特許第6489435号(P6489435)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6489435
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】モンテルカストナトリウム顆粒製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/47 20060101AFI20190318BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20190318BHJP
   A61P 11/02 20060101ALI20190318BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20190318BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20190318BHJP
   A61K 47/38 20060101ALI20190318BHJP
   A61K 47/10 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   A61K31/47
   A61P11/06
   A61P11/02
   A61K47/26
   A61K9/16
   A61K47/38
   A61K47/10
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2015-96896(P2015-96896)
(22)【出願日】2015年4月20日
(65)【公開番号】特開2016-204347(P2016-204347A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年4月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000169880
【氏名又は名称】高田製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】神山 仁志
(72)【発明者】
【氏名】目黒 智崇
【審査官】 石井 裕美子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2005−510497(JP,A)
【文献】 特表2009−526047(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/00−31/80
A61P 1/00−43/00
A61K 9/00−9/72
A61K 47/00−47/69
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モンテルカストナトリウム、粉末還元麦芽糖水アメを含有することを特徴とする顆粒剤
【請求項2】
顆粒剤が、さらに、結晶セルロースおよびD−マンニトールを含有することを特徴とする請求項1に記載の顆粒剤
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定性の向上したモンテルカストナトリウム(Montelukast Sodium)の顆粒剤に関する、具体的には、粉末還元麦芽糖水アメを含有することを特徴とするモンテルカストナトリウム顆粒剤に関する。さらに、顆粒剤が、結晶セルロースおよびD−マンニトールを含有することを特徴とするモンテルカストナトリウムの顆粒剤に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明における有効成分であるモンテルカストナトリウム、すなわち[R−(E)]−1−[[[1−[3−[2−(7−クロロ−2−キノリニル)エテニル]フェニル]−3−[2−(1−ヒドロキシ−1−メチルエチル)フェニル]プロピル]チオ]メチル]シクロプロパン酢酸 モノナトリウム塩は、喘息およびアレルギー性鼻炎の治療として知られている。モンテルカストナトリウムは、米国特許第5、565、473号に記載されており、膜被覆錠剤及びチュアブル錠剤が既に販売されている医薬品である。
【0003】
モンテルカストナトリウムを含有する医療用顆粒剤が既に知られている。特許4420671号(文献2)は、ヒドロキシプロピルセルロースで塊状にされた噴霧乾燥したマンニトールであって、モンテルカストナトリウムでコーティングされているものである前記顆粒に関するものである。また、特表2009−526047(文献3)は、モンテルカスト又はその塩と、希釈剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、湿潤剤、又は流動促進剤のうちの少なくとも1種から選択される、医薬的に許容可能な賦形剤とを含んでなる、安定な錠剤であって、微結晶性セルロースを含有しない製剤に関するものである。
【0004】
しかしながら、文献2および文献3に記載されたモンテルカストナトリウム顆粒の分散性は十分なものとは言えない。また、本出願の構成要件である、モンテルカストナトリウム、粉末還元麦芽糖水アメを含有する顆粒剤、さらにモンテルカストナトリウム、粉末還元麦芽糖水アメ、結晶セルロースおよびD−マンニトールを含有する顆粒剤は従来知られてはいない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第5565473号
【特許文献2】特許4420671号
【特許文献3】特表2009−526047
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、分散性が改善され、服用性が向上したモンテルカストナトリウム含有顆粒剤を提供することにある。モンテルカストナトリウム含有顆粒剤は、特に小児の服用されることが多く、その場合、大人の介助で服薬している場合が圧倒的に多い。小児の投与される場合、スプーンなどの少量の水に、モンテルカストナトリウム含有顆粒剤を懸濁してから服用させることが多く、当該顆粒剤の分散性が悪いと小児に投与しづらくなることが容易に想像される。よって、モンテルカストナトリウム含有顆粒剤の分散性は小児投与に大きな影響を及ぼすものであることから、より分散性の良いモンテルカストナトリウム含有顆粒剤が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために種々検討を加えた結果、モンテルカストナトリウム顆粒製剤に、粉末還元麦芽糖水アメを含有させた顆粒剤が上記の課題を解決した良好な顆粒剤を提供することを見出した。すなわち、モンテルカストナトリウム、粉末還元麦芽糖水アメを含有することを特徴とする顆粒剤とすることにより、良好な生物学的利用能を有し、経時的にも安定で、なおかつ、分散性が改善され、服用性が向上した顆粒製剤が得られることを確認した。本発明はかかる知見に基づいて開発されたものである。すなわち、本発明は下記に掲げる顆粒剤である。
(1)モンテルカストナトリウム、粉末還元麦芽糖水アメを含有することを特徴とする顆粒剤
(2)顆粒剤が、さらに、結晶セルロースおよびD−マンニトールを含有することを特徴とする(1)に記載の顆粒剤
【0008】
本発明者らは、種々検討した結果、本発明の効果を十分に得るためには、粉末還元麦芽糖水アメを用いた顆粒剤の分散性が改善され、服用性が向上したとの結果が得られた。すなわち、本発明者らは、粉末還元麦芽糖水アメを用いた分散性が改善されたことを見出した。中でも粉末還元麦芽糖水アメを用いた顆粒剤が特に分散性に優れ、さらに、結晶セルロースおよびD−マンニトールを含有顆粒剤は、特に顕著な安定性を示す顆粒剤であることを見出し、本発明を完成させた。
【発明を実施するための形態】
【0009】
モンテルカストナトリウム化合物の配合量(w/w)は、特に限定されるものではないが、0.02〜10%であり、好ましくは0.1〜5%、さらに好ましくは0.5〜2.5%の濃度である。
【0010】
本発明に用いられる粉末還元麦芽糖水アメは、医薬品用途に用いられるものであればいずれも用いることができる。粉末還元麦芽糖水アメの添加量は、50%〜99%、好ましくは70%〜98%、さらに、好ましくは80%〜95%である。
【0011】
本発明には、さらに、結晶セルロースおよびD−マンニトールが用いられる。結晶セルロースの添加量は、0.1%〜20%、好ましくは1%〜5%であり、D−マンニトールの添加量としては、0.1%〜20%、好ましくは1%〜10%である。
【0012】
本発明の有効成分を含む顆粒の粒子径は、通常500μm以下、好ましくは300μm以下、さらに好ましくは200μm以下である。
【0013】
本発明の顆粒製剤には、上記添加剤以外に種々の崩壊剤、結合剤、希釈剤等を用いることができる。これらの崩壊剤等は、本発明の効果を損なうことの無いように使用することができ、添加する量も適宜選択できる。
【0014】
本発明に使用される崩壊剤としては、固形医薬組成物に一般に使用される崩壊剤が挙げられる。崩壊剤の例としては、アルギン酸、クロスカルメロースナトリウム、クロスポビドン、ポラクリリンカリウム、澱粉グリコール酸ナトリウム、及び澱粉が挙げられる。崩壊剤としては、澱粉グリコール酸ナトリウム、又は澱粉のうちの少なくとも1種が好ましい。崩壊剤は通常、組成物の約5重量%〜約15重量%の量で存在する。
【0015】
結合剤の例としては、アルギン酸、カルボマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デキストリン、エチルセルロース、ゼラチン、グルコース、グアールガム、ヒドロキシプロピルセルロース、マルトース、メチルセルロース、ポビドン、澱粉、メチルセルロース、又はポリエチレンオキシドが挙げられる。結合剤としてはヒドロキシプロピルセルロースが好ましい。結合剤は通常、組成物の約1重量%〜約5重量%の量で存在する。
【0016】
本発明に使用される希釈剤としては、固形医薬組成物に一般に使用される希釈剤が挙げられる。希釈剤の例としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(二塩基性又は三塩基性)、硫酸カルシウム、デキストレート、デキストリン、デキストロース賦形剤、フルクトース、カオリン、ラクチトール、無水ラクトース、ラクトース一水和物、マルトース、マンニトール、ソルビトール、スクロース、澱粉、予めゼラチン化された澱粉、又はタルクが挙げられる。希釈剤としては、ラクトース一水和物、澱粉、又はマンニトールのうちの少なくとも1種が好ましい。希釈剤は通常、組成物の約60重量%〜約95重量%の量で存在する。
【発明の効果】
【0017】
本発明によって、具体的には、モンテルカストナトリウム、粉末還元麦芽糖水アメを含有する顆粒剤にすることによって、分散性が改善され、服用性が向上したモンテルカストナトリウム顆粒剤を提供することが可能になった。
【実施例】
【0018】
以下、実施例、比較例、および試験例を示し、本発明を更に具体的に説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
【0019】
実施例1
下記表1の処方に従い、粉末還元麦芽糖水アメおよび結晶セルロースを基剤とし、ヒプロメロースおよびモンテルカストナトリウムを溶解した水溶液で塊状とした後、乾燥することによって顆粒剤を得た。
【0020】
【表1】
【0021】
比較例1
実施例1同様に下記処方の顆粒剤を得た。
【0023】
【表2】
【0024】
試験例1 分散性試験
実施例・比較例で得られた顆粒剤0.5gを、11℃または25℃の水表面に投入し、静置させた状態で顆粒剤全体が沈殿するまでの時間を計測した。その結果を表5に示す。
【0025】
【表5】
この結果より、本発明である粉末還元麦芽糖水アメを用いた顆粒剤が、水への分散性の良い製剤であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明のモンテルカストナトリウム顆粒剤は、分散性が改善され、服用性が向上したモンテルカストナトリウム含有顆粒剤を提供することができる。