(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6489903
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】非常時における原子炉水位計測方法及びその装置並びに原子炉への注水方法
(51)【国際特許分類】
G21C 17/035 20060101AFI20190318BHJP
G01F 23/04 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
G21C17/035
G01F23/04 F
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-73516(P2015-73516)
(22)【出願日】2015年3月31日
(65)【公開番号】特開2016-194420(P2016-194420A)
(43)【公開日】2016年11月17日
【審査請求日】2018年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141060
【氏名又は名称】株式会社関電工
(74)【代理人】
【識別番号】100075410
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 則昭
(74)【代理人】
【識別番号】100135541
【弁理士】
【氏名又は名称】藤沢 昭太郎
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 豊之
【審査官】
右▲高▼ 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭52-3465(JP,A)
【文献】
特開昭56-77717(JP,A)
【文献】
特表2005-529317(JP,A)
【文献】
特開2009-271056(JP,A)
【文献】
特開2010-112773(JP,A)
【文献】
特開2014-29300(JP,A)
【文献】
特開2014-41023(JP,A)
【文献】
米国特許第5103674(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 17/035
G01F 23/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源喪失等の非常時に、原子炉内の水位を計測する方法において、
原子炉とほぼ同じ高さ及びほぼ同じ縦方向の長さを有する筒状の密閉されたチャンバーを予め設け、
前記原子炉から導出した計装管をT型分岐させた管を前記チャンバーの下部に接続して前記原子炉の液相部とチャンバーとを連結し、また、当該チャンバーの上部と前記原子炉の気相部とを配管により連結し、常時、前記チャンバー内の水位を前記原子炉の水位と同じくし、
当該チャンバー内で長手方向に千鳥型液面計を設け、当該液面計に対向する位置のチャンバーの側面に透明な強化ガラスの窓を設け、前記チャンバーの前記窓を通して中の千鳥型液面計を目視して前記原子炉の水位を計測することを特徴とする、非常時における原子炉の水位計測方法。
【請求項2】
電源喪失等の非常時に、原子炉内の水位を計測する方法において、
原子炉とほぼ同じ高さ及びほぼ同じ縦方向の長さを有する筒状の密閉されたチャンバーを予め設け、
前記原子炉から導出した計装管をT型分岐させた管を前記チャンバーの下部に接続して前記原子炉の液相部とチャンバーとを連結し、また、当該チャンバーの上部と前記原子炉の気相部とを配管により連結して、常時、前記チャンバー内の水位を前記原子炉の水位と同じくし、
当該チャンバーの頂部に超音波発射装置を設け、原子炉格納容器の外側に設けた超音波水位計測装置により前記チャンバー内に超音波を発射させて、チャンバー内の水位を計測することを特徴とする、非常時における原子炉の水位計測方法。
【請求項3】
電源喪失等の非常時に、原子炉内の水位を計測する方法において、
原子炉とほぼ同じ高さ及びほぼ同じ縦方向の長さを有する筒状の密閉されたチャンバーを予め設け、前記原子炉から導出した計装管をT型分岐させた管を前記チャンバーの下部に接続して前記原子炉の液相部とチャンバーとを連結し、また、当該チャンバーの上部と前記原子炉の気相部とを配管により連結して、常時、前記チャンバー内の水位を前記原子炉の水位と同じくし、
前記チャンバー内に長手方向に電気的導体から成る管内に芯線を設けた同軸ケーブル様の特殊ケーブルを設け、原子炉格納容器の外側に設けたTDR計測器と前記特殊ケーブルとを接続し、前記TDR計測器から前記チャンバー内の特殊ケーブルにパルス波を発射させて、当該パルス波の反射波の到達時間から距離を計測し、これにより前記チャンバー内の水位を計測することを特徴とする、非常時における原子炉の水位計測方法。
【請求項4】
電源喪失等の非常時に、原子炉内の水位を計測する装置において、
原子炉とほぼ同じ高さ及びほぼ同じ縦方向の長さを有する筒状の密閉されたチャンバーを予め設け、前記原子炉から導出した計装管をT型分岐させた管を前記チャンバーの下部に接続して前記原子炉の液相部とチャンバーとを連結し、また、当該チャンバーの上部と前記原子炉の気相部とを配管により連結し、常時、前記チャンバー内の水位を前記原子炉の水位と同じくし、
当該チャンバー内で長手方向に千鳥型液面計を設け、当該液面計に対向する位置のチャンバーの側面に透明な強化ガラスの窓を設け、原子炉の電源喪失及び冷却水の供給停止等の非常時に、前記チャンバーの前記窓を通して中の千鳥型液面計を目視して前記原子炉の水位を計測可能としたことを特徴とする、非常時における原子炉の水位計測装置。
【請求項5】
電源喪失等の非常時に、原子炉内の水位を計測する装置において、
原子炉とほぼ同じ高さ及びほぼ同じ縦方向の長さを有する筒状の密閉されたチャンバーを予め設け、前記原子炉から導出した計装管をT型分岐させた管を前記チャンバーの下部に接続して前記原子炉の液相部とチャンバーとを連結し、また、当該チャンバーの上部と前記原子炉の気相部とを配管により連結して、常時、前記チャンバー内の水位を前記原子炉の水位と同じくし、
当該チャンバーの頂部に超音波発射装置を設け、原子炉格納容器の外側に設けた超音波水位計測装置により前記チャンバー内に超音波を発射させて、チャンバー内の水位を計測可能としたことを特徴とする、非常時における原子炉の水位計測装置。
【請求項6】
電源喪失等の非常時に、原子炉内の水位を計測する装置において、
原子炉とほぼ同じ高さ及びほぼ同じ縦方向の長さを有する筒状の密閉されたチャンバーを予め設け、前記原子炉から導出した計装管をT型分岐させた管を前記チャンバーの下部に接続して前記原子炉の液相部とチャンバーとを連結し、また、当該チャンバーの上部と前記原子炉の気相部とを配管により連結して、常時、前記チャンバー内の水位を前記原子炉の水位と同じくし、
前記チャンバー内に長手方向に電気的導体から成る管内に芯線を設けた同軸ケーブル様の特殊ケーブルを設け、原子炉格納容器の外側に設けたTDR計測器と前記特殊ケーブルとを接続し、前記TDR計測器から前記チャンバー内の特殊ケーブルにパルス波を発射させて、当該パルス波の反射波のTDR計測器への戻り時間から距離を計測し、これにより前記チャンバー内の水位を計測可能としたことを特徴とする、非常時における原子炉の水位計測装置。
【請求項7】
前記請求項4〜6のいずれかに記載の装置において、
前記計装配管からT分岐させた管及び当該チャンバーの上部と前記原子炉の気相部とを連結させた配管にそれぞれ設けた弁を閉じ、前記チャンバーの
上部又は下部に設けた排気又は排水用の開口の栓を開けて当該チャンバー内に冷水を注入して、当該チャンバー内を満水にし、
その後、前記栓を閉めて、前記各弁を開けることにより、前記チャンバー内の水が、低下した原子炉水位と同レベルになるまで原子炉内に入り、これらの工程を複数回繰り返すことにより、原子炉内に冷水を注入することを特徴とする、非常時における原子炉への注水方法。
【請求項8】
前記請求項4〜6のいずれかに記載の装置において、
前記計装配管からT分岐させた管及び当該チャンバーの上部と前記原子炉の気相部とを連結させた配管にそれぞれ設けた弁を閉じ、前記チャンバーの上部又は下部に設けた排気又は排水用の開口の栓を開けて当該チャンバー内に冷水を注入して、当該チャンバー内を満水にし、
その後、前記栓を閉めて、当該チャンバーから冷水を使用済み核燃料貯蔵プールへ注水し、これらの工程を複数回繰り返して行うことを特徴とする、非常時における使用済み核燃料貯蔵プールへの注水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、沸騰水型原子炉において、外部電源を喪失し、非常用電源も使用不可能となり、更に、海水冷却機能が失われるような非常時においても原子炉を安定した状態で長期間維持できよう、原子炉の水位の測定方法及びその装置に関するものであり、さらに、前記水位が低下した場合に原子炉に注水する方法に関するものであり、前記原子炉の水位低下による燃料の過熱損傷や原子炉格納容器の損傷に至らないようにするものである。
【背景技術】
【0002】
沸騰水型原子炉においては、何らかの原因により外部電源が喪失し、非常用電源も使用不可能となり、更に、海水冷却機能が失われた状況においては、原子炉施設の安全確保に必要な機器へ直流電源から電力を供給し、原子炉の緊急停止を行うとともに炉心を冷却して、原子力プラントを安全な状態に保つことが出来るように構成されている。
【0003】
在来の原子力プラントは、プラントの通常運転時においては、
図5に示すように、原子炉1で発生した蒸気は、主蒸気管2を介してタービン3に送られる。タービン3で仕事をした排気蒸気は復水器4で凝縮され復水となり、復水管を経て復水ポンプ5により昇圧され、給水加熱器6及び給水ヘッダ7を通って、最終的に原子炉1に戻るサイクルを構成している。なお、前記給水ヘッダ7から原子炉1への配管の途中には、給水逆止弁25及び26が設けられている。
【0004】
また、外部電源等を喪失した場合には、原子炉は自動停止し、原子炉1とタービン3を離隔する。そして、蒸気逃がし安全弁8にて蒸気圧力を圧力抑制室9に逃がして凝縮させるとともに、蒸気駆動の原子炉隔離時冷却系のタービン10にてポンプ11を作動させ、前記圧力抑制室9又は復水貯蔵タンク12の水を原子炉1に注水している。この状況は10時間以上維持され、事故時には最長で3日間の運転が維持できた実績がある。
【0005】
また、この原子炉1内の水位計測装置は、
図6に示すように、原子炉1の気相部に凝集槽15を介して接続され、原子炉格納容器24を貫通して原子炉格納容器24の外側に延在した基準圧力導管16と、原子炉1の液相部に接続され、原子炉格納容器24を貫通して原子炉格納容器24の外側に延在した水位圧力導管17と、原子炉格納容器24の外側に配置され、原子炉1内の水位に対応する状態量として、基準圧力導管16から導入された基準圧力と水位圧力導管17から導入された水位圧力との差圧を測定する差圧計18とを備えている。
【0006】
前記凝縮槽15は、原子炉格納容器24の内側に配置されている。そして、原子炉1の気相部から凝縮槽15に流入した蒸気が放熱して凝縮し、凝縮した水が凝縮槽15及び基準圧力導管16内に貯留されるようになっている。また、凝縮槽15内の水面高さを一定に保つため、過剰な水が原子炉1に戻されるようになっている。
【0007】
前記基準圧力導管16から差圧計18に導入される基準圧力は、凝縮槽15内の水面高さによる液相の圧力(基準水頭)と、凝縮槽15内の気相の圧力(言い換えれば、ほぼ原子炉1内の気相の圧力)との和である。一方、水位圧力導管17から差圧計18に導入される水位圧力は、原子炉1の水位に応じて変動する液相の圧力(水位水頭)と、原子炉1内の気相の圧力との和である。差圧計18は、前述した基準圧力と水位圧力との差圧(すなわち、ほぼ基準水頭と水位水頭との差圧)を測定し、これに基づいた水位信号を図外の表示装置等へ出力する。これは特許文献1の従来例を示す
図9にも記載されている。
【0008】
また、特許文献2に示す様に、電源喪失・海水冷却不可能時の原子炉への注水、冷却方法について開発されている。これは、原子炉から原子炉格納容器の外に設置されている計器まで接続された計装配管に高圧洗浄ポンプを接続し、当該高圧洗浄ポンプから原子炉に清水を注入する方法である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平6−331784号公報
【特許文献2】特開2014−29300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記特許文献1に示す従来技術では、通常運転時であれば、凝縮槽15内の水面高さによる基準水頭を一定に保つことが可能であり、原子炉1内の水位を正確に計測することが可能である。しかし、原子炉格納容器1内の温度が通常運転時より上昇するとともに原子炉1内の水位が通常運転時より低下するような非常時には、例えば、凝縮槽15内の水が蒸発して水面高さが変動し、基準水頭が変動する。そのため、水位の計測誤差が生じる。また、電源喪失時は前記凝縮槽15はからだき状態となり、前記差圧計18は作動せず、計測不能となる。
【0011】
また、前記特許文献2の方法では、原子炉に計装配管を通して高圧洗浄水を直接注入するため、高圧洗浄ポンプを用意しなければならない。
【0012】
そこで、この発明は、これらの従来技術に鑑み、原子炉が外部電源を喪失し、非常用電源も使用不可能となり、更に、海水冷却機能が失われる等の非常時においても原子炉の水位を確実に計測できる方法及びその装置を提供するとともに、これらの装置を用いて、容易に原子炉に冷却水を注水できる方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の発明は、電源喪失等の非常時に、原子炉内の水位を計測する方法において、原子炉とほぼ同じ高さ及びほぼ同じ縦方向の長さを有する筒状の密閉されたチャンバーを予め設け、前記原子炉から導出した計装管をT型分岐させた管を前記チャンバーの下部に接続して前記原子炉の液相部とチャンバーとを連結し、また、当該チャンバーの上部と前記原子炉の気相部とを配管により連結し、常時、前記チャンバー内の水位を前記原子炉の水位と同じくし、当該チャンバー内で長手方向に千鳥型液面計を設け、当該液面計に対向する位置のチャンバーの側面に透明な強化ガラスの窓を設け、前記チャンバーの前記窓を通して中の千鳥型液面計を目視して前記原子炉の水位を計測する、非常時における原子炉の水位計測方法とした。
【0014】
また、請求項2発明は、電源喪失等の非常時に、原子炉内の水位を計測する方法において、原子炉とほぼ同じ高さ及びほぼ同じ縦方向の長さを有する筒状の密閉されたチャンバーを予め設け、前記原子炉から導出した計装管をT型分岐させた管を前記チャンバーの下部に接続して前記原子炉の液相部とチャンバーとを連結し、また、当該チャンバーの上部と前記原子炉の気相部とを配管により連結して、常時、前記チャンバー内の水位を前記原子炉の水位と同じくし、当該チャンバーの頂部に超音波発射装置を設け、原子炉格納容器の外側に設けた超音波水位計測装置により前記チャンバー内に超音波を発射させて、チャンバー内の水位を計測する、非常時における原子炉の水位計測方法とした。
【0015】
また、請求項3発明は、電源喪失等の非常時に、原子炉内の水位を計測する方法において、原子炉とほぼ同じ高さ及びほぼ同じ縦方向の長さを有する筒状の密閉されたチャンバーを予め設け、前記原子炉から導出した計装管をT型分岐させた管を前記チャンバーの下部に接続して前記原子炉の液相部とチャンバーとを連結し、また、当該チャンバーの上部と前記原子炉の気相部とを配管により連結して、常時、前記チャンバー内の水位を前記原子炉の水位と同じくし、前記チャンバー内に長手方向に電気的導体から成る管内に芯線を設けた同軸ケーブル様の特殊ケーブルを設け、原子炉格納容器の外側に設けたTDR計測器と前記特殊ケーブルとを接続し、前記TDR計測器から前記チャンバー内の特殊ケーブルにパルス波を発射させて、当該パルス波の反射波の到達時間から距離を計測し、これにより前記チャンバー内の水位を計測する、非常時における原子炉の水位計測方法とした。
【0016】
また、請求項4発明は、電源喪失等の非常時に、原子炉内の水位を計測する装置において、原子炉とほぼ同じ高さ及びほぼ同じ縦方向の長さを有する筒状の密閉されたチャンバーを予め設け、前記原子炉から導出した計装管をT型分岐させた管を前記チャンバーの下部に接続して前記原子炉の液相部とチャンバーとを連結して、また、当該チャンバーの上部と前記原子炉の気相部とを配管により連結し、常時、前記チャンバー内の水位を前記原子炉の水位と同じくし、当該チャンバー内で長手方向に千鳥型液面計を設け、当該液面計に対向する位置のチャンバーの側面に透明な強化ガラスの窓を設け、原子炉の電源喪失及び冷却水の供給停止等の非常時に、前記チャンバーの前記窓を通して中の千鳥型液面計を目視して前記原子炉の水位を計測可能とした、非常時における原子炉の水位計測装置とした。
【0017】
また、請求項5発明は、電源喪失等の非常時に、原子炉内の水位を計測する装置において、原子炉とほぼ同じ高さ及びほぼ同じ縦方向の長さを有する筒状の密閉されたチャンバーを予め設け、前記原子炉から導出した計装管をT型分岐させた管を前記チャンバーの下部に接続して前記原子炉の液相部とチャンバーとを連結し、また、当該チャンバーの上部と前記原子炉の気相部とを配管により連結して、常時、前記チャンバー内の水位を前記原子炉の水位と同じくし、当該チャンバーの頂部に超音波発射装置を設け、原子炉格納容器の外側に設けた超音波水位計測装置により前記チャンバー内に超音波を発射させて、チャンバー内の水位を計測可能とした、非常時における原子炉の水位計測装置とした。
【0018】
また、請求項6の発明は、電源喪失等の非常時に、原子炉内の水位を計測する装置において、原子炉とほぼ同じ高さ及びほぼ同じ縦方向の長さを有する筒状の密閉されたチャンバーを予め設け、前記原子炉から導出した計装管をT型分岐させた管を前記チャンバーの下部に接続して前記原子炉の液相部とチャンバーとを連結し、また、当該チャンバーの上部と前記原子炉の気相部とを配管により連結して、常時、前記チャンバー内の水位を前記原子炉の水位と同じくし、前記チャンバー内に長手方向に電気的導体から成る管内に芯線を設けた同軸ケーブル様の特殊ケーブルを設け、原子炉格納容器の外側に設けたTDR計測器と前記特殊ケーブルとを接続し、前記TDR計測器から前記チャンバー内の特殊ケーブルにパルス波を発射させて、当該パルス波の反射波のTDR計測器への戻り時間から距離を計測し、これにより前記チャンバー内の水位を計測可能とした、非常時における原子炉の水位計測装置とした。
【0019】
請求項7の発明は、前記請求項4〜6のいずれかに記載の装置において、前記
計装配管からT分岐させた管及び当該チャンバーの上部と前記原子炉の気相部とを連結させた配管にそれぞれ設けた弁を閉じ、前記チャンバーの上部又は下部に設けた排気又は排水用の開口の栓を開けて当該チャンバー内に冷水を注入して、当該チャンバー内を満水にし、その後、前記栓を閉めて、前記各弁を開けることにより、前記チャンバー内の水が、低下した原子炉水位と同レベルになるまで原子炉内に入り、これらの工程を複数回繰り返すことにより、原子炉内に冷水を注入する、非常時における原子炉への注水方法とした。
【0020】
また、請求項8の発明は、前記請求項4〜6のいずれかに記載の装置において、前記計装配管からT分岐させた管及び当該チャンバーの上部と前記原子炉の気相部とを連結させた配管にそれぞれ設けた弁を閉じ、前記チャンバーの上部又は下部に設けた排気又は排水用の開口の栓を開けて当該チャンバー内に冷水を注入して、当該チャンバー内を満水にし、その後、前記栓を閉めて、当該チャンバーから冷水を使用済み核燃料貯蔵プールへ注水し、これらの工程を複数回繰り返して行う、非常時における使用済み核燃料貯蔵プールへの注水方法とした。
【発明の効果】
【0021】
請求項1及び請求項4の発明によれば、外部電源を喪失し、かつ非常用電源も使用不可能な状況でも、原子炉と水位を同じくしたチャンバーの透明なガラスの窓から内部の千鳥方液面計を目視でき、当該液面計によりチャンバー内の水位及び原子炉内の水位が確認できる。また、前記チャンバーの透明なガラスの窓を原子炉建屋の大物搬入口の扉や非常用脱出口に対向されば、原子炉建屋の外からでもこれらの開口部を通して、チャンバー内の前記液面計を目視でき、水位を計測することができる。さらに、前記チャンバーの前記窓の外にカメラを設け、当該カメラで液面計を撮影すれば、遠距離からでも原子炉の水位を測定できる。しかも、これらの測定には電源は不要であり、非常時に適している。
【0022】
また、請求項2及び請求項5の発明によれば、外部電源を喪失し、かつ非常用電源も使用不可能な状況でも、原子炉と水位を同じくしたチャンバーの水面に向けて、原子炉格納容器または原子炉建屋の外側から超音波レベル計により超音波を発射させて、当該超音波の水面からの反射波の戻り時間により、チャンバー内の水位を計測するため、安全にかつ遠隔地から原子炉内の水位を計測することができる。
【0023】
また、請求項3及び請求項6発明によれば、外部電源を喪失し、かつ非常用電源も使用不可能な状況でも、原子炉と水位を同じくしたチャンバーの水面に向けて、原子炉格納容器の外側からTDRレベル計によりパルス波をチャンバー内の特殊ケーブルに発射させて、当該チャンバー内の水面からの前記パルス波の反射波の戻り時間により、チャンバー内の水位を計測するため、安全にかつ遠隔地から原子炉内の水位を計測することができる。
【0024】
また、請求項7の発明によれば、外部電源を喪失し、かつ非常用電源も使用不可能な状況でも、当該原子炉とチャンバーとを弁により隔離し、高圧となっていないチャンバー内に消防ホース等で注水し、チャンバー内を満水にしてから密閉し、前記弁を開いて原子炉とチャンバーを連通させる。これによりチャンバー内の水の重力で、原子炉内に注水される。従って、従来のような高圧洗浄ポンプを不要とし容易に原子炉に冷水を注入することができる。
【0025】
また、請求項8の発明によれば、外部電源を喪失し、かつ非常用電源も使用不可能な状況でも、当該原子炉とチャンバーとを弁により隔離し、高圧となっていないチャンバー内に消防ホース等で注水し、チャンバー内を満水にしてから密閉し、当該チャンバー内の冷水を使用済み燃料貯蔵プールに注入することができる。その際、前記使用済み燃料貯蔵プールは、一般的に原子炉の上部に位置しており、当該チャンバーから前記使用済み燃料貯蔵プールへの注水は、高さレベルがあまり変わらず、容易である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】この発明の実施の形態例1の非常時における原子炉の水位計測装置の概略構成図である。
【
図2】この発明の実施の形態例1の原子炉の水位計測装置の要部の拡大概略構成断面図である。
【
図3】この発明の実施の形態例1の原子炉の水位計測装置の要部の拡大正面図である。
【
図4】この発明の実施の形態例1の原子炉の水位計測装置の一つの原理を示す構成図である。
【
図6】従来の沸騰型原子炉の水位計測装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
この発明の実施の形態例1の原子炉水位計測方法に使用する装置を図について説明する。
【0028】
図1及び
図2において、原子炉1とほぼ同じ高さで、ほぼ同じ縦方向の長さを有する筒状の密閉されたチャンバー33が設けられている。当該チャンバー33は原子炉格納容器24の外側の原子炉建屋(図示省略)内に設けられている。また、前記原子炉1の圧力、水位、流量を測定するため、原子炉1から、原子炉格納容器24の外に設けた多数の計器13(
図2参照、ただし
図2では1個のみ表示)まで接続された数十本の計装配管14(
図1では2本、また、
図2では1本のみ記載)が設けられている。このうちの複数本の計装配管14に分岐継手27(
図2参照)をそれぞれ設け、当該各分岐継手27に過流逆止弁32付き配管19を接続し、当該配管19の他端を前記チャンバー33の下部に接続したものである。従って、チャンバー33の下部と原子炉1の液相部とは前記配管19及び計装配管14を介して連結されている。
【0029】
また、前記チャンバー33の下部から開閉弁34を設けた配管35を介して外部給水タンク20と接続されている。また、前記チャンバー33の上部から過流逆止弁36付きの配管37を介して原子炉離隔時冷却系の給水系統と接続されている。また、当該チャンバー33の上部から導出した、蒸気取出弁21付き配管22は、原子炉1内の気相部と原子炉離隔時冷却系を介して接続されている。従って、チャンバー33の上部と原子炉1の気相部とは連結されている。さらに、前記チャンバー33の上部には、開閉弁38を設けた配管39が設けられ、その先端は使用済み燃料貯蔵プール28に接続されている。
【0030】
そして、前記チャンバー33内には、
図2に示すように、千鳥型液面計40が、当該チャンバー33の長手方向に沿って設けられている。また、この千鳥型液面計40に対向したチャンバー33の側面には、
図3に示すように、強化ガラスで覆われた窓41が設けられ、当該チャンバー33の外から窓41を通して千鳥型液面計40が目視できる。この千鳥型液面計40は、気相面では赤色となり、液相面では黒色となる。従って、遠くから水面Lを目視可能である。そして、この目視は、原子炉建屋の大物搬入口の扉の外から、また、同非常用脱出口からも可能となる。
【0031】
また、当該チャンバー33の上部には、
図2に示すように、超音波レベル計42が設けられ、チャンバー33内の水面Lに向けて超音波を発射し、水面Lからの反射波を受信できるようになっている。この超音波レベル計42については、原子炉建屋の大物搬入口の中扉の外の中間位置で原子炉1の水位の測定、監視ができるように計器への電源供給、レベル信号の測定用に機器を上記位置まで引き出しておき、非常時の原子炉1の水位の確認を実施する。
【0032】
さらに、当該チャンバー33内の上部から下部に向けて同軸ケーブルの様な、底のない筒状の電気的な導管43a内に芯線43bを設けた特殊ケーブルを有するTDRレベル計(タイム・ドメイン・リフレクトメータ)43が設けられている。
【0033】
当該TRDレベル計43は、
図4に示すように、芯線43bにプラスの電極を接続し、導管43aにマイナスの電極を接続してパルス電流を流すと、芯線43bに流れたパルス電流は導管43a内の水面Lで反射し、前記導管43aを通して戻り、このパルス電流を発射してから計器に戻る時間を計測して、その距離を算出し、当該チャンバー33内の水位を計測する構成となっている。このTDRレベル計43も上記超音波レベル計42と同様に、原子炉建屋の大物搬入口の中扉の外の中間位置で測定可能なように電源や機器類を配置する。
【0034】
また、当該チャンバー33の頂部には開閉自在な栓を有する排気口44が設けられ、また、底部には、開閉自在な栓を有する給水口45が設けられている。
【0035】
なお、この実施の形態例1では、上述のように水位を測る手段として、千鳥型液面計40、超音波レベル計42及びTDRレベル計43の3種類を設けたが、これらのうちの1種類の水位計測手段を設ける場合もある。
【0036】
次に、前記の各水位計測手段により、原子炉1内の水位を監視し、当該水位が低くなった場合に、以下の注入作業を行う。
【0037】
まず、チャンバー33の原子炉1との配管19、22、37の過流逆止弁32、蒸気取出弁21及び過流逆止弁36を閉め、チャンバー33と原子炉1とを断絶する。その後、配管35の開閉弁34を開けて、当該配管35の端部に接続した補給水タンク20からチャンバー33内に注水する。なお、この注水は、補給水タンク20に限らず、消防ホース(図示省略)を前記配管35の端部に接続してもよい。その際、チャンバー33の上部配管39の開閉弁38を閉じ、また、チャンバー33の排気口44の栓を開け、空気を逃しながら注水する。
【0038】
そして、当該注水によりチャンバー33が満水になると前記排気口44から水があふれ出ることにより、満水が分かり、注水を止める。その後、前記配管19及び22の複数の過流逆止弁32と蒸気取出弁21を開ける。これによりチャンバー33の一部の水は前記配管19及び14を介して自重で原子炉1内に入り、前記チャンバー内の水が、低下した原子炉1の水位と同レベルになるまで原子炉1内に入る。これらの操作を繰り返すことにより、チャンバー33を介して、原子炉1内に注水される。
【0039】
また、チャンバー33からの原子炉1への注水に代えて、使用済み燃料貯蔵プール28に注水することもできる。
【0040】
すなわち、チャンバー33を満水にしたのち、配管39の開閉弁38を開け、配管39を用いて前記使用済み燃料貯蔵プール28に注水することも可能である。
【0041】
また、上記実施の形態例1に代えて、原子炉建屋の上部階の壁面内側の可能なスペースに直方体型の注水タンクを複数設置しておき、これらの注水タンクから前記チャンバー33に水の重力で一旦注水し、上記の方法で原子炉1や使用済み燃料貯蔵プール28に注水することもできる。
【符号の説明】
【0042】
1 原子炉 2 主蒸気管
3 タービン 4 復水器
5 復水ポンプ 6 給水加熱器
7 給水ヘッダ 8 蒸気逃がし安全弁
9 圧力抑制室 10 蒸気タービン
11 ポンプ 12 復水貯蔵タンク
13 計器 14 計装配管
15 凝縮槽 16 基準圧力導管
17 水位圧力導管 18 差圧計
19 配管 20 補給水タンク
21 蒸気取出弁 22 配管
24 原子炉格納容器 25 給水逆止弁
26 給水逆止弁 27 分岐継手
28 使用済み燃料貯蔵プール
32 過流逆止弁 33 チャンバー
34 開閉弁 35 配管
36 過流逆止弁 37 配管
38 開閉弁 39 配管
40 千鳥型液面計 41 窓
42 超音波レベル計 43 TDRレベル計
44 排気口 45 給水口