(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(本実施形態の概要)
初めに、本実施形態にて開示する組電池の監視装置の概要について説明する。監視装置は、充電状態に対する開放電圧の変化率が相対的に低い2つの低変化領域と、2つの前記低変化領域の間に充電状態に対する開放電圧の変化率が相対的に高い第1高変化領域を有する蓄電素子(組電池)を監視対象としており、2つの前記蓄電素子が2つの前記低変化領域に分かれている場合、前記第1高変化領域の端点間の容量差に基づいて、前記2つの蓄電素子のうち少なくともいずれか一方側を放電又は充電することにより、前記2つの蓄電素子の間の容量の差を小さくする第1均等化処理を行う。
【0011】
また、一方の前記蓄電素子が前記低変化領域に含まれ、他方側の蓄電素子が前記第1高変化領域に含まれている場合、前記低変化領域のうち他方側の蓄電素子に近い側の端点の容量と他方側の蓄電素子の容量との容量差に基づいて、前記2つの蓄電素子のうち少なくともいずれか一方側を放電又は充電することにより、前記2つの蓄電素子の間の容量の差を小さくする第2均等化処理を行う。
【0012】
監視装置によれば、2つの蓄電素子が2つの低変化領域に分かれている場合には、第1均等化処理が実行される。また、一方の蓄電素子が低変化領域に含まれ、他方側の蓄電素子が第1高変化領域に含まれている場合、第2均等化処理が実行される。そのため、満充電付近まで充電されない場合や満充電される頻度が低い場合でも、蓄電素子の容量アンバランスを抑えることが出来る。
【0013】
また、本実施形態にて開示する組電池の監視装置は、以下の構成がこの好ましい。
前記第1均等化処理の実行後、一方の前記蓄電素子が前記低変化領域に含まれ、他方側の蓄電素子が前記第1高変化領域に含まれている場合、前記低変化領域のうち他方側の蓄電素子に近い側の端点の容量と他方側の蓄電素子の容量との容量差に基づいて、前記2つの蓄電素子のうち少なくともいずれか一方側を放電又は充電することにより、前記2つの蓄電素子の間の容量の差を小さくする第2均等化処理を実行する。この構成では、第1均等化処理と第2均等化処理を複合的に実行するので、蓄電素子の容量アンバランスを一層抑えることが出来る。
【0014】
前記蓄電素子が前記2つの低変化領域よりも低充電状態領域側に第2高変化領域、又は高充電状態領域側に第3高変化領域を有する場合において、前記2つの蓄電素子の双方が前記第2高変化領域又は前記第3高変化領域に含まれている場合、前記2つの蓄電素子のうち少なくともいずれか一方側で、前記蓄電素子間の電圧差に相当する容量を放電又は充電することにより、前記2つの蓄電素子の間の容量の差を小さくする第3均等化処理を行う。この構成では、第2高変化領域や第3高変化領域では第3均等化処理が実行される。従って、蓄電素子間の容量アンバランスを一層抑えることが可能となる。
【0015】
また、前記蓄電素子間に満充電容量差がない場合、前記第1均等化処理及び前記第2均等化処理のうち少なくとも一方の均等化処理、並びに前記第3均等化処理を実行し、前記蓄電素子間に満充電容量差がある場合、前記第1均等化処理及び前記第2均等化処理のうち少なくとも一方の均等化処理、又は前記第3均等化処理のうち、いずれかの均等化処理を実行する。この構成では、満充電容量差の有無に応じて、均等化制御のパターンを切り換えることが可能である。
【0016】
また、前記第1均等化処理から前記第3均等化処理のうち、いずれかの均等化処理の実行後、前記蓄電素子を充放電させた時に、前記蓄電素子の電圧が変化するタイミングの時間差又はその間の累積充放電量を計測し、得られた前記時間差又は前記累積充放電量に基づいて前記蓄電素子間の満充電容量差の大きさを検出する。この構成では、蓄電素子の電圧が変化するタイミングの時間差又はその間の累積充放電量より、蓄電素子の満充電容量差の大きさを検出できる。
【0017】
<実施形態1>
実施形態1について
図1ないし
図9を参照して説明する。
1.電池パック20の構成
図1は、本実施形態における電池パック20の構成を示す図である。本実施形態の電池パック20は、例えば電気自動車やハイブリッド自動車に搭載され、電気エネルギーで作動する動力源に電力を供給するものである。
【0018】
図1に示すように、電池パック20は、組電池30と、電流センサ40と、組電池30を管理するバッテリ−マネージャー(以下、BM)50を有する。組電池30は、直列接続された複数の二次電池31から構成されている。
【0019】
二次電池31及び電流センサ40は、配線35を介して直列に接続されており、電気自動車に搭載された充電器10又は、電気自動車等の内部に設けられた動力源等の負荷10に接続される。充電器10は組電池30の電圧を検出して、組電池30を充電する機能を果たす。
【0020】
電流センサ40は、二次電池31に流れる電流を検出する機能を果たす。電流センサ40は、二次電池31の電流値を一定周期で計測し、計測した電流計測値のデータを、制御部60に対して送信する構成となっている。
【0021】
バッテリ−マネージャー(以下、BM)50は、制御部60と、放電回路70と、電圧検出回路80と、温度センサ95とを備える。尚、二次電池31が「蓄電素子」の一例であり、BM50が「監視装置」の一例である。また、放電回路70が「充放電回路」の一例である。
【0022】
放電回路70は、各二次電池31に設けられている。放電回路70は、
図2に示すように、放電抵抗Rと放電スイッチSWとを備え、二次電池31に対して並列に接続されている。制御部60から指令を与えて、放電スイッチSWをオンすることで二次電池31を個別に放電することが出来る。
【0023】
電圧検出回路80は、検出ラインを介して、各二次電池31の両端にそれぞれ接続され、制御部60からの指示に応答して、各二次電池31の電圧Vを測定する機能を果たす。温度センサ95は接触式あるいは非接触式で、二次電池31の温度D[℃]を測定する機能を果たす。尚、電圧検出回路80が「電圧検出部」の一例である。
【0024】
制御部60は中央処理装置(以下、CPU)61と、メモリ63と、通信部65とを含む。制御部60は、放電回路70を制御して、各二次電池31の容量[Ah]を均等化する機能を果たす。尚、「均等化」とは、二次電池31の容量[Ah]を等しくする場合に加え、二次電池間の容量[Ah]の差を小さくする場合を含む。
【0025】
メモリ63には、二次電池31の容量[Ah]を均等化する処理を実行するためのプログラム(後述する「均等化制御の実行シーケンス」)や、プログラムの実行に必要なデータ、例えば、
図3に示すSOC−OCV相関特性のデータや、二次電池31の満充電容量[Ah]のデータが記憶されている。
【0026】
通信部65は、車載のECU(Electronic Control Unit)100と通信可能に接続され、車載のECU100と通信する機能を果たす。なお、電池パック20には、この他にユーザからの入力を受け付ける操作部(図示せず)、二次電池31の状態等を表示する表示部(図示せず)が設けられている。
【0027】
2.二次電池31のSOC−OCV相関特性と均等化制御
(a)SOC−OCV相関特性
図3は横軸をSOC[%]、縦軸をOCV[V]とした、二次電池31のSOC−OCV相関特性である。二次電池31は、
図3に示すように、SOC(充電状態)に対するOCV(開放電圧)の変化率が相対的に低い低変化領域と、相対的に高い高変化領域を含む複数の充電領域を有している。具体的には2つの低変化領域L1、L2と、3つの高変化領域H1、H2、H3を有している。
図3に示すように、低変化領域L1はSOC31[%]〜SOC62[%]の範囲に位置している。低変化領域L2は、SOC68[%]〜SOC97[%]の範囲に位置している。低変化領域L1は、SOCに対するOCVの変化率が非常に小さく、OCVが3.3[V]で略一定のプラトー領域となっている。また、低変化領域L2は、SOCに対するOCVの変化率が非常に小さく、OCVが3.34[V]で略一定のプラトー領域となっている。
【0028】
第1高変化領域H1は、SOC62[%]〜SOC68[%]の範囲にあり、2つの低変化領域L1、L2の間に位置している。第2高変化領域H2は、SOC31[%]以下の範囲にあり、低変化領域L1よりも低SOC側に位置している。第3高変化領域H3は、SOC97[%]以上の範囲にあり、低変化領域L2よりも高SOC側に位置している。尚、第1〜第3高変化領域H1〜H3は、低変化領域L1、L2に比べてSOCに対するOCVの変化率(
図3に示すグラフの傾き)が相対的に高い関係となっている。
【0029】
尚、
図3のSOC−OCV相関特性を有する二次電池31として、正極活物質にリン酸鉄リチウム(LiFePO4)、負極活物質にグラファイトを用いたリン酸鉄系のリチウムイオン電池を例示することが出来る。
【0030】
(b)変化領域の判定と二次電池31の均等化制御
BM50は、二次電池31のOCVを計測して、各二次電池31の変化領域を判定する。例えば、OCVの計測値が3.3[V]の場合、
図3に示すSOCーOCV相関特性から、その二次電池31は低変化領域L1に含まれていると判定できる。また、OCVが3.31[V]〜3.33[V]の場合、その二次電池31は第1高変化領域H1に含まれていると判定できる。また、OCVが3.34[V]であれば、その二次電池31は低変化領域L2に含まれていると判定できる。
【0031】
そして、BM50は、変化領域の判定結果に基づいて、下記の均等化制御を実行する。以下、2つの二次電池31A、31Bを例にとって、均等化制御の内容を説明する。
図4〜
図7は
図3のA部を拡大した図、
図8は
図3のB部を拡大した図である。
【0032】
<第1均等化制御>
図4に示すように、2つの二次電池31A、31Bが2つの低変化領域L1、L2に分かれている場合、2つの二次電池31A、31Bの間には、少なくとも、第1高変化領域H1分の容量差が存在している。すなわち、
図4に示すように、第1高変化領域H1の端点c、d間の容量差Ccd[Ah]が存在する。
【0033】
従って、制御部60は、放電回路70により、OCVが高い側の二次電池31Bを容量差Ccdだけ放電する。このようにすることで、2つの二次電池31A、31Bの容量差は放電前に比べて、容量差Ccdだけ小さくなる(第1均等化制御)。尚、容量差Ccdは2点c、d間の「SOC差」に「満充電容量」を乗算することで算出できる。また、第1均等化制御において、放電量は、容量差Ccdに基づく量であればよく、上記のように容量差Ccdと同量を放電させる場合の他、容量差Ccdを所定割合だけ増減させた量を放電させてもよい。
【0034】
<第2均等化制御>
また、
図5に示すように、2つの二次電池31A、31Bが低変化領域L1と第1高変化領域H1に分かれている場合、2つの二次電池31A、31Bの間には、少なくとも、低変化領域L1の端点(二次電池31Bに近い側の端点)cの容量と二次電池31Bの容量との容量差Ccb[Ah]が存在する。
【0035】
従って、制御部60は、放電回路70により、OCVが高い側の二次電池31Bを容量差Ccbだけ放電する。このようにすることで、2つの二次電池31A、31Bの容量差は放電前に比べて、容量差Ccbだけ小さくなる(第2均等化制御)。尚、容量差Ccbは、端点cと二次電池31Bとの間のSOC差に「満充電容量」を乗算することで算出できる。また、二次電池31BのSOCは、二次電池30BのOCVと
図3に示すSOC−OCV相関特性とから求めることが出来る。
【0036】
また、
図6に示すように、2つの二次電池31A、31Bが第1高変化領域H1と低変化領域L2に分かれている場合、2つの二次電池31A、31Bの間には、少なくとも、二次電池31Aの容量と低変化領域L2の端点(二次電池31Aに近い側の端点)dの容量との容量差Cad[Ah]が存在する。
【0037】
従って、制御部60は、放電回路70により、OCVが高い側の二次電池31Bを容量差Cadだけ放電する。このようにすることで、2つの二次電池31A、31Bの容量差は放電前に比べて、容量差Cadだけ小さくなる(第2均等化制御)。尚、容量差Cadは、二次電池30Aと端点dとの間の「SOC差」に「満充電容量」を乗算することで算出できる。また、二次電池31AのSOCは、二次電池30AのOCVと
図3に示すSOCーOCV相関特性とから求めることが出来る。
【0038】
また、第2均等化制御において、放電量は、容量差Ccb、Cadに基づく量であればよく、上記のように容量差Ccb、Cadと同量を放電させる場合の他、容量差Ccb、Cadを所定割合だけ増減させた量を放電させてもよい。
【0039】
<複合均等化制御>
また、
図7に示すように、第1均等化処理の実行後、2つの二次電池31A、31Bが第1低変化領域L1と第1高変化領域H1に分かれている場合、制御部60は、第2均等化処理を実行して、二次電池31Bを、容量差Ccbだけ放電する。このようにすることで、2つの二次電池31A、31Bの容量差は、第1均等化制御と第2均等化制御を実行する前に比べて、容量差(Ccd+Ccb)だけ小さくなる。
【0040】
<第3均等化制御>
また、制御部60は、2つの二次電池31A、31Bの双方が、第2高変化領域H2又は第3高変化領域H3に含まれ、かつOCVの値が所定値以上異なる場合、OCVの高い側の二次電池を放電することにより、2つの二次電池31A、31Bの容量を均等化する。例えば、
図8に示すように、2つの二次電池31A、31Bの双方が第3高変化領域H3に含まれ、かつOCVの値が所定値以上異なる場合、制御部60は、2つの二次電池31A、31Bの容量差Cv[Ah]を算出する。
【0041】
そして、OCVが高い側の二次電池31Bを、求めた容量差Cvだけ放電する。このようにすることで、2つの二次電池31A、31Bの容量を均等化できる(第3均等化制御)。尚、容量差Cvは二次電池31A、31Bの「SOC差」に「満充電容量」を乗算することで算出できる。また、二次電池31A、31BのSOCは、二次電池31A、31BのOCVと
図3に示すSOCーOCV相関特性とから求めることが出来る。
【0042】
また、第3均等化制御において、放電量は、容量差Cvに基づく量であればよく、上記のように容量差Cvと同量を放電させる場合の他、容量差Cvを所定割合だけ増減させた量を放電させてもよい。
【0043】
尚、上記では、2つの二次電池31A、31Bを例にとって、均等化制御を説明したが、二次電池31の個数は3つ以上であってもよく、その場合、OCVが最も小さい二次電池31と、他の二次電池31との間でそれぞれ均等化制御を行うようにすればよい。
【0044】
3.均等化制御の実行シーケンス
次に均等化制御の実行シーケンスを説明する。
図9に示す均等化制御の実行シーケンスは、S10〜S70のステップから構成されており、例えば、BM50が起動して、組電池30の監視を開始するのと同時に実行される。
【0045】
処理がスタートすると、制御部60は、電流センサ40の出力から二次電池31の電流値を取得する。そして、取得した電流値を閾値(電流が概ねゼロとみなせる値)と比較する処理を行う(S10、S20)。電流値が閾値を上回っている期間は、S20にてNO判定されるため、S10、S20の処理を繰り返す状態となる。
【0046】
そして、二次電池31に流れる電流が概ねゼロとみなせる状態になると、S20でYES判定となり、次に、制御部60は、電圧検出回路80に指令を与え、各二次電池31のOCVを計測する処理を行う(S30)。
【0047】
その後、制御部60は、計測したOCVを、メモリ63に記憶されたSOC−OCV相関特性に参照して、各二次電池31がどの変化領域に含まれているか判定する処理を行う(S40)。
【0048】
そして、制御部60は、各二次電池31の変化領域を判定すると、均等化処理を実行するか、否か判定する処理を行う(S50)。具体的には、以下(1)〜(4)の場合は「実行」と判定され、それ以外の場合は「実行しない」と判定される。
【0049】
(1)2つの低変化領域L1、L2に2つの二次電池31A、31Bが分かれている場合
(2)低変化領域L1と第1高変化領域H1に2つの二次電池31A、31Bが分かれている又は、第1高変化領域H1と低変化領域L2に2つの二次電池31A、31Bが分かれている場合
(3)第2高変化領域H2に2つの二次電池31A、31Bが含まれ、かつOCVの値が所定値以上異なる場合
(4)第3高変化領域H3に2つの二次電池31A、31Bが含まれ、かつOCVの値が所定値以上異なる場合
【0050】
そして、(1)〜(4)に該当する場合、制御部60は、放電回路70に指令を与えて、第1〜第3均等化処理を実行する(S60)。すなわち、(1)に該当する場合は第1均等化処理を実行する。(2)に該当する場合は第2均等化処理を実行し、(3)、(4)に該当する場合は第3均等化処理を実行する。
【0051】
その後、処理はS10に戻り、S10以降の処理が繰り返し実行される。そして、(1)〜(4)に該当する状態になると、制御部60が放電回路70に指令を与えて第1均等処理〜第3均等化処理を実行する。そして、BM50が二次電池31の監視を終了するに伴って、均等化制御の実行シーケンスも終了する(S70:YES)。
【0052】
4.効果説明
実施形態1のBM50は、SOCが65%付近の中間SOC領域(
図3に示すA部付近の領域)でも、均等化制御を行う。具体的には、二次電池31A、31Bが2つの低変化領域L1、L2に分かれている場合、第1均等化処理を実行する。また、二次電池31A、31Bが低変化領域L1、L2と高変化領域H1に分かれている場合、第2均等化処理を実行する。そのため、満充電付近まで充電されない場合や、満充電される頻度が低い場合でも、二次電池31の容量アンバランスを抑えることが出来る。
【0053】
また、第1均等化処理の実行後、2つの二次電池31A、31Bが第1低変化領域L1と第1高変化領域H1に分かれている場合、制御部60は、第2均等化処理を実行する。そのため、二次電池31の容量アンバランスを一層、抑えることが出来る。そして更に、第2高変化領域H2や第3高変化領域H3では、第3均等化処理を行うので、二次電池31間の容量アンバランスをより一層、抑えることが可能となる。
【0054】
<実施形態2>
実施形態2について
図10〜
図14を参照して説明する。
1.満充電容量差の検出
二次電池31A、31Bに満充電容量差がない場合、2つの二次電池31A、31B間で容量アンバランスが生じると、2つの二次電池31A、31BのSOC−OCV相関特性は、SOC軸方向に位置がずれる関係となる。例えば、二次電池31Aに対して二次電池31Bが容量の少ない側にアンバランスした場合、
図10に示すように、二次電池31AのSOC−OCV相関特性に対して、二次電池31AのSOC−OCV相関特性はSOC軸に沿って高SOC側に平行移動する関係となる。
【0055】
この場合、
図10に示すように、A部(SOCが65%付近の中間SOC領域付近)、B部(SOCが97%付近の高SOC領域付近)の双方とも、二次電池31Aが二次電池31Bに比べてOCVが高くなる。
【0056】
従って、「第1均等化処理や第2均等化処理」では、OCVの高い二次電池31A側を放電させることにより、2つの二次電池31A、31B間の容量差を小さくする処理となる。また、「第3均等化処理」でも、OCVの高い二次電池31A側を放電させることにより、2つの二次電池31A、31B間の容量差を小さくする処理となる。このように、二次電池31A、31Bに満充電容量差がない場合、均等化処理では、同じ二次電池31Aを放電させることになる。
【0057】
次に、
図11は、二次電池31A、31Bに満充電容量差がある場合に、2つの二次電池31A、31B間で容量アンバランスが生じた場合のSOC−OCV相関特性である。尚、
図11に示す二次電池31Aは初期品であり、二次電池31Bは劣化品(初期と比べて満充電容量が低下した電池)である。
【0058】
二次電池31A、31Bに満充電容量差がある場合、2つの二次電池31A、31B間で容量アンバランスが生じると、
図11に示すように、A部(SOCが65%付近の中間SOC領域付近)、B部(SOCが97%付近の高SOC領域付近)で、OCVの大小関係が入れ替わる。すなわち、A部では、二次電池31A側の方が、二次電池31B側よりOCVが高い。一方、B部では、二次電池31B側の方が、二次電池31A側よりOCVが高い。
【0059】
従って、「第1均等化処理や第2均等化処理」では、二次電池31A側を放電させることにより、2つの二次電池31A、31B間の容量差を小さくする処理となる。一方、第3均等化処理では、二次電池31B側を放電させることにより、2つの二次電池31A、31B間の容量差を小さくする処理となる。このように、二次電池31A、31Bに満充電容量差がある場合、均等化処理では、異なる二次電池31A、31Bを放電させることになる。
【0060】
以上のことから、「第1均等化処理又は第2均等化処理」にて放電する二次電池31と、「第3均等化処理」にて放電する二次電池31が同じかどうかを判定することで、二次電池31A、31Bに満充電容量差が有るかどうかを判定することが可能である。
尚、満充電容量差がある場合に、
図11に示すA部とB部で、OCVの大小関係が入れ替わる理由は、リン酸鉄系のリチウムイオン電池は、劣化すると、低変化領域L2の容量が減るように変化する。そのため、アンバランスの仕方により、A部とB部で大小関係が入れ替わる。
【0061】
本実施形態では、均等化処理の実行後、放電した二次電池31を記憶しておき、次に均等化処理を実行する時に、放電する二次電池31が前回と同じかどうかにより、二次電池31A、31B間に満充電容量差があるかどうか検出する。そして、満充電容量差の有無に応じて、均等化制御の実行パターンを切り換えるようにしている。
【0062】
図12は、均等化制御の実行パターンの切り換え手順を示すフローチャート図である。
制御部60は、上記の方法にて、二次電池31A、31Bに満充電容量差があるか、否かを判定する処理を行う(S100)。そして、満充電容量差がない場合、制御部60は、実施形態1の場合と同様に(1)〜(4)の場合に応じて、第1均等化処理〜第3均等化処理を実行する(S120)。
【0063】
一方、満充電容量差がある場合は、第1均等化処理と第2均等化処理の実行を禁止し、(4)に該当する場合に、第3均等化処理のみ実行する(S110)。具体的には、第3高変化領域H3に2つの二次電池31A、31Bが含まれ、かつOCVの値が所定値以上異なる場合、OCVの高い側の二次電池31を放電することにより、2つの二次電池31A、31Bの容量を均等化する。
【0064】
このようにすることで、次の効果が得られる。
図11に示すように、劣化した二次電池31Bは、劣化のない二次電池31Aに比べて、B部付近(SOCが97%付近の高SOC領域付近)で立ち上がりが早くなる傾向になる。特に、第1均等化処理と第2均等化処理を行うと、その傾向が顕著になる恐れがあり、満充電付近で、劣化した二次電池31Bに過電圧が発生し易くなる。
【0065】
この点、本例では、上記のように第1均等化処理と第2均等化処理の実行を禁止して、第3均等化処理のみ実行することで、
図13に示すように、第3高変化領域H3にて、二次電池31A、31Bの容量が均等化され、2つの二次電池31A、31BのSOC−OCV相関特性の高SOC領域の立ち上がりが、B部で揃うので、過電圧の発生を抑えることが可能となる。
【0066】
また、2つの二次電池31A、31Bに満充電容量差がある場合に、第3均等化処理を実行すると、満充電容量差が、
図13のA部において、SOC−OCV相関特性のずれとして現れる。すなわち、二次電池31Bが低変化領域L2から第1高変化領域H1に移行するポイントP2と、二次電池31Aが低変化領域L2から第1高変化領域H1に移行するポイントP3間に満充電容量差に応じたずれが生じる。また、二次電池31Bが第1高変化領域H1から低変化領域L1に移行するポイントP4と、二次電池31Aが第1高変化領域H1から低変化領域に移行するポイントP5間に満充電容量差に応じたずれが生じる。
【0067】
そのため、第3均等化処理後、二次電池31A、31Bを放電すると、ポイントP2とP3、ポイントP4とP5の位置のずれが、2つの二次電池31A、31Bの電圧が変化するタイミングとなって現れる。従って、所定の電圧値付近(
図14の例では3.34V付近)において、2つの二次電池31A、31Bの電圧が変化するタイミングの時間差を検出することで、二次電池31A、31Bの満充電容量差の大きさを検出することが出来る。
【0068】
図14の例であれば、満充電後の時刻t0で放電を開始してから、二次電池31Bの電圧は下降し、時刻「t1」で電圧推移の傾向が変化(変極点が現れる)する。その後、電圧は、概ね3.34Vで変化はほとんどなく、時刻「t2」で電圧が変化し、それ以降、電圧は下降する。また、二次電池31Aは、時刻t0以降、電圧が下降し、時刻「t1」で、電圧推移の傾向(変極点が現れる)が変化する。その後、電圧は、概ね3.34Vで変化はほとんどなく、時刻「t3」で電圧が変化し、それ以降、電圧は下降する。
【0069】
時刻「t1」は、
図13に示すように、二次電池31A、31Bが第3高変化領域H3から低変化領域L2に移行するポイント「P1」に対応する。また、時刻「t2」は、二次電池31Bが低変化領域L2から第1高変化領域H1に移行するポイント「P2」に対応し、時刻「t3」は、二次電池31Aが低変化領域L2から第1高変化領域H1に移行するポイント「P3」に対応する。
【0070】
従って、満充電容量差により位置のずれが生じた2つポイントP2、P3に対応する2点の時間差T(t3−t2)から、二次電池31A、31Bの満充電容量差の大きさを検出することが出来る。制御部60は、検出した満充電容量差を規定値と比較する処理を行い、満充電容量差が規定値を上回っている場合、例えば、異常表示を行う等のエラー処理を行う。
【0071】
また、時刻t2、時刻t3は、電圧推移の傾向が変化する変極点であることから、変極点が出現するタイミングの差を検出することでも、二次電池31A、31Bの満充電容量差の大きさを検出することが出来る。変極点とは、
図14に示す電圧曲線に変化(グラフの傾きが変わる)が現れる点である。
【0072】
尚、上記以外にも、2つのポイントP3、P4に対応する2点の時間差T(t4−t3)から、二次電池31A、31Bの満充電容量差の大きさを検出することも出来る。また、それ以外にも、ポイントP2に対応する時刻「t2」からポイントP3に対応する時刻「t3」までの二次電池31A、31Bの累積充放電量に基づいて満充電量差の大きさを検出するようにしてもよい。
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0073】
(1)実施形態1、2では、蓄電素子の一例にリチウムイオン二次電池31を例示した。蓄電素子は、SOCに対するOCVの変化率が相対的に低い2つの低変化領域L1、L2と、2つの前記低変化領域L1、L2の間にSOCに対するOCVの変化率が相対的に高い第1高変化領域H1を有する特性であれば、リチウムイオン電池以外であってもよい。
【0074】
(2)実施形態1、2では、2つの二次電池31A、31Bのうち、OCVの高い側の二次電池31を放電することにより、2つの二次電池31の容量を均等化した例を示したが、OCVの低い側の二次電池31を充電することにより、2つの二次電池31の容量を均等化してもよい。また、充電と放電を組み合わせて均等化するようにしてもよい。例えば、2つの二次電池31A、31Bが低変化領域L1とL2に分かれている場合、低変化領域L2側の二次電池31Bにて容量Ccd/2を放電し、低変化領域L1側の二次電池31Aにて容量Ccd/2を充電するようにしてもよい。
【0075】
(3)実施形態1、2では、OCVの計測値を利用して、二次電池31A、31Bがどの変化領域L1、L2、H1〜H3に含まれているか判定した。変化領域の判定方法はOCVの計測値を利用する方法の他、充放電時の二次電池31の電圧曲線を利用する方法でもよい。
【0076】
すなわち、例えば、2つの二次電池31が低変化領域L1に含まれている状態から組電池30を充電してゆくと、二次電圧31が低変化領域L1から第1高変化領域H1に移行するタイミング、すなわち、
図4の端点cにて、二次電池31に電圧変化が検出される。また、二次電圧31が第1高変化領域H1から低変化領域L2に移行するタイミング、すなわち、
図4の端点dにて、二次電池31に電圧変化が検出される。従って、各二次電池31A、31Bにて端点c、端点dに対応する電圧変化が検出されたか、どうかを判定することにより、各二次電池31A、31Bがどの変化領域L1、L2、H1に含まれているか判定することが可能である。また、
図4の端点dや端点cは、電圧推移の傾向が変化する変極点でもあるので、変極点を検出することでも、同様の判定が可能である。
【0077】
また、上記した判定方法以外に、電流センサ40から得られる電流値と内部抵抗から二次電池31の電圧を演算し、演算した電圧の大きさから二次電池31がどの変化領域に含まれているか、推定することも出来る。
【0078】
(4)実施形態2では、満充電容量差がある場合に、第1均等化処理と第2均等化処理の実行を禁止し、第3均等化処理のみ実行する例を示した。しかしながら、例えば、満充電まで充電されない用途や、充電時に二次電池31が過電圧となる可能性が低い場合(組電池の総電圧ではなく、二次電池の各セル電圧を対象に充電制御が実行される場合)、実施形態2の例とは反対に、第1均等化処理又は第2均等化処理を実行し、第3均等化処理の実行を禁止するようにしてもよい。このようにすることでも、均等化の実行頻度を高い状態に維持することが可能となり、二次電池31間の容量アンバランスを最小限に抑えることが可能となる。
【0079】
また、第1均等化処理又は第2均等化処理を実行し、第3均等化処理の実行を禁止する場合、満充電容量差は、高SOC領域(
図11のB部)における立ち上がりのずれとして現れる。従って、この場合は、2つの二次電池31の電圧が変化するタイミングから、立ち上がり部のずれを検出することにより、満充電容量差の大きさを検出することが出来る。
【0080】
(5)実施形態2では、「第1均等化処理又は第2均等化処理」にて放電する二次電池31と、「第3均等化処理」にて放電する二次電池31が同じかどうかを判定することで、二次電池31A、31Bに満充電容量差が有るかどうかを判定した。これ以外にも、例えば、内部抵抗の大きさから満充電容量差の有無を検出するようにしてもよい。
【0081】
(6)実施形態1では、(1)〜(4)に該当する場合、第1〜第3均等化処理を実行し、それ以外の場合は、均等化処理を実行しないようにした。(1)〜(4)に該当しない場合でも、2つの二次電池31A、31Bが、異なる2つの高変化領域Hに分かれている場合は、均等化処理を行ってもよい。例えば、2つの二次電池31A、31Bが第1高変化領域H1と第3高変化領域H3に分かれている場合、OCVを計測して、2つの二次電池31A、31Bの容量差を算出する。そして、OCVが高い側の二次電池を、求めた容量差だけ放電することにより、2つの二次電池31A、31Bの容量を均等化できる。
【0082】
(6)実施形態1では、電流センサ40をBM50とは別に設けた例を示したが、電流センサ40をBM50に含めるような構成でもよい。