特許第6489278号(P6489278)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6489278プレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6489278
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】プレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造
(51)【国際特許分類】
   E01D 19/12 20060101AFI20190318BHJP
【FI】
   E01D19/12
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2018-234393(P2018-234393)
(22)【出願日】2018年12月14日
(62)【分割の表示】特願2016-165675(P2016-165675)の分割
【原出願日】2016年8月26日
【審査請求日】2018年12月14日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100080458
【弁理士】
【氏名又は名称】高矢 諭
(74)【代理人】
【識別番号】100076129
【弁理士】
【氏名又は名称】松山 圭佑
(74)【代理人】
【識別番号】100144299
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 崇
(74)【代理人】
【識別番号】100150223
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 修三
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕明
(72)【発明者】
【氏名】中山 敦雄
【審査官】 苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−8410(JP,A)
【文献】 特開2004−249643(JP,A)
【文献】 特開2012−62664(JP,A)
【文献】 特開2006−124923(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/61406(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01D 1/00〜 24/00
E01C 1/00〜 17/00
E04B 5/00〜 5/48
E04C 5/00〜 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャストコンクリート床版の側端部の接合端面に上下に間隔を開けて埋め込まれていて、前記接合端面から前記プレキャストコンクリート床版の床板面と略平行な方向に突出するように配置されている上段継ぎ手鉄筋および下段継ぎ手鉄筋と、前記接合端面が対向するように配置されている前記プレキャストコンクリート床版の前記接合端面同士の間を充填する間詰め材と、を有していて、前記接合端面が対向するように配置されている前記プレキャストコンクリート床版同士を接続するプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造であって、
前記接合端面が対向するように配置されている前記プレキャストコンクリート床版の前記上段継ぎ手鉄筋同士は、略同一の高さ位置に所定の間隔を開けて配置されており、
前記接合端面が対向するように配置されている前記プレキャストコンクリート床版の前記下段継ぎ手鉄筋同士は、略同一の高さ位置に所定の間隔を開けて配置されており、
突出する前記上段継ぎ手鉄筋の先端には、上段ずれ止め部材がそれぞれ設けられており、
前記上段ずれ止め部材は、突出する前記上段継ぎ手鉄筋の先端にお互いの中心軸が略一致するように接合された上段軸部と、自身が接合された前記上段継ぎ手鉄筋の長手方向と直交する水平方向から見て、当該上段継ぎ手鉄筋が突出する方向とは逆の方向に斜め下方に延びる上段内面を当該上段継ぎ手鉄筋の突出する方向とは逆の側に有する上段係止部と、を有してなり、
前記上段軸部と前記上段係止部とは一体化されており、
突出する前記下段継ぎ手鉄筋の先端には、下段ずれ止め部材がそれぞれ設けられており、
前記下段ずれ止め部材は、突出する前記下段継ぎ手鉄筋の先端にお互いの中心軸が略一致するように接合された下段軸部と、自身が接合された前記下段継ぎ手鉄筋の長手方向と直交する水平方向から見て、当該下段継ぎ手鉄筋が突出する方向とは逆の方向に斜め上方に延びる下段内面を当該下段継ぎ手鉄筋の突出する方向とは逆の側に有する下段係止部と、を有してなり、
前記下段軸部と前記下段係止部とは一体化されており、
さらに、前記上段継ぎ手鉄筋の下方に隣接して配置されていて前記上段継ぎ手鉄筋の長手方向と略直交する略水平方向に延びる上段直交鉄筋が前記上段係止部同士の間に前記上段係止部から間隔を空けて配置されており、
前記下段継ぎ手鉄筋の上方に隣接して配置されていて前記下段継ぎ手鉄筋の長手方向と略直交する略水平方向に延びる下段直交鉄筋が前記下段係止部同士の間に前記下段係止部から間隔を空けて配置されており、
前記プレキャストコンクリート床版の前記接合端面から突出している前記上段継ぎ手鉄筋の部位、前記プレキャストコンクリート床版の前記接合端面から突出している前記下段継ぎ手鉄筋の部位、前記上段ずれ止め部材、前記下段ずれ止め部材、前記上段直交鉄筋、および前記下段直交鉄筋の周囲は、前記間詰め材に覆われていることを特徴とするプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造。
【請求項2】
前記上段継ぎ手鉄筋の中心軸を含む鉛直面で切断した切断面において、当該上段継ぎ手鉄筋に接合されている前記上段ずれ止め部材の前記上段係止部の前記上段内面の当該上段継ぎ手鉄筋の中心軸とのなす角は45°以上85°以下であり、前記下段継ぎ手鉄筋の中心軸を含む鉛直面で切断した切断面において、当該下段継ぎ手鉄筋に接合されている前記下段ずれ止め部材の前記下段係止部の前記下段内面の当該下段継ぎ手鉄筋の中心軸とのなす角は45°以上85°以下であることを特徴とする請求項1に記載のプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造。
【請求項3】
前記上段ずれ止め部材には、自身が接合されている前記上段継ぎ手鉄筋の上縁よりも上方に位置する部位はなく、前記下段ずれ止め部材には、自身が接合されている前記下段継ぎ手鉄筋の下縁よりも下方に位置する部位はないことを特徴とする請求項1または2に記載のプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造。
【請求項4】
前記上段係止部および前記下段係止部の形状は、前記上段軸部及び前記下段軸部の長手方向からみた形状が略正方形状であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造。
【請求項5】
前記上段ずれ止め部材は鋳鉄または鋳鋼で一体的に形成されており、前記下段ずれ止め部材は鋳鉄または鋳鋼で一体的に形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造。
【請求項6】
前記上段ずれ止め部材の前記上段軸部は、突出する前記上段継ぎ手鉄筋の前記先端にフラッシュ溶接で接合されており、前記下段ずれ止め部材の前記下段軸部は、突出する前記下段継ぎ手鉄筋の前記先端にフラッシュ溶接で接合されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造に関し、詳細には、重ね継ぎ手構造よりも接合部の長さを短くでき、かつ、ループ鉄筋継ぎ手構造よりも床版厚を薄くでき、さらに、現場での配筋作業の負担も少なくすることができるプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造に関する。
【背景技術】
【0002】
プレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造の1つに重ね継ぎ手構造がある。重ね継ぎ手構造においては、一般的に鉄筋径の30倍程度の長さを重ね継ぎ手長さとして確保することが必要であり、重ね継ぎ手構造は接合部の長さが長くなりやすい。
【0003】
重ね継ぎ手構造よりも接合部の長さを短くできるプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造として、図20に示されるようなループ鉄筋継ぎ手構造100がある(例えば、特許文献1(13ページ、図16)参照)。ループ鉄筋継ぎ手構造100は、橋軸方向に隣り合うプレキャストコンクリート床版102同士を橋軸方向に連結する継ぎ手構造であり、ループ鉄筋104と、補強鉄筋106と、間詰めコンクリート108とを有して構成されている。補強鉄筋106は橋軸直角方向に延びる鉄筋であり、補強鉄筋106の一部は、ループ鉄筋104と直交するように、ループ鉄筋104の内側に挿入配置されている。
【0004】
しかし、ループ鉄筋継ぎ手構造100においては、鉄筋を曲げ加工してループ鉄筋104とするため、定められている鉄筋の最小曲げ半径により床版の最小厚が決まってしまう。このため、重ね継ぎ手構造の場合よりもループ鉄筋継ぎ手構造100を用いた床版は厚さが厚くなりやすい。
【0005】
また、ループ鉄筋継ぎ手構造100において、ループ鉄筋104内にループ鉄筋104と直交するように配置される補強鉄筋106は、プレキャストコンクリート床版102を所定の設置場所に設置した後に、橋軸直角方向から見てループ鉄筋104同士が重なる閉断面の内部に挿入する必要がある。このため、現場での配筋作業に手間が多くかかる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−62664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであって、重ね継ぎ手構造よりも接合部の長さを短くでき、かつ、ループ鉄筋継ぎ手構造よりも床版厚を薄くでき、さらに、現場での配筋作業の負担も少なくすることができるプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下のプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造により、前記課題を解決したものである。
【0009】
即ち、本発明に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造の第1の態様は、プレキャストコンクリート床版の側端部の接合端面に上下に間隔を開けて埋め込まれていて、前記接合端面から前記プレキャストコンクリート床版の床板面と略平行な方向に突出するように配置されている上段継ぎ手鉄筋および下段継ぎ手鉄筋と、前記接合端面が対向するように配置されている前記プレキャストコンクリート床版の前記接合端面同士の間を充填する間詰め材と、を有していて、前記接合端面が対向するように配置されている前記プレキャストコンクリート床版同士を接続するプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造であって、前記接合端面が対向するように配置されている前記プレキャストコンクリート床版の前記上段継ぎ手鉄筋同士は、略同一の高さ位置に所定の間隔を開けて配置されており、前記接合端面が対向するように配置されている前記プレキャストコンクリート床版の前記下段継ぎ手鉄筋同士は、略同一の高さ位置に所定の間隔を開けて配置されており、突出する前記上段継ぎ手鉄筋の先端には、上段ずれ止め部材がそれぞれ設けられており、前記上段ずれ止め部材は、突出する前記上段継ぎ手鉄筋の先端にお互いの中心軸が略一致するように接合された上段軸部と、自身が接合された前記上段継ぎ手鉄筋の長手方向と直交する水平方向から見て、当該上段継ぎ手鉄筋が突出する方向とは逆の方向に斜め下方に延びる上段内面を当該上段継ぎ手鉄筋の突出する方向とは逆の側に有する上段係止部と、を有してなり、前記上段軸部と前記上段係止部とは一体化されており、突出する前記下段継ぎ手鉄筋の先端には、下段ずれ止め部材がそれぞれ設けられており、前記下段ずれ止め部材は、突出する前記下段継ぎ手鉄筋の先端にお互いの中心軸が略一致するように接合された下段軸部と、自身が接合された前記下段継ぎ手鉄筋の長手方向と直交する水平方向から見て、当該下段継ぎ手鉄筋が突出する方向とは逆の方向に斜め上方に延びる下段内面を当該下段継ぎ手鉄筋の突出する方向とは逆の側に有する下段係止部と、を有してなり、前記下段軸部と前記下段係止部とは一体化されており、さらに、前記上段継ぎ手鉄筋の下方に隣接して配置されていて前記上段継ぎ手鉄筋の長手方向と略直交する略水平方向に延びる上段直交鉄筋が前記上段係止部同士の間に配置されており、前記下段継ぎ手鉄筋の上方に隣接して配置されていて前記下段継ぎ手鉄筋の長手方向と略直交する略水平方向に延びる下段直交鉄筋が前記下段係止部同士の間に配置されており、前記プレキャストコンクリート床版の前記接合端面から突出している前記上段継ぎ手鉄筋の部位、前記プレキャストコンクリート床版の前記接合端面から突出している前記下段継ぎ手鉄筋の部位、前記上段ずれ止め部材、前記下段ずれ止め部材、前記上段直交鉄筋、および前記下段直交鉄筋の周囲は、前記間詰め材に覆われていることを特徴とするプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造である。
【0010】
ここで、本願において、部材の中心軸とは、当該部材の長手方向と直交する当該部材の各断面の図心を連ねて形成される線のことである。
【0011】
前記上段継ぎ手鉄筋の中心軸を含む鉛直面で切断した切断面において、当該上段継ぎ手鉄筋に接合されている前記上段ずれ止め部材の前記上段係止部の前記上段内面の当該上段継ぎ手鉄筋の中心軸とのなす角は45°以上85°以下であり、前記下段継ぎ手鉄筋の中心軸を含む鉛直面で切断した切断面において、当該下段継ぎ手鉄筋に接合されている前記下段ずれ止め部材の前記下段係止部の前記下段内面の当該下段継ぎ手鉄筋の中心軸とのなす角は45°以上85°以下であることが好ましい。
【0012】
本発明に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造の第2の態様は、プレキャストコンクリート床版の側端部の接合端面に上下に間隔を開けて埋め込まれていて、前記接合端面から前記プレキャストコンクリート床版の床板面と略平行な方向に突出するように配置されている上段継ぎ手鉄筋および下段継ぎ手鉄筋と、前記接合端面が対向するように配置されている前記プレキャストコンクリート床版の前記接合端面同士の間を充填する間詰め材と、を有していて、前記接合端面が対向するように配置されている前記プレキャストコンクリート床版同士を接続するプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造であって、前記接合端面が対向するように配置されている前記プレキャストコンクリート床版の前記上段継ぎ手鉄筋同士は、略同一の高さ位置に所定の間隔を開けて配置されており、前記接合端面が対向するように配置されている前記プレキャストコンクリート床版の前記下段継ぎ手鉄筋同士は、略同一の高さ位置に所定の間隔を開けて配置されており、突出する前記上段継ぎ手鉄筋の先端には、上段ずれ止め部材がそれぞれ設けられており、前記上段ずれ止め部材は、突出する前記上段継ぎ手鉄筋の先端にお互いの中心軸が略一致するように接合された上段軸部と、当該上段継ぎ手鉄筋の長手方向と略直交するように下方に延びる上段直交内面を当該上段継ぎ手鉄筋の突出する方向とは逆の側に有する上段係止部と、を有してなり、前記上段軸部と前記上段係止部とは一体化されており、突出する前記下段継ぎ手鉄筋の先端には、下段ずれ止め部材がそれぞれ設けられており、前記下段ずれ止め部材は、突出する前記下段継ぎ手鉄筋の先端にお互いの中心軸が略一致するように接合された下段軸部と、当該下段継ぎ手鉄筋の長手方向と略直交するように上方に延びる下段直交内面を当該下段継ぎ手鉄筋の突出する方向とは逆の側に有する下段係止部と、を有してなり、前記下段軸部と前記下段係止部とは一体化されており、さらに、前記上段継ぎ手鉄筋の下方に隣接して配置されていて前記上段継ぎ手鉄筋の長手方向と略直交する略水平方向に延びる上段直交鉄筋が前記上段係止部同士の間に配置されており、前記下段継ぎ手鉄筋の上方に隣接して配置されていて前記下段継ぎ手鉄筋の長手方向と略直交する略水平方向に延びる下段直交鉄筋が前記下段係止部同士の間に配置されており、前記プレキャストコンクリート床版の前記接合端面から突出している前記上段継ぎ手鉄筋の部位、前記プレキャストコンクリート床版の前記接合端面から突出している前記下段継ぎ手鉄筋の部位、前記上段ずれ止め部材、前記下段ずれ止め部材、前記上段直交鉄筋、および前記下段直交鉄筋の周囲は、前記間詰め材に覆われていることを特徴とするプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造である。
【0013】
前記上段ずれ止め部材には、自身が接合されている前記上段継ぎ手鉄筋の上縁よりも上方に位置する部位はなく、前記下段ずれ止め部材には、自身が接合されている前記下段継ぎ手鉄筋の下縁よりも下方に位置する部位はないことが好ましい。
【0014】
ここで、上段継ぎ手鉄筋が異形鉄筋の場合、上段継ぎ手鉄筋の上縁は、表面に設けられた凸部も含めて考えた上縁のことであり、下段継ぎ手鉄筋が異形鉄筋の場合、下段継ぎ手鉄筋の下縁は、表面に設けられた凸部も含めて考えた下縁のことである。
【0015】
前記上段係止部および前記下段係止部の形状は、例えば、板状としてもよい。
【0016】
前記上段ずれ止め部材の前記上段係止部は、該上段ずれ止め部材が接合されている上段継ぎ手鉄筋が突出する方向の側に、自身が接合された前記上段継ぎ手鉄筋の長手方向と直交する水平方向から見て、該上段継ぎ手鉄筋が突出する方向に斜め下方に延びる上段外面を有しており、前記下段ずれ止め部材の前記下段係止部は、該下段ずれ止め部材が接合されている下段継ぎ手鉄筋が突出する方向の側に、自身が接合された前記下段継ぎ手鉄筋の長手方向と直交する水平方向から見て、該下段継ぎ手鉄筋が突出する方向に斜め上方に延びる下段外面を有していることが好ましい。
【0017】
前記上段ずれ止め部材は鋳鉄または鋳鋼で一体的に形成されており、前記下段ずれ止め部材は鋳鉄または鋳鋼で一体的に形成されていることが好ましい。
【0018】
前記上段ずれ止め部材の前記上段軸部は、突出する前記上段継ぎ手鉄筋の前記先端にフラッシュ溶接で接合されていてもよく、前記下段ずれ止め部材の前記下段軸部は、突出する前記下段継ぎ手鉄筋の前記先端にフラッシュ溶接で接合されていてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造によれば、重ね継ぎ手構造よりも接合部の長さを短くでき、かつ、ループ鉄筋継ぎ手構造よりも床版厚を薄くでき、さらに、現場での配筋作業の負担も少なくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造10を斜め上方から見た斜視図
図2図1から上段直交鉄筋20および下段直交鉄筋22を除いて描いた斜視図
図3】前記継ぎ手構造10を橋軸直角方向から見た側面図
図4】前記継ぎ手構造10において、上段継ぎ手鉄筋12の先端部および上段ずれ止め部材16を上段継ぎ手鉄筋12の中心軸12Aを通る鉛直面で切断して得られる断面を模式的に示す鉛直断面図
図5】前記継ぎ手構造10において、上段ずれ止め部材16を上段軸部16Aの長手方向から見た正面図
図6】前記継ぎ手構造10において、下段継ぎ手鉄筋14の先端部および下段ずれ止め部材18を下段継ぎ手鉄筋14の中心軸14Aを通る鉛直面で切断して得られる断面を模式的に示す鉛直断面図
図7】前記継ぎ手構造10において、下段ずれ止め部材18を下段軸部18Aの長手方向から見た正面図
図8】前記継ぎ手構造10の構築に際して、上段直交鉄筋20および下段直交鉄筋22を現場で配筋する前の状態を模式的に示す橋軸直角方向から見た側面図
図9】前記継ぎ手構造10の上段ずれ止め部材16の上段係止部16Bの第1変形例(上段ずれ止め部材26の上段係止部26B)を模式的に示す鉛直断面図
図10】前記継ぎ手構造10の下段ずれ止め部材18の下段係止部18Bの第1変形例(下段ずれ止め部材28の下段係止部28B)を模式的に示す鉛直断面図
図11】前記継ぎ手構造10の上段ずれ止め部材16の上段係止部16Bの第2変形例の具体例((a)上段係止部30A、(b)上段係止部30B)を示す正面図(上段ずれ止め部材16の上段軸部16Aの長手方向から見た正面図)
図12】前記継ぎ手構造10の上段ずれ止め部材16の上段係止部16Bの第2変形例の具体例((a)上段係止部32A、(b)上段係止部32B、(c)上段係止部32C)を示す正面図(上段ずれ止め部材16の上段軸部16Aの長手方向から見た正面図)
図13】前記継ぎ手構造10の上段ずれ止め部材16の上段係止部16Bの第2変形例の具体例((a)上段係止部34A、(b)上段係止部34B)を示す正面図(上段ずれ止め部材16の上段軸部16Aの長手方向から見た正面図)
図14】前記継ぎ手構造10の上段ずれ止め部材16の上段係止部16Bの第2変形例の具体例((a)上段係止部36A、(b)上段係止部36B)を示す正面図(上段ずれ止め部材16の上段軸部16Aの長手方向から見た正面図)
図15】本発明の第2実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造40を斜め上方から見た斜視図
図16図15から上段直交鉄筋20および下段直交鉄筋22を除いて描いた斜視図
図17】前記継ぎ手構造40を橋軸直角方向から見た側面図
図18】前記継ぎ手構造40において、上段継ぎ手鉄筋12の先端部および上段ずれ止め部材42を上段継ぎ手鉄筋12の中心軸12Aを通る鉛直面で切断して得られる断面を模式的に示す鉛直断面図
図19】前記継ぎ手構造40において、下段継ぎ手鉄筋14の先端部および下段ずれ止め部材44を下段継ぎ手鉄筋14の中心軸14Aを通る鉛直面で切断して得られる断面を模式的に示す鉛直断面図
図20】ループ鉄筋継ぎ手構造100を用いた従来の床版相互の連結構造を示す橋軸直角方向から見た縦断側面図
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0022】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造10を斜め上方から見た斜視図であり、図2は、図1から上段直交鉄筋20および下段直交鉄筋22を除いて描いた斜視図であり、図3は、本発明の第1実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造10を橋軸直角方向から見た側面図である。ただし、図示の都合上、図1および図2においては、間詰めコンクリート24は描いていない。また、図3では、間詰めコンクリート24の内部の部材も実線で描いている。
【0023】
本発明の第1実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造10(以下、単に「継ぎ手構造10」と記すことがある。)は、橋軸方向に隣り合って配置されているプレキャストコンクリート床版50同士を連結する継ぎ手構造であり、上段継ぎ手鉄筋12および下段継ぎ手鉄筋14と、上段継ぎ手鉄筋12の先端に設けられた上段ずれ止め部材16と、下段継ぎ手鉄筋14の先端に設けられた下段ずれ止め部材18と、上段直交鉄筋20および下段直交鉄筋22と、間詰めコンクリート24とを有して構成されている。
【0024】
橋軸方向に隣り合って配置されているプレキャストコンクリート床版50は、側端部の接合端面52が対向するように配置されており、対向する接合端面52の間には間詰めコンクリート24が充填されており、プレキャストコンクリート床版50の接合端面52から突出している上段継ぎ手鉄筋12の部位、プレキャストコンクリート床版50の接合端面52から突出している下段継ぎ手鉄筋14の部位、上段ずれ止め部材16、下段ずれ止め部材18、上段直交鉄筋20、および下段直交鉄筋22の周囲は、間詰めコンクリート24で覆われている。
【0025】
プレキャストコンクリート床版50の側端部の接合端面52には、上段継ぎ手鉄筋12および下段継ぎ手鉄筋14が略橋軸方向に(プレキャストコンクリート床版50の床版面と略平行な方向に)突出するように埋め込まれており、上段継ぎ手鉄筋12および下段継ぎ手鉄筋14は略鉛直方向に上下に間隔(例えば、100mm)を開けて配置されている。また、上段継ぎ手鉄筋12および下段継ぎ手鉄筋14は、表面に凹凸を備えた異形鉄筋である。
【0026】
接合端面52が対向するように隣り合って配置されているプレキャストコンクリート床版50の上段継ぎ手鉄筋12同士は、略同一の高さ位置に配置されており、所定の間隔(例えば、250mm)で配置されている。
【0027】
また、接合端面52が対向するように隣り合って配置されているプレキャストコンクリート床版50の下段継ぎ手鉄筋14同士は、略同一の高さ位置に配置されており、所定の間隔(例えば、250mm)で配置されている。
【0028】
上段継ぎ手鉄筋12の先端には、上段ずれ止め部材16が設けられている。図4は、上段継ぎ手鉄筋12の先端部および上段ずれ止め部材16を上段継ぎ手鉄筋12の中心軸12Aを通る鉛直面で切断して得られる断面を模式的に示す鉛直断面図である。
【0029】
図4に示すように、上段ずれ止め部材16は、上段軸部16Aと、上段係止部16Bとを有してなる。上段軸部16Aと上段係止部16Bとは一体化されている。
【0030】
上段軸部16Aは、上段継ぎ手鉄筋12の外径(凹部の外径)と略同一の外径を有しており、突出する上段継ぎ手鉄筋12の先端に、お互いの中心軸が略一致するように接合されている。この接合は、例えば、フラッシュ溶接を用いて行うことができる。フラッシュ溶接を用いて得られる接合部は接合前よりも若干径が大きくなるが、上段継ぎ手鉄筋12の凸部の径程度以下に抑えることで、フラッシュ溶接を用いて得られる接合部は上段継ぎ手鉄筋12と同等のかぶりを確保できる。
【0031】
上段係止部16Bは、上段継ぎ手鉄筋12の長手方向と直交する水平方向(橋軸直角方向)から見て、当該上段係止部16Bを有する上段ずれ止め部材16が設けられている上段継ぎ手鉄筋12が突出する方向とは逆の方向に斜め下方に延びる上段内面16B1を当該上段継ぎ手鉄筋12の突出する方向とは逆の側に有する。
【0032】
上段ずれ止め部材16は、上段内面16B1を備えることにより、上段内面16B1が支圧抵抗面となって、上段継ぎ手鉄筋12が間詰めコンクリート24から引き抜けることを防止する。また、上段内面16B1は、上段係止部16Bを有する上段ずれ止め部材16が設けられている上段継ぎ手鉄筋12が突出する方向とは逆の方向に斜め下方に延びる面であるので、間詰めコンクリート24に効果的に係止して、プレキャストコンクリート床版50の接合耐力をさらに向上させるとともに、上段継ぎ手鉄筋12のはらみ出しに効果的に抵抗する。
【0033】
また、上段係止部16Bの上段内面16B1と、上段内面16B1とは反対側(当該上段係止部16Bを有する上段ずれ止め部材16が設けられている上段継ぎ手鉄筋12が突出する方向の側)の上段外面16B2とは略平行になっており、上段係止部16Bの形状は板状である。
【0034】
上段継ぎ手鉄筋12の中心軸12Aを含む鉛直面で切断して得られる切断面において、当該上段継ぎ手鉄筋12に接合されている上段ずれ止め部材16の上段係止部16Bの上段内面16B1の当該上段継ぎ手鉄筋12の中心軸12Aとのなす角αは、支圧抵抗面を確保する点、間詰めコンクリート24に効果的に係止する点、および上段継ぎ手鉄筋12のはらみ出しに効果的に抵抗できる点で、45°以上85°以下であることが好ましい。
【0035】
ここで、上段継ぎ手鉄筋12の中心軸12Aを含む鉛直面で切断して得られる切断面において、上段係止部16Bの上段内面16B1の上段継ぎ手鉄筋12の中心軸12Aとのなす角は、図4の角度αのことを意味する。
【0036】
図5は、上段ずれ止め部材16を上段軸部16Aの長手方向から見た正面図である。図5に示すように、上段係止部16Bの形状(上段軸部16Aの長手方向から見た形状)は略正方形状であり、その1辺の長さは30mm〜40mm程度である。略正方形状の上段係止部16Bの1辺の長さを30mm〜40mm程度にすることにより、間詰めコンクリート24に係止するための支圧抵抗面を確保することができるとともに、間詰めコンクリート24を充填する際の充填性も良好にすることができる。
【0037】
また、図5に示すように、上段係止部16Bは、上段軸部16Aの上縁よりも上方に位置する部位はなく、上段継ぎ手鉄筋12の上縁よりも上方に位置する部位はない。このため、コンクリートのかぶりを確保する上で有利な継ぎ手構造となっている。
【0038】
上段ずれ止め部材16の材質は、必要な性能(間詰めコンクリート24に対する係止効果等)が得られるのであれば特には限定されないが、例えば、上段ずれ止め部材16を鋳鉄または鋳鋼で成型した部材としてもよい。上段ずれ止め部材16を鋳鉄または鋳鋼で成型した部材とした場合には、上段ずれ止め部材16の形状がある程度複雑な形状であっても実現することができ、上段ずれ止め部材16の各部位が、当該上段ずれ止め部材16が設けられている上段継ぎ手鉄筋12の上縁(上段継ぎ手鉄筋12の表面に設けられた凸部も含めて考えた上縁)よりも上方に位置しないように、上段ずれ止め部材16を構成することも容易に行うことができる。上段ずれ止め部材16の各部位が、当該上段ずれ止め部材16が設けられている上段継ぎ手鉄筋12の上縁よりも上方に位置しないようにすることで、コンクリートのかぶりを確保する上で有利な継ぎ手構造となる。
【0039】
下段継ぎ手鉄筋14の先端には、下段ずれ止め部材18が設けられている。図6は、下段継ぎ手鉄筋14の先端部および下段ずれ止め部材18を下段継ぎ手鉄筋14の中心軸14Aを通る鉛直面で切断して得られる断面を模式的に示す鉛直断面図である。
【0040】
図6に示すように、下段ずれ止め部材18は、下段軸部18Aと、下段係止部18Bとを有してなる。下段軸部18Aと下段係止部18Bとは一体化されている。
【0041】
下段軸部18Aは、下段継ぎ手鉄筋14の外径(凹部の外径)と略同一の外径を有しており、突出する下段継ぎ手鉄筋14の先端に、お互いの中心軸が略一致するように接合されている。この接合は、例えば、フラッシュ溶接を用いて行うことができる。フラッシュ溶接を用いて得られる接合部は接合前よりも若干径が大きくなるが、下段継ぎ手鉄筋14の凸部の径程度以下に抑えることで、フラッシュ溶接を用いて得られる接合部は下段継ぎ手鉄筋14と同等のかぶりを確保できる。
【0042】
下段係止部18Bは、下段継ぎ手鉄筋14の長手方向と直交する水平方向(橋軸直角方向)から見て、当該下段係止部18Bを有する下段ずれ止め部材18が設けられている下段継ぎ手鉄筋14が突出する方向とは逆の方向に斜め上方に延びる下段内面18B1を当該下段継ぎ手鉄筋14の突出する方向とは逆の側に有する。
【0043】
下段ずれ止め部材18は、下段内面18B1を備えることにより、下段内面18B1が支圧抵抗面となって、下段継ぎ手鉄筋14が間詰めコンクリート24から引き抜けることを防止する。また、下段内面18B1は、下段係止部18Bを有する下段ずれ止め部材18が設けられている下段継ぎ手鉄筋14が突出する方向とは逆の方向に斜め上方に延びる面であるので、間詰めコンクリート24に効果的に係止して、プレキャストコンクリート床版50の接合耐力をさらに向上させるとともに、下段継ぎ手鉄筋14のはらみ出しに効果的に抵抗する。
【0044】
また、下段係止部18Bの下段内面18B1と、下段内面18B1とは反対側(当該下段係止部18Bを有する下段ずれ止め部材18が設けられている下段継ぎ手鉄筋14が突出する方向の側)の下段外面18B2とは略平行になっており、下段係止部18Bの形状は板状である。
【0045】
下段継ぎ手鉄筋14の中心軸14Aを含む鉛直面で切断して得られる切断面において、当該下段継ぎ手鉄筋14に接合されている下段ずれ止め部材18の下段係止部18Bの下段内面18B1の当該下段継ぎ手鉄筋14の中心軸14Aとのなす角βは、支圧抵抗面を確保する点、間詰めコンクリート24に効果的に係止する点、および下段継ぎ手鉄筋14のはらみ出しに効果的に抵抗できる点で、45°以上85°以下であることが好ましい。
【0046】
ここで、下段継ぎ手鉄筋14の中心軸14Aを含む鉛直面で切断して得られる切断面において、下段係止部18Bの下段内面18B1の下段継ぎ手鉄筋14の中心軸14Aとのなす角は、図6の角度βのことを意味する。
【0047】
図7は、下段ずれ止め部材18を下段軸部18Aの長手方向から見た正面図である。図7に示すように、下段係止部18Bの形状(下段軸部18Aの長手方向から見た形状)は略正方形状であり、その1辺の長さは30mm〜40mm程度である。略正方形状の下段係止部18Bの1辺の長さを30mm〜40mm程度にすることにより、間詰めコンクリート24に係止するための支圧抵抗面を確保することができるとともに、間詰めコンクリート24を充填する際の充填性も良好にすることができる。
【0048】
また、図7に示すように、下段係止部18Bは、下段軸部18Aの下縁よりも下方に位置する部位はなく、下段継ぎ手鉄筋14の下縁よりも下方に位置する部位はない。このため、コンクリートのかぶりを確保する上で有利な継ぎ手構造となっている。
【0049】
下段ずれ止め部材18の材質は、必要な性能(間詰めコンクリート24に対する係止効果等)が得られるのであれば特には限定されないが、例えば、下段ずれ止め部材18を鋳鉄または鋳鋼で成型した部材としてもよい。下段ずれ止め部材18を鋳鉄または鋳鋼で成型した部材とした場合には、下段ずれ止め部材18の形状がある程度複雑な形状であっても実現することができ、下段ずれ止め部材18の各部位が、当該下段ずれ止め部材18が設けられている下段継ぎ手鉄筋14の下縁(下段継ぎ手鉄筋14の表面に設けられた凸部も含めて考えた下縁)よりも下方に位置しないように、下段ずれ止め部材18を構成することも容易に行うことができる。下段ずれ止め部材18の各部位が、当該下段ずれ止め部材18が設けられている下段継ぎ手鉄筋14の下縁よりも下方に位置しないようにすることで、コンクリートのかぶりを確保する上で有利な継ぎ手構造となる。
【0050】
また、本第1実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造10においては、上段継ぎ手鉄筋12の下方に隣接して配置されていて上段継ぎ手鉄筋12の長手方向と略直交する略水平方向に延びる上段直交鉄筋20が上段係止部16B同士の間に配置されており、さらに、下段継ぎ手鉄筋14の上方に隣接して配置されていて下段継ぎ手鉄筋14の長手方向と略直交する略水平方向に延びる下段直交鉄筋22が下段係止部18B同士の間に配置されている。
【0051】
このように上段直交鉄筋20および下段直交鉄筋22が配置されていることにより、本第1実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造10は継ぎ手部以外の部位と同等の耐力を確保することができる。
【0052】
上段直交鉄筋20および下段直交鉄筋22を現場で配筋するためには、図8に示すように、上段継ぎ手鉄筋12に必要な本数だけ上段直交鉄筋20および下段直交鉄筋22をそれぞれ針金23等の線材で取り付けておき、プレキャストコンクリート床版50を所定の位置に配置した後に、取り付けに用いた針金23等の線材を取り外し、上段直交鉄筋20および下段直交鉄筋22を所定の位置に配置すればよい。このため、現場において橋軸直角方向に鉄筋を挿入することは不要であり、上段直交鉄筋20および下段直交鉄筋22の配筋作業は容易である。
【0053】
一方、従来のループ鉄筋継ぎ手構造を用いた場合には、橋軸直角方向から見てループ鉄筋同士が重なる閉断面の内部に、橋軸直角方向に鉄筋を挿入することが必要であり、現場での上段直交鉄筋および下段直交鉄筋の配筋作業に手間がかかっていた。
【0054】
(第1実施形態の効果)
本発明の第1実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造10は、上段継ぎ手鉄筋12の先端に設けられた上段ずれ止め部材16と、下段継ぎ手鉄筋14の先端に設けられた下段ずれ止め部材18と、を有しており、上段ずれ止め部材16の上段係止部16Bは、上段係止部16Bを有する上段ずれ止め部材16が設けられている上段継ぎ手鉄筋12が突出する方向とは逆の方向に斜め下方に延びる上段内面16B1を有しており、下段ずれ止め部材18の下段係止部18Bは、下段係止部18Bを有する下段ずれ止め部材18が設けられている下段継ぎ手鉄筋14が突出する方向とは逆の方向に斜め上方に延びる下段内面18B1を有している。
【0055】
前述したように、上段内面16B1および下段内面18B1は、間詰めコンクリート24に効果的に係止するように、上段継ぎ手鉄筋12および下段継ぎ手鉄筋14に対して斜めに配置されているので、本第1実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造10は接合耐力が大きくなっており、このため、従来の重ね継ぎ手構造よりも接合部の長さを短くできる。
【0056】
また、本発明の第1実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造10においては、鉄筋をループ状に加工する必要がないため、従来のループ鉄筋継ぎ手構造よりも床版厚を薄くすることができる。
【0057】
さらに、本発明の第1実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造10においては、橋軸直角方向から見て従来のループ鉄筋継ぎ手構造のような閉断面はなく、橋軸直角方向に配置する補強用の鉄筋を橋軸直角方向から接合部に差し込む必要はなく、現場での配筋作業の負担も少なくすることができる。
【0058】
なお、本第1実施形態に係る継ぎ手構造10においては、対向する接合端面52の間を充填する間詰め材として間詰めコンクリート24を用いたが、プレキャストコンクリート床版50の接合端面52から突出している上段継ぎ手鉄筋12の部位、プレキャストコンクリート床版50の接合端面52から突出している下段継ぎ手鉄筋14の部位、上段ずれ止め部材16、下段ずれ止め部材18、上段直交鉄筋20、および下段直交鉄筋22の周囲を覆って、それらの部材を十分に一体化できるのであれば、対向する接合端面52の間を充填する間詰め材としてコンクリート以外の材料を用いてもよく、要求される性能を満たすのであれば、例えば、モルタルや樹脂モルタル等を間詰めコンクリート24に替えて用いることも可能である。
【0059】
(第1実施形態の第1変形例)
本発明の第1実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造10において、上段係止部16Bの上段内面16B1および上段外面16B2は略平行になっていて、上段係止部16Bの形状は板状になっており、また、下段係止部18Bの下段内面18B1および下段外面18B2は略平行になっていて、下段係止部18Bの形状は板状になっていたが、本第1実施形態において、上段ずれ止め部材の上段係止部および下段ずれ止め部材の下段係止部の形状は板状に限られるわけではない。上段係止部16Bの上段内面16B1と同様の斜め下方に延びる面(上段係止部16Bを有する上段ずれ止め部材16が設けられている上段継ぎ手鉄筋12が突出する方向とは逆の方向に斜め下方に延びる面)を備えていれば、上段係止部の形状は板状以外の形状でもよい。また、下段係止部18Bの下段内面18B1と同様の斜め上方に延びる面(下段係止部18Bを有する下段ずれ止め部材18が設けられている下段継ぎ手鉄筋14が突出する方向とは逆の方向に斜め上方に延びる面)を備えていれば、下段係止部の形状は板状以外の形状でもよい。
【0060】
図9は、第1実施形態に係る継ぎ手構造10の上段ずれ止め部材16の上段係止部16Bの第1変形例(上段ずれ止め部材26の上段係止部26B)を模式的に示す鉛直断面図(上段継ぎ手鉄筋12の先端部および上段ずれ止め部材26を上段継ぎ手鉄筋12の中心軸を通る鉛直面で切断して得られる断面を模式的に示す鉛直断面図)であり、図10は、第1実施形態に係る継ぎ手構造10の下段ずれ止め部材18の下段係止部18Bの第1変形例(下段ずれ止め部材28の下段係止部28B)を模式的に示す鉛直断面図(下段継ぎ手鉄筋14の先端部および下段ずれ止め部材28を下段継ぎ手鉄筋14の中心軸を通る鉛直面で切断して得られる断面を模式的に示す鉛直断面図)である。
【0061】
図9に示すように、上段ずれ止め部材16の第1変形例である上段ずれ止め部材26の上段係止部26Bは、上段継ぎ手鉄筋12の中心軸を通る鉛直面で切断して得られる断面の形状が台形であり、上段係止部26Bは、上段係止部16Bの上段内面16B1と同様の斜め下方に延びる上段内面26B1(上段係止部26Bを有する上段ずれ止め部材26が設けられている上段継ぎ手鉄筋12が突出する方向とは逆の方向に斜め下方に延びる面)を、上段係止部26Bを有する上段ずれ止め部材26が設けられている上段継ぎ手鉄筋12が突出する方向とは逆の側に有するが、上段内面26B1とは反対側(上段係止部26Bを有する上段ずれ止め部材26が設けられている上段継ぎ手鉄筋12が突出する方向の側)の上段外面26B2は、上段係止部26Bを有する上段ずれ止め部材26が設けられている上段継ぎ手鉄筋12が突出する方向に斜め下方に延びる面になっている。このため、上段継ぎ手鉄筋12が上方にはらみ出そうとするときに、上段外面26B2は間詰めコンクリート24からの抵抗力を受けることになる。したがって、上段係止部16Bを有する上段ずれ止め部材16に替えて上段係止部26Bを有する上段ずれ止め部材26を用いることにより、上段継ぎ手鉄筋12の上方へのはらみ出しをより起こりにくくすることができる。
【0062】
また、図10に示すように、下段ずれ止め部材18の第1変形例である下段ずれ止め部材28の下段係止部28Bは、下段継ぎ手鉄筋14の中心軸を通る鉛直面で切断して得られる断面の形状が台形であり、下段係止部28Bは、下段係止部18Bの下段内面18B1と同様の斜め上方に延びる下段内面28B1(下段係止部28Bを有する下段ずれ止め部材28が設けられている下段継ぎ手鉄筋14が突出する方向とは逆の方向に斜め上方に延びる面)を、下段係止部28Bを有する下段ずれ止め部材28が設けられている下段継ぎ手鉄筋14が突出する方向とは逆の側に有するが、下段内面28B1とは反対側(下段係止部28Bを有する下段ずれ止め部材28が設けられている下段継ぎ手鉄筋14が突出する方向の側)の下段外面28B2は、下段係止部28Bを有する下段ずれ止め部材28が設けられている下段継ぎ手鉄筋14が突出する方向に斜め上方に延びる面になっている。このため、下段継ぎ手鉄筋14が下方にはらみ出そうとするときに、下段外面28B2は間詰めコンクリート24からの抵抗力を受けることになる。したがって、下段係止部18Bを有する下段ずれ止め部材18に替えて下段係止部28Bを有する下段ずれ止め部材28を用いることにより、下段継ぎ手鉄筋14の下方へのはらみ出しをより起こりにくくすることができる。
【0063】
なお、図9において、符号26Aは上段軸部16Aと同様の上段軸部であり、図10において、符号28Aは下段軸部18Aと同様の下段軸部である。
【0064】
(第1実施形態の第2変形例)
第1実施形態の第1変形例では、上段ずれ止め部材26の上段係止部26Bの鉛直断面形状(上段継ぎ手鉄筋12の中心軸を通る鉛直面で切断して得られる断面の形状)および下段ずれ止め部材28の下段係止部28Bの鉛直断面形状(下段継ぎ手鉄筋14の中心軸を通る鉛直面で切断して得られる断面の形状)が台形である点が、第1実施形態の上段ずれ止め部材16の上段係止部16Bおよび下段ずれ止め部材18の下段係止部18Bの形状と異なっていたが、第1実施形態の第2変形例では、上段ずれ止め部材の上段係止部を正面から(上段ずれ止め部材の上段軸部の長手方向から)見た形状および下段ずれ止め部材の下段係止部を正面から(下段ずれ止め部材の下段軸部の長手方向から)見た形状が、第1実施形態の上段ずれ止め部材16の上段係止部16Bおよび下段ずれ止め部材18の下段係止部18Bの形状(正方形状)とは異なる。
【0065】
図11は、第1実施形態に係る継ぎ手構造10の上段ずれ止め部材16の上段係止部16Bの第2変形例の具体例((a)上段係止部30A、(b)上段係止部30B)を示す正面図(上段ずれ止め部材16の上段軸部16Aの長手方向から見た正面図)であり、上段係止部の正面形状が略四角形の場合の例である。上段軸部の形状は第1実施形態の上段ずれ止め部材16の上段軸部16Aと同様であるので、図11においても、上段軸部には符号16Aを付している。図11(a)に示す上段係止部30Aの正面形状は、上段ずれ止め部材の上段軸部16Aの長手方向と直交する水平方向に長い略長方形状であり、上下方向の長さが上段軸部16Aの上下方向の径と略一致している。図11(b)に示す上段係止部30Bの正面形状は、上段軸部16Aの長手方向と直交する方向で下方向に長い略長方形状であり、水平方向の長さが上段軸部16Aの水平方向の径と略一致している。
【0066】
図12は、第1実施形態に係る継ぎ手構造10の上段ずれ止め部材16の上段係止部16Bの第2変形例の具体例((a)上段係止部32A、(b)上段係止部32B、(c)上段係止部32C)を示す正面図(上段ずれ止め部材16の上段軸部16Aの長手方向から見た正面図)であり、上段係止部の正面形状が略三角形の場合の例である。上段軸部の形状は第1実施形態の上段ずれ止め部材16の上段軸部16Aと同様であるので、図12においても、上段軸部には符号16Aを付している。図12(a)に示す上段係止部32Aの正面形状は、上段軸部16Aの長手方向と直交する水平方向に長い辺が上辺となっている略三角形であり、図12(b)に示す上段係止部32Bの正面形状は、上段軸部16Aの長手方向と直交する水平方向に長い辺が下辺となっている略三角形であり、図12(c)に示す上段係止部32Cの正面形状は、上段軸部16Aの長手方向と直交する水平方向に(上段継ぎ手鉄筋12の側面に)2つの略三角形が設けられた形状である。
【0067】
図13は、第1実施形態に係る継ぎ手構造10の上段ずれ止め部材16の上段係止部16Bの第2変形例の具体例((a)上段係止部34A、(b)上段係止部34B)を示す正面図(上段ずれ止め部材16の上段軸部16Aの長手方向から見た正面図)であり、上段係止部の正面形状が略たまご形の場合の例である。上段軸部の形状は第1実施形態の上段ずれ止め部材16の上段軸部16Aと同様であるので、図13においても、上段軸部には符号16Aを付している。図13(a)に示す上段係止部34Aの正面形状は、上段軸部16Aの長手方向と直交する水平方向に長い径の部位が上方に配置されている略たまご形であり、図13(b)に示す上段係止部34Bの正面形状は、上段軸部16Aの長手方向と直交する水平方向に長い径の部位が下方に配置されている略たまご形である。
【0068】
図14は、第1実施形態に係る継ぎ手構造10の上段ずれ止め部材16の上段係止部16Bの第2変形例の具体例((a)上段係止部36A、(b)上段係止部36B)を示す正面図(上段ずれ止め部材16の上段軸部16Aの長手方向から見た正面図)であり、上段係止部の正面形状が略円形および略楕円形の場合の例である。上段軸部の形状は第1実施形態の上段ずれ止め部材16の上段軸部16Aと同様であるので、図14においても、上段軸部には符号16Aを付している。図14(a)に示す上段係止部36Aの正面形状は、上端部が上段軸部16Aの上端部と一致する円形であり、図14(b)に示す上段係止部36Bの正面形状は、上段軸部16Aの長手方向と直交する水平方向に長い楕円形である。
【0069】
なお、第1実施形態に係る継ぎ手構造10の下段ずれ止め部材18の下段係止部18Bの第2変形例の具体例の正面形状は、図11図14に示した第1実施形態に係る継ぎ手構造10の上段ずれ止め部材16の上段係止部16Bの第2変形例の具体例を上下反転させた正面形状であるので、図示および説明は省略する。
【0070】
(第2実施形態)
図15は、本発明の第2実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造40を斜め上方から見た斜視図であり、図16は、図15から上段直交鉄筋20および下段直交鉄筋22を除いて描いた斜視図であり、図17は、本発明の第2実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造40を橋軸直角方向から見た側面図である。ただし、図示の都合上、図15および図16においては、間詰めコンクリート24は描いていない。また、図17では、間詰めコンクリート24の内部の部材も実線で描いている。また、本発明の第1実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造10と同様の構成については同一の符号を付して説明は原則として省略する。また、第1実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造10において説明した内容のうち、本第2実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造40においても同様に当てはまる内容については、原則として説明を省略する。
【0071】
上段継ぎ手鉄筋12の先端には、上段ずれ止め部材42が設けられている。図18は、上段継ぎ手鉄筋12の先端部および上段ずれ止め部材42を上段継ぎ手鉄筋12の中心軸12Aを通る鉛直面で切断して得られる断面を模式的に示す鉛直断面図である。
【0072】
図18に示すように、上段ずれ止め部材42は、上段軸部42Aと、上段係止部42Bとを有してなる。上段軸部42Aと上段係止部42Bとは一体化されている。
【0073】
第1実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造10の上段ずれ止め部材16の上段係止部16Bは、上段係止部16Bを有する上段ずれ止め部材16が設けられている上段継ぎ手鉄筋12が突出する方向とは逆の方向に斜め下方に延びる上段内面16B1を、当該上段継ぎ手鉄筋12が突出する方向とは逆の側に有していたが、図18に示すように、本第2実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造40の上段係止部42Bは、上段係止部42Bを有する上段ずれ止め部材42が設けられている上段継ぎ手鉄筋12が突出する方向とは逆の方向に斜め下方に延びる面(第1実施形態に係る継ぎ手構造10における上段内面16B1)は有しておらず、代わりに、当該上段継ぎ手鉄筋12の長手方向と略直交するように下方に延びる上段直交内面42B1を当該上段継ぎ手鉄筋12の突出する方向とは逆の側に有している。
【0074】
また、下段継ぎ手鉄筋14の先端には、下段ずれ止め部材44が設けられている。図19は、下段継ぎ手鉄筋14の先端部および下段ずれ止め部材44を下段継ぎ手鉄筋14の中心軸14Aを通る鉛直面で切断して得られる断面を模式的に示す鉛直断面図である。
【0075】
図19に示すように、下段ずれ止め部材44は、下段軸部44Aと、下段係止部44Bとを有してなる。下段軸部44Aと下段係止部44Bとは一体化されている。
【0076】
第1実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造10の下段ずれ止め部材18の下段係止部18Bは、下段係止部18Bを有する下段ずれ止め部材18が設けられている下段継ぎ手鉄筋14が突出する方向とは逆の方向に斜め上方に延びる下段内面18B1を、当該下段継ぎ手鉄筋14が突出する方向とは逆の側に有していたが、図19に示すように、本第2実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造40の下段係止部44Bは、下段係止部44Bを有する下段ずれ止め部材44が設けられている下段継ぎ手鉄筋14が突出する方向とは逆の方向に斜め上方に延びる面(第1実施形態に係る継ぎ手構造10における下段内面18B1)は有しておらず、代わりに、当該下段継ぎ手鉄筋14の長手方向と略直交するように上方に延びる下段直交内面44B1を当該下段継ぎ手鉄筋14の突出する方向とは逆の側に有している。
【0077】
以上説明したように、上段内面16B1に替えて、上段継ぎ手鉄筋12の長手方向と略直交するように下方に延びる上段直交内面42B1を有し、下段内面18B1に替えて、下段継ぎ手鉄筋14の長手方向と略直交するように上方に延びる下段直交内面44B1を有している点が、本第2実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造40の第1実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造10との大きな相違点である。
【0078】
上段ずれ止め部材42は、上段直交内面42B1を備えることにより、上段直交内面42B1が支圧抵抗面となって、上段継ぎ手鉄筋12が間詰めコンクリート24から引き抜けることを防止し、下段ずれ止め部材44は、下段直交内面44B1を備えることにより、下段直交内面44B1が支圧抵抗面となって、下段継ぎ手鉄筋14が間詰めコンクリート24から引き抜けることを防止する。
【0079】
また、上段係止部42Bを側方(橋軸直角方向)から見た形状はくさび型であり、本第2実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造40の上段係止部42Bの上段直交内面42B1とは反対側(上段係止部42Bを有する上段ずれ止め部材42が設けられている上段継ぎ手鉄筋12が突出する方向の側)の上段外面42B2は、上段係止部42Bを有する上段ずれ止め部材42が設けられている上段継ぎ手鉄筋12が突出する方向に斜め下方に延びる面になっている。このため、上段継ぎ手鉄筋12が上方にはらみ出そうとするときに、上段外面42B2は間詰めコンクリート24からの抵抗力を受けるため、上段継ぎ手鉄筋12の上方へのはらみ出しが起こりにくくなっている。
【0080】
また、下段係止部44Bを側方(橋軸直角方向)から見た形状はくさび型であり、本第2実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造40の下段係止部44Bの下段直交内面44B1とは反対側(下段係止部44Bを有する下段ずれ止め部材44が設けられている下段継ぎ手鉄筋14が突出する方向の側)の下段外面44B2は、下段係止部44Bを有する下段ずれ止め部材44が設けられている下段継ぎ手鉄筋14が突出する方向に斜め上方に延びる面になっている。このため、下段継ぎ手鉄筋14が下方にはらみ出そうとするときに、下段外面44B2は間詰めコンクリート24からの抵抗力を受けるため、下段継ぎ手鉄筋14の下方へのはらみ出しが起こりにくくなっている。
【0081】
ただし、本第2実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造40の上段ずれ止め部材42の上段係止部42Bは、上段係止部42Bを有する上段ずれ止め部材42が設けられている上段継ぎ手鉄筋12が突出する方向とは逆の方向に斜め下方に延びる面(第1実施形態に係る継ぎ手構造10における上段内面16B1)を、当該上段継ぎ手鉄筋12が突出する方向とは逆の側に有しておらず、代わりに、上段継ぎ手鉄筋12の長手方向と略直交するように下方に延びる上段直交内面42B1を、当該上段継ぎ手鉄筋12が突出する方向とは逆の側に有しており、また、本第2実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造40の下段ずれ止め部材44の下段係止部44Bは、下段係止部44Bを有する下段ずれ止め部材44が設けられている下段継ぎ手鉄筋14が突出する方向とは逆の方向に斜め上方に延びる面(第1実施形態に係る継ぎ手構造10における下段内面18B1)を、当該下段継ぎ手鉄筋14が突出する方向とは逆の側に有しておらず、代わりに、下段継ぎ手鉄筋14の長手方向と略直交するように上方に延びる下段直交内面44B1を、当該下段継ぎ手鉄筋14が突出する方向とは逆の側に有しているので、本第2実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造40は、第1実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造10よりも、間詰めコンクリート24に係止する効果が小さくなると思われる。
【0082】
なお、上段ずれ止め部材42の上段軸部42Aは、上段継ぎ手鉄筋12の外径(凹部の外径)と略同一の外径を有しており、突出する上段継ぎ手鉄筋12の先端に、お互いの中心軸が略一致するように接合されている。この接合は、例えば、フラッシュ溶接を用いて行うことができる。フラッシュ溶接を用いて得られる接合部は接合前よりも若干径が大きくなるが、上段継ぎ手鉄筋12の凸部の径程度以下に抑えることで、フラッシュ溶接を用いて得られる接合部は上段継ぎ手鉄筋12と同等のかぶりを確保できる。
【0083】
また、下段ずれ止め部材44の下段軸部44Aは、下段継ぎ手鉄筋14の外径(凹部の外径)と略同一の外径を有しており、突出する下段継ぎ手鉄筋14の先端に、お互いの中心軸が略一致するように接合されている。この接合は、例えば、フラッシュ溶接を用いて行うことができる。フラッシュ溶接を用いて得られる接合部は接合前よりも若干径が大きくなるが、下段継ぎ手鉄筋14の凸部の径程度以下に抑えることで、フラッシュ溶接を用いて得られる接合部は下段継ぎ手鉄筋14と同等のかぶりを確保できる。
【0084】
なお、本第2実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造40の上段ずれ止め部材42および下段ずれ止め部材44の正面形状としては、第1実施形態に係るプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造10で説明した図11図14と同様に種々の形状を採用することが可能である。
【符号の説明】
【0085】
10、40…プレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造
12…上段継ぎ手鉄筋
12A、14A…中心軸
14…下段継ぎ手鉄筋
16、26、42…上段ずれ止め部材
16A、26A、42A…上段軸部
16B、26B、42B…上段係止部
16B1、26B1…上段内面
16B2、26B2、42B2…上段外面
18、28、44…下段ずれ止め部材
18A、28A、44A…下段軸部
18B、28B、44B…下段係止部
18B1、28B1…下段内面
18B2、28B2、44B2…下段外面
20…上段直交鉄筋
22…下段直交鉄筋
23…針金
24…間詰めコンクリート
30A、30B、32A、32B、32C、34A、34B、36A、36B…上段係止部
42B1…上段直交内面
44B1…下段直交内面
50…プレキャストコンクリート床版
52…接合端面
【要約】
【課題】重ね継ぎ手構造よりも接合部の長さを短くでき、かつ、ループ鉄筋継ぎ手構造よりも床版厚を薄くでき、さらに、現場での配筋作業の負担も少なくすることができるプレキャストコンクリート床版の継ぎ手構造を提供する。
【解決手段】上段ずれ止め部材16は、上段内面16B1を上段継ぎ手鉄筋12の突出する方向とは逆の側に有する上段係止部16Bを有してなり、下段ずれ止め部材18は、下段内面18B1を下段継ぎ手鉄筋14の突出する方向とは逆の側に有する下段係止部18Bを有してなり、上段直交鉄筋20が上段係止部16B同士の間に上段係止部16Bから間隔を空けて配置されており、下段直交鉄筋が下段係止部18B同士の間に下段係止部18Bから間隔を空けて配置されている。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20