(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
極性ゴムを除いた熱硬化性ゴムが、エチレン‐プロピレンコポリマー(EPM)、エチレン‐プロピレン‐ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン‐オクテンコポリマー(EOM)、エチレン‐ブテンコポリマー(EBM)、エチレン‐オクテンターポリマー(EODM)、エチレン‐ブテンターポリマー(EBDM)、エチレン/アクリル酸ゴム(EAM)、ポリブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(合成ポリイソプレンを含む) (NR)、スチレン‐ブタジエン‐スチレンおよびスチレン‐エチレン‐ブタジエン‐スチレンブロックコポリマー、およびシリコーンゴムから選ばれるものである、請求項1〜8のいずれか1項記載の複合成形体。
前記の積算エネルギー密度E3を所定範囲にすることによって、1本の線(溝)の長さ方向に直交する方法の断面形状が次の(a)〜(d)の断面形状を含み、前記(a)〜(d)の断面形状の合計数の内、(a)鍵穴溝と(b)独立穴の合計数が50%以上になるように制御して、前記金属成形体と前記ゴム成形体の接合強度を制御する、請求項16記載の複合成形体の製造方法。
(a)鍵穴溝
開口部幅D1、第1内部幅D2、および第2内部幅D3の大小関係が、D1=D2<D3、D1>D3>D2、D2>D3>D1およびD3>D1>D2を満たす断面形状部分(但し、D1=D2=D3は含まれない)
(b)独立穴
見かけ上は独立した穴であるが、溝の側壁部の一端側または両端側が熱溶融して幅方向に突き出され、開口部に橋が架けられて蓋がされたような構造になっているもの。
(c)W字溝
溝の底部または底部と側壁部が熱溶融して形成された突起が、溝の長さ方向に突き出された構造になっているものであり、前記突起を含む断面形状がW字形状になっているもの。
(d)V字溝
断面形状がV字形状の溝。
極性ゴムを除いた熱硬化性ゴムが、エチレン‐プロピレンコポリマー(EPM)、エチレン‐プロピレン‐ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン‐オクテンコポリマー(EOM)、エチレン‐ブテンコポリマー(EBM)、エチレン‐オクテンターポリマー(EODM)、エチレン‐ブテンターポリマー(EBDM)、エチレン/アクリル酸ゴム(EAM)、ポリブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(合成ポリイソプレンを含む) (NR)、スチレン‐ブタジエン‐スチレンおよびスチレン‐エチレン‐ブタジエン‐スチレンブロックコポリマー、およびシリコーンゴムから選ばれるものである、請求項10〜17のいずれか1項記載の複合成形体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<金属成形体とゴム成形体からなる複合成形体1(接着剤層を含まない)>
本発明の複合成形体1は、
図1または
図2に示すように、金属成形体10とゴム成形体20が金属成形体10の粗面化された接合面12において接合されたものである。
本発明の複合成形体1において、ゴム成形体を構成するゴムには、熱可塑性エラストマーは含まれない。
【0017】
連続波レーザーの照射により粗面化された接合面12を含む金属成形体10の表層部の断面状態について、
図3、
図4、
図5により説明する。
図3は、接合面12に多数の線(図面では3本の線61〜63を示している。各線の間隔は50μm程度)が形成されて粗面化された状態を示している。なお、「金属成形体10の表層部」は、表面から粗面化により形成された開放孔(幹孔または枝孔)の深さ程度までの部分であり、約50μm〜約500μmの範囲である。
粗面化された接合面12を含む金属成形体10の表層部は、
図4、
図5に示すように、接合面12側に開口部31のある開放孔30を有している。
開放孔30は、厚さ方向に形成された開口部31を有する幹孔32と、幹孔32の内壁面から幹孔32とは異なる方向に形成された枝孔33からなる。枝孔33は、1本または複数本形成されていてもよい。
なお、複合成形体1において金属成形体10とゴム成形体20の接合強度が維持できるのであれば、開放孔30の一部が幹孔32のみからなり、枝孔33がないものでもよい。
【0018】
粗面化された接合面12を含む金属成形体10の表層部は、
図4、
図5に示すように、接合面12側に開口部のない内部空間40を有している。
内部空間40は、トンネル接続路50により開放孔30と接続されている。
【0019】
粗面化された接合面12を含む金属成形体10の表層部は、
図4(b)に示すように、複数の開放孔30が一つになった開放空間45を有していてもよいし、開放空間45は、開放孔30と内部空間40が一つになって形成されたものでもよい。一つの開放空間45は、一つの開放孔30よりも内容積の大きなものである。
なお、多数の開放孔30が一つになって溝状の開放空間45が形成されていてもよい。
【0020】
図示していないが、
図5(a)に示すような2つの内部空間40同士がトンネル接続路50で接続されていてもよいし、
図4(b)に示すような開放空間45と、開口孔30、内部空間40、他の開放空間45がトンネル接続路50で接続されていてもよい。
【0021】
内部空間40は、全てが開放孔30および開放空間45の一方または両方とトンネル接続路50で接続されているものであるが、複合成形体1において金属成形体10とゴム成形体20の接合強度が維持できるのであれば、内部空間40のうちの一部が開放孔30および開放空間45と接続されていない閉塞状態の空間であってもよい。
【0022】
本発明の複合成形体1は、金属成形体10が有している開放孔30、内部空間40、トンネル接続路50、開放空間45内に、ゴム成形体20を形成する未硬化ゴムが入り込んだ後、硬化された状態で一体化されている。
開放孔30(幹孔32と枝孔33)と開放空間45の内部には、それぞれの開口部分からゴムが入り込んでおり、内部空間40の内部には、開放孔30や開放空間45の開口部から入り込んだゴムがトンネル接続路50を通って入り込んでいる。
このため、本発明の複合成形体1は、開放孔30や開放空間45内のみにゴムが入り込んだ複合成形体と比べると、
図1において金属成形体10とゴム成形体20の接合面12に対して、金属成形体10の端部を固定した状態でゴム成形体20を平行方向(
図1のX方向)に引っ張ったときの引張強度(S1)と、金属成形体10とゴム成形体20の接合面12に対して垂直方向(
図1のY方向)に引っ張ったときの引張強度(S2)の両方が高くなる。
S1とS2は、開放孔30や開放空間45の形成密度や深さを調整し、同時に内部空間40とトンネル接続路50などの形成密度を調整することで、適宜調整することができる。
【0023】
<金属成形体とゴム成形体からなる複合成形体2(接着剤層を含んでいる)>
本発明の複合成形体2は、
図1または
図2により説明すると、金属成形体10とゴム成形体20が金属成形体10の粗面化された接合面12に形成された接着剤層を介して接合されたものである。なお、接着剤層は図示していない。
本発明の複合成形体2において、ゴム成形体を構成するゴムには、熱可塑性エラストマーは含まれない。
【0024】
本発明の複合成形体2は、金属成形体10が有している開放孔30、内部空間40、トンネル接続路50、開放空間45内に接着剤が入り込み、さらに接合面12も覆って形成された接着剤層を介して、金属成形体10とゴム成形体20が接合されている。
開放孔30(幹孔32と枝孔33)と開放空間45の内部には、それぞれの開口部分からゴムが入り込んでおり、内部空間40の内部には、開放孔30や開放空間45の開口部から入り込んだゴムがトンネル接続路50を通って入り込んでいる。
このため、本発明の複合成形体1は、開放孔30や開放空間45内のみに接着剤が入り込んだ複合成形体と比べると、
図1において金属成形体10とゴム成形体20の接合面12に対して、金属成形体10の端部を固定した状態でゴム成形体20を平行方向(
図1のX方向)に引っ張ったときの引張強度(S1)と、金属成形体10とゴム成形体20の接合面12に対して垂直方向(
図1のY方向)に引っ張ったときの引張強度(S2)の両方が高くなる。
S1とS2は、開放孔30や開放空間45の形成密度や深さを調整し、同時に内部空間40とトンネル接続路50などの形成密度を調整することで、適宜調整することができる。
【0025】
<複合成形体1(接着剤層を含まない)の製造方法>
以下、複合成形体1の製造方法を工程ごとに説明する。
最初の工程では、金属成形体10の接合面12に対して、連続波レーザーを使用して2000mm/sec以上の照射速度でレーザー光を連続照射する。
この工程では、接合面12に対して高い照射速度でレーザー光を連続照射することで、ごく短時間で接合面12を粗面にすることができる。
図1の接合面12(部分拡大図)は、粗面にされた状態が誇張されて図示されている。
【0026】
連続波レーザーの照射速度は、2000〜20,000mm/secが好ましく、2,000〜18,000mm/secがより好ましく、2,000〜15,000mm/secがさらに好ましい。
連続波レーザーの照射速度が前記範囲であると、加工速度を高めることができ(即ち、加工時間を短縮することができ)、接合強度も高いレベルに維持することができる。
【0027】
この工程では、下記要件(A)、(B)であるときの加工時間が0.1〜30秒の範囲になるようにレーザー光を連続照射することが好ましい。
(A)レーザー光の照射速度が2000〜15000mm/sec
(B)金属成形体の接合面の面積が100mm
2
要件(A)、(B)であるときの加工時間を上記範囲内にするとき、接合面12の全面を粗面にする(粗面化する)ことができる。
【0028】
レーザー光の連続照射は、例えば次のような方法を適用することができるが、接合面12を粗面化できる方法であれば特に制限されるものではない。
(I)
図9、
図10に示すように、接合面(例えば長方形とする)12の一辺(短辺または長辺)側から反対側の辺に向かって1本の直線または曲線が形成されるように連続照射し、これを繰り返して複数本の直線または曲線を形成する方法。
(II)接合面12の一辺側から反対側の辺に向かって連続的に直線または曲線が形成されるように連続照射し、今度は逆方向に間隔をおいての直線または曲線が形成されるように連続照射することを繰り返す方法。
(III)接合面12の一辺側から反対側の辺に向かって連続照射し、今度は直交する方向に対して連続照射する方法。
(IV)接合面12に対してランダムに連続照射する方法。
【0029】
(I)〜(IV)の方法を実施するとき、レーザー光を複数回連続照射して1本の直線または1本の曲線を形成することもできる。
同じ連続照射条件であれば、1本の直線または1本の曲線を形成するための照射回数(繰り返し回数)が増加するほど接合面12に対する粗面化の程度が大きくなる。
【0030】
(I)、(II)の方法において、複数本の直線または複数本の曲線を形成するとき、それぞれの直線または曲線が0.005〜1mmの範囲(
図9に示すb1の間隔)で等間隔に形成されるようにレーザー光を連続照射することができる。
このときの間隔は、レーザー光のビーム径(スポット径)よりも大きくなるようにする、また、このときの直線または曲線の本数は、金属成形体10の接合面の面積に応じて調整することができる。
【0031】
(I)、(II)の方法において、複数本の直線または複数本の曲線を形成するとき、それぞれの直線または曲線が0.005〜1mmの範囲(
図9、
図10に示すb1の間隔)で等間隔に形成されるようにレーザー光を連続照射することができる。
そして、これらの複数本の直線または複数本の曲線を1群として、これを複数群形成することができる。
このときの各群の間隔は0.01〜1mmの範囲(
図10に示すb2の間隔)で等間隔になるようにすることができる。
なお、
図9、
図10に示す連続照射方法に代えて、
図11に示すように、連続照射開始から連続照射終了までの間、中断することなく連続照射する方法も実施することができる。
【0032】
レーザー光の連続照射は、例えば次のような条件で実施することができる。
出力は4〜4000Wが好ましく、50〜2500Wがより好ましく、100〜2000Wがさらに好ましく、250〜2000Wがさらに好ましい。
ビーム径(スポット径)は5〜200μmが好ましく、5〜100μmがより好ましく、10〜100μmがさらに好ましく、11〜80μmがさらに好ましい。
波長は300〜1200nmが好ましく、500〜1200nmがより好ましい。
焦点位置は-10〜+10mmが好ましく、−6〜+6mmがより好ましい。
【0033】
さらに出力とスポット径の組み合わせの好ましい範囲は、次式から求められるエネルギー密度E1(W/μm
2)より選択することができる。
エネルギー密度E1(W/μm
2)=レーザー出力(W)×レーザー照射スポット面積(π・〔スポット径/2〕
2)
エネルギー密度E1(W/μm
2)は、0.1W/μm
2以上が好ましく、0.2〜10W/μm
2がさらに好ましく、0.2〜6.0W/μm
2がさらに好ましい。
エネルギー密度E1(W/μm
2)が同じであるとき、出力(W)が大きい方がより大きなスポット面積(μm
2)に対してレーザー照射できることになるため、処理速度(1秒当たりのレーザー照射面積;mm
2/sec)が大きくなり、加工時間も短くすることができる。
連続波レーザーの照射速度、レーザー出力、レーザービーム径(スポット径)およびエネルギー密度E1との好ましい関係は、連続波レーザーの照射速度が2,000〜15,000mm/secであり、レーザー出力が250〜2000W、レーザービーム径(スポット径)が10〜100μmであり、前記レーザー出力とスポット面積(π・〔スポット径/2〕
2)から求められるエネルギー密度E1(W/μm
2)が0.2〜10W/μm
2の範囲である。
【0034】
前記金属成形体の金属は特に制限されるものではなく、用途に応じて公知の金属から適宜選択することができる。
例えば、鉄、各種ステンレス、アルミニウム、亜鉛、チタン、銅、黄銅、クロムめっき鋼、マグネシウムおよびそれらを含む合金、タングステンカーバイド、クロミウムカーバイドなどのサーメットから選ばれるものを挙げることができ、これらの金属に対して、アルマイト処理、めっき処理などの表面処理を施したものに適用できる。
【0035】
連続波レーザーは公知のものを使用することができ、例えば、YVO4レーザー、ファイバーレーザー(好ましくはシングルモードファイバーレーザー)、エキシマレーザー、炭酸ガスレーザー、紫外線レーザー、YAGレーザー、半導体レーザー、ガラスレーザー、ルビーレーザー、He−Neレーザー、窒素レーザー、キレートレーザー、色素レーザーを使用することができる。これらの中でもエネルギー密度が高められることから、ファイバーレーザーが好ましく、特にシングルモードファイバーレーザーが好ましい。
【0036】
本発明の複合成形体の製造方法では、金属成形体の接合面12に対して、連続波レーザーを使用して2000mm/sec以上の照射速度でレーザー光を連続照射しているため、レーザー光が連続照射された部分は粗面化される。
このときの金属成形体の接合面12の状態は、上記した複合成形体1においてとおり
図4、
図5に示すようになる。
図3に示すとおり、レーザー光(例えば、スポット径11μm)を連続照射して多数の線(図面では3本の線61〜63を示している。各線の間隔は50μm程度。)を形成することで粗面化することができる。1本の直線への照射回数は1〜10回が好ましい。
1本の直線への照射の繰り返し回数(パス回数)が10回を超える回数である場合には、粗面化のレベルをより高めることができ、複合成形体1において金属成形体10とゴム成形体20の接合強度を高めることができるが、合計照射時間が長くなる。このため、目的とする複合成形体1の接合強度と製造時間との関係を考慮して、1本の直線への照射回数を決めることが好ましい。
1本の直線への照射の繰り返し回数(パス回数)が10回を超える回数であるとき、好ましくは10回超〜50回以下、より好ましくは15〜40回、さらに好ましくは20〜35回である。
1本の直線に繰り返し照射するときは、双方向照射と一方向照射を選択することができる。
双方向放射は、1本のライン(溝)を形成するとき、ライン(溝)の第1端部から第2端部に連続波レーザーを照射した後、第2端部から第1端部に連続波レーザーを照射して、その後は、第1端部から第2端部、第2端部から第1端部というように繰り返し連続波レーザーを照射する方法である。
一方向照射は、第1端部から第2端部への一方向の連続波レーザー照射を繰り返す方法である。
【0037】
レーザー光を連続照射したときに
図4、
図5で示されるような開放孔30、内部空間40などが形成される詳細は不明であるが、所定速度以上でレーザー光を連続照射したとき、金属成形体10の表面に一旦は孔や溝が形成されるが、溶融した金属が盛り上がって蓋をしたり、堰き止めたりする結果、開放孔30、内部空間40、開放空間45が形成されるものと考えられる。
また、同様に開放孔30の枝孔33やトンネル接続路50が形成される詳細も不明であるが、一旦形成された孔や溝の底部付近に滞留した熱によって、孔や溝の側壁部分が溶融する結果、幹孔32の内壁面が溶融して枝孔33が形成され、さらに枝孔33が延ばされてトンネル接続路50が形成されるものと考えられる。
なお、連続波レーザーに代えてパルスレーザーを使用したときには、金属成形体10の接合面12には開放孔や溝が形成されるが、開口部を有していない内部空間と、前記開放孔と前記内部空間を接続する接続通路は形成されない。
【0038】
本発明の複合成形体の製造方法は、金属成形体の接合面12に対するレーザー光を連続照射する工程においては、下記式からもとめられる、1回のスキャンで単位面積あたりの金属に与えるエネルギー量であるエネルギー密度E2(J/μm
2)が1×10
-7≦E2≦4×10
-5の範囲になるようにレーザー光を連続照射することができる。
また本発明の複合成形体の製造方法は、下記式から求められる、1回以上のスキャンで単位面積あたりの金属に与えるエネルギー積算量であるエネルギー密度E3(J/μm
2)が5×10
-7≦E3≦8×10
-4の範囲になるようにレーザー照射することにより1本の線(溝)の長さ方向に直交する方向の断面形状を制御して、前記金属成形体と前記ゴム成形体の接合強度を制御することができる。
E2=(出力〔W〕)/(スポット径〔μm〕×照射速度〔mm/sec〕×1000)
E3=E2×パス回数
(式中、
出力(W)が20〜950Wであり、
スポット径(μm)が5〜100μmであり、
連続波レーザーの照射速度が2,000〜15,000mm/secであり、
パス回数が5〜20回である。)
【0039】
本発明の複合成形体の製造方法は、金属成形体の接合面12に対するレーザー光を連続照射する工程においては、積算エネルギー密度E3を調整することによって、1本の線(溝)の長さ方向に直交する方向の断面形状が次の(a)〜(d)の断面形状を含み、前記(a)〜(d)の断面形状の合計数の内、(a)鍵穴溝と(b)独立穴の合計数が50%以上になるように制御して、前記金属成形体と前記ゴム成形体の接合強度を制御することができる。
前記(a)〜(d)の断面形状の合計数の内、(a)鍵穴溝と(b)独立穴の合計数は、前記の接合強度を高める点から、60%以上であることが好ましく、70%以上であることがより好ましく、75%以上であることがさらに好ましい。
また、前記(a)〜(d)の断面形状の合計数の内、(a)鍵穴溝の数は、前記の接合強度を高める点から、20%以上であることが好ましく、30%以上であることがさらに好ましい。
(a)〜(d)の断面形状のそれぞれの割合は、実施例に記載の測定方法により求めることができる。
【0040】
(a)鍵穴溝
図6(a)、
図7(a)は、接合面12に形成された断面形状が鍵穴に類似した形状の溝(鍵穴溝)201である。開口部幅D1、第1内部幅D2、第2内部幅D3の大小関係は、
図6(a)に示すD1=D2<D3の関係に限定されない。第1内部幅D2は、中間付近の深さ位置の幅であり、溝幅が最小または最大になる部分の幅である。
第2内部幅D3は、第1内部幅D2から底面までの間の幅であり、第1内部幅D2が溝幅の最大値であるときはD2>D3の関係となり、第1内部幅D2が最小径であるときは、D3>D2の関係となる。
開口部幅D1、第1内部幅D2および第2内部幅D3の大小関係は、D1=D2<D3のほか、
図8(a)に示すD1>D3>D2、
図8(b)に示すD2>D3>D1および
図8(c)に示すD3>D1>D2を満たしているものでもよい。但し、D1=D2=D3は含まれない。
【0041】
(b)独立穴
図6(b)は、接合面12に形成された見かけ上は独立した穴(独立穴)202である。
独立穴202は、
図7(b)に示すように、接合面12に形成された溝の側壁部の一端側または両端側が熱溶融して幅方向に突き出された結果、橋が架けられたような構造(蓋がされたような構造)になっているものである。
図6(b)は、
図7(b)において実線で示す位置の矢印方向からの断面図である。
【0042】
(c)W字溝
図6(c)は、接合面12に形成された見かけ上はW字形状の溝(W字溝)203である。
W字溝は、溝
図7(b)、
図8(d)に示すように、の底部または底部と側壁部が熱溶融して形成された突起211が、溝の長さ方向に突き出された構造になっているものであり、前記突起を含む断面形状がW字形状になっているものである。
図6(c)は、
図7(c)および
図8(d)において実線で示す位置の矢印方向からの断面図である。
【0043】
(d)V字溝
図6(d)、
図7(d)は、接合面12に形成された断面形状がV字形状の溝(V字溝)204である。開口部幅(D11)が最大で、内部幅D12は開口部幅D11よりも小さくなっている。
【0044】
次の工程では、粗面化された金属成形体10の接合面12を含む部分とゴム成形体20を一体化させる。
金属成形体10とゴム成形体20を一体化させる方法としては、例えば、特許文献3、4に記載された公知の成形法を適用することができるが、それらの中でもプレス成形法、トランスファー成形法が好ましい。
プレス成形法を適用するときは、レーザー光が照射された金属成形体10の接合面12を含む部分を金型内に配置して、金属成形体10の接合面12に対して、加熱および加圧した状態で前記ゴム成形体となる未硬化ゴムをプレスした後、冷却後に取り出す。
トランスファー成形法を適用するときは、レーザー光が照射された金属成形体10の接合面12を含む部分を金型内に配置して、金属成形体10の接合面12に対して、未硬化ゴムを金型内に射出成形し、その後、加熱および加圧して金属成形体10の接合面12とゴム成形体20を一体化させ、冷却後に取り出す。
なお、使用するゴムの種類によっては、主として残留モノマーを除去するため、金型から取り出した後、オーブンなどでさらに二次加熱(二次硬化)する工程を付加することができる。
【0045】
この工程で使用するゴム成形体20のゴムは特に制限されるものではなく、公知のゴムを使用することができるが、熱可塑性エラストマー
と極性ゴムは含まれない。
公知のゴムとしては、エチレン‐プロピレンコポリマー(EPM)、エチレン‐プロピレン‐ジエンターポリマー(EPDM)、エチレン‐オクテンコポリマー(EOM)、エチレン‐ブテンコポリマー(EBM)、エチレン‐オクテンターポリマー(EODM)、エチレン‐ブテンターポリマー(EBDM)などのエチレン‐α‐オレフィンゴム;
エチレン/アクリル酸ゴム(EAM)、ポリクロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリル‐ブタジエンゴム(NBR)、水添NBR (HNBR)、スチレン‐ブタジエンゴム(SBR)、アルキル化クロロスルホン化ポリエチレン(ACSM)、エピクロルヒドリン(ECO)、ポリブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(合成ポリイソプレンを含む) (NR)、塩素化ポリエチレン(CPE)、ブロム化ポリメチルスチレン‐ブテンコポリマー、スチレン‐ブタジエン‐スチレンおよびスチレン‐エチレン‐ブタジエン‐スチレンブロックコポリマー、アクリルゴム(ACM)、エチレン‐酢酸ビニルエラストマー(EVM)、およびシリコーンゴムなどを使用することができる。
【0046】
ゴムには、必要によりゴムの種類に応じた硬化剤を含有させるが、その他、公知の各種ゴム用添加剤を配合することができる。ゴム用添加剤としては、硬化促進剤、老化防止剤、シランカップリング剤、補強剤、難燃剤、オゾン劣化防止剤、充填剤、プロセスオイル、可塑剤、粘着付与剤、加工助剤などを使用することができる。
【0047】
本発明の製造方法により得られた複合成形体1は、
図4および
図5に示すような金属成形体10が有している開放孔30、内部空間40、トンネル接続路50、開放空間45内に、ゴム成形体20を形成する未硬化ゴムが入り込んで硬化した状態で一体にされている。
開放孔30と(幹孔32と枝孔33)開放空間45の内部には、それぞれの開口部分からゴムが入り込んでおり、内部空間40の内部には、開放孔30や開放空間45の開口部から入り込んだゴムがトンネル接続路50を通って入り込んでいる。
このため、本発明の製造方法により得られた複合成形体1は、開放孔30や開放空間45内のみにゴムが入り込んだ複合成形体と比べると、
図1において金属成形体10とゴム成形体20の接合面12に対して、金属成形体10の端部を固定した状態でゴム成形体20を平行方向(
図1のX方向)に引っ張ったときのせん断接合強度(S1)と、金属成形体10とゴム成形体20の接合面12に対して垂直方向(
図1のY方向)に引っ張ったときの引張り接合強度(S2)の両方が高くなる。
【0048】
さらにこのようにして得られた金属成形体10とゴム成形体20の複合成形体1の接合強度は、金属成形体10の接合面12に対して何も処理しないでトランスファー成形法を適用してゴム成形体20を一体化させて得た複合成形体、および金属成形体10の接合面12に対してエッチング処理などの化学的処理またはサンドブラスト処理などの物理的処理をした後でトランスファー成形法を適用してゴム成形体20を一体化させて得た複合成形体と比べると、金属成形体10とゴム成形体20との接合強度よりも高くすることができる。
【0049】
さらに上記したとおり、接合面12に対して連続波レーザーを照射するとき、積算エネルギー密度E3を調整することで、
図6(a)〜(d)に示す断面形状の鍵穴溝201、独立穴202、W字溝203、V字溝204の数の割合を増減させることができる。
このようにして
図6(a)〜(d)に示す断面形状の鍵穴溝201、独立穴202、W字溝203、V字溝204の数の割合を増減させることで、金属成形体10とゴム成形体20の接合強度を所望範囲に制御できるようになる。
【0050】
<複合成形体2(接着剤層を含む)の製造方法>
金属成形体10とゴム成形体20の間に接着剤層を介在させた複合成形体2の製造方法について説明する。
最初の工程にて、上記した方法と同様に連続波レーザーを使用して、金属成形体10の接合面12を粗面化する。
この粗面化処理によって、金属成形体10の接合面12は
図4、
図5に示すような状態になっている。
また、上記したとおり、接合面12に対して連続波レーザーを照射するときの積算エネルギー密度E3を調整することで、
図6(a)〜(d)に示す断面形状の鍵穴溝201、独立穴202、W字溝203、V字溝204の数の割合を増減させる工程を実施することもできる。
【0051】
次の工程にて、粗面化した金属成形体10の接合面12に接着剤(接着剤溶液)を塗布して接着剤層を形成する。このとき、接着剤を圧入するようにしてもよい。
接着剤を塗布することで、
図4、
図5に示すような開放孔30、内部空間40、開放空間45、開放孔30の枝孔33やトンネル接続路50内に接着剤を侵入させ、さらにそれらから溢れた接着剤が接合面12の表面(開放孔30などの外)も覆うようにすることで、接着剤層を形成する。
接着剤(接着剤溶液)は、開放孔30などの内部に侵入し易くなるように粘度を調節することが好ましい。
なお、この工程では、金属成形体10の接合面12と接合させるゴム成形体20の面にも接着剤を塗布することができる。
【0052】
接着剤は、特に制限されるものではなく、公知の熱可塑性接着剤、熱硬化性接着剤、ゴム系接着剤などを使用することができる。
熱可塑性接着剤としては、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、アクリル系接着剤、ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマー、塩素化ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、プラスチゾル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ポリアミド、ナイロン、飽和無定形ポリエステル、セルロース誘導体を挙げることができる。
熱硬化性接着剤としては、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、レソルシノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、ビニルウレタンを挙げることができる。
ゴム系接着剤としては、天然ゴム、合成ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ニトリルゴム、スチレン−ブタジエンゴム、スチレン−ブタジエン−ビニルピリジン三元共重合体、ポリイソブチレン−ブチルゴム、ポリスルフィドゴム、シリコーンRTV、塩化ゴム、臭化ゴム、クラフトゴム、ブロック共重合体、液状ゴムを挙げることができる。
【0053】
次の工程にて、
前工程において接着剤層を形成した金属成形体10の接合面12に対して別途成形したゴム成形体20を接着する工程、または
前工程において接着剤層を形成した金属成形体の接合面を含む部分を金型内に配置して、金属成形体の接合面とゴム成形体となる未硬化ゴムを接触させた状態で加熱および加圧して一体化させる工程を実施する。この工程の場合には、主として残留モノマーを除去するため、金型から取り出した後、オーブンなどでさらに二次加熱(二次硬化)する工程を付加することができる。
【0054】
前工程の処理のとおり、接着剤は、開放孔30、内部空間40、開放空間45、開放孔30の枝孔33やトンネル接続路50内に侵入しており、さらにそれらから溢れて接合面12の表面(開放孔30などの外)も覆っているため、接着剤によるアンカー効果がより強く発揮されることになる。
このため、このようにして得られた金属成形体10とゴム成形体20の複合成形体2の接合強度は、
金属成形体10の接合面12に対して何も処理しないで接着剤を使用してゴム成形体20を接着させて得た複合成形体、および
金属成形体10の接合面12に対してエッチング処理などの化学的処理またはサンドブラスト処理などの物理的処理をした後で接着剤を使用してゴム成形体20を接着させて得た複合成形体と比べると、金属成形体10とゴム成形体20との接合強度よりも高くすることができる。
【0055】
本発明の金属成形体とゴム成形体からなる複合成形体は、制振性(振動減衰性)、緩衝性および防音性などを目的とした各種用途に使用することができる。
例えば、ゴム‐粘性振動遮断ダンパー、二重モードの捩れ振動ダンパー、カムシャフト捩れ振動ダンパー、ドライブシャフト捩れ振動ダンパーを包含する他の型の捩れ振動ダンパー、シャフトダンパー、衝撃セル、防振材料、防振材量マウント、制振材、カップリング、懸垂ブッシュ、トランスミッション、車軸封止、タイヤ、ベルト、ホース、ローラー(金属軸とゴムローラーが一体化されたもの)などに使用することができる。
また例えば、制振性や防音性を利用して、建築物や構築物においてコンクリートや金属材料で形成された躯体と天井材、床材、壁材などの部材の間、船舶において乗員、乗客の居室と船体との間、車両においてシャーシーと車体、エンジンマウント、トーショナルダンパー、ストラットマウントなどの車両用部材などに使用することができる。
さらに例えば、制振性を利用した免震ゴム用途として、戸建て住宅、仮設住宅、小型プラントなどの建築物などのほか、実験設備、実験装置などの免震装置などにも使用することができる。
【実施例】
【0056】
実施例1〜5、比較例1〜5
<連続波レーザーの照射工程>
実施例1〜5は、
図12に示す金属成形体(ステンレス;SUS304)10、または
図12に示す金属成形体(アルミニウム;A5052)のの接合面12の全面(120mm
2の広さ範囲)に対して、下記条件でレーザー光を連続照射した。実施例1〜5は、
図9に示すようにレーザー光を連続照射した。
図13は、実施例1の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の接合面のSEM写真である。接合面が粗面化され、小さな凹部が形成された状態が確認できた。
図14は、実施例4の連続波レーザーによる連続照射後における金属成形体の接合面のSEM写真(200倍)である。接合面が粗面化され、小さな凹部が形成された状態が確認できた。
比較例1〜5は、レーザー照射しなかった。
【0057】
(SUS304に対するレーザー光照射条件)
波形:連続波
出力(W):274
波長(nm):1070
スポット径(μm):11
エネルギー密度(W/μm
2):2.8
レーザー照射速度(mm/sec):7500
合計ライン本数:120
ライン間隔(b1)(mm):0.05
繰返し回数(回):15
処理面積:120mm
2
合計加工時間(s):6.4
【0058】
(A5052に対するレーザー光照射条件)
波形:連続波
出力(W):274
波長(nm):1070
スポット径(μm):11
エネルギー密度(W/μm
2):2.8
レーザー照射速度(mm/sec):10000
合計ライン本数:120
ライン間隔(b1)(mm):0.05
繰返し回数(回):20
処理面積:120mm
2
合計加工時間(s):6.8
【0059】
<複合成形体の製造工程>
実施例1は、次の方法で複合成形体を得た。
シリコーンゴム(KE−941-U;信越化学工業株式会社製)100質量部に対して、硬化剤(C−4;信越化学工業株式会社製;ジターシャリーブチルパーオキサイド約20%含有)4質量部を配合して混練し、シリコーンゴム組成物を得た。
ゴム組成物をレーザー照射後の金属成形体10と接触させ、表1に示す硬化条件で、プレス成形にてゴムを硬化させて金属成形体とゴムとを接合させることで、
図15に示す複合成形体を得た。
なお、ゴム硬度は、JIS K6249に基づいて測定した硬さ(デユアロメータタイプA)で測定した硬度である。以下の例においても同様である。
【0060】
実施例2、4は、次の方法で複合成形体を得た。
シリコーンゴム(KE−880-U;信越化学株式会社製)100質量部に対して、硬化剤(C−4;信越化学株式会社製;ジターシャリーブチルパーオキサイド約20%含有)4質量部を配合して混練し、シリコーンゴム組成物を得た。
ゴム組成物をレーザー照射後の金属成形体10と接触させ、表1、表2に示す硬化条件で、プレス成形にてゴムを硬化させて金属成形体とゴムとを接合させることで、
図15に示す複合成形体を得た。
【0061】
実施例3、5は、次の方法で複合成形体を得た。
EPDM(三井化学製 EPT4045)100質量部とカーボンブラック(三菱化学社製:ダイヤブラックH)80質量部、酸化亜鉛5質量部、安定剤(大内新興化学製:ノクラックCD)、ジクミルパーオキサイド2.5質量部をバンバリーミキサーにより混合し、ゴム組成物を得た。
ゴム組成物をレーザー照射後の金属成形体10と接触させ、表1、表2に示す硬化条件で、プレス成形にてゴムを加硫させて金属成形体とゴムとを接合させることで、
図15に示す複合成形体を得た。
【0062】
比較例1は、次の方法で複合成形体を得た。
シリコーンゴム(KE−941-U(信越化学工業株式会社製)100質量部に硬化剤(C−4;信越化学工業株式会社製;ジターシャリーブチルパーオキサイド約20%含有)4質量部を配合して混練し、シリコーンゴム組成物を得た。
ゴム組成物を表1に示す硬化条件で、プレス成形にて
図15に示す形状のゴム成形体(50mm×15mm×4mmの板状成形体)を得た。
このゴム成形体とレーザー照射しない金属成形体10とをエポキシ系接着剤(コニシボンドMOS82)にて室温にて接着した後、24時間放置し
図15に示す複合成形体1を得た。
【0063】
比較例2、4は、次の方法で複合成形体を得た。
シリコーンゴム(KE−880-U;信越化学工業株式会社製)100質量部に対して、硬化剤C−4(信越化学工業株式会社製:ジターシャリーブチルパーオキサイド約20%含有)4質量部を配合して混練し、シリコーンゴム組成物を得た。
ゴム組成物を表1、表2に示す硬化条件で、プレス成形にて
図15に示す形状のゴム成形体(50mm×15mm×4mmの板状成形体)を得た。
ゴム成形体とレーザー照射しない金属成形体10とをエポキシ系接着剤(コニシボンドMOS82)にて室温にて接着した後、24時間放置し
図15に示す複合成形体1を得た。
【0064】
比較例3、5は、次の方法で複合成形体を得た。
EPDM(三井化学製 EPT4045)100質量部、カーボンブラック(三菱化学社製:ダイヤブラックH)80質量部、酸化亜鉛5質量部、安定剤(大内新興化学製:ノクラックCD)、ジクミルパーオキサイド2.5質量部をバンバリーミキサーにより混合し、ゴム組成物を得た。
ゴム組成物を表1、表2に示す硬化条件で、プレス成形にて
図15に示す形状のゴム成形体(50mm×15mm×4mmの板状成形体)を得た。
ゴム成形体とレーザー照射しない金属成形体10とをエポキシ系接着剤(コニシボンドMOS82)にて室温にて接着した後、24時間放置し
図15に示す複合成形体1を得た。
【0065】
実施例1〜5は、複合成形体を金型から取り出した後、表1、表2に示す条件で二次加熱処理をした。
比較例1〜5は、ゴム成形体を金型から取り出した後、表1、表2に示す条件で二次加熱処理をした。
【0066】
〔引張試験および引張破断伸び〕
得られた複合成形体について、
図1で示すY方向(
図16のY方向)に相当する引張り接合強度(S2)を次の方法にて測定した。
引張試験は、
図16に示すように、金属成形体10側を治具70により固定した状態で、金属成形体10とゴム成形体20が破断するまで
図16のY方向(
図1のY方向であり、接合面12に対して垂直方向)に引っ張った場合の接合面12が破壊されるまでの最大荷重(引抜強度)と、そのときの伸び(%)を測定した。
伸び(%)は、最大荷重時のゴム成形体の伸び/測定前のゴム成形体長さ×100から求めた。
<引張試験条件>
試験機:オリエンテック社製テンシロン(UCT−1T)
引張速度:5mm/min
チャック間距離:50mm
【0067】
【表1】
【0068】
【表2】
【0069】
表1の実施例1〜3と比較例1〜3の複合成形体の接合強度の違いから、本願発明の製造方法により得られた複合成形体は、従来技術のものと比べても、金属(ステンレス)成形体とゴム成形体の接合強度が高いことが確認できた。
表2の実施例4、5と比較例4、5の複合成形体の接合強度の違いから、本願発明の製造方法により得られた複合成形体は、従来技術のものと比べても、金属(アルミニウム)成形体とゴム成形体の接合強度が高いことが確認できた。
【0070】
実施例6〜9
<連続波レーザーの照射工程>
各実施例は、鋼板(330×400×12mm)の上に30mm×30mm×3mmのアルミニウム(A5052)板を置き、アルミニウム板の露出面の20×6mmの範囲に対して、表3に示すレーザー照射条件にて連続照射した。
表3に示すレーザー照射条件のとき、E2は、2.5×10
-6(J/μm
2)である。
E3の範囲は、
下限値が(274W×1回)/(11μm×10000mm/sec×1000)=2.5×10
-6(J/μm
2)、
上限値が(274W)×20回)/(11μm×10000mm/sec×1000)=5.0×10
-5(J/μm
2)
の範囲となる。
図17に、実施例6の異なるパス数(繰り返し回数)のレーザー照射後の金属成形体(アルミニウム板)の表面のSEM写真を示した。
図18に
図17の20パスの表面状態を画像処理して示した図を示す。
図17と
図18からも、溝の長さ方向に直交する方向の断面形状が異なっていることが確認できる。
【0071】
【表3】
【0072】
次に、実施例6のレーザー照射後の粗面化された面について、
図19に示すようにして、溝の長さ方法に直交する方向(矢印の方向)からの断面形状のX線静止画を撮影した。X線静止画は、幅0.21mmの間隔にて10枚を撮影した。
図20〜
図22に実施例6の5パスの計10枚のX線静止画を示し、
図23〜
図26に10パスの計10枚のX線静止画を示し、
図27〜
図29に20パスの計10枚のX線静止画を示した。
パスごとの10枚のX線静止画から、それぞれの鍵穴溝201、独立穴202、W字溝203、V字溝204の数を全て計測し、合計数中のそれぞれの割合(%)を求めた。結果を表4に示す。
なお、開口率は、2.1mm×2.1mmの面積における各孔の開口部の面積の割合(%)である。
【0073】
<X線画像撮影条件>
X線CT:MicroXCT−400(Xradia社製)
測定倍率:10倍(分解能2.5μm)
測定エリア:2.1×2.1×2.1mm
【0074】
【表4】
【0075】
表4に示すとおり、エネルギー密度E
3の合計量が増減することで、(a)〜(d)の断面形状の割合が変化しており、パス回数が5〜20回では、(a)の鍵穴溝と(b)の独立穴の合計割合が高くなっていることが確認できた。
【0076】
<複合成形体の製造工程>
次に、実施例6〜9の粗面化されたアルミニウム板を使用して、実施例1と同様にして
図15に示す複合成形体を得た。
得られた各複合成形体について、実施例1と同様にして引張試験をして、引抜強度を測定した。
なお、上記方法と同様にして、実施例7(条件4の20パス照射)、実施例8、9(条件2の5パス照射)の溝の断面形状の割合を測定した。
結果を表5に示す。
【0077】
【表5】
【0078】
実施例6(E3=5.0×10
-5;(a)+(b)=87%)と実施例8(E3=1.25×10
-5;(a)+(b)=80%)を対比すると、実施例6の方が引抜強度と伸びの両方が良かった。
実施例7(E3=5.0×10
-5;(a)+(b)=87%)と実施例9(E3=1.25×10
-5;(a)+(b)=80%)を対比すると、実施例7の方が引抜強度と伸びの両方が良かった。
これらの結果から、エネルギー密度E3を調整して、(a)〜(d)の断面形状の内、(a)と(b)の合計割合(%)を制御することで、引抜強度と伸びを制御できることが確認できた。