(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6489828
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】空洞充填材
(51)【国際特許分類】
C04B 28/02 20060101AFI20190318BHJP
C04B 14/10 20060101ALI20190318BHJP
C04B 22/10 20060101ALI20190318BHJP
C04B 22/16 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
C04B28/02
C04B14/10 Z
C04B22/10
C04B22/16 A
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-266545(P2014-266545)
(22)【出願日】2014年12月26日
(65)【公開番号】特開2016-124737(P2016-124737A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】501173461
【氏名又は名称】太平洋マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 雅朗
(72)【発明者】
【氏名】福山 誠
【審査官】
手島 理
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−049590(JP,A)
【文献】
特許第5614867(JP,B1)
【文献】
特開2010−112024(JP,A)
【文献】
特開2014−091665(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 28/02
B28C 7/04
C04B 14/10
C04B 22/10
C04B 22/16
E02D 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セメント100質量部とスメクタイトを有効成分とする粘土鉱物10〜50質量部の混合物の水性スラリーであって、NEXCO試験法313−1999のシリンダー法フロー値が250〜600mmの水性スラリー1リットルに、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩及び燐酸塩の群から選ばれる1種以上5〜20gを添加することを特徴とする空洞充填材の製造方法。
【請求項2】
水性スラリーが、NEXCO試験法313−1999のシリンダー法フロー値が450〜600mmの水性スラリーであって、高流動性であることを特徴とする請求項1記載の空洞充填材の製造方法。
【請求項3】
水性スラリーが、NEXCO試験法313−1999のシリンダー法フロー値が250〜450mmの水性スラリーであって、可塑性であることを特徴とする請求項1記載の空洞充填材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地下などに生じた空洞を充填するための空洞充填材に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば構造物中の空洞や地下空間などを充填するための空洞充填材として、強度や耐久性を要するものに、硬化成分としてセメントを含むセメントグラウト系空洞充填材が広く使用されている。セメントグラウト系空洞充填材は、充填作業性を高めるため、流動性のある水性スラリーの状態で充填される。このようなスラリーを空洞内に充満充填しても、短時間に、スラリーを構成する水分と粒子状物質とが分離し、水分が充填物上部に偏在し、ブリーディング水が発生する。硬化乾燥に伴い、このブリーディング水が消失すると、その部分が空洞内で隙間となって空く。ベントナイトなどの層状構造を持つスメクタイト系粘土鉱物を併用すると、ブリーディング水を含め反応残水を良く吸収し、吸収した水分を層状構造の層間内に保持して体積が膨潤するため、充填空洞内での隙間形成を回避できる。(例えば、特許文献1参照。)一方で、スメクタイト系粘土鉱物は、その層状構造内に水分を保持した状態で産出される。工業用に市販されているスメクタイト系粘土鉱物は適度に乾燥処理されているが、例えば、膨潤性が高い粘土鉱物のベントナイトでは、通常市販されているもので凡そ10%の層間水を含有する。このため、混練水を加える前でも、セメントとベントナイトを予混合すると、ベントナイト中の含水が漏出する。この水によってセメントからカルシウムイオンが溶出し、このイオンがベントナイトの層状構造内の層間に優先的に捉えられるため、吸水性が阻害される。吸水性低下を防ぐため、実施工に際し、セメントの水性スラリーとベントナイトの水性スラリーを別個に作製し、水和反応時間を勘案した上で充填時に混合するという手間のかかる方法か、セメントとベントナイトを予混合する際に、併せて炭酸ナトリウムを加えて混合し、カルシウムイオンの吸収を抑制させたベントナイト(例えば、特許文献2参照。)にすることで対応されてきた。
【0003】
しかるに、これらの方策で得たセメントベントナイト系グラウトも、セメントとベントナイトの予混合から充填されるまでの時間が経過するに連れ、次第に膨潤力と流動性が低下する。膨潤力が低下した状態の前記グラウトを空洞充填材に使用すると、材料分離によるブリーディング水を十分吸収できず、膨潤量も小さくなるため、満杯に空洞充填しても、乾燥に伴い隙間ができる虞があり、材料分離が解消されないまま硬化すると不均質な硬化組織となって耐久劣化の原因となる。また、流動性が低下し過ぎると充填すら十分に行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−9123号公報
【特許文献2】特開2003−119062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、セメントとベントナイトを主成分とする空洞充填材であって、容易に製造でき、セメントとベントナイトの混合物作製から充填使用までに時間が経過しても、充填後のブリーディング水の発生を実質抑止でき、充填空間内に再度空洞が生じることのない空洞充填材の提供を課題とする。また、経時的要因等でセメントとベントナイトを有効成分とする空洞充填材の膨潤性が劣化しても、充填後の空間内に隙間が生じない状態にまで膨潤性を回復できる簡易な空洞充填材の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題解決のため検討した結果、セメントとベントナイトと水を含有してなる水性スラリーに、特定のアルカリ金属無機塩を添加混合した空洞充填材が前記課題を解決できることを見いだした。また、セメントとベントナイトの混合作製から時間が経過し、膨潤性が劣化したセメントとベントナイトを主成分とする混合物の水性スラリーに対し、特定の流動状態となった段階で特定のアルカリ金属無機塩を添加することで、所望の膨潤性を容易に付与することができたことから本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明は、次の(1)〜
(3)で表す空洞充填材の製造方法である。
(1)セメント100質量部とスメクタイトを有効成分とする粘土鉱物10〜50質量部の混合物の水性スラリーであって、NEXCO試験法313−1999のシリンダー法フロー値が250〜600mmの水性スラリー1リットルに、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩及び燐酸塩の群から選ばれる1種以上
5〜20gを添加することを特徴とする空洞充填材の製造方法。
(2)水性スラリーが、NEXCO試験法313−1999のシリンダー法フロー値が250〜450mmの水性スラリーであって、高流動性であることを特徴とする前記
(1)の空洞充填材の製造方法。
(3)水性スラリーが、NEXCO試験法313−1999のシリンダー法フロー値が120〜250mmの水性スラリーであって、可塑性であることを特徴とする前記
(1)の空洞充填材の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、充填能力や充填作業性の経時劣化が実質見られないセメントグラウト系の空洞充填材が比較的簡易に得られる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の空洞充填材に使用するセメントは、水硬性のセメントなら特に限定されない。具体的には、例えば、普通、早強、超早強、中庸熱、低発熱等の各種ポルトランドセメント、またポルトランドセメントにフライアッシュ、高炉スラグ、シリカフューム等を混和させた混合セメント等を使用することができる。この中では比較的安価且つ安定して入手できること等の利点から普通ボルトランドセメントが好ましい。
【0010】
また、本発明の空洞充填材に使用するスメクタイトを有効成分とする粘土鉱物は、特に限定されない。好ましくは膨潤力の高いもの、例えば常温で20ml/2g以上のものを用いる。スメクタイトは水を加えると粘性を高める作用があり、その程度は膨潤力で表される。膨潤力は、水の入ったメスシリンダーに2gの粘土鉱物を10回に分け入れて膨潤させ、その膨潤した粘土の体積を計ることで決定される。この値が大きいほど、膨潤性も大きくなる。本発明で使用する粘土鉱物の有効成分であるスメクタイトの膨潤力は、20ml/2g以上が好ましい。膨潤力が20ml/2g未満のものではセメント中のカルシウムイオンの優先的吸着によって水が吸収保持される割合が低下し、膨潤が阻害され、材料分離抵抗性を高め難くなるので適当ではない。膨潤力が20ml/2g以上得られるようなスメクタイトは、例えば、モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、ノントライト、サボライト、ソーコナイトおよびスチブンサイトから選ばれる1種又は2種以上の混合物を挙げることができるが、記載例に限定されない。好ましくは、高い膨潤力が安定して得られることからベントナイトを使用する。より好ましくは、より高い膨潤力が安定して得られるためナトリウム型ベントナイトを使用する。スメクタイトを有効成分とする粘土鉱物の含有量は、セメント含有量100質量部に対し、10〜50質量部とする。10質量部未満では充填後に水が分離し易くなり、乾燥・硬化が進むと充填箇所の上部に隙間が生じる虞があるので好ましくない。また、50質量部を超えると、流動性が低下して充填性が阻害されるので、好ましくない。
【0011】
また、本発明の空洞充填材は、主としてセメントの水和と充填作業性確保のために水を含有する。水を含有させる際は、前記セメントと前記スメクタイトを有効成分とする粘土鉱物を混合した混合物に対し、水を添加し、水性スラリー化するのが望ましい。前記水性スラリー中の水の質量(W)は、前記セメントと前記スメクタイトを有効成分とする粘土鉱物からなる混合物の質量(M)との質量比(W/M)で1〜2.5となる関係を満たすものとする。質量比(W/M)が1未満では流動性が低下し過ぎて充填性が阻害される虞があるので好ましくない。また、質量比(W/M)が2.5を超えると材料分離を生じ易く、拡大する虞があるので好ましくない。尚、スメクタイトを有効成分とする粘土鉱物は天然のままの場合、その層状構造中に水分を含むが、使用に際しては特に強制乾燥等は必要とせず、また前記の添加する水の量(W)は、層状用構造中に予め含まれる水分量は考慮せずに定める。一方、前記のセメントとスメクタイトを有効成分とする粘土鉱物を含有する混合物の質量(W)を求めるに際しては、層状用構造中に予め含まれる水分量を加味した粘土鉱物の質量を使用する。
【0012】
また、前記水性スラリーには、前記のセメントとスメクタイトを有効成分とする粘土鉱物と水以外の混和成分も本発明の効果を実質喪失させない範囲で、含有使用が許容される。このような混和成分として、例えば、何れもモルタルやコンクリートに使用できる減水剤類(高性能減水剤、高性能AE減水剤又は分散剤或いは流動化剤と称されているものを含む。)、空気連行剤、発泡剤、起泡剤、凝結調整剤、硬化促進剤、乾燥収縮低減剤、増粘剤、石炭灰、消泡剤等を挙げることができる。この中でも、増粘剤を含有させたものが好ましい。増粘剤の含有により、充填対象箇所に水分が存在しても、殆ど希釈されずに均質な空洞充填材を充填できる他、特に可塑性を付与する際にも有用である。使用する増粘剤は特に限定されないが、例えば水溶性セルロース誘導体を挙げることができる。また、増粘剤に加えて石炭灰を併用すると、増粘剤で低下した流動性を回復し易くなる他、粘土鉱物の凝集化も抑制できるためより好ましい。また、発泡剤や起泡剤を含有させると充填箇所の天井面と空洞充填材とを、乾燥硬化後も完全に密着できる可能性が高いので好ましい。上記混和成分を使用するときは、使用成分毎に予め予備試験等で適当な含有範囲を定めておくことが推奨される。
【0013】
本発明の空洞充填材は、前記の水性スラリー1リットルと、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩及び燐酸塩の群から選ばれる1種以上1〜20gとを含有するものである。アルカリ金属としては、カリウム、ナトリウム、リチウムが挙げられ、その何れでも良い。かかるアルカリ金属無機塩の含有によって、ベントナイトの膨潤性が増大し、ブリーディング水が見られないようになる。また、水性スラリー作製後の膨潤性の経時劣化を抑制し、しかも低下した膨潤能力を再度高めることができる。アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩及び燐酸塩の群から選ばれる1種以上の含有量が1g未満ではベントナイトの膨潤性の経時劣化が進みやすくなるので好ましくない。20gを超えると、これ以上膨潤性の向上は見られず、原料コストが上昇するだけなので好ましくない。
【0014】
また、本発明の空洞充填材は、NEXCO試験法313−1999のシリンダー法フロー値が300mm以上、好ましくは300〜500mmであって、高流動性の空洞充填材である。高流動性の空洞充填材とすることで、充填対象の空洞(空間)が複雑な形状であっても、均一に隙間無く充填することが容易に行える。このような高流動性の空洞充填材を得る方法は、特に限定されないが、好適な一例を示すと、前記の水性スラリーのNEXCO試験法313−1999のシリンダー法フロー値が概ね450〜600mmとなるよう含水量の増減や減水剤類の添加等で調整し、このような水性スラリー1リットルと前記のアルカリ金属無機塩を添加混合することで容易に得ることができる。
【0015】
また、本発明の空洞充填材は、NEXCO試験法313−1999のシリンダー法フロー値が120〜250mmであって、可塑性の空洞充填材である。可塑性又は可塑状の空洞充填材とすることで、充填対象の空洞(空間)に隣接してひび割れ等の細かい隙間が存在しても、充填施工時に充填材が前記隙間に逸脱するのをかなり防ぐことができる。このような可塑性の空洞充填材を得る方法は、特に限定されないが、好適な一例を示すと、前記の水性スラリーのNEXCO試験法313−1999のシリンダー法フロー値が概ね250〜450mmとなるよう含水量の増減や増粘剤の添加等で調整し、このような水性スラリー1リットルと前記のアルカリ金属無機塩を混合させることで容易に得ることができる。
【0016】
また、本発明の空洞充填材の製造方法は、次の通りである。即ち、前記セメント100質量部と前記スメクタイトを有効成分とする粘土鉱物10〜50質量部を、例えば市販の混合装置を使用して混合する。この混合物に対しては、少なくともアルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩及び燐酸塩の群から選ばれる1種以上を加えずに、混合物100質量部に対し、水100〜250質量部を添加して混練する。水を添加する際は、必要に応じて例えば減水剤類や増粘剤等の混和成分も加える。水の添加量の調整や混和成分添加等によって、NEXCO試験法313−1999のシリンダー法フロー値を250〜600mmにした水性スラリーを作製する。次いで、このフロー値の水性スラリー1リットルに、例えば炭酸ナトリウム等のアルカリ金属の炭酸塩、例えば重曹等のアルカリ金属の炭酸水素塩及び例えば燐酸ナトリウム等の燐酸塩の群から選ばれる1種以上1〜20gを添加し、混合することで空洞充填材を製造できる。
【0017】
好ましくは、前記の高流動性の空洞充填材を製造するには、前記の水性スラリーのNEXCO試験法313−1999のシリンダー法フロー値を概ね450〜600mmに調整し、次いで、このフロー値の水性スラリー1リットルに、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩及び燐酸塩の群から選ばれる1種以上1〜20gを添加し、NEXCO試験法313−1999のシリンダー法フロー値が300mm以上、好ましくは300〜500mmにする。水性スラリーのシリンダー法のフロー値の調整方法は、限定されないが、例えば添加水量の調整や石炭灰等の前記混和成分を適宜加えることで容易に行える。
【0018】
また、好ましくは、前記の可塑性の空洞充填材を製造するには、前記の水性スラリーのNEXCO試験法313−1999のシリンダー法フロー値を概ね250〜450mmに調整し、次いで、このフロー値の水性スラリー1リットルに、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩及び燐酸塩の群から選ばれる1種以上1〜20gを添加し、NEXCO試験法313−1999のシリンダー法フロー値が120〜250mmになるようにする。水性スラリーのNEXCO試験法313−1999のシリンダー法フロー値の調整方法は、限定されないが、例えば、添加水量や増減や増粘剤等の混和成分を適宜加えたりすることで対応できる他、水添加前のセメントスメクタイト混合物を作製から静置することでもその時間に応じて水添加後のフロー値が低下する傾向があるので、この傾向を予備実験棟で把握し、利用しても良い。
【0019】
また、本発明の空洞充填材は、前記水性スラリーが、製造時からの時間経過により、膨潤性や流動性の大きな低下があっても、NEXCO試験法313−1999のシリンダー法フロー値を概ね600mm以下にすれば、この水性スラリー1リットルに対しアルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩及び燐酸塩の群から選ばれる1種以上1〜20gを添加することで、低下した膨潤性を少なくともブリーディング水が実質見られないような状態にまで高めることができる。水性スラリーの経時低下した流動性を回復するには、例えば、アルカリ金属の炭酸塩、炭酸水素塩及び燐酸塩の群から選ばれる1種以上を添加することで低下した流動性を、容易に充填可能な充填作業に適した状態にまで回復させることができる。
【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明は記載した実施例に限定されるものではない。尚、以下の実施例は、特記無い限り20℃(±2℃)の環境下で行った。
【0021】
[セメント−粘土鉱物系の混合物の作製]
次の市販材料を用い、表1で表す配合の混合物を市販のモルタル攪拌器を使用して作製した。作製した混合物は密封容器に入れ常温で所定期間保管した。
・普通ポルトランドセメント(以下、普通セメントと記す。)
・ベントナイト(ナトリウム型、膨潤力21ml/2g)
・炭酸水素ナトリウム(試薬一級)
・炭酸ナトリウム(試薬一級)
・硫酸ナトリウム(試薬一級)
・塩化ナトリウム(試薬一級)
・燐酸カリウム(試薬一級)
・水溶性ヒドロキシプロピルメチルセルロース
・JISフライアッシュII種
【0022】
【表1】
【0023】
[水性スラリーの作製]
前記混合物1kgに対し、表2で表す量の水を添加し、ハンドミキサで約2分間混ぜ、水性スラリーを作製した。混合物作製から7日経過時点と91日経過時点で作製した水性スラリーの各々について、NEXCO試験方法の試験法313−1999、エアモルタル及びエアミルクの試験方法のコンシステンシー試験方法のシリンダー法に準拠じた方法でフロー値の測定を行った。その結果も表2に併せて記す。
【0024】
【表2】
【0025】
[空洞充填材とその評価]
前記混合物作製から91日経過時点で水を添加して作製した水性スラリー1リットルに対し、表3で表す量のアルカリ金属無機塩を添加し、再度ハンドミキサで約1分間混練し、空洞充填材を作製した。この空洞充填材に対し、前記と同様の方法で、NEXCO試験法313−1999のシリンダー法フロー値の測定を行った。また、前記空洞充填材のブリーディング率を、土木学会基準JSCE−F522−1999で規定されるポリエチレン袋を使用し、空洞充填材を標線まで投入し、密封して24時間後の浮き水量を計測することで、算出した。以上の結果は表3に纏めて表す。
【0026】
【表3】
【0027】
[空洞充填材の可塑性の評価]
前記作製した空洞充填材に対し、以下の方法でその可塑性の有無を評価した。ここで、可塑性は流動性が殆ど無い状態のものが加圧により流動性を生じるものであるが、本発明では、NEXCO試験法313−1999のシリンダー法フロー値が250mm未満のものを可塑性が「有」とし、前記フロー値が250mm以上のものを可塑性が「無」と判断した。
この結果を表3に併せて表す。
【0028】
[空洞充填材の高流動性の評価]
前記作製した空洞充填材に対し、作製直後から30分間NEXCO試験法313−1999のシリンダー法フロー値が450mm以上であり続けたものを高流動性が「有」と判断し、この間に450mm未満となったものを高流動性が「無」と判断した。この結果も表3に併せて表す。
【0029】
[従来技術による空洞充填材とその評価]
何れも前記と同様の材料である普通セメント100重量部、ベントナイト40質量部及び炭酸ナトリウム1質量部をヘンシェルミキサに一括投入し、約1分間混合して混合物を作製した。作成直後の混合物又は作製から91日放置した混合物100グラムに対し、水120グラムを加え、約1分混練してスラリー状の空洞充填材を作製した。混練直後の空洞充填材に対し、前記と同様の方法で、NEXCO試験法313−1999のシリンダー法フロー値の測定を行った。また、ブリーディング率も前記と同様の方法で算出した。以上の結果を表4に表す。
【0030】
【表4】
【0031】
表3の結果より、本発明の空洞充填材は、何れも流動性を具備するものの、高流動性のものを含め、ブリーディング率が著しく低く、材料分離を十分抑制できていることがわかる。また、ブリーディング率の増加によりこれと関連づけられる膨潤性の経時劣化が見られるベントナイトと普通セメントと水飲みからなる水性スラリー(従来技術による空洞充填材に相当。)に対しても、本発明を適用したもの、即ち、アルカリ金属炭酸塩等を当該水性スラリーに添加したものは、ブリーディング率が改善したことから膨潤性の経時劣化を回復できる可能性が示唆される。