(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記スリットにより分割された、前記屈曲部の内側部分と外側部分との幅が不等幅であり、内側部分の幅が外側部分の幅より狭いことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の面状発熱体。
【背景技術】
【0002】
従来から、対象物を加熱するために用いられる面状発熱体には、対象物を均一に加熱する能力が必要とされている。例えば、半導体製造装置内でウェーハの加熱に使用される面状発熱体では、ウェーハ上に形成するパターンの微細化を達成するために、ウェーハ面内の温度を均一に加熱できることが非常に重要になっている。その理由は、以下の通りである。すなわち、ウェーハの温度はエッチングレート(エッチング速度)に大きく関係しており、例えば、ウェーハの温度が高いとエッチングが進んで、温度が低い場合と比べてエッチングの深さが深くなる。そのため、ウェーハ面内の温度が均一とならずにばらつくと、ウェーハのエッチングの深さもばらつき、ウェーハをエッチングして作製する製品の品質や生産性が低下する。
【0003】
また、半導体製造プロセス中で加熱や冷却を繰り返して行うような場合には、ウェーハを加熱する面状発熱体の昇温時および降温時の応答性が重要になってくる。すなわち、従来は一種類のエッチング条件でウェーハをエッチングしていたものが、近年は、数種類のエッチング条件に順次に切り替えてウェーハをエッチングするマルチステッププロセスを行うようになってきており、ウェーハの温度を各々のエッチング条件に最適な温度に調整する必要がある。そのため、ウェーハを加熱する面状発熱体の昇温時および降温時の応答性が低いと、ウェーハが所定の温度になるまで待たなければならず、エッチングプロセスのスループットが低下する。
【0004】
ところで、上述した面状発熱体において、パターン状に配置された抵抗発熱体における折り返し部などの屈曲部には、抵抗発熱体に通電すると、屈曲部の内側と外側とで温度分布が生じる。すなわち、抵抗発熱体屈曲部の内側に外側よりも電流が集中するような電流分布となり、屈曲部の内側はより発熱し、屈曲部の外側は発熱しにくくなる。パターン状に配置された抵抗発熱体の線幅が狭い場合には、上述した屈曲部の温度分布は問題になりにくいが、線幅が広い場合には、抵抗発熱体の屈曲部で内側と外側との温度分布が問題となる場合がある。
【0005】
これまで、面状発熱体の面内温度分布の均一化を図る技術として、特許文献1には、ほぼ同心円状に抵抗発熱体を配置した面状発熱体において、温度を均一化するために、抵抗発熱体の折り返し部同士を接近させる構成や、折り返し部を幅広にすることで折り返し部の区間抵抗を下げる構成が開示されている。また、特許文献2には、熱伝導性に優れた均熱層を抵抗発熱体層に重ねて配置することによって、温度の不均一を改善する構成が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の折り返し部を接近させる構成は、パターン化された抵抗発熱体の線幅が広くて線間が狭くなるパターンに適用できず、また、線間が狭いとそれ以上接近させて配置することができない。さらに、折り返し部の区間抵抗を下げるために抵抗発熱体の線幅を広くする構成では、抵抗発熱体の屈曲部の内側の発熱が外側より高くなり、かえって面状発熱体の温度均一性が低下する場合がある。そして、特許文献2の均熱層を設ける構成では、均熱層を加熱するために時間が必要であり、面状発熱体の昇温時および降温時の応答性が悪い。また、柔軟性が低下することから、シリコーンラバーヒーターのような柔軟性面状発熱体としては使いづらいという問題があった。
【0008】
それゆえ本発明は、上述した課題を解決することを目的とし、対象物の加熱時における抵抗発熱体の屈曲部における温度分布が均一で、昇温時および降温時における応答性も良好な面状発熱体および、それを備える半導体製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の面状発熱体は、上記知見に基づき達成されたものであり、抵抗発熱体をパターン状に配置した面状発熱体であって、前記パターン状に配置した抵抗発熱体の屈曲部に、その抵抗発熱体の延在方向に沿って延在する少なくとも1つのスリットを設けたことを特徴とするものである。
【0010】
本発明の好適例としては、前記スリットが、前記屈曲部の内側の抵抗が外側の抵抗より高くなるように前記抵抗発熱体に設けられていることがある。この場合、抵抗発熱体の屈曲部において内側に集中してしまう電流を外側にも配分することができるため、面状発熱体の温度の均一性をより高めることができる。
【0011】
本発明の他の好適例としては、前記スリットの幅が、前記抵抗発熱体同士の間隔である配線間の距離以下であることがある。この場合、電位差が大きい配線間の絶縁をより十分にとることができる。
【0012】
本発明のさらに他の好適例としては、前記スリットにより分割された、前記屈曲部の内側部分と外側部分との幅が不等幅であり、内側部分の幅が外側部分の幅より狭いことがある。この場合、抵抗発熱体の屈曲部の内側部分と外側部分との温度をより均一にすることができる。
【0013】
本発明のさらに他の好適例としては、前記スリットが、複数本のスリットからなることがある。また、この場合、前記複数本のスリットのうち、前記屈曲部の内側に配置されたスリットが外側に配置されたスリットより長いことがより好ましい。いずれの場合も、抵抗発熱体の屈曲部の内側部分と外側部分との温度をより均一にすることができる。
【0014】
本発明のさらに他の好適例としては、前記パターン状の抵抗発熱体が、溶射によって形成されていることがある。この場合、抵抗発熱体のパターンをより好適に形成することができる。
【0015】
また、本発明の半導体装置は、ウェーハまたはガラス基板を加熱するために、上述した面状発熱体を備えることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、本発明の面状発熱体によれば、抵抗発熱体の屈曲部にその抵抗発熱体の延在方向に沿って延在する少なくとも1つのスリットを設けることで、対象物の加熱時における抵抗発熱体の屈曲部における温度分布を均一にでき、また、温度分布の均一化のための均熱層を必要としないか、または均熱層を薄くできるため、昇温時および降温時における応答性を良好に維持することができる。また、本発明の半導体製造装置によれば、上記温度分布が均一な面状発熱体を備えているので、それを用いることで製品の歩留まりを良好にすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
<本発明の実施形態に用いる面状発熱体の基本的構成について>
図1(a),(b)および
図2は、それぞれ、本発明の実施形態に用いる面状発熱体の基本的構成の例としての面状発熱体1、11を説明するための図である。
【0019】
図1(a)は、本発明の実施形態に用いる面状発熱体の基本的構成の一例を説明するための分解斜視図、また
図1(b)は、その面状発熱体の基本的構成を、カバーフィルムを省略した状態で示す平面図であり、
図1(a),(b)に示す例では、まず、SUSなどの金属箔をエッチングして、パターン化した抵抗発熱体2を得る。次に、得られた抵抗発熱体2を、絶縁物からなるベースフィルム3と絶縁物からなるカバーフィルム4との間に挟み込むことで、面状発熱体1を得ている。
【0020】
図2は、本発明の実施形態に用いる面状発熱体の基本的構成の他の一例を説明するための一部切欠き斜視図であり、
図2に示す例では、まず、絶縁物からなる基板12上にタングステンなどを溶射して、パターン化した抵抗発熱体13を得る。パターン化した抵抗発熱体13を得るためには、予めマスキングしてパターン状に溶射しても良いし、基板12の全面に溶射してから機械加工やブラスト加工によってその溶射層をパターン状に除去しても良い。次に、基板12および得られた抵抗発熱体13上に、アルミナなどの絶縁物を溶射して絶縁体溶射皮膜14を設けることで、面状発熱体11を得ている。
【0021】
図1(a),(b)に示す例では、上述した面状発熱体1の、パターン化された抵抗発熱体2の両端部に形成した端子5、6間に通電して電流を流すことで、また、
図2に示す例では、上述した面状発熱体11の、パターン化された抵抗発熱体13の両端に接続したリード線15、16間に通電して電流を流すことで、面状発熱体1、11がそれぞれ発熱する。発熱した面状発熱体1、11により対象物を加熱することができる。
【0022】
<本発明の実施形態の特徴について>
本発明の実施形態の特徴は、上述した抵抗発熱体をパターン状に配置した基本的構成の面状発熱体において、パターン状に配置した抵抗発熱体の屈曲部に、その抵抗発熱体の延在方向に概ね沿って延在する少なくとも1つのスリットを設けた点にある。以下、本実施形態の面状発熱体の特徴となる「抵抗発熱体」、「屈曲部」、「スリット」について順に説明する。
【0023】
(1)抵抗発熱体について
本発明の実施形態の面状発熱体においては、通常、金属箔、導電性材料の印刷、導電性材料のコーティングなどの方法を用いることによって、パターン化された抵抗発熱体を作成している。
【0024】
金属箔でパターン化した抵抗発熱体を作製する場合は、金属箔を、機械加工、レーザー加工、エッチング加工、ブラスト加工などによりパターン化すればよい。一般的に、このようにして形成された金属箔からなる抵抗発熱体は、絶縁性シートや板材などで挟み込まれて使用される。金属箔の材料としては、抵抗発熱体として用いられる公知の材料を利用することができ、ステンレス、ニッケル合金、その他適切な体積抵抗率、温度特性、機械的特性を備えた材料を用いることができる。
【0025】
印刷でパターン化した抵抗発熱体を作製する場合は、絶縁性基板に、パターンに応じた版を用いて導電性材料をスクリーン印刷してもよいし、導電性材料をインクジェットやディスペンサーを用いて描画してパターン化してもよい。印刷で用いる導電性材料としては、従来から公知の導電性ペーストなどを用いることができる。
【0026】
コーティングでパターン化した抵抗発熱体を作製する場合は、絶縁性基板に、導電性材料の溶射、PVD、CVD、めっきなどでパターン化した抵抗発熱体を作製すればよい。パターンは、予めマスキングして導電性材料の溶射などを行うことで形成してもよいし、導電性材料の溶射などにより絶縁性基板の全面に皮膜を形成した後に、皮膜に対して、機械加工、レーザー加工、ブラスト加工などで形成してもよい。溶射などに用いる導電性材料としては、タングステン、ニッケル合金などの金属や、炭化ケイ素などの半導体セラミックスなどの公知の材料を用いることができる。
【0027】
(2)屈曲部について
本発明の実施形態の面状発熱体において、抵抗発熱体の屈曲部とは、抵抗発熱体のパターンのうち、一定の直線状態のパターンが維持されている直線パターンまたは一定の曲率で曲がる状態のパターンが維持されている曲線パターンから、パターンが折れ曲がる部分のことをいう。
【0028】
図3(a)〜(d)は、それぞれ、本発明の実施形態の面状発熱体における抵抗発熱体の屈曲部の一例を説明するための図である。
図3(a)に示す例では、直線パターンからなる抵抗発熱体21−1が180°折り返したパターンにおける屈曲部22−1(点線で囲んだ部分)を示している。
図3(b)に示す例では、曲線パターンからなる抵抗発熱体21−2が180°折り返したパターンにおける屈曲部22−2(点線で囲んだ部分)を示している。
図3(c)に示す例では、直線パターンからなる抵抗発熱体21−3が90°円弧状に屈曲するパターンにおける屈曲部22−3(点線で囲んだ部分)を示している。
図3(d)に示す例では、直線パターンからなる抵抗発熱体21−4が90°直角に屈曲するパターンにおける屈曲部22−4(点線で囲んだ部分)を示している。
【0029】
図3(a)〜(d)に示した例において、屈曲部の内側の部分をAとして示し、屈曲部の外側の部分をBとして示している。なお、上述した例において、屈曲部、屈曲部の内側部分、屈曲部の外側部分として点線で囲った部分は一例を示したものであり、その領域に限定されるものではなく、多少の大きさの大小はここで示す屈曲部、屈曲部の内側部分、屈曲部の外側部分に含まれていることはいうまでもない。
【0030】
(3)スリットについて
本発明の実施形態の面状発熱体におけるスリットは、上述したように面状発熱体にパターン状に配置した抵抗発熱体の屈曲部に、その抵抗発熱体のパターンの延在方向に概ね沿って、少なくとも1つ設けられている。このスリットは、抵抗発熱体をその厚さ方向に貫通する深さのものである。
【0031】
抵抗発熱体の屈曲部にスリットを形成する方法については、予め抵抗発熱体にスリットを形成しておいて、その抵抗発熱体を基板上に設けてもよいし、抵抗発熱体を基板上に設けた後に、抵抗発熱体を部分的に除去してスリットを形成してもよい。また、抵抗発熱体における屈曲部の発熱分布や抵抗分布を確認しながら、スリットを追加したり延長したりしてもよいし、追加コーティングなどでスリットを部分的に埋めてもよい。
【0032】
スリットを1つの屈曲部に1本配置する場合は、屈曲部の内側部分と外側部分とが等幅になるように屈曲部を2分する位置にスリット設けるのではなく、屈曲部の内側部分に寄せた位置にスリットを設けることが好ましい。スリットを屈曲部に複数本配置する場合は、スリットによって分割されたパターンの幅が内側ほど狭くなるよう順次配置することが好ましい。また、屈曲部の内側部分のスリットほど外側部分のスリットより長さが長くなるようスリットを配置することも好ましい。さらに、上述したスリットの形状や配置を組み合わせることも好ましい。
【0033】
スリットの幅は、抵抗発熱体のパターンとパターンとの間隔である線間距離と同じかそれよりも狭いことが好ましい。抵抗発熱体のパターンとパターンとの間の部分は電位差が大きいので、その部分を絶縁するために線間距離を広く取る必要があるが、屈曲部に配置したスリット近傍の電位差はそれよりも小さいためである。スリットの長さ方向の配置は、抵抗発熱体の屈曲部の外縁または内縁に平行でもよいし、そうでなくてもよい。また、1本のスリットにおいて、スリットの幅を等幅で配置してもよいし、そうでなくてもよい。
【0034】
図4(a)〜(f)は、それぞれ、本発明の実施形態の面状発熱体における抵抗発熱体の屈曲部に設けられたスリットの例を説明するための図である。図中、符号Cはパターンの幅方向中心に位置してパターンに添って延在する中心線を示す。
【0035】
図4(a)に示す例では、直線パターンからなる抵抗発熱体31−1が90°直角に屈曲するパターンにおける屈曲部において、1本のスリット32−1(白抜き部分)を、屈曲部の内縁に平行で内側部分寄りに配置している。
図4(b)に示す例では、直線パターンからなる抵抗発熱体31−2が90°直角に屈曲するパターンにおける屈曲部において、2本のスリット32−2−1、32−2−2(白抜き部分)を、屈曲部の内縁に平行に、かつ分割されたパターンの幅が内側ほど狭くなるように配置している。
図4(c)に示す例では、直線パターンからなる抵抗発熱体31−3が90°直角に屈曲するパターンにおける屈曲部において、2本のスリット32−3−1、32−3−2(白抜き部分)を、屈曲部の内縁に平行に、かつ内側部分のスリット32−3−1の長さが外側部分のスリット32−3−2の長さよりも長くなるように配置している。
【0036】
図4(d)に示す例では、直線パターンからなる抵抗発熱体31−4が90°直角に屈曲するパターンにおける屈曲部において、1本のスリット32−4(白抜き部分)を、屈曲部の内縁および外縁に非平行で外部部分側に突出するくさび形状となるように配置している。
図4(e)に示す例では、直線パターンからなる抵抗発熱体31−5が90°直角に屈曲するパターンにおける屈曲部において、1本のスリット32−5(白抜き部分)を、屈曲部の内縁に平行で内側部分寄りに、かつスリットの中央部分の幅を両端部分の幅よりも広くするように配置している。
図4(f)に示す例では、直線パターンからなる抵抗発熱体31−6が90°直角に屈曲するパターンにおける屈曲部において、1本のスリット32−6(白抜き部分)を、スリットの中央部分が円弧状に屈曲して両端部分が屈曲部の内縁に平行になるように、内側部分寄りに配置している。
【0037】
図4(g)は、
図4(a)の屈曲部付近のパターンの等価回路を示している。
図4(a)の屈曲部付近のパターン31−1は、図では上下方向へ延在する入口直線部と、90°直角に屈曲する屈曲部のうちスリット32−1の外側の外側屈曲部およびスリット32−1の内側の内側屈曲部と、図では左右方向へ延在する出口直線部との4つの経路からなり、入口直線部の経路の抵抗をRA、内側屈曲部の経路の抵抗をRB、外側屈曲部の経路の抵抗をRC、出口直線部の経路の抵抗をRDとすると、等価回路は図示のように、互いに並列接続された抵抗RBおよび抵抗RCの前後に抵抗RAと抵抗RDとが直列接続されたものになる。ここで、外側屈曲部の経路は、内側屈曲部の経路と比較して長さが長いが幅が十分に広いので、外側屈曲部の経路の抵抗RCより内側屈曲部の経路の抵抗RBの方が抵抗値が高くなり、内側屈曲部の経路より外側屈曲部の経路の方へより多くの電流が流れて、パターンの屈曲部の外側も十分に発熱するようになる。
【0038】
図5(a)に示す例では、直線パターンからなる抵抗発熱体31−7が90°円弧状に屈曲するパターンにおける屈曲部において、1本のスリット32−7(白抜き部分)を、屈曲部の内縁に平行で内側部分寄りに配置している。
図5(b)に示す例では、直線パターンからなる抵抗発熱体31−8が90°円弧状に屈曲するパターンにおける屈曲部において、1本のスリット32−8(白抜き部分)を、スリットの中央部分が90°直角に屈曲して両端部分が内縁と平行になるよう配置している。
【0039】
図5(c)に示す例では、直線パターンからなる抵抗発熱体31−9が180°折り返すパターンにおける屈曲部において、内側に長いスリット32−9−1(白抜き部分)を、外側に短い2本のスリット32−9−2、32−9−3(白抜き部分)を、それぞれ屈曲部の内縁に平行に配置している。
図5(d)に示す例では、直線パターンからなる抵抗発熱体31−10が180°折り返すパターンにおける屈曲部において、内側に長いスリット32−10−1(白抜き部分)を、外側に短いスリット32−10−2(白抜き部分)を、それぞれ屈曲部の内縁に平行に配置している。
図5(e)に示す例では、直線パターンからなる抵抗発熱体31−11が円弧状に180°折り返すパターンにおける屈曲部において、内側に長いスリット32−11−1(白抜き部分)を、外側に短いスリット32−11−2(白抜き部分)を、それぞれ配置している。
【0040】
図5(f)に示す例では、直線パターンからなる抵抗発熱体31−12がクランク状に屈曲するパターンにおける屈曲部において、1本のスリット32−12(白抜き部分)を、屈曲部の中心線C上に配置している。
図5(g)に示す例では、直線パターンからなる抵抗発熱体31−13がクランク状に屈曲するパターンにおける屈曲部において、2本のスリット32−13−1、32−13−2(白抜き部分)を、それぞれ屈曲部の内縁に平行で内側部分寄りに配置している。
【0041】
図4(a)〜(f)および
図5(a)〜(g)に示す例は、それぞれ、本発明の実施形態の面状発熱体の抵抗発熱体の屈曲部に設ける少なくとも1つのスリットの一例であり、本発明のスリットは上述したように例示したスリットに限定されるものではない。これらのスリットを設けることで、対象物の加熱時における抵抗発熱体の屈曲部における温度分布を均一にでき、また、温度分布の均一化のための均熱層を必要としないか、またはその均熱層を薄くできるので、昇温時および降温時における応答性を良好に維持することができる。
【実施例】
【0042】
以下、抵抗発熱体の屈曲部にスリットを設けた実施例1、スリットを設けなかった比較例1、特許文献1で示された抵抗発熱体パターンを使用した比較例2について、被加熱体(対象物)の温度分布を求めて比較した。
【0043】
<実施例1>
直径100mm、厚さ10mmのアルミニウム合金基材に、所定厚の絶縁溶射皮膜を被覆後、抵抗発熱体としてタングステンを150μmの厚さで溶射してタングステン溶射皮膜を形成した。その後、タングステン溶射皮膜に対し、マスキングしてのブラスト処理を施して、パターンの線幅10mm、線間距離2mmで、
図6(a)に示すように屈曲部のやや内側部分に、タングステン溶射皮膜をその厚さ方向に貫通する0.5mm幅のスリットSが形成されるように、抵抗発熱体のパターンPを形成した。その抵抗発熱体のパターンP上に、絶縁溶射皮膜を溶射により形成した後、形成した絶縁溶射皮膜の厚さが550μmになるように平面研削して、実施例1の面状発熱体を得た。
【0044】
得られた面状発熱体の最上部の絶縁溶射皮膜上に、被加熱体として厚さ1mmのシリコン板を載せ、抵抗発熱体のパターンPの端子T1、T2間に1kWの電力を印加して、シリコン板の温度分布を市販の温度分布測定装置を用いて測定した。温度分布の測定結果を
図6(b)に示す。
【0045】
<比較例1>
実施例1とはスリットSを設けなかった点以外同じ方法で、
図7(a)に示すように、比較例1の面状発熱体を得た。そして、実施例1と同様に、得られた面状発熱体の最上部の絶縁溶射皮膜上に、被加熱体として厚さ1mmのシリコン板を載せ、抵抗発熱体のパターンPの端子T1、T2間に1kWの電力を印加して、シリコン板の温度分布を市販の温度分布測定装置を用いて測定した。温度分布の測定結果を
図7(b)に示す。
【0046】
<比較例2>
特許文献1に準じて、
図8(a)に示すように、抵抗加熱体のパターンを線幅2mm、線間距離10mm、折り返し部の間隔6mmとし、その他の構成を実施例1と同じ構成として、比較例2の面状発熱体を得た。そして、実施例1と同様に、得られた面状発熱体の最上部の絶縁溶射皮膜上に、被加熱体として厚さ1mmのシリコン板を載せ、抵抗発熱体のパターンPの端子T1、T2間に1kWの電力を印加して、シリコン板の温度分布を市販の温度分布測定装置を用いて測定した。温度分布の測定結果を
図8(b)に示す。
【0047】
図6(b)に示す実施例1の温度分布の結果と、
図7(b)に示す比較例1および
図8(b)に示す比較例2の結果とを比較することで、被加熱体の温度分布において、実施例1が最も温度の均一性が高いことがわかる。このことから、本発明の実施形態に従って抵抗発熱体の屈曲部にスリットを設けることで、被加熱体の温度の均一性を良好にできることがわかる。
【0048】
上述した記載から明らかなように、本発明の実施形態の面状発熱体によれば、対象物の加熱時における抵抗発熱体の屈曲部における温度分布を均一にでき、また、温度分布の均一化のための均熱層を必要としないか、またはその均熱層を薄くできるので、昇温時および降温時における応答性を良好に維持することができる。
【0049】
図9は、本発明の面状発熱体を備える本発明の半導体製造装置の一実施形態を示す断面図である。この実施形態の半導体製造装置は、エッチングチャンバー101内の静電チャック102上に、上述した本発明の実施形態の抵抗発熱体103を持つ面状発熱体104を備え、その静電チャック102で面状発熱体104上に吸着したウェーハ105またはガラス基板を、抵抗発熱体103で加熱して所定の温度に維持しつつプラズマ106でエッチングすることにより、ウェーハ105またはガラス基板上に回路パターンを形成して半導体製品を製造するものであり、この実施形態の半導体製造装置によれば、その温度分布が均一な面状発熱体104を用いることで、半導体製品の歩留まりを良好にすることができる。なお、上記実施形態の半導体製造装置では、静電チャック102上に面状発熱体104を備えているが、これらに代えて、面状発熱体104と一体化した静電チャック102すなわち、ヒーター内蔵静電チャックを用いてもよい。