特許第6489479号(P6489479)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6489479
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/306 20060101AFI20190318BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   H01L21/306 R
   H01L21/304 643A
【請求項の数】4
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-64802(P2015-64802)
(22)【出願日】2015年3月26日
(65)【公開番号】特開2016-184696(P2016-184696A)
(43)【公開日】2016年10月20日
【審査請求日】2017年12月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100087701
【弁理士】
【氏名又は名称】稲岡 耕作
(74)【代理人】
【識別番号】100101328
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 実夫
(74)【代理人】
【識別番号】100170324
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 昌秀
(72)【発明者】
【氏名】西村 優大
(72)【発明者】
【氏名】小林 健司
(72)【発明者】
【氏名】澤島 隼
(72)【発明者】
【氏名】林 豊秀
【審査官】 長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−130014(JP,A)
【文献】 特開2005−217226(JP,A)
【文献】 特開平11−165114(JP,A)
【文献】 特開2013−045972(JP,A)
【文献】 特開平11−260718(JP,A)
【文献】 特開2006−231130(JP,A)
【文献】 特開2014−022678(JP,A)
【文献】 特開2007−200954(JP,A)
【文献】 特開2013−207267(JP,A)
【文献】 特開2009−231732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30、21/304−21/3063、
21/308、21/46、21/465−21/467
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平に保持しながら基板の中央部を通る鉛直な回転軸線まわりに回転させる基板保持ユニットと、
供給流路と、複数の上流流路と、複数の下流ヒータと、集合流路と、スリット吐出口と、を含み、前記基板保持ユニットに保持されている基板に処理液を供給する処理液供給システムとを含み、
前記供給流路は、前記複数の上流流路に分岐しており、処理液を前記複数の上流流路に向けて案内し、
前記複数の上流流路は、前記回転軸線に直交する径方向に平面視で並んだ複数の副下流端を有する複数の副上流流路と、前記複数の副下流端よりも前記回転軸線側に配置された主下流端を有する主上流流路とを含み、
前記複数の下流ヒータは、前記複数の副上流流路にそれぞれ接続されており、前記複数の副下流端に供給される処理液の温度が前記回転軸線から前記副下流端までの距離が増加するにしたがって高まるように前記複数の副上流流路を流れる処理液を加熱し、
前記集合流路の上流端は、前記複数の副上流流路の前記副下流端に接続されており、
前記集合流路の上流端の幅は、前記副上流流路の前記副下流端の幅以上であり、
前記集合流路の幅は、前記集合流路の上流端から前記集合流路の下流端まで減少しており、
前記スリット吐出口は、前記複数の副上流流路よりも下流の位置で前記集合流路に接続されており、平面視で前記基板の上面中央部と前記基板の上面周縁部との間で径方向に延びるスリット状であり、前記集合流路から供給された処理液を前記基板の上面に向けて吐出する、基板処理装置。
【請求項2】
前記スリット吐出口は、平面視で前記基板の上面中央部から前記基板の上面周縁部まで径方向に延びている、請求項1に記載の基板処理装置。
【請求項3】
前記スリット吐出口の長手方向に直交する水平方向への長さを意味する前記スリット吐出口の幅は、平面視において、前記副上流流路の前記副下流端の幅よりも小さい、請求項1または2に記載の基板処理装置。
【請求項4】
前記処理液供給システムは、複数のリターン流路と、下流切替ユニットとをさらに含み、
前記複数のリターン流路は、前記複数の下流ヒータよりも下流の位置で前記複数の副上流流路にそれぞれ接続されており、
前記下流切替ユニットは、前記供給流路から前記複数の上流流路に供給された処理液が前記スリット吐出口に供給される吐出状態と、前記供給流路から前記複数の上流流路に供給された処理液が前記複数のリターン流路に供給される吐出停止状態と、を含む複数の状態のいずれかに切り替わる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を処理する基板処理装置に関する。処理対象となる基板には、たとえば、半導体ウエハ、液晶表示装置用基板、プラズマディスプレイ用基板、FED(Field Emission Display)用基板、光ディスク用基板、磁気ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、セラミック基板、太陽電池用基板などが含まれる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、半導体ウエハ等の基板を一枚ずつ処理する枚葉式の基板処理装置が開示されている。前記基板処理装置は、基板を水平に保持しながら回転させるスピンチャックと、スピンチャックに保持されている基板の上面中央部に向けて室温よりも高温の処理液を吐出するノズルとを備えている。ノズルから吐出された高温の処理液は、基板の上面中央部に着液した後、回転している基板の上面に沿って外方に流れる。これにより、高温の処理液が基板の上面全域に供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−344907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
回転している基板の上面中央部に着液した処理液は、基板の上面に沿って中央部から周縁部に流れる。その過程で、処理液の温度が次第に低下していく。そのため、温度の均一性が低下し、処理の均一性が悪化してしまう。ノズルから吐出される処理液の流量を増加させれば、処理液が基板の上面周縁部に達するまでの時間が短縮されるので、処理液の温度低下が軽減されるが、この場合、処理液の消費量が増加してしまう。
【0005】
そこで、本発明の目的の一つは、基板に供給される処理液の消費量を低減しながら、処理の均一性を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための請求項1に記載の発明は、基板を水平に保持しながら基板の中央部を通る鉛直な回転軸線まわりに回転させる基板保持ユニットと、前記基板保持ユニットに保持されている基板に処理液を供給する処理液供給システムとを含む、基板処理装置である。
前記処理液供給システムは、供給流路と、複数の上流流路と、複数の下流ヒータと、集合流路と、スリット吐出口と、を含む。前記供給流路は、前記複数の上流流路に分岐しており、処理液を前記複数の上流流路に向けて案内する。前記複数の上流流路は、前記回転軸線に直交する径方向に平面視で並んだ複数の副下流端を有する複数の副上流流路と、前記複数の副下流端よりも前記回転軸線側に配置された主下流端を有する主上流流路とを含む。前記複数の下流ヒータは、前記複数の副上流流路にそれぞれ接続されており、前記複数の副下流端に供給される処理液の温度が前記回転軸線から前記副下流端までの距離が増加するにしたがって高まるように前記複数の副上流流路を流れる処理液を加熱する。前記集合流路の上流端は、前記複数の副上流流路の前記副下流端に接続されている。前記集合流路の上流端の幅は、前記副上流流路の前記副下流端の幅以上である。前記集合流路の幅は、前記集合流路の上流端から前記集合流路の下流端まで減少している。前記スリット吐出口は、前記複数の副上流流路よりも下流の位置で前記集合流路に接続されており、平面視で前記基板の上面中央部と前記基板の上面周縁部との間で径方向に延びるスリット状であり、前記集合流路から供給された処理液を前記基板の上面に向けて吐出する。集合流路は、2つ以上の副上流流路に接続されていれば、全ての副上流流路に接続されていなくてもよい。
【0007】
この発明によれば、処理液が、供給流路から複数の上流流路に供給される。複数の上流流路に含まれる複数の副上流流路に供給された処理液は、複数の下流ヒータによって加熱される。複数の下流ヒータによって加熱された処理液は、複数の副上流流路から集合流路に供給され、スリット吐出口から基板の上面に向けて吐出される。これにより、基板の上面中央部と基板の上面周縁部との間で径方向に延びる帯状の液膜が、スリット吐出口と基板との間に形成され、基板の上面内の直線状の領域に着液する。
【0008】
径方向に並んだ複数の吐出口から基板の上面に向けて処理液を吐出させると、処理液は、径方向に離れた複数の着液位置(処理液が最初に基板に接触する位置)に着液する。処理液がエッチング液である場合、着液位置でのエッチングレート(単位時間あたりのエッチング量)は、隣接する2つの着液位置の間の位置でのエッチングレートよりも高い。そのため、処理の均一性が低下してしまう。したがって、スリット吐出口から吐出された処理液を径方向に連続した直線状の領域に着液させることにより、このような均一性の低下を防止できる。
【0009】
また、複数の副上流流路の複数の副下流端に供給される処理液の温度は、回転軸線から副下流端までの距離が増加するにしたがって高まる。複数の副下流端の真下の位置には、複数の副下流端に供給された処理液と同じまたはほぼ同じ温度の処理液が着液する。これに対して、前記真下の位置の間の位置には、隣接する2つの複数の副下流端に供給された処理液の混合液が着液する。つまり、互いに異なる温度の処理液が隣接する2つの複数の副下流端に供給され、この2つの温度の間の温度の処理液が、前記真下の位置の間の位置に着液する。
【0010】
このように、スリット吐出口の各位置での処理液の温度が、回転軸線から離れるにしたがって段階的または連続的に増加するので、均一な温度の処理液をスリット吐出口から吐出させる場合と比較して、基板上での処理液の温度の均一性を高めることができる。これにより、処理の均一性をさらに高めることができる。したがって、基板の上面中央部だけに処理液を着液させる場合と比較して、基板に供給される処理液の消費量を低減しながら、処理の均一性を高めることができる。
【0011】
また、基板の処理において、同一品質の処理液を基板の各部に供給することは、処理の均一性向上に対して重要である。上流流路ごとにタンクやフィルター等が設けられている場合、ある上流流路に供給される処理液とは品質が異なる処理液が他の上流流路に供給され得る。これに対して、本実施形態では、同じ流路(供給流路)内の処理液を各上流流路に供給する。これにより、同一品質の処理液を基板の各部に供給することができる。さらに、上流流路ごとにタンクやフィルター等が設けられている構成と比較して、部品点数を削減でき、メンテナンス作業を簡素化できる。
【0012】
請求項2に記載の発明は、前記スリット吐出口は、平面視で前記基板の上面中央部から前記基板の上面周縁部まで径方向に延びている、請求項1に記載の基板処理装置ある。
この発明によれば、スリット吐出口が、平面視で基板の上面中央部および上面周縁部に重なっている。スリット吐出口から吐出された処理液は、基板の上面中央部および上面周縁部を含む直線状の領域に同時に着液する。スリット吐出口は、回転している基板の上面に向けて処理液を吐出する。基板と前記直線状の領域との相対的な位置関係は、基板の回転によって変化する。これにより、処理液が基板の上面全域に着液するので、処理の均一性を高めることができる。
【0013】
請求項3に記載の発明は、前記スリット吐出口の長手方向に直交する水平方向への長さを意味する前記スリット吐出口の幅は、平面視において、前記副上流流路の前記副下流端の幅、たとえば前記副下流端の幅の最大値よりも小さい、請求項1または2に記載の基板処理装置ある。幅は、径方向(スリット吐出口の長手方向)に直交する水平方向への長さを意味する。
この発明によれば、スリット吐出口の幅が狭いので、副上流流路に供給された処理液の一部は、スリット吐出口に到達する前に集合流路内で長手方向に広がり、副上流流路に供給された残りの処理液は、集合流路内でスリット吐出口の長手方向に広がることなくスリット吐出口に到達する。そのため、処理液の一部は、他の副上流流路に供給された処理液と集合流路の内部または基板とスリット吐出口との間の空間で混ざり合う。これにより、基板に供給される処理液の温度を、回転軸線から離れるにしたがって段階的または連続的に増加させることができる。
【0014】
前記集合流路の下流端の幅は、前記スリット吐出口の幅と等しい。前記集合流路の上流端の幅は、前記副下流端の幅以上であることが好ましい。前記集合流路の幅は、上流端から下流端まで連続的に減少していてもよいし、段階的に減少していてもよい。集合流路の上流端の幅が副下流端の幅以上である場合、集合流路内での処理液の流れが、集合流路の上流端で妨げられにくい。したがって、集合流路の上流端の幅が副下流端の幅未満である場合と比較して、スリット吐出口から吐出される処理液の圧力低下を低減できる。
【0015】
請求項4に記載の発明は、前記処理液供給システムは、複数のリターン流路と、下流切替ユニットとをさらに含み、前記複数のリターン流路は、前記複数の下流ヒータよりも下流の位置で前記複数の副上流流路にそれぞれ接続されており、前記下流切替ユニットは、前記供給流路から前記複数の上流流路に供給された処理液が前記スリット吐出口に供給される吐出状態と、前記供給流路から前記複数の上流流路に供給された処理液が前記複数のリターン流路に供給される吐出停止状態と、を含む複数の状態のいずれかに切り替わる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の基板処理装置ある。
【0016】
処理液の温度は、基板の処理に大きな影響を及ぼす場合がある。吐出停止中に下流ヒータを停止させると、下流ヒータの運転を再開したときに、下流ヒータによって加熱された処理液の温度が意図する温度で安定するまでに時間がかかる。そのため、直ぐに処理液の吐出を再開することができず、スループット(単位時間あたりの基板の処理枚数)が低下する。したがって、吐出停止中であっても、下流ヒータに液体を加熱させることが好ましい。
【0017】
この発明によれば、吐出停止中に、処理液を上流流路に供給し、下流ヒータに加熱させる。下流ヒータによって加熱された処理液は、スリット吐出口から吐出されずに、上流流路からリターン流路に流れる。したがって、吐出停止中であっても、下流ヒータの温度が安定した状態を維持できる。そのため、直ぐに処理液の吐出を再開できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の処理液供給システムを示す模式図であり、吐出状態の処理液供給システムを示している。
図2】本発明の一実施形態に係る基板処理装置の処理液供給システムを示す模式図であり、吐出停止状態の処理液供給システムを示している。
図3】基板処理装置に備えられた処理ユニットの内部を示す模式的な正面図である。
図4】基板処理装置に備えられた処理ユニットの内部を示す模式的な平面図である。
図5】水平に見た複数のノズルおよびノズルヘッドを示す模式的な部分断面図である。
図6】複数のノズルおよびノズルヘッドを示す模式的な平面図である。
図7】複数のノズルおよびノズルヘッドを示す模式的な斜視図である。
図8】基板処理装置によって実行される基板の処理の一例を説明するための工程図である。
図9】基板のエッチング量の分布を示すグラフである。
図10】前記実施形態の第1変形例に係る複数のノズルを示す模式的な平面図である。
図11】前記実施形態の第2変形例に係る複数のノズルを示す模式図である。図11(a)は、複数のノズルを示す模式的な正面図であり、図11(b)は、複数のノズルを示す模式的な平面図である。
図12】本発明の他の実施形態に係る複数のノズルおよびノズルヘッドを水平に見たときの模式的な部分断面図である。
図13】処理前後における薄膜の厚みと基板に供給される処理液の温度とのイメージを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施形態を、添付図面を参照して詳細に説明する。
図1および図2は、本発明の一実施形態に係る基板処理装置1の処理液供給システムを示す模式図である。図1は、吐出状態の処理液供給システムを示しており、図2は、吐出停止状態の処理液供給システムを示している。
基板処理装置1は、半導体ウエハなどの円板状の基板Wを一枚ずつ処理する枚葉式の装置である。基板処理装置1は、処理液で基板Wを処理する処理ユニット2と、処理ユニット2に基板Wを搬送する搬送ロボット(図示せず)と、基板処理装置1を制御する制御装置3とを含む。制御装置3は、演算部と記憶部とを含むコンピュータである。
【0020】
基板処理装置1は、処理ユニット2に対する処理液の供給および供給停止を制御するバルブ51等の流体機器を収容する複数の流体ボックス5と、流体ボックス5を介して処理ユニット2に供給される処理液を貯留するタンク41を収容する複数の貯留ボックス6とを含む。処理ユニット2および流体ボックス5は、基板処理装置1のフレーム4の中に配置されている。処理ユニット2のチャンバー7と流体ボックス5とは、水平方向に並んでいる。貯留ボックス6は、フレーム4の外に配置されている。貯留ボックス6は、フレーム4の中に配置されていてもよい。
【0021】
図3は、処理ユニット2の内部を示す模式的な正面図である。図4は、処理ユニット2の内部を示す模式的な平面図である。
図3に示すように、処理ユニット2は、箱型のチャンバー7と、チャンバー7内で基板Wを水平に保持しながら基板Wの中央部を通る鉛直な回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンチャック11と、基板Wから排出された処理液を受け止める筒状のカップ15と含む。
【0022】
図4に示すように、チャンバー7は、基板Wが通過する搬入搬出口8aが設けられた箱型の隔壁8と、搬入搬出口8aを開閉するシャッター9とを含む。シャッター9は、搬入搬出口8aが開く開位置と、搬入搬出口8aが閉じられる閉位置(図4に示す位置)との間で、隔壁8に対して移動可能である。図示しない搬送ロボットは、搬入搬出口8aを通じてチャンバー7に基板Wを搬入し、搬入搬出口8aを通じてチャンバー7から基板Wを搬出する。
【0023】
図3に示すように、スピンチャック11は、水平な姿勢で保持された円板状のスピンベース12と、スピンベース12の上方で基板Wを水平な姿勢で保持する複数のチャックピン13と、複数のチャックピン13を回転させることにより回転軸線A1まわりに基板Wを回転させるスピンモータ14とを含む。スピンチャック11は、複数のチャックピン13を基板Wの周端面に接触させる挟持式のチャックに限らず、非デバイス形成面である基板Wの裏面(下面)をスピンベース12の上面に吸着させることにより基板Wを水平に保持するバキューム式のチャックであってもよい。
【0024】
図3に示すように、カップ15は、スピンチャック11を回転軸線A1まわりに取り囲む筒状のスプラッシュガード17と、スプラッシュガード17を回転軸線A1まわりに取り囲む円筒状の外壁16とを含む。処理ユニット2は、スプラッシュガード17の上端がスピンチャック11による基板Wの保持位置よりも上方に位置する上位置(図3に示す位置)と、スプラッシュガード17の上端がスピンチャック11による基板Wの保持位置よりも下方に位置する下位置との間で、スプラッシュガード17を鉛直に昇降させるガード昇降ユニット18を含む。
【0025】
図3に示すように、処理ユニット2は、スピンチャック11に保持されている基板Wの上面に向けてリンス液を下方に吐出するリンス液ノズル21を含む。リンス液ノズル21は、リンス液バルブ23が介装されたリンス液配管22に接続されている。処理ユニット2は、処理位置と待機位置との間でリンス液ノズル21を移動させるノズル移動ユニットを備えていてもよい。
【0026】
リンス液バルブ23が開かれると、リンス液が、リンス液配管22からリンス液ノズル21に供給され、リンス液ノズル21から吐出される。リンス液は、たとえば、純水(脱イオン水:Deionized water)である。リンス液は、純水に限らず、炭酸水、電解イオン水、水素水、オゾン水、および希釈濃度(たとえば、10〜100ppm程度)の塩酸水のいずれかであってもよい。
【0027】
図4に示すように、処理ユニット2は、薬液を下方に吐出する複数のノズル26(第1ノズル26A、第2ノズル26B、第3ノズル26C、および第4ノズル26D)と、複数のノズル26のそれぞれを保持するホルダ25と、ホルダ25を移動させることにより、処理位置(図4で二点鎖線で示す位置)と待機位置(図4で実線で示す位置)との間で複数のノズル26を移動させるノズル移動ユニット24とを含む。
【0028】
薬液の代表例は、TMAH(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド)などのエッチング液や、SPM(硫酸および過酸化水素水を含む混合液)などのレジスト剥離液である。薬液は、TMAHおよびSPMに限らず、硫酸、酢酸、硝酸、塩酸、フッ酸、アンモニア水、過酸化水素水、有機酸(たとえばクエン酸、蓚酸など)、TMAH以外の有機アルカリ、界面活性剤、腐食防止剤のうちの少なくとも1つを含む液であってもよい。
【0029】
図3に示すように、各ノズル26は、ホルダ25によって片持ち支持されたノズル本体27と、他のノズル26と共有のノズルヘッド33とを含む。ノズル本体27は、ホルダ25から水平な長手方向D1に延びるアーム部28と、アーム部28の先端28aから下方に延びる先端部29とを含む。アーム部28の先端28aは、平面視においてホルダ25から長手方向D1に最も遠い部分を意味する。ノズルヘッド33は、各ノズル本体27の先端部29に支持されている。
【0030】
図4に示すように、複数のアーム部28は、第1ノズル26A〜第4ノズル26Dの順番で、長手方向D1に直交する水平な配列方向D2に並んでいる。複数のアーム部28は、同じ高さに配置されている。配列方向D2に隣接する2つのアーム部28の間隔は、他のいずれの間隔と同じであってもよいし、他の間隔の少なくとも一つと異なっていてもよい。図4は、複数のアーム部28が等間隔で配置されている例を示している。
【0031】
長手方向D1への複数のアーム部28の長さは、第1ノズル26A〜第4ノズル26Dの順番で短くなっている。複数のノズル26の先端(複数のアーム部28の先端28a)は、長手方向D1に関して第1ノズル26A〜第4ノズル26Dの順番で並ぶように長手方向D1にずれている。複数のノズル26の先端は、平面視で直線状に並んでいる。
ノズル移動ユニット24は、カップ15のまわりで鉛直に延びるノズル回動軸線A2まわりにホルダ25を回動させることにより、平面視で基板Wを通る円弧状の経路に沿って複数のノズル26を移動させる。これにより、処理位置と待機位置との間で複数のノズル26が水平に移動する。処理ユニット2は、複数のノズル26の待機位置の下方に配置された有底筒状の待機ポット35を含む。待機ポット35は、平面視でカップ15のまわりに配置されている。
【0032】
処理位置は、ノズルヘッド33から吐出された薬液が基板Wの上面に着液する位置である。処理位置では、ノズルヘッド33と基板Wとが平面視で重なり、複数のノズル26の先端が、平面視において、回転軸線A1側から第1ノズル26A〜第4ノズル26Dの順番で径方向Drに並ぶ。このとき、第1ノズル26Aの先端は、平面視で基板Wの中央部に重なり、第4ノズル26Dの先端は、平面視で基板Wの周縁部に重なる。
【0033】
待機位置は、ノズルヘッド33と基板Wとが平面視で重ならないように、複数のノズル26が退避した位置である。待機位置では、複数のノズル26の先端が、平面視でカップ15の外周面(外壁16の外周面)に沿うようにカップ15の外側に位置し、第1ノズル26A〜第4ノズル26Dの順番で周方向(回転軸線A1まわりの方向)に並ぶ。複数のノズル26は、第1ノズル26A〜第4ノズル26Dの順番で、回転軸線A1から遠ざかるように配置される。
【0034】
次に、図5図7を参照して、複数のノズル26について説明する。その後、処理液供給システムについて説明する。図5図7は、複数のノズル26が処理位置に配置されている状態を示している。
以下の説明では、第1ノズル26Aに対応する構成の先頭および末尾に、それぞれ「第1」および「A」を付ける場合がある。たとえば、第1ノズル26Aに対応する上流流路48を、「第1上流流路48A」という場合がある。第2ノズル26B〜第4ノズル26Dに対応する構成についても同様である。
【0035】
また、以下の説明では、上流ヒータ43による処理液の加熱温度を上流温度といい、下流ヒータ53による処理液の加熱温度を下流温度という場合がある。第2下流ヒータ53〜第4下流ヒータ53による処理液の加熱温度を、それぞれ、第2下流温度〜第4加熱温度という場合もある。
図5に示すように、ノズル本体27は、処理液を案内する樹脂チューブ30と、樹脂チューブ30を取り囲む断面筒状の芯金31と、芯金31の外面を覆う断面筒状の樹脂コーティング32とを含む。吐出口が形成された樹脂チューブ30の下面は、ノズルヘッド33の内部に配置されている。
【0036】
ノズル本体27は、ノズル本体27に沿って延びる1つの流路を形成している。ノズル本体27の流路は、後述する上流流路48の一部に相当する。図6に示すように、第1上流流路48A〜第4上流流路48Dの下流端48dは、回転軸線A1からの距離が異なる複数の位置にそれぞれ配置されており、平面視で径方向Drに並んでいる。
第1上流流路48Aの下流端48dは、第2上流流路48B〜第4上流流路48Dの下流端48dよりも回転軸線A1側に配置されている。第1上流流路48Aは、主上流流路の一例であり、第2上流流路48B〜第4上流流路48Dは、複数の副上流流路の一例である。第1上流流路48Aの下流端48dは、主下流端の一例であり、第2上流流路48B〜第4上流流路48Dの下流端48dは、複数の下流端の一例である。
【0037】
図5に示すように、ノズルヘッド33は、複数のノズル本体27から供給された処理液を案内する1つの流路(集合流路52)と、ノズルヘッド33の下面で開口するスリット状のスリット吐出口34とを形成している。スリット吐出口34は、基板Wの上面と平行である。スリット吐出口34は、各上流流路48A〜48Dの下流端48dの下方に配置されている。
【0038】
図6に示すように、スリット吐出口34は、平面視で基板Wの上面中央部から基板Wの上面周縁部まで径方向Drに延びている。スリット吐出口34の幅W1(幅は、径方向Drに直交する水平方向への長さを意味する。以下同様。)は、スリット吐出口34の一端からスリット吐出口34の他端まで一定である。スリット吐出口34の幅W1は、各上流流路48A〜48Dの下流端48dの直径よりも小さい。各上流流路48A〜48Dの下流端48dの一部は、平面視でスリット吐出口34に重なっており、残りの部分は、平面視でスリット吐出口34に重なっていない。スリット吐出口34は、集合流路52から供給された薬液を基板Wの上面に対して垂直な吐出方向に吐出する。
【0039】
図7に示すように、集合流路52は、各上流流路48A〜48Dの下流端48dをスリット吐出口34に接続している。集合流路52の幅は、集合流路52の上流端52uから集合流路52の下流端52dまで連続的に減少している。集合流路52の上流端52uの幅W2は、各上流流路48A〜48Dの下流端48dの直径以上である。集合流路52の下流端52dの幅は、スリット吐出口34の幅W1と等しい。
【0040】
集合流路52の高さ、つまり、集合流路52の下流端52dから集合流路52の上流端52uまでの鉛直方向の距離は、集合流路52の上流端52uの幅W2よりも大きい。径方向Drへの集合流路52の長さは、第1上流流路48Aの下流端48dから第4上流流路48Dの下流端48dまでの径方向Drへの距離よりも長い。径方向Drにおける集合流路52の両端は、ノズルヘッド33によって閉じられている。
【0041】
各上流流路48A〜48Dに供給された処理液は、集合流路52内に供給される。スリット吐出口34の幅W1が狭いので、各上流流路48A〜48Dの下流端48dに供給された処理液の一部は、スリット吐出口34に達する前に集合流路52内で長手方向に広がり、残りの処理液は、集合流路52内で長手方向に広がることなくスリット吐出口34から吐出される。そのため、ある上流流路48に供給された処理液の一部は、他の上流流路48に供給された処理液と集合流路52の内部または基板Wとスリット吐出口34との間の空間で混ざり合う。これにより、スリット吐出口34の全域またはほぼ全域に処理液が供給され、径方向Drに延びる帯状の液膜が、スリット吐出口34と基板Wとの間に形成される。
【0042】
次に、図1および図2を参照して、処理液供給システムについて詳細に説明する。
処理液供給システムは、薬液を貯留する薬液タンク41と、薬液タンク41から送られた薬液を案内する薬液流路42と、薬液流路42内を流れる薬液を室温(たとえば20〜30℃)よりも高い上流温度で加熱することにより薬液タンク41内の薬液の温度を調整する上流ヒータ43と、薬液タンク41内の薬液を薬液流路42に送るポンプ44と、薬液流路42内の薬液を薬液タンク41に戻す循環流路40とを含む。
【0043】
処理液供給システムは、薬液流路42を開閉する供給バルブ45と、循環流路40を開閉する循環バルブ46と、薬液流路42に接続された供給流路47とを含む。上流切替ユニットは、供給バルブ45を含む。
処理液供給システムは、供給流路47から供給された薬液をスリット吐出口34に向けて案内する複数の上流流路48と、複数の上流流路48から供給された薬液をスリット吐出口34に供給する集合流路52とを含む。処理液供給システムは、さらに、複数の上流流路48内を流れる液体の流量を検出する複数の流量計49と、複数の上流流路48内を流れる液体の流量を変更する複数の流量調整バルブ50と、複数の上流流路48をそれぞれ開閉する複数の吐出バルブ51とを含む。図示はしないが、流量調整バルブ50は、流路を開閉するバルブ本体と、バルブ本体の開度を変更するアクチュエータとを含む。アクチュエータは、空圧アクチュエータまたは電動アクチュエータであってもよいし、これら以外のアクチュエータであってもよい。
【0044】
処理液供給システムは、第1上流流路48A以外の複数の上流流路48内を流れる薬液を上流温度よりも高い下流温度で加熱する複数の下流ヒータ53を含む。処理液供給システムは、さらに、複数の下流ヒータ53よりも下流の位置で第1上流流路48A以外の複数の上流流路48にそれぞれ接続された複数のリターン流路54と、複数のリターン流路54をそれぞれ開閉する複数のリターンバルブ55とを含む。下流切替ユニットは、複数の吐出バルブ51と、複数のリターンバルブ55とを含む。
【0045】
処理液供給システムは、複数のリターン流路54から供給された薬液を冷却するクーラー56と、クーラー56から薬液タンク41に薬液を案内するタンク回収流路57とを含む。複数のリターン流路54からクーラー56に供給された薬液は、クーラー56によって上流温度に近づけられた後、タンク回収流路57を介して薬液タンク41に案内される。クーラー56は、水冷ユニットまたは空冷ユニットであってもよいし、これら以外の冷却ユニットであってもよい。
【0046】
次に、図1を参照して、スリット吐出口34が薬液を吐出する吐出状態の処理液供給システムについて説明する。図1では、開いているバルブを黒色で示しており、閉じているバルブを白色で示している。
薬液タンク41内の薬液は、ポンプ44によって薬液流路42に送られる。ポンプ44によって送られた薬液は、上流ヒータ43によって加熱された後、薬液流路42から供給流路47に流れ、供給流路47から複数の上流流路48に流れる。複数の上流流路48に供給された薬液は、集合流路52を介して複数の上流流路48からスリット吐出口34に供給される。これにより、複数の上流流路48に供給された薬液がスリット吐出口34から基板Wの上面に向けて吐出される。
【0047】
第1上流流路48A以外の複数の上流流路48に供給された薬液は、スリット吐出口34に供給される前に、下流ヒータ53によって加熱される。下流ヒータ53による処理液の加熱温度(下流温度)は、上流ヒータ43による処理液の加熱温度(上流温度)よりも高い。第2〜第4下流温度は、第2〜第4下流温度の順番で高くなっている。したがって、第1上流流路48A〜第4上流流路48Dの下流端48d(図5参照)に供給される薬液の温度は、第1上流流路48A〜第4上流流路48Dの順番で段階的に増加する。
【0048】
次に、図2を参照して、スリット吐出口34からの薬液の吐出が停止された吐出停止状態の処理液供給システムについて説明する。図2では、開いているバルブを黒色で示しており、閉じているバルブを白色で示している。
薬液タンク41内の薬液は、ポンプ44によって薬液流路42に送られる。ポンプ44によって送られた薬液の一部は、上流ヒータ43によって加熱された後、循環流路40を介して薬液タンク41に戻る。ポンプ44によって送られた残りの薬液は、薬液流路42から供給流路47に流れ、供給流路47から第1上流流路48A以外の複数の上流流路48に流れる。
【0049】
第2上流流路48B内の薬液は、第2上流流路48Bに対応する下流ヒータ53によって加熱された後、リターン流路54を介してクーラー56に流れる。第3上流流路48Cおよび第4上流流路48Dについては、第2上流流路48Bと同様である。クーラー56に供給された薬液は、クーラー56で冷却された後、タンク回収流路57を介して薬液タンク41に戻る。これにより、ポンプ44によって薬液流路42に送られた全ての薬液が、薬液タンク41に戻る。
【0050】
処理液の温度は、基板Wの処理に大きな影響を及ぼす場合がある。吐出停止中に下流ヒータ53を停止させると、下流ヒータ53の運転を再開したときに、下流ヒータ53によって加熱された処理液の温度が意図する温度で安定するまでに時間がかかる。そのため、直ぐに処理液の吐出を再開することができず、スループットが低下する。
前述のように、吐出停止中であっても、薬液を下流ヒータ53に流し続け、下流ヒータ53に薬液を加熱させる。これにより、下流ヒータ53の温度が安定した状態を維持できる。さらに、下流ヒータ53によって加熱された薬液を薬液タンク41に戻すので、薬液の消費量を低減できる。しかも、クーラー56によって冷却した薬液を薬液タンク41に戻すので、薬液タンク41内の薬液の温度の変動を抑えることができる。
【0051】
図8は、基板処理装置1によって実行される基板Wの処理の一例を説明するための工程図である。以下の各動作は、制御装置3が基板処理装置1を制御することにより実行される。以下では図3および図4を参照する。図8については適宜参照する。
処理ユニット2によって基板Wが処理されるときには、複数のノズル26がスピンチャック11の上方から退避しており、スプラッシュガード17が下位置に位置している状態で、搬送ロボットのハンド(図示せず)によって、基板Wがチャンバー7内に搬入される。これにより、表面が上に向けられた状態で基板Wが複数のチャックピン13の上に置かれる。その後、搬送ロボットのハンドがチャンバー7の内部から退避し、チャンバー7の搬入搬出口8aがシャッター9で閉じられる。
【0052】
基板Wが複数のチャックピン13の上に置かれた後は、複数のチャックピン13が基板Wの周縁部に押し付けられ、基板Wが複数のチャックピン13によって把持される。また、ガード昇降ユニット18が、スプラッシュガード17を下位置から上位置に移動させる。これにより、スプラッシュガード17の上端が基板Wよりも上方に配置される。その後、スピンモータ14が駆動され、基板Wの回転が開始される。これにより、基板Wが所定の液処理速度(たとえば数百rpm)で回転する。
【0053】
次に、ノズル移動ユニット24が、複数のノズル26を待機位置から処理位置に移動させる。これにより、ノズルヘッド33が平面視で基板Wに重なる。その後、複数の吐出バルブ51等が制御され、薬液が複数のノズル26から同時に吐出される(図8のステップS1)。複数のノズル26は、ノズル移動ユニット24が複数のノズル26を静止させている状態で薬液を吐出する。複数の吐出バルブ51が開かれてから所定時間が経過すると、複数のノズル26からの薬液の吐出が同時に停止される(図8のステップS2)。その後、ノズル移動ユニット24が、複数のノズル26を処理位置から待機位置に移動させる。
【0054】
複数のノズル26から吐出された薬液は、基板Wの上面内の直線状の領域に同時に着液する(図7参照)。複数のノズル26は、回転している基板Wの上面に向けて薬液を吐出する。そのため、基板Wと直線状の領域との相対的な位置関係は、基板Wの回転によって変化する。これにより、薬液が基板Wの上面全域に着液する。このようにして、薬液が基板Wの上面全域に供給され、基板Wの上面全域を覆う薬液の液膜が基板W上に形成される。これにより、基板Wの上面全域が薬液で処理される。また、基板W上の薬液は、基板Wの上面周縁部から基板Wの周囲に飛散し、スプラッシュガード17の内周面に受け止められる。
【0055】
複数のノズル26からの薬液の吐出が停止された後は、リンス液バルブ23が開かれ、リンス液ノズル21からのリンス液(純水)の吐出が開始される(図8のステップS3)。これにより、基板W上の薬液がリンス液によって洗い流され、基板Wの上面全域を覆うリンス液の液膜が形成される。リンス液バルブ23が開かれてから所定時間が経過すると、リンス液バルブ23が閉じられ、リンス液ノズル21からのリンス液の吐出が停止される(図8のステップS4)。
【0056】
リンス液ノズル21からのリンス液の吐出が停止された後は、基板Wがスピンモータ14によって回転方向に加速され、液処理速度よりも大きい乾燥速度(たとえば数千rpm)で基板Wが回転する(図8のステップS5)。これにより、基板Wに付着しているリンス液が基板Wの周囲に振り切られ、基板Wが乾燥する。基板Wの高速回転が開始されてから所定時間が経過すると、スピンモータ14および基板Wの回転が停止される。
【0057】
基板Wの回転が停止された後は、ガード昇降ユニット18が、スプラッシュガード17を上位置から下位置に移動させる。さらに、複数のチャックピン13による基板Wの保持が解除される。搬送ロボットは、複数のノズル26がスピンチャック11の上方から退避しており、スプラッシュガード17が下位置に位置している状態で、ハンドをチャンバー7の内部に進入させる。その後、搬送ロボットは、ハンドによってスピンチャック11上の基板Wを取り、この基板Wをチャンバー7から搬出する。
【0058】
図9は、基板Wのエッチング量の分布を示すグラフである。
図9に示す測定値A〜測定値Bにおける基板Wの処理条件は、薬液を吐出するノズルを除き、同一である。
測定値Aは、ノズルヘッド33が取り外された複数のノズル26を静止させながら、複数のノズル26に薬液を吐出させて、基板Wをエッチングしたときのエッチング量の分布を示している。すなわち、測定値Aは、4本のノズル本体27にそれぞれ設けられた4つの吐出口(第1上流流路48A〜第4上流流路48Dの下流端48dに相当するもの)に薬液を吐出させたときのエッチング量の分布を示している。
【0059】
測定値Bは、1つの吐出口(第1上流流路48Aの下流端48dに相当するもの)だけに薬液を吐出させ、薬液の着液位置を基板Wの上面中央部で固定したときのエッチング量の分布を示している。
測定値Bでは、基板Wの中央部から離れるにしたがってエッチング量が減少しており、エッチング量の分布が山形の曲線を示している。つまり、エッチング量は、薬液の着液位置で最も大きく、着液位置から離れるにしたがって減少している。これに対して、測定値Aでは、測定値Bと比較して、基板Wの中央部以外の位置でのエッチング量が増加しており、エッチングの均一性が大幅に改善されている。
【0060】
測定値Aでは、7つの山が形成されている。真ん中の山の頂点は、最も内側の着液位置に対応する位置であり、その外側の2つの山の頂点は、内側から2番目の着液位置に対応する位置である。さらに外側の2つの山の位置は、内側から3番目の着液位置に対応する位置であり、最も外側の2つの山の位置は、内側から4番目の着液位置に対応する位置である。
【0061】
このように、径方向Drに並んだ複数の吐出口から基板Wの上面に向けて薬液を吐出させると、薬液は、径方向Drに離れた複数の着液位置に着液する。着液位置でのエッチングレートは、隣接する2つの着液位置の間の位置でのエッチングレートよりも高い。そのため、処理の均一性が低下してしまう。したがって、スリット吐出口34から吐出された薬液を径方向Drに連続した直線状の領域に着液させることにより、このような均一性の低下を防止できる。
【0062】
以上のように本実施形態では、処理液が、供給流路47から全ての上流流路48に供給され、全ての上流流路48から集合流路52に供給される。集合流路52に供給された処理液は、スリット吐出口34から基板Wの上面に向けて吐出される。これにより、基板Wの上面中央部と基板Wの上面周縁部との間で径方向Drに延びる帯状の液膜が、スリット吐出口34と基板Wとの間に形成され、基板Wの上面内の直線状の領域に着液する。したがって、径方向Drに並んだ複数の吐出口から処理液を吐出させる場合と比較して、処理の均一性を高めることができる。
【0063】
また、第1上流流路48A〜第4上流流路48Dの下流端48dに供給される処理液の温度は、回転軸線A1から下流端48dまでの距離が増加するにしたがって高まる。複数の下流端48dの真下の位置には、複数の下流端48dに供給された処理液と同じまたはほぼ同じ温度の処理液が着液する。これに対して、前記真下の位置の間の位置には、隣接する2つの複数の下流端48dに供給された処理液の混合液が着液する。つまり、互いに異なる温度の処理液が隣接する2つの複数の下流端48dに供給され、この2つの温度の間の温度の処理液が、前記真下の位置の間の位置に着液する。
【0064】
このように、スリット吐出口34の各位置での処理液の温度が、回転軸線A1から離れるにしたがって段階的または連続的に増加するので、均一な温度の処理液をスリット吐出口34から吐出させる場合と比較して、基板W上での処理液の温度の均一性を高めることができる。これにより、処理の均一性をさらに高めることができる。したがって、基板Wの上面中央部だけに処理液を着液させる場合と比較して、基板Wに供給される処理液の消費量を低減しながら、処理の均一性を高めることができる。
【0065】
また本実施形態では、スリット吐出口34が、平面視で基板Wの上面中央部および上面周縁部に重なっている。スリット吐出口34から吐出された処理液は、基板Wの上面中央部および上面周縁部を含む直線状の領域に同時に着液する。スリット吐出口34は、回転している基板Wの上面に向けて処理液を吐出する。基板Wと直線状の領域との相対的な位置関係は、基板Wの回転によって変化する。これにより、処理液が基板Wの上面全域に着液するので、処理の均一性を高めることができる。
【0066】
また本実施形態では、スリット吐出口34の幅W1が狭いので、上流流路48に供給された処理液の一部は、スリット吐出口34に到達する前に集合流路52内で長手方向に広がり、上流流路48に供給された残りの処理液は、集合流路52内でスリット吐出口34の長手方向に広がることなくスリット吐出口34に到達する。そのため、処理液の一部は、他の上流流路48に供給された処理液と集合流路52の内部または基板Wとスリット吐出口34との間の空間で混ざり合う。これにより、基板Wに供給される処理液の温度を、回転軸線A1から離れるにしたがって段階的または連続的に増加させることができる。
【0067】
また本実施形態では、複数のアーム部28の先端28aが平面視で径方向Drに並んでいる(図4参照)。複数のアーム部28の先端28aが平面視で径方向Drに並ぶように、同じ長さの複数のノズル26を長手方向D1に直交する水平方向に並べると、複数のノズル26全体の幅が増加する(図10参照)。複数のアーム部28の先端28aが平面視で径方向Drに並ぶように、長さが異なる複数のノズル26を鉛直方向に並べると、複数のノズル26全体の高さが増加する(図11参照)。
【0068】
これに対して、本実施形態では、複数のアーム部28を長手方向D1に直交する水平な配列方向D2に並べる。さらに、複数のアーム部28の先端28aが長手方向D1に関して回転軸線A1側から第1ノズル26A〜第4ノズル26Dの順番で並ぶように、複数のアーム部28の先端28aを長手方向D1にずらす(図4参照)。これにより、複数のノズル26全体の幅および高さの両方を抑えながら、第1ノズル26A〜第4ノズル26Dの先端28aを平面視で径方向Drに並べることができる。
【0069】
また本実施形態では、複数の上流流路48の上流端が流体ボックス5内に配置されている。供給流路47は、流体ボックス5内で複数の上流流路48に分岐している。したがって、供給流路47が流体ボックス5よりも上流の位置で複数の上流流路48に分岐している場合と比較して、各上流流路48の長さ(液体が流れる方向の長さ)を短縮できる。これにより、処理液から上流流路48への伝熱による処理液の温度低下を抑制できる。
【0070】
本発明の実施形態の説明は以上であるが、本発明は、前述の実施形態の内容に限定されるものではなく、本発明の範囲内において種々の変更が可能である。
たとえば、前記実施形態では、ノズル26の数が、4本である場合について説明したが、ノズル26の数は、2または3本であってもよいし、5本以上であってもよい。
前記実施形態では、スリット吐出口34が基板Wの上面に対して垂直な吐出方向に処理液を吐出する場合について説明したいが、スリット吐出口34は、基板Wの上面に対して斜めに傾いた吐出方向に処理液を吐出してもよい。
【0071】
前記実施形態では、スリット吐出口34の幅W1が一定である場合について説明したが、スリット吐出口34の幅W1は一定でなくてもよい。たとえば、スリット吐出口34の幅W1は、回転軸線A1から離れるにしたがって段階的または連続的に増加していてもよい。
前記実施形態では、ノズルヘッド33が、全てのノズル(第1ノズル26A〜第4ノズル26D)に接続されている場合について説明したが、4本のノズルの1本または2本が、ノズルヘッド33に接続されていなくてもよい。たとえば図12に示すように、ノズルヘッド33は、第2ノズル26B〜第4ノズル26Dだけに接続されていてもよい。この場合、第1ノズル26Aに供給された処理液は、第1上流流路48Aの下流端48dから基板Wの上面中央部に向けて吐出される。
【0072】
前記実施形態では、薬液タンク41に向かってリターン流路54を流れる薬液をクーラー56で冷却する場合について説明したが、クーラー56を省略してもよい。
制御装置3は、吐出停止状態のときに供給流路47から複数の上流流路48に供給される処理液の流量を、吐出状態のときに供給流路47から複数の上流流路48に供給される処理液の流量よりも減少させてもよい。この場合、吐出停止中にリターン流路54から薬液タンク41に戻る薬液の流量が減少するので、薬液タンク41内の薬液に与えられる熱量を低減でき、液温の変動を抑えることができる。
【0073】
前記実施形態では、吐出停止中に下流ヒータ53によって加熱された液体を、上流流路48からリターン流路54に流す場合について説明したが、吐出停止中に下流ヒータ53を停止させる場合は、リターン流路54を省略してもよい。
前記実施形態では、下流ヒータ53が第1上流流路48Aに設けられておらず、第1上流流路48A以外の全ての上流流路48に下流ヒータ53が設けられている場合について説明したが、第1上流流路48Aを含む全ての上流流路48に下流ヒータ53が設けられていてもよい。
【0074】
前記実施形態では、複数のノズル26を静止させながら、複数のノズル26に薬液を吐出させる場合について説明したが、複数のノズル26をノズル回動軸線A2まわりに回動させながら、複数のノズル26に薬液を吐出させてもよい。
前記実施形態では、供給流路47に薬液を供給する薬液流路42が設けられている場合について説明したが、供給流路47に液体を供給する複数の処理液流路が設けられていてもよい。
【0075】
たとえば、第1液体が第1液体流路から供給流路47に供給され、第2液体が第2液体流路から供給流路47に供給されてもよい。この場合、第1液体および第2液体が供給流路47で混合されるので、第1液体および第2液体を含む混合液が、供給流路47から複数の上流流路48に供給される。第1液体および第2液体は、同種の液体であってもよいし、異なる種類の液体であってもよい。第1液体および第2液体の具体例は、硫酸および過酸化水素水の組み合わせと、TMAHおよび純水の組み合わせである。
【0076】
制御装置3は、基板Wの表面の各部に供給される処理液の温度を処理前の薄膜の厚みに応じて制御することにより、処理後の薄膜の厚みを均一化してもよい。
図13は、処理前後における薄膜の厚みと基板Wに供給される処理液の温度とのイメージを示すグラフである。図13の一点鎖線は、処理前の膜厚を示しており、図13の二点鎖線は、処理後の膜厚を示している。図13の実線は、基板Wに供給される処理液の温度を示している。図13の横軸は、基板Wの半径を示している。処理前の膜厚は、基板処理装置1以外の装置(たとえば、ホストコンピュータ)から基板処理装置1に入力されてもよいし、基板処理装置1に設けられた測定機によって測定されてもよい。
【0077】
図13に示す例の場合、制御装置3は、処理液の温度が処理前の膜厚と同様に変化するように、基板処理装置1を制御してもよい。具体的には、制御装置3は、複数の上流流路48での処理液の温度が、処理前の膜厚に応じた温度となるように、複数の下流ヒータ53を制御してもよい。
この場合、処理前の膜厚が相対的に大きい位置に相対的に高温の処理液が供給され、処理前の膜厚が相対的に小さい位置に相対的に低温の処理液が供給される。基板Wの表面に形成された薄膜のエッチング量は、高温の処理液が供給される位置で相対的に増加し、低温の処理液が供給される位置で相対的に減少する。そのため、処理後の薄膜の厚みが均一化される。
【0078】
前述の全ての構成の2つ以上が組み合わされてもよい。前述の全ての工程の2つ以上が組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0079】
1 :基板処理装置
11 :スピンチャック(基板保持ユニット)
26A〜26D :第1〜第4ノズル
27 :ノズル本体
28 :アーム部
29 :先端部
33 :ノズルヘッド
34 :スリット吐出口
41 :薬液タンク
42 :薬液流路
43 :上流ヒータ
45 :供給バルブ
47 :供給流路
48A :第1上流流路(主上流流路)
48B :第2上流流路(副上流流路)
48C :第3上流流路(副上流流路)
48D :第4上流流路(副上流流路)
48d :上流流路の下流端
51 :吐出バルブ(下流切替ユニット)
52 :集合流路
53 :下流ヒータ
54 :リターン流路
55 :リターンバルブ(下流切替ユニット)
A1 :回転軸線
Dr :径方向
W :基板
W1 :スリット吐出口の幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13