(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記取得された4D−CT画像及び前記特性信号に基づく前記同期放射線治療システムの設定は、前記特性信号によって示される特定呼吸相において前記放射線ビームが放出されるとき、前記患者の病変部のみに放射線を照射することを含む、請求項2に記載のシステム。
前記特性信号は、空気量、肺領域、肺密度、体面積、肺の収縮運動ベクトル、身体に対する肺腔の比率のうちの1つのパラメータ、又はこれらを組み合わせたものから取得される、請求項1乃至7のいずれか一項に記載のシステム。
【背景技術】
【0002】
医療技術の進歩に伴って、放射線治療は病気の治療に広く用いられるようになった。通常、放射線治療の成功は、病理組織の描写の精度に依存する。この治療法の主な問題は、例えば患者の呼吸によって生じる標的の運動が、従来の自由呼吸CT走査にアーチファクトを引き起こす可能性があることである。この問題を解決するため、動いている標的を描写して標的の運動をモデリングするための、四次元(4D)CT技術が開発されている。
【0003】
4D−CTは、各カウチにおいてCTデータをオーバーサンプリングし、走査画像を呼吸相に対応する複数のCTボリュームに分類することによって、実施される。現在、2種類の4D−CTが研究されており、1つは外部装置に基づく4D−CT(A4D−CT)であり、他方はデバイスレス4D−CT(D4D−CT)である。A4D−CTは、分類のためにCTスキャナの外部にある外部機器によって記録された外部信号を使用するが、D4D−CTは分類に関して患者の内部構造を基本とし、その呼吸信号がCT画像の特性から抽出される。
【0004】
先行技術において、4D−CT走査及び分類に関する多くの文献があり、例えば非特許文献1は、4つの内部構造特性に基づくD4D−CT分類を示している。4D−CTに関するその他の紹介は、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3に見られる。これら先行技術の内容は、引用により本願に組み込まれる。
【0005】
これらに加えて、本発明の発明者と同じ発明者による別の係属中の中国特許出願(「D4D−CT撮像の方法、装置、及びシステム(“METHOD, APPARATUS
AND SYSTEM FOR D4D−CT IMAGING”)」という発明の名称
の、特許文献4)は、肺の収縮運動ベクトル、身体に対する肺腔の比率が、呼吸曲線の生成及び対応するCT画像(即ちCTスライス)の分類にも使用できることを、開示している。この出願の全内容は、引用により本願に組み込まれる。
【0006】
放射線治療において必要なのは、所定線量の放射線が病変部(例えば癌)に正確に照射されるべきであること、及び病変部の周囲の正常組織に照射された放射線量が最小化されることである。本研究は、上記要求をある程度満たしたが、患者の呼吸が病変部の運動を引き起こす可能性があるので、放射線精度及び放射線量の面でしばしば誤差が発生する。
【0007】
通常、同期放射線治療の使用により、放射線治療における放射線精度及び放射線量の問題を回避できる。同期放射線治療において、患者が呼吸の特定の相にあるとき、病変部は放射線ビームが照射される治療領域内にあり、放射線ビームはこの特定の相においてのみ放射される。患者が他の相で呼吸するとき、病変部は動いているので、放射線ビームは病変部に正確に照射されることができず、そのため放射線ビームを照射する必要はない。
【0008】
呼吸同期放射線治療は通常、2つのモードを含む。第1のモードでは、病変部の運動を検出するために、内部代理器官が使用され、病変部の運動を示すためのタグの位置情報を提供するために、例えばX線撮像システム等のリアルタイム撮像システムが使用される。第2のモードでは、外部代用物が使用され、例えば患者の身体に固定された歪み計、エアバッグリアルタイム位置管理(RPM)モジュール等、様々な外部代用物が使用可能である。
【0009】
先行技術において、同期放射線治療に関する多数の文献もあり、例えば特許文献5を参照されたい。先行技術の内容は、引用により本願に組み込まれる。
【0010】
外部同期システムを使用する利点は、これが非侵入型であるという点である。しかしながら、外部同期システムは外部代用物によって提供される外部信号を使用する必要があり、外部信号はA4D−CT走査でしか提供されないので、先行技術は、A4D−CT走査の結果が同期放射線治療に使用される用途のみを包含する。更に、同期放射線治療に必要とされるA4D−CT走査における外部装置の必要性のため、高コスト、使いにくさ等の問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
先行技術の同期放射線治療には、その他の局面における欠点も存在する。従って、同期放射線治療のコストを削減するために、及び/又は同期放射線治療の効率を向上するために、例えば同期放射線治療がA4D−CT走査結果のみならずD4D−CT走査結果も利用できるようにする等、先行技術における1つ以上の態様を改善することが可能な、改良された解決手段の需要が存在する。
【0013】
本発明は、先行技術に存在する1つ以上の問題を解決すること、特に、同期放射線治療のコストを削減するように、及び/又は同期放射線治療の効率を高めるように、同期放射線治療がA4D−CT及びD4D−CT走査結果の療法を使用できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の態様により、同期放射線治療システムの方法を提供する。本方法は、CT画像を取得するために4D−CT走査を実行するステップと、特性信号を抽出するためにCT画像を処理するステップであって、特性信号は患者の呼吸周期内の呼吸相に関連付けられ、特性信号は同期放射線治療の外部信号との相関関係を有するステップと、特性信号と外部信号との間の相関関係に基づいて、同期放射線治療のための放射線ビームを制御するステップと、を含む。
【0015】
一実施形態によれば、特性信号と外部信号との間の相関関係に基づいて放射線ビームを制御するステップは、4D−CT画像を取得するためにCT画像を分類するステップと、4D−CT画像及び特性信号に基づいて同期放射線治療システムを設定するステップと、現在の呼吸相を判定するために同期放射線治療の現在の外部信号を測定するステップと、現在の呼吸相、及び特性信号と外部信号との間の相関関係に基づいて、放射線ビームを制御するステップと、を含む。
【0016】
一実施形態によれば、4D−CT画像及び特性信号に基づいて同期放射線治療システムを設定するステップは、特定の相における病変部の正確な位置は4D−CT画像を通じて判定可能なので、4D−CT画像に応じた特性信号によって示される特定呼吸相において放射線ビームが放出されるとき、患者の身体内の病変部のみに放射線を照射するステップを含む。
【0017】
一実施形態によれば、現在の呼吸相に基づいて放射線ビームを制御するステップは、現在の呼吸相が特定呼吸相と同一であるか又は隣接しているとき、現在の呼吸相の放射線ビームを放出するステップを含む。
【0018】
一実施形態によれば、同期放射線治療の外部信号は、リアルタイム位置管理(RPM)モジュールによって提供されるリアルタイム位置管理(RPM)信号である。
【0019】
一実施形態によれば、特性信号は、患者の体表面運動を示す。
【0020】
一実施形態によれば、体表面運動は、4D−CT走査の特定カウチの選択領域における体表面高さの変化を含む。
【0021】
一実施形態によれば、体表面高さは、選択領域における患者の体表面高さの、最大高さ値、平均高さ値等を含む。
【0022】
一実施形態によれば、4D−CT走査が実行されると、患者の身体にタグが固定され、取得された4D−CT画像に従って、タグ及び病変部の相対位置が判定され、判定された相対位置に従って、病変部の上方の体表面に病変タグが固定され、放射線治療が実行されると、PRMモジュールが病変タグに配置される。
【0023】
一実施形態によれば、同期放射線治療の特性信号と外部信号との間の相関関係は、特性信号と外部信号との適合を含む。
【0024】
一実施形態によれば、特性信号は、D4D−CT画像を取得するためにCT画像を分類するべく使用される。
【0025】
一実施形態によれば、特性信号は、次のパラメータ、即ち空気量、肺領域、肺密度、体面積、肺の収縮運動ベクトル、身体に対する肺腔の比率のうちの1つ又はこれらを組み合わせたものから取得される。
【0026】
本発明の第2の態様により、同期放射線治療のシステムを提供する。本システムは、CT画像を取得するために4D−CT走査を実行するための4D−CTスキャナと、特性信号を抽出するためにCT画像を処理するための特性信号抽出部品であって、特性信号は患者の呼吸周期内の呼吸相に関連付けられ、特性信号は同期放射線治療の外部信号との相関関係を有する、特性信号抽出部品と、特性信号と外部信号との間の相関関係に基づいて、同期放射線治療のための放射線ビームを制御するための放射線制御部品とを備える。
【0027】
本発明の第3の態様により、放射線治療システムのための方法を提供する。本方法は、画像を取得するために4D医療走査を実行するステップと、特性信号を抽出するために画像を処理するステップであって、特性信号は患者の呼吸周期内の呼吸相に関連付けられ、特性信号は放射線治療の外部信号との相関関係を有する、ステップと、特性信号と外部信号との間の相関関係に基づいて、放射線治療のための放射線ビームを制御するステップと、を含む。
【0028】
本発明の改良された解決手段は、先行技術に存在する1つ以上の問題を解決できる。本発明を用いると、同期放射線治療に、A4D−CT走査結果のみならずD4D−CT走査結果も使用することができ、これにより同期放射線治療のコストが削減され、及び/又は同期放射線治療の効率が向上する。
【0029】
添付図面に関連する本発明の特定の実施態様に関する記述を通じて、本発明の利点、特性、及び特徴をより良く理解可能できる。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明の実施形態を示す図面を参照して、本発明を以下により詳細に記載する。しかしながら、本発明をその他の異なる方式でも実施可能であり、これら特定の実施形態に限定されるものではないことは、理解されたい。寧ろ、これらの実施形態の提示は、本発明の概念が当業者によって完全に理解可能なように、本発明の開示をより詳細で完璧にするように意図されている。本明細書全体を通して、同一又は類似の参照符号は、同じ手段又はユニットを表す。
【0032】
胸部及び腹部のCT走査に対する呼吸運動アーチファクトの影響を排除又は低減するため、並びに胸部及び腹部における腫瘍の経時的な運動を反映して正確な診断及び治療の目的を達成するために、動的四次元CT画像が形成可能なように、CT走査画像の三次元再構築の間に時間因子が考慮される、四次元CTの概念が提示される。
【0033】
例えば外部装置に基づいてA4D−CTを撮るために、CT装置において胸部及び腹部のA4D−CTを実行するプロセスは、次の通りである。即ち、画像が収集されるとき、患者の呼吸を検出するためにCT装置が接続された呼吸監視システムが使用され、CT画像及び呼吸信号が同時に収集される。収集されたCT画像には、呼吸周期(即ち、相)における時間情報が記述され、その後それぞれの相に基づいて、全てのCT画像がそれぞれグループに分けられて三次元CT画像が再構築される。ここで、相の三次元画像は、経時的な三次元画像シーケンス、即ち4D−CTを形成する。4D−CTシステムは、患者の呼吸量を測定するための肺活量計、患者が呼吸するときの患者の体表面の高度差を測定するための赤外線撮影機器、又は患者の呼吸によって生じる圧力差を測定するための圧力センサを、主に使用する。これらの測定信号は、呼吸信号に変換可能である。通常、CT画像は、CT画像が各カウチで特定期間にわたって連続的に収集される、CINEモードを用いて収集される。1つのカウチでCINEが実行された後、次のカウチでまたCINE走査が実行される。CINE走査は、走査される必要のある全範囲で行われるまで、繰り返される。
【0034】
上記のA4D−CT再構築方法は、画像収集プロセスにおいて、呼吸検出器がCT装置と通信すること、及び呼吸信号がCT画像収集と同期していることを、必要とする。しかしながら、患者の体表面を監視することによって取得される信号は体内の内部器官の運動と同期しておらず、呼吸運動は異なる呼吸周期の間に正確に繰り返されるものではないので、通常は、分類から再構築されたCT画像は正確ではなく、例えばZ軸方向のずれが頻繁に発生する。
【0035】
D4D−CT走査は、A4D−CT走査の欠点を或る程度は回避できる。
【0036】
図1は、4D−CT分類及び再構築プロセスを簡単に示す。
図1において、CINE走査に合計N個のカウチがあり、各カウチにおいて、患者の呼吸の呼吸相でM回のサンプリングが実行される。N個の異なるカウチの同じ相のサンプルで、新規シーケンスが形成可能である。1周期でP個の相が考えられる場合には、P個の新規シーケンスが形成可能であり、ここで各新規シーケンスは、呼吸相における走査対象の3D−CT画像に対応する。通常、サンプリングの合計時間は走査対象の呼吸周期よりも長いので、一般的にM≧Pの関係が存在する。しかしながら特殊な条件下では、M<Pもあり得る。
【0037】
4D−CT(A4D−CT又はD4D−CT)走査の後、形成されたCINE画像が選択され、複数の相グループに分割される。複数の相グループはそれぞれ、走査対象の複数の呼吸相に対応する。複数の呼吸相の各々は、それぞれ1つの呼吸相における走査対象の1つの3D−CT画像に対応する。新規シーケンス又は相グループを形成するプロセスは、「分類(sorting)」と称される。
【0038】
呼吸周期の呼吸信号、分類等はD4D−CT撮像において周知であり、従ってこれ以上記載されない。
【0039】
図2は、本発明の一実施形態による同期放射線治療システムのための方法を示す。本方法は、先ず、CT画像(即ちCTスライス)を取得するために4D−CT走査を実行するステップと、次に特性信号を抽出するためにCT画像を処理するステップと、最後に特性信号と外部信号との間の相関関係に基づいて同期放射線治療のための放射線ビームを制御するステップとを含む。
【0040】
特性信号は、患者の呼吸周期内の呼吸相と関連付けられている。呼吸信号と同様に、特性信号は、呼吸周期の呼吸相における選択された特性の特性値を示す。したがって、選択された特性の現在の特性値の測定を通じて、呼吸周期のどの相において患者が特性信号の曲線に従っているか判定可能である。加えて、特性信号は同期放射線治療の外部信号との相関関係を有し、ここで外部信号は同期相を制御するために、即ち外部信号の相に従って放射線ビームを放出すべきか否かを制御するために、同期放射線治療において使用可能である。
【0041】
相関関係は、次のものを含むがこれらに限定されるものではない。特性信号は、同期放射線治療に使用される外部信号と関連付けられており、例えばこれらは完全に同一又はほぼ同一であり、或いは特性信号と外部信号の呼吸信号は同一又はほぼ同一であり(例えば、振幅は同一ではないが、波形形状が同一又はほぼ同一)、或いは特性信号の相が外部信号の相に基づいて判定可能(又はその逆)等である。特性信号は、CT画像が分類される前、又はCT画像が分類された後に抽出可能であることは理解されたい。
【0042】
加えて、同期治療の間、異なる外部信号タイプを使用できるので、特性信号を生成するために、外部信号に基づいて最も適切な内部画像特性を選択できる。例えば、外部信号が身体の周りの呼吸高速ストリップによって提供されるとき、体面積特性を用いて取得された特性信号を、外部信号と良好に関連付けることが可能である(同一であってもよい)。
【0043】
しかしながら、特性信号が最も適切な内部特区超に基づいて生成されなかったとしても、同期放射線治療の外部信号との相関関係を有している限り、依然として同期放射線治療に使用可能であることは、理解されよう。
【0044】
図3は、非同期放射線治療と、本発明の一実施形態による同期放射線治療との比較を示す。
図3の左側は非同期放射線治療を示し、この放射線治療は病変部の全運動量域で検出されている。図示のように、非同期放射線治療では、病変部の周辺の広い領域の正常組織が放射線に曝露されている。反対に、
図3の右側に示すように、同期放射線治療では、放射線は病変部に正確に照射可能であり、病変部の周辺で放射線に曝露される正常組織は最小限に抑えられている。
【0045】
本発明の一実施形態によれば、特性信号と外部信号との間の相関関係に基づいて放射線ビームを制御するステップは、4D−CT画像を取得するためにCT画像を分類するステップと、取得された4D−CT画像に基づいて同期放射線治療システムを設定するステップと、現在の呼吸相を判定するために同期放射線治療の現在の外部信号を測定するステップと、現在の呼吸相と外部信号から成る特性信号との間の相関関係に基づいて放射線ビームを制御するステップとを含む。一実施形態によれば、取得された4D−CT画像に基づいて同期放射線治療システムを設定するステップは、取得された4D−CT画像及び特性信号に基づいて同期放射線治療システムを設定するステップを含む。CT画像を分類するための呼吸信号は、特性信号であっても、特性信号とは異なる信号であってもよい。
【0046】
特性信号と外部信号との間の相関関係に基づいて放射線ビームを制御するステップはまた、上記と同一ではない方式を用いても実施可能であることは、理解されよう。先行技術に対する本発明の貢献は多くの局面で反映されるが、1つの局面は、同期放射線治療がD4D−CTの走査結果を使用できるようにすることである。これは、外部装置からのみ取得可能な外部信号を置き換えるためにCT画像から抽出された内部特性信号を使用することによって、可能となる。したがって、本願は放射線ビームを制御する発明的なモードを開示するものの、先行技術における同期放射線治療のその他の局面もまた、本発明に適しており、それらは、4D−CT走査の間のみ外部信号を本発明の特性信号と置き換え、その一方で既存の同期放射線治療の残りの局面を変更しないでおくことを含むが、これらに限定されるものではない。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、4D−CT画像及び特性信号に基づいて同期放射線治療システムを設定するステップは、特定の相における病変部の正確な位置は4D−CT画像を通じて判定可能なので、特性信号によって示される特定呼吸相又はその隣接相において放射線ビームが放出されるとき、患者の身体内の病変部のみに放射線を照射するステップを含む。放射線ビームの制御において、現在の呼吸相が特定呼吸相と同一又は隣接しているか否かを、特定信号と外部信号との間の相関関係に従って判定する必要がある。患者が呼吸周期の特定呼吸相にあるとき、身体の病変部は特定位置にある。この特定位置は治療領域(即ち、放射線が到達する領域)内にある。特定位置に対応する特定呼吸相(又は隣接呼吸相)においてのみ、放射線ビームが放出可能であり、放射線ビームはその他の呼吸相では放出されない。放射線が到達する領域は可能な限り病変部のサイズと同一に設定可能なので、病変部の周辺で放射線に曝される正常組織の面積を最小化できる。同期放射線治療において、4D−CT画像及び特性信号(呼吸信号)に従って同期放射線治療システムを設定する方法は周知なので、本明細書には詳細を記載しない。
【0048】
特定呼吸相に隣接している現在の呼吸相が、現在の呼吸相と特定呼吸相との差がN相以内であることを意味し、ここでNは1、2、3、4、5、6等、実際の用途における要件に応じて選択される適切な整数であることは、特筆する必要がある。本発明の一実施形態によれば、治療段階において、現在の外部信号が測定され、外部信号によって示される現在の呼吸相が判定された後に、特性信号と外部信号との間の相関関係に従って、特性信号によって示される病変部が治療領域内にあるとき、現在の呼吸相が特定呼吸相と同一である(又は隣接している)と判定された場合には、現在の相において放射線ビームの放出が可能になる。このような放射線ビームによって、治療領域内の病変部に正確な照射が可能である。
【0049】
同期放射線治療段階において、リアルタイム位置管理(RPM)モジュールによって提供されるリアルタイム位置管理(RPM)信号、肺活量計によって提供される呼吸量信号、赤外線撮影機器によって提供される、患者が呼吸する際の患者の体表面の高低差の信号、又は圧力センサによって提供される、患者の呼吸によって生じる圧力差の信号等を含むがこれらに限定されない、異なる外部装置によって提供された外部信号を使用することが可能である。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、同期放射線治療段階において使用される外部信号はRPMモジュールによって提供されるRPM信号であり、RPM信号は同期相を制御するために使用される。相応に、特性信号(又は呼吸信号)は、4D−CT走査のCT画像から抽出される、空気量、肺領域、肺密度、体面積、肺の収縮ベクトル、身体に対する肺の割合等を含むがこれらに限定されないパラメータのうちの1つに基づくものでよい。
【0051】
或いは、抽出された特性信号を、治療段階で使用されるRPM信号に良好に関連付けるために、特性信号は、先に言及された2つ以上のパラメータに基づいてもよい。更に、特性信号が取得された後、特性信号は同期治療段階で使用可能である。空気量、肺領域、肺密度、体面積、肺の収縮運動ベクトル、身体に対する肺腔の比率等に基づいて呼吸信号(又は特性信号)を抽出する方法は、当該技術分野において公知であり、本明細書では詳述しない。
【0052】
パラメータが上述のパラメータに限定されないことは、理解されよう。実際、特性信号がRPM信号に関連付けられている限り、その他のパラメータ又はこれらを組み合わせたものも、本発明において使用可能である。
【0053】
しかしながら、上記パラメータを通じて取得された特性信号は、RPM信号が外部信号として使用されるとき同期放射線治療に使用可能であるものの、特性信号はRPM信号と比較して位相ずれしやすいので、放射線ビームを放出する相を正確に判定することは不可能である。
【0054】
したがって、本発明の一実施形態によれば、患者の体表面運動に基づく特性信号を提供する。具体的には、4D−CT走査の間の特定カウチの選択領域内の身体の高さ(例えば、病変部が位置しているカウチ)を使用する。このようにして取得された特性信号は、RPM信号と良好に一致する(又は同一である)。加えて、体表面の高さを使用することによって取得された特性信号は、RPM信号と良好に一致するので、D4D−CT走査(又はA4D−CT走査)と同期放射線治療との間を発明的に橋渡しすることが可能である。D4D−CT走査の後の分類プロセスで使用される呼吸信号が同期放射線治療の外部信号と比較してかなり大きい位相ずれを有していたとしても、放射線ビームを放出する相を正確に判定することは依然として可能である。
【0055】
図4は、本発明の一実施形態による、体表面運動を使用することによって特性信号を取得する方法を示す。CTシステムのX−Z平面と平行なスライスが示されている。スライスの明色の最前部と暗色の背景との境界は、患者の体表面プロファイルを示している。本方法において、最初に矩形領域(例えば、特定カウチの複数のCTスライスに基づいて計算されたもの)が特定カウチに対して判定され、次に矩形領域中の体表面高さが、特定カウチの各CTスライスについて計算される。こうして特性信号(又は呼吸信号)が取得可能であり、これは呼吸相と体表面高さとの間の対応関係を示す。矩形領域は、体表面の上下運動を捕捉するために、RPMモジュールの運動と類似の同じ領域が必ず使用されることを、保証できる。矩形領域中の体表面高さは、領域内の患者の体表面高さの最大値及び平均値を含むがこれらに限定されないことは、理解されよう。
【0056】
本発明の一実施形態によれば、X軸に沿った選択された矩形領域の中心線はX軸内の患者の身体の中心線と一致し、Y軸に沿った矩形領域の中心線はY軸内の身体の最も高い位置を通る。全てのCTスライスについて、矩形領域の形状、サイズ、及び位置は一定であってもよい。これにより、RPM運動規則と一致した特性信号を抽出できるように、体表面の上下運動を捕捉するにあたり必ず同じ領域を使用できる。
【0057】
図4は特定の矩形領域を模式的に示すものの、本発明はこれに限定されるものではない。実際には、特定信号がRPM信号に関連付けられている(例えば同一であるか又はほぼ同一である)限り、選択された矩形領域のサイズ、形状、及び位置は変更可能である。別の形状(菱形、円形等)の領域であっても、使用可能である。
【0058】
図5は、本発明の一実施形態による、患者の身体上にRPMモジュールを設置する方法を示す。本方法は、走査室で4D−CT走査を実行するとき患者の身体にタグ501を固定するステップと、4D−CT画像が取得された後に体内の病変部に対するタグ501の位置を判定するステップと、判定された相対位置に従って、病変位置の上方の体表面上に病変タグを固定するステップと、最後に、処置室で放射線治療が実行されると病変部にRPMモジュール502を設置するステップとを含む。
図5において、RPMモジュール502の下の小さいオブジェクトは病変タグである。患者の身体に固定されたタグ501の位置は、予測された病変部503の情報の位置であってもよいが、予測位置は実際の位置からずれる可能性がある。上記の方法によって、RPMモジュールを、処置中に病変部の身体の上方に実際に配置できる。
【0059】
本発明の一実施形態によれば、RPMモジュールが病変部の上方に配置されないとき(又はこれらが同じカウチ内にないとき)、特性信号は依然としてRPM信号と良好に一致する。
【0060】
図6は、RPMモジュールが設置可能な、使用可能領域を示す。RPMモジュール602は、病変部603の真上に設置されている。
図6の点線領域は、RPMモジュールが設置可能な使用可能領域を示す。一実施形態において、使用可能領域は、少なくとも9カウチ分だけ病変部からずれる可能性がある。
【0061】
図7は、RPMモジュール702が病変部703の真上に位置しているときの、特性信号とRPM信号との適合条件を示す。RPMモジュールが病変部の真上に位置しているとき、特性信号はRPM信号と良好に一致することがわかる。
【0062】
図8は、RPMモジュール802が使用領域内に位置しているが病変部の真上にないときの、特性信号とRPM信号との適合条件を示す。RPMモジュールが使用領域内に位置しているが病変部の真上にないとき、特性信号は依然としてRPM信号と良好に一致することがわかる。
【0063】
本発明の一実施形態によれば、治療段階において外部特性信号の代替として使用される他に、特性信号(例えば体表面運動、空気量、肺領域、肺密度、体面積、又はこれらを組み合わせたものに基づいて抽出された呼吸信号)はまた、4D−CT走査段階においてD4D−CT画像を分類するプロセスでも使用可能である。
【0064】
図9は、本発明の一実施形態による同期放射線治療用システムを示し、本システムは、CT画像を取得するために4D−CT走査を実行するための4D−CTスキャナと、特性信号を抽出するためにCT画像を処理するための特性信号抽出部品であって、特性信号は患者の呼吸周期の呼吸相に関連付けられ、特性信号は放射線治療の外部信号との相関関係を有する特性信号抽出部品と、特性信号と外部信号との間の相関関係に基づいて、放射線治療のための放射線ビームを制御するための放射線制御部品とを備える。
【0065】
一実施形態によるシステムにおいて、放射線制御部品は、4D−CT画像を取得するためにCT画像を分類し、取得された4D−CT画像及び特性信号に基づいて同期放射線治療システムを設定し、現在の呼吸相を判定するために同期放射線治療の外部信号を測定し、現在の呼吸相及び特性信号と外部信号との間の相関関係に基づいて放射線ビームを制御するように、構成されている。
【0066】
一実施形態によるシステムにおいて、4D−CT画像及び特性信号に基づいて同期放射線治療用システムを設定するステップは、特性信号によって示される特定呼吸相又はその隣接相において放射線ビームが放出されるとき、4D−CT画像に従って患者の病変部のみに放射線を照射するステップを含む。
【0067】
一実施形態によるシステムにおいて、現在の呼吸相に基づいて放射線ビームを制御するステップは、現在の呼吸相が特定呼吸相と同一であるか又は隣接しているとき、現在の呼吸相において放射線ビームを放出するステップを含む。一実施形態によるシステムにおいて、同期放射線治療の外部信号は、リアルタイム位置管理(RPM)モジュールによって提供されるリアルタイム位置管理(RPM)信号である。
【0068】
一実施形態によるシステムにおいて、特性信号は患者の体表面運動を示す。
【0069】
一実施形態によるシステムにおいて、体表面運動は、4D−CT走査中の特定カウチの選択領域内の体表面高さの変化を含む。
【0070】
一実施形態によるシステムにおいて、体表面高さは、選択領域内の最大値、平均値によって示される。
【0071】
一実施形態によるシステムにおいて、4D−CT走査が実行されると患者の身体にタグが固定され、4D−CT画像が取得された後、タグと病変部との相対位置が判定される。判定された相対位置に従って、病変タグは病変部の上方の体表面に固定される。放射線治療が実行されると、RPMモジュールは病変タグに配置される。
【0072】
一実施形態によるシステムにおいて、同期放射線治療の特性信号と外部信号との間の相関関係は、特性信号と外部信号との適合を含む。
【0073】
一実施形態によれば、特性信号は、D4D−CT画像を取得するためにCT画像を分類するために使用される。
【0074】
一実施形態によるシステムにおいて、一実施形態によるシステムにおいて、特性信号は、空気量、肺領域、肺密度、体面積、肺の収縮運動ベクトル、身体に対する肺腔の比率等のパラメータのうちの1つ又はそれらの組み合わせから取得される。
【0075】
CTの他に、本発明の放射線治療システムのための方法は、MRIシステム、線形加速器(LINAC)システム等を含むがこれらに限定されない、その他のタイプの放射線治療システムにも使用可能であることを、当業者であれば理解できよう。本願は、画像を取得するために4D医療走査を実行するステップと、特性信号を抽出するために画像を処理するステップであって、特性信号は患者の呼吸周期内の呼吸相に関連付けられ、特性信号は放射線治療の外部信号との相関関係を有するステップと、最後に、特性信号と外部信号との間の相関関係に基づいて、放射線治療のための放射線ビームを制御するステップとを含む、放射線治療システムのための一般的な方法も開示する。
【0076】
一実施形態による放射線治療システムのための方法において、特性信号と外部信号との間の相関関係に基づいて放射線ビームを制御するステップは、4D−CT画像を取得するためにCT画像を分類するステップと、4D−CT画像及び特性信号に基づいて放射線治療システムを設定するステップと、現在の呼吸相を判定するために放射線治療の現在の外部信号を測定するステップと、現在の呼吸相、及び特性信号と外部信号との間の相関関係に基づいて、放射線ビームを制御するステップとを含む。
【0077】
一実施形態における放射線治療システムのための方法によれば、放射線治療システムを設定するステップは、特性信号によって示される特定呼吸相又はその隣接相において放射線ビームが放出されるとき、患者の病変部のみに放射線を照射するステップを含む。
【0078】
一実施形態における放射線治療システムのための方法によれば、現在の呼吸相に基づいて放射線ビームを制御するステップは、現在の呼吸相が特定呼吸相と同一であるか又は隣接しているとき、現在の呼吸相において放射線ビームを放出するステップを含む。
【0079】
一実施形態における放射線治療システムのための方法によれば、同期放射線治療の外部信号は、リアルタイム位置管理(RPM)モジュールによって提供されるリアルタイム位置管理(RPM)信号である。
【0080】
一実施形態における放射線治療システムのための方法によれば、特性信号は、医療走査中の特定カウチの選択領域内の患者の体表面高さの変化を示す。
【0081】
一実施形態における放射線治療システムのための方法によれば、4D医療走査が実行されると患者の身体にタグが固定され、4D画像が取得された後にタグ及び病変部の相対位置が判定され、放射線治療が実行されると、RPMモジュールが病変タグに配置される。
【0082】
本発明における放射線治療システムのための方法を用いることによって、放射線治療のコストを削減し、放射線治療の効率を向上させることができる。
【0083】
本発明は、ハードウェア、ファームウェア、コンピュータプログラム、論理手段等を含むがこれらに限定されない、当該技術分野において公知の様々な方法によって実施可能であることは、当業者には理解できよう。
【0084】
上記の説明及び対応する図面を通じて、本発明の好適な実施形態を詳細に示した。加えて、文中で幾つかの専門用語を使用するものの、これらは例示目的に過ぎない。様々な変形例、同等の代替例、変更等が本発明に対してなされてもよいことを、当業者は理解できよう。例えば、上記実施形態の1つのステップ又はモジュールを、2つ以上のステップ又はモジュールに分割して実施してもよいが、反対に、上記実施形態の2つ以上のステップ又はモジュール又は手段の機能を1つのステップ又はモジュールに纏めて実施してもよい。これらの変更が本発明の精神から逸脱しない限り、これらは本願において特許請求される保護範囲に含まれるものとする。本発明の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義される。