【実施例】
【0032】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によっていかなる制限を受けるものではない。
【0033】
(実施例1)
5mm以下の粒度に調製した水砕スラグに、固結防止主剤としてソルビトールを、水砕スラグ1tあたり0.2kg、及び付着性強化助剤としてアルミン酸Naを0.014kg−Al
2O
3/t(固結防止主剤1質量部に対してアルミニウム化合物中の構成元素のAlをAl
2O
3に換算して得られるAl
2O
3量として0.07質量部の含有(添加)割合に相当)を添加した。さらに、水砕スラグの含水比が10質量%となる量のイオン交換水を添加し、ハンドシャベルを用いてよく混合し、混合スラグを得た。
【0034】
(実施例2〜4及び比較例1〜6)
実施例1において、固結防止主剤の種類及び添加率並びに付着性強化助剤の種類及び添加量を表1に示すものに変えたこと以外は、実施例1と同様にした。また、表1中のポリアクリル酸Naには、和光純薬工業社製のポリアクリル酸Na(重量平均分子量3,000以下)を用いた。
【0035】
【0036】
[固結防止効果の評価1(水砕スラグへの通水なしの場合)]
上述の実施例1〜4及び比較例1〜6で得られた混合スラグを直径100mm×高さ200mmのサミットモールド内に1.5kg入れたのち、圧力を加えて0.15N/mm
2の圧力で3分間載荷した。これを除荷したのち、密封し、40℃で所定の期間養生した。養生開始から28、56、91日間経過後の各試料を取出し、5mm篩でふるった後、篩上に残った水砕スラグの質量を測定し、これをサミットモールドに入れた水砕スラグの総質量で除した値を固結割合(質量%)とし、固結防止効果を評価した。結果を表2に示す。
【0037】
【0038】
表2の結果より、固結防止主剤であるソルビトールを単独で用いた場合(比較例2)と比較して、固結防止主剤のソルビトールに付着性強化助剤であるアルミン酸Na又は硫酸アルミニウムを併用した場合(実施例1、2)は、特に、91日目の固結割合において顕著に低い固結割合を示した。また、固結防止主剤にグルコン酸Naを用いた場合についても、付着性強化助剤を用いない場合(比較例3)と比較して、付着性強化助剤にアルミン酸Na又は硫酸アルミニウムを併用した場合(実施例3、4)は、より低い固結割合を示した。一方、固結防止主剤を添加せず、付着性強化助剤であるアルミニウム化合物のみを用いた場合(比較例5、6)には、顕著な固結防止効果は得られなかった。以上のことから、固結防止主剤に付着性強化助剤を併用することにより、より長期の固結防止効果を得られることが分かる。これは、付着性強化助剤が、固結防止主剤の水砕スラグへの付着性を強化したことによると考えられる。
【0039】
また、水砕スラグへの付着性の高いポリアクリル酸Naを固結防止主剤に用いた場合(比較例4)では、固結防止剤を添加していない場合(比較例1)と比較してわずかに固結防止効果を示したものの、顕著な固結防止効果は得られなかった。
【0040】
(実施例5)
5mm以下の粒度に調製した水砕スラグに、固結防止主剤としてソルビトールを、水砕スラグ1tあたり0.2kg、及び付着性強化助剤としてアルミン酸Naを0.002kg−Al
2O
3/t(固結防止主剤1質量部に対してアルミニウム化合物中の構成元素のAlをAl
2O
3に換算して得られるAl
2O
3量として0.01質量部の含有(添加)割合に相当)を添加した。さらに、水砕スラグの含水比が10質量%となる量のイオン交換水を添加し、ハンドシャベルを用いてよく混合し、混合スラグを得た。
【0041】
(実施例6〜11及び比較例7〜8)
実施例5において、固結防止主剤及び付着性強化助剤の種類及び添加量を表3に示すものに変えたこと以外は、実施例5と同様にした。なお、付着性強化助剤にアルミン酸Na又は硫酸アルミニウムを用いた場合の添加量は、Al
2O
3としての添加量(kg−Al
2O
3/t)である。また、表3中の実施例11における「ポリDADMAC」とは、「ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド」を意味する。
【0042】
[固結防止効果の評価2(水砕スラグへの通水(雨水)ありの場合)]
ここでは、雨水による水砕スラグからの固結防止主剤の流失を想定し、固結防止主剤と混合された水砕スラグを水と接触させ、流出した水中の固結防止主剤量を測定することで、固結防止主剤のスラグへの付着性を評価するとともに、水と接触させた水砕スラグを養生し、養生後の水砕スラグの固結割合を算出し、固結防止効果(雨水に対する抵抗性)を評価した。
【0043】
まず、排水コック付きサミットモールドを作製した。その手順は以下のとおりである。直径100mm×高さ200mmのサミットモールドの側面に、底面からの高さが15mmとなる位置に穴を開け、ここに内径3mmのステンレスパイプを通し、固定した。次いで、サミットモールド内に200mLの砂利を入れ、その上に5Aろ紙を置いた。さらに、ステンレスパイプに、コックを取り付けたビニールホースを接続し、これを排水コック付きサミットモールドとした。
【0044】
以下に、水と接触させた後の固結防止主剤の流出率の評価方法及び固結割合の算出方法を示す。実施例5〜11及び比較例7〜8で得られた混合スラグを排水コック付きサミットモールド内に900g入れたのち、圧力を加えて0.15N/mm
2の圧力で3分間載荷した。これを除荷したのち、排水コックを閉じた状態で700mLのイオン交換水を約5分間かけてゆっくりと滴下した。これを15分間静置したのち、排水コックを開け、流出水を回収した。回収した流出水の全有機炭素量を測定し、添加した固結防止主剤の全有機炭素量に対する比率を固結防止主剤流出率(単位:質量%)とした。
【0045】
さらに、水を流出させた後の排水コック付きサミットモールドのコックを閉じ、密封したのち、40℃で所定の期間養生した。養生開始から28日間経過後の各試料を取出し、5mm篩でふるった後、篩上に残った水砕スラグの質量を測定し、これをサミットモールドに入れた水砕スラグの質量で除した値を固結割合(単位:質量%)とした。結果を、固結防止主剤流出率の測定結果と併せて表3に示す。
【0046】
【0047】
表3に示すように、付着性強化助剤を添加した場合(実施例5〜11)、これらを添加していない場合(比較例7、8)と比較して、固結防止主剤であるソルビトールの流出が抑制されていることが分かる。特にアルミニウム化合物であるアルミン酸ナトリウム又は硫酸アルミニウムを用いた場合に、顕著な流出の抑制効果が得られることがわかる。従って、付着性強化助剤、特にアルミニウム化合物を固結防止主剤と併せて添加することは、水砕スラグへの固結防止主剤の付着性を強化する上で有効であることが分かる。
【0048】
また、表3に示すように、付着性強化助剤、特にアルミニウム化合物であるアルミン酸ナトリウム又は硫酸アルミニウムを添加した場合(実施例5〜9)、これらを添加していない場合(比較例7、8)と比較して、28日目の固結割合が有意に低く、より長期の固結防止効果を与えていることが分かる。これは、付着性強化助剤であるアルミニウム化合物が、水砕スラグへの固結防止主剤の付着を強化して流出を抑制したことに起因するものと考えられる。
【0049】
(実施例12)
5mm以下の粒度に調製した水砕スラグに、固結防止主剤としてソルビトールを、水砕スラグ1tあたり0.2kg、及び水砕スラグの含水比が10質量%となる量のイオン交換水を添加し、ハンドシャベルを用いてよく混合し、5分間放置した。次いで、付着性強化助剤として10質量%濃度に調製したアルミン酸Naを、0.007kg−Al
2O
3/tとなる量(固結防止主剤1質量部に対してアルミニウム化合物中の構成元素のAlをAl
2O
3に換算して得られるAl
2O
3量として0.035質量部の含有(添加)割合に相当)添加し、ハンドシャベルを用いて混合した。
【0050】
[固結防止効果の評価3(付着性強化助剤を後から添加した場合)]
前述の「固結防止効果の評価2(水砕スラグへの通水(雨水)ありの場合)」と同様の方法によって、実施例12の混合スラグからの固結防止主剤流出率及び28日間経過後の固結割合を評価した。
【0051】
その結果、付着性強化助剤を後から添加した実施例12では、固結防止主剤流出率が35質量%、固結割合が34質量%と、付着性強化助剤を固結防止主剤と同時に添加した場合(実施例6)と同等の値となった。このことから、付着性強化助剤は、固結防止主剤と同時に添加した場合でも、固結防止主剤が水砕スラグに添加・混合された後に添加した場合でも同様の効果を得られることがわかる。
【0052】
(実施例13)
特開2003−306357号公報に記載された方法に準拠して、屋外フィールド試験用高炉水砕スラグ細骨材を得た。すなわち、高炉水砕スラグ細骨材をクラッシャーで破砕し、その破砕物に、固結防止主剤と付着性強化助剤とからなる固結防止剤(表4にその組成を示す)を水で希釈した希釈液を、固結防止主剤の破砕物に対する添加率が0.25kg/tとなるように(このときの付着性強化助剤の添加率は0.0071kg−Al
2O
3/t)スプレーした後、スクリーンでふるい分けして5mm高炉スラグ細骨材粒度に調整した高炉水砕スラグを得、これを屋外フィールド試験用高炉スラグ細骨材とした。
【0053】
(比較例9、10)
固結防止主剤及び付着性強化助剤のいずれをも添加しなかった(比較例9)、又は固結防止主剤のみを実施例13と同一の添加率で添加し、付着性強化助剤を添加しなかった(比較例10)こと以外は実施例13と同様の方法により、屋外フィールド試験用高炉スラグ細骨材を得た。
【0054】
[固結防止効果の評価4(屋外フィールド試験)]
屋外フィールド試験用高炉スラグ細骨材を、ショベルカーを用いて屋外に高さ3mの山として野積みした。野積みされた山について、野積み開始から1、2、4、6、8及び12週のそれぞれの経過時点で、山内部の固結の程度を評価した(明らかな固結が認められた場合は、その週の次回の評価は行っていない)。固結の程度の評価は、ASTM C 403のプロクター貫入抵抗試験により求めたプロクター貫入抵抗値を指標とし、この抵抗値(単位:(N/mm
2)が大きい程固結の程度が大きいと評価した。表5にその結果を示す。
【0055】
【0056】
【0057】
表5より、固結防止主剤及び付着性強化助剤のいずれをも含有する固結防止剤を使用した場合は、12週経過時点でも1週目よりわずかに大きいプロクター貫入抵抗値を示したのみであり、12週の試験期間中において、ほぼ固結が認められなかった。一方、固結防止主剤及び付着性強化助剤のいずれをも添加していない比較例9については、1週目から高いプロクター貫入抵抗値を示し、固結の進行の速さは他の2例と比べて明らかであった。また、固結防止主剤のみを添加し、付着性強化助剤を添加していない比較例10においては、4週目までは実施例13と同等のプロクター貫入抵抗値で推移したが、6週目から実施例13と比較して高いプロクター貫入抵抗値を示し、10週目には明らかな固結が認められた。比較例10と実施例13では、固結防止主剤の高炉スラグ細骨材に対する添加率は同じであり、両者における固結防止性能の違いは、付着性強化助剤によるものであると考えられる。また、上述の比較例5で示したように、付着性強化助剤であるアルミン酸Na単独では、固結防止効果はない、又は非常に小さいため、実施例13で得られた高い固結防止性能は、付着性強化助剤であるアルミン酸Naの固結防止主剤の単純な相加効果ではないといえる。これは、付着性強化助剤が、固結防止主剤の高炉スラグへの付着性を強化したことにより得られたものであると推定される。