(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明における実施の形態について詳細に説明する。
【0016】
(実施の形態1)
はじめに、
図1を参照しながら、本実施の形態のトラクタ1の構成および動作について具体的に説明する。
【0017】
なお、
図1は、本発明における実施の形態1のトラクタ1の左側面図である。
【0018】
以下の説明では、作業車両などの車両として農業用又は各種作業機けん引用のトラクタ1を一例に示し、前後方向とは、トラクタ1の前後方向である。さらに言えば、前後方向とは、このトラクタ1が直進する際の進行方向であり、進行方向前方側を前後方向前側、後方側を前後方向後側という。トラクタ1の進行方向とは、トラクタ1の直進時において、トラクタ1の操縦席2からステアリングハンドル3に向かう方向であり、ステアリングハンドル3側が前側、操縦席2が後側となる。
【0019】
また、車幅方向とは、当該前後方向に対して水平に直交する方向である。ここでは、前後方向前側を視た状態で右側を車幅方向右側、前後方向前側を視た状態で左側を車幅方向左側という。さらに、鉛直方向とは、前後方向と車幅方向とに直交する方向である。これら前後方向、車幅方向及び鉛直方向は、互いに直交する。
【0020】
図1は、本実施の形態1におけるトラクタ1の全体左側面図である。トラクタ1は、動力源としてのエンジン4が発生する動力によって、自走しながら圃場等での作業を行う農業用トラクタ等の作業車両である。トラクタ1は、前輪5と、後輪6と、上記エンジン4と、変速装置(トランスミッション)7とを備えている。このうち、前輪5は、主に操舵用の車輪、すなわち、操舵輪として設けられる。後輪6は、主に駆動用の車輪、すなわち、駆動輪として設けられる。後輪6には、機体前部のボンネット8内のエンジンルーム4a内に搭載されるエンジン4で発生した回転動力を、変速装置(トランスミッション)7で適宜減速して伝達可能になっており、後輪6は、この回転動力によって駆動力を発生する。また、この変速装置7は、エンジン4で発生した回転動力を、必要に応じて前輪5にも伝達可能になっており、この場合は、前輪5と後輪6との四輪が駆動輪となり駆動力を発生する。
【0021】
すなわち、変速装置7は、二輪駆動と四輪駆動との切り替えが可能になっており、エンジン4の回転動力を減速し、減速された回転動力を前輪5、後輪6に伝達可能である。また、トラクタ1は、機体後部に、ロータリ(図示省略)等の作業機を装着可能な連結装置9が配設されている。連結装置9は、例えば、左右のロアリンクや中央のトップリンク等による3点リンク機構に構成され、この3点リンク機構によってトラクタ1の機体後部に作業機を連結する。
【0022】
そして、左右のリフトアーム(図示せず)を油圧で回動することで、リフトロッド(図示せず)、このリフトロッドと連結しているロアリンク等を介して作業機を昇降させることができる。
【0023】
操縦席2前側のダッシュボード10からステアリングハンドル3が立設されると共に、該ダッシュボード10の左側のフロア上にクラッチペダル、ダッシュボード10の右側のフロア上に左右のブレーキペダル、この左右のブレーキペダルの右側のフロア上にアクセルペダルが配置されている。また、操縦席2の周囲にその他の各種操作ペダルや変速レバー等の各種操作レバーが配置されている。また、ステアリングハンドル3の下方左側に前後進レバー、ステアリングハンドル3の下方右側にアクセルレバー等が配置されている。
【0024】
つぎに、
図1〜5を参照しながら、本実施の形態のトラクタ1の構成および動作についてより具体的に説明する。
【0025】
なお、
図2は、本発明における実施の形態1のトラクタ1前部の部分斜視図である。
【0026】
また、
図3は、本発明における実施の形態1のトラクタ1のパワーステアリングコントローラ100周辺の部分斜視図である。
【0027】
また、
図4(a)は本発明における実施の形態1のトラクタ1のステアリングハンドル3下部の部分斜視図であり、
図4(b)は本発明に関連する発明における実施の形態のトラクタのマニュアルステアリングハンドル下部の部分斜視図である。マニュアルステアリングポスト700をマニュアルステアリングポスト用台座701に取り付ける。
【0028】
また、
図5(a)は本発明における実施の形態1のトラクタ1のステアリングハンドル3下部の背面図であり、
図5(b)は本発明における実施の形態1のトラクタ1のステアリングハンドル3下部の右側面図である。
【0029】
パワーステアリングコントローラ100の上面には、ステアリングハンドル3が接続されている。パワーステアリングコントローラ100の下面には、配管200が接続されている。パワーステアリングコントローラ100の前方には、燃料タンク18が配置されている。そして、燃料タンク18の後面には、配管200が通過する凹部18pが形成されている。
【0030】
配管200は、第一ホース201、第二ホース202、第三ホース203、第四ホース204Lおよび204R、第五ホース205、ならびに第六ホース206を有している。
【0031】
第二ホース202はパワーステアリングホースであり、第三ホース203はリターンホースであり、第四ホース204Lおよび204Rはシリンダホースである。
【0032】
直進時においては、ギヤポンプ220から出たオイルが、第一ホース201を通り、分流弁210を経由し、第二ホース202を通ってパワーステアリングコントローラ100に入り、第三ホース203を通ってギヤポンプ220に戻る。
【0033】
そして、右折実行時においては、パワーステアリングコントローラ100から出たオイルが、右側の第四ホース204Rを通って右側のシリンダ230Rに入ったり出たりする。
【0034】
なお、
図2においては右側の構成がよく見えており左側の構成が隠れているが、左側の構成は右側の構成と同様であり、左折実行時においてはパワーステアリングコントローラ100から出たオイルが左側の第四ホース204Lを通って左側のシリンダ(図示省略)に入ったり出たりする。
【0035】
さらに、ギヤポンプ220から出たオイルは、第一ホース201を通り、分流弁210を経由し、第五ホース205を通ってロータリなどの作業機の昇降シリンダ(図示省略)に入り、第六ホース206を通ってギヤポンプ220に戻る。
【0036】
燃料タンク18の後面には、第二ホース202、第三ホース203、ならびに第四ホース204Lおよび204Rなどが配置される凹部18pが形成されている。そのため、ステアリングハンドル3の位置をより前側寄りにして機体前後長の増加を抑制しつつ、油圧ホース配策を集中的に行って配管200をより収納しやすくし、燃料タンク18の容量を十分に確保することができる。
【0037】
支持パイプ部材400の形状は後述される通り緩やかに湾曲する前下がり部分を有する略U字形状であり、燃料タンク18の凹部18pの形状はそのような支持パイプ部材400の形状に連接はしないが並行するものである。そのため、小型トラクタにおける限られたスペースを有効に利用し、油圧ホース配策およびステアリング配置を良好に行うことができる。
【0038】
つぎに、
図4および5を主として参照しながら、左側のパイプ401Lおよび右側のパイプ401Rを有し、左右対称な構成を有する支持パイプ部材400について詳しく説明する。
【0039】
背面視における略逆八の字形状の左側の筆画部分が左側のパイプ401Lに対応しており、背面視における略逆八の字形状の右側の筆画部分が右側のパイプ401Rに対応している。
【0040】
支持パイプ部材400は、パワーステアリングコントローラ100を載置している台座300を支持している。そして、台座300の下面の左側および右側には、支持パイプ部材400の上端部400uが連結されている。
【0041】
支持パイプ部材400の下端部400dは、屈曲している。配管200は、屈曲している支持パイプ部材400の下端部400dの上面に接触している。
【0042】
パワーステアリングコントローラ100の取付部であるパワーステアリングブラケットは、内部が空洞であるために軽くて剛性および耐振動性が大きく、占有空間の体積が小さく、近接部材と干渉してもそのような近接部材を損傷してしまう恐れが少ないパイプフレームを利用して構成されている。そのため、組立作業者が工具を利用して組立を行う際の工具スペースを十分に確保し、配管の着脱などをより容易に行うができる。そして、配策された油圧ホースが損傷する恐れは少なく、ホース損傷を懸念することなく燃料タンク18のサイズを十分に大きくしてその容量を十分に確保することができる。さらに、トラクタが動作する際の振動による悪影響を低減することができる。
【0043】
支持パイプ部材400の形状は、背面視においては上側で大きく下側で小さい左右幅Wを有する略逆八の字形状であり、側面視においては緩やかに湾曲する前下がり部分を有する略U字形状である。
【0044】
なお、背面視における略逆八の字形状が望ましい理由は、つぎの通りである。すなわち、タンク収容を行うことが必要である上側では左右幅Wを大きくし、油圧ホース配策を行うことができれば十分である下側では左右幅Wを小さくする。すると、支持パイプ部材400のユニット全体サイズを小さくすることが困難であっても、ユニット全体サイズの増加を抑制しつつ、小型トラクタにおいても燃料タンク18の容量を十分に確保することができる。
【0045】
また、側面視における略U字形状が望ましい理由は、つぎの通りである。すなわち、パイプフレーム下端部の、配策された油圧ホースが干渉しやすい上面では、屈曲している丸パイプを利用する。すると、インシュレータなどをわざわざ貼付する必要がないので、油圧ホースが損傷する恐れを少なくしつつ、低価格化、軽量化、組立工数削減といった組立性の向上、および部品点数の削減などを促進することができる。
【0046】
なお、マニュアルステアリングポスト700も燃料タンク18の凹部18pを通過させるのが望ましい。
【0047】
つぎに、
図2および3を主として参照しながら、分流弁210について詳しく説明する。
【0048】
支持体500は、支持パイプ部材400の下端部400dを支持し、トランスミッション7に連結されている。そして、配管200の分流弁210は、支持体500の右方に配置されている。
【0049】
もちろん、分流弁210は、支持体500の左方に配置されていてもよく、支持体500の左方および右方のうちの何れか一方に配置されていればよい。
【0050】
たとえば、ロータリを支持する一本のアッパリンクおよび二本のロワリンクの三点で支持を実現する3P(Points)リンク機構とも呼ばれる、前述された3点リンク機構、およびパワーステアリングに対応するための分流弁210は、支持体500の左方および右方のうちの何れか一方に配置され、燃料タンク18の下側に配置される。そのため、油圧ホース配策をコンパクトな短距離接続によって行い、作業者用の乗務スペースを十分に確保しつつ、軽量化、組立工数削減といった組立性の向上、および部品点数の削減などを促進することができる。
【0051】
なお、分流弁210をダッシュカバー(図示省略)内に配置する構成は、ロータリなどの作業機の昇降シリンダ用のギアポンプ、およびステアリング用のギアポンプといった複数のギアポンプを併用するのではなく、本実施の形態におけるように兼用の一つのギアポンプを使用することが望ましい小型トラクタの構成において、特に有効である。
【0052】
つぎに、
図6〜8を主として参照しながら、フロントPTO(Power Take Off)シャフト600について詳しく説明する。
【0053】
なお、
図6〜8は、本発明における実施の形態1のトラクタ1のフロントPTOシャフト600周辺の部分斜視図(その一から三)である。
【0054】
ここに、
図6においてはボンネット8が図示されているが、
図7および8においてはボンネット8の少なくとも一部が内部構成の理解をより容易にするために図示されていない。
【0055】
フロントPTOシャフト600は、フロント作業機である除雪機または清掃機などへの伝動を行うためのシャフトであり、エンジン4のクランクシャフトに接続されている。
【0056】
そして、フロントPTOシャフト600は、バッテリー29のブラケットおよびラジエータ28の下側を通り、ボンネット8に設けられた切欠きからトラクタ1の前側に突出している。
【0057】
さらに、パワーステアリングコントローラ100のシリンダ、エンジン4のクランクシャフト、ボンネット8のフード、バッテリー29のブラケット、およびラジエータ28のみならず、フロントアクスルのブラケットなどは、フロントPTOシャフト600との干渉が発生しないように配置されている。
【0058】
そのため、周辺部品の変更をともなう大きな設計変更なしにフロント作業機を接続することができる。
【0059】
なお、本実施の形態のトラクタ1のステアリングハンドル3下部の構成(
図4(a)参照)は、本発明に関連する発明における実施の形態のトラクタのマニュアルステアリングハンドル下部の構成(
図4(b)参照)と、ステアリングコラム構成空間と呼ばれる占有空間という観点からは大きく変わらない。
【0060】
そのため、ダッシュカバー内の周辺部品の変更をともなう大きな現行機の設計変更なしにマニュアルステアリング仕様からパワーステアリング仕様への仕様変更を行い、前述された種々の利点を有する構成を容易に実現することができる。
【0061】
(実施の形態2)
つぎに、
図9〜20を主として参照しながら、本実施の形態のトラクタ1の構成および動作について具体的に説明する。
【0062】
なお、
図9は、本発明に関連する発明における実施の形態2のエンジン4周辺の斜視図である。
【0063】
また、
図10は、本発明に関連する発明における実施の形態2のエンジン4周辺の平面図である。
【0064】
また、
図11は、本発明に関連する発明における実施の形態2のボンネット8の背面図である。
【0065】
また、
図12(a)は本発明に関連する発明における実施の形態2のボンネット8が開いた状態の斜視図であり、
図12(b)は本発明に関連する発明における実施の形態2のボンネット8前部の断面図である。
【0066】
また、
図13(a)は本発明に関連する発明における実施の形態2のトラクタ1前部の斜視図であり、
図13(b)は本発明に関連する発明における実施の形態2のボンネット8後部の開閉支持部Sの斜視図であり、
図13(c)は本発明に関連する発明における実施の形態2のボンネット8後部の開閉支持部Sの断面図である。
【0067】
また、
図14(a)は本発明に関連する発明における実施の形態2のボンネット8が閉じた状態の右側面図であり、
図14(b)は本発明に関連する発明における実施の形態2のボンネット8が閉じた状態の部分拡大右側面図である。
【0068】
また、
図15は、本発明に関連する発明における実施の形態2のボンネット8が開いた状態の右側面図である。
【0069】
また、
図16は、本発明に関連する発明における実施の形態2の仕切板12と燃料タンク18の斜視図である。
【0070】
また、
図17は、本発明に関連する発明における実施の形態2のエンジン4の斜視図である。
【0071】
また、
図18(a)は本発明に関連する発明における実施の形態2の仕切板12と燃料タンク18とダッシュボード10の左側面図であり、
図18(b)は本発明に関連する発明における実施の形態2の仕切板と燃料タンク18とダッシュボード10の背面図である。
【0072】
また、
図19は、本発明に関連する発明における実施の形態2のラジエータ28の底面図である。
【0073】
また、
図20は、本発明に関連する発明における実施の形態2のエンジン4周辺の斜視図である。
【0074】
さて、本実施の形態のトラクタ1の構成は前述された実施の形態1のトラクタ1の構成と類似しているが、たとえば、ボンネット8に関連する構成には相違点があるので、以下ではそのような相違点について説明する。
【0075】
前記ボンネット8の支持構成及び開閉の構成について説明する。
【0076】
図9はボンネット8を取り外した状態の斜視図で、
図10はボンネット8を取り外した状態の平面図である。エンジン4を覆うボンネット8の開閉支持部Sは、機体側の支持部S1とボンネット8側の取付部S2から構成されている。機体側の支持部S1に左右の回動支点軸11L,11Rを共通の横軸芯を有するよう設ける構成とする。また、左右の回動支点軸11L,11Rにボンネット8側の後上部に構成する取付部S2を回動可能に取り付けており、ボンネット8の前側が開閉される構成である。なお、回動軸心はボンネット8の後端側上部に位置している。
【0077】
そして、平面視で前記機体側の支持部S1を避けるようにボンネット8の後端部上面中央部に切欠部Cを形成している。ボンネット8開閉の際、後端部が機体側の支持部S1に当たることがなくなる。これにより、ボンネット8の前側が大きく開くようになる。
【0078】
前記エンジンルーム4aと前記操縦席2やステアリングハンドル3などの操縦部との間を仕切板12で仕切って構成している。この仕切板12には、機体の前側に向かって膨出部12aを構成している。
【0079】
この膨出部12aは、仕切板12と一体構成であり板金で構成している。詳細には、仕切板12は下半部12dと上半部12uとからなり、このうち下半部12dは平板状を呈し、上半部12uが前記のように前方側に膨出する形状に構成され、板金材の膨出形成によって補強構成を呈し前記回動支点軸11L,11Rを介してボンネット8を安定良く支持できる。上記の膨出形成による補強構成により、部品点数が削減されて廉価な構成となる。
【0080】
前記膨出部12aは左右幅L1に構成され、膨出部12aの左側に左回動支点軸11Lを設け、膨出部12aの右側に右回動支点軸11Rを設けている。また、膨出部12aについては、仕切板12とは別部材(左右のプレートや凸状プレート)で構成して、溶接等で一体構成にしてもよい。左右のプレートを仕切板12に溶接するときには、左右幅L1を確保して、左プレートに左回動支点軸11Lを設け、右プレートに右回動支点軸11Rを設ける構成とする。凸状プレートについても左右幅L1を確保して、凸状プレートの左側に左回動支点軸11Lを設け、凸状プレートの右側に右回動支点軸11Rを設ける構成とする。上記のように、この膨出部12aが機体側の前記支持部S1に構成している。これにより、支持部S1を支持する別部材が不要となる。
【0081】
一方、ボンネット8側には、ボンネット8側の前記取付部S2が構成されているので、この取付部S2について詳細に説明する。
【0082】
図11には、ボンネット8を機体後側から見た図を示している。
図12はボンネット8が開いた状態を機体前側から見た図を示しているので、ボンネット8自体は下側から見た状態となっている。また、
図13(a)はボンネット8を機体前側から見た斜視図を示している。
【0083】
ボンネット8の上面部8aの中央後端部において、切欠部Cを形成している。この切欠部Cは、凹状に形成されている。
図13(b)には切欠部C部分の拡大図を示している。
【0084】
凹状に形成されている切欠部C部分においては、前記膨出部12aが対応すべく配置されている。即ち、膨出部12aを避けるようにボンネット8に切欠部Cが形成されている。さらに、凹状に形成されている切欠部Cの全周に亘って、折曲部C1が形成されている。
【0085】
そして、折曲部C1の右側折曲部C1Rに右取付プレート13Rが溶接で固着されている。この右取付プレート13Rには、右回動支点軸11Rが入るための凹部13Raが形成されている。また、右取付プレート13Rには、孔部13Rbが形成されている。右取付プレート13Rの凹部13Raに右回動支点軸11Rが挿入された後に、右固定プレート14Rの孔部14Raを右回動支点軸11Rに挿入し、右取付プレート13Rと右固定プレート14Rをボルトナット15Rで締付固定する構成とする。
図13(c)にこの構成の断面図を示している。左回動支点軸11Lについても、前述した右回動支点軸11Rの取り付けと同じ構成なので、説明を省略する。
【0086】
前述したように、仕切板12には、機体の前側に向かって膨出部12aを構成し、この膨出部12aの左側に左回動支点軸11Lを設け、膨出部12aの右側に右回動支点軸11Rを設けて構成している。そして、平面視で膨出部12aを避けるようにボンネット8に切欠部Cが形成されている。これにより、ボンネット8は左右の回動支点軸11L,11Rを中心に上方に向かって開けられると、左右の回動支点軸11L,11Rを支持している膨出部12aに対して、ボンネット8の後部分が当たることがないので、鉛直方向を越えてボンネット8の上面部8aが仕切板12に当たるまで回動できるようになる。ただし、
図15に示すように、ボンネット8が略鉛直方向に開いた状態で、固定用ロッド16で固定支持する構成とする。
図14にはボンネット8が閉じた状態を示している。
【0087】
図12と
図15に示すように、固定用ロッド16はボンネット8に形成される孔36に挿入されており、この挿入部と固定用ロッド16の他端側(機体前側)に向かう部分16a部との間の角度K1を鈍角に構成することで、ボンネット8の開放状態を広くする構成としている。また、固定用ロッド16には切欠部16bが形成されており、固定用ロッド16がボンネット8に形成される孔36に挿入されたときにおいて、切欠部16bが孔36に掛かることで、固定用ロッド16は外れにくくなる。
【0088】
ボンネット8に形成される孔36は、ボンネット8を構成する上部ボンネット8uとサイドボンネット8sを連結するフランジ8fに形成されているので、ボンネット8に孔36を形成するための別部材が不要となる。
【0089】
また、固定用ロッド16の他端側(機体前側)においては、前仕切板31の孔31aに挿入されている。この前仕切板31の孔31aは、固定用ロッド16の直径の約1.5倍の直径孔に形成されている。これにより、固定用ロッド16の上下、前後、左右の動きの自由度が大きくなるので、取り扱いが容易となる。そして、固定用ロッドが前仕切板31の孔31aに挿入される部分においても、固定用ロッド16の曲げが鈍角に形成されているので、取り扱いが容易となる。
【0090】
また、固定用ロッド16の形成される角度K2で、ボンネット8が開いたときの角度を決めることができる。
【0091】
図10の平面図には、固定用ロッド16を使用しないときの収納状態も示されている。固定用ロッド16は、樹脂材からなるエアクリーナダクト37を上側から押さえるように収納されているので、エアクリーナダクト37の振動を抑制できる。また、エアクリーナダクト37は樹脂材で構成されているので、固定用ロッド16自体の振動も抑制できる。
【0092】
エアクリーナダクト37は、外気をエアクリーナ収納ケース1内に送るものである。
【0093】
また、前仕切板31には樹脂材からなる環状の係止体38が取り付けられており、この環状の係止体38に固定用ロッド16を嵌め込んで固定用ロッド16を収納して固定する構成としている。
【0094】
また、ライトカバー42とライトグリル43を樹脂材で一体構成としているので、部品点数が少なく構成できる。
【0095】
また、ボンネット8の前側の下部においては、バネ板34が取り付けられており、ボンネット8を下方に下げて閉じると、バネ板34がロックバー35に係止される。
図12(b)にはバネ板34がロックバー35に係止している状態を示している。バネ板34は矢印Y1方向に常時戻るような作用をしているので、バネ板34がロックバー35から外れることはない。また、バネ板34を手で持って矢印Y2方向に力を付勢すると、バネ板34がロックバー35から外れてボンネット8は上昇可能となる。
【0096】
前記バネ板34の両側には圧縮バネ44L,44Rを設けており、ボンネット8を閉じたときには、左右の圧縮バネ44L,44Rが前部プレート44(
図10参照)に当接して、ある程度圧縮される状態となるので、バネ板34がロックバー35に係止させる力が強くなる。これにより、ボンネット8は閉じた状態で確実に保持される。
【0097】
図16は左斜め後方から燃料タンク18を見た図である。
図16と
図9に示すように、仕切板12の後側に燃料タンク18を取り付ける構成としている。これにより、燃料タンク18を支持する別部材が不要となる。
【0098】
燃料タンク18のフランジ部18aと仕切板12との間をボルトナット19で固定させる構成としている。この固定部分は、左側2箇所と右側2箇所に構成されている。
図16には、左側2箇所のボルトナット19が図示されている。
図9には右側2箇所のボルトナット19が図示されている。
【0099】
燃料タンク18の中央前側部分は、燃料タンク凸部18bのように構成されている。そして、燃料タンク18の一部分である燃料タンク凸部18bは、仕切板12の前記膨出部12a部分の後側に入り込む構成としている。これにより、燃料の容量が増大する。
【0100】
前記仕切板12は、
図16に示すように、下半部12dの左右脚状部12e,12e部のボルト締結用孔50,50にボルトを挿通して図外の機体側プレートに装着している。なお、仕切板12の下半部12d側左右端部には補強締結用のブラケット12f,12fを備え適宜に固定している。上記車体側プレートは、エンジン4フレーム後部と変速装置7のケースとを剛体的に連結する中間プレート51を指している。
【0101】
仕切板12の膨出部12aについて、図例では、前記左右回転軸11L,11R装着用の第1膨出部12afに加えてこれに連続するようやや幅広の第2膨出部12asを形成して下半部12dに連続する形態となっている。これらの特に膨出形状は、周辺機器との関係において極力燃料タンク18容量を確保すべく形成される。
【0102】
燃料タンク18の前方凸部18bには、その上面に給油口18cが形成され、その口部に燃料キャップ20が設けられている。給油口18cの円筒状起立部周囲には、燃料受け皿21が設けられる。この燃料受け皿21は、ゴム製で成型され、外周に2重構造に折り返し状係止溝21aを形成し、前記仕切板12の第1膨出部12afと第2膨出部12asの各上縁に嵌合させて固定している。また、外周側の浅底部分と給油口18c側に近い部分を深底部分に形成し、給油時に零れてくる燃料や給油口18cからオーバーフローする燃料を受け止めることができる。またこれに加えて燃料受け皿21は、ボンネット8の切欠部Cから燃料タンク18が直接見えないようにすることができる。燃料タンク18については、板金で構成してもよいし、樹脂で構成してもよい。
【0103】
また、
図15と
図16に示すように、仕切板12の膨出部12a部分の下側においては、エンジン4のシリンダヘッド4bとの間に前支持ステー22が設けられている。これにより、仕切板12や燃料タンク18の振動が抑制され、燃料タンク18内に燃料が満載されたときの荷重が支持されるようになる。
【0104】
図16に示すように、仕切板12の下部においては、左側に2個の孔32が形成され、右側にも2個の孔32が形成されている。そして、
図18に示すように、仕切板12の下部はダッシュボード10の下部に対して、ボルトナット33で固定されている。これにより、仕切板12の支持が強固になる。
【0105】
図15に示すように、ボンネット8が略鉛直方向に回動すると、エアクリーナ収納ケース17の略全体が視認可能な状態となる。
図9、
図10に示すように、エアクリーナ収納ケース17は仕切板12の膨出部12aの前方に配置されている。そして、エアクリーナ収納ケース17は円筒形状であり、その長手方向は機体の左右方向に配置されている。エアクリーナ収納ケース17内にはエアクリーナエレメント17bが収納されている。エアクリーナ収納ケース17の右側には収納蓋17aが設けられており、この収納蓋17aを外すことで、機体の右側からエアクリーナ収納ケース17内のエアクリーナエレメント17bの着脱ができる。
【0106】
前述したように、ボンネット8が略鉛直方向に回動すると、エアクリーナ収納ケース17の略全体が視認可能となるので、エアクリーナ収納ケース17の収納蓋17aの着脱と、エアクリーナ収納ケース17内のエアクリーナエレメント17bの着脱については、ボンネット8に邪魔されることなく容易にできるようになる。また、エアクリーナ収納ケース17の吸気口17cは、機体前方を向いているので、エアクリーナダクト37との接続が容易となる。
【0107】
図17に示すように、エアクリーナ収納ケース17はエンジン4の上部に取り付けられている。
図17は、機体前方の斜め右方向から見た図である。エアクリーナ収納ケース17の前側にエアクリーナ支持ステー23がボルト24で取り付けられている。そして、エアクリーナ支持ステー23の下は、シリンダヘッド4bの前側に対してボルト25で取り付けられている構成である。
【0108】
また、エアクリーナ支持ステー23には孔23aが形成されている。エアクリーナ支持ステー23からエアクリーナ収納ケース17が外されている場合には、エアクリーナ支持ステー23の孔23aは、エンジン4を吊り下げて移動させるときのハンガーに代用できる。
【0109】
図9、
図10、
図12に示すように、仕切板12の膨出部12a部分の左側には、マフラー26が配置されており、機体の下方に向かって排気管27が取り付けられている。エアクリーナ収納ケース17の前方には、前仕切板31を介してラジエータ28が搭載され、ラジエータ28の前方にはバッテリー29が搭載されている。バッテリー29の左側には、エンジン4の冷却水サブタンク30が搭載されている。
【0110】
図19はラジエータ28を下側から見た図である。ラジエータ28内の冷却水を排出するドレン口41にドレンホース39が取り付けられている。ドレンホース39の他端側は、突起部40に挿入されている。これにより、ドレンホース39を突起部40から外すと、ラジエータ28内の冷却水が容易に排出できる。
【0111】
前述された本発明に関連する発明における実施の形態2の構成は、燃料タンクの支持構成を簡単化して、ボンネットの後部を有効利用して燃料タンクを配置構成した場合にその支持構造が遮熱板との並立とも重なって複雑化するという欠点を解消しようとする。
【0112】
即ち、本発明に関連する第一の発明は、エンジン(4)を覆うボンネット(8)の後部に、車体側プレート(51)を介して仕切板(12)を立設し、
該仕切板(12)に膨出部(12a)を設け、
該仕切板(12)の後方には燃料タンク(18)を、この燃料タンク(18)の前方に膨出形成する凸部(18b)が仕切板(12)の膨出部(12a)に進入すべく配置し、該燃料タンク(18)を仕切板(12)に固着し、膨出部(12a)に位置する前記凸部(18b)に燃料供給口(18c)を配置してなる作業車両とする。
【0113】
このように構成すると、仕切板(12)の後方に燃料タンク(18)を仕切板の膨出部(12a)に向けて凸部(18b)が進入することができ、タンク容量の拡大確保が図れる。
【0114】
本発明に関連する第2の発明は、本発明に関連する第1の発明において、仕切板(12)を上半部(12u)と下半部(12d)からなる板金材とし、該上半部(12u)に第1膨出部(12af)とこの第1膨出部(12af)に連続してやや幅広の第2膨出部(12as)を形成してなる。
【0115】
板金材を膨出形成することによって、燃料タンク(18)の支持構成部分の剛体化が図れる。
【0116】
本発明に関連する第3の発明は、本発明に関連する第1又は第2の発明において、膨出部(12a)の上縁に燃料受け皿(21)に形成する係止溝(21a)を嵌合して支持する構成とする。燃料受け皿(21)に燃料供給口(18c)のオーバーフローした燃料を受け止める。
【0117】
本発明に関連する第1の発明は、仕切板の膨出部(12a)に向けて凸部(18b)が進入することができ、タンク容量の拡大確保が図れる。
【0118】
本発明に関連する第2の発明は、本発明に関連する第1の発明の効果に加え、板金材を膨出形成することによって、燃料タンク(18)の支持構成部分の剛体化が図れるため、補強構造を少なくし構成の簡単化が図れる。
【0119】
本発明に関連する第3の発明は、本発明に関連する第1又は第2の発明の効果に加え、膨出部(12a)の上縁に燃料受け皿(21)に形成する係止溝(21a)を嵌合して支持するため、取付構成を簡単化できる。
【0120】
前述された本実施の形態の構成は、トラクタ等の農作業機を始め一般車両にも利用可能である。