(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
動く部位を含む撮影部位を横切るスライスを励起し、励起されたスライスから、生体信号を生成するための第1の磁気共鳴信号と、前記スライスの画像を作成するための第2の磁気共鳴信号とを発生させるための本スキャンを実行し、前記第1の磁気共鳴信号に基づいて、前記本スキャンにおける前記撮影部位の動きを表す動き情報を含む生体信号を生成する磁気共鳴装置であって、
前記本スキャンの前に、前記スライスから第3の磁気共鳴信号を発生させるためのプレスキャンを実行するスキャン部と、
前記プレスキャンおよび前記本スキャンにより発生する磁気共鳴信号を受信する複数のチャネルを有するコイルと、
前記プレスキャンにおいて前記コイルのチャネルごとに収集された前記第3の磁気共鳴信号に基づいて、前記チャネルごとに、前記撮影部位の所定方向に関する各位置の信号値を表すプロファイルを作成するプロファイル作成手段と、
前記プロファイルに基づいて、前記複数のチャネルの中から、前記動く部位の端部の近くに配置される第1のチャネルを選択するチャネル選択手段と、
を有し、
前記本スキャンでは、前記チャネル選択手段により選択された前記第1のチャネルが受信した前記第1の磁気共鳴信号に基づいて、前記生体信号が生成される、磁気共鳴装置。
前記チャネル選択手段は、前記プロファイルの特性を表す特性値を算出し、前記特性値に基づいて、前記第1のチャネルを選択する、請求項1〜4のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴装置。
前記生体信号に基づいて、前記第2の磁気共鳴信号を画像再構成の信号として受け入れるか否かを判断する判断手段を有する、請求項1〜11のうちのいずれか一項に記載の磁気共鳴装置。
動く部位を含む撮影部位を横切るスライスを励起し、励起されたスライスから、生体信号を生成するための第1の磁気共鳴信号と、前記スライスの画像を作成するための第2の磁気共鳴信号とを発生させるための本スキャンを実行し、前記第1の磁気共鳴信号に基づいて、前記本スキャンにおける前記撮影部位の動きを表す動き情報を含む生体信号を生成する磁気共鳴装置であって、前記本スキャンの前に、前記スライスから第3の磁気共鳴信号を発生させるためのプレスキャンを実行するスキャン部と、前記プレスキャンおよび前記本スキャンにより発生する磁気共鳴信号を受信する複数のチャネルを有するコイルとを備えた磁気共鳴装置に適用されるプログラムであって、
前記プレスキャンにおいて前記コイルのチャネルごとに収集された前記第3の磁気共鳴信号に基づいて、前記チャネルごとに、前記撮影部位の所定方向に関する各位置の信号値を表すプロファイルを作成するプロファイル作成処理と、
前記プロファイルに基づいて、前記複数のチャネルの中から、前記動く部位の端部の近くに配置される第1のチャネルを選択するチャネル選択処理と、
をコンピュータに実行させるためのプログラムであり、
前記本スキャンでは、前記チャネル選択処理により選択された前記第1のチャネルが受信した前記第1の磁気共鳴信号に基づいて、前記生体信号が生成される、プログラム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明を実施するための形態について説明するが、本発明は、以下の形態に限定されることはない。
【0012】
(1)第1の形態
図1は、本発明の第1の形態の磁気共鳴装置の概略図である。
磁気共鳴装置(以下、「MR装置」と呼ぶ。MR:Magnetic Resonance)100は、マグネット2、テーブル3、受信RFコイル(以下、単に「コイル」と呼ぶ)4などを有している。
【0013】
マグネット2は、被検体12が収容されるボア21を有している。またマグネット2には、超伝導コイル、勾配コイル、RFコイルなど(図示せず)が内蔵されている。超伝導コイルは静磁場を印加し、勾配コイルは勾配磁場を印加し、RFコイルはRFパルスを印加する。
【0014】
テーブル3は、クレードル3aを有している。クレードル3aは、ボア21内に移動できるように構成されている。クレードル3aによって、被検体12はボア21に搬送される。
コイル4は、被検体12の胴部に取り付けられている。
【0015】
図2は、コイル4の説明図である。
コイル4は、コイル部4aとコイル部4bとを有している。コイル部4aは、被検体12の前側(腹部側)に配置されるコイルであり、4つのチャネルCH1、CH2、CH3、およびCH4を有している。4つのチャネルCH1〜CH4は2行2列に並んでいる。
【0016】
コイル部4bは、被検体12の後側(背中側)に配置されるコイルであり、4つのチャネルCH5、CH6、CH7、およびCH8を有している。4つのチャネルCH5〜CH8は2行2列に並んでいる。
第1の形態では、撮影対象の臓器は肝臓であるので、コイル部4aおよび4bは肝臓の近くに装着される。
【0017】
図3は、コイル部4aのチャネルCH1〜CH4と撮影部位との位置関係を概略的に示す図である。
図3(a)はzx面内におけるチャネルの位置を示しており、
図3(b)は
図3(a)のd−d断面におけるチャネルの位置を示している。
【0018】
チャネルCH1およびCH2はx方向に並んでおり、チャネルCH3およびCH4もx方向に並んでいる。チャネルCH3は、チャネルCH1と比較すると、x方向の位置が同じであるが、z方向の位置が異なっている。また、チャネルCH4は、チャネルCH2と比較すると、x方向の位置が同じであるが、z方向の位置が異なっている。チャネルCH1およびCH2は、肝臓の端部E1の近くに配置されているが、チャネルCH3およびCH4は、肝臓の端部E1から−z方向に離れた位置に配置される。例えばチャネルCH3は、肝臓の肺側とは反対側の端部E2の近くに配置される。
【0019】
図4は、コイル部4bのチャネルCH5〜CH8と撮影部位との位置関係を概略的に示す図である。
図4(a)はzx面内におけるチャネルの位置を示しており、
図4(b)は
図4(a)のd−d断面におけるチャネルの位置を示している。
【0020】
チャネルCH5およびCH6はx方向に並んでおり、チャネルCH7およびCH8もx方向に並んでいる。チャネルCH7は、チャネルCH5と比較すると、x方向の位置が同じであるが、z方向の位置が異なっている。また、チャネルCH8は、チャネルCH6と比較すると、x方向の位置が同じであるが、z方向の位置が異なっている。チャネルCH5およびCH6は、肝臓の端部E1の近くに配置されているが、チャネルCH7およびCH8は、肝臓の端部E1から−z方向に離れた位置に配置される。
【0021】
図1に戻って説明を続ける。
MR装置100は、更に、送信器5、勾配磁場電源6、コンピュータ7、操作部10、および表示部11などを有している。
【0022】
送信器5はRFコイルに電流を供給し、勾配磁場電源6は勾配コイルに電流を供給する。尚、マグネット2、送信器5、勾配磁場電源6を合わせたものがスキャン部に相当する。
【0023】
コンピュータ7は、表示部11に必要な情報を伝送したり、画像を再構成するなど、MR装置100の各種の動作を実現するように、MR装置100の各部の動作を制御する。コンピュータ7は、プロセッサ8およびメモリ9などを有している。
【0024】
メモリ9には、プロセッサ8により実行されるプログラムや、後述するデータベース(
図23参照)などが記憶されている。プロセッサ8は、メモリ9に記憶されているプログラムを読み出し、プログラムに記述されている処理を実行する。
図5に、プロセッサ8が実行する処理を示す。プロセッサ8は、メモリ9に記憶されているプログラムを読み出すことにより、スライス設定手段81〜判断手段84などを構成する。
【0025】
スライス設定手段81は、操作部10から入力された情報に基づいて、スライスを設定する。
チャネル選択手段82は、後述するデータベースに基づいて、コイル4が有するチャネルCH1〜CH8の中から、肝臓の端部E1(
図3参照)の近くに配置されるチャネルを選択する。
呼吸信号生成手段83は、チャネル選択手段82により選択されたチャネルの受信信号に基づいて、呼吸信号を生成する。
判断手段84は、イメージング信号を画像再構成の信号として受け入れるか否かを判断する。
【0026】
プロセッサ8は、スライス設定手段81〜判断手段84を構成する一例であり、所定のプログラムを実行することにより、これらの手段として機能する。
【0027】
操作部10は、オペレータにより操作され、種々の情報をコンピュータ7に入力する。表示部11は種々の情報を表示する。
MR装置100は、上記のように構成されている。
【0028】
図6は、第1の形態で実行されるスキャンの説明図である。
第1の形態では、ローカライザスキャンLSおよび本スキャンMSなどが実行される。
【0029】
ローカライザスキャンLSは、スライスを設定するときに使用される画像Dを取得するためのスキャンである。ローカライザスキャンLSでは、アキシャル画像、サジタル画像、コロナル画像が取得される。
図7に、ローカライザスキャンLSにより取得された画像Dとして、コロナル画像のみが示されている。
【0030】
オペレータは、画像Dに基づいてスライスを設定する。
図8に、オペレータによって設定されたn枚のスライスL1〜Lnを概略的に示す。
図8には、サジタルスライスが設定された例が示されているが、本発明は、サジタルスライスに限定されることはなく、アキシャルスライス、コロナルスライス、およびオブリークスライスでも適用可能である。スライスL1〜Lnを設定した後、本スキャンMSが実行される。
【0031】
図9は本スキャンMSの説明図である。
本スキャンMSは、マルチスライス法により、n枚のスライスL1〜Lnの画像を取得するためのスキャンである。本スキャンMSでは、先ず、期間P
1において、スライスL1〜Lnの画像を取得するためのシーケンスC1〜Cnが実行される。
図9には、シーケンスC1の例が概略的に示されている。シーケンスC1は、DCセルフナビゲータ法により、k空間の中心のデータを表すMR信号(以下、「DC信号」と呼ぶ)Aと、画像を作成するために使用されるMR信号(以下、「イメージング信号」と呼ぶ)Bとを収集するように構成されている。
【0032】
シーケンスC1は、スライスL1を励起するためのRFパルスαを有している。RFパルスαによって励起されたスライスL1からイメージング信号Bが収集される。また、RFパルスαは、イメージング信号Bを収集するだけでなく、DC信号Aを収集するためにも使用される。DC信号Aは、勾配磁場GyおよびGzが印加される直前に設けられた待ち時間T
waitの間に収集される。待ち時間T
waitは、例えば20μsである。
【0033】
シーケンスC1を実行した後、スライスL2〜Lnの画像を取得するためのシーケンスC2〜Cnが順に実行される。シーケンスC2〜Cnは、RFパルスαの励起周波数を除いて、シーケンスC1と同じシーケンスチャートで表される。したがって、期間P
1では、シーケンスC1〜Cnの各々を実行するたびに、DC信号Aおよびイメージング信号Bが収集される。
【0034】
期間P
1においてシーケンスC1〜Cnを実行した後、次の期間P
2でもシーケンスC1〜Cnが実行される。以下同様に、シーケンスC1〜Cnが繰り返し実行される。
図9には、期間P
1〜P
mにおいて実行されるシーケンスC1〜Cnが示されている。尚、シーケンスC1〜Cnの位相エンコード量は、期間ごとに変化する。
【0035】
以下に、ローカライザスキャンLSおよび本スキャンMSを実行するときのMR装置の動作フローについて具体的に説明する。
【0036】
図10は、ローカライザスキャンLSおよび本スキャンMSを実行するときのMR装置の動作フローを示す図である。
ステップST1では、ローカライザスキャンLSが実行される。ローカライザスキャンLSを実行することにより、画像D(
図7参照)が取得される。ローカライザスキャンLSを実行した後、ステップST2に進む。
【0037】
ステップST2では、オペレータは操作部10(
図1参照)を操作し、画像Dを参考にしながらスライスL1〜Ln(
図8参照)を設定するための情報を入力する。スライス設定手段81(
図5参照)は、操作部10から入力された情報に基づいて、スライスL1〜Lnを設定する。スライスL1〜Lnを設定した後、ステップST3に進む。
【0038】
ステップST3では、本スキャンMSが実行される。本スキャンMSでは、先ず、期間P
1において、シーケンスC1〜Cnが実行される(
図11参照)。
【0039】
図11は、期間P
1においてシーケンスC1〜Cnを実行するときの説明図である。
図11には、期間P
1においてシーケンスC1〜Cnを実行することにより収集されるDC信号Aとイメージング信号Bとが概略的に示されている。尚、
図11では、期間P
1で得られる複数のDC信号Aを区別するために、符号Aには、添え字「11」、「12」、・・・「1n」を付してある。同様に、イメージング信号Bを区別するために、符号Bにも、添え字「11」、「12」、・・・「1n」を付してある。
【0040】
期間P
1では、先ず、シーケンスC1が実行される。シーケンスC1を実行することにより、DC信号A
11とイメージング信号B
11とが収集される。イメージング信号B
11は、スライスL1のky=32のラインのデータとして使用される。シーケンスC1を実行した後、シーケンスC2が実行される。
【0041】
シーケンスC2を実行することにより、DC信号A
12とイメージング信号B
12とが収集される。イメージング信号B
12は、スライスL2のky=32のラインのデータとして使用される。
【0042】
以下同様に、スライスL3〜Lnの各々からDC信号およびイメージング信号を収集するためのシーケンスが順に実行される。期間P
1の最後に、スライスLnのデータを収集するためのシーケンスCnが実行される。シーケンスCnを実行することにより、DC信号A
1nと、イメージング信号B
1nとが収集される。イメージング信号B
1nは、スライスLnのky=32のラインのデータとして使用される。
【0043】
したがって、期間P
1の間に、スライスL1〜Lnのky=32のデータを収集することができる。次に、期間P
2に移行する。
【0044】
図12は期間P
2においてシーケンスC1〜Cnを実行するときの説明図である。
図12では、期間P
2で得られる複数のDC信号Aを区別するために、符号Aには、添え字「21」、「22」、・・・「2n」を付してある。同様に、イメージング信号Bを区別するために、符号Bにも、添え字「21」、「22」、・・・「2n」を付してある。
【0045】
期間P
2では、先ず、シーケンスC1が実行される。シーケンスC1を実行することにより、DC信号A
21とイメージング信号B
21とが収集される。イメージング信号B
21は、スライスL1のky=31のラインのデータを表している。シーケンスC1を実行した後、シーケンスC2〜Cnが順に実行される。したがって、期間P
2の間に、スライスL1〜Lnのky=31のデータを収集することができる。
【0046】
期間P
2でky=31のデータを収集した後も、残りのkyビューのデータを収集するためのシーケンスC1〜Cnが繰り返し実行される(
図13参照)。
【0047】
図13は期間P
mにおいてシーケンスC1〜Cnを実行するときの説明図である。
図13では、期間P
mで得られる複数のDC信号Aを区別するために、符号Aには、添え字「m1」、「m2」、・・・「mn」を付してある。同様に、イメージング信号Bを区別するために、符号Bにも、添え字「m1」、「m2」、・・・「mn」を付してある。
【0048】
期間P
mでは、先ず、シーケンスC1が実行される。シーケンスC1を実行することにより、DC信号A
m1とイメージング信号B
m1とが収集される。イメージング信号B
m1は、スライスL1のky=−32のラインのデータを表している。シーケンスC1を実行した後、シーケンスC2〜Cnが順に実行される。したがって、期間P
mの間に、スライスL1〜Lnのky=−32のデータを収集することができる。
【0049】
また、シーケンスC1〜Cnを実行することにより、イメージング信号Bの他に、DC信号Aが収集される。第1の形態では、DC信号Aを用いて、被検体の呼吸信号を生成する。以下、第1の形態において呼吸信号を生成する方法について説明する。尚、第1の形態の呼吸信号の生成方法の説明にあたっては、第1の形態の呼吸信号の生成方法の効果を明確にするために、先ず、第1の形態とは別のやり方で呼吸信号を生成する方法の一例について説明し、その後に、第1の形態の呼吸信号の生成方法について説明する。
【0050】
図14〜
図19は、第1の形態とは別のやり方で呼吸信号を生成する方法の一例の説明図である。
先ず、
図14に示すように、期間P
1において、シーケンスC1が実行される。シーケンスC1を実行することにより、スライスL1から、DC信号A
11とイメージング信号B
11とが収集される。
【0051】
コイル4はチャネルCH1〜CH8を有しているので、DC信号A
11は、チャネルCH1〜CH8の各々で受信される。
図14の下側には、チャネルCH1〜CH8がDC信号A
11を受信した場合に、チャネルCH1〜CH8の各々から出力される信号を、符号「A
11,1」〜「A
11,8」で示してある。
【0052】
シーケンスC1を実行した後、シーケンスC2が実行される。
図15にシーケンスC2が実行されたときの様子を示す。シーケンスC2を実行することにより、スライスL2から、DC信号A
12とイメージング信号B
12とが収集される。
【0053】
コイル4はチャネルCH1〜CH8を有しているので、DC信号A
12は、DC信号A
11と同様に、チャネルCH1〜CH8の各々で受信される。
図15の下側には、チャネルCH1〜CH8がDC信号A
12を受信した場合に、チャネルCH1〜CH8の各々から出力される信号を、符号「A
12,1」〜「A
12,8」で示してある。
【0054】
以下同様に、スライスL3〜Lnの各々からDC信号およびイメージング信号を収集するためのシーケンスが実行される。そして、期間P
1の最後に、スライスLnのデータを収集するためのシーケンスCnが実行される。
図16にシーケンスCnが実行されたときの様子を示す。シーケンスCnを実行することにより、スライスLnから、DC信号A
1nとイメージング信号B
1nとが収集される。
【0055】
コイル4はチャネルCH1〜CH8を有しているので、DC信号A
1nは、DC信号A
11と同様に、チャネルCH1〜CH8の各々で受信される。
図16の下側には、チャネルCH1〜CH8がDC信号A
1nを受信した場合に、チャネルCH1〜CH8の各々から出力される信号を、符号「A
1n,1」〜「A
1n,8」で示してある。
【0056】
このようにして、シーケンスを実行するたびに、各チャネルからDC信号が出力される。
【0057】
次に、期間P
1においてチャネルCH1〜CH8から出力された信号を合成する(
図17参照)。
【0058】
図17は、期間P
1においてチャネルCH1〜CH8から出力された信号を合成するときの様子を示す図である。
図17では、期間P
1においてチャネルCH1〜CH8から出力された信号を加算することにより、チャネルCH1〜CH8の信号を合成する例が示されている。チャネルCH1〜CH8の全信号を加算することにより、合成信号A
1が得られる。
【0059】
合成信号A
1を取得した後、合成信号A
1の積分値を算出する。
図18に、算出された合成信号A
1の積分値を符号「S
1」で示してある。積分値S
1が、期間P
1における被検体の呼吸信号の信号値として使用される。
期間P
1においてシーケンスを実行した後、期間P
2に移行する。
【0060】
図19は、期間P
2における呼吸信号の信号値を算出するときの説明図である。
期間P
2でも、期間1と同様にシーケンスが実行され、チャネルの信号が合成される。そして、合成信号A
2の積分値S
2を求める。積分値S
2が、期間P
2における被検体の呼吸信号の信号値として使用される。
【0061】
以下同様に、各期間においてシーケンスC1〜Cnを実行し、合成信号の積分値を算出する。したがって、各期間における呼吸信号の信号値を求めることができる(
図20参照)。
【0062】
図20に、各期間における呼吸信号の信号値を概略的に示す図である。
図20には、
図14〜
図19に示す方法で求められた呼吸信号Q1と、理想の呼吸信号Q2が示されている。
【0063】
被検体の呼吸状態(呼気、吸気など)を認識するためには、理想の呼吸信号Q2に示すように、被検体の呼吸運動に応じて呼吸信号が時間とともにできるだけ大きく変化する必要がある。しかし、
図14〜
図19に示す方法で呼吸信号を生成した場合、呼吸信号の振幅が小さくなるので、好適な呼吸信号を得ることは難しいという問題がある。
【0064】
そこで、本願発明者は、呼吸信号の振幅が小さくなる理由を明らかにするため、
図9に示すシーケンスを用いて実際に被検体をスキャンし、全チャネルの合成信号から求めた呼吸信号と、1チャネルの受信信号から求めた呼吸信号との違いについて検討した。以下に、検討結果について説明する。
【0065】
図21は呼吸信号を示す図である。
図21(a)は、全チャネルの合成信号から求めた呼吸信号V0を示す図である。
図21(a)を参照すると、呼吸信号V0の振幅はあまり大きくならないことがわかる。
【0066】
図21(b1)〜(b8)は1チャネルのみの受信信号から求めた呼吸信号を示す図である。以下、各図について説明する。
【0067】
図21(b1)は、チャネルCH1の受信信号のみから求めた呼吸信号V1を示す図である。チャネルCH1の呼吸信号V1(周期T)は、肝臓の動きを反映して大きく変化していることがわかる。
【0068】
図21(b2)は、チャネルCH2の受信信号のみから求めた呼吸信号V2を示す図である。チャネルCH2の呼吸信号V2も、チャネルCH1の呼吸信号V1と同様に、肝臓の動きを反映して大きく変化している。
【0069】
図21(b3)は、チャネルCH3の受信信号のみから求めた呼吸信号V3を示す図である。チャネルCH3の呼吸信号V3は、チャネルCH1の呼吸信号V1と同様に肝臓の動きを反映して大きく変化している。しかし、チャネルCH3の呼吸信号V3は、チャネルCH1の呼吸信号V1に対して、波形がΔTだけ時間方向にずれている。
【0070】
図21(b4)は、チャネルCH4の受信信号のみから求めた呼吸信号V4を示す図である。チャネルCH4の呼吸信号V4は、チャネルCH1の呼吸信号V1と同様に肝臓の動きを反映して大きく変化している。しかし、チャネルCH4の呼吸信号V4は、チャネルCH1の呼吸信号V1に対して、波形がΔTだけ時間方向にずれている。
【0071】
図21(b5)は、チャネルCH5の受信信号のみから求めた呼吸信号V5を示す図である。チャネルCH5の呼吸信号V5は、チャネルCH1の呼吸信号V1と同様に、肝臓の動きを反映して大きく変化している。チャネルCH5の呼吸信号V5は、チャネルCH1の呼吸信号V1に対して、波形の時間方向のずれはほとんど見られない。
【0072】
図21(b6)は、チャネルCH6の受信信号のみから求めた呼吸信号V6を示す図である。チャネルCH6の呼吸信号V6は、チャネルCH1の呼吸信号V1と同様に、肝臓の動きを反映して大きく変化している。チャネルCH6の呼吸信号V6は、チャネルCH1の呼吸信号V1に対して、波形の時間方向のずれはほとんど見られない。
【0073】
図21(b7)は、チャネルCH7の受信信号のみから求めた呼吸信号V7を示す図である。チャネルCH7の呼吸信号V7の振幅はあまり変化しておらず、肝臓の動きが十分に反映されていないことがわかる。
【0074】
図21(b8)は、チャネルCH8の受信信号のみから求めた呼吸信号V8を示す図である。チャネルCH8の呼吸信号V8の振幅はあまり変化しておらず、肝臓の動きが十分に反映されていないことがわかる。
【0075】
したがって、チャネルCH1の呼吸信号V1に対して、波形がΔTだけ時間方向にずれた呼吸信号が含まれていることがわかる。例えば、チャネルCH3の呼吸信号V3は、チャネルCH1の呼吸信号V1に対して、波形がΔTだけ時間方向にずれている。以下に、呼吸信号の波形が時間方向にずれる理由について考察する。
【0076】
図22は、チャネルCH1およびCH3と肝臓との位置関係を概略的に示す図である。
図22では、被検体が息を吐いたときの肝臓を実線で示しており、被検体が息を吸ったときの肝臓の位置を破線で示してある。
【0077】
被検体が息を吐いた場合、肝臓の端部E1はz方向に動くので、肝臓はチャネルCH1に近づく。したがって、チャネルCH1の受信信号の信号値は、肝臓の影響を受けて増加する。一方、チャネルCH3から見ると、肝臓は離れていくので、チャネルCH3の受信信号の信号値は減少する。
【0078】
これに対し、被検体は息を吸った場合、肝臓の端部E1は−z方向に動くので、肝臓はチャネルCH1から離れる。したがって、チャネルCH1の受信信号の信号値は減少する。一方、チャネルCH3から見ると、肝臓は近づいてくるので、チャネルCH3の受信信号の信号値は増加する。したがって、チャネルCH1の受信信号の増減と、チャネルCH3の受信信号の増減は逆になる。
【0079】
このように受信信号の増減が逆になるので、チャネルCH3の受信信号から求めた呼吸信号V3は、チャネルCH1の受信信号から求めた呼吸信号V1に対して、波形がΔTだけ時間方向にずれると考えられる。このため、呼吸信号V1とV3とを加算すると、信号が互いに打ち消し合う。
【0080】
また、
図21(b1)〜(b8)を参照すると、チャネルCH7およびCH8の呼吸信号V7およびV8は振幅があまり変化しないことがわかる。この理由としては、チャネルCH7およびCH8が他のチャネルよりも肝臓から離れているので、肝臓の動きによる信号値の変化があまり大きくないことが考えられる。
【0081】
したがって、チャネルCH1〜CH8の中には、互いの信号を打ち消し合うチャネルや、肝臓の動きをあまり反映しないチャネルが含まれているので、全チャネルの受信信号を合成した場合、呼吸信号の振幅があまり大きくならないと考えられる。
【0082】
尚、
図21(b1)〜(b8)を参照すると、チャネルCH1〜CH8の中には、呼吸信号の波形の時間方向のずれがほとんど見られないチャネルが含まれていることがわかる。具体的には、チャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6の呼吸信号V1、V2、V5、およびV6は、時間方向のずれがほとんど見られない。これらのチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6は、肝臓の端部E1の近くに配置されており、肝臓の動きに応じた信号値の増減が同じタイミングで行われるので、呼吸信号の波形の時間方向のずれがほとんど見られないと考えられる。したがって、チャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6の受信信号のみを合成すれば、被検体の呼吸によって大きく変化する呼吸信号を得ることができると考えられる。そこで、第1の形態では、チャネルCH1〜CH8のうち、肝臓の端部E1の近くに配置されたチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6の受信信号のみを用いて、呼吸信号を生成する。以下に、第1の形態における呼吸信号の生成方法について説明する。
【0083】
第1の形態では、メモリ9(
図1参照)に、コイルのチャネルの情報を含むデータベースが記憶されている。
図23に、データベースに登録されているデータを概略的に示す。
【0084】
データベースには、コイルを表す項目aと、コイルのチャネルを表す項目bと、チャネルが肝臓の肺側の端部E1の近くに配置されるか否かを表す項目cが登録されている。項目cの記号「○」は、チャネルが肝臓の端部E1の近くに配置されることを示している。ここでは、チャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6が、肝臓の端部E1の近くに配置されるチャネルとして登録されている。
【0085】
第1の形態では、
図23のデータベースに基づいて呼吸信号を生成する。以下に、データベースを用いて呼吸信号を生成する手順について、
図24および
図25を参照しながら説明する。
【0086】
先ず、
図24に示すように、期間P
1において、シーケンスC1が実行される。シーケンスC1を実行することにより、スライスL1から、DC信号A
11とイメージング信号B
11とが収集される。
【0087】
コイル4はチャネルCH1〜CH8を有しているので、DC信号A
11は、チャネルCH1〜CH8の各々で受信される。チャネルCH1〜CH8は、DC信号A
11を受信することにより、それぞれ信号A
11,1〜A
11,8を出力する。
【0088】
シーケンスC1を実行した後、シーケンスC2が実行される。シーケンスC2を実行することにより、スライスL2から、DC信号A
12とイメージング信号B
12とが収集される。
【0089】
DC信号A
12は、DC信号A
11と同様に、チャネルCH1〜CH8の各々で受信される。チャネルCH1〜CH8は、DC信号A
12を受信することにより、それぞれ信号A
12,1〜A
12,8を出力する。
【0090】
以下同様に、スライスL3〜Lnの各々からDC信号およびイメージング信号を収集するためのシーケンスが実行される。そして、期間P
1の最後に、スライスLnのデータを収集するためのシーケンスCnが実行される。シーケンスCnを実行することにより、スライスLnから、DC信号A
1nとイメージング信号B
1nとが収集される。
【0091】
DC信号A
1nは、チャネルCH1〜CH8の各々で受信される。チャネルCH1〜CH8は、DC信号A
1nを受信することにより、それぞれ信号A
1n,1〜A
1n,8を出力する。
【0092】
期間P
1においてシーケンスC1〜Cnを実行した後、以下のようにして呼吸信号を生成する。
【0093】
先ず、チャネル選択手段82(
図5参照)が、データベース(
図23参照)を参照する。そして、チャネル選択手段82は、データベースの項目cの情報に基づいて、肝臓の端部E1の近くに配置されるチャネルとして登録されているチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6を選択する。
【0094】
次に、呼吸信号生成手段83(
図5参照)は、チャネルCH1〜CH8のうち選択されていないチャネルCH3、CH4、CH7、およびCH8の出力信号は破棄し、選択されたチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6の出力信号のみを合成(加算)する。これにより、合成信号A
1が得られる。
【0095】
合成信号A
1を取得した後、呼吸信号生成手段83は、合成信号A
1の積分値S
1を算出する。積分値S
1が、期間P
1における被検体の呼吸信号の信号値として使用される。
期間P
1においてシーケンスを実行した後、期間P
2に移行する。
【0096】
図25は、期間P
2における呼吸信号を算出するときの説明図である。
期間P
2でも、期間1と同様にシーケンスC1〜Cnが実行される。呼吸信号生成手段83は、チャネルCH3、CH4、CH7、およびCH8の出力信号は破棄し、選択されたチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6の出力信号のみを合成(加算)することにより、合成信号A
2を生成する。そして、呼吸信号生成手段83は、合成信号A
2の積分値S
2を求める。積分値S
2が、期間P
2における被検体の呼吸信号の信号値として使用される。
【0097】
以下同様に、各期間においてシーケンスC1〜Cnが実行される。呼吸信号生成手段83は、チャネルCH3、CH4、CH7、およびCH8の出力信号を破棄し、選択されたチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6の出力信号のみを合成(加算)する。そして、合成信号の積分値を算出する。したがって、各期間における呼吸信号を求めることができる(
図26参照)。
【0098】
図26に、第1の形態の方法で得られた呼吸信号を概略的に示す図である。
第1の形態では、肝臓の端部E1の近くに位置するチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6の出力信号のみを合成(加算)している。チャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6の出力信号は同じタイミングで増減するので、これらのチャネルの出力信号のみを合成することにより、被検体の呼吸に応じて大きく変化する呼吸信号Vsynを取得することができる。
【0099】
尚、肝臓は呼吸により動くので、期間P
1〜P
mに収集されたイメージング信号のみを用いて画像を再構成すると、画像に体動アーチファクトが現れる。そこで、第1の形態では、体動アーチファクトを軽減するため、呼吸信号Vsynに基づいて、イメージング信号を画像再構成に使用する信号として受け入れるか、それとも、イメージング信号の受入れを拒否するかを判断している。以下に、その判断方法について説明する。
【0100】
図27はイメージング信号の受入れ、拒否を判断する方法の説明図である。
判断手段84(
図5参照)は、先ず、被検体の息の吐き終わりの位置に相当する信号値x0を求める。息の吐き終わりの信号値x0は、例えば、呼吸信号のピーク値を参考にして求めることができる。次に、呼吸信号の最大値と最小値との差ΔDを求める。そして、息の吐き終わりの信号値x0を中心として、差ΔDのx%(例えば、x=20)の範囲AWを設定する。このようにして設定された範囲AWを、イメージング信号Bを受け入れる許容範囲AWと定める。そして、判断手段84は、呼吸信号が許容範囲AWに含まれている場合、イメージング信号を画像再構成に使用する信号として受け入れると判断する。一方、判断手段84は、呼吸信号が許容範囲AWに含まれていない場合、イメージング信号を画像再構成に使用する信号として受け入れることを拒否すると判断する。
図27を見ると、期間P
1の信号値(積分値)S
1は許容範囲AWに含まれていないので、期間P
1に収集されたイメージング信号B
11〜B
1n(
図24参照)は拒否される。しかし、期間P
2の信号値(積分値)S
2は許容範囲AWに含まれているので、期間P
2に収集されたイメージング信号B
21〜B
2n(
図25参照)は受け入れると判断される。以下同様に、各期間の呼吸信号が許容範囲AWに含まれているか否に応じて、イメージング信号を受け入れるか拒否するかを判断する。
【0101】
そして、期間P
1〜P
mに収集されたイメージング信号のうち、画像再構成用に使用する信号として受け入れることが拒否されたイメージング信号は、期間P
mの後で再収集される。例えば、期間P
1に収集されたイメージング信号B
11〜B
1n(
図24参照)は、画像再構成用に使用する信号として受け入れることが拒否されているので、イメージング信号B
11〜B
1nは再収集される(
図28参照)。
【0102】
図28は、イメージング信号B
11〜B
1nを再収集するときの説明図である。
期間P
m+1では、イメージング信号B
11〜B
1nを収集するためのシーケンスC1〜Cnが実行される。シーケンスC1〜Cnを実行することにより、DC信号A
11〜A
1nと、イメージング信号B
11〜B
1nとが再収集される。
【0103】
DC信号A
11〜A
1nおよびイメージング信号B
11〜B
1nは、チャネルCH1〜CH8の各々で受信される。尚、
図28では、説明の便宜上、DC信号A
11〜A
1nがチャネルCH1〜CH8の各々で受信される様子のみが示されている。チャネルCH1〜CH4は、それぞれ信号A
11,1〜A
11,8を出力する。
【0104】
呼吸信号生成手段83は、チャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6の出力信号の合成信号を生成し、合成信号A
m+1の積分値S
m+1を算出する。これにより、期間P
m+1における呼吸信号S
m+1を得ることができる。
【0105】
次に、判断手段84は、呼吸信号S
m+1が許容範囲AWに含まれているか否かを判断する。
図28では、呼吸信号S
m+1は許容範囲AWに含まれていないので、期間P
m+1で収集されたイメージング信号B
11〜B
1nは画像再構成用のデータとして受け入れることができない。したがって、イメージング信号B
11〜B
1nは拒否される。この場合、引き続いて、次の期間P
m+2においても、イメージング信号B
11〜B
1nを再収集するためのシーケンスC1〜Cnが実行される(
図29参照)。
【0106】
図29は、期間P
m+2においてシーケンスC1〜Cnを実行するときの説明図である。
期間P
m+2でも、期間P
m+1と同様に、イメージング信号B
11〜B
1nを再収集するためのシーケンスC1〜Cnが実行される。シーケンスC1〜Cnを実行することにより、DC信号A
11〜A
1nと、イメージング信号B
11〜B
1nとが再収集される。
【0107】
DC信号A
11〜A
1nおよびイメージング信号B
11〜B
1nは、チャネルCH1〜CH8の各々で受信される。尚、
図29では、説明の便宜上、DC信号A
11〜A
1nがチャネルCH1〜CH8の各々で受信される様子のみが示されている。チャネルCH1〜CH4は、それぞれ信号A
11,1〜A
11,8を出力する。
【0108】
呼吸信号生成手段83は、チャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6の出力信号の合成信号を生成し、合成信号A
m+2の積分値S
m+2を算出する。これにより、期間P
m+2における呼吸信号S
m+2を得ることができる。
【0109】
次に、判断手段84は、呼吸信号S
m+2が許容範囲AWに含まれているか否かを判断する。
図29では、呼吸信号S
m+2は許容範囲AWに含まれているので、期間P
m+2で収集されたイメージング信号B
11〜B
1nは画像再構成用のデータとして受け入れると判断される。
【0110】
以下同様に、他の拒否されたイメージング信号を再収集する場合も、呼吸信号が許容範囲AWに含まれるまでシーケンスが繰り返し実行される。したがって、呼吸信号が許容範囲AWに含まれているときに収集されたky=−32〜32のイメージング信号を、画像再構成用のデータとして得ることができる。
このようにして、拒否されたイメージング信号を再収集した後、画像再構成が行われる。
【0111】
第1の形態では、肝臓の端部E1の近くに配置されるチャネルが受信したDC信号を合成しているので、被検体の呼吸に応じて大きく変化する呼吸信号Vsynを取得することができる。したがって、被検体が息を吐き切るときの呼吸信号の大よその範囲AWを特定することができる。また、第1の形態では、呼吸信号が範囲AWに含まれていない場合、呼吸信号が範囲AWに含まれるまでイメージング信号を再収集するので、体動アーチファクトが低減された画像を得ることができる。
【0112】
尚、第1の形態では、肝臓の端部E1の近くに配置されるチャネルとして、4つのチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6が登録されている。しかし、4つのチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6の全てを登録せずに、4つのチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6のうちの1チャネル、2チャネル、又は3チャネルのみを登録してもよい。
図21を参照しながら説明したように、チャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6のどのチャネルでも、肝臓の動きを十分に反映した呼吸信号が得られる。したがって、4つのチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6のうちの少なくとも一つ以上のチャネルを登録しておけば、肝臓の動きを十分に反映した呼吸信号を得ることができる。
【0113】
また、肝臓の端部E1に位置するチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6の代わりに、例えば、肝臓の端部E2(
図3参照)の近くに位置するチャネルCH3を登録しておいてもよい。
図21を参照しながら説明したように、チャネルCH3から得られた呼吸信号は、チャネルCH1から得られた呼吸信号に対して、波形がΔTだけ時間方向にずれているが、肝臓の動きは十分に反映している。したがって、チャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6の代わりに、チャネルCH3を登録しても、肝臓の動きを十分に反映した呼吸信号を得ることができる。
【0114】
第1の形態では、オペレータが操作部10から入力した情報に基づいて、スライス設定手段81がスライスを設定している。しかし、画像Dに基づいて、スライス設定手段81が自動でスライスを設定してもよい。
【0115】
(2)第2の形態
第1の形態では、肝臓の端部E1の近くに配置されるチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6をデータベースに登録しておき、データベースの情報を参照することにより、チャネルCH1〜CH8の中から、チャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6を選択している。第2の形態では、データベースにチャネルを登録せずに、チャネルCH1〜CH8の中から、肝臓の端部E1の近くに配置されるチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6を選択する例について説明する。尚、MR装置のハードウエア構成は、第1の形態と同じである。
【0116】
図30は、第2の形態においてプロセッサが実行する処理の説明図である。
プロセッサ8は、メモリ9に記憶されているプログラムを読み出すことにより、スライス設定手段81〜判断手段84などを構成する。
【0117】
スライス設定手段81は、操作部10から入力された情報に基づいて、スライスを設定する。
プロファイル作成手段811は、後述するプレスキャンPS(
図32参照)により収集されたMR信号に基づいて、撮影部位のz方向における各位置と信号値との関係を表すプロファイルを作成する。
チャネル選択手段82は、プロファイル作成手段811により作成されたプロファイルに基づいて、コイル4が有するチャネルCH1〜CH8の中から、肝臓の端部E1(
図3参照)の近くに配置されるチャネルを選択する。
呼吸信号生成手段83は、チャネル選択手段82により選択されたチャネルの出力信号に基づいて、呼吸信号を生成する。
判断手段84は、イメージング信号を画像再構成の信号として受け入れるか否かを判断する。
【0118】
プロセッサ8は、スライス設定手段81〜判断手段84を構成する一例であり、所定のプログラムを実行することにより、これらの手段として機能する。
【0119】
図31は、第2の形態で実行されるスキャンの説明図である。
第2の形態では、ローカライザスキャンLS、プレスキャンPS、および本スキャンMSが実行される。第2の形態は、第1の形態と比較すると、ローカライザスキャンLSおよび本スキャンMSが実行される点は同じであるが、ローカライザスキャンLSと本スキャンMSとの間にプレスキャンPSが実行される点が異なっている。
【0120】
図32はプレスキャンPSの説明図である。
図32には、プレスキャンPSで実行されるシーケンスHが示されている。シーケンスHは、Gy方向に位相エンコード勾配パルスが印加されていない点を除いて、
図9に示すパルスシーケンスと同じである。
【0121】
プレスキャンPSは、チャネルCH1〜CH8の中から、肝臓の端部E1の近くに配置されるチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6を選択するために実行されるスキャンである。プレスキャンPSについては後で詳しく説明する。
【0122】
以下、第2の形態において、ローカライザスキャンLS、プレスキャンPS、および本スキャンMSを実行するときのMR装置の動作フローについて説明する。
【0123】
図33は、第2の形態におけるMR装置の動作フローを示す図である。
ステップST1およびST2は第1の形態と同じであるので詳細な説明は省略する。ステップST2においてスライスL1〜Ln(
図8参照)を設定した後、ステップST21に進む。
【0124】
ステップST21では、プレスキャンPSが実行される。プレスキャンPSは、チャネルCH1〜CH8の中から、肝臓の端部E1の近くに配置されるチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6を選択するために実行されるスキャンである。以下に、プレスキャンPSについて説明する(
図34参照)。
【0125】
図34はプレスキャンPSの説明図である。
プレスキャンPSでは、スライスL1〜Lnのうちのいずれか一枚のスライスのみが励起され、励起された一枚のスライスからDC信号A
0およびイメージング信号B
0を収集する。第2の形態では、スライスL1〜Lnのうちの中央のスライスLcを励起するとする。したがって、スライスLcからDC信号A
0とイメージング信号B
0とが収集される。
【0126】
シーケンスHを実行することにより、スライスLcから、DC信号A
0およびイメージング信号B
0が収集される。DC信号A
0およびイメージング信号B
0は、チャネルCH1〜CH8の各々で受信される。
図34では、説明の便宜上、DC信号A
0がチャネルCH1〜CH8の各々で受信される様子のみが示されている。尚、DC信号A
0およびイメージング信号B
0のうち、チャネルの選択に使用される信号はイメージング信号B
0であり、DC信号A
0はチャネルの選択には使用されない。
【0127】
チャネルCH1〜CH8がイメージング信号B
0を受信することにより、チャネルCH1〜CH8は、それぞれ信号B
01〜B
08を出力する。
プリスキャンPSを実行した後、ステップST22に進む。
【0128】
ステップST22では、プロファイル作成手段811(
図30参照)が、チャネルCH1〜CH8の出力信号B
01〜B
08の各々をz方向にフーリエ変換(FT:Fourier Transformation)する。これにより、
図35に示すように、チャネルごとに、z方向の各位置と信号値との関係を表すプロファイル(F1〜F8)を作成することができる。
図36には、プロファイルF1〜F8のz方向の範囲が概略的に示されている。
図36の左側には、プロファイルF1〜F4のz方向の範囲が示されており、
図36の右側には、プロファイルF5〜F8のz方向の範囲が示されている。
【0129】
プロファイルF1〜F8のz方向の範囲は、符号「za」および「zb」で示してある。zaは肝臓の端部E2に近い位置であり、zbは肺を横切る位置である。
プロファイルF1〜F8を作成した後、ステップST23に進む。
【0130】
ステップST23では、チャネル選択手段82(
図30参照)が、プロファイルF1〜F8の各々の特性を表す特性値を求め、特性値に基づいて、チャネルCH1〜CH8の中から、肝臓の端部E1の近くに配置されるチャネルを選択する。以下では、先ず、プロファイルCH1〜CH8の各々の特性値を求める方法について説明し、次に、特性値に基づいてチャネルを選択する方法について説明する。
【0131】
図37〜
図39は、プロファイルCH1〜CH8の各々の特性値を求める方法の説明図である。
チャネル選択手段82は、先ず、プロファイルF1〜F8の各々のz方向の範囲za〜zbを2分する中心位置zcを規定する。
図37に、中心位置zcを示す。中心位置zcを規定した後、チャネル選択手段82は、各プロファイルに対して、区間za〜zcにおける積分値Saと、区間zc〜zbにおける積分値Sbとを算出する。
図38に、プロファイルごとに算出された積分値SaおよびSbを示す。
【0132】
積分値SaおよびSbを算出した後、チャネル選択手段82は、プロファイルごとに、積分値SbとSaの比を算出する。
図39に、プロファイルごとに算出した積分値の比を示す。
図39では、プロファイルF1〜F8の比は、符号「J1」〜「J8」で示されている。第2の形態では、積分値の比が、プロファイルの特性値として求められる。
【0133】
比J1〜J8を比較すると、比J1〜J8は、チャネルの配置位置に応じて、大きい値を持つ比と、小さい値を持つ比に分けることができる。以下に、この理由について説明する。
【0134】
先ず、比J1〜J8のうちの4つの比J1〜J4(
図39の左側参照)について考える。
【0135】
チャネルCH1およびCH2は、中心位置zcに対してz方向に配置されているが、チャネルCH3およびCH4は、中心位置zcに対して−z方向に配置されている。したがって、範囲zc〜zbでは、チャネルCH1およびCH2は、チャネルCH3およびCH4よりも高い感度を有する。このため、チャネルCH1およびCH2のプロファイルF1およびF2の積分値Sbは、チャネルCH3およびCH4のプロファイルF3およびF4の積分値Sbよりも大きい値となる。一方、範囲za〜zcでは、チャネルCH1およびCH2は、チャネルCH3およびCH4よりも低い感度を有する。このため、チャネルCH1およびCH2のプロファイルF1およびF2の積分値Saは、チャネルCH3およびCH4のプロファイルF3およびF4の積分値Saよりも小さい値となる。
【0136】
したがって、チャネルCH1およびCH2の比J1およびJ2は、チャネルCH3およびCH4の比Jよりも大きくなることがわかる。
【0137】
上記の説明では、チャネルCH1〜CH4の比J1〜J4について説明したが、チャネルCH5〜CH8の比J5〜J8も同様に説明することができる。チャネルCH5およびCH6の比J5およびJ6は、チャネルCH7およびCH8の比J7およびJ8よりも大きくなる。
【0138】
したがって、比J1〜J8の中から、値の大きい比を特定することにより、肝臓の端部E1の近くに配置されているチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6を選択できることがわかる。
【0139】
そこで、チャネル選択手段82は、比J1〜J8を値の大きい順に並び替え、値の大きい順に4つの比を特定する。ここでは、J1、J2、J5、およびJ6が、値の大きい4つの比として特定される。したがって、チャネルCH1〜CH8の中から、肝臓の端部E1の近くに配置されているチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6を選択することができる。
チャネルを選択した後、ステップST3に進む。
【0140】
ステップST3では、本スキャンMSが実行される。本スキャンMSでは、第1の形態と同様に、チャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6の出力信号のみを合成し、呼吸信号が生成される。
【0141】
そして、第1の形態と同様に、期間P
1〜P
mの呼吸信号に基づいて、イメージング信号Bを受け入れる許容範囲AWを設定し(
図27参照)、呼吸信号が許容範囲AWに含まれていない場合はデータを再収集し、フローを終了する。
【0142】
第2の形態では、プレスキャンPSを実行し、プレスキャンPSにより収集されたMR信号に基づいて、チャネルCH1〜CH8のプロファイルF1〜F8を作成する。そして、プロファイルF1〜F8の比J1〜J8を算出する。比J1〜J8の値は、チャネルの配置位置に応じて、大きい値と小さい値に分けることができるので、比J1〜J8に基づいて、肝臓の端部E1の近くに配置されるチャネルを選択することができる。また、コイル4とは別のコイルを用いても、プレスキャンPSを実行することにより、当該別のコイルが有するチャネルの中から、肝臓の端部E1の近くに配置されたチャネルを選択することができる。したがって、データベースに、撮影に使用するコイルごとにチャネルを登録しておく必要がないので、データベースのメンテナンスに掛かる負担を軽減することもできる。
【0143】
第2の形態では、プロファイルの特性値として、プロファイルの積分値の比(J1〜J8)を算出している。しかし、チャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6と、チャネルCH3、CH4、CH7、およびCH8とを区別することができるのであれば、積分値の比の代わりに別の特性値を求めてもよい。例えば、範囲za〜zcの信号値の最大値と、範囲zc〜zbの信号値の最大値とを算出し、最大値の比を、プロファイルの特性値としてもよい。
【0144】
尚、第2の形態では、チャネル選択手段82は、肝臓の端部E1の近くに配置されるチャネルとして、4つのチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6を選択している。しかし、4つのチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6の全てを選択せずに、4つのチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6のうちの1チャネル、2チャネル、又は3チャネルのみを選択してもよい。
図21を参照しながら説明したように、チャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6のどのチャネルでも、肝臓の動きを十分に反映した呼吸信号が得られる。したがって、4つのチャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6のうちの少なくとも一つ以上のチャネルを選択しておけば、肝臓の動きを十分に反映した呼吸信号を得ることができる。
【0145】
第2の形態では、プレスキャンPSにおいて、スライスLcから磁気共鳴信号を収集し、各チャネルのプロファイルを作成している。しかし、スライスLcとは別のスライスから磁気共鳴信号を収集し、各チャネルのプロファイルを作成してもよい。また、複数のスライスから磁気共鳴信号を収集し、各チャネルのプロファイルを作成してもよい。更に、第2の形態では、プレスキャンPSは2Dスキャンであるが、3Dスキャンでもよい。
【0146】
(3)第3の形態
第3の形態では、コイル4が複数のコイルモードを有する場合について説明する。尚、コイル4以外のMR装置のハードウエア構成は、第1の形態(
図1参照)と同じである。
【0147】
第3の形態では、コイル4は、撮影条件に応じて、以下のコイルモードでMR信号を受信することができるように構成されている。
【0148】
(1)コイルモードM1(チャネルCH1+CH2+CH3+CH4)
(2)コイルモードM2(チャネルCH5+CH6+CH7+CH8)
(3)コイルモードM3(チャネルCH1+CH2+CH3+CH4
+CH5+CH6+CH7+CH8)
【0149】
コイルモードM1は、4つのチャネルCH1〜CH4でMR信号を受信するモードを表している。コイルモードM2は、4つのチャネルCH5〜CH8でMR信号を受信するモードを表している。コイルモードM3は、8つのチャネルCH1〜CH8でMR信号を受信するモードを表している。
【0150】
図40は、第3の形態においてメモリ9に記憶されているデータベースを示す図である。
データベースには、コイル4を表す項目aと、コイル4が有するコイルモードを表す項目a1と、コイルモードが有するチャネルを表す項目bと、チャネルが肝臓の肺側の端部E1の近くに配置されるか否かを表す項目cが登録されている。項目cの記号「○」は、チャネルが肝臓の端部E1の近くに配置されることを示している。ここでは、チャネルCH1、CH2、CH5、およびCH6が、肝臓の端部E1の近くに配置されるチャネルとして登録されている。
【0151】
図41は、第3の形態においてプロセッサが実行する処理の説明図である。
プロセッサ8は、メモリ9に記憶されているプログラムを読み出すことにより、コイルモード選択手段80〜判断手段84などを構成する。
【0152】
コイルモード選択手段80は、操作部10から入力された情報に基づいて、コイルモードM1〜M3の中から、撮影に使用するコイルモードを選択する。
スライス設定手段81は、操作部10から入力された情報に基づいて、スライスを設定する。
チャネル選択手段82は、データベース(
図40参照)に基づいて、選択されたコイルモードが有するチャネルの中から、肝臓の端部E1(
図3参照)の近くに配置されるチャネルを選択する。
呼吸信号生成手段83は、チャネル選択手段82により選択されたチャネルの出力信号に基づいて、呼吸信号を生成する。
判断手段84は、イメージング信号を画像再構成の信号として受け入れるか否かを判断する。
【0153】
プロセッサ8は、コイルモード選択手段80〜判断手段84を構成する一例であり、所定のプログラムを実行することにより、これらの手段として機能する。
以下に、第3の形態におけるMR装置の動作フローについて説明する。
【0154】
図42は、第3の形態におけるMR装置の動作フローを示す図である。
ステップST0では、ローカライザスキャンLSを実行する前に、オペレータが操作部10を操作し、コイルモードM1〜M3の中から被検体を撮影するときに使用するコイルモードを選択するための情報を入力する。この情報が入力されると、コイルモード選択手段80(
図41参照)は、操作部10から入力された情報に基づいて、コイルモードM1〜M3の中から、被検体を撮影するときに使用するコイルモードを選択する。ここでは、コイルモードM1が選択されたとする。コイルモードM1を選択した後、ステップST1に進む。
【0155】
ステップST1では、コイルモードM1を用いてローカライザスキャンLSを実行する。ローカライザスキャンLSを実行することにより、画像D(
図7参照)が取得される。ローカライザスキャンLSを実行した後、ステップST2に進む。
【0156】
ステップST2では、オペレータは、画像Dに基づいてスライスL1〜Ln(
図8参照)を設定する。スライスL1〜Lnを設定した後、ステップST3に進む。
【0157】
ステップST3では、本スキャンMSが実行される。
図43は、第3の形態における本スキャンMSの説明図である。
先ず、期間P
1において、シーケンスC1が実行される。シーケンスC1を実行することにより、スライスL1から、DC信号A
11とイメージング信号B
11とが収集される。
【0158】
第3の形態では、コイルモードM1が選択されているので、DC信号A
11およびイメージング信号B
11は、コイルモードM1のチャネルCH1〜CH4の各々で受信される。尚、
図43では、説明の便宜上、DC信号A
11がコイルモードM1のチャネルCH1〜CH4の各々で受信される様子のみが示されている。チャネルCH1〜CH4は、それぞれ信号A
11,1〜A
11,4を出力する。
【0159】
シーケンスC1を実行した後、シーケンスC2が実行される。シーケンスC2を実行することにより、スライスL2から、DC信号A
12とイメージング信号B
12とが収集される。
【0160】
DC信号A
12およびイメージング信号B
12は、コイルモードM1のチャネルCH1〜CH4の各々で受信される。尚、
図43では、説明の便宜上、DC信号A
12がコイルモードM1のチャネルCH1〜CH4の各々で受信される様子のみが示されている。チャネルCH1〜CH4は、それぞれ信号A
12,1〜A
12,4を出力する。
【0161】
以下同様に、スライスL3〜Lnの各々からDC信号およびイメージング信号を収集するためのシーケンスが実行される。そして、期間P
1の最後に、スライスLnのデータを収集するためのシーケンスCnが実行される。シーケンスCnを実行することにより、スライスLnから、DC信号A
1nとイメージング信号B
1nとが収集される。
【0162】
DC信号A
1nおよびイメージング信号B
1nは、コイルモードM1のチャネルCH1〜CH4の各々で受信される。尚、
図43では、説明の便宜上、DC信号A
1nがコイルモードM1のチャネルCH1〜CH4の各々で受信される様子のみが示されている。チャネルCH1〜CH4は、それぞれ信号A
1n,1〜A
1n,4を出力する。
【0163】
期間P
1においてシーケンスC1〜Cnを実行した後、以下のようにして呼吸信号を生成する。
【0164】
先ず、チャネル選択手段82(
図41参照)が、データベース(
図40参照)を参照する。そして、チャネル選択手段82は、データベースの項目cの情報に基づいて、コイルモードM1のチャネルCH1〜CH4の中から、肝臓の端部E1の近くに配置されるチャネルとして登録されているチャネルCH1およびCH2を選択する。
【0165】
次に、呼吸信号生成手段83(
図41参照)は、コイルモードM1のチャネルCH1〜CH4のうち選択されていないチャネルCH3およびCH4の出力信号は破棄し、選択されたチャネルCH1およびCH2の出力信号のみを合成(加算)する。これにより、合成信号A
1が得られる。
【0166】
合成信号A
1を取得した後、呼吸信号生成手段83は、合成信号A
1の積分値S
1を算出する。積分値S
1が、期間P
1における被検体の呼吸信号の信号値として使用される。
【0167】
以下同様に、期間P
2〜PmにおいてもシーケンスC1〜Cnが実行される。呼吸信号生成手段83は、チャネルCH3およびCH4の出力信号は破棄し、選択されたチャネルCH1およびCH2の出力信号のみを合成(加算)する。そして、合成信号の積分値を算出する。したがって、期間P
1〜Pmにおける呼吸信号を求めることができる。
【0168】
そして、第1の形態と同様に、期間P
1〜Pmの呼吸信号に基づいて、イメージング信号Bを受け入れる許容範囲AWを設定し(
図27参照)、呼吸信号が許容範囲AWに含まれていない場合はデータを再収集し、フローを終了する。
【0169】
第3の形態では、コイルモードごとに、肝臓の端部E1の近くに配置されるチャネルが対応付けられている(
図40参照)。したがって、どのコイルモードが使用されても、肝臓の動きを反映した良好な呼吸信号を生成することができる。
【0170】
(4)第4の形態
第4の形態では、第3の形態と同様に、コイル4がコイルモードM1〜M3を有する場合について説明する。ただし、第4の形態では、データベースにチャネルを登録せずに、第2の形態のプレスキャンPS(
図32参照)を用いてチャネルを選択する例について説明する。尚、コイル4以外のMR装置のハードウエア構成は、第1の形態(
図1参照)と同じである。
【0171】
図44は、第4の形態においてプロセッサが実行する処理の説明図である。
プロセッサ8は、メモリ9に記憶されているプログラムを読み出すことにより、コイルモード選択手段80〜判断手段84などを構成する。
【0172】
コイルモード選択手段80は、操作部10から入力された情報に基づいて、コイルモードM1〜M3の中から、撮影に使用するコイルモードを選択する。
スライス設定手段81は、操作部10から入力された情報に基づいて、スライスを設定する。
プロファイル作成手段811は、プレスキャンPSにより収集されたMR信号に基づいて、撮影部位のz方向における各位置と信号強度との関係を表すプロファイルを作成する。
チャネル選択手段82は、プロファイル作成手段811により作成されたプロファイルに基づいて、選択されたコイルモードが有するチャネルの中から、肝臓の端部E1(
図3参照)の近くに配置されるチャネルを選択する。
呼吸信号生成手段83は、チャネル選択手段82により選択されたチャネルの出力信号に基づいて、呼吸信号を生成する。
判断手段84は、イメージング信号を画像再構成の信号として受け入れるか否かを判断する。
【0173】
プロセッサ8は、コイルモード選択手段80〜判断手段84を構成する一例であり、所定のプログラムを実行することにより、これらの手段として機能する。
以下に、第4の形態におけるMR装置の動作フローについて説明する。
【0174】
図45は、第4の形態におけるMR装置の動作フローを示す図である。
ステップST0では、コイルモードが選択される。第4の形態でも、第3の形態と同様に、コイルモードM1が選択されたとする。コイルモードM1を選択した後、ステップST1に進む。
【0175】
ステップST1およびステップST2は第3の形態と同じであるので、詳しい説明は省略する。ステップST2においてスライスL1〜Ln(
図8参照)を設定した後、ステップST21に進む。
【0176】
ステップST21では、コイルモードM1を用いてプレスキャンPSが実行される。
図46はプレスキャンPSの説明図である。
プレスキャンPSでは、スライスL1〜Lnのうちのいずれか一枚のスライスのみが励起され、励起された一枚のスライスからDC信号A
0およびイメージング信号B
0を収集する。第2の形態では、スライスL1〜Lnのうちの中央のスライスLcを励起するとする。したがって、スライスLcからDC信号A
0とイメージング信号B
0とが収集される。
【0177】
第4の形態では、コイルモードM1が選択されているので、DC信号A
0およびイメージング信号B
0は、コイルモードM1のチャネルCH1〜CH4の各々で受信される。
図46では、説明の便宜上、イメージング信号B
0がコイルモードM1のチャネルCH1〜CH4の各々で受信される様子のみが示されている。尚、DC信号A
0およびイメージング信号B
0のうち、チャネルの選択に使用される信号はイメージング信号B
0であり、DC信号A
0はチャネルの選択には使用されない。
【0178】
チャネルCH1〜CH4がイメージング信号B
0を受信することにより、チャネルCH1〜CH4は、それぞれ信号B
01〜B
04を出力する。
プリスキャンPSを実行した後、ステップST22に進む。
【0179】
ステップST22では、プロファイル作成手段811(
図44参照)が、チャネルCH1〜CH8の出力信号B
01〜B
08の各々をz方向にフーリエ変換(FT:Fourier Transformation)する。これにより、
図47に示すように、プロファイルF1〜F4が作成される。
【0180】
プロファイルF1〜F4を作成したら、プロファイルごとに、積分値SbとSaの比を算出し、積分値の比を算出する。
図48に、プロファイルF1〜F4の比を、符号「J1」〜「J4」で示す。
【0181】
チャネル選択手段82(
図44参照)は、比J1〜J4を値の大きい順に並び替え、値の大きい順に2つの比を特定する。これにより、チャネルCH1〜CH4の中から、肝臓の端部E1の近くに配置されているチャネルCH1およびCH2を選択することができる。
チャネルを選択した後、ステップST3に進む。
【0182】
ステップST3では、本スキャンMSが実行される。第4の形態における本スキャンMSは、第3の形態における本スキャンMS(
図43参照)と同様の手順で実行される。
【0183】
第4の形態では、第3の形態と同様に、どのコイルモードが使用されても、肝臓の動きを反映した良好な呼吸信号を生成することができる。
【0184】
また、第4の形態では、プレスキャンPSを実行し、プレスキャンPSにより収集されたMR信号に基づいて、肝臓の端部E1の近くに配置されるチャネルを選択している。したがって、データベースに、撮影に使用するコイルモードごとにチャネルを登録しておく必要がないので、データベースのメンテナンスに掛かる負担を軽減することもできる。
【0185】
尚、第4の形態では、プレスキャンPSにおいて、スライスLcから磁気共鳴信号を収集し、各チャネルのプロファイルを作成している。しかし、スライスLcとは別のスライスから磁気共鳴信号を収集し、各チャネルのプロファイルを作成してもよい。また、複数のスライスから磁気共鳴信号を収集し、各チャネルのプロファイルを作成してもよい。更に、第4の形態では、プレスキャンPSは2Dスキャンであるが、3Dスキャンでもよい。
【0186】
また、第3および第4の形態では、オペレータが操作部10から入力した情報に基づいて、コイルモード選択手段80がコイルモードを選択している。しかし、オートコイルセレクション(Auto Coil Selection)の手法を用いて、コイルモード選択手段が自動でコイルモードを選択してもよい。
【0187】
第1〜第4の形態では、チャネルが受信した信号を加算することにより、合成信号を得ている。しかし、信号の合成は加算に限定されることはなく、例えば、信号を重付け加算することにより合成信号を得てもよいし、信号を乗算することにより合成信号を得てもよい。更に、第1〜第4の形態では、合成信号の積分値を呼吸信号の信号値として採用している。しかし、合成信号の積分値とは別の値(例えば、合成信号の最大値)を呼吸信号の信号値として用いてもよい。
【0188】
第1〜第4の形態では、k空間の中心のデータを表すDC信号に基づいて呼吸信号を作成している。しかし、DC信号とは別のMR信号に基づいて呼吸信号を生成してもよい。
【0189】
第1〜第4の形態では、本スキャンMSは2Dスキャンであるが、3Dスキャンでもよい。
【0190】
また、第1〜第4の形態では、呼吸信号を取得する例について示されている。しかし、本発明は呼吸信号の取得に限定されることはない。例えば、心臓を撮影する場合には、心臓の拍動の情報を含む生体信号を取得することができる。