特許第6489907号(P6489907)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6489907高炉水砕スラグの固結防止剤及び固結防止方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6489907
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】高炉水砕スラグの固結防止剤及び固結防止方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 5/00 20060101AFI20190318BHJP
   C21B 3/06 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   C04B5/00 C
   C21B3/06
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2015-75580(P2015-75580)
(22)【出願日】2015年4月2日
(65)【公開番号】特開2015-199661(P2015-199661A)
(43)【公開日】2015年11月12日
【審査請求日】2018年1月11日
(31)【優先権主張番号】特願2014-76833(P2014-76833)
(32)【優先日】2014年4月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000156581
【氏名又は名称】日鉄住金環境株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(74)【代理人】
【識別番号】100098213
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 武
(72)【発明者】
【氏名】市川 康平
【審査官】 永田 史泰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−290905(JP,A)
【文献】 特開2011−201749(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B5/00−5/06
C04B18/14
C21B3/04−3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉水砕スラグに添加されて、前記高炉水砕スラグの固結を防止する高炉水砕スラグの固結防止剤であって、
固結防止主剤及び付着性強化助剤を含有してなり、
前記固結防止主剤は、ソルビトール、グルコン酸及びグルコン酸塩からなる群から選択される1以上の化合物であり、
前記付着性強化助剤がアルミニウム化合物であり、かつ前記固結防止主剤1質量部に対して、前記アルミニウム化合物中の構成元素のAlをAlに換算して得られるAl量として、0.01〜0.07質量部の割合で含有してなることを特徴とする高炉水砕スラグの固結防止剤。
【請求項2】
前記固結防止主剤は、ソルビトールである請求項1に記載の高炉水砕スラグの固結防止剤。
【請求項3】
高炉水砕スラグに添加されて、前記高炉水砕スラグの固結を防止する高炉水砕スラグの固結防止剤セットであって、
固結防止主剤及び付着性強化助剤の組み合わせを含み、前記固結防止主剤は、ソルビトール、グルコン酸及びグルコン酸塩からなる群から選択される1以上の化合物であり、前記付着性強化助剤がアルミニウム化合物であり、かつ、高炉水砕スラグに添加された際に、前記固結防止主剤1質量部に対して、前記アルミニウム化合物中の構成元素のAlをAlに換算して得られるAl量として、0.01〜0.07質量部の割合で含まれるように構成されていることを特徴とする高炉水砕スラグの固結防止剤セット。
【請求項4】
高炉水砕スラグに固結防止剤又は固結防止剤セットを添加して、前記高炉水砕スラグの固結を防止する高炉水砕スラグの固結防止方法であって、
前記固結防止剤として、請求項1又は2に記載の固結防止剤或いは請求項に記載の高炉水砕スラグの固結防止剤セットを用いることを特徴とする高炉水砕スラグの固結防止方法。
【請求項5】
高炉水砕スラグの固結を防止する高炉水砕スラグの固結防止方法であって、
固結防止主剤及び付着性強化助剤を高炉水砕スラグに添加する際に、前記固結防止主剤に、ソルビトール、グルコン酸及びグルコン酸塩からなる群から選択される1以上の化合物を用い、前記付着性強化助剤にアルミニウム化合物を用い、前記固結防止主剤1質量部に対して、前記アルミニウム化合物中の構成元素のAlをAlに換算して得られるAl量として、0.01〜0.07質量部の割合となる量で用いることを特徴とする高炉水砕スラグの固結防止方法。
【請求項6】
前記固結防止主剤は、ソルビトールである請求項に記載の高炉水砕スラグの固結防止方法。
【請求項7】
前記固結防止主剤及び前記付着性強化助剤を、同時に又は時間差を設けて添加する請求項5又は6に記載の高炉水砕スラグの固結防止方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高炉水砕スラグの固結防止剤及び固結防止剤セット、並びに高炉水砕スラグの固結防止方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高炉水砕スラグは、ボールミルでの微粉砕を経てセメント混和材に、また、ロッドミルでの磨砕や天然砂との混合による粒度調整を経てコンクリート用細骨材として用いられている。この時、水砕スラグは、セメント混和材やコンクリート用細骨材の用途として出荷されるまでに、製鉄所で長期間ストックされることが多く、固結現象の発生が大きな課題となっている。特に、コンクリート用細骨材として磨砕した高炉水砕スラグは、細粒分が多くなって保管時に固結現象が発生しやすく、以後の運搬や用途利用に不都合が生じることがあった。
【0003】
従来、高炉水砕スラグの固結防止方法としては、高炉水砕スラグに、各種化合物を含有する固結防止剤を添加することが行われている。例えば、オキシカルボン酸(特許文献1)、糖アルコール類(特許文献2)、ソルビトール(特許文献3)、アクリル酸系重合体(特許文献4)を含有する固結防止剤を添加することが開示されており、また、単独の化合物ではなく複数の化合物を含有する、例えば、カルボキシル基含有ポリマー及びソルビトール(特許文献5)を含有する固結防止剤を添加することも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭54−130496号公報
【特許文献2】特開昭58−104050号公報
【特許文献3】特開昭59−116156号公報
【特許文献4】特開2003−160364号公報
【特許文献5】特開2005−82427号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の特許文献1〜5に開示された固結防止剤は、降雨等による水との接触の無い条件下においては、長期の固結防止効果を得ることができる。しかしながら、これらの固結防止剤は、ガラス質のスラグ表面への付着性については、必ずしも十分であるということはできない。高炉水砕スラグは、固結防止剤と混合され、その後保管されるが、この付着性の不十分さによって、固結防止剤がスラグ表面に十分に付着しないことにより、未付着の固結防止剤が固結防止に寄与できないことや、付着した固結防止剤の水への抵抗性が低下することが問題となる。
【0006】
水への抵抗性については、例えば、固結防止剤と混合された水砕スラグを屋外で保管した場合、降雨等水との接触によって、高炉水砕スラグから固結防止剤が流失し、これによって期待するほど長期の固結防止効果が得られないという問題があった。そのため、高炉水砕スラグのストック時における固結トラブルは後を絶たず、水砕スラグ資源化の大きなネックになっている。
【0007】
水への抵抗性の問題を避けるためには、固結防止剤で処理したスラグを屋内で保管することが考えられるが、保管のための屋内スペースの確保や、搬出・搬入に手間等の解決すべき課題があった。また、予め固結防止剤を大量に添加しておく、又は、固結防止剤を定期的に添加する等の方法も考えられるが、このためには大量の固結防止剤が必要となり、大きなコストの上昇が課題であった。
【0008】
さらに、高炉水砕スラグへの付着性が高く、水との接触によっても流失し難いポリカルボン酸等の高分子化合物の固結防止剤としての適用も検討されているが、発明者等の検討によると、必ずしも十分な固結防止効果を得ることができるとはいい難かった。
【0009】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、高炉水砕スラグに添加されて使用された場合、降雨等の水と接触する機会のある屋外での保管時においても、高炉水砕スラグの固結を防止する成分の流失が抑制され、長期の固結防止効果を実現することが可能な高炉水砕スラグの固結防止剤及び固結防止剤セット、並びに高炉水砕スラグの固結防止方法を提供することを目的とする。
【0010】
換言すれば、本発明は、長期間固結し難い高炉水砕スラグの生産を可能とし、水砕スラグの品質トラブルの低減及び取扱性の向上をもたらし、水砕スラグのさらなる有効利用の促進に寄与することが可能な高炉水砕スラグの固結防止剤及び固結防止剤セット、並びに高炉水砕スラグの固結防止方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明によって、以下の高炉水砕スラグの固結防止剤、高炉水砕スラグの固結防止剤セット、及び高炉水砕スラグの固結防止方法が提供される。
【0012】
[1]高炉水砕スラグに添加されて、前記高炉水砕スラグの固結を防止する高炉水砕スラグの固結防止剤であって、固結防止主剤及び付着性強化助剤を含有してなることを特徴とする高炉水砕スラグの固結防止剤。
[2]前記固結防止主剤は、ソルビトール、グルコン酸及びグルコン酸塩からなる群から選択される1以上の化合物であり、かつ前記付着性強化助剤は、アルミニウム化合物である前記[1]に記載の高炉水砕スラグの固結防止剤。
[3]前記固結防止主剤1質量部に対して、前記付着性強化助剤を、前記アルミニウム化合物中の構成元素のAlをAl23に換算して得られるAl23量として、0.01〜50質量部の割合で含有してなる前記[2]に記載の高炉水砕スラグの固結防止剤。
【0013】
[4]高炉水砕スラグに添加されて、前記高炉水砕スラグの固結を防止する高炉水砕スラグの固結防止剤セットであって、固結防止主剤及び付着性強化助剤の組み合わせを含むことを特徴とする高炉水砕スラグの固結防止剤セット。
[5]前記固結防止主剤は、ソルビトール、グルコン酸及びグルコン酸塩からなる群から選択される1以上の化合物であり、かつ前記付着性強化助剤は、アルミニウム化合物である前記[4]に記載の高炉水砕スラグの固結防止剤セット。
【0014】
[6]高炉水砕スラグに固結防止剤を添加して、前記高炉水砕スラグの固結を防止する高炉水砕スラグの固結防止方法であって、前記固結防止剤として、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の固結防止剤を添加することを特徴とする高炉水砕スラグの固結防止方法(以下、「第1の高炉水砕スラグの固結防止方法」とも記す)。
【0015】
[7]高炉水砕スラグの固結を防止する高炉水砕スラグの固結防止方法であって、固結防止主剤及び付着性強化助剤を高炉水砕スラグに添加することを特徴とする高炉水砕スラグの固結防止方法(以下、「第2の高炉水砕スラグの固結防止方法」とも記す)。
[8]前記固結防止主剤は、ソルビトール、グルコン酸及びグルコン酸塩からなる群から選択される1以上の化合物であり、かつ前記付着性強化助剤は、アルミニウム化合物である前記[7]に記載の高炉水砕スラグの固結防止方法。
[9]前記固結防止主剤1質量部に対して、前記付着性強化助剤を、前記アルミニウム化合物中の構成元素のAlをAl23に換算して得られるAl23量として、0.01〜50質量部の割合で添加する前記[8]に記載の高炉水砕スラグの固結防止方法。
[10]前記固結防止主剤及び前記付着性強化助剤を、同時に又は時間差を設けて添加する前記[7]〜[9]のいずれかに記載の高炉水砕スラグの固結防止方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によって、高炉水砕スラグに添加されて使用された場合、降雨等の水と接触する機会のある屋外での保管時においても、高炉水砕スラグの固結を防止する成分の流失が抑制され、長期の固結防止効果を実現することが可能な高炉水砕スラグの固結防止剤、高炉水砕スラグの固結防止剤セット、及び高炉水砕スラグの固結防止方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本実施の形態の高炉水砕スラグの固結防止剤、高炉水砕スラグの固結防止剤セット、及び高炉水砕スラグの固結防止方法を具体的に説明する。
【0018】
本実施の形態の高炉水砕スラグの固結防止剤は、高炉水砕スラグに添加されて、高炉水砕スラグの固結を防止するために用いられる剤であり、固結防止主剤及び付着性強化助剤を含有してなることを特徴とするものである。また、本実施の形態の高炉水砕スラグの固結防止剤セットは、高炉水砕スラグに添加されて、高炉水砕スラグの固結を防止するために用いられる剤のセットであり、固結防止主剤及び付着性強化助剤の組み合わせを含むことを特徴とするものである。
【0019】
本実施の形態の高炉水砕スラグの固結防止剤及び固結防止剤セットは、それぞれ上述のように構成されることによって、高炉水砕スラグに添加された場合、高炉水砕スラグの固結を防止する成分である固結防止主剤を高炉水砕スラグの表面に多量かつ強固に付着させて付着歩留まりを高めることができるとともに、保管時の水との接触による固結防止主剤の流失を防止し、低コストで長期の固結防止効果を実現することができる。
【0020】
固結防止主剤は、ソルビトール、グルコン酸及びグルコン酸塩からなる群から選択される1以上の化合物であることが好ましい。グルコン酸塩としては、例えば、グルコン酸ナトリウム、グルコン酸カルシウム、グルコン酸アンモニウム、グルコン酸鉄(II)、グルコン酸鉄(III)、グルコン酸カリウムを好適例として挙げることができる。
【0021】
また、付着性強化助剤は、アルミニウム化合物であることが好ましい。アルミニウム化合物としては、特に制限はないが、例えば、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、アルミン酸ソーダ、ポリ塩化アルミニウム等を好適例として挙げることができる。
【0022】
上述のように、固結防止効果には優れるが長期効果に難があるソルビトール、グルコン酸等を固結防止主剤として用い、これと付着性強化助剤を併用することによって、ソルビトール等の固結防止主剤のスラグ表面への付着が飛躍的に改善されて、長期の固結防止効果を確保することができる。
【0023】
また、固結防止剤は、固結防止主剤1質量部に対して、付着性強化助剤を、アルミニウム化合物中の構成元素のAlをAl23に換算して得られるAl23量として、0.01〜50質量部の割合で含有してなることが好ましく、0.02〜5質量部の割合で含有してなることがさらに好ましい。
【0024】
このように構成することによって、高炉水砕スラグへの一度の添加だけで、長期的な固結防止効果を実現することができる。0.01質量部未満であると、十分な付着性改善効果が得られないことがあり、また、50質量部を超えると、所定の固結防止効果を実現するために必要な固結防止剤量に対して付着性強化助剤の添加量が過大となり、コストが増大するとともに、添加による手間が増加することがある。
【0025】
本実施の形態の固結防止剤の剤型としては、特に制限はないが、例えば、固体(錠剤、粉末)、液体等を挙げることができる。また、本実施の形態の固結防止剤セットは、固結防止主剤及び付着性強化助剤が別々の容器に収容された、いわゆる2剤タイプであることが好ましい。なお、各容器に収容される固結防止主剤及び付着性強化助剤の剤型についても特に制限はなく、例えば、固体(錠剤、粉末)、液体等を挙げることができる。
【0026】
本実施の形態の第1の高炉水砕スラグの固結防止方法は、高炉水砕スラグに固結防止剤を添加して、前記高炉水砕スラグの固結を防止する方法であり、本発明の実施形態である前述の固結防止剤を添加することを特徴とするものである。
【0027】
また、本実施の形態の第2の高炉水砕スラグの固結防止方法は、高炉水砕スラグの固結を防止する方法であり、固結防止主剤及び付着性強化助剤を高炉水砕スラグに添加することを特徴とするものである。
【0028】
このように、(i)固結防止主剤及び付着性強化助剤を含有してなる固結防止剤を高炉水砕スラグに添加する(第1の高炉水砕スラグの固結防止方法)、或いは(ii)固結防止主剤及び付着性強化助剤を高炉水砕スラグにそれぞれ添加する(第2の高炉水砕スラグの固結防止方法)ことによって、固結防止主剤を高炉水砕スラグの表面に多量かつ強固に付着させて付着歩留まりを高めることができるとともに、保管時の水との接触による固結防止主剤の流失を防止し、低コストで長期の固結防止効果を実現することができる。
【0029】
付着性強化助剤の形態としては、液体でも固体でもよいが、例えば、液体のものを用い、固結防止主剤と混合後の固結防止剤の剤型を液体状にすることも可能である。この場合、液体状の固結防止剤を水砕スラグに一度添加して混合するだけの簡単な作業によって、また、薬剤貯留タンクや薬剤供給設備の追加の設置を要することなく、長期的な固結防止効果を実現することができる。
【0030】
第2の高炉水砕スラグの固結防止方法においては、固結防止主剤1質量部に対して、付着性強化助剤を、アルミニウム化合物中の構成元素のAlをAl23に換算して得られるAl23量として、0.01〜50質量部の割合で高炉水砕スラグに添加することが好ましく、0.02〜5質量部の割合で高炉水砕スラグに添加することがさらに好ましい。これにより、高炉水砕スラグへの一度の添加だけで、長期的な固結防止効果を実現することができる。
【0031】
第2の高炉水砕スラグの固結防止方法においては、固結防止主剤及び付着性強化助剤を、同時に又は時間差を設けて添加することができる。同時に添加してもよいが、時間差を設けて添加する場合、例えば、固結防止主剤を高炉水砕スラグに一次添加した後に付着性強化助剤を二次添加すると、固結防止主剤が高炉水砕スラグに強固に付着し、高炉水砕スラグの長期的な固結防止効果を維持することができる。このような添加方法は、例えば、高炉水砕スラグの運搬から貯蔵までのプロセスで簡易に行うことが可能であり、具体的には、一次添加はベルトコンベア乗り継ぎ部での散布、二次添加はベルトコンベア切り出し部での散布で効率的に行うことができる。
【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によっていかなる制限を受けるものではない。
【0033】
(実施例1)
5mm以下の粒度に調製した水砕スラグに、固結防止主剤としてソルビトールを、水砕スラグ1tあたり0.2kg、及び付着性強化助剤としてアルミン酸Naを0.014kg−Al23/t(固結防止主剤1質量部に対してアルミニウム化合物中の構成元素のAlをAl23に換算して得られるAl23量として0.07質量部の含有(添加)割合に相当)を添加した。さらに、水砕スラグの含水比が10質量%となる量のイオン交換水を添加し、ハンドシャベルを用いてよく混合し、混合スラグを得た。
【0034】
(実施例2〜4及び比較例1〜6)
実施例1において、固結防止主剤の種類及び添加率並びに付着性強化助剤の種類及び添加量を表1に示すものに変えたこと以外は、実施例1と同様にした。また、表1中のポリアクリル酸Naには、和光純薬工業社製のポリアクリル酸Na(重量平均分子量3,000以下)を用いた。
【0035】
【0036】
[固結防止効果の評価1(水砕スラグへの通水なしの場合)]
上述の実施例1〜4及び比較例1〜6で得られた混合スラグを直径100mm×高さ200mmのサミットモールド内に1.5kg入れたのち、圧力を加えて0.15N/mm2の圧力で3分間載荷した。これを除荷したのち、密封し、40℃で所定の期間養生した。養生開始から28、56、91日間経過後の各試料を取出し、5mm篩でふるった後、篩上に残った水砕スラグの質量を測定し、これをサミットモールドに入れた水砕スラグの総質量で除した値を固結割合(質量%)とし、固結防止効果を評価した。結果を表2に示す。
【0037】
【0038】
表2の結果より、固結防止主剤であるソルビトールを単独で用いた場合(比較例2)と比較して、固結防止主剤のソルビトールに付着性強化助剤であるアルミン酸Na又は硫酸アルミニウムを併用した場合(実施例1、2)は、特に、91日目の固結割合において顕著に低い固結割合を示した。また、固結防止主剤にグルコン酸Naを用いた場合についても、付着性強化助剤を用いない場合(比較例3)と比較して、付着性強化助剤にアルミン酸Na又は硫酸アルミニウムを併用した場合(実施例3、4)は、より低い固結割合を示した。一方、固結防止主剤を添加せず、付着性強化助剤であるアルミニウム化合物のみを用いた場合(比較例5、6)には、顕著な固結防止効果は得られなかった。以上のことから、固結防止主剤に付着性強化助剤を併用することにより、より長期の固結防止効果を得られることが分かる。これは、付着性強化助剤が、固結防止主剤の水砕スラグへの付着性を強化したことによると考えられる。
【0039】
また、水砕スラグへの付着性の高いポリアクリル酸Naを固結防止主剤に用いた場合(比較例4)では、固結防止剤を添加していない場合(比較例1)と比較してわずかに固結防止効果を示したものの、顕著な固結防止効果は得られなかった。
【0040】
(実施例5)
5mm以下の粒度に調製した水砕スラグに、固結防止主剤としてソルビトールを、水砕スラグ1tあたり0.2kg、及び付着性強化助剤としてアルミン酸Naを0.002kg−Al23/t(固結防止主剤1質量部に対してアルミニウム化合物中の構成元素のAlをAl23に換算して得られるAl23量として0.01質量部の含有(添加)割合に相当)を添加した。さらに、水砕スラグの含水比が10質量%となる量のイオン交換水を添加し、ハンドシャベルを用いてよく混合し、混合スラグを得た。
【0041】
(実施例6〜11及び比較例7〜8)
実施例5において、固結防止主剤及び付着性強化助剤の種類及び添加量を表3に示すものに変えたこと以外は、実施例5と同様にした。なお、付着性強化助剤にアルミン酸Na又は硫酸アルミニウムを用いた場合の添加量は、Al23としての添加量(kg−Al23/t)である。また、表3中の実施例11における「ポリDADMAC」とは、「ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド」を意味する。
【0042】
[固結防止効果の評価2(水砕スラグへの通水(雨水)ありの場合)]
ここでは、雨水による水砕スラグからの固結防止主剤の流失を想定し、固結防止主剤と混合された水砕スラグを水と接触させ、流出した水中の固結防止主剤量を測定することで、固結防止主剤のスラグへの付着性を評価するとともに、水と接触させた水砕スラグを養生し、養生後の水砕スラグの固結割合を算出し、固結防止効果(雨水に対する抵抗性)を評価した。
【0043】
まず、排水コック付きサミットモールドを作製した。その手順は以下のとおりである。直径100mm×高さ200mmのサミットモールドの側面に、底面からの高さが15mmとなる位置に穴を開け、ここに内径3mmのステンレスパイプを通し、固定した。次いで、サミットモールド内に200mLの砂利を入れ、その上に5Aろ紙を置いた。さらに、ステンレスパイプに、コックを取り付けたビニールホースを接続し、これを排水コック付きサミットモールドとした。
【0044】
以下に、水と接触させた後の固結防止主剤の流出率の評価方法及び固結割合の算出方法を示す。実施例5〜11及び比較例7〜8で得られた混合スラグを排水コック付きサミットモールド内に900g入れたのち、圧力を加えて0.15N/mm2の圧力で3分間載荷した。これを除荷したのち、排水コックを閉じた状態で700mLのイオン交換水を約5分間かけてゆっくりと滴下した。これを15分間静置したのち、排水コックを開け、流出水を回収した。回収した流出水の全有機炭素量を測定し、添加した固結防止主剤の全有機炭素量に対する比率を固結防止主剤流出率(単位:質量%)とした。
【0045】
さらに、水を流出させた後の排水コック付きサミットモールドのコックを閉じ、密封したのち、40℃で所定の期間養生した。養生開始から28日間経過後の各試料を取出し、5mm篩でふるった後、篩上に残った水砕スラグの質量を測定し、これをサミットモールドに入れた水砕スラグの質量で除した値を固結割合(単位:質量%)とした。結果を、固結防止主剤流出率の測定結果と併せて表3に示す。
【0046】
【0047】
表3に示すように、付着性強化助剤を添加した場合(実施例5〜11)、これらを添加していない場合(比較例7、8)と比較して、固結防止主剤であるソルビトールの流出が抑制されていることが分かる。特にアルミニウム化合物であるアルミン酸ナトリウム又は硫酸アルミニウムを用いた場合に、顕著な流出の抑制効果が得られることがわかる。従って、付着性強化助剤、特にアルミニウム化合物を固結防止主剤と併せて添加することは、水砕スラグへの固結防止主剤の付着性を強化する上で有効であることが分かる。
【0048】
また、表3に示すように、付着性強化助剤、特にアルミニウム化合物であるアルミン酸ナトリウム又は硫酸アルミニウムを添加した場合(実施例5〜9)、これらを添加していない場合(比較例7、8)と比較して、28日目の固結割合が有意に低く、より長期の固結防止効果を与えていることが分かる。これは、付着性強化助剤であるアルミニウム化合物が、水砕スラグへの固結防止主剤の付着を強化して流出を抑制したことに起因するものと考えられる。
【0049】
(実施例12)
5mm以下の粒度に調製した水砕スラグに、固結防止主剤としてソルビトールを、水砕スラグ1tあたり0.2kg、及び水砕スラグの含水比が10質量%となる量のイオン交換水を添加し、ハンドシャベルを用いてよく混合し、5分間放置した。次いで、付着性強化助剤として10質量%濃度に調製したアルミン酸Naを、0.007kg−Al23/tとなる量(固結防止主剤1質量部に対してアルミニウム化合物中の構成元素のAlをAl23に換算して得られるAl23量として0.035質量部の含有(添加)割合に相当)添加し、ハンドシャベルを用いて混合した。
【0050】
[固結防止効果の評価3(付着性強化助剤を後から添加した場合)]
前述の「固結防止効果の評価2(水砕スラグへの通水(雨水)ありの場合)」と同様の方法によって、実施例12の混合スラグからの固結防止主剤流出率及び28日間経過後の固結割合を評価した。
【0051】
その結果、付着性強化助剤を後から添加した実施例12では、固結防止主剤流出率が35質量%、固結割合が34質量%と、付着性強化助剤を固結防止主剤と同時に添加した場合(実施例6)と同等の値となった。このことから、付着性強化助剤は、固結防止主剤と同時に添加した場合でも、固結防止主剤が水砕スラグに添加・混合された後に添加した場合でも同様の効果を得られることがわかる。
【0052】
(実施例13)
特開2003−306357号公報に記載された方法に準拠して、屋外フィールド試験用高炉水砕スラグ細骨材を得た。すなわち、高炉水砕スラグ細骨材をクラッシャーで破砕し、その破砕物に、固結防止主剤と付着性強化助剤とからなる固結防止剤(表4にその組成を示す)を水で希釈した希釈液を、固結防止主剤の破砕物に対する添加率が0.25kg/tとなるように(このときの付着性強化助剤の添加率は0.0071kg−Al23/t)スプレーした後、スクリーンでふるい分けして5mm高炉スラグ細骨材粒度に調整した高炉水砕スラグを得、これを屋外フィールド試験用高炉スラグ細骨材とした。
【0053】
(比較例9、10)
固結防止主剤及び付着性強化助剤のいずれをも添加しなかった(比較例9)、又は固結防止主剤のみを実施例13と同一の添加率で添加し、付着性強化助剤を添加しなかった(比較例10)こと以外は実施例13と同様の方法により、屋外フィールド試験用高炉スラグ細骨材を得た。
【0054】
[固結防止効果の評価4(屋外フィールド試験)]
屋外フィールド試験用高炉スラグ細骨材を、ショベルカーを用いて屋外に高さ3mの山として野積みした。野積みされた山について、野積み開始から1、2、4、6、8及び12週のそれぞれの経過時点で、山内部の固結の程度を評価した(明らかな固結が認められた場合は、その週の次回の評価は行っていない)。固結の程度の評価は、ASTM C 403のプロクター貫入抵抗試験により求めたプロクター貫入抵抗値を指標とし、この抵抗値(単位:(N/mm2)が大きい程固結の程度が大きいと評価した。表5にその結果を示す。
【0055】
【0056】
【0057】
表5より、固結防止主剤及び付着性強化助剤のいずれをも含有する固結防止剤を使用した場合は、12週経過時点でも1週目よりわずかに大きいプロクター貫入抵抗値を示したのみであり、12週の試験期間中において、ほぼ固結が認められなかった。一方、固結防止主剤及び付着性強化助剤のいずれをも添加していない比較例9については、1週目から高いプロクター貫入抵抗値を示し、固結の進行の速さは他の2例と比べて明らかであった。また、固結防止主剤のみを添加し、付着性強化助剤を添加していない比較例10においては、4週目までは実施例13と同等のプロクター貫入抵抗値で推移したが、6週目から実施例13と比較して高いプロクター貫入抵抗値を示し、10週目には明らかな固結が認められた。比較例10と実施例13では、固結防止主剤の高炉スラグ細骨材に対する添加率は同じであり、両者における固結防止性能の違いは、付着性強化助剤によるものであると考えられる。また、上述の比較例5で示したように、付着性強化助剤であるアルミン酸Na単独では、固結防止効果はない、又は非常に小さいため、実施例13で得られた高い固結防止性能は、付着性強化助剤であるアルミン酸Naの固結防止主剤の単純な相加効果ではないといえる。これは、付着性強化助剤が、固結防止主剤の高炉スラグへの付着性を強化したことにより得られたものであると推定される。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、高炉水砕スラグを用いる土木・建築等の産業分野において有効に利用される。