(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6489541
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】チップ電子部品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01F 17/04 20060101AFI20190318BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20190318BHJP
H01F 37/00 20060101ALI20190318BHJP
H01F 41/04 20060101ALI20190318BHJP
H01F 41/02 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F17/00 B
H01F37/00 A
H01F41/04 B
H01F41/02 D
【請求項の数】16
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2014-104028(P2014-104028)
(22)【出願日】2014年5月20日
(65)【公開番号】特開2015-170843(P2015-170843A)
(43)【公開日】2015年9月28日
【審査請求日】2017年4月5日
(31)【優先権主張番号】10-2014-0027291
(32)【優先日】2014年3月7日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】594023722
【氏名又は名称】サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ハン・ジン・オク
(72)【発明者】
【氏名】パク・ムン・ソ
(72)【発明者】
【氏名】キム・テ・ヨン
【審査官】
池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−201375(JP,A)
【文献】
特開2009−007534(JP,A)
【文献】
特開2004−210936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/04
H01F 17/00
H01F 37/00
H01F 41/02
H01F 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板の少なくとも一面に形成された内部コイルパターンを含む磁性体本体と、
前記磁性体本体の少なくとも一端面に形成され、前記内部コイルパターンの端部と接続するように形成された外部電極と、を含み、
前記磁性体本体は、不飽和カルボン酸系重合体及びシロキサン系共重合体を含むチップ電子部品。
【請求項2】
前記磁性体本体は金属系軟磁性材料を含む、請求項1に記載のチップ電子部品。
【請求項3】
前記金属系軟磁性材料の粒子径は0.1μm〜30μmである、請求項2に記載のチップ電子部品。
【請求項4】
前記不飽和カルボン酸系重合体は重量平均分子量が500〜2,300である、請求項1に記載のチップ電子部品。
【請求項5】
前記シロキサン系共重合体は重量平均分子量が500〜2,300である、請求項1に記載のチップ電子部品。
【請求項6】
前記不飽和カルボン酸系重合体は前記磁性体本体に含まれる金属系軟磁性材料100重量部に対して0.5重量部〜2重量部の含量で含まれる、請求項1に記載のチップ電子部品。
【請求項7】
前記シロキサン系共重合体は前記磁性体本体に含まれる金属系軟磁性材料100重量部に対して0.05重量部〜0.2重量部の含量で含まれる、請求項1に記載のチップ電子部品。
【請求項8】
前記磁性体本体の充填率は80%以上である、請求項1に記載のチップ電子部品。
【請求項9】
絶縁基板の少なくとも一面に内部コイルパターンを形成する段階と、
前記内部コイルパターンが形成された絶縁基板の上部及び下部に磁性体シートを積層して磁性体本体を形成する段階と、
前記磁性体本体の少なくとも一端面に前記内部コイルパターンの端部と接続するように外部電極を形成する段階と、を含み、
前記磁性体シートは、不飽和カルボン酸系重合体及びシロキサン系共重合体を含んで形成するチップ電子部品の製造方法。
【請求項10】
前記磁性体シートは金属系軟磁性材料を含んで形成する、請求項9に記載のチップ電子部品の製造方法。
【請求項11】
前記金属系軟磁性材料の粒子径は0.1μm〜30μmである、請求項10に記載のチップ電子部品の製造方法。
【請求項12】
前記不飽和カルボン酸系重合体は重量平均分子量が500〜2,300である、請求項9に記載のチップ電子部品の製造方法。
【請求項13】
前記シロキサン系共重合体は重量平均分子量が500〜2,300である、請求項9に記載のチップ電子部品の製造方法。
【請求項14】
前記磁性体シートは、前記磁性体シートに含まれる金属系軟磁性材料100重量部に対して、前記不飽和カルボン酸系重合体を0.5重量部〜2重量部含む、請求項9に記載のチップ電子部品の製造方法。
【請求項15】
前記磁性体シートは、前記磁性体シートに含まれる金属系軟磁性材料100重量部に対して、前記シロキサン系共重合体を0.05重量部〜0.2重量部含む、請求項9に記載のチップ電子部品の製造方法。
【請求項16】
前記磁性体本体の充填率は80%以上である、請求項9に記載のチップ電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップ電子部品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チップ電子部品の一つであるインダクタ(inductor)は、抵抗、キャパシタとともに電子回路を成してノイズ(Noise)を除去する代表的な受動素子であり、電磁気的特性を利用してキャパシタと組み合わせることで、特定周波数帯域の信号を増幅させる共振回路、フィルタ(Filter)回路などの構成に用いられる。
【0003】
最近では、様々な通信デバイスまたはディスプレイデバイスなどのITデバイスの小型化及び薄膜化が加速しており、該ITデバイスに採用されるインダクタ、キャパシタ、トランジスタなどの各種素子も小型化及び薄型化するための研究が継続的に行われている。
【0004】
また、電子機器の小型化及び高性能化が求められるにつれ、消費電力が増加している。このような消費電力の増加に伴って電子機器の電源回路に用いられるPMIC(Power Management Integrated Circuit)またはDC−DCコンバータ(DC−DC Converter)は、スイッチング周波数(Switching Frequency)が高周波化し、出力電流が増加しており、そのため、PMICまたはDC−DCコンバータの出力電流の安定化に用いられるパワーインダクタ(Power Inductor)の使用が増加している傾向にある。
【0005】
パワーインダクタの開発方向は、小型化、高電流化及び低直流抵抗に合わせられているが、従来の積層型パワーインダクタではこれを具現するのに限界があるため、絶縁基板の上下面にめっきにより形成されるコイルパターン上に磁性粉末を樹脂と混合させて形成した磁性体シート(sheet)を積層、加圧及び硬化して製造する薄膜型インダクタが開発されつつある。
【0006】
このとき、磁性体シートを形成するスラリー(Slurry)は、磁性粉末と熱硬化性ポリマー樹脂、硬化剤、増粘剤、有機溶媒及び粉末の分散性を向上させることができる分散剤などからなる。
【0007】
磁性粉末をより効率的に分散させるために、分散剤を使用した化学的分散だけでなく、特定設備で機械的な力を加えることもある。
【0008】
磁性粉末は、より高機能を具現するために、次第にサイズが減少して微粒化しており、サイズの異なる2種以上またはそれ以上の粉末を混合して使用している。従って、磁性粉末の分散がより困難となるため、より効果的な分散性を具現することができる方法が求められている。
【0009】
従来では、重量平均分子量が700〜2,500のポリマーからなるリン酸系分散剤を使用したが、密度の高い金属磁性体粉末の沈降安定性を保持し、1次分散後に粉末同士が再凝集する2次凝集を防止するには分散力が足りないという欠点があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】韓国公開特許第2013−0072816号公報
【特許文献2】特開2008−166455号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の一実施形態は、新しいタイプの分散剤を適用して、磁性粉末の分散性及び沈降安定性を改善したチップ電子部品及びその製造方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一実施形態では、絶縁基板の少なくとも一面に形成された内部コイルパターンを含む磁性体本体と、上記磁性体本体の少なくとも一端面に形成され、上記内部コイルパターンの端部と接続するように形成された外部電極と、含み、上記磁性体本体は、不飽和カルボン酸系重合体を含むチップ電子部品を提供する。
【0013】
上記磁性体本体は、シロキサン系共重合体をさらに含んでもよい。
【0014】
上記磁性体本体は、金属系軟磁性材料を含んでもよい。
【0015】
上記金属系軟磁性材料の粒子径は、0.1μm〜30μmであってもよい。
【0016】
上記不飽和カルボン酸系重合体は、重量平均分子量が500〜2,300であってもよい。
【0017】
上記シロキサン系共重合体は、重量平均分子量が500〜2,300であってもよい。
【0018】
上記不飽和カルボン酸系重合体は、上記磁性体本体に含まれる金属系軟磁性材料100重量部に対して、0.5重量部〜2重量部の含量で含まれてもよい。
【0019】
上記シロキサン系共重合体は、上記磁性体本体に含まれる金属系軟磁性材料100重量部に対して、0.05重量部〜0.2重量部の含量で含まれてもよい。
【0020】
上記磁性体本体の充填率は、80%以上であってもよい。
【0021】
本発明の他の一実施形態は、絶縁基板の少なくとも一面に内部コイルパターンを形成する段階と、上記内部コイルパターンが形成された絶縁基板の上部及び下部に磁性体シートを積層して磁性体本体を形成する段階と、上記磁性体本体の少なくとも一端面に上記内部コイルパターンの端部と接続するように外部電極を形成する段階と、を含み、上記磁性体シートは、不飽和カルボン酸系重合体を含んで形成するチップ電子部品の製造方法を提供する。
【0022】
上記磁性体シートは、シロキサン系共重合体をさらに含んで形成してもよい。
【0023】
上記磁性体シートは、金属系軟磁性材料を含んで形成してもよい。
【0024】
上記金属系軟磁性材料の粒子径は、0.1μm〜30μmであってもよい。
【0025】
上記不飽和カルボン酸系重合体は、重量平均分子量が500〜2,300であってもよい。
【0026】
上記シロキサン系共重合体は、重量平均分子量が500〜2,300であってもよい。
【0027】
上記磁性体シートは、上記磁性体シートに含まれる金属系軟磁性材料100重量部に対して、上記不飽和カルボン酸系重合体を0.5重量部〜2重量部含んでもよい。
【0028】
上記磁性体シートは、上記磁性体シートに含まれる金属系軟磁性材料100重量部に対して、上記シロキサン系共重合体を0.05重量部〜0.2重量部含んでもよい。
【0029】
上記磁性体本体の充填率は、80%以上であってもよい。
【発明の効果】
【0030】
本発明の一実施形態によると、磁性粉末の優れた分散特性及び沈降防止効果が同時に得られる。
【0031】
また、磁性粉末のスリップ性(slip)、レベリング(leveling)特性の向上及びベナールセル(Benard cell)現象防止効果をともに具現して、磁性体シートの表面粗さが減少することができる。
【0032】
また、磁性粉末の分散性が改善するに伴って充填率が向上し、インダクタンス容量が向上する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の一実施形態によるチップ電子部品の内部コイルパターンが示されるように図示した概略斜視図である。
【
図3】従来の分散剤を用いて製造した磁性体シート(a)及び本発明の一実施形態によるチップ電子部品の製造時に用いられる磁性体シート(b)の充填率を比較するために、走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)で磁性体シートの断面を観察した写真である。
【
図4】従来の分散剤を使用して製造したチップ電子部品(c)及び本発明の一実施形態によるチップ電子部品(d)のインダクタンスを示したグラフである。
【
図5】本発明の一実施形態によるチップ電子部品の製造方法を示す工程図である。
【
図6】従来の分散剤を用いたスラリー(slurry)(e)及び本発明の一実施形態によるチップ電子部品の製造時に用いられる磁性体シートを形成するスラリー(slurry)(f)の沈降安定性を比較したグラフである。
【
図7】従来の分散剤を使用して製造した磁性体シート(g)及び本発明の一実施形態によるチップ電子部品の製造時に用いられる磁性体シート(h)の表面粗さを比較するために、走査電子顕微鏡(SEM、Scanning Electron Microscope)で磁性体シートの表面を観察した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下では、添付の図面を参照し、本発明の好ましい実施形態について説明する。しかし、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形されることができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されない。また、本発明の実施形態は、当該技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。図面における要素の形状及び大きさなどはより明確な説明のために誇張されることがある。
【0035】
チップ電子部品
以下では、本発明の一実施形態によるチップ電子部品を、特に、薄膜型インダクタで説明するが、これに限定されない。
【0036】
図1は本発明の一実施形態によるチップ電子部品の内部コイルパターンが示されるように図示した概略斜視図であり、
図2は
図1のI−I’線による断面図である。
【0037】
図1及び
図2を参照すると、チップ電子部品の一例として、電源供給回路の電源ラインに用いられる薄膜型インダクタ100が開示されている。上記チップ電子部品は、チップインダクタの他にもチップビーズ(chip bead)、チップフィルタ(chip filter)などであってもよい。
【0038】
上記薄膜型インダクタ100は、磁性体本体50と、絶縁基板20と、内部コイルパターン40と、外部電極80と、を含む。
【0039】
磁性体本体50は、薄膜型インダクタ100の外観を成し、六面体状であってもよい。本発明の実施形態を明確に説明するために、六面体の方向を定義すると、
図1に示されたL、W及びTは、それぞれ長さ方向、幅方向、厚さ方向を示す。上記磁性体本体50は、長さ方向が幅方向より長い直六面体状であってもよい。
【0040】
磁性体本体50は、磁性粉末を含んでシート状に製造される磁性体シートを積層し、圧着及び硬化して形成することができる。
【0041】
磁性体本体50を成す磁性粉末としては、金属系軟磁性材料を用いてもよい。
【0042】
上記金属系軟磁性材料としては、Fe、Si、Cr、Al及びNiからなる群より選択された何れか一つ以上を含む合金であってもよく、例えば、Fe−Si−B−Cr系非晶質金属粒子を含むことができるが、これに制限されない。
【0043】
上記金属系軟磁性材料の粒子径は0.1μ〜30μmであってもよく、エポキシ(epoxy)樹脂またはポリイミド(polyimide)などの高分子上に分散された形態で含まれてもよい。
【0044】
上記磁性体本体50は、磁性粉末の分散性を向上させるための分散剤として、不飽和カルボン酸系重合体を含んでもよい。
【0045】
従来では、薄膜型インダクタの磁性体本体を成す磁性粉末を分散させるために、重量平均分子量が700〜2,500のリン酸系重合体分散剤を主に用いたが、分散性の向上に限界があった。特に、密度の高い金属磁性粉末を使用する薄膜型インダクタの場合、沈降安定性を保持し、優れた分散性を具現することが困難であった。
【0046】
そこで、本発明の一実施形態は、脂肪酸系分散剤として不飽和カルボン酸系重合体を新たに適用して、薄膜型インダクタの磁性体本体を成す金属磁性粉末の分散性を著しく改善した。
【0047】
また、上記磁性体本体は、シロキサン系共重合体をさらに含んでもよい。
【0048】
シロキサン系共重合体をさらに含むことで、磁性粉末のスリップ性(slip)、レベリング(leveling)特性の向上及びベナールセル(Benard cell)現象防止効果をともに具現することができる。
【0049】
上記不飽和カルボン酸系重合体は、重量平均分子量が500〜2,300であってもよい。
【0050】
上記不飽和カルボン酸系重合体は、上記磁性体本体50に含まれる金属系軟磁性材料100重量部に対して、0.5重量部〜2重量部の含量で含まれてもよい。
【0051】
不飽和カルボン酸系重合体が0.5重量部未満では、分散性及び沈降安定性が低下して磁性粉末が凝集するため、充填率が減少し、磁性体シートの表面粗さが大きくなる問題が発生する恐れがあり、2重量部を超えると、磁性体シートの乾燥または硬化時に溶剤の揮発通路が確保されないため溶剤が内部にトラップされて物性が低下する恐れがある。
【0052】
上記シロキサン系共重合体は、重量平均分子量が500〜2,300であってもよい。
【0053】
上記シロキサン系共重合体は、上記磁性体本体50に含まれる金属系軟磁性材料100重量部に対して、0.05重量部〜0.2重量部の含量で含まれてもよい。
【0054】
シロキサン系共重合体が0.05重量部未満では、磁性粉末のスリップ性(slip)、レベリング(leveling)特性の向上及びベナールセル(Benard cell)現象防止効果が僅かであり、磁性体シートの表面粗さが大きくなる問題が発生する恐れがあり、0.2重量部を超えると、磁性体シートの乾燥または硬化時に溶剤の揮発通路が確保されないため溶剤が内部にトラップされて物性が低下する恐れがある。
【0055】
このように、本発明の一実施形態によるチップ電子部品の磁性体本体50は不飽和カルボン酸系重合体を含み、シロキサン系共重合体をさらに含むことで、磁性粉末の分散性が向上することができ、これにより、充填率が向上し、インダクタンス容量特性が改善されることができる。
【0056】
上記磁性体本体50の充填率は80%以上であってもよい。
【0057】
図3は、従来のリン酸系重合体分散剤であるエトキシ化ノニルフェノールリン酸塩(Ethoxylated Nonylphenol phosphate)を用いて製造した磁性体シート(a)、及び本発明の一実施形態に従って不飽和カルボン酸系重合体及びシロキサン系共重合体を分散剤として添加して製造した磁性体シート(b)の断面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察した写真である。
【0058】
図3から、本発明の一実施形態に従って不飽和カルボン酸系重合体及びシロキサン系共重合体を添加して磁性体シートを製造したとき、磁性粉末の分散性が向上し、充填率が向上することが分かる。従来の場合(a)、充填率が77.09%であるが、本発明の一実施形態の場合(b)は、充填率が87.40%に向上した。
【0059】
図4は、従来のリン酸系重合体分散剤であるエトキシ化ノニルフェノールリン酸塩(Ethoxylated Nonylphenol phosphate)を含むチップ電子部品(c)、及び本発明の一実施形態に従って不飽和カルボン酸系重合体及びシロキサン系共重合体を含むチップ電子部品(d)のインダクタンスを示したグラフである。
【0060】
図4を参照すると、本発明の一実施形態に従って不飽和カルボン酸系重合体及びシロキサン系共重合体を含むと、磁性粉末の分散性及び充填率が改善されるにつれてインダクタンスが向上することが分かる。
【0061】
上記磁性体本体50の内部に形成される絶縁基板20は、例えば、ポリプロピレングリコール(PPG)基板、フェライト基板または金属系軟磁性基板等で形成されてもよい。
【0062】
上記絶縁基板20の中央部を貫通して孔を形成し、上記貫通孔は金属系軟磁性材料などの磁性体で充填されてコア部55を形成することができる。磁性体で充填されるコア部55を形成することにより、インダクタンス(Inductance、L)を向上させることができる。
【0063】
上記絶縁基板20の一面にはコイル状のパターンを有する内部コイルパターン40が形成され、上記絶縁基板20の反対面にもコイル状のパターンの内部コイルパターン40が形成されてもよい。
【0064】
上記内部コイルパターン40は、スパイラル(spiral)状にコイルパターンが形成されてもよく、上記絶縁基板20の一面と反対面に形成される内部コイルパターン40は、上記絶縁基板20に形成されるビア電極45を介して電気的に接続されることができる。
【0065】
上記内部コイルパターン40及びビア電極45は、電気伝導性に優れた金属を含んで形成されてもよく、例えば、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、金(Au)、銅(Cu)、白金(Pt)またはこれらの合金などで形成されてもよい。
【0066】
上記内部コイルパターン40の表面には、内部コイルパターン40を被覆する絶縁膜30が形成されてもよい。
【0067】
絶縁膜30は、スクリーン印刷法、フォトレジスト(photo resist、PR)の露光及び現像を通じた工程、スプレー(spray)塗布工程など公知の方法で形成してもよいが、これに限定されない。
【0068】
絶縁基板20の一面に形成される内部コイルパターン40の一端部は、磁性体本体50の長さ方向の一断面に露出することができ、絶縁基板20の反対面に形成される内部コイルパターン40の他端部は、磁性体本体50の長さ方向の他端面に露出することができる。
【0069】
上記磁性体本体50の両端面に露出する上記内部コイルパターン40の引出部とそれぞれ接続するように磁性体本体50の両端面に外部電極80が形成されてもよい。
【0070】
上記外部電極80は磁性体本体50の長さ方向の両端面に形成され、磁性体本体50の厚さ方向の両端面及び/または幅方向の両端面に延長形成されてもよい。
【0071】
上記外部電極80は電気伝導性に優れた金属を含んで形成してもよく、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)または銀(Ag)などの単独またはこれらの合金などで形成することができる。
【0072】
チップ電子部品の製造方法
図5は、本発明の一実施形態によるチップ電子部品の製造方法を示す工程図である。
【0073】
図5を参照すると、絶縁基板20の少なくとも一面に内部コイルパターン40を形成してもよい。
【0074】
上記絶縁基板20は、特に制限されず、例えば、ポリプロピレングリコール(PPG)基板、フェライト基板または金属系軟磁性基板等を使用することができ、40〜100μmの厚さであってもよい。
【0075】
上記内部コイルパターン40は、例えば、電気めっき法などで形成してもよいが、これに限定されず、内部コイルパターン40は、電気伝導性に優れた金属を含んで形成してもよく、例えば、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、チタン(Ti)、金(Au)、銅(Cu)、白金(Pt)またはこれらの合金などを使用することができる。
【0076】
上記絶縁基板20の一部に孔を形成し、伝導性材料を充填してビア電極45を形成することができ、上記ビア電極45を介して絶縁基板20の一面と反対面に形成される内部コイル部40を電気的に接続させることができる。
【0077】
上記絶縁基板20の中央部にはドリル、レーザー、サンドブラスト、穿孔加工などによって、絶縁基板を貫通する貫通孔を形成してもよい。
【0078】
次に、内部コイルパターン40を被覆する絶縁膜30を形成することができる。
【0079】
上記絶縁膜30はスクリーン印刷法、フォトレジスト(photo resist、PR)の露光及び現像による工程、スプレー(spray)塗布工程など、公知の方法により形成することができるが、これに制限されない。
【0080】
次に、内部コイルパターン40が形成された絶縁基板20の上部及び下部に磁性体シートを積層して磁性体本体50を形成する。
【0081】
上記磁性体シートの製造に用いられる磁性粉末としては、金属系軟磁性材料を使用することができる。
【0082】
上記金属系軟磁性材料は、Fe、Si、Cr、Al及びNiからなる群より選択される何れか一つ以上を含む合金であってもよく、例えば、Fe−Si−B−Cr系非晶質金属粒子を含むことができるが、これに限定されない。
【0083】
上記金属系軟磁性材料の粒子径は0.1μm〜30μmであってもよい。
【0084】
上記金属系軟磁性材料及びエポキシ(epoxy)樹脂またはポリイミド(polyimide)などの高分子を混合して形成されたスラリーをキャリアフィルム(carrier film)上に塗布及び乾燥して磁性体シートを製造することができる。
【0085】
このとき、高分子上に磁性粉末を効果的に分散させるための分散剤として、不飽和カルボン酸系重合体を含んでもよい。
【0086】
また、上記磁性体シートは、シロキサン系共重合体をさらに含んでもよい。
【0087】
シロキサン系共重合体をさらに含むことで、磁性粉末のスリップ性(slip)、レベリング(leveling)特性の向上及びベナールセル(Benard cell)現象防止効果をともに具現することができる。
【0088】
上記不飽和カルボン酸系重合体は、重量平均分子量が500〜2,300であってもよい。
【0089】
上記不飽和カルボン酸系重合体は、上記磁性体シートに含まれる金属系軟磁性材料100重量部に対して、0.5重量部〜2重量部の含量で含まれてもよい。
【0090】
不飽和カルボン酸系重合体が0.5重量部未満では、分散性及び沈降安定性が低下して磁性粉末が凝集するため、充填率が減少し、磁性体シートの表面粗さが大きくなる問題が発生する恐れがあり、2重量部を超えると、磁性体シートの乾燥または硬化時に溶剤の揮発通路が確保されないため溶剤が内部にトラップされて物性が低下する恐れがある。
【0091】
上記シロキサン系共重合体は、重量平均分子量が500〜2,300であってもよい。
【0092】
上記シロキサン系共重合体は、上記磁性体シートに含まれる金属系軟磁性材料100重量部に対して、0.05重量部〜0.2重量部の含量で含んでもよい。
【0093】
シロキサン系共重合体が0.05重量部未満では、磁性粉末のスリップ性(slip)、レベリング(leveling)特性の向上及びベナールセル(Benard cell)現象防止効果が僅かであり、磁性体シートの表面粗さが大きくなる問題が発生する恐れがあり、0.2重量部を超えると、磁性体シートの乾燥または硬化時に溶剤の揮発通路が確保されないため溶剤が内部にトラップされて物性が低下する恐れがある。
【0094】
図6は、従来のリン酸系重合体分散剤であるエトキシ化ノニルフェノールリン酸塩(Ethoxylated Nonylphenol phosphate)を添加して製造した金属磁性粉末のスラリー(slurry)(e)と、本発明の一実施形態に従って不飽和カルボン酸系重合体及びシロキサン系共重合体を分散剤として添加して製造した金属磁性粉末のスラリー(slurry)(f)の沈降安定性を比較したグラフである。
【0095】
図6から、本発明の一実施形態に従って不飽和カルボン酸系重合体及びシロキサン系共重合体を含むと、時間経過による沈降層の高さの減少速度が大幅に減り、沈降安定性が向上することが分かる。
【0096】
図7は、従来のリン酸系重合体分散剤であるエトキシ化ノニルフェノールリン酸塩(Ethoxylated Nonylphenol phosphate)を使用して製造した磁性体シート(g)、及び本発明の一実施形態に従って不飽和カルボン酸系重合体及びシロキサン系共重合体を分散剤として添加して製造した磁性体シート(h)の表面を走査電子顕微鏡(SEM)で観察した写真である。
【0097】
図7から、本発明の一実施形態に従って不飽和カルボン酸系重合体及びシロキサン系共重合体を添加して製造した磁性体シート(g)は、従来の分散剤を添加して製造した磁性体シート(h)に比べて、分散性が向上し、レベリング(leveling)効果及びベナールセル(Benard cell)現象防止効果により、表面粗さが減少することが分かる。
【0098】
このように、本発明の一実施形態により製造された磁性体シートは、不飽和カルボン酸系重合体を含み、シロキサン系共重合体をさらに含むことにより、磁性粉末の分散性が向上することができ、これにより、充填率が向上し、インダクタンス容量特性が改善されることができる。
【0099】
上記磁性体シートで製造される本発明の一実施形態による磁性体本体50の充填率は80%以上であってもよい。
【0100】
上記磁性体シートを絶縁基板20の両面に積層し、ラミネート法や静水圧プレス法により圧着して磁性体本体50を形成することができる。このとき、上記貫通孔が磁性体で充填されるようにして、コア部55を形成することができる。
【0101】
次に、上記磁性体本体50の少なくとも一断面に露出する内部コイルパターン40の引出部と接続するように磁性体本体50の少なくとも一端面に外部電極80を形成することができる。
【0102】
上記外部電極80は、電気伝導性に優れた金属を含むペーストを用いて形成することができ、例えば、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、スズ(Sn)または銀(Ag)などの単独またはこれらの合金などを含む導電性ペーストであってもよい。
【0103】
外部電極80は、外部電極80の形状に沿ってプリンティングするだけではなく、ディッピング(dipping)法などで形成してもよい。
【0104】
その他上述した本発明の一実施形態によるチップ電子部品の特徴と同じ部分に対する説明は、省略する。
【0105】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されず、請求の範囲に記載された本発明の技術的思想から外れない範囲内で多様な修正及び変形が可能であるということは、当技術分野の通常の知識を有する者には明らかである。
【符号の説明】
【0106】
100 薄膜型インダクタ
20 絶縁基板
30 絶縁膜
40 内部コイルパターン
45 ビア電極
50 磁性体本体
55 コア部
80 外部電極