特許第6489831号(P6489831)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6489831波長変換体及びその製造方法並びに当該波長変換体を用いた照明装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6489831
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】波長変換体及びその製造方法並びに当該波長変換体を用いた照明装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/20 20060101AFI20190318BHJP
   F21V 13/08 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   G02B5/20
   F21V13/08
【請求項の数】6
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-1444(P2015-1444)
(22)【出願日】2015年1月7日
(65)【公開番号】特開2016-127199(P2016-127199A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002303
【氏名又は名称】スタンレー電気株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】特許業務法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】原田 光範
【審査官】 井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−222238(JP,A)
【文献】 特開2013−102078(JP,A)
【文献】 特表2010−506402(JP,A)
【文献】 米国特許第9797577(US,B2)
【文献】 米国特許出願公開第2009/0101930(US,A1)
【文献】 米国特許第5956382(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/20−5/28
F21V 1/00−15/04
F21K 9/00−9/90
F21S 2/00−45/70
H01S 5/00−5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1の面を有する透光性基板と、
前記透光性基板の前記1の面上に設けられた波長変換層と、
を有する波長変換体であって、
前記波長変換層は、前記波長変換層の上面から前記透光性基板に向かって延在する格子状の界面によってマトリクス状の複数の波長変換部に区画されており、
前記複数の波長変換部のうちの隣り合う波長変換部は界面を介して互いに接しており、前記界面は前記波長変換層内部で終端しており、前記複数の波長変換部の各々の間には前記終端から前記透光性基板に至る空隙が形成されており、
前記空隙は前記透光性基板に向けて広がっており、
前記透光性基板は、前記1の面に形成されて前記空隙と共に空間を形成する溝部を有していることを特徴とする波長変換体。
【請求項2】
前記透光性基板と前記複数の波長変換部との間に設けられた光学機能層を有することを特徴とする請求項1に記載の波長変換体。
【請求項3】
前記光学機能層は波長選択フィルターであることを特徴とする請求項2に記載の波長変換体。
【請求項4】
前記光学機能層は光反射層であることを特徴とする請求項2または3に記載の波長変換体。
【請求項5】
透光性基板の一方の面に格子状の溝部を形成する工程と、
前記透光性基板の前記一方の面上に蛍光体を含有する半硬化した樹脂からなる蛍光体シートを貼付する工程と、
前記蛍光体シートを前記蛍光体シートの表面から前記格子状溝部に刃物を押し込み、前記刃物を、前記刃物を押し込んだ経路と同一の経路に沿って抜き取ることによって前記格子状溝部に沿って切断する工程と、
前記樹脂を全硬化する工程と、
を含むことを特徴とする波長変換体の製造方法。
【請求項6】
レーザ発光素子と、
前記レーザ発光素子の光出射方向に配され、前記レーザ発光素子からの出射光を反射する反射デバイスと、
前記反射デバイスを駆動する駆動部と、
請求項1に記載の波長変換体と、
を含む照明装置であって、
前記駆動部は、前記反射デバイスからの反射光が前記波長変換体の複数の波長変換部の各々を走査するように前記反射デバイスを駆動することを特徴とする照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換体及びその製造方法並びに当該波長変換体を用いた照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の発光ブロックに分割された波長変換部材にレーザ光を走査することによって、所望の領域に向けて光を照射する照明装置が用いられている。特許文献1には、励起光を出射する固体光源と、当該励起光によって励起される蛍光体プレートと、を備え、当該蛍光体プレートが仕切り部材によって複数の領域に分けられている光源装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−102078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているような光源装置では、波長変換体の発光領域間に格子状に非透光性材料からなる障壁が形成されているため、光出射面に輝度ムラが発生し見栄えが悪いという問題があった。また、障壁によって光散乱や光吸収が発生し、照射光の出射効率が低下するという問題があった。
【0005】
本発明は、上述の点に鑑みてなされたものであり、発光素子から出射される光の波長を変換して所望の領域に向けて光を照射する装置に用いられる波長変換体であって、輝度ムラを防止し、かつ所望の領域のみを効率よく照明可能な波長変換体及びその製造方法並びに当該波長変換体を用いた照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の波長変換体は、透光性基板と、当該透光性基板上に設けられた波長変換層と、を有する波長変換体であって、当該波長変換層は、当該波長変換層の表面から当該透光性基板に向かう格子状の界面によってマトリクス状の複数の波長変換部に区画されていることを特徴とする。
【0007】
また、本発明の波長変換体は、透光性基板と、当該透光性基板上に設けられた波長変換層と、を有する波長変換体であって、当該波長変換層は、当該波長変換層の表面から当該透光性基板に向かって形成されている格子状の間隙によってマトリクス状の複数の波長変換部に区画されていることを特徴とする。
【0008】
また、本発明の波長変換体の製造方法は、透光性基板の一方の面に格子状の溝部を形成する工程と、当該透光性基板の当該一方の面上に蛍光体を含有する半硬化した樹脂からなる蛍光体シートを貼付する工程と、当該蛍光体シートを当該蛍光体シートの上面から当該格子状溝部に刃物を押し込み、当該刃物を、当該刃物を押し込んだ経路と同一の経路に沿って抜き取ることによって当該格子状溝部に沿って切断する工程と、当該樹脂を全硬化する工程と、を含むことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の波長変換体の製造方法は、透光性基板の当該一方の面上に蛍光体を含有する透光性材料からなる蛍光体層を形成する工程と、当該蛍光体層を当該蛍光体層の表面から格子状にレーザ光を照射することで個別の波長変換部に切除する工程と、を含み、当該区画する工程は、互いに隣接する当該波長変換部の間に当該蛍光体層の表面から当該透光性基板に向かう界面を形成するかまたは間隙を形成することを特徴とする。
【0010】
また、本発明の照明装置は、レーザ発光素子と、当該レーザ発光素子の光出射方向に配され、当該レーザ発光素子からの出射光を反射する反射デバイスと、当該反射デバイスを駆動する駆動部と、当該反射デバイスの反射面に向かった側に配されかつ透光性基板及び当該透光性基板上に設けられた波長変換層を有し、当該波長変換層が当該波長変換層の表面から当該透光性基板に向かう格子状の界面によってマトリクス状の複数の波長変換部に区画されている波長変換体と、を含む照明装置であって、当該駆動部は、当該反射デバイスからの当該反射光が当該複数の波長変換部の各々を走査するように当該反射デバイスを駆動することを特徴とする。
【0011】
また、本発明の照明装置は、レーザ発光素子と、当該レーザ発光素子の光出射方向に配され、当該レーザ発光素子からの出射光を反射する反射デバイスと、当該反射デバイスを駆動する駆動部と、当該反射デバイスの反射面に向かった側に配されかつ透光性基板及び当該透光性基板上に設けられた波長変換層を有し、当該波長変換層が、当該波長変換層の表面から当該透光性基板に向かう格子状の間隙によってマトリクス状の複数の波長変換部に区画されている波長変換体と、を含む照明装置であって、当該駆動部は、当該反射デバイスからの当該反射光が当該複数の波長変換部の各々を走査するように当該反射デバイスを駆動することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例1である波長変換体の斜視図である。
図2図1の2−2線に沿った断面図である。
図3A図1に示す波長変換体の製造工程のうちの一工程を示す断面図である。
図3B図1に示す波長変換体の製造工程のうちの一工程を示す断面図である。
図3C図1に示す波長変換体の製造工程のうちの一工程を示す断面図である。
図3D図1に示す波長変換体の製造工程のうちの一工程を示す断面図である。
図4図1に示す波長変換体の製造工程のうちの一工程の拡大断面図である。
図5図1に示す波長変換体の製造工程のうちの一工程の拡大断面図である。
図6】本発明の波長変換体を用いた照明装置の一例の概略図である。
図7】波長変換体の評価実験に用いる簡易モデルの断面図である。
図8】波長変換体の評価実験に用いる比較モデルの断面図である。
図9】波長変換体の評価実験の装置の断面図である。
図10】評価実験における光出射面の輝度分布画像である
図11】評価実験における光出射面の輝度分布画像の輝度の変化を表すグラフである。
図12】評価実験における光出射面の輝度分布画像の輝度の変化を表すグラフである。
図13】本発明の波長変換体を用いた照明装置の一例の概略図である。
図14】他の実施例の波長変換体の断面図である。
図15】他の実施例の波長変換体の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下においては、本発明の好適な実施例について説明するが、これらを適宜改変し、組合せてもよい。また、以下の説明及び添付図面において、実質的に同一又は等価な部分には同一の参照符号を付して説明する。
【実施例1】
【0014】
以下に、本発明の実施例1である波長変換体について、図1及び図2を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施例である波長変換体10の斜視図である。図2は、図1の2−2線に沿った断面図である。
【0015】
透光性基板11は、サファイア、ガラス等の透光性を有する材料からなり、矩形の上面形状を有しており、厚さが例えば550μmの基板である。透光性基板11の厚さは、好ましくは0.3〜2.0mmであり、さらに好ましくは0.5〜1.0mmである。透光性基板11は、一方の面がレーザ素子等の発光素子(図示せず)からの出射光が入射する光入射表面である表面11Sとなっている。
【0016】
透光性基板11の表面11Sの反対側の他方の面には、格子状の溝部Vが形成されている。格子状の溝部Vは、例えば格子幅が50μmであり、深さが50〜200μmとなっている。すなわち、透光性基板11は、当該他方の表面にマトリクス状の凸部11Aを有している。
【0017】
凸部11Aの各々の頂面上には、誘電体多層膜で形成されたダイクロイックミラーからなる波長選択層である光学機能層13が形成されている。すなわち、光学機能層13は、透光性基板11上に互いに離間してマトリクス状に配されている。光学機能層13は、例えば、光学機能層13上に形成される後述する波長変換部17内の蛍光体粒子から出射される蛍光を反射し、それ以外の光を透過するように形成されている。
【0018】
光学機能層13の上には、蛍光体粒子を含有したシリコーン樹脂等の透光性材料からなり、光出射面である表面15Sを有する波長変換層15が形成されている。波長変換層15に含有される蛍光体は、例えば、約450nmの青色光を吸収して、蛍光として約550nmの発光ピーク波長を有する黄色蛍光を発する。
【0019】
すなわち、波長変換層15に、蛍光体を励起する青色光が入射すると、当該青色光が蛍光体を励起し、蛍光体から黄色蛍光が発せられる。この黄色蛍光が波長変換部17に入射した青色光と混ざり合うことで、表面15Sから白色光が出射する。
【0020】
図2に示すように、波長変換層15は、波長変換層15の光出射表面である表面15Sから透光性基板11に向かう格子状の界面Iによってマトリクス状の複数の波長変換部17に区画されている。換言すれば、隣接する波長変換部17は、その対向する側面17Lが界面Iを持って接している。
【0021】
界面Iは、波長変換層15の内部の終端部Eで終端しており、複数の波長変換部17の各々の間には、終端部Eから透光性基板11に至る空隙Sが形成されている。当該空隙Sは、波長変換部17の間で、透光性基板11の主面と垂直断面において透光性基板11向けてその幅が広がっている。すなわち、空隙Sは、前記透光性基板から離間するにつれて窄まっていく断面形状を有しているおり、波長変換部17は、その下部において上底の大きい略台形の断面形状を有している。
【0022】
上述のように、隣接する波長変換部17は、波長変換層15表面から形成されている界面Iによって区画され、下部において隣接する波長変換部17と空間を持って離間している。従って、透光性基板11から波長変換部17に入射して波長変換部17の側面17Lに達した光は、波長変換部17と空隙Sの界面及び界面I、すなわち側面17Lにおいて反射されて表面15Sから出射される。また、波長変換部17に入射した光によって励起された蛍光体から出射して波長変換部17の側面17Lに達した蛍光も側面17Lにおいて反射されて表面15Sから出射される。従って、波長変換部17の各々に入射した光は、隣接する波長変換部17に漏れ出さずに、当該各々の波長変換部17の表面15Sから出射される。
【0023】
これは、波長変換部17の各々に蛍光体を励起する励起光を選択的に入射させて所望の領域に照射光を照射する場合に、特に有効な利点である。すなわち、上記構成によれば、隣接する波長変換部17の一方に励起光を照射し、他方の波長変換部17に照射を行わない場合、一方の波長変換部17から他方の波長変換部17に光が漏れ出るのを抑制することができる。これにより、所望の領域以外の領域に意図せず照射光を照射することを抑制することが可能である。
【0024】
また、透光性基板11の表面11Sから光を入射させ、凸部11Aを通った光を波長変換部17の各々に入射させる場合、凸部11Aの側面において、光の全反射が発生する。従って、1の凸部11Aに入射した光の隣接する凸部への漏出を防止することができる。すなわち、凸部11Aは、波長変換部17の各々に照射される光の光学的ガイドになるため、所望の領域に照射光を照射する際に意図しない波長変換部17に光が入射することで起きる意図しない領域への照射光の照射を防止することが可能である。
【0025】
また、隣接する波長変換部17は、波長変換層15の表面15Sの近傍においては、界面Iによって区画されているのみである。従って、波長変換部17の全てに励起光を照射した場合に、表面15Sにおいて隣接する波長変換部17間で出射光に切れ目が生じず、表面15Sにおいて暗線が発生することを防止することが可能である。
【0026】
また、波長変換部17は、その下部において、上底が大きい略台形の断面形状を有している。従って、上記励起された蛍光体から表面15Sと反対方向に出射した蛍光も、当該側面17Lの下部によって反射され、表面15S方向に反射される。よって、表面15Sからの光出射量を向上させ、波長変換体10の光出射効率を向上させることが可能である。
【0027】
[波長変換体10の製造方法]
まず、図3Aに示すように、透光性基板11上に光学機能層13を予め形成したもの用意する。上述のように、光学機能層13は、誘電体多層膜を成膜したダイクロイックミラー等である。波長変換体10に青色レーザ光を入射させかつ波長変換部に黄色蛍光体を用いる場合、光学機能層13は、黄色波長領域を反射可能な層であればよい。
【0028】
次に、図3Bに示すように、透光性基板11及び光学機能層13をエッチングして格子状の溝部Vを形成する。具体的には、光学機能層13の表面から、ウェットエッチングもしくはドライエッチング、またはブレードダイシングもしくはレーザダイシング加工により、格子幅50μmで深さが200μmの格子状の溝部Vを形成する。
【0029】
次に、図3Cに示すように、光学機能層13上に波長変換層15となる蛍光体含有シート15Pを圧着貼付する。蛍光体含有シート15Pは、例えばシリコーン樹脂に黄色蛍光体を所定濃度混ぜたものをシート状に半硬化させたものを用いる。この圧着貼付工程において、蛍光体含有シート15Pと光学機能層13の上面とが強く接着される。
【0030】
次に、図3Dに示すように、工業用のエッチング型の刃(ピナクル刃)及びビク型の刃(トムソン刃)等の刃物Cを用いて蛍光体含有シート15Pを切断して、個々の波長変換部17(図2参照)を形成する。具体的には、刃物Cを蛍光体含有シート15Pの上面の溝部V上の領域に刃物Cを押しつけて蛍光体含有シート15P内に透光性基板の主面と垂直に挿入し、刃物Cの先端が溝部V内に達するまで押し下げる。その後、押し下げたときと同じ経路(軌道)で刃物Cを引き上げて、蛍光体含有シート15Pを切断する。
【0031】
なお、上記切断において使用する刃物Cは、切断回数を最小にすべく、刃渡りが蛍光体含有シート15Pの一辺よりも長いものを用いるのが好ましい。また、刃物Cは透光性基板11の主面と垂直でなくともよく、例えば界面Iを傾けたい場合には、刃物Cを傾けて蛍光体含有シート15Pの表面から斜めに挿入してもよい。
【0032】
図4に蛍光体含有シート15Pの切断時の推移を、切断部を拡大した断面図によって示す。まず、図4(a)に示すように、刃物Cの先端が溝部V内に達するまで押し下げる。この際、刃物Cの挿入により、蛍光体含有シート15Pは左右に押し分けられるように切断され、個々の波長変換部17が分割形成される。
【0033】
次に、図4(b)に示すように、刃物Cを上に抜き始める。この際、図4(a)に関して説明したように、蛍光体含有シート15Pは押し分けられるように切断されているので、刃物Cを抜いていくと、刃物Cがあった場所を埋めるように切断面が変形する。しかし、蛍光体含有シート15Pと光学機能層13の上面とは強く接着されているので、その接着面近傍においては、隣り合う波長変換部17間に空隙が残るように切断面が変形していく。
【0034】
次に、図4(c)に示すようにさらに刃物Cを上に抜いていくと、光学機能層13の上面、すなわち光学機能層13と波長変換部17との接着面から離れるにつれ空隙が窄まり、あるところで隣り合う波長変換部17の側面17L同士が接する。
【0035】
その後、図4(d)に示すように刃物Cが完全に抜けると、図2に示すような、隣り合う波長変換部17の側面17Lが下部において空隙Sを形成し上部において界面Iを持って接している構造ができる。
【0036】
なお、蛍光体含有シート15Pを切断する際には、レーザ光を走査することによって切断を行ってもよい。その場合、例えば、蛍光体含有シート15Pの上面から紫外線レーザを照射して、蛍光体含有シート15Pを部分的に昇華させる。図5にレーザによる蛍光体含有シート15Pの切断時の推移の一例を、切断部を拡大した断面図によって示し以下に説明する。
【0037】
まず、図5(a)に示すように、レーザ光の強度を、蛍光体含有シート15Pにスジが入る程度に昇華させて切断を行うように、例えば切断工程における最大出力の5%とし、レーザの焦点を蛍光体含有シート15Pの表面付近に合わせてレーザ光を走査して照射する。この照射によって、上述した蛍光体含有シート15P上部に、上述した波長変換部17が界面Iをもって接する部分が形成される。
【0038】
次に、図5(b)に示すように、レーザ光の強度を、蛍光体含有シート15Pの材料が昇華して小さな空孔ができるように、例えば切断工程における最大出力の20%とし、レーザ光の焦点を更に下に下げてレーザ光を走査して照射する。当該照射においては、上記界面Iの下の部分に小さな空孔Hが形成される。
【0039】
その後、レーザ光の焦点を下げつつ、レーザの強度を、例えば切断工程における最大出力の40%(図5(c))、60%(図5(d))、80%(図5(d))、100%(図5(e))と上げていきつつレーザ光を走査して照射して蛍光体含有シート15Pの材料を昇華させて空孔Hを拡大することで切断を行う。
【0040】
これにより、上述したような、隣り合う波長変換部17の側面17Lが下部において空隙Sを形成し上部において界面Iを持って接している構造ができる。すなわち、隣り合う波長変換部17の間の領域の下部においてくさび状の空隙Sが形成される。
【0041】
上記波長変換部17の切断工程の終了後、波長変換部17を加熱硬化して、波長変換体10が完成する。
【0042】
上記した製造方法によれば、個々の波長変換部17の切断線に沿って透光性基板11の波長変換部17側の表面に格子状の溝部Vを形成する。従って、例えば刃物Cを使用して蛍光体含有シート15Pを切断して個々の波長変換部17を形成する場合に、刃物Cの先端部が透光性基板11に当接することが防止され、刃物Cの刃先の摩耗を防止することが可能である。
【0043】
また、例えばレーザ光を用いて蛍光体含有シート15Pを切断して個々の波長変換部17を形成する場合には、レーザ光によって透光性基板11が損傷することを防止することができる。また、蛍光体含有シート15Pの切断が完了した後に、レーザ光の出射方向に空間である溝部Vが存在するので、レーザ光の反射の有無の検出によるレーザ光の出射停止制御等の制御が容易になる。
【0044】
[波長変換体10を用いた照明装置]
上述した波長変換体10を用いた照明装置30について、図6を用いて以下に説明する。なお、以下の説明においては、図中の白抜き矢印方向を前方として説明する。
【0045】
発光素子31は、例えば、青色レーザ光(発光波長450nm程度)を出射するレーザダイオード(LD)素子である。反射デバイス33は、発光素子31の出射光の光軸上に配置されており、ピエゾ素子によって直交する2軸方向に回転するいわゆるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーである。反射デバイスは、発光素子31に対向している反射面Rを有し、当該反射面Rによって発光素子31から出射されたレーザ光が反射される。
【0046】
波長変換体10は、例えば、反射デバイス33からみて発光素子31からの出射光の光軸と垂直の方向に、透光性基板11の表面11Sが反射デバイス33の反射面Rと対向するように配されている。
【0047】
すなわち、図中破線矢印で示す光経路のように、発光素子31から出射して反射面Rによって反射されたレーザ光が透光性基板11の表面11Sから入射し、反射デバイス33の回転動作によって変更・調整される振れ角に対応して所定の波長変換部17に入射するように構成されている。なお、図中においては、一例として、中央の波長変換部17に光を入射する方向に反射デバイス33が配向されている際の光経路が示されている。
【0048】
上述したように、波長変換部17に、蛍光体を励起する発光素子31から出射された青色光が入射すると、当該青色光が蛍光体を励起し、蛍光体から黄色蛍光が発せられる。この黄色蛍光が波長変換部17に入射した青色光と混ざり合うことで、波長変換部17の各々の光出射表面である表面15Sから白色光が出射する。
【0049】
なお、反射デバイス33によって反射されたレーザ光が波長変換部17の各々に入射する際のレーザスポットは、波長変換部17の各々と光学機能層13との接合面である入射表面17Iよりも小さくなるようになされている。
【0050】
制御部35は、発光素子31及び反射デバイス33に接続されており、発光素子31の点灯及び反射デバイス33の回転動作を制御する。制御部35は、発光素子31をパルス点灯させるように制御する。また、制御部35は、反射デバイス33から反射されるレーザ光のレーザスポットがマトリクス状に配列された波長変換部17の各々を線順次走査するように反射デバイス33を制御する。
【0051】
レンズ部37は、例えば凸レンズであり、波長変換部17の各々の表面15Sからの出射光の光路上に配されており、当該出射光を集光して照明装置30の前方に出射するようになされている。
【0052】
照明装置30において、発光素子31のパルス点灯と反射デバイス33の回転動作は同期されており、反射デバイス33の角度が入射表面17Iの各々にレーザスポットが収まる角度になった際に、発光素子31が発光するようになされている。この走査の際、一部の波長変換部17にレーザ光を入射させないように発光素子31のパルス点灯を制御することで、照明装置30の前方の所望の領域のみに白色光を照射することが可能である。
【0053】
この線順次走査の際、レーザ光は、入射表面17Iに入射する前に、凸部11A(図2参照)を通過する。上述のように凸部11Aの側面においては、光の全反射が発生し入射表面17Iに入射する前の光学的ガイドの役割を果たす。従って、順次走査する際に1の凸部11Aに入射したレーザ光の隣接する凸部への漏出、さらには、当該隣接する凸部11A上に形成されている波長変換部17への光の漏出が防止される。
【0054】
本発明の照明装置30は、パルス点灯する発光素子31によって波長変換体10の各波長変換部17の各々を走査して照明することで、照明装置30の前方の所望の領域を照明することが可能である。
【0055】
また、本発明の照明装置30は、波長変換体10の波長変換部17の各々に波長変換部17の入射表面17I内に入射表面17Iよりも小さいレーザスポットを有するレーザ光を照射する。さらに、上述のように、隣接する波長変換部17は、波長変換層15の表面15Sから形成されている界面Iによって区画され、下部において隣接する波長変換部17と空隙S(図2参照)を持って離間している。
【0056】
従って、透光性基板11から波長変換部17に入射して波長変換部17の側面17L(図2参照)に達した光は、波長変換部17と空隙Sの界面及び界面I、すなわち側面17Lにおいて反射されて表面15Sから出射される。また、波長変換部17に入射した光によって励起された蛍光体から出射して波長変換部17の側面17Lに達した蛍光も側面17Lにおいて反射されて表面15Sから出射される。従って、波長変換部17に入射した光は、隣接する波長変換部17に漏れ出さずに、各々の波長変換部17の表面15Sから出射される。
【0057】
これにより、1の走査において波長変換部17の各々に選択的に発光素子31からの出射光を入射させて所望の領域に照射光を照射する場合に、所望の領域以外の領域に意図せず照射光を照射することを防止することが可能である。
【0058】
また、上述のように、透光性基板11の光入射表面である表面11Sから光を入射させ、凸部11Aを通った光を波長変換部17の各々に入射させる場合、凸部11Aの側面において、光の全反射が発生する。従って、1の凸部11Aに入射した光の隣接する凸部への漏出を防止することができる。すなわち、凸部11Aは、波長変換部17の各々に照射される光の光学的ガイドになるため、所望の領域に照射光を照射する際に意図しない波長変換部17に光が入射することで起きる意図しない領域への照射光の照射を防止することが可能である。
【0059】
また、上述のように、隣接する波長変換部17は、波長変換層15の表面から形成されている界面Iによって区画されているのみである。従って、波長変換部17の全てに励起光を照射した場合に、波長変換層15の表面15Sにおいて出射光に切れ目が生じず、表面15Sにおいて暗線が発生することを防止することが可能である。
【0060】
また、波長変換部17は、その下部において、上底が大きい略台形の断面形状を有している。従って、上記励起された蛍光体から表面15Sと反対方向に出射した蛍光も、当該側面17Lの下部によって反射され、表面15S方向に反射される。よって、表面15Sからの光出射量を向上させ、照明装置30の光出射効率を向上させることが可能である。
【0061】
[評価実験]
以下に、図7乃至図10を用いて隣り合う波長変換部17間の光の漏出防止効果の評価実験について説明する。本実験では、波長変換層の1の表面から反対側の他方の表面まで連続して形成されている界面Iのみによって波長変換体が区画されている簡易モデルを用いて、波長変換部17の各々に個別に光を入射させた際の隣接する波長変換部17への光の漏出防止の効果を評価する。
【0062】
波長変換体10の簡易モデル40を図7に示す。簡易モデル40は、ガラス基板41及びガラス基板41上にマトリクス状に配され、一辺が100μmの正方形の上面形状を有する波長変換層43からなっている。波長変換層は表面43Sから透光性基板41に向かう格子状の界面Iによってマトリクス状の複数の波長変換部45に区画されている。すなわち、隣接する波長変換部45の対向する側面45Lは、全面が界面Iをもって接している。
【0063】
簡易モデル40は、以下のように製造した。まず、ガラス基板41上に実施例1の波長変換体10の製造に用いたのと同様の蛍光体含有シートを貼付した。その後、波長変換体10の製造に用いたのと同様の刃物を蛍光体含有シートの上面から押し込むことで、蛍光体含有シートを格子状に切断し、マトリクス状に配列された波長変換部45を含む波長変換層43を形成した。
【0064】
比較例である比較モデル50を図8に示す。比較モデル50は、ガラス基板51及びガラス基板上に配された波長変換層53からなっている。なお、比較モデル50の波長変換部53は、単にガラス基板51に波長変換体10の製造に用いたのと同様の蛍光体含有シートを貼付したものであり、分割されていない。
【0065】
図9に評価実験方法を示す。なお、図9には、例として簡易モデル40に光を照射して評価を行う場合を示している。評価実験は、試験光源部60を用いて簡易モデル40及び比較モデル50に光を照射した際のガラス基板41及び51側から観測した輝度分布を比較することによって行った。
【0066】
試験光源部60は、内側面が光反射性を有し上方に開口を有するすり鉢状の凹部61Rを有する素子保持パッケージ61、凹部61Rの底面に配されており、凹部の開口方向に光を出射するLED素子63及びLED素子63の光出射方向に配されているシャッター装置65からなっている。
【0067】
シャッター装置65は、板状の透光性の無い部材であるスリット板65A及びシャッター板65Bからなっており、スリット板65A及びシャッター板65Bは、板面が接するように重ねられている。スリット板65Aには、短手辺の中心線がLED素子63の出射光の光軸AXと重なるように形成されている長手矩形状のスリット65Sが形成されている。シャッター板65Bは、スリット板65Aに沿って白抜き矢印方向にスライドすることで、スリット65Sの一部又は全部を遮光するように構成されている。
【0068】
評価実験においては、図9に示すように、簡易モデル40及び比較モデル50の波長変換層43及び53の表面にシャッター板65Bの板面が接するように配置した。さらに、簡易モデル40に光を照射する場合には、スリット65Sの長手方向に沿った方向において中央に配されている波長変換部45Cの中央に光軸AXが合うようにした。
【0069】
また、照明装置10において透光性基板11に入射した光が凸部11Aによって波長変換部17に入射する前にガイドされる状態を再現するために、波長変換部45Cの端部とシャッター板65Bの端部が重なり合うようにシャッター板65Bを配置した。すなわち、図中波長変換部45Cよりも左にある波長変換部45には、LED素子63からの出射光が直接入射しないようにした。換言すれば、本評価実験においては、シャッター板65Bによって覆われている波長変換部45及び波長変換層53のシャッター板65Bによって覆われている領域への光の漏出の防止効果が確認できる。
【0070】
なお、比較モデル50に光を照射する場合には、簡易モデル40が配されていた位置に、比較モデルを配置し、簡易モデル40に光を照射した際と同様の位置に光が照射されるようにした。
【0071】
以下に、評価実験の結果について説明する。なお、実験結果の説明に際し、説明の便宜上、図9に示すように、光出射面側からみて、シャッター板65Bによって覆われている波長変換部45を含む領域を領域Aそれ以外の波長変換部45の領域を領域Bとして説明する。
【0072】
図10に、評価試験をした際の光出射面の輝度分布画像を示す。図10(a)は、簡易モデル40の輝度分布画像、図10(b)は比較モデル50の輝度分布画像である。なお、図10の輝度分布画像において、図9のスリット65Sの長手方向に沿った方向をY、それと垂直な方向をXとしている。
【0073】
また、図11は、図10に示した輝度分布画像について、図10中のX軸方向に沿った方向における輝度の変化を表す片対数グラフである。図11において、位置2.5がLED素子63の出射光の光軸AXと重なる位置である。また、縦軸は、位置2.5における輝度を100%とした際の相対輝度である。
【0074】
簡易モデル40及び比較モデル50の輝度分布及び輝度の変化を比較すると、領域Aにおいて、簡易モデル40の分布の輝度の減衰が顕著になっており、波長変換部45の分割効果によって、隣接する波長変換部45への導光が著しく抑えられていることが確認できる。
【0075】
図12は、図10に示した輝度分布画像について、図10中のY軸方向に沿った方向における輝度の変化を表すグラフである。図12において、位置2.5がLED素子63の出射光の光軸AXと重なる位置である。また、縦軸は、位置2.5における輝度を100%とした際の相対輝度である。
【0076】
図12に示すように、簡易モデル40及び比較モデル50のいずれにおいても、輝度の低下はほとんどみられない。特に、簡易モデル40において、隣接する波長変換部45同士の間においても輝度の低下は10%未満であり、隣接する波長変換部45の間における暗線の発生が抑えられていることがわかる。
【0077】
上記実験結果から、本願実施例1の照明装置10によれば、隣接する波長変換部17間の光の伝播及び漏出を防止し、意図しない領域に照射光を照射することを防止することが可能である。また、波長変換部17の各々の分割線である界面Iにおける輝度の低下が防止され、照射光の暗線の発生を抑制することが可能である。
【0078】
[他の実施例]
上述の実施例においては、波長変換体10の光学機能層13を波長選択層としたが、光学機能層13を光反射層としてもよい。この場合、波長変換層15に含有される蛍光体を励起させる青色光を波長変換層15の表面15Sから入射させると、当該青色光が蛍光体を励起し、蛍光体から黄色蛍光が発せられる。この黄色蛍光が波長変換部17に入射して光反射層である光学機能層13によって反射された青色光と混ざり合うことで、表面15Sから白色光が出射する。
【0079】
光学機能層13が光反射層である波長変換体10を用いる照明装置70の一例を、図13に示す。発光素子31は、例えば、青色レーザ光(発光波長450nm程度)を出射するレーザダイオード(LD)素子である。反射デバイス33は、発光素子31の出射光の光軸上に配置されており、ピエゾ素子によって直交する2軸方向に回転するいわゆるMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーである。反射デバイスは、発光素子31に対向している反射面Rを有し、当該反射面Rによって発光素子31から出射されたレーザ光が反射される。
【0080】
波長変換体10は、波長変換層15の表面15Sが反射デバイス33の反射面Rと対向するように配されている。すなわち、発光素子31から出射して反射面Rによって反射されたレーザ光が波長変換層15の表面15Sから入射し、反射デバイス33の回転動作によって変更・調整される振れ角に対応して所定の波長変換部17にレーザ光が入射するように構成されている。
【0081】
上述したように、波長変換部17に、蛍光体を励起する発光素子31から出射された青色光が入射すると、当該青色光が蛍光体を励起し、蛍光体から黄色蛍光が発せられる。この黄色蛍光が波長変換部17に入射して光反射層である光学機能層13によって反射された青色光と混ざり合うことで、波長変換部17の各々の表面15Sから白色光が出射する。
【0082】
なお、反射デバイス33によって反射されたレーザ光が波長変換部17の各々に入射する際のレーザスポットは、波長変換部17の各々の表面15Sよりも小さくなるようになされている。
【0083】
制御部35は、上述の照明装置30と同様に、発光素子31及び反射デバイス33に接続されており、発光素子31の点灯及び反射デバイスの回転動作を制御する。制御部35は、発光素子31をパルス点灯させるように制御する。また、制御部35は、反射デバイス33から反射されるレーザ光のレーザスポットがマトリクス状に配列された波長変換部17の各々を線順次走査するように反射デバイス33を制御する。
【0084】
レンズ部37は、例えば凸レンズであり波長変換部17の光出射表面である表面15Sからの出射光の光路上に配されており、当該出射光を集光して照明装置30の前方に出射するようになされている。
【0085】
照明装置70において、発光素子31のパルス点灯と反射デバイス33の回転動作は制御部によって同期されており、反射デバイス33の角度が波長変換部17の表面15Sの各々にレーザスポットが収まる角度になった際に発光素子31が発光するようになされている。この走査の際、1または複数の波長変換部17にレーザ光を入射させないように発光素子31のパルス点灯を制御することで、照明装置70の前方の所望の領域のみに白色光を照射することが可能である。
【0086】
すなわち、照明装置70は、パルス点灯する発光素子31によって波長変換体10の各波長変換部17の各々を個別に走査して照明することで、照明装置70の前方の所望の領域を照明することが可能である。
【0087】
また、照明装置70においては、波長変換体10の波長変換部17の表面15S内に表面15Sよりも小さいレーザスポットを有するレーザ光を照射する。さらに、上述のように、隣接する波長変換部17は、波長変換層15の表面から形成されている界面Iによって区画され、下部において隣接する波長変換部17と空隙Sを持って離間している。
【0088】
従って、表面15Sから波長変換部17に入射して、光反射層である光学機能層13で反射し、波長変換部17の側面17L(図2参照)に達した光は、波長変換部17と空隙Sの界面及び界面I、すなわち側面17Lにおいて反射されて波長変換部17の各々の表面15Sから出射される。また、波長変換部17に入射した光によって励起された蛍光体から出射して波長変換部17の側面17Lに達した蛍光も側面17Lにおいて反射されて表面15Sから出射される。従って、波長変換部17に入射した光は、隣接する波長変換部17に漏れ出さずに、波長変換部17の各々の表面15Sから出射される。
【0089】
これにより、1の走査において波長変換部17の各々に選択的に発光素子31からの出射光を入射させて所望の領域に照射光を照射する場合に、所望の領域以外の領域に意図せず照射光を照射することを防止することが可能である。
【0090】
また、隣接する波長変換部17は、透光性基板11に近い領域において空間S(図2参照)を持って離間しており、かつ隣接する波長変換部17の間には溝部V(図2参照)がありかつ光反射層である光学機能層が存在しない。従って、波長変換部17の各々に光が入射し、波長変換部17の側面17Lから波長変換部17間の空間Sに光が漏出した場合であっても、当該漏出光は溝部V内で減衰するかまたは透光性基板を通過して後方に向かう。
【0091】
これにより、隣接する波長変換部17への光漏出が抑えられ、所望の領域に照射光を照射する際に意図しない波長変換部17から光が出射することで起きる意図しない領域への照射光の照射を防止することが可能である。
【0092】
また、上述のように、隣接する波長変換部17は、波長変換層15の表面から形成されている界面Iによって区画されているのみである。従って、波長変換部17の全てに励起光を照射した場合に、表面15Sにおいて出射光に切れ目が生じず、波長変換層15の表面15S(図1及び2参照)において暗線が発生することを防止することが可能である。
【0093】
また、波長変換部17は、その下部において、上底が大きい略台形の断面形状を有している。従って、上記励起された蛍光体から表面15Sと反対方向に出射した蛍光も、当該側面17Lの下部及び光反射層である光学機能層13によって反射され、表面15S方向に反射される。よって、表面15Sからの光出射量を向上させ、照明装置30の光出射効率を向上させることが可能である。
【0094】
上記実施例においては、波長変換体10の透光性基板11に溝部Vを形成することとした。しかし、溝部Vは必ずしも必要ではない。例えば、図14に示す波長変換体80のように、溝部Vを形成せずに光学機能層13を透光性基板11上にマトリクス状に配置し、光学機能層13の各々の上に波長変換部17を形成することとしてもよい。
【0095】
この場合でも、波長変換部17の側面17Lにおいて、光の全反射が発生し、隣り合う波長変換部17への光の漏出が防止でき、これにより、所望の領域以外の領域に意図せず照射光を照射することを防止することが可能である。
【0096】
さらに、上述のように、隣接する波長変換部17は、波長変換層15の表面から形成されている界面Iによって区画されているのみである。従って、波長変換部17の全てに励起光を照射した場合に、表面15S間において出射光に切れ目が生じず、波長変換層15の表面15S(図1及び2参照)において暗線が発生することを防止することが可能である。
【0097】
また、波長変換部17は、その下部において、上底が大きい略台形の断面形状を有している。従って、上記励起された蛍光体から表面15Sと反対方向に出射した蛍光も、当該側面17Lの下部によって反射され、表面15S方向に反射される。よって、表面15Sからの光出射量を向上させ、照明装置30の光出射効率を向上させることが可能である。
【0098】
また、上記実施例においては、隣接する波長変換部17の間に空隙Sを形成することとした。しかし、空隙Sは必ずしも必要ではない。例えば、図15に示す波長変換体90のように、波長変換層の1の表面から反対側の他方の表面まで連続して形成されている界面Iのみによって波長変換部17が区画されていてもよい。なお、この場合、光学機能層13が透光性基板11の一方の面の全面に形成され、その上に波長変換層15が形成されていてもよい。
【0099】
この場合でも、上記評価実験で示したように、波長変換部17の側面17Lにおいて、光の全反射が発生し、隣り合う波長変換部17への光の漏出が防止でき、これにより、所望の領域以外の領域に意図せず照射光を照射することを防止することが可能である。
【0100】
また、隣り合う波長変換部17は、波長変換層15の光出射表面である表面15Sの近傍においては界面Iによって区画されているのみである。従って、波長変換部17の全てに励起光を照射した場合に、波長変換体10をから照射される光に暗線が発生することを防止することが可能である。
【0101】
また、上述の実施例では、光学機能層13を形成することとした。しかし、光学機能層13を波長選択層とする、いわゆる透過型の波長変換体10においては、光学機能層13は必ずしも必要ではない。
【0102】
また、上述の実施例において、波長変換部17を形成する際に、蛍光体を含有する樹脂からなる蛍光体シートを用いることとした。しかし、波長変換部17を形成する際に、レーザを用いて個々の波長変換部17への分離を行う場合、蛍光体を含有するガラス板を用いてもよい。この場合、光学機能層13上に蛍光体を含有するガラス板を配置し、その後にレーザによるガラス板の分離を行ってもよい。
【0103】
なお、上述の実施例において、隣接する波長変換部17は、対向する側面17Lが界面Iを持って接しているとしたが、界面Iに変えて間隙(空間)が形成されていることとしてもよい。例えば、レーザ光によって波長変換部17を分離する場合には、隣接する波長変換部17の間の分離部分において、レーザ光によって波長変換部17の透光性材料が昇華するので、僅かな間隙が形成される可能性がある。
【0104】
この間隙は、非常に幅の狭いものである故に目視によって間隙と認識できない程度のものである。従って、この場合であっても、波長変換部17の全てに励起光を照射した場合に、波長変換体10を通過して照射される光に暗線が発生することを防止することが可能である。
【0105】
特に、レーザ光によって波長変換部17を分離する場合には、レーザ光の照射幅を波長変換層15内に分散している蛍光体粒子の粒径より小さい幅とするのが好ましい。何となれば、波長変換部17同士の分離部分において、レーザ光により波長変換層15の透光性材料が昇華し蛍光体粒子の一部が波長変換部17に支持されて残留し、ほぼ界面Iと変わらない極めて僅かな間隙を構成することができるためである。
【0106】
上述した実施例における種々の数値、寸法、材料等は、例示に過ぎず、用途及び製造される波長変換体または照明装置に応じて、適宜選択することができる。
【符号の説明】
【0107】
10、80、90 波長変換体
11 透光性基板
11S 表面
11A 凸部
13 光学機能層
15 波長変換層
15S 表面
17 波長変換部
17L 側面
17I 入射表面
30、70 照明装置
V 溝部
S 空隙
I 界面
図1
図2
図3A
図3B
図3C
図3D
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15