(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6489507
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】汚水処理装置
(51)【国際特許分類】
C02F 3/08 20060101AFI20190318BHJP
【FI】
C02F3/08 Z
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2016-17150(P2016-17150)
(22)【出願日】2016年2月1日
(65)【公開番号】特開2017-136518(P2017-136518A)
(43)【公開日】2017年8月10日
【審査請求日】2018年1月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004123
【氏名又は名称】JFEエンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116713
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 正己
(74)【代理人】
【識別番号】100094709
【弁理士】
【氏名又は名称】加々美 紀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179844
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 芳國
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 智典
(72)【発明者】
【氏名】馬場 圭
(72)【発明者】
【氏名】青木 順
【審査官】
富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】
特開2001−269685(JP,A)
【文献】
特開平10−128365(JP,A)
【文献】
特開2004−082011(JP,A)
【文献】
特開平09−150177(JP,A)
【文献】
特開2006−289188(JP,A)
【文献】
特開2008−073615(JP,A)
【文献】
特開2001−047073(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 3/00−3/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
担体を用いて生物処理を行う生物反応槽を備えた担体投入型汚水処理装置であって、
前記生物反応槽は槽幅が槽長さよりも長い躯体形状を有し、長辺側の槽壁の内側上部の角及び内側下部の角にハンチが設けられており、
前記生物反応槽の底部には散気装置が設けられており、
前記生物反応槽内の下流側には槽内を上流側と下流側とに仕切るように担体分離スクリーンが立設されており、
前記担体分離スクリーンの上流側にバッフル板が立設されていることを特徴とする担体投入型汚水処理装置。
【請求項2】
前記担体分離スクリーンに近接して、担体分離スクリーンに付着する担体を剥離させるための散気装置又は液体噴射装置を設けたことを特徴とする請求項1に記載の担体投入型汚水処理装置。
【請求項3】
前記バッフル板が、担体分離スクリーンと平行に配置されているか、又は、担体分離スクリーンとバッフル板との間隔が上方に向かって広くなるように傾斜して配置されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の担体投入型汚水処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微生物を付着させてなる微生物固定化担体によって汚水を処理する担体投入型汚水処理装置に関する。
なお、本発明においては「担体」という用語は微生物を担体に付着させてなる「微生物固定化担体」を意味するものとして用いる。
【背景技術】
【0002】
担体を生物反応槽内に投入することにより生物反応槽内に微生物を保持させる担体投入型汚水処理装置は、標準活性汚泥法による汚水処理装置と比較して、処理の高速化あるいは処理設備のコンパクト化を図ることができるという利点がある。一方で、担体投入型汚水処理装置では、担体が生物反応槽外に流出するのを防止する必要がある。
そこで、担体が生物反応槽外に流出するのを防止するために、一般的には生物反応槽内の処理水流出側に担体分離装置(スクリーン)を設置することが行われている。
【0003】
特許文献1に記載の汚水処理装置を
図8に示す。
図8(a)は汚水処理装置を示し、
図8(b)はその要部を示す。
図8(a)に示した汚水処理装置は、生物反応槽10に担体Sを投入して汚水Wを処理する汚水処理装置であり、生物反応槽10には、汚水Wが投入され、さらに、担体Sが投入されている。生物反応槽10に投入された汚水Wは、生物反応槽10の底部に設けられた散気装置5から散気される空気等によって撹拌されており、生物反応槽10は曝気槽を形成している。生物反応槽10に投入された汚水Wは、担体Sによって、汚水W中に混入する有機物等を分解する微生物が育成されている。汚水Wは、生物反応槽10内に所定時間滞留して、生物学的な処理がなされ、処理水Wpは、担体分離用スクリーン3とバッフル板4とを通過して、越流部7から排出される。前記バッフル板4は、スクリーン3と越流部7との間に配置されてスクリーン3における処理水Wpの流水速度Vを調整するものである。
【0004】
この装置によれば、生物反応槽10の槽壁上部に形成されている越流部7を流れる処理水Wpは、水面において最も通水速度が速くなるが、生物反応槽10のスクリーン3と越流部7との間に設けられたバッフル板4は、その流速が最も速い部分の流速を抑制して、スクリーン3を通過する処理水Wpの流速Vを平均化するようにしており、処理水Wpの流速によって、担体Sがスクリーン3の前面に押し付けられ、スクリーン3に目詰まりが発生するのを防止する
【0005】
ところで、担体投入型汚水処理装置においては、
図9に示すような生物反応槽10の槽幅D1が槽長さD2よりも長い躯体形状を有し、長辺側の槽壁の内側上部の角及び内側下部の角にハンチ11が設けられている生物反応槽10が用いられる場合がある。このような駆体形状を有する生物反応槽10においては、
図10に示すように生物反応槽10の底部に設けられた散気装置5による曝気によって旋回流Fが発生することがある。この場合、担体Sは発生した旋回流Fにより槽底部から槽上部へ集積するとともに、汚水の流れによってスクリーン3の前面上部に偏在する。その結果、スクリーン3の前面に偏在する担体Sが汚水の流れによりスクリーン面に押し付けられ、スクリーン3に目詰まりが発生し、槽内水位が上昇する要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−47073号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、安価かつ容易に、担体分離装置(スクリーン)の閉塞を抑制して安定した処理能力を得ることができる担体投入型汚水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は以下に記載する通りの担体投入型汚水処理装置に係るものである。
(1)担体を用いて生物処理を行う生物反応槽を備えた担体投入型汚水処理装置であって、
前記生物反応槽は槽幅が槽長さよりも長い躯体形状を有し、長辺側の槽壁の内側上部の角及び内側下部の角にハンチが設けられており、
前記生物反応槽の底部には散気装置が設けられており、
前記生物反応槽内の下流側には
槽内を上流側と下流側とに仕切るように担体分離
スクリーンが立設されており、
前記担体分離
スクリーンの上流側にバッフル板が立設されていることを特徴とする担体投入型汚水処理装置。
(2)前記担体分離
スクリーンに近接して、担体分離
スクリーンに付着する担体を剥離させるための散気装置又は液体噴射装置を設けたことを特徴とする上記(1)に記載の担体投入型汚水処理装置。
(3)前記バッフル板が、担体分離
スクリーンと平行に配置されているか、又は、担体分離
スクリーンとバッフル板との間隔が上方に向かって広くなるように傾斜して配置されていることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載の担体投入型汚水処理装置。
【発明の効果】
【0009】
本発明の担体投入型汚水処理装置を用いることにより、安価かつ容易に担体分離装置の閉塞を抑制することができ、汚水を安定して処理することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の担体投入型汚水処理装置における生物反応槽の例を示す断面図である。
【
図2】
図1に示した生物反応槽内の処理水の流れを示す図である。
【
図3】
図1に示した生物反応槽の縦断面及び横断面を示す図である。
【
図4】本発明の担体投入型汚水処理装置における生物反応槽の一例を模式的に示す断面図である。
【
図5】本発明の担体投入型汚水処理装置における生物反応槽の例を示す断面図である。
【
図6】
図1に示した生物反応槽の複数個を多段に配置した例を示す図である。
【
図7】
図7(a)は生物反応槽の平面図であり、
図7(b)は
生物反応槽内の担体の濃度分布を示す図である。
【
図8】従来の担体投入型汚水処理装置における生物反応槽の例を示す図である。
【
図9】従来の担体投入型汚水処理装置における生物反応槽の例を示す図である。
【
図10】
図9に示した生物反応槽内の処理水の流れを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の汚水処理装置の構成を
図1に基づいて説明する。
本発明の汚水処理装置は、担体Sを用いて生物処理を行う生物反応槽10を備えた担体投入型汚水処理装置である。本発明における生物反応槽10は
図9に示されるような、槽幅D1が槽長さD2よりも長い躯体形状を有し、長辺側の槽壁の内側上部の角及び内側下部の角にハンチ11が設けられている。
【0012】
そして、前記生物反応槽10内においては、下流側に担体分離装置3が設けられており、この担体分離装置3の上流側に該担体分離装置3に近接してバッフル板4が立設されている。
汚水流入部1から流入した汚水Wは生物反応槽10内で担体Sと接触することによって生物処理され担体分離装置3によって担体Sを分離されて処理水流出部2から排出される。
既に
図9に基づいて述べたように、バッフル板4を設置しない場合には、生物反応槽10の底部に設けられた散気装置5による曝気によって旋回流Fが発生する。この旋回流Fは担体分離装置3の前面まで到達し、担体分離装置3の前面の上方部分における担体Sの存在密度が増加し、担体分離装置3の前面上部において担体Sが偏在するため、目詰まりが発生して安定した汚水処理ができない。
【0013】
これに対し、担体分離装置3の上流側にバッフル板4を設けた場合には、
図2に示すように、生物反応槽10に供給された汚水Wはバッフル板4までの槽内空間で旋回流Fを形成する。そして、
図2のXで示した領域におけるバッフル板4と担体分離装置3との間の空間には処理水の一部が流入して良好な上向流を形成するため、担体分離装置3の前面側では担体Sが偏在することがなく、目詰まりが発生しないため安定した汚水処理が可能となる。
【0014】
生物反応槽10内におけるバッフル板4の配置の仕方を
図3に示す。
図3(a)は生物反応槽10の縦断面図であり、
図3(b)は生物反応槽10の横断面図である。
図3(a)に示すように、バッフル板4は担体分離装置3の前面に間隔Aをおいて配置されている。
図3(a)において、生物反応槽10の水位はHであり、バッフル板4の縦方向長さは水位Hの高さよりも短く、水面13とバッフル板4の上端との間には間隔Bが設けられており、槽底面12とバッフル板4の下端との間には間隔Cが設けられている。
また、
図3(b)に示すように、バッフル板4の横方向長さは生物反応槽10の槽幅D1と同じである。
【0015】
前記のA、B及びCの寸法は生物反応槽10の大きさによって適宜選択することができるが、バッフル板4として高さ2400mm程度のものを使用する生物反応槽10においては下記の寸法を例示することができる。
【0017】
図3ではバッフル板4を担体分離装置3と平行に配置した例を示したが、バッフル板4を
図4に示すようにバッフル板4と担体分離装置3との間の間隔が上方に向かって広くなるように傾斜させて配置しても良い。
【0018】
また、担体分離装置3に担体Sが付着して目詰まりが生じることを防ぐために、担体分離装置3の前面に専用の散気装置又は液体噴射装置を設けてもよい。
図5に担体分離装置3の前面に散気装置6を設けた例を示す。
散気装置6から連続的又は間欠的に噴出されるガスは担体Sを攪乱して担体Sによる目詰まりを防ぐことができる。
図5には散気装置6を担体分離装置3の前面に設けた例を示したが、散気装置6は担体分離装置3の後面に設けても良く、また、担体分離装置3の前面及び後面に設けても良い。
また、散気装置6に代えて液体噴射装置を設けることによっても同様に目詰まりを防ぐ効果を得ることができる。
【0019】
また、汚水処理システムにおいては、複数の生物反応槽を上流側から下流側に直列に接続して配置する場合がある。
図6に本発明において用いる生物反応槽である、第1生物反応槽21、第2生物反応槽22及び第3生物反応槽23を直列に配置した例を示す。
【0020】
図7に示す生物反応槽10において担体分離装置3の前面側における担体濃度(真容積の体積%)を測定した。
図7(a)は生物反応槽の平面図であり、
図7(b)は生物反応槽の断面図である。図中●は担体濃度の測定箇所を示す。なお、この生物反応槽10における上記A、B及びCの寸法は、以下の通りである。
A:500mm、B:1000mm、C:1000mm。
図7(b)に示すように、担体分離装置3の上流側にバッフル板4を立設することにより、担体分離装置3の前面の担体濃度は槽内全体の担体濃度と同程度のものとなった。
なお、担体分離装置3の前面下部で担体濃度が槽全体の担体濃度よりも高い数値を示しているがこれは上方に行くに従って均等化される結果となっており、担体濃度は担体分離装置3の前面において上方に向かって増大することはなく、バッフル板4が担体Sの集積防止の効果を奏していることがわかる。
なお、併せてバッフル板を設けないで行った場合には、担体分離装置3の前面における担体濃度は槽内全体より増大し、かつ担体分離装置3の下方から上方へ向かって増大した。
【符号の説明】
【0021】
1 汚水流入部
2 処理水流出部
3 担体分離装置、スクリーン
4 バッフル板
5、6 散気装置
7 越流部
8 気泡
10 生物反応槽
11 ハンチ
12 槽底面
13 水面
21 第1生物反応槽
22 第2生物反応槽
23 第3生物反応槽
D1 槽幅
D2 槽長さ
F 旋回流
L1 生物反応槽の水位
L2 処理水の流出流路の水位
S 担体
V 流速
W 汚水
Wp 処理水