象接触部43が第2部分の一例である。
【0050】
対象接触部43は、基体12の被接着面12bから被接着面12bの周囲に広がり、突起部13が穿刺対象に刺さるとき、穿刺対象の中で対向面12aの周囲に位置する部分は、対象接触部43が備える対象接触面41bと接触する。蓋部接触部42の形成材料と、対象接触部43の形成材料とは、相互に異なることが好ましく、対象接触部43は、粘着性を有して、対象接触面41bにおいて穿刺対象に対する接着力を発現する粘着性を有している。
【0051】
接着部41は、蓋部接触面41aにて蓋部31に対する接着力を発現する部分と、対象接触面41bにて接着部41と穿刺対象との間の接着力を発現する部分とを各別に備える。そのため、接着部41が単一の層で形成される構成と比べて、接着部41の形成材料における自由度が高まる。
【0052】
蓋部接触部42、および、対象接触部43を有する接着部41では、具体的には、以下の方法が採用されることで、蓋部接着力が、対象接着力よりも小さくなる。
(A)図2が示すように、蓋部接触面41aと接触する蓋部31の内側面のうち、収容部21の備えるフランジ部24と向かい合わない部分、すなわち、内側面における接着部41の蓋部接触面41aと接触する部分に、例えば、エンボス加工によって凹凸部31cを形成する。これにより、蓋部31と接着部41とが接触する面積を、穿刺対象と接着部41とが接触する面積よりも小さくする。
【0053】
(B)蓋部接触面41aと接触する蓋部31の内側面に、例えば、シリコーン材料やフッ素系材料を塗布する。
(C)蓋部接触部42の形成材料、および、対象接触部43の形成材料として、接着力が相互に異なる材料を選択する。特に、蓋部接触部42の形成材料として、対象接触部43の形成材料よりも単位面積当たりの接着力が小さい形成材料を選択することが好ましい。例えば、蓋部接触部42の形成材料として、イージーピール性、言い換えれば、易剥離性を有した接着剤や、再接着性を有した接着剤が選択されればよい。具体的には、ポリウレタン系材料、アクリル系材料、ポリ塩化ビニル系材料、ポリ塩化ビニリデン系材料、酢酸ビニル系材料、および、シリコーン系材料などの接着材料を用いることができ、中でも易剥離シリコーン系接着剤といった、易剥離グレード(イージーピールタイプ)の接着剤が好ましい。
【0054】
上述した(A)によれば、単位面積当たりにおける蓋部接触面41aと蓋部31との間の接着力が、単位面積当たりにおける対象接触面41bにて穿刺対象と接触する部分と穿刺対象との間の接着力よりも大きくてもよい。この場合であっても、蓋部接着力が、対象接着力よりも小さくなる。
【0055】
上述した(B)によれば、単位面積当たりにおける蓋部接触面41aと蓋部31との間の接着力が、対象接触面41bにて穿刺対象と接触する部分と穿刺対象との間の単位面積当たりにおける接着力よりも大きくてもよい。この場合であっても、(B)の処理を行うことによって、蓋部接触面41aと蓋部31との間の接着力を対象接触面41bにて穿刺対象と接触する部分と穿刺対象との間の接着力よりも小さくすることが可能になる。なお、上述した(A)あるいは(B)の方法が採用されるとき、蓋部接触部42の形成材料、および、対象接触部43の形成材料は、ポリウレタン系材料、アクリル系材料、ポリ塩化ビニル系材料、ポリ塩化ビニリデン系材料、酢酸ビニル系材料、および、シリコーン系材料などの接着材料であればよい。
【0056】
上述した(C)を満たす上では、対象接触部43の形成材料としては、ポリウレタン系材料、アクリル系材料、ポリ塩化ビニル系材料、ポリ塩化ビニリデン系材料、酢酸ビニル系材料、および、シリコーン系材料などの接着材料を用いることができる。
【0057】
図1が示すように、接着部41は、マイクロニードル11と穿刺対象とが対向する方向、すなわち、延設方向と平行な方向において、蓋部接触部42と対象接触部43との間に位置して、対象接触部43よりも剛性が高く、層形状を有する支持部44をさらに備える。支持部44は、第3部分の一例である。
【0058】
蓋部接触部42と基体12との間に支持部44が位置する構成であれば、蓋部31と対象接触部43とが離れ、かつ、マイクロニードル11から蓋部31が剥がれるとき、剛性の高い支持部44は対象接触部43の変形を抑える。それゆえに、基体12、ひいては、突起部13の形状が変わりにくくなり、蓋部31がマイクロニードル11から剥がされるとき、穿刺対象に刺さったマイクロニードル11の突起部13が、穿刺対象から抜けにくくなる。
【0059】
支持部44は、例えば、対象接触部43の形成材料よりも剛性の高い材料で形成された樹脂フィルムであって、支持部44は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、および、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂で形成された樹脂フィルムなどである。
【0060】
接着部41が、支持部44を有するとき、例えば、以下の方法より、蓋部接着力が、対象接着力よりも小さくなる。
(D)蓋部接触部42の大きさを、支持部44および対象接触部43の大きさよりも小さくすることで、蓋部接触部42を支持部44の一部にのみ接触させる。これにより、蓋部31と蓋部接触部42とが接触する面積を小さくする。
【0061】
上述した(D)によれば、たとえ、単位面積当たりにおける蓋部接触面41aと蓋部31との間の接着力が、単位面積当たりにおける対象接触面41bにて穿刺対象と接触する部分と穿刺対象との間の接着力よりも大きくても、蓋部接触面41aと蓋部31との間の接着力を相対的に小さくすることができる。上述した(A)から(D)の方法において、2つ以上の方法が組み合わせられてもよい。
【0062】
なお、接着部41は単一の層から構成されてもよい。このとき、たとえ、単位面積当たりの蓋部接触面41aにおける蓋部31に対する接着力が、対象接触面41bにおける被接着面12bの周囲に位置する部分における穿刺対象に対する単位面積当たりの接着力が等しくともよい。こうした場合であっても、上述した(A)および(B)の少なくとも一方が採用されることによって、蓋部接着力が、対象接着力よりも小さくなる。
【0063】
接着部41が単一の層から構成されるとき、接着部41の中では、延設方向における組成が一定でもよいし、延設方向に沿って組成が変わってもよい。接着部41が単一の部分から構成されるとき、接着部41の形成材料は、ポリウレタン系材料、アクリル系材料、ポリ塩化ビニル系材料、ポリ塩化ビニリデン系材料、酢酸ビニル系材料、および、シリコーン系材料などである。
【0064】
[マイクロニードルの構成]
図3を参照してマイクロニードル11の構成を説明する。図3は、蓋部31における接着部41と接する面に直交する平面であって、収容部21、マイクロニードル11、および、接着部41を通る平面に沿ったマイクロニードルユニット10の断面構造を示している。
【0065】
図3が示すように、マイクロニードル11の突起部13において、突起部13の高さHは、延設方向に沿った長さであって、基体12の対向面12aから突起部13における基体12から離れた端部である先端までの長さである。突起部13は、穿刺対象の皮膚に孔を形成する上で適した高さHを有することが好ましく、突起部13の高さHは、10μm以上1000μm以下の範囲に含まれることが好ましい。
【0066】
突起部13の高さHは、穿刺対象に形成される孔の底部が、皮膚の内部におけるいずれの部位に位置するかに応じて設定されることが好ましい。孔における底部の位置が、角質層の内部に設定されるとき、突起部13の高さHは、10μm以上300μm以下の範囲に含まれることが好ましく、30μm以上200μm以下の範囲に含まれることがより好ましい。
【0067】
孔における底部の位置が、皮膚における角質層を貫通し、かつ、神経層に達しない位置に設定されるとき、突起部13の高さHは、200μm以上700μm以下の範囲に含まれることが好ましく、200μm以上500μm以下の範囲に含まれることがより好ましい。孔における底部の位置が、皮膚における角質層を貫通し、かつ、神経層に達しない位置に設定されるとき、突起部13の高さHは、200μm以上300μm以下の範囲に含まれることがさらに好ましい。
【0068】
孔における底部の位置が、真皮に達する位置に設定されるとき、突起部13の高さHは、200μm以上500μm以下の範囲に含まれることが好ましい。孔における底部の位置が、表皮に達する位置に設定されるとき、突起部13の高さHは、200μm以上300μm以下の範囲に含まれることが好ましい。
【0069】
突起部13においては、延設方向と直交する方向の長さであって、対向面12aに沿う方向の長さにおける最大値が幅Dであり、突起部13の幅Dは、1μm以上300μm以下の範囲に含まれることが好ましい。例えば、突起部13が正四角錐形状あるいは正四角柱形状を有するとき、突起部13の先端とは異なる端部である基端は、対向面12aにて正方形の領域を区画する。そして、突起部13の基端が区画する正方形の領域での対角線の長さが、突起部13の幅Dである。また、例えば、突起部13が円錐形状あるいは円柱形状を有するとき、突起部13の基端は、対向面12aにて円形の領域を区画する。そして、突起部13の基端が区画する円形の領域での直径が、突起部13の幅Dである。
【0070】
突起部13においては、幅Dに対する高さHの比(A=H/D)がアスペクト比Aである。突起部13のアスペクト比Aは、1以上10以下の範囲に含まれることが好ましい。
突起部13が少なくとも先端に錐体形状を有するとき、突起部13においては、先端における角度が先端角θであり、先端角θは、基体12における対向面12aと直交する方向に沿った断面にて、突起部13が形成する角度の最大値である。例えば、突起部13が正四角錐形状を有するとき、突起部13の先端角θは、突起部13の基端における対角線を底辺とし、かつ、突起部13の先端を頂点とする二等辺三角形の頂角である。
【0071】
突起部13が少なくとも先端に錐体形状を有し、かつ、孔の底部の位置が、角質層を貫通する位置に設定されるとき、先端角θは、5°以上30°以下の範囲に含まれることが好ましく、10°以上20°以下の範囲に含まれることがより好ましい。
【0072】
マイクロニードルユニット10において、突起部13の先端と、収容部21の中で突起部13の先端と対向する部位との間の距離は、離間距離Lである。離間距離Lは、0.1mm以上10mm以下の範囲内であることが好ましい。離間距離Lが0.1mm以上である構成においては、マイクロニードルユニット10の搬送時において、突起部13の先端と収容部21とが接触し、突起部13の先端が変形したり破損したりすることが抑えられる。また、離間距離Lが10mm以下である構成においては、マイクロニードルユニット10の搬送時や保管時において、搬送や保管に必要とされる空間が嵩張ることが抑えられる。
【0073】
[マイクロニードルユニットの構成材料]
マイクロニードル11の形成材料は、生体適合性を有する材料、すなわち、マイクロニードル11としての機能を発現しつつ、マイクロニードル11が適用される穿刺対象に対して負の影響を与えない材料であることが好ましい。マイクロニードル11の形成材料が生体適合性を有する材料であるとき、形成材料は、例えば、シリコン、金属、および、樹脂などである。マイクロニードル11の形成材料が金属であるとき、形成材料は、ステンレス鋼、チタン、および、マンガンなどである。マイクロニードル11の形成材料が樹脂であるとき、形成材料は、例えば、医療用シリコーン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカーボネート、および、環状オレフィンコポリマーなどである。
【0074】
マイクロニードル11の形成材料は、生体適合性を有し、かつ、マイクロニードルユニット10が穿刺対象に投与する液体、あるいは、外部から穿刺対象に対して投与される液体で溶解する材料であってもよい。形成材料が液体で溶解する材料であるとき、形成材料は、例えば水溶性高分子である。水溶性高分子は、例えば、アルギン酸塩、カードラン、キチン、キトサン、グルコマンナン、ポリリンゴ酸、コラーゲン、コラーゲンペプチド、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ゼラチン、キトサンサクシナミド、トリメチルキトサン、オリゴキトサン、オリゴキチン、エチレングリコールキトサン、および、エチレングリコールキチンなどである。
【0075】
マイクロニードル11において、基体12の形成材料と突起部13の形成材料とは、相互に同じであってもよいし、相互に異なってもよい。マイクロニードル11が複数の突起部13を含むとき、突起部13の形成材料は、相互に同じであってもよいし、異なってもよい。
【0076】
マイクロニードル11の製造方法は、公知である各種の方法のいずれかであればよい。マイクロニードル11の形成材料が樹脂であるとき、マイクロニードル11の製造方法は、例えば、射出成形法、押出成形法、インプリント法、ホットエンボス法、キャスティング法などのいずれかであればよい。
【0077】
マイクロニードル11の形成材料がシリコンや金属であるとき、マイクロニードル11の製造方法は、例えば切削加工法などの機械加工法や、エッチング法などのいずれかであればよい。
【0078】
マイクロニードル11の形成材料が上述した材料のいずれであっても、マイクロニードル11の製造方法は、マイクロニードル11を原版とする凹版を用いて複製する方法であってもよい。凹版は、例えば、めっき法や樹脂を用いた型取り法などによって作製される。
【0079】
収容部21の形成材料は、可撓性を有する材料であることが好ましく、収容部21の形成材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、および、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂である。
【0080】
蓋部31の形成材料は、可撓性を有する材料であることが好ましく、蓋部31の形成材料は、例えば、収容部21と同様、ポリエチレン、ポリプロピレン、および、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂である。
【0081】
マイクロニードルユニット10は、皮膚に投与される液体状の薬剤、あるいは、所定の溶媒に溶かされた液体状の薬剤を含んでもよい。この場合には、マイクロニードルユニット10は、マイクロニードル11の収容空間とは異なる薬剤収容空間を蓋部31に有し、薬剤収容空間に薬剤を保持していることが好ましい。そして、マイクロニードル11の突起部13が穿刺対象に刺されるときに、穿刺対象に対して薬剤を供給することのできる構成であればよい。
【0082】
皮膚に投与される薬剤は、薬理活性物質、あるいは、化粧品組成物などである。薬剤が薬理活性物質であるとき、薬剤は、使用者の用途に応じて適宜選択される。薬剤が薬理活性物質であるとき、薬剤は、例えば、インフルエンザなどのワクチン、癌患者などが用いる痛止め薬、インスリン、生物製剤、遺伝子治療薬、注射剤、経口剤、および、皮膚適用製剤などである。
【0083】
マイクロニードルユニット10は皮膚に刺されることから、マイクロニードルユニット10を用いた経皮投与は、従来から経皮投与に用いられてきた薬理活性物質以外の薬理活性物質であって、皮下注射が必要な薬理活性物質にも適用される。特に、注射剤であるワクチンなどが投与される場合であっても、マイクロニードルユニット10を用いた経皮投与によれば、薬剤が投与されるときに痛みを伴わない。そのため、マイクロニードルユニット10を用いた経皮投与は、小児に適用されることが好ましい。また、マイクロニードルユニット10による経皮投与によれば、薬剤が患者に投与されるとき、患者は薬剤を飲む必要がない。そのため、マイクロニードルユニット10は、経口剤を飲むことが難しい小児に適用されることが好ましい。
【0084】
化粧品組成物は、化粧品および美容品として用いられる組成物であって、薬剤が化粧品組成物であるとき、薬剤は、例えば、保湿剤、色料、香料、および、美容効果を示す生理活性物質などである。美容効果を示す生理活性物質は、例えば、しわ、にきび、および、妊娠線などを改善する効果を有する物質や、脱毛を改善する効果を有する物質などである。
【0085】
収容部21や蓋部31は、薬剤を皮膚に投与するための注入液体を薬剤とは別に内部に保持してもよく、注入液体は、例えば、水やエチルアルコールなどの水系溶媒であってもよい。注入液体は、ゲル材料や、スポンジなどの多孔質材料が含む状態で、収容部21の内部に位置してもよい。
【0086】
なお、突起部13の形成材料が、蓋部31の内部に保持される注入液体で溶解する材料であるとき、突起部13の形成材料が、上述した薬剤を含んでもよい。この場合には、使用前のマイクロニードルユニット10は、突起部13と、蓋部31の内部に位置する注入液体とが接しない構成である一方で、マイクロニードルユニット10が使用されるとき、突起部13と注入液体とが接する構成であることが好ましい。また、突起部13の形成材料は、穿刺対象の皮膚の内部で溶解する材料であってもよい。この場合には、蓋部31の内部に収容された液体は、突起部13が皮膚の内部で溶解する速度を高める。
【0087】
蓋部31が上述した液体状の薬剤や注入液体を内部に保持するとき、蓋部31は、これら液体を蓋部31の外部から蓋部31の内部に入れるための貫通孔を有していることが好ましい。そして、蓋部31の内部に液体が入れられた後は、蓋部31の貫通孔が、貫通孔の内部に位置して貫通孔を塞ぐ閉塞部材によって塞がれればよい。閉塞部材が、例えば2つの筒端を有した筒形状を有するとき、蓋部31の外側面に位置する端部に、貫通孔の囲む面積よりも大きい面積を有して、蓋部31の外側面に接する部分が位置することが好ましい。
【0088】
[マイクロニードルユニットの作用]
図4から図7を参照してマイクロニードルユニット10の作用を説明する。なお、マイクロニードル11の刺される穿刺対象は、例えば、人の皮膚でもよいし、人以外の動物の皮膚でもよい。また、以下では、マイクロニードルユニット10において、蓋部接着力が対象接着力よりも小さい構成例を用いてマイクロニードルユニット10の作用を説明する。
【0089】
図4が示すように、使用者がマイクロニードルユニット10を使用するとき、使用者は、蓋部31と収容部21との接続を解除して、マイクロニードルユニット10から収容部21を取り除く。このとき、マイクロニードル11は、接着部41によって蓋部31に接着された状態である。マイクロニードル11の突起部13を覆う収容部21は、蓋部31に接続しているため、マイクロニードルユニット10から収容部21が取り除かれるとき、マイクロニードル11の形状を変える力をマイクロニードル11が受けにくい。そのため、マイクロニードル11の基体12の形状が変わったり、基体12の形状が変わることで、基体12に位置する突起部13が収容部21の内側面に触れたりすることが抑えられる。それゆえに、使用者がマイクロニードル11を穿刺対象に刺すとき、マイクロニードルユニット10の取り扱いが容易である。
【0090】
そして、図5が示すように、使用者は、例えば、蓋部31であって、接着部41の周囲に位置する部分を摘み、マイクロニードル11を穿刺対象の皮膚Sの上に乗せる。
マイクロニードル11が穿刺対象の皮膚Sの上に乗せられると、蓋部31のうち、接着部41の周囲に位置する部分が、皮膚Sの表面に沿って位置する。マイクロニードル11が皮膚Sの表面に乗せられるとき、マイクロニードル11は、蓋部31に覆われた状態であるため、使用者がマイクロニードル11に触れにくい。それゆえに、使用者がマイクロニードル11を穿刺対象に刺すとき、マイクロニードルユニット10の取り扱いが容易である。
【0091】
使用者は、蓋部31の一部を穿刺対象に向けて押し、マイクロニードル11の各突起部13を穿刺対象の皮膚Sに刺す。これにより、各突起部13は、穿刺対象の皮膚Sに孔を形成する。このとき、蓋部31における外周接触面31bの少なくとも一部が穿刺対象に対する粘着性を有する構成では、マイクロニードル11が穿刺対象に刺されるとき、マイクロニードル11の接着部41の一部とともに、外周接触面31bも穿刺対象に接着する。加えて、接着部41の備える対象接触部43は、使用者によって与えられる力によって押し広げられる程度の剛性を有するため、対象接触部43は、基体12の被接着面12bから被接着面12bの周囲に広がる。そして、対象接触部43は、基体12の周面と皮膚Sの表面とに密着する。
【0092】
図6が示すように、使用者は、皮膚Sの上から蓋部31を取り除く。このとき、使用者は、蓋部31の一部を摘んで、蓋部31を皮膚Sの表面から捲り上げる。これにより、蓋部31は穿刺対象から離れる方向の力を受けて、蓋部31が蓋部接触部42から剥がれる。
【0093】
そのため、図7が示すように、マイクロニードルユニット10のうち、マイクロニードル11と接着部41のみが皮膚Sの表面に位置する。
マイクロニードル11は、穿刺対象の皮膚Sの上に乗せられるときから、マイクロニードル11から蓋部31が剥がれる前までの間にわたって蓋部31に覆われている。そのため、使用者がマイクロニードル11を穿刺対象に刺すとき、マイクロニードル11を覆う部材がない構成と比べて、マイクロニードル11の形状が変わりにくくなる。それゆえに、使用者がマイクロニードル11を穿刺対象に刺すとき、マイクロニードルユニット10の取り扱いが容易である。
【0094】
このように、マイクロニードル11の突起部13が皮膚Sに刺さったとき、マイクロニードル11とともにマイクロニードル11を覆う蓋部31も皮膚Sの表面に位置する。そのため、例えば、マイクロニードル11の形成材料が薬剤である場合など、マイクロニードル11が皮膚Sに処方される時間が長い場合に、使用者がマイクロニードル11を皮膚Sに押し付けなくとも、マイクロニードル11が剥がれることが抑えられる。
【0095】
また、マイクロニードル11が孔の形成に用いられる場合であっても、使用者がマイクロニードル11を皮膚Sから取り外すとき、接着部41を摘めばよいため、使用者が皮膚Sに形成された孔に触れにくくなる。
【0096】
[実施例1]
[マイクロニードルの製造方法]
マイクロニードル11を製造するときには、まず、マイクロニードル11の原版を、精密機械加工によってシリコン基板から作成した。シリコン基板には、36本の正四角錐形状の突起部を形成し、各突起部においては、高さHを150μmに設定し、底面における一辺の長さを60μmに設定した。36個の突起部の各々を、相互に1mmの間隔を空けて形成し、かつ、6列6行の格子状に配列した。
【0097】
次いで、シリコン基板から形成されたマイクロニードル11の原版に、500μmの厚さを有するニッケル膜をメッキ法によって形成した。ニッケル膜を形成すると、90℃に加熱した30重量%の水酸化カリウム水溶液を用いたウェットエッチングによって原版を除去し、ニッケルから構成される凹版を作成した。
【0098】
凹版を作成すると、液体状のヒドロキシプロピルセルロースを凹版に供給し、ヒドロキシプロピルセルロースを熱源で加熱することで固化した。固化したヒドロキシプロピルセルロースを凹版から剥がすことで、マイクロニードル11を得た。
【0099】
[マイクロニードルユニットの製造方法]
マイクロニードルユニット10の収容部21として、2つの筒端のうち、一方が閉じられた四角筒形状を有し、かつ、開口した筒端の周方向の全体にフランジ部を有したポリエチレンテレフタレート(PET)製の容器を用いた。接着部41として、蓋部接触部42と、対象接触部43と、蓋部接触部42と対象接触部43とに挟まれる支持部44とを有する接着部41を形成した。蓋部接触部42の形成材料には、易剥離シリコーン系接着剤を用い、対象接触部43の形成材料には、アクリル系接着剤を用い、支持部44の形成材料には、ポリエチレンを用いた。
【0100】
また、マイクロニードルユニット10の蓋部31として、矩形板形状を有するPET製のフィルムを用いた。そして、蓋部接触部42と、支持部44と、対象接触部43とを重ねて接着部41を形成し、対象接触部43の中心にマイクロニードル11を配置した状態で、接着部41を蓋部31の内側面に貼り付けた。最後に、接着部41とマイクロニードル11とを備える蓋部31と、収容部21とを接着剤で接着した。
【0101】
[試験方法および試験結果]
蓋部31がマイクロニードル11に接着した状態でブタの皮膚に蓋部31を押し付け、マイクロニードル11の突起部13をブタの皮膚に刺した。そして、蓋部31をブタの皮膚に押し付けるのを止め、蓋部31をブタの皮膚の上から取り除いた。蓋部31を取り除いても、マイクロニードル11と、マイクロニードル11を覆う接着部41とが、ブタの皮膚の上に残っていることが認められた。
【0102】
[実施例2]
[マイクロニードルの製造方法]
マイクロニードル11を製造するときには、まず、マイクロニードル11の原版を、精密機械加工によってシリコン基板から作成した。シリコン基板には、36本の正四角錐形状の突起部を形成し、各突起部においては、高さHを150μmに設定し、底面における一辺の長さを60μmに設定した。36個の突起部の各々を、相互に1mmの間隔を空けて形成し、かつ、6列6行の格子状に配列した。
【0103】
次いで、シリコン基板から形成されたマイクロニードル11の原版に、500μmの厚さを有するニッケル膜をメッキ法によって形成した。ニッケル膜を形成すると、90℃に加熱した30重量%の水酸化カリウム水溶液を用いたウェットエッチングによって原版を除去し、ニッケルから構成される凹版を作成した。
【0104】
凹版を作成すると、液体状のヒドロキシプロピルセルロースを凹版に供給し、ヒドロキシプロピルセルロースを熱源で加熱することで固化した。固化したヒドロキシプロピルセルロースを凹版から剥がすことで、マイクロニードル11を得た。
【0105】
[マイクロニードルユニットの製造方法]
マイクロニードルユニット10の収容部21として、2つの筒端のうち、一方が閉じられた四角柱形状を有し、かつ、開口した筒端の周方向の全体にフランジ部を有したポリエチレンテレフタレート(PET)製の容器を用いた。接着部41として、蓋部接触部42と、対象接触部43と、蓋部接触部42と対象接触部43とに挟まれる支持部44とを有する接着部41を形成した。蓋部接触部42の形成材料には、アクリル系接着剤を用い、対象接触部43の形成材料には、アクリル系接着剤を用い、支持部44の形成材料には、ポリエチレンを用いた。
【0106】
マイクロニードルユニット10の蓋部31として、内側面にドット状のエンボス加工を施した矩形板形状を有するPET製のフィルムを用いた。そして、蓋部接触部42と、支持部44と、対象接触部43とを重ねて接着部41を形成し、対象接触部43の中心にマイクロニードル11を配置した状態で、接着部41を蓋部31のエンボス加工を施した内側面に貼り付けた。最後に、接着部41とマイクロニードル11とを備える蓋部31と、収容部21とを接着剤で接着した。
【0107】
[試験方法および試験結果]
蓋部31がマイクロニードル11に接着した状態でブタの皮膚に蓋部31を押し付け、マイクロニードル11の突起部13をブタの皮膚に刺した。そして、蓋部31をブタの皮膚に押し付けるのを止め、蓋部31をブタの皮膚の上から取り除いた。蓋部31を取り除いても、マイクロニードル11と、マイクロニードル11を覆う接着部41とが、ブタの皮膚の上に残っていることが認められた。
【0108】
以上説明したように、実施形態におけるマイクロニードルユニット10によれば、以下に列挙する効果を得ることができる。
(1)マイクロニードル11に接着している蓋部31が穿刺対象に向かって押されることによって、突起部13が穿刺対象に刺さる。そして、突起部13が穿刺対象に刺さった後、マイクロニードル11が蓋部31から剥がされる。そのため、マイクロニードル11が穿刺対象に刺されるとき、使用者がマイクロニードル11に触れにくくなる。結果として、使用者がマイクロニードル11を穿刺対象に刺すとき、マイクロニードルユニット10の取り扱いがより容易になる。
【0109】
(2)蓋部接着力が、対象接着力よりも小さいため、マイクロニードル11から蓋部31が剥がれやすい。
(3)外周接触面31bの少なくとも一部が穿刺対象に対する粘着性を有する構成では、マイクロニードル11が穿刺対象に刺されるとき、マイクロニードル11の接着部41の一部とともに、外周接触面31bも穿刺対象に接着する。そのため、穿刺対象におけるマイクロニードル11の位置が外周接触面31bによって位置決めされた状態で、マイクロニードル11が穿刺対象に刺される。それゆえに、マイクロニードル11は、穿刺対象に対して押し付ける方向の力を受けたときに、穿刺対象に刺さりやすくなる。
【0110】
(4)蓋部接触面41aと対象接触面41bとが相互に異なる形成材料で形成されるため、2つの接触面が相互に同じ形成材料で形成される構成と比べて、接着部41の形成材料における自由度が高まる。
【0111】
(5)マイクロニードル11と穿刺対象とが対向する方向において、対象接触部43よりも蓋部31から剥がれる蓋部接触面41aに近い位置に、マイクロニードル11に接触する対象接触部43よりも剛性の高い支持部44が位置する。そのため、マイクロニードル11から蓋部31が剥がれるとき、接着部41が支持部44を有する分、対象接触部43の変形が抑えられる。それゆえに、マイクロニードル11、ひいては、マイクロニードル11の備える突起部13の形状が変わりにくくなり、穿刺対象に刺さったマイクロニードル11が、穿刺対象から抜けにくくなる。
【0112】
(6)使用者は、フランジ部24とフランジ対向部31aとを摘み、フランジ部24をフランジ対向部31aから離れる方向に引っ張ることによって、収容部21と蓋部31との接続を解除することができる。そのため、収容部21と蓋部31との接続の解除が行われやすくなる。
【0113】
なお、上述した実施形態は、以下のように適宜変更して実施することもできる。
・収容部21において、フランジ部24が省略されてもよく、この場合には、蓋部31のフランジ対向部31aが省略されてよい。こうした構成であっても、上述した(1)から(5)に準じた効果を得ることはできる。
【0114】
・接着部41は、支持部44を有していなくともよい。こうした構成であっても、接着部41において、蓋部接着力が、対象接着力よりも小さい以上は、少なくとも(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0115】
・接着部41においては、蓋部接触面41aの形成材料と、対象接触面41bの形成材料とが相互に同じであってもよい。こうした構成であっても、上述した(A)あるいは(B)の方法が採用されることによって、蓋部接着力が、対象接着力よりも小さくなる。これにより、少なくとも(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0116】
・蓋部31の内側面のうち、フランジ部24と向かい合わない部分の全体に凹凸部31cを形成しなくともよく、凹凸部31cは、内側面のうちで、接着部41の蓋部接触面41aと接触する部分のみに形成されてもよい。あるいは、凹凸部31cは、内側面のうちで、接着部41の蓋部接触面41aと接触する部分の少なくとも一部に形成されていればよい。要は、こうした構成によって、蓋部接着力が、対象接着力よりも小さくなればよい。
【0117】
・上述したエンボス加工、すなわち、蓋部31を形成するフィルムなどに複数の凹部が繰り返し形成される加工によって、蓋部31に凹凸部31cが形成されてもよいし、その他の方向によって複数の凹部が繰り返し形成されることで、凹凸部31cが形成されてもよい。あるいは、蓋部31を形成するフィルムなどに複数の凸部が形成されることによって、凹凸部31cが形成されてもよい。凸部は、例えば、蓋部31とは別に形成された複数の突起が蓋部31に接着されることによって形成されてもよいし、蓋部31の上に他のフィルムなどが貼り付けられた後、フィルムのうち、凸部以外の部分が取り除かれることで形成されてもよい。要は、蓋部31の有する1つの面に、複数の段差が形成されていればよい。こうした構成によれば、蓋部31に段差を形成するという容易な方法によって、蓋部接着力を、対象接着力よりも小さくすることが可能である。また、接着部41と蓋部31とが接触する面積によって、上述した接着力を実現するため、接着部41の形成材料における自由度を高めることもできる。
【0118】
・蓋部31に対する蓋部接触部42の接着力は、支持部44に対する蓋部接触部42の接着力よりも大きく、かつ、支持部44に対する対象接触部43の接着力よりも大きくてもよい。そして、支持部44に対する蓋部接触部42の接着力と、支持部44に対する対象接触部43の接着力との中で小さい方の接着力である剥離用接着力は、対象接着力よりも小さい。言い換えれば、対象接触面41bの皮膚に対する接着力は、対象接触面41bと蓋部31との間の距離を大きくすることに要する力よりも大きい。
【0119】
例えば、図8が示すように、支持部44に対する蓋部接触部42の接着力が剥離用接着力であってもよい。こうした構成であれば、蓋部31が穿刺対象から離れる方向の力を受けるとき、対象接触面41bは穿刺対象である皮膚との接着を保ち、かつ、蓋部接触部42と支持部44との間において接着が解除される。
【0120】
また例えば、図9が示すように、支持部44に対する対象接触部43の接着力が剥離用接着力であってもよい。こうした構成であれば、蓋部31が穿刺対象から離れる方向の力を受けるとき、対象接触面41bは穿刺対象である皮膚との接着を保ち、かつ、対象接触部43と支持部44との間において接着が解除される。
【0121】
・外周接触面31bは、穿刺対象に対する粘着性を有していなくともよい。こうした構成であっても、接着部41において、蓋部接着力が、対象接着力よりも小さい以上は、少なくとも(1)に準じた効果を得ることはできる。
【0122】
・接着部41において、蓋部接着力が、対象接着力以上であってもよい。例えば、蓋部接触面41aが、複数の部分に分割されている場合であれば、仮に、蓋部接着力が、対象接着力以上であってもよい。こうした構成によれば、マイクロニードル11から蓋部31が剥がされるとき、蓋部接触面41aにおける各部分に対して、マイクロニードル11から蓋部31を剥がす力が作用するため、マイクロニードル11から蓋部31が剥がれる。要は、接着部は、対象接触面41bの中で被接着面12bの周囲に位置する部分が穿刺対象に接着し、かつ、蓋部31が穿刺対象から離れる方向の力を受けるとき、蓋部接触面41aが蓋部31から剥がれることの可能な構成であればよい。
【符号の説明】
【0123】
10…マイクロニードルユニット、11…マイクロニードル、12…基体、12a…対向面、12b…被接着面、13…突起部、21…収容部、21a…開口部、21b…収容空間、22…底部、23…筒体、24…フランジ部、31…蓋部、31a…フランジ対向部、31b…外周接触面、31c…凹凸部、41…接着部、41a…蓋部接触面、41b…対象接触面、42…蓋部接触部、43…対象接触部、44…支持部、S…皮膚。
図1
図2
図3
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図5
図6
図7
図8
図9