(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6489816
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】反射型プロジェクタースクリーン
(51)【国際特許分類】
G03B 21/60 20140101AFI20190318BHJP
G02B 5/08 20060101ALI20190318BHJP
G02B 5/02 20060101ALI20190318BHJP
G02F 1/1335 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
G03B21/60
G02B5/08 A
G02B5/02 A
G02F1/1335
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-248580(P2014-248580)
(22)【出願日】2014年12月9日
(65)【公開番号】特開2016-109953(P2016-109953A)
(43)【公開日】2016年6月20日
【審査請求日】2017年11月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000077
【氏名又は名称】アキレス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】石黒 正
【審査官】
石本 努
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2013/182804(WO,A1)
【文献】
特開2011−175110(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/051002(WO,A1)
【文献】
特開2012−173449(JP,A)
【文献】
特開2014−153380(JP,A)
【文献】
特開2011−162032(JP,A)
【文献】
特開2006−221070(JP,A)
【文献】
特開平05−241242(JP,A)
【文献】
特開2009−258701(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B5/00−5/136
G02F1/1335
1/13363
G03B21/00−21/10
21/12−21/30
21/56−21/64
33/00−33/16
H04N5/66−5/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明な状態と、不透明な状態とを切り替えることができる反射型プロジェクタースクリーンであって、
前記反射型プロジェクタースクリーンは、プロジェクターの光源に対して高分子分散型液晶層よりも外側に透明反射膜が設けられると共に、以下1)で積層された積層体であり、
前記積層体の高分子分散型液晶層が不透明な状態の時、前記積層体の可視光領域(380〜780nm)における拡散反射率が20%以上であると共に、拡散反射率/相対反射率が0.6以上であることを特徴とする反射型プロジェクタースクリーン。
1)透明基材、透明電極、高分子分散型液晶層、透明電極、透明基材、透明反射膜の順で積層された積層体。
【請求項2】
前記積層体の高分子分散型液晶層が透明な状態の時、前記積層体のヘイズが20%以下であると共に、平行線透過率が50〜90%であることを特徴とする請求項1記載の反射型プロジェクタースクリーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射型プロジェクタースクリーンに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルサイネージ技術の発達に伴い、例えばショーウィンドウにプロジェクターを用いて映像を投影し、広告として表示することが多くなった。また、自動車のインパネ表示やカーナビ表示を、フロントガラスの一部に映し出す方法(ヘッドアップディスプレイ技術)などが検討・実用化されるようになってきた。
【0003】
そして、一般的に、プロジェクターを用いて映像を投影する対象物として、背景と映像を重ね合わせてみることができる透明のスクリーンフィルムが用いられている。
ところが、背景と映像を重ね合わせた形での表示は必ずしも必要でなく、時には背景が映像の表示を見難くする場合があり、その場合には、透明のスクリーンフィルムでは問題があった。更に、透明のスクリーンフィルムは、透明性においても通常の透明ガラスに比べると、ヘイズが大きく劣るものであった。
【0004】
そこで、高分子分散型液晶(PDLC=Polymer dispersed Liquid Crystal)層を用いたプロジェクター用のスクリーンが提案されている。
この高分子分散液晶は、例えば特許文献1に記載されているように、通常、不透明(白色を含む)な状態であるが、電気エネルギーを与えることにより液晶が一定方向へ配向し、高分子分散型液晶の光透過性を変化させ、結果、透明な状態に切り替えることができるものである。
従って、プロジェクター用のスクリーンとして利用しないときは、電気エネルギーを与える、即ち通電させることにより透明な状態とし、背景を鮮明にみることができ、一方でプロジェクター用のスクリーンとして使用するときは、電気エネルギーを与えず、即ち通電を切ることにより不透明な状態とし、背景が見えなくなり、プロジェクターによる映像を鮮明に投影することができるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平08−292409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、高分子分散型液晶は、投影型のプロジェクタースクリーン、即ちプロジェクターと映像を見る人がスクリーンを挟んで反対側に位置する場合、映像の鮮明性が損なわれないが、反射型のプロジェクタースクリーン、即ちプロジェクターと映像を見る人が同じ側に位置する場合、映像の鮮明性が得られ難い問題があった。
【0007】
その上、省スペース化や室内での利用を考えると、反射型のプロジェクタースクリーンが望まれている。
【0008】
そこで、本発明は、プロジェクターにより投影される映像を鮮明に見ることができると共に、映像を投影しない場合は、透明性が高い反射型のプロジェクタースクリーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1記載の反射型プロジェクタースクリーンは、透明な状態と、不透明な状態とを切り替えることができる反射型プロジェクタースクリーンであって、前記反射型プロジェクタースクリーンは、プロジェクターの光源に対して高分子分散型液晶層よりも外側に透明反射膜が設けられると共に、以下1)〜3)のいずれかで積層された積層体のいずれかであることを特徴とする。
1)透明基材、透明電極、高分子分散型液晶層、透明電極、透明基材、透明反射膜の順で積層されてなる積層体、
2)透明基材、透明電極、高分子分散型液晶層、透明電極、透明反射膜、透明基材の順で積層されてなる積層体、
3)透明基材、透明電極、高分子分散型液晶層、透明反射膜(電極)、透明基材の順で積層されてなる積層体。
【発明の効果】
【0010】
反射型プロジェクタースクリーンは、プロジェクターにより投影される映像を鮮明に見ることができると共に、映像を投影しない場合は透明性に優れるものである。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の反射型プロジェクタースクリーンにおける積層体1)の説明図。
【
図2】本発明の反射型プロジェクタースクリーンにおける積層体2)の説明図。
【
図3】本発明の反射型プロジェクタースクリーンにおける積層体3)の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の反射型プロジェクタースクリーンは、透明な状態と、不透明な状態とを切り替えることができる反射型プロジェクタースクリーンであって、前記反射型プロジェクタースクリーンは、プロジェクターの光源に対して高分子分散型液晶層よりも外側に透明反射膜が設けられると共に、以下1)〜3)のいずれかで積層された積層体のいずれかであることを特徴とする。
1)透明基材、透明電極、高分子分散型液晶層、透明電極、透明基材、透明反射膜の順で積層されてなる積層体、
2)透明基材、透明電極、高分子分散型液晶層、透明電極、透明反射膜、透明基材の順で積層されてなる積層体、
3)透明基材、透明電極、高分子分散型液晶層、透明反射膜(電極)、透明基材の順で積層されてなる積層体。
なお、本発明の反射型プロジェクタースクリーンは、
図1〜
図3のいずれかで積層された積層体であり、図示しないが各図面における「左側」にプロジェクターの光源が位置するものであり、その結果、プロジェクターの光源に対して高分子分散型液晶層よりも外側に透明反射膜が設けられるものである。
【0013】
[反射型プロジェクタースクリーン(積層体)]
本発明の反射型プロジェクタースクリーンは、透明な状態と、不透明な状態とを切り替えることができるものである。
そして、ここでいう「透明な状態」とは、平行線透過率が50〜90%であり、かつヘイズが20%以下である状態。
また、ここでいう「不透明な状態」とは、平行線透過率が50%未満であり、かつヘイズが20%を超える状態。
【0014】
[高分子分散型液晶層]
本発明の高分子分散型液晶層は、電気エネルギーを与えたり、与えなかったりすることで、反射型プロジェクタースクリーンを透明な状態や、不透明な状態に切り替えることができるものである。
【0015】
そして、高分子分散型液晶層を構成するものとしては、液晶分子がカプセル化されたものが透明高分子マトリックス中に均一分散されたものや、網目状の透明高分子マトリックス中に液晶分子が保持されたものが挙げられる。
【0016】
[透明基材]
透明基材としては、充分な透明性があり、透明電極との接着が充分できるものであればよく、例えばポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム、ポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂系、ポリカーボネート系樹脂のフィルムなどの樹脂フィルム、或いは透明なガラスが挙げられるが、ポリエチレンテレフタレートフィルムが、透明性に優れ、成形性、接着性、加工性等に優れるので好ましい。また、この透明基材の厚みは、12〜200μmが好ましい。
【0017】
[透明電極]
透明電極としては、表面抵抗値が10
4Ω/□以下であればよく、例えばインジウム錫オキサイド(ITO)、SnO
2、NiO、In
2O
3、Agナノワイヤー等の導電材が使用され、導電材を粒子状にして塗料化したものを透明基材の全面に塗工して形成した層でもよいし、或いは、銀ペーストや金属めっきにより、導電材をメッシュパターン状に形成した層でもよい。また、ポリピロール、ポリアニリン、ポリチオフェン等の導電性高分子を透明電極として使用してもよく、例えば透明基材上に導電性高分子を重合させた層を透明電極として使用してもよいし、或いは導電性高分子微粒子にバインダーを混合させた塗料を透明基材の全面に塗工して形成した層を透明電極として使用してもよい。
なお、後述する透明反射膜を透明電極として使用することもできる。
【0018】
また、透明基材と透明電極からなる透明電極基材としては、透過率が50%以上であり、表面抵抗値が10
4Ω/□以下のものが好ましい。透過率が50%未満であると、反射型プロジェクタースクリーンが透明時の透明性が低くなり、視認性が低下する。また、表面抵抗値が10
4Ω/□を超えると、高分子分散型液晶層に電気エネルルギーを与え難くなり、高分子分散型液晶層の光透過性を変化させ難くなる。
【0019】
[透明反射膜]
本発明の透明反射膜は、プロジェクターから投影された映像が、高分子分散型液晶層を透過してきたものを反射させ、結果、反射型のプロジェクタースクリーン、即ちプロジェクターと映像を見る人が同じ側に位置しても、映像の鮮明性を確保することができるものである。従って、プロジェクターの光源に対して高分子分散型液晶層よりも外側に透明反射膜が設けられ、具体的には、以下1)〜3)のいずれかで積層された積層体における各位置に設けられるものである。
1)透明基材、透明電極、高分子分散型液晶層、透明電極、透明基材、透明反射膜の順で積層されてなる積層体、
2)透明基材、透明電極、高分子分散型液晶層、透明電極、透明反射膜、透明基材の順で積層されてなる積層体、
3)透明基材、透明電極、高分子分散型液晶層、透明反射膜(電極)、透明基材の順で積層されてなる積層体。なお、上記3)における透明反射膜は、電極としても作用するものである。
【0020】
そして、透明反射膜を構成するものとしては、例えばAg、Al、In、Snなどの金属からなる薄膜、或いは、ZnO、ITOなどの金属酸化物からなる薄膜が挙げられる。
【0021】
[積層体]
また、本発明の積層体における高分子分散型液晶層が不透明の時、可視光領域(380〜780nm)における拡散反射率が20%以上であると共に、拡散反射率/相対反射率が0.6以上であることが好ましい。該拡散反射率が20%未満であると、鮮明な画像が得られない場合がある。該拡散反射率/相対反射率が0.6未満であると、鮮明な画像が得られない場合がある。
なお、ここでいう拡散反射率と相対反射率は、分光光度計を用いて測定された値である。そして、それぞれ測定された拡散反射率と相対反射率の値を、拡散反射率を相対反射率で割って算出した値が拡散反射率/相対反射率である。
【実施例】
【0022】
(実施例1)
透明基材、透明電極、高分子分散型液晶層、透明電極、透明基材の順で積層されたフィルム(日本板硝子社製のUMUフィルム)に、透明接着シート(リンテック社製のLAGマウント−E334ZC)を介して、透明反射膜(東レ社製のPICASUS−100GL30:全光線透過率65%)を積層させた積層体からなる反射型プロジェクタースクリーン得た。
なお、反射型プロジェクタースクリーンとして使用する場合、プロジェクターの光源に対して高分子分散型液晶層よりも外側に透明反射膜が設けられた状態で使用する。
【0023】
(実施例2)
透明反射膜(東レ社製のPICASUS−100GT30:全光線透過率85%)を用いた以外は実施例1と同じ方法により、反射型プロジェクタースクリーン得た。
【0024】
(比較例1)
透明基材、透明電極、高分子分散型液晶層、透明電極、透明基材の順で積層されたフィルム(日本板硝子社製のUMUフィルム)のみを反射型プロジェクタースクリーンとした。
【0025】
(比較例2)
透明反射膜(東レ社製のPICASUS−100GL30:全光線透過率65%) のみを反射型プロジェクタースクリーンとした。
【0026】
(比較例3)
透明基材、透明電極、高分子分散型液晶層、透明電極、透明基材の順で積層されたフィルム(日本板硝子社製のUMUフィルム)に、透明接着シート(リンテック社製のLAGマウント−E334ZC)を介して、透明反射膜(東レ社製のPICASUS−100GL30:全光線透過率65%)を積層させた積層体からなる反射型プロジェクタースクリーン得た。
なお、反射型プロジェクタースクリーンとして使用する場合、プロジェクターの光源に対して高分子分散型液晶層よりも内側に透明反射膜が設けられた状態で使用する。
【0027】
得られた実施例1〜2および比較例1〜3の各反射型プロジェクタースクリーンについて、「不透明時のプロジェクタースクリーン」の評価として、(1)拡散反射率、(2)拡散反射率/相対反射率、(3)画像鮮明性の評価を行い、「透明時のプロジェクタースクリーン」の評価として、(4)平行線透過率、(5)ヘイズの評価を行い、結果を表1に示した。なお、評価方法と評価基準は以下の通りである。
【0028】
(1)拡散反射率
得られた各反射型プロジェクタースクリーンについて、分光光度計(島津製作所社製のUV−3600)を用いて拡散反射率の測定を行った。
なお、実施例1〜2の各反射型プロジェクタースクリーンは、この分光光度計の光に対して高分子分散型液晶層よりも外側に透明反射膜が設けられた状態で測定を行った。また、比較例3の反射型プロジェクタースクリーンは、この分光光度計の光に対して高分子分散型液晶層よりも内側に透明反射膜が設けられた状態で測定を行った。
【0029】
(2)拡散反射率/相対反射率
先ず、得られた各反射型プロジェクタースクリーンについて、分光光度計(島津製作所社製のUV−3600:入射角8°)を用いて相対反射率の測定を行った。
なお、実施例1〜2の各反射型プロジェクタースクリーンは、この分光光度計の光に対して高分子分散型液晶層よりも外側に透明反射膜が設けられた状態で測定を行った。また、比較例3の反射型プロジェクタースクリーンは、この分光光度計の光に対して高分子分散型液晶層よりも内側に透明反射膜が設けられた状態で測定を行った。
続いて、上記1)で得られた拡散反射率を相対反射率で割って、すなわち拡散反射率/相対反射率で算出した。
【0030】
(3)画像鮮明性
得られた反射型プロジェクタースクリーンと、白色スクリーン(NEC社製のNPOISN)を隣り合わせに設置し、目視にて評価した。
○:試験者10人中、6人以上が反射型プロジェクタースクリーンと白色スクリーンの見た目が同等であった。
×:試験者10人中、5人以上が反射型プロジェクタースクリーンと白色スクリーンの見た目が同等ではなかった。
【0031】
(4)平行線透過率
得られた反射型プロジェクタースクリーンについて、JIS K 7105に基づき平行線透過率を測定した。
【0032】
(5)ヘイズ
得られた反射型プロジェクタースクリーンについて、JIS K 7105に基づきヘイズメーターを用いて測定した。
【0033】
【表1】