(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
更に、前記炭素数4以上の1級アミン(成分B)以外の含窒素塩基性化合物(成分D)を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
前記シリコンウェーハ用研磨液組成物における前記水溶性高分子化合物(成分C)の含有量は、0.002質量%以上0.05質量%以下である、請求項1から6のいずれか一項に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
請求項1から10のいずれか一項に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物を用いて被研磨シリコンウェーハを研磨する工程を含む、被研磨シリコンウェーハの研磨方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、シリカ粒子(成分A)と、炭素数4以上の1級アミン(成分B)と、水溶性高分子化合物(成分C)とを含むことにより、高温下長期保存を経ても、表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減と高研磨速度とを両立できる、という知見に基づく。
【0013】
本発明の効果発現機構の詳細は明らかではないが、以下のように推定している。本発明のシリコンウェーハ用研磨液組成物(以下「本発明の研磨液組成物」と略称する場合もある。)に含まれる水溶性高分子化合物(成分C)は、シリカ粒子と相互作用する親水性を呈する部位と、シリコンウェーハと相互作用する疎水性を呈する部位を含む。そのため、水溶性高分子化合物(成分C)がシリコンウェーハ表面に適度に吸着して含窒素塩基性化合物等による腐食を抑制することで、良好な表面粗さ(ヘイズ)を達成するとともに、良好な濡れ性を発現し、ウェーハ表面の乾燥によるパーティクルの付着を抑制して低表面欠陥(LPD)を可能としている。
【0014】
また、一般的には、アルカリ条件ではシリカ粒子とウェーハの表面電荷はともに負に帯電しており、その電荷反発によってシリカ粒子がシリコンウェーハに接近できず、研磨速度が十分に発現できない。しかし、本発明の研磨液組成物に含まれる水溶性高分子化合物(成分C)が、シリカ粒子とシリコンウェーハの両方の表面に吸着することからバインダー効果を発現する。その結果、水溶性高分子化合物(成分C)は、シリコンウェーハの研磨速度の向上に寄与しているものと考えられる。
【0015】
本発明では、上記の条件において、研磨液組成物が、更に炭素数4以上の1級アミンを含んでおり、当該炭素数4以上の1級アミンが下記重要な働きをしていると推察される。1級アミンは、2級や3級のアミンや4級アンモニウム塩に比べてシリカ粒子へ吸着しにくいため、水溶性高分子化合物のバインダー効果を阻害することはなく、むしろアミンによるシリコンウェーハ表面の溶解促進という効果を付与することにより、研磨速度が向上したと推察される。更に、炭素数4以上の1級アミンは、適度な疎水性を有する。そのため、炭素数4以上の1級アミンとシリコンウェーハや水溶性高分子化合物の疎水部との疎水的相互作用により、前記バインダー効果が促進し、その結果、研磨速度が向上したと推察される。また、炭素数4以上の1級アミンと水溶性高分子化合物とが相互作用(会合)することにより、水溶性高分子化合物の分子構造、及び水溶性高分子化合物のシリコンウェーハに対する吸着状態が安定化され、その結果、高温下長期保存を経ても、シリコンウェーハの、表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減と高研磨速度とが両立できたと推察される。
【0016】
[シリカ粒子(成分A)]
本発明の研磨液組成物には、研磨材としてシリカ粒子が含まれる。シリカ粒子の具体例としては、コロイダルシリカ、フュームドシリカ等が挙げられるが、シリコンウェーハの表面平滑性を向上させる観点から、コロイダルシリカがより好ましい。
【0017】
シリカ粒子の使用形態としては、操作性の観点からスラリー状が好ましい。本発明の研磨液組成物に含まれる研磨材がコロイダルシリカである場合、アルカリ金属やアルカリ土類金属等によるシリコンウェーハの汚染を防止する観点から、コロイダルシリカは、アルコキシシランの加水分解物から得たものであることが好ましい。アルコキシシランの加水分解物から得られるシリカ粒子は、従来から公知の方法によって作製できる。
【0018】
本発明の研磨液組成物に含まれるシリカ粒子の平均一次粒子径は、高研磨速度の確保の観点から、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは15nm以上、更により好ましくは30nm以上である。また、高研磨速度の確保と低表面粗さ(ヘイズ)及び低表面欠陥(LPD)との両立の観点から、好ましくは50nm以下、より好ましくは45nm以下、更に好ましくは40nm以下である。
【0019】
特に、シリカ粒子としてコロイダルシリカを用いた場合には、高研磨速度の確保、及び表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減の観点から、平均一次粒子径は、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは15nm以上、更により好ましくは30nm以上である。また、高研磨速度の確保と低表面粗さ(ヘイズ)及び低表面欠陥(LPD)との両立の観点から、好ましくは50nm以下、より好ましくは45nm以下、更に好ましくは40nm以下である。
【0020】
シリカ粒子の平均一次粒子径は、BET(窒素吸着)法によって算出される比表面積S(m
2/g)を用いて算出される。比表面積は、例えば、実施例に記載の方法により測定できる。
【0021】
シリカ粒子の会合度は、高研磨速度の確保、及び表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減の観点から、好ましくは3.0以下、より好ましくは1.1以上3.0以下、更に好ましくは1.8以上2.5以下、更により好ましくは2.0以上2.3以下である。シリカ粒子の形状はいわゆる球型といわゆるマユ型であることが好ましい。シリカ粒子がコロイダルシリカである場合、その会合度は、高研磨速度の確保、及び表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減の観点から、好ましくは3.0以下、より好ましくは1.1以上3.0以下、更に好ましくは1.8以上2.5以下、更により好ましくは2.0以上2.3以下である。
【0022】
シリカ粒子の会合度とは、シリカ粒子の形状を表す係数であり、下記式により算出される。平均二次粒子径は、動的光散乱法によって測定される値であり、例えば、実施例に記載の装置を用いて測定できる。
会合度=平均二次粒子径/平均一次粒子径
【0023】
シリカ粒子の会合度の調整方法としては、特に限定されないが、例えば、特開平6−254383号公報、特開平11−214338号公報、特開平11−60232号公報、特開2005−060217号公報、特開2005−060219号公報等に記載の方法を採用することができる。
【0024】
本発明の研磨液組成物に含まれるシリカ粒子(成分A)の金属含有量は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減の観点から、アルカリ金属(Na、K)はそれぞれ10000ppb以下が好ましく、5000ppb以下がより好ましく、1000ppb以下が更に好ましく、アルカリ土類金属(Mg、Ca)はそれぞれ1000ppb以下が好ましく、500ppb以下がより好ましく、200ppb以下が更に好ましく、III族(Al)、遷移金属(Fe、Zn)はそれぞれ500ppb以下が好ましく、200ppb以下がより好ましく、100ppb以下が更に好ましく、遷移金属(Ti、Cr、Mn、Ni、Cu)、重金属(Ag、Pb)はそれぞれ50ppb以下が好ましく、30ppb以下がより好ましく、20ppb以下が更に好ましい。尚、シリカ粒子の金属含有量は、後述の実施例に記載の方法により測定できる。
【0025】
本発明の研磨液組成物に含まれるシリカ粒子(成分A)の単位質量あたりのシラノール基量は、研磨されたシリコンウェーハ表面の表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)を安定して低減可能とする観点から、好ましくは1.0mmol/g以上、より好ましくは1.3mmol/g以上、更に好ましくは1.5mmol/g以上であり、好ましくは10mmol/g以下、より好ましくは5mmol/g以下、更に好ましくは2mmol/g以下である。尚、シリカ粒子の単位質量あたりのシラノール基量は、後述の実施例に記載の方法により測定できる。
【0026】
本発明の研磨液組成物に含まれるシリカ粒子の含有量は、高研磨速度の確保の観点から、好ましくは0.05質量%以上、より好ましくは0.1質量%以上、更に好ましくは0.2質量%以上である。また、経済性、及び研磨液組成物におけるシリカ粒子の凝集抑制及び分散安定性向上の観点から、好ましくは10質量%以下、より好ましくは7.5質量%以下、更に好ましくは5質量%以下、更により好ましくは1質量%以下、更により好ましくは0.5質量%以下である。
【0027】
[炭素数4以上の1級アミン(成分B)]
本発明の研磨液組成物は、高研磨速度の確保、及び表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減の観点から、炭素数4以上の1級アミン(成分B)を含有する。炭素数4以上の1級アミン(成分B)は、水溶性のアミンであれば、脂肪族アミン及び芳香族アミンのうちのいずれでもあってもよいが、高研磨速度の確保、及び表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減の観点から、好ましくは、水酸基を含まないアミン、芳香族アミン、又は水酸基を含まない芳香族アミンである。
【0028】
炭素数4以上の1級アミン(成分B)の炭素数は、高研磨速度の確保、及び表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減の観点から、4以上、好ましくは6以上、より好ましくは7以上、更に好ましくは8以上であり、同様の観点から、好ましくは12以下、より好ましくは10以下である。
【0029】
炭素数4以上の1級アミン(成分B)の窒素原子の数は、高研磨速度の確保、及び表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減の観点から、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1である。
【0030】
脂肪族アミンとしては、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン等の炭素原子数が4以上12以下の鎖状又は分岐鎖状のアルキル基含有第1級アミン等が挙げられる。芳香族アミンとしては、シクロヘキシルアミン、ベンジルアミン、フェニルエチルアミン、アミノクレゾール、トルイジン等が挙げられる。これらの1級アミン(成分B)のうち、高研磨速度の確保、及び表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減の観点から、好ましくは芳香族アミンであり、より好ましくは、フェニルエチルアミン及びアミノクレゾールのうちの少なくとも1種であり、更に好ましくは2−フェニルエチルアミン及び2−アミノ−p−クレゾールのうちの少なくとも1種であり、更により好ましくは2−フェニルエチルアミンである。
【0031】
本発明の研磨液組成物に用いられる炭素数4以上の1級アミンの酸解離定数(pKa)は、高研磨速度の確保、及び表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減の観点から、好ましくは8以上、より好ましくは9以上、更に好ましくは10以上であり、同様の観点から、好ましくは12以下、より好ましくは11以下である。
【0032】
本発明の研磨液組成物に含まれる炭素数4以上の1級アミン(成分B)の含有量は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減、及び高研磨速度の確保の観点から、好ましくは0.00001質量%以上、より好ましくは0.0001質量%以上、更に好ましくは0.0002質量%以上である。また、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減、及び高研磨速度の確保の観点から、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、更に好ましくは0.0005質量%以下である。
【0033】
[水溶性高分子化合物(成分C)]
本発明の研磨液組成物は、高研磨速度の確保、及びシリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減の観点から、水溶性高分子化合物(成分C)を含む。水溶性高分子化合物(成分C)としては、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、或いはポリアクリルアミド、ポリアクリル酸等の単独重合若しくは共重合したアミド系高分子等の合成系高分子や、ヒドロキシエチルセルロースなどの天然系高分子等が用いることができる。水溶性高分子化合物(成分C)は、好ましくはアミド系高分子であり、より好ましくは下記一般式(1)で表される構成単位Iを10質量%以上含んだ高分子である。尚、本発明において、水溶性高分子化合物の「水溶性」とは、水(20℃)に対して2g/100ml以上の溶解度を有することをいう。
【化1】
【0034】
高研磨速度の確保、及びシリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減の観点から、上記一般式(1)において、R
1、R
2は、それぞれ独立して、水素、炭素数が1以上8以下のアルキル基、又は炭素数が1以上2以下のヒドロキシアルキル基であり、より好ましくは水素原子、炭素数が1以上4以下のアルキル基、又は炭素数が1以上2以下のヒドロキシアルキル基であり、特に好ましくは水素原子、メチル基、エチル基、イソプロピル基、ヒドロキシエチル基である。ただし、R
1、R
2の両方が水素であることはない。
【0035】
構成単位Iは、高研磨速度の確保、及びシリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減の観点から、一般式(1)における、R
1及びR
2が共に炭素数が1〜4のアルキル基である構成単位I―I、R
1が水素原子でありR
2が炭素数が1〜8のアルキル基である構成単位I―II、及びR
1が水素原子でありR
2が炭素数が1〜2のヒドロキシアルキル基である構成単位I―IIIからなる群から選ばれる少なくとも1種であると好ましい。構成単位I―Iにおいて、高研磨速度の確保の観点から、R
1及びR
2が共にメチル基又はエチル基であると好ましく、エチル基であるとより好ましい。また、表面粗さ(ヘイズ)の低減の観点から、構成単位I―IIにおいてR
2がイソプロピル基であると好ましい。また、高研磨速度の確保と、表面欠陥(LPD)の低減の観点から、構成単位I―IIIにおいてR
2はヒドロキシエチル基であると好ましい。
【0036】
一般式(1)で表される構成単位Iの供給源である単量体としては、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N−プロピルアクリルアミド、N−イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)、N−ブチルアクリルアミド、N−イソブチルアクリルアミド、N−ターシャリブチルアクリルアミド、N−ヘプチルアクリルアミド、N−オクチルアクリルアミド、N−ターシャリオクチルアクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド(HEAA)、N,N−ジメチルアクリルアミド(DMAA)、N,N−ジエチルアクリルアミド(DEAA)、N,N−ジプロピルアクリルアミド、N,N−ジイソプロピルアクリルアミド、N,N−ジブチルアクリルアミド、N,N−ジイソブチルアクリルアミド、N,N−ジヘプチルアクリルアミド、N,N−ジオクチルアクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N,N−ジヒドロキシエチルアクリルアミド等が例示できる。これらは、1種単独または2種以上組み合わせて用いることができる。これらの単量体のなかでも、表面粗さ(ヘイズ)の低減と高研磨速度の確保の観点から、N−イソプロピルアクリルアミド、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、及びN,N−ジエチルアクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、N−ヒドロキシエチルアクリルアミド及びN,N−ジエチルアクリルアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種がより好ましく、さらに、表面欠陥(LPD)の低減の観点から、N−ヒドロキシエチルアクリルアミドがさらに好ましい。
【0037】
水溶性高分子化合物(成分C)の全構成単位中における前記構成単位Iの割合は、R
1、R
2がいずれも炭素数が1以上2以下のヒドロキシアルキル基ではない場合には、10質量%以上であり、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上であり、高研磨速度の確保の観点から、好ましくは100質量%以下、より好ましくは90質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。R
1、R
2のいずれか、または両方が、炭素数が1〜2のヒドロキシアルキル基である場合には、水溶性高分子化合物(成分C)の全構成単位中における前記構成単位Iの割合は、シリコンウェーハの表面粗さ及び表面欠陥の低減の観点から、10質量%以上であり、好ましくは60質量%以上、より好ましくは80質量%以上であり、高研磨速度の確保の観点から、好ましくは100質量%以下である。
【0038】
水溶性高分子化合物(成分C)が、前記構成単位I以外の構成単位を含む場合、当該構成単位I以外の構成単位は、高研磨速度の確保と、表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減の観点から、下記一般式(2)で表される構成単位II(アクリル酸(AAc))が好ましい。
【化2】
【0039】
水溶性高分子化合物(成分C)が、上記一般式(1)で表される構成単位Iと一般式(2)で表される構成単位IIとを含む共重合体である場合、構成単位Iと構成単位IIの質量比(構成単位Iの質量/構成単位IIの質量)は、高研磨速度の確保と、表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減の観点から、好ましくは70/30以上、より好ましくは90/10以上、更に好ましくは99/1以上であり、好ましくは99.99/0.01以下、より好ましくは99.9/0.1以下である。
【0040】
水溶性高分子化合物(成分C)は、一般式(1)で表される構成単位I及び一般式(2)で表される構成単位II以外の構成単位を含む共重合体であってもよい。このような構成単位を形成する単量体成分としては、アクリルアミド、メタクリル酸、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、スチレン、ビニルピロリドン、オキサゾリン等が挙げられる。
【0041】
尚、水溶性高分子化合物(成分C)が、一般式(1)で表される構成単位Iと当該構成単位I以外の構成単位とを含む共重合体である場合、構成単位Iと構成単位I以外の構成単位の共重合体における配列は、ブロックでもランダムでもよい。
【0042】
水溶性高分子化合物(成分C)の重量平均分子量は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減の観点から、構成単位(I)を有する場合には好ましくは50,000以上、より好ましくは100,000以上、更に好ましくは200,000以上、より更に好ましくは500,000以上であり、高研磨速度の確保の観点から、好ましくは2,000,000以下、より好ましくは1,000,000以下、更に好ましくは900,000以下、より更に好ましくは800,000以下である。尚、水溶性高分子化合物の重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により測定した値であり、測定条件の詳細は下記実施例に示す通りである。
【0043】
水溶性高分子化合物(成分C)の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比(Mw/Mn)は、研磨速度向上の観点から、好ましくは2.0以上、より好ましくは3.0以上であり、好ましくは5.0以下、より好ましくは4.5以下である。尚、比(Mw/Mn)は、後述する実施例に記載の方法により算出される。
【0044】
水溶性高分子化合物(成分C)中の残存モノマー量は、研磨液組成物の高温長時間保存後における着色を抑制する観点から、少なければ少ないほど好ましく、0質量%であると最も好ましいが、好ましくは0.5質量%以下、より好ましくは0.4質量%以下、更に好ましくは0.3質量%以下、更により好ましくは0.25質量%以下である。尚、残存モノマー量は、後述する実施例に記載の方法により測定される。
【0045】
水溶性高分子化合物(成分C)中の金属含有量は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減の観点から、アルカリ金属(Na、K)はそれぞれ10000ppb以下が好ましく、5000ppb以下がより好ましく、1000ppb以下が更に好ましく、アルカリ土類金属(Mg、Ca)はそれぞれ1000ppb以下が好ましく、500ppb以下がより好ましく、200ppb以下が更に好ましく、III族(Al)、遷移金属(Fe、Zn)はそれぞれ500ppb以下が好ましく、200ppb以下がより好ましく、100ppb以下が更に好ましく、遷移金属(Ti、Cr、Mn、Ni、Cu)、重金属(Ag、Pb)はそれぞれ50ppb以下が好ましく、20ppb以下がより好ましく、10ppb以下が更に好ましい。
【0046】
水溶性高分子化合物(成分C)の製品形態は、研磨液組成物の生産性の観点やシリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減の観点から、無色透明な水溶液が好ましく、水溶液中の水溶性高分子化合物の濃度として1〜50質量%が好ましく、2〜30質量%がより好ましく、2〜20質量%が更に好ましい。
【0047】
水溶性高分子化合物(成分C)の保管条件は、密封容器中、暗所(遮光)下、保存温度は、0〜80℃が好ましく、5〜60℃がより好ましく、5〜40℃が更に好ましく、pH5〜8が好ましい。また、ベンザルコニウムクロライド、ベンゼトニウムクロライド、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、(5−クロロ−)2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、過酸化水素、又は次亜塩素酸塩等の防腐剤を添加しても良い。
【0048】
本発明の研磨液組成物に含まれる水溶性高分子化合物(成分C)の含有量は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減の観点から、好ましくは0.002質量%以上、より好ましくは0.003質量%以上、更に好ましくは0.005質量%以上、更により好ましくは0.008質量%以上であり、研磨速度の向上の観点から、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.03質量%以下、更に好ましくは0.02質量%以下である。
【0049】
本発明の研磨液組成物に含まれるシリカ粒子(成分A)と水溶性高分子化合物(成分C)の質量比(成分Aの質量/成分Cの質量)は、シリコンウェーハの研磨速度向上の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは8以上、更により好ましくは10以上である。また、前記質量比(成分Aの質量/成分Cの質量)は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、好ましくは38以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは25以下、更により好ましくは20以下である。
【0050】
本発明の研磨液組成物に含まれる炭素数4以上の1級アミン(成分B)と水溶性高分子化合物(成分C)の質量比(成分Bの質量/成分Cの質量)は、シリコンウェーハの研磨速度向上の観点から、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上である。また、前記質量比(成分Bの質量/成分Cの質量)は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)の低減と表面欠陥(LPD)の低減の両立の観点から、好ましくは1以下、より好ましくは0.1以下、更に好ましくは0.03以下である。
【0051】
本発明の研磨液組成物の調製に使用される水溶性高分子化合物(成分C)の原料モノマーは、高研磨速度の確保、及び表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減の観点から、純分は、98質量%以上が好ましく、98.5質量%以上がより好ましく、99質量%以上が更に好ましく、水分は、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.4質量%以下が更に好ましく、APHA色相は、500以下が好ましく、200以下がより好ましく、100以下が更に好ましい。原料モノマー中のメチルヒドロキノンなどの重合禁止剤の含有量は、分子量を制御した水溶性高分子化合物の安定製造の観点から、0〜0.2質量%が好ましく、0.05〜0.15質量%がより好ましく、0.09〜0.11質量%が更に好ましい。また、原料モノマーは密封容器中、暗所(遮光)下、保存温度は、0〜80℃が好ましく、5〜60℃がより好ましく、5〜40℃が更に好ましい。
【0052】
本発明の研磨液組成物の調製に使用される水溶性高分子化合物(成分C)の製造条件は、特に限定されるものではないが、高研磨速度の確保、及び表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減、並びに生産性、コストの観点から、重合方法は、ラジカル重合が好ましく、熱ラジカル重合がより好ましく、重合開始剤は、アゾ化合物、過酸化物、ホウ素化合物が好ましく、アゾ化合物がより好ましく、2,2‘−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリドが更に好ましく、モノマーに対する重合開始剤のモル比(重合開始剤のモル数/モノマーのモル数)は、0.0001〜1が好ましく、0.0005〜0.1がより好ましく、0.001〜0.01が更に好ましく、溶媒は、極性溶媒が好ましく、水またはアルコールがより好ましく、水が更に好ましく、重合濃度は、1〜50質量%が好ましく、2〜30質量%がより好ましく、2〜20質量%が更に好ましく、重合温度は、20〜100℃が好ましく、40〜90℃がより好ましく、60〜85℃が更に好ましく、重合温度での保持時間は、0.1〜100時間が好ましく、1〜10時間がより好ましく、3〜8時間が更に好ましく、重合雰囲気は、脱酸素雰囲気が好ましく、窒素雰囲気がより好ましく、撹拌周速は、0.01〜10m/sが好ましく、0.05〜5m/sがより好ましく、0.1〜1m/sが更に好ましく、重合スケールは、0.01〜100kgが好ましく、0.1〜10kgがより好ましく、0.2〜2kgが更に好ましく、重合容器内面の材質は、ガラス、テフロン(登録商標)、ポリプロピレン、ポリエチレンから選ばれる1種以上が好ましく、ガラスがより好ましい。
【0053】
[含窒素塩基性化合物(成分D)]
本発明の研磨液組成物は、高研磨速度の確保、及び表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減の観点から、炭素数4以上の1級アミン以外の含窒素塩基性化合物(成分D)として、水溶性の塩基性化合物を含有していてもよい。水溶性の塩基性化合物としては、アミン化合物及びアンモニウム化合物から選ばれる少なくとも1種類以上の含窒素塩基性化合物である。ここで、「水溶性」とは、水(20℃)に対して0.01g/100ml以上の溶解度を有することをいい、「水溶性の塩基性化合物」とは、水に溶解したとき、塩基性を示す化合物をいう。
【0054】
アミン化合物及びアンモニウム化合物から選ばれる少なくとも1種類以上の含窒素塩基性化合物としては、例えば、アンモニア、水酸化アンモニウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素アンモニウム、ジメチルアミン、トリメチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N一メチルエタノールアミン、N−メチル−N,N一ジエタノ−ルアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジブチルエタノールアミン、N−(β−アミノエチル)エタノ−ルアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ピペラジン・六水和物、無水ピペラジン、1−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−メチルピペラジン、ジエチレントリアミン、水酸化テトラメチルアンモニウム、及びヒドロキシアミンが挙げられる。ヒドロキシアミンとしては、高研磨速度の確保、及び表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減の観点から、好ましくは鎖状ヒドロキシアミンであり、より好ましくはモノヒロドロキシモノアミンであり、更に好ましくは2-アミノエタノールである。これらの含窒素塩基性化合物(成分D)は2種以上を混合して用いてもよい。本発明の研磨液組成物に含まれ得る含窒素塩基性化合物(成分D)としては、表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減、及び高研磨速度の確保の観点からアンモニア、アンモニアとヒドロキシアミンの混合物が好ましく、アンモニアがより好ましい。
【0055】
本発明の研磨液組成物に含まれる含窒素塩基性化合物(成分D)の含有量は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減、及び高研磨速度の確保の観点から、好ましくは0.001質量%以上、より好ましくは0.005質量%以上、更に好ましくは0.007質量%以上、更により好ましくは0.01質量%以上である。また、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減の観点から、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、更により好ましくは0.050質量%以下、更により好ましくは0.025質量%以下、更により好ましくは0.018質量%以下、更により好ましくは0.014質量%以下である。
【0056】
[水系媒体(成分E)]
本発明の研磨液組成物に含まれる水系媒体(成分E)としては、イオン交換水や超純水等の水、又は水と溶媒との混合媒体等が挙げられ、上記溶媒としては、水と混合可能な溶媒(例えば、エタノール等のアルコール)が好ましい。水系媒体としては、なかでも、イオン交換水又は超純水がより好ましく、超純水がさらに好ましく、電気抵抗率が17MΩ.cm以上の超純水がより更に好ましく、18MΩ.cm以上の超純水が特に好ましい。本発明の成分Eが、水と溶媒との混合媒体である場合、成分Eである混合媒体全体に対する水の割合は、特に限定されるわけではないが、経済性の観点から、好ましくは95質量%以上、より好ましくは98質量%以上、更に好ましくは実質的に100質量%である。
【0057】
本発明の研磨液組成物における水系媒体の含有量は、特に限定されるわけではなく、例えば、成分A〜成分E及び後述する任意成分を除いた残余であってよい。
【0058】
本発明の研磨液組成物の25℃におけるpHは、高研磨速度の確保の観点から、好ましくは8以上、より好ましくは9以上、更に好ましくは10以上であり、安全性の観点から、好ましくは12以下、より好ましくは11以下である。pHの調整は、含窒素塩基性化合物(成分D)及び/又は後述するpH調整剤を適宜添加して行うことができる。ここで、25℃におけるpHは、pHメータ(東亜電波工業株式会社、HM−30G)を用いて測定でき、電極の研磨液組成物への浸漬後1分後の数値である。
【0059】
本発明の研磨液組成物は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減、及び高研磨速度の確保の観点から、高温下長期保存してもpH変化が小さいものが好ましく、例えば40℃で1週間保存した場合のpH変化量が0〜1.0が好ましく、0〜0.5がより好ましく、0〜0.2が更に好ましい。
【0060】
本発明の研磨液組成物中のシリカ粒子の平均二次粒子径は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減、及び高研磨速度の確保の観点から、60〜160nmが好ましく、80〜150nmがより好ましく、90〜140nmが更に好ましく、100〜130nmが更により好ましい。尚、研磨液組成物中のシリカ粒子の平均二次粒子径は、実施例記載の方法により測定することができる。
【0061】
本発明の研磨液組成物は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減、及び高研磨速度の確保の観点から、高温下長期保存しても研磨液組成物中のシリカ粒子の平均二次粒子径の変化が小さいものが好ましく、例えば40℃で1週間保存した場合のシリカ粒子の平均二次粒子径は、70〜130nmが好ましく、80〜120nmがより好ましく、90〜110nmが更に好ましい。
【0062】
本発明の研磨液組成物の濃縮液の粘度は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減、及び高研磨速度の確保の観点から、3〜10mPa.sが好ましく、4〜9mPa.sがより好ましく、5〜8mPa.sが更に好ましい。尚、研磨液組成物の濃縮液の粘度は、実施例に記載の方法により測定できる。
【0063】
本発明の研磨液組成物は、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減、及び高研磨速度の確保の観点から、高温下長期保存しても研磨液組成物の濃縮液の粘度変化が小さいものが好ましく、例えば40℃で1週間保存した場合の粘度変化量は、0〜5mPa.sが好ましく、0〜2mPa.sがより好ましく、0〜1mPa.sが更に好ましく、0mPa.sが特に好ましい。
【0064】
[その他の任意成分]
本発明の研磨液組成物には、本発明の効果が妨げられない範囲で、更に、多価アルコールのアルキレンオキシド付加物(成分F)、成分C以外の水溶性高分子化合物、pH調整剤、防腐剤、アルコール類、キレート剤及び非イオン性界面活性剤から選ばれる少なくとも1種の任意成分が含まれてもよい。
【0065】
〈多価アルコールのアルキレンオキシド付加物(成分F)〉
本発明の研磨液組成物は、更に多価アルコールのアルキレンオキシド付加物(成分F)を含んでいてもよい。成分Fは、被研磨シリコンウェーハに吸着する。その為、成分Fは、含窒素塩基性化合物等によるウェーハ表面の腐食を抑制しつつ、ウェーハ表面に濡れ性を付与することにより、ウェーハ表面の乾燥により生じると考えられるウェーハ表面へのパーティクルの付着を抑制するよう作用する。また、研磨されたシリコンウェーハの洗浄工程において、成分Fが、シリカ粒子とシリコンウェーハとの間におこる相互作用を弱める。したがって、成分Fは、水溶性高分子化合物(成分C)と相まって、表面粗さ(ヘイズ)と表面欠陥(LPD)の低減を増進するものと考えられる。
【0066】
成分Fは、多価アルコールにエチレンオキシドやプロピレンオキシド等のアルキレンオキシドを付加重合させて得られる多価アルコール誘導体である。成分Fは、エチレンオキシ基及びプロピレンオキシ基からなる群から選ばれる少なくとも1種のアルキレンオキシ基を含む。
【0067】
成分Fの元(原料)となる多価アルコールの水酸基数は、シリコンウェーハ表面への成分Fの吸着強度を高める観点、シリコンウェーハの表面欠陥(LPD)及び表面粗さ(ヘイズ)の低減の観点から、好ましくは2個以上であり、研磨速度の確保の観点から、好ましくは10個以下、より好ましくは8個以下、更に好ましくは6個以下、更により好ましくは4個以下である。
【0068】
成分Fは、具体的には、ポリエチレングリコール(PEG)及びポリプロピレングリコール等のアルキレングリコールアルキレンオキシド付加物、グリセリンアルキレンオキシド付加物、ペンタエリスリトールアルキレンオキシド付加物等が挙げられるが、これらの中でも、エチレングリコールアルキレンオキシド付加物が好ましい。
【0069】
成分Fは、エチレンオキシ基(EO)及びプロピレンオキシ基(PO)からなる群から選ばれる少なくとも1種のアルキレンオキシ基を含むが、シリコンウェーハの表面欠陥(LPD)及び表面粗さ(ヘイズ)の低減の観点から、成分Fに含まれるアルキレンオキシ基は、EO及びPOからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルキレンオキシ基からなると好ましく、EOからなるとより好ましい。成分Fが、EOとPOの両方を含む場合、EOとPOの配列はブロックでもランダムでもよい。
【0070】
成分Fの重量平均分子量は、成分Fの被研磨シリコンウェーハへの吸着量を増大させて、表面粗さ(ヘイズ)を低減する観点から、500以上が好ましく、700以上がより好ましく、900以上が更に好ましく、成分Fの被研磨シリコンウェーハへの吸着量を増大させて、表面粗さ(ヘイズ)を低減する観点から、25万以下が好ましく、10万以下がより好ましく、2万以下が更に好ましく、1万以下が更により好ましい。成分Fの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を下記の条件で適用して得たクロマトグラム中のピークに基づき算出できる。
〈測定条件〉
装置:HLC-8320 GPC(東ソー株式会社、検出器一体型)
カラム:GMPWXL+GMPWXL(アニオン)
溶離液:0.2Mリン酸バッファー/CH
3CN=9/1
流量:0.5ml/min
カラム温度:40℃
検出器:RI 検出器
標準物質:分子量が既知の単分散ポリエチレングリコール
【0071】
前記研磨液組成物に含まれる成分Fの含有量は、表面粗さ(ヘイズ)と表面欠陥(LPD)の低減の観点から、好ましくは0.00001質量%以上、より好ましくは0.0001質量%以上であり、好ましくは0.005質量%以下、より好ましくは0.001質量%以下である。
【0072】
前記研磨液組成物に含まれる成分Fとシリカ粒子(成分A)の質量比(多価アルコールのアルキレンオキシド付加物の質量/シリカ粒子の質量)は、シリコンウェーハの表面欠陥(LPD)及び表面粗さ(ヘイズ)の低減の観点から、0.00004以上が好ましく、0.0001以上がより好ましく、0.0005以上が更に好ましく、また、0.02以下が好ましく、0.005以下がより好ましく、0.002以下が更に好ましい。
【0073】
前記研磨液組成物に含まれる水溶性高分子化合物(成分C)と多価アルコールのアルキレンオキシド付加物(成分F)の質量比(水溶性高分子化合物(成分C)の質量/多価アルコールのアルキレンオキシド付加物(成分F)の質量)は、シリコンウェーハの表面欠陥(LPD)及び表面粗さ(ヘイズ)の低減の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは10以上、更に好ましくは20以上であり、好ましくは500以下、より好ましくは200以下、更に好ましくは100以下である。
【0074】
〈防腐剤〉
防腐剤としては、ベンザルコニウムクロライド、ベンゼトニウムクロライド、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、(5−クロロ−)2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、過酸化水素、又は次亜塩素酸塩等が挙げられる。
【0075】
〈アルコール類〉
アルコール類としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、イソプロピルアルコール、2−メチル−2−プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。アルコール類の含有量は、前記研磨液組成物の濃縮液を希釈して得られる希釈液において、好ましくは0.1質量%以上5質量%以下である。
【0076】
〈キレート剤〉
キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸アンモニウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、トリエチレンテトラミン六酢酸、トリエチレンテトラミン六酢酸ナトリウム等が挙げられる。キレート剤の含有量は、前記研磨液組成物の濃縮液を希釈して得られる希釈液において、好ましくは0.01質量%以上1質量%以下である。
【0077】
〈非イオン性界面活性剤〉
非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン(硬化)ヒマシ油等のポリエチレングリコール型と、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリンアルキルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、アルキルグリコシド等の多価アルコール型及び脂肪酸アルカノールアミド等が挙げられる。
【0078】
尚、上記において説明した各成分の含有量は、使用時における含有量であるが、本発明の研磨液組成物は、その保存安定性が損なわれない範囲で濃縮された状態(この状態の本発明の研磨液組成物を「研磨液組成物の濃縮液」と呼ぶ場合がある。)で保存及び供給されてもよい。この場合、製造及び輸送コストをさらに低くできる点で好ましい。研磨液組成物の濃縮液は、必要に応じて前述の水系媒体で適宜希釈して使用すればよい。
【0079】
本発明は、一態様において、シリカ粒子(成分A)と炭素数4以上の1級アミン(成分B)と水溶性高分子化合物(成分C)と水系媒体(成分E)と、必要に応じて任意成分と含む1液型研磨液組成物である。また、本発明は、その他の態様において、シリカ粒子(成分A)と炭素数4以上の1級アミン(成分B)と水溶性高分子化合物(成分C)と含窒素塩基性化合物(成分D)と水系媒体(成分E)と、必要に応じて任意成分と含む1液型研磨液組成物である。1液型研磨液組成物は、その保存安定性が損なわれない範囲で濃縮された状態で保存及び供給され、必要に応じて前述の水系媒体で適宜希釈して使用されるものでもよい。
【0080】
また、本発明は、さらに別の態様において、シリカ粒子(成分A)と水系媒体とを含むシリカ粒子分散液(第一液)と、炭素数4以上の1級アミン(成分B)と水溶性高分子化合物(成分C)と水系媒体とを含む添加剤水溶液(第二液)とが、相互に混合されていない状態で保存されており、これらが使用時に混合されるシリコンウェーハ用研磨液組成物キット(2液型研磨液組成物)である。また、本発明は、さらに別の態様において、添加剤水溶液(第二液)が、炭素数4以上の1級アミン(成分B)と水溶性高分子化合物(成分C)と含窒素塩基性化合物(成分D)と水系媒体とを含む。前記シリカ粒子分散液及び前記添加剤水溶液には、各々、必要に応じて、前記任意成分が含まれていてもよい。
【0081】
前記2液型研磨液組成物を構成する前記シリカ粒子分散液及び前記添加剤水溶液は、各々、その保存安定性が損なわれない範囲で濃縮された状態で、保存及び供給され、必要に応じて前述の水系媒体で適宜希釈して使用されるものでもよい。また、前記2液型研磨液組成物の調製の際に、前記シリカ粒子分散液と前記添加剤水溶液との混合最中又は混合後に、必要に応じて水系媒体を添加してもよい。
【0082】
前記2液型研磨液組成物を用いれば、シリカ粒子分散液と添加剤水溶液とが、互いに分けて保管されるので、シリカ粒子分散液と添加剤水溶液との混合時に、例えば、添加剤水溶液の使用量を調整することにより、研磨液組成物中の、水溶性高分子化合物等の濃度を調整でき、種々の研磨液組成物を調整できる。
【0083】
前記2液型研磨液組成物を構成するシリカ粒子分散液と添加剤水溶液における各成分の含有量は、例えば、これらを混合し、更に必要に応じて水系媒体を添加することにより得られる研磨液組成物中の各成分の質量比、研磨液組成物の25℃におけるpHが、前記1液型研磨液組成物におけるそれと同じになるように設定されればよい。
【0084】
次に、前記研磨液組成物の濃縮液の調製方法の一例について説明する。
【0085】
前記研磨液組成物の濃縮液の調製方法は、何ら制限されない。前記研磨液組成物の濃縮液は、例えば、シリカ粒子(成分A)と炭素数4以上の1級アミン(成分B)と水溶性高分子化合物(成分C)と水系媒体(成分E)と、必要に応じて含窒素塩基性化合物(成分D)及びその他の任意成分とを混合することによって調製できる。
【0086】
シリカ粒子(成分A)の水系媒体への分散は、例えば、ホモミキサー、ホモジナイザー、超音波分散機、湿式ボールミル、又はビーズミル等の撹拌機等を用いて行うことができる。シリカ粒子の凝集等により生じた粗大粒子が水系媒体中に含まれる場合、遠心分離やフィルターを用いたろ過等により、当該粗大粒子を除去すると好ましい。シリカ粒子(成分A)の水系媒体への分散は、水溶性高分子化合物(成分C)の存在下で行うと好ましい。
【0087】
本発明の研磨液組成物は、例えば、半導体基板の製造方法における、被研磨シリコンウェーハを研磨する研磨工程や、被研磨シリコンウェーハを研磨する研磨工程を含む被研磨シリコンウェーハの研磨方法に用いられる。
【0088】
前記被研磨シリコンウェーハを研磨する研磨工程には、シリコン単結晶インゴットを薄円板状にスライスすることにより得られたシリコンウェーハを平面化するラッピング(粗研磨)工程と、ラッピングされたシリコンウェーハをエッチングした後、シリコンウェーハ表面を鏡面化する仕上げ研磨工程とがある。本発明の研磨液組成物は、上記仕上げ研磨工程で用いられるとより好ましい。
【0089】
本発明の半導体基板の製造方法(以下、「本発明の製造方法」と略称する場合もある。)及び本発明の被研磨シリコンウェーハの研磨方法(以下、「本発明の研磨方法」と略称する場合もある。)は、シリコンウェーハを研磨する研磨工程の前に、本発明の研磨液組成物を希釈する希釈工程を含んでいてもよい。希釈媒には、水系媒体を用いればよい。希釈倍率は、希釈した後の研磨時の濃度を確保できれば、特に限定するものではないが、製造及び輸送コストをさらに低くできる観点から、好ましくは2倍以上、より好ましくは5倍以上、更に好ましくは10倍以上、更により好ましくは20倍以上であり、保存安定性の観点から好ましくは100倍以下、より好ましくは90倍以下、更に好ましくは80倍以下、更により好ましくは60倍以下である。
【0090】
前記希釈工程で希釈される研磨液組成物は、製造及び輸送コスト低減、保存安定性の向上の観点から、例えば、成分Aを1質量%以上20質量%以下、成分Bを0.0004質量%以上2質量%以下、成分Cを0.1質量%以上10質量%以下含んでいると好ましい。
【0091】
前記被研磨シリコンウェーハを研磨する工程では、例えば、研磨パッドを貼り付けた定盤で被研磨シリコンウェーハを挟み込み、3kPa以上20kPa以下の研磨圧力で被研磨シリコンウェーハを研磨する。
【0092】
上記研磨圧力とは、研磨時に被研磨シリコンウェーハの被研磨面に加えられる定盤の圧力をいう。研磨圧力は、研磨速度を向上させ経済的に研磨を行う観点から、3kPa以上が好ましく、4kPa以上がより好ましく、5kPa以上が更に好ましく、5.5kPa以上が更により好ましい。また、表面品質を向上させ、且つ研磨されたシリコンウェーハにおける残留応力を緩和する観点から、研磨圧力は、20kPa以下が好ましく、より好ましくは18kPa以下、更に好ましくは16kPa以下である。
【0093】
本発明の製造方法及び本発明の研磨方法は、前記研磨液組成物(希釈液)を用いて被研磨シリコンウェーハを研磨する工程の後に、研磨された被研磨シリコンウェーハを洗浄する工程を更に含む。
【0094】
本発明は、さらに以下<1>〜<18>を開示する。
<1> シリカ粒子(成分A)と、炭素数4以上の1級アミン(成分B)と、水溶性高分子化合物(成分C)とを含む、シリコンウェーハ用研磨液組成物。
<2> 前記水溶性高分子(成分C)が、好ましくは下記一般式(1)で表される構成単位Iを10質量%以上含む、前記<1>に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
【化3】
ただし、上記一般式(1)において、R
1、R
2は、それぞれ独立して、水素、炭素数が1以上8以下のアルキル基、又は炭素数が1以上2以下のヒドロキシアルキル基を示し、R
1、R
2の両方が水素であることはない。
<3> 前記水溶性高分子化合物(成分C)が、好ましくは下記一般式(2)で表される構成単位IIを含む、前記<1>又は<2>に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
【化4】
<4> 前記構成単位Iと前記構成単位IIの質量比(構成単位Iの質量/構成単位IIの質量)は、好ましくは70/30以上、より好ましくは90/10以上、更に好ましくは99/1以上であり、好ましくは99.99/0.01以下、より好ましくは99.9/0.1以下である、<3>に記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<5> 前記炭素数4以上の1級アミン(成分B)と前記水溶性高分子化合物(成分C)との質量比(成分Bの質量/成分Cの質量)は、好ましくは0.001以上、より好ましくは0.005以上、更に好ましくは0.01以上であり、好ましくは1以下、より好ましくは0.1以下、更に好ましくは0.03以下である、<1>から<4>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<6> 前記炭素数4以上の1級アミンは、好ましくは、水酸基を含まないアミン、芳香族アミン、又は水酸基を含まない芳香族アミンである、<1>から<5>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<7> 前記炭素数4以上の1級アミン(成分B)の炭素数は、好ましくは6以上、より好ましくは7以上、更に好ましくは8以上であり、好ましくは12以下、より好ましくは10以下である、<1>から<6>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<8> 前記炭素数4以上の1級アミン(成分B)の窒素原子の数は、好ましくは3以下、より好ましくは2以下、更に好ましくは1である、<1>から<7>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<9> 前記炭素数4以上の1級アミン(成分B)は、好ましくは水酸基を含まない芳香族アミン、より好ましくはフェニルエチルアミン及びアミノクレゾールのうちの少なくとも1種であり、更に好ましくは2−フェニルエチルアミン及び2−アミノ−p−クレゾールのうちの少なくとも1種であり、更により好ましくは2−フェニルエチルアミンである、<1>から<8>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<10> 前記シリカ粒子(成分A)と前記水溶性高分子化合物(成分C)の質量比(成分Aの質量/成分Cの質量)は、好ましくは1以上、より好ましくは5以上、更に好ましくは8以上、更により好ましくは10以上であり、好ましくは38以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは25以下、更により好ましくは20以下である、<1>から<9>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<11> 好ましくは、更に、前記炭素数4以上の1級アミン(成分B)以外の含窒素塩基性化合物(成分D)を含む、<1>から<10>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<12> 前記シリコンウェーハ用研磨液組成物における前記水溶性高分子化合物(成分C)の含有量は、好ましくは0.002質量%以上、より好ましくは0.003質量%以上、更に好ましくは0.005質量%以上、更により好ましくは0.008質量%以上であり、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.03質量%以下、更に好ましくは0.02質量%以下である、<1>から<11>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<13> 前記シリコンウェーハ用研磨液組成物に含まれる前記炭素数4以上の1級アミン(成分B)の含有量は、好ましくは0.00001質量%以上、より好ましくは0.0001質量%以上、更に好ましくは0.0002質量%以上であり、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.005質量%以下、更に好ましくは0.0005質量%以下である、<1>から<12>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<14> 前記シリカ粒子の平均一次粒子径は、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、更に好ましくは15nm以上、更により好ましくは30nm以上であり、好ましくは50nm以下、より好ましくは45nm以下、更に好ましくは40nm以下である、<1>から<13>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<15>好ましくは、更に、多価アルコールのアルキレンオキシド付加物を含有する、<1>から<14>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<16> 前記シリコンウェーハ用研磨液組成物の25℃におけるpHは、好ましくは8以上、より好ましくは9以上、更に好ましくは10以上であり、好ましくは12以下、より好ましくは11以下である、<1>から<15>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物。
<17> <1>から<16>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物を用いて被研磨シリコンウェーハを研磨する工程を含む、被研磨シリコンウェーハの研磨方法。
<18> <1>から<16>のいずれかに記載のシリコンウェーハ用研磨液組成物を用いて被研磨シリコンウェーハを研磨する工程を含む、半導体基板の製造方法。
【実施例】
【0095】
下記の実施例1〜
11及び比較例1〜
8で用いた表1及び2中の水溶性高分子化合物の詳細は下記のとおりである。
【0096】
[HEAA/AAc=99.7/0.3]
温度計及び5cm三日月形テフロン(登録商標)製撹拌翼を備えた500mlセパラブルフラスコに、ヒドロキシエチルアクリルアミド9.97g(0.086mol KJケミカルズ製、純分99.25質量%、水分0.35質量%、重合禁止剤メチルヒドロキノン0.10質量%、APHA色相30)と、アクリル酸0.03g(1.39mmol 和光純薬製)、2,2’-アゾビス(2‐メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリドル0.024g(重合開始剤、V-50 0.45mmol 和光純薬製)と、水390gとを投入し、これらを窒素雰囲気下100rpm(周速0.5m/s)で撹拌し混合して、溶解させた。次いで、セパラブルフラスコ内の溶液の温度を80℃まで昇温し当該混合溶液を80℃で6時間撹拌し、無色透明の2.5質量%HEAA/AAc=99.7/0.3水溶液を得た。
【0097】
水溶性高分子化合物(HEAA/AAc=99.7/0.3)の重量平均分子量(Mw)は700000、数平均分子量(Mn)は190000、分子量分布(Mw/Mn)は3.7、残存モノマー濃度は0.1質量%、金属濃度は、Na=950ppb、Mg=150ppb、Al=30ppb、K=180ppb、Ca=210ppb、Ti=2ppb、Cr=4ppb、Mn=4ppb、Fe=46ppb、Ni=6ppb、Cu=2ppb、Zn=26ppb、Ag<1ppb、Pb=6ppbであった。
【0098】
[HEAA単独重合体]
ヒドロキシエチルアクリルアミド150 g(1.30 mol KJケミカルズ製、純分99.25質量%、水分0.35質量%、重合禁止剤メチルヒドロキノン0.10質量%、APHA色相30)を100 gのイオン交換水に溶解し、モノマー水溶液を調製した。また、別に、2,2’-アゾビス(2‐メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド 0.035g(重合開始剤、V-50 1.30 mmol 和光純薬製)を70 gのイオン交換水に溶解し、重合開始剤水溶液を調製した。ジムロート冷却管、温度計および三日月形テフロン(登録商標)製撹拌翼を備えた2Lセパラブルフラスコに、イオン交換水1180 gを投入した後、セパラブルフラスコ内を窒素置換した。次いで、オイルバスを用いてセパラブルフラスコ内の温度を68℃に昇温した後、予め調製したモノマー水溶液と重合開始剤水溶液を各々3.5時間かけて滴下し、重合を行った。滴下終了後、温度及び撹拌を4時間保持し、無色透明10質量%ポリヒドロキシエチルアクリルアミド水溶液1500 gを得た。
【0099】
水溶性高分子化合物(HEAA単独重合体)の重量平均分子量(Mw)は720000、数平均分子量(Mn)は150000、分子量分布(Mw/Mn)は4.8、残存モノマー濃度は0.1質量%、金属濃度は、Na=740ppb、Mg=100ppb、Al=18ppb、K=150ppb、Ca=130ppb、Ti=2ppb、Cr=3ppb、Mn=3ppb、Fe=43ppb、Ni=3ppb、Cu=2ppb、Zn=14ppb、Ag<1ppb、Pb=7ppbであった。
【0100】
[HEC]
ヒドロキシエチルセルロース(住友精化製、CF−V、重量平均分子量800000)
[PVA]
ポリビニルアルコール(クラレ製、PVA−105、重量平均分子量43000、ケン化度98〜99%)
[PAM]
ポリアクリルアミド(和光純薬製、重量平均分子量600000〜1000000)
【0101】
<水溶性高分子化合物の重量平均分子量、数平均分子量、分子量分布の測定>
水溶性高分子化合物の重量平均分子量、数平均分子量、及び分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法を下記の条件で適用して得たクロマトグラム中のピークに基づいて算出した。
装置:HLC-8320 GPC(東ソー株式会社、検出器一体型)
カラム:TSKgel α−M+TSKgel α−M(カチオン、東ソー株式会社製)
溶離液:エタノール/水(=3/7)に対して、LiBr (50mmol/L(0.43質量%))、CH
3COOH(166.7mmol/L(1.0質量%))を添加
流量:0.6mL/min
カラム温度:40℃
検出器:RI 検出器
標準物質:分子量既知の単分散ポリエチレングリコール
【0102】
<残存モノマー濃度>
水溶性高分子化合物中の残存モノマー濃度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法を下記の条件で適用して得たクロマトグラム中のピークに基づいて算出した。
装置:L-2000シリーズ(日立製作所株式会社)
カラム:ODS L-column
溶離液:0.1%リン酸バッファー/CH
3CN=97/3
流量:1 mL/min
カラム温度:40℃
検出器:UV 205 nm
【0103】
<水溶性高分子化合物中の金属濃度>
水溶性高分子化合物中の金属濃度は、JIS−K0133に準拠し、ICP−MS(アジレント製7700S)を用いて測定した。
【0104】
<研磨材(シリカ粒子)の平均一次粒子径>
研磨材の平均一次粒子径(nm)は、BET(窒素吸着)法によって算出される比表面積S(m
2/g)を用いて下記式で算出した。
平均一次粒子径(nm)=2727/S
【0105】
研磨材の比表面積は、下記の[前処理]をした後、測定サンプル約0.1gを測定セルに小数点以下4桁まで精量し、比表面積の測定直前に110℃の雰囲気下で30分間乾燥した後、比表面積測定装置(マイクロメリティック自動比表面積測定装置 フローソーブIII2305、島津製作所製)を用いて窒素吸着法(BET法)により測定した。
【0106】
[前処理]
(a)スラリー状の研磨材を硝酸水溶液でpH2.5±0.1に調整する。
(b)pH2.5±0.1に調整されたスラリー状の研磨材をシャーレにとり150℃の熱風乾燥機内で1時間乾燥させる。
(c)乾燥後、得られた試料をメノウ乳鉢で細かく粉砕する。
(d)粉砕された試料を40℃のイオン交換水に懸濁させ、孔径1μmのメンブランフィルターで濾過する。
(e)フィルター上の濾過物を20gのイオン交換水(40℃)で5回洗浄する。
(f)濾過物が付着したフィルターをシャーレにとり、110℃の雰囲気下で4時間乾燥させる。
(g)乾燥した濾過物(砥粒)をフィルター屑が混入しないようにとり、乳鉢で細かく粉砕して測定サンプルを得た。
【0107】
<研磨材(シリカ粒子)の平均二次粒子径>
研磨材の平均二次粒子径(nm)は、研磨材の濃度が0.25質量%となるように研磨材をイオン交換水に添加した後、得られた水溶液をDisposable Sizing Cuvette(ポリスチレン製 10mmセル)に下底からの高さ10mmまで入れ、動的光散乱法(装置名:ゼータサイザーNano ZS、シスメックス(株)製)を用いて測定した。
【0108】
<シリカ粒子の金属含有量>
シリカ粒子の金属含有量は、JIS−K0133に準拠し、ICP−MS(アジレント製7700S)を用いて測定した。フッ化水素酸によりシリカ粒子を完全溶解させた水溶液を用いた。
【0109】
<シリカ粒子のシラノール基量の測定>
シリカ粒子の単位質量あたりのシラノール基量は、差動型示差熱天秤(TG−DTA)(理学電機工業株式会社製、商品名:Thermo Plus TG8120)を用いて測定した。シリカ粒子乾燥粉末を、エアーフロー(300mL/min)下、25〜700℃まで10℃/minの速度で昇温し、200℃で測定した重量の残分をSiO
2の重量(g)、200〜700℃までの加熱の間の重量の減量をシラノール由来の水の質量(g)として測定し、下記の式を用いてシラノール基量(mmol/g)を算出した。
シラノール基量(mmol/g)=(2×水の重量×1000/18)/SiO
2の重量
【0110】
<研磨液組成物の調製>
シリカ粒子(コロイダルシリカ、平均一次粒子径35nm、平均二次粒子径70nm、会合度2、金属含有量:Na=114ppb、Mg<10ppb、Al=10ppb、K=45ppb、Ca<10ppb、Ti<10ppb、Cr<10ppb、Mn<10ppb、Fe<10ppb、Ni=14ppb、Cu<10ppb、Zn<10ppb、Ag<10ppb、Pb<10ppb、単位質量当たりのシラノール基量1.8mmol/g)、水溶性高分子化合物、ポリエチレングリコール((EO平均付加モル数=25、Mw1000(カタログ値)、和光純薬(株))、アミン、含窒素塩基性化合物、及び超純水(電気抵抗率18MΩ.cm)を攪拌混合して、実施例1〜
11、及び比較例1〜
8の研磨液組成物の濃縮液を得た。シリカ粒子、水溶性高分子化合物、ポリエチレングリコール、アミン、含窒素塩基性化合物を除いた残余は超純水である。含窒素塩基性化合物としては、28質量%アンモニア水(キシダ化学(株)試薬特級)を用いた。アミンとしては、2−フェニルエチルアミン(和光純薬(株))、2−アミノ−p−クレゾール(東京化成(株))、n−ヘキシルアミン(和光純薬(株))、ジエタノールアミン(和光純薬(株))、エチルアミン(和光純薬(株))を用いた。
【0111】
表1及び2におけるアミンの含有量は、研磨液組成物の濃縮液を40倍に希釈して得た研磨液組成物についての値である。また、研磨液組成物の濃縮液を40倍に希釈して得た実施例1〜
11、比較例1〜
8の研磨液組成物中、シリカ粒子の含有量(SiO
2換算濃度)は0.25重量%、水溶性高分子化合物の含有量は0.02質量%、アンモニアの含有量は0.01質量%、ポリエチレングリコールの含有量は0.0002質量%である。
【0112】
<研磨液組成物の粘度>
研磨液組成物の粘度は、JIS−Z8803に準拠し、B型粘度計(東機産業製BMII、ローターNo.1、60rpm)を用い、25℃の研磨液組成物について測定した。表1及び表2には、研磨液組成物の濃縮液の40℃1ヶ月静置保存前後の各粘度を示した。
【0113】
<研磨液組成物中のシリカ粒子の平均二次粒子径>
研磨液組成物中の平均二次粒子径(nm)は、40℃1ヶ月静置保存前後の研磨液組成物の濃縮液の各々に、シリカ粒子の濃度が0.25質量%となるようにイオン交換水に添加して得た研磨液組成物を、Disposable Sizing Cuvette(ポリスチレン製 10mmセル)に下底からの高さ10mmまで入れ、動的光散乱法(装置名:ゼータサイザーNano ZS、シスメックス(株)製)を用いて25℃、積算10回、平衡時間0分の条件で測定した。粒子パラメーターとしてシリカの屈折率1.45、吸収係数0.01、溶媒パラメーターとして水の屈折率1.333、吸収係数0を用い、Z平均値を平均二次粒子径とし表1及び表2に示した。
【0114】
<研磨液組成物のpH>
40℃1ヶ月静置保存前後の研磨液組成物の濃縮液の各々に、シリカ粒子の濃度が0.25質量%となるようにイオン交換水に添加して得た25℃の研磨液組成物に、pHメータ(東亜電波工業株式会社、HM−30G)の電極を浸漬し、1分後のpHを測定し、その結果を表1及び表2に示した。
【0115】
<研磨方法>
上記の研磨液組成物の濃縮液を40℃で1ヶ月静置保存し、保存後の研磨液組成物の濃縮液をイオン交換水で40倍に希釈して得た研磨液組成物について、研磨直前にフィルター(コンパクトカートリッジフィルター MCP−LX−C10S アドバンテック株式会社)にてろ過を行い、下記の研磨条件で下記のシリコンウェーハ(直径200mmのシリコン片面鏡面ウェーハ(伝導型:P、結晶方位:100、抵抗率0.1Ω・cm以上100Ω・cm未満))に対して仕上げ研磨を行った。当該仕上げ研磨に先立ってシリコンウェーハに対して市販の研磨液組成物を用いてあらかじめ粗研磨を実施した。粗研磨を終了し仕上げ研磨に供したシリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)は、2.680(ppm)であった。表面粗さ(ヘイズ)は、KLA Tencor社製のSurfscan SP1−DLS(商品名)を用いて測定される暗視野ワイド斜入射チャンネル(DWO)での値である。
【0116】
<仕上げ研磨条件>
研磨機:片面8インチ研磨機GRIND-X SPP600s(岡本工作製)
研磨パッド:スエードパッド(東レ コーテックス社製 アスカー硬度64 厚さ 1.37mm ナップ長450um 開口径60um)
シリコンウェーハ研磨圧力:100g/cm
2
定盤回転速度:60rpm
研磨時間:5分
研磨液組成物の供給速度:150g/cm
2
研磨液組成物の温度:23℃
キャリア回転速度:60rpm
【0117】
仕上げ研磨後、シリコンウェーハに対して、オゾン洗浄と希フッ酸洗浄を下記のとおり行った。オゾン洗浄では、20ppmのオゾンを含んだ水溶液をノズルから流速1L/minで600rpmで回転するシリコンウェーハの中央に向かって3分間噴射した。このときオゾン水の温度は常温とした。次に希フッ酸洗浄を行った。希フッ酸洗浄では、0.5質量%のフッ化水素アンモニウム(特級:ナカライテクス株式会社)を含んだ水溶液をノズルから流速1L/minで600rpmで回転するシリコンウェーハの中央に向かって6秒間噴射した。上記オゾン洗浄と希フッ酸洗浄を1セットとして計2セット行い、最後にスピン乾燥を行った。スピン乾燥では1500rpmでシリコンウェーハを回転させた。
【0118】
<シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の評価>
洗浄後のシリコンウェーハ表面の表面粗さ(ヘイズ)(ppm)の評価には、KLA Tencor社製のSurfscan SP1−DLS(商品名)を用いて測定される、暗視野ワイド斜入射チャンネル(DWO)での値を用いた。また、表面欠陥(LPD)(個)は、Haze測定時に同時に測定され、シリコンウェーハ表面の粒子径が45nm以上のパーティクル数を測定することによって評価した。Hazeの数値は小さいほど表面の平坦性が高いことを示す。また、LPDの数値(パーティクル数)が小さいほど表面欠陥が少ないことを示す。表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の結果を表1及び表2に示した。表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の測定は、各々2枚のシリコンウェーハに対して行い、各々平均値を表1及び表2に示した。表面欠陥(LPD)の評価基準は下記のとおりである。
A:表面欠陥(LPD)が400未満の場合
B:表面欠陥(LPD)が400以上1000未満の場合
C:表面欠陥(LPD)が1000以上の場合
【0119】
<40℃1ヶ月間保存前後の研磨速度比(%)>
研磨液組成物の濃縮液を40℃で1ヶ月間静置保存した。40℃1ヶ月間保存前後の研磨液組成物の濃縮液を40倍に希釈して得た各研磨液組成物について研磨速度を求め、下記式より保存前後の研磨速度比(%)を算出した。各研磨速度は、下記の<研磨速度の評価>に従って測定した。尚、表1及び表2には、下記式より求められる研磨速度比(%)に加えて、40℃1ヶ月間保存後の研磨液組成物の濃縮液を40倍に希釈して得た実施例1〜
11、比較例2〜
8の研磨液組成物を用いた場合の研磨速度を、各々、比較例1の研磨液組成物を用いた場合の研磨速度を「100」とした場合の相対値(相対研磨速度)で
示した。
研磨速度比(%)=(保存後の研磨液組成物を用いた場合の研磨速度/保存前の研磨液組成物を用いた場合の研磨速度)×100
【0120】
<研磨速度の評価>
研磨速度は以下の方法で評価した。研磨前後の各シリコンウェーハの重さを精密天秤(Sartorius社製「BP−210S」)を用いて測定し、得られた重量差をシリコンウェーハの密度、面積及び研磨時間で除して、単位時間当たりの片面研磨速度を求めた。
【0121】
【表1】
【0122】
【表2】
【0123】
表1及び表2に示されるように、実施例1〜
11の研磨液組成物を用いる場合は、比較例1〜
8の研磨液組成物を用いる場合に比べて、高温下長期保存後においても、シリコンウェーハの表面粗さ(ヘイズ)及び表面欠陥(LPD)の低減と高研磨速度との両立が良好である。