特許第6489912号(P6489912)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6489912建設材料の粒度分布解析方法及び品質管理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6489912
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】建設材料の粒度分布解析方法及び品質管理方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 15/02 20060101AFI20190318BHJP
   G01N 33/24 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   G01N15/02 B
   G01N33/24 B
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2015-82256(P2015-82256)
(22)【出願日】2015年4月14日
(65)【公開番号】特開2016-200555(P2016-200555A)
(43)【公開日】2016年12月1日
【審査請求日】2018年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000201478
【氏名又は名称】前田建設工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130362
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 嘉英
(72)【発明者】
【氏名】安井 利彰
(72)【発明者】
【氏名】笹倉 伸晃
(72)【発明者】
【氏名】田中 麻穂
(72)【発明者】
【氏名】平川 彩織
(72)【発明者】
【氏名】中島 具威
(72)【発明者】
【氏名】水野 秀雄
【審査官】 素川 慎司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−257188(JP,A)
【文献】 特開2012−242099(JP,A)
【文献】 特開2011−163836(JP,A)
【文献】 特開2011−169602(JP,A)
【文献】 特開昭60−111138(JP,A)
【文献】 米国特許第04288162(US,A)
【文献】 江田正敏、新井博之、片山三郎、吉田等,デジタル画像処理による連続粒度解析システムの開発,ダム工学,日本,ダム工学会,2014年 7月18日,Vol.24, No.2,P.84-93
【文献】 Paolo Febbi et al.,Automated determination of poplar chip size distribution based on combined image and multivariate analyses,BIOMASS AND BIOENERGY,ELSEVIER,2014年12月18日,Vol.73(2015),P.1-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 15/00 − 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設材料を均一に分散して流下させ、当該流下する建設材料を撮影することにより粒度分布を解析するための粒度分布解析方法であって、
建設材料を供給する供給手段と、前記供給手段に供給する前記建設材料の質量を計測する質量計測手段と、前記供給手段から供給される建設材料を均一に拡散した状態で流下させる拡散流下手段と、前記均一に拡散した状態で流下する建設材料を撮影する撮像手段と、前記撮像手段で撮影した画像データを画像解析することにより、前記建設材料の粒度分布を解析する粒度分布解析手段とを備え、
前記粒度分布解析手段は、
粒度分布が既知である建設材料を用いて重回帰分析を行うことにより粒度毎に回帰式を作成し、
前記回帰式に、解析対象となる建設材料の画像解析結果から算出される説明変数を代入して、粒度毎の解析対象質量率を算出し、
算出した各粒度の解析対象質量率を用いて、前記解析対象である建設材料の粒度分布を解析する、
ことを特徴とする建設材料の粒度分布解析方法。
【請求項2】
前記粒度分布解析手段における工程は、
粒度分布が既知である建設材料を用いて、当該建設材料における粒度毎の土粒子平均短径と合計投影面積とを算出する工程と、
粒度毎の前記合計投影面積を、各粒度の合計投影面積の総和である全投影面積で除して無次元化することにより、投影面積率を算出する工程と、
粒度毎の合計質量を、各粒度の合計質量の総和である全質量で除して無次元化することにより、質量率を算出する工程と、
目的変数を前記質量率とし、説明変数を前記土粒子平均短径及び前記投影面積率として重回帰分析を行い、粒度毎に回帰式を作成する工程と、
前記回帰式に、解析対象となる建設材料の画像解析結果から算出される解析対象土粒子平均短径及び解析対象投影面積率を代入して、粒度毎の解析対象質量率を算出する工程と、
前記算出した各粒度の解析対象質量率を用いて、前記解析対象である建設材料の粒度分布を解析する工程と、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の建設材料の粒度分布解析方法。
【請求項3】
前記粒度毎に回帰式を作成する工程において、説明変数として投影面積絶対量の逆数を加え、
前記粒度毎の解析対象質量率を算出する工程において、前記回帰式に代入する値として、解析対象となる建設材料の画像解析結果から算出される投影面積絶対量の逆数を加えることを特徴とする請求項2に記載の建設材料の粒度分布解析方法。
【請求項4】
前記回帰式は、施工進捗に応じて、データ更新を行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の建設材料の粒度分布解析方法。
【請求項5】
含水比を複数の範囲に区分し、各区分の含水比毎に、それぞれ異なる回帰式を作成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の建設材料の粒度分布解析方法。
【請求項6】
前記解析対象となる建設材料の含水比を測定する含水比測定手段を備え、
前記請求項1〜5に記載の粒度分布解析方法で求めた粒度分布解析結果と、前記含水比の測定結果とを用いて、前記解析対象となる建設材料の品質を管理することを特徴とする建設材料の品質管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設材料の粒度分布解析方法及び品質管理方法に関するものであり、詳しくは、粒度分布の解析対象となる建設材料を均一に分散して流下させ、流下する建設材料を撮影して画像処理を行うことにより、粒度分布を解析するための方法、及び当該解析結果を用いて建設材料の品質管理を行う方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
フィルダムやCSG(Cemented Sand and Gravel)ダム工事等では、施工品質を向上させるために、使用する建設材料の粒度分布を管理することが重要である。従来から行われている粒度測定方法は、ふるい分け試験と沈降測定が主流であり、特にフィルダム工事のように管理対象となる建設材料が膨大な量の場合に、従来の粒度測定方法では多大な時間と労力を要するという問題があった。このため、建設材料を撮影し、画像データに対して画像処理を行って粒度分布を把握する技術の開発が進められている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、建設材料の粒度分布を解析するためのアルゴリズムが種々提案されている。従来提案されている建設材料の粒度分布を解析するためのアルゴリズムでは、粒径10mmまでを画像処理による解析対象とし、それ以下の粒度では別途解析式を導出して粒度分布を解析している。また、各粒度における合計投影面積と合計質量の相関関係を用いて粒度分布を解析している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−257188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来提案されている建設材料の粒度分布を解析するためのアルゴリズムでは、解析精度が低下する可能性がある。すなわち、粒径10mm以下の粒度分布の解析式を導出する際に、画像処理によって得られた誤差を含んだパラメータを利用しており、解析精度が低下する可能性がある。また、各粒度における合計投影面積と合計質量の相関関係を用いて粒度分布を解析しており、相関関係を導く際に、合計投影面積における各土粒子の粒径は考慮していないため、同じ合計投影面積であっても、構成粒子の粒径が異なる場合(例えば、粒径が大きい場合と粒径が小さい場合)、各構成粒子の質量も異なるため、相関関係が成立しないことが懸念される。
【0006】
本発明に係る建設材料の粒度分布解析方法及び品質管理方法は、上述した事情に鑑み提案されたもので、建設材料の粒度分布を解析する際に、建設材料を均一に分散させることを前提として、粒度分布解析の精度を高めることが可能な建設材料の粒度分布解析方法及び品質管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る建設材料の粒度分布解析方法は、上述した目的を達成するため、以下の特徴点を有している。すなわち、本発明に係る建設材料の粒度分布解析方法は、建設材料を均一に分散して流下させ、当該流下する建設材料を撮影することにより粒度分布を解析するための粒度分布解析方法であって、建設材料を供給する供給手段と、供給手段に供給する建設材料の質量を計測する質量計測手段と、供給手段から供給される建設材料を均一に拡散した状態で流下させる拡散流下手段と、均一に拡散した状態で流下する建設材料を撮影する撮像手段と、撮像手段で撮影した画像データを画像解析することにより、建設材料の粒度分布を解析する粒度分布解析手段とを備えている。
【0008】
そして、粒度分布解析手段は、粒度分布が既知である建設材料を用いて重回帰分析を行うことにより粒度毎に回帰式を作成し、作成した回帰式に、解析対象となる建設材料の画像解析結果から算出される説明変数を代入して、粒度毎の解析対象質量率を算出し、算出した各粒度の解析対象質量率を用いて、解析対象である建設材料の粒度分布を解析する。
【0009】
具体的には、粒度分布解析手段は、粒度分布が既知である建設材料を用いて、当該建設材料における粒度毎の土粒子平均短径(Di)と合計投影面積(Si)とを算出する工程(第1工程)と、粒度毎の合計投影面積(Si)を、各粒度の合計投影面積(Si)の総和である全投影面積(ΣSi)で除して無次元化することにより、投影面積率(Si/ΣSi)を算出する工程(第2工程)と、粒度分布が既知である建設材料を用いて、粒度毎の合計質量(Mi)を、各粒度の合計質量(Mi)の総和である全質量(ΣMi)で除して無次元化することにより、質量率(Mi/ΣMi)を算出する工程(第3工程)と、目的変数を質量率(Mi/ΣMi)とし、説明変数を土粒子平均短径(Di)及び投影面積率(Si/ΣSi)として重回帰分析を行い、粒度毎に回帰式を作成する工程(第4工程)とを含んでいる。
【0010】
そして、第4工程により作成された回帰式に、解析対象となる建設材料の画像解析結果から算出される解析対象土粒子平均短径(Di)及び解析対象投影面積率(Si/ΣSi)を代入して、粒度毎の解析対象質量率(Mi/ΣMi)を算出する工程(第5工程)と、算出した各粒度の解析対象質量率(Mi/ΣMi)を用いて、解析対象である建設材料の粒度分布を解析する工程(第6工程)とを含むことを特徴とするものである。
【0011】
また、上述した建設材料の粒度分布解析方法において、粒度毎に回帰式を作成する工程(第4工程)において、説明変数として投影面積絶対量の逆数(1/Si)を加えることが好ましい。この場合、粒度毎の解析対象質量率(Mi/ΣMi)を算出する工程(第5工程)において、回帰式に代入する値として、解析対象となる建設材料の画像解析結果から算出される投影面積絶対量の逆数(1/Si)を加えて演算を行う。
【0012】
また、上述した建設材料の粒度分布解析方法において、回帰式は、施工進捗に応じて、データ更新を行うことが好ましい。
【0013】
さらに、含水比を複数の範囲に区分し、各区分の含水比毎に、それぞれ異なる回帰式を作成することが好ましい。
【0014】
本発明に係る建設材料の品質管理方法は、解析対象となる建設材料の含水比を測定する含水比測定手段を備えることにより、上述した粒度分布解析方法で求めた粒度分布解析結果と、含水比の測定結果とを用いて、解析対象となる建設材料の品質を管理することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る建設材料の粒度分布解析方法によれば、解析対象となる建設材料は、拡散流下手段の機能により均一に拡散されるため、撮像手段の撮像位置に達した建設材料は、満遍なくばらけた状態となっており、さらに均一な厚みを有していることから、撮影対象となる建設材料を適切に撮影することができ、建設材料の粒度分布解析の精度を高めることが可能となる。
【0016】
そして、粒度分布解析手段において、所定の回帰式を用いて演算を行い、解析対象である建設材料の粒度分布を解析することにより、解析対象となる建設材料の粒度分布を正確かつ迅速に導出することができる。
【0017】
また、含水比の値によっては、解析対象となる建設材料が団粒化してしまうことがあり、すべての含水比に対して同一の回帰式を用いて粒度分布解析を行った場合には、精度良く粒度分布を導出することができない。そこで、含水比を複数の範囲に区分し、各区分の含水比毎に、それぞれ異なる回帰式を作成することにより、解析対象である建設材料の含水比に合致した回帰式を用いて粒度分布を導出することができる。
【0018】
また、上述した粒度分布解析方法で求めた粒度分布解析結果と、含水比の測定結果とを用いることにより、現場で使用する建設材料の品質を適切に管理することができる。なお、品質管理を行う場合には、解析した含水比に合致した回帰式を用いて粒度分布を導出する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】粒度分布解析方法に使用する粒度分布解析装置の概略構成を示す模式図。
図2】粒度分布解析方法に使用する粒度分布解析装置の構成要素を示すブロック図。
図3】粒度分布解析方法における粒度分布解析アルゴリズムの説明図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して、本発明に係る建設材料の粒度分布解析方法及び品質管理方法(以下、粒度分布解析方法、品質管理方法と略記する)の実施形態を説明する。図1図3は、本発明の実施形態に係る粒度分布解析方法及び品質管理方法を説明するもので、図1は粒度分布解析装置の概略構成を示す模式図、図2は粒度分布解析装置の構成要素を示すブロック図、図3は粒度分布解析アルゴリズムの説明図である。
【0021】
本発明の実施形態に係る粒度分布解析方法に使用する粒度分布解析装置100は、建設材料を均一に分散して流下させ、当該流下する建設材料を撮影することにより粒度分布を解析するための装置であって、図1及び図2に示すように、供給手段10と、質量計測手段20と、拡散流下手段30と、撮像手段40と、粒度分布解析手段50とを備えている。さらに、建設材料の含水比を測定して品質管理を行うために、含水比測定手段60を備えている。
【0022】
なお、各手段は、それぞれの機能を発揮するための単一または複数の部材、あるいはCPU等のハードウェアで実行されることにより、その機能を発揮するソフトウェアまたは同等の機能を有する論理回路から構成される。
【0023】
<供給手段>
供給手段10は、建設材料を供給するための手段である。本実施形態では、図1に示すように、拡散流下手段30の上方に建設材料を供給するためのベルトコンベア11と、ベルトコンベア11で搬送された建設材料を拡散流下手段30の直上に落下させるためのホッパ12により供給手段10を構成する。なお、図1に示す例では、ベルトコンベア11の下方に配置した傾斜板がホッパ20の機能を有している。また、供給手段10は、ベルトコンベア11及びホッパ12に限られず、拡散流下手段30の上方に建設材料を供給することができれば、どのような装置や部材であってもよく、ベルトコンベア11に代えてバックホーやパワーショベル等を用いてもよい。
【0024】
供給手段10としてベルトコンベア11を用いた場合には、ベルトコンベア11上で建設材料を薄く敷き均すことが好ましい。すなわち、ベルトコンベア11の適宜位置(例えば、傾斜下端部付近)に敷き均し手段13を設け、ベルトコンベア11上を搬送される建設材料を薄く敷き均すことにより、建設材料が傾斜板上を流下する際に均一に広がって、建設材料の粒子が重ならないので、粒度分布解析の精度を上げることができる。敷き均し手段13は、建設材料を薄く敷き均すことができればどのような装置であってもよいが、例えば、ベルトコンベア11の搬送面の上方に位置して、建設材料を所定の厚さに敷き均すためのベルトフィーダを用いることができる。
【0025】
<質量計測手段>
質量計測手段20は、供給手段10に供給する建設材料の質量を計測するための装置である。この質量計測手段20は、例えば、一般的な電子秤により構成することができる。なお、建設材料をベルトコンベア11に投入する際、あるいはホッパ12に投入する際に小分けして計量してもよい
【0026】
<拡散流下手段>
拡散流下手段30は、供給手段10から供給される建設材料を均一に拡散させて流下させるための手段である。本実施形態の拡散流下手段30は、図1に示すように、対向して配設した一対の板状部材からなり、一対の板状部材の間を建設部材が流下する際に均一に拡散する。一対の板状部材の間隔は、使用する建設材料によって適宜設定するが、建設材料に含まれる最大粒径の材料が詰まって閉塞しないようにする必要がある。
【0027】
なお、拡散流下手段30は、図1に示すような一対の板状部材に限られず、供給手段10から供給される建設材料を均一に拡散させることができれば、どのような装置であってもよく、例えば、筒状の収容体及び当該収容体の内部に収容された円筒状、三角錐状、四角錐状、円錐状、あるいはこれらを組み合わせた拡散部を有する装置であってもよい。
【0028】
<撮像手段>
撮像手段40は、拡散流下手段30により均一に拡散された建設材料を撮影するための手段である。本実施形態の撮像手段40は、図示しないが、撮像レンズ系、撮像素子、画像データの送信インターフェース等を備えたデジタルカメラにより構成する。また、撮像手段40の構成要素として、撮像対象となる建設材料を照明するための照明装置を含んでいてもよい。照明装置としては、例えば、光量や色温度を調整可能なLEDライトを用いることができる。
【0029】
撮像手段40(デジタルカメラ)の撮像レンズ系は、単焦点であってもよいが、合焦機構を有していてもよく、さらに、パン・チルト機構、ズーム機構を有していてもよい。また、撮像手段40(デジタルカメラ)は、静止画像を撮影するカメラであってもよいし、動画映像を撮影するカメラであってもよい。
【0030】
本実施形態では、拡散流下手段30を構成する一方の板状部材を背景スクリーンとして撮影を行うため、デジタルカメラは、拡散流下手段30の下部近傍であって、流下する建設材料が接触(衝突)しない位置に設置してある。また、粒度分布解析の精度を上げるために、撮像手段40(デジタルカメラ)を複数箇所に設置してもよい。また、背景スクリーンとなる板状部材は、撮影する建設材料の色調とのコントラストが明確になる色の材料を用いることが好ましい。さらに、建設材料の撮り逃しを防止して粒度分布の解析精度の向上を図るため、撮影手段40による建設材料の撮影間隔を可能な範囲で短くすることが好ましい。すなわち、撮影間隔が短くなれば、それだけ粒度分布の解析精度を向上させることができる。
【0031】
<粒度分布解析手段>
粒度分布解析手段50は、撮像手段40で撮影した画像データを画像解析することにより、建設材料の粒度分布を解析するための手段である。例えば、粒度分布解析手段50は、パーソナルコンピュータ(PC)及び画像解析ソフトウェアからなり、パーソナルコンピュータにインストールされた画像解析ソフトウェアの機能により、撮像手段40から受信した画像データに基づいて画像解析を行って、解析対象となる建設材料の粒度分布を解析する。画像解析は、公知のどのような手法を用いてもよいが、基本的には、画像データに基づいて、粒状体の輪郭認識を行って、粒状体の粒径を解析する手法が用いられる。
【0032】
<含水比測定手段>
含水比測定手段60は、解析対象となる建設材料の含水比を測定するための装置であり、従来より含水比を測定するために使用している既存の装置を使用することができる。含水比測定手段60としては、例えば、赤外線水分計、RI水分密度計、マイクロ波透過型水分計、電子レンジ、乾燥炉等、種々の装置がある。
【0033】
含水比の測定は、建設材料(例えば、CSG)の粒度解析工程において行ってもよいし、建設材料に他の建設材料(例えば、砂)を混合した後の工程において行ってもよい。
【0034】
<粒度分布の解析>
粒度分布の解析は、粒度分布解析手段50により行われる。以下、粒度分布の解析手順を説明する。粒度分布の解析は、粒度分布解析手段50の機能により実施されるものであり、粒度分布が既知である建設材料を用いて重回帰分析を行うことにより粒度毎に回帰式を作成し、作成した回帰式に、解析対象となる建設材料の画像解析結果から算出される説明変数を代入して、粒度毎の解析対象質量率を算出し、算出した各粒度の解析対象質量率を用いて、解析対象である建設材料の粒度分布を解析する。
【0035】
この粒度分布の解析は、大別して6つの工程からなる。第1工程は、粒度分布が既知である建設材料を用いて、当該建設材料における粒度毎の土粒子平均短径(Di)と合計投影面積(Si)とを算出する工程である。第2工程は、粒度毎の合計投影面積(Si)を、各粒度の合計投影面積(Si)の総和である全投影面積(ΣSi)で除して無次元化することにより、投影面積率(Si/ΣSi)を算出する工程である。第3工程は、粒度分布が既知である建設材料を用いて、粒度毎の合計質量(Mi)を、各粒度の合計質量(Mi)の総和である全質量(ΣMi)で除して無次元化することにより、質量率(Mi/ΣMi)を算出する工程である。第4工程は、目的変数を質量率(Mi/ΣMi)とし、説明変数を土粒子平均短径(Di)及び投影面積率(Si/ΣSi)として重回帰分析を行い、粒度毎に回帰式を作成する工程である。第1工程、第2工程、第3工程、第4工程により、粒度分布解析の基本となる粒度毎の回帰式を作成する。
【0036】
なお、含水比を複数の範囲に区分し、各区分の含水比毎に、それぞれ異なる回帰式を作成することが好ましい。これにより、含水比の影響を受けることなく、正確な粒度分布解析を行うことができる。ここで、含水比を区分する境界値の数は、1あるいは2以上とする。この境界値は、建設材料の土質に対応して適宜設定するが、例えば、建設材料が団粒化する限界値を境界値とすることができる。
【0037】
第5工程は、作成された回帰式に、解析対象となる建設材料の画像解析結果から算出される解析対象土粒子平均短径(Di)及び解析対象投影面積率(Si/ΣSi)を代入して、粒度毎の解析対象質量率(Mi/ΣMi)を算出する工程である。第6工程は、第5工程で算出した各粒度の解析対象質量率(Mi/ΣMi)を用いて、解析対象である建設材料の粒度分布を解析する工程である。この第6工程により、解析対象である建設材料の粒度分布を解析することができる。
【0038】
また、第4工程において、説明変数として投影面積絶対量の逆数(1/Si)を加えることにより、より一層正確に粒度分布を解析することができる。この場合、解析対象質量率(Mi/ΣMi)を算出する工程(第5工程)において、回帰式に代入する値として、解析対象となる建設材料の画像解析結果から算出される投影面積絶対量の逆数(1/Si)を加えて演算を行う。
【0039】
<粒度分布解析アルゴリズム>
また、粒度分布解析に用いる回帰式は、施工進捗に応じて、データ更新を行うことが好ましい。具体的な粒度分布解析アルゴリズムを図3に示す。本実施形態で用いる回帰式は、図3に示すように、解析対象となる建設材料の粒度分布を解析するための式であり、粒度毎に、それぞれ目的変数と、説明変数と、相関係数とからなる。
【0040】
上述したように、本実施形態で用いる回帰式の目的変数は、質量率Y=Mi/ΣMiであり、説明変数は、X1=土粒子平均短径Diと、X2=投影面積率Si/ΣSiである。また、説明変数として投影面積絶対量の逆数(1/Si)を加えてもよい。図3に示す例では、粒度D80(mm)、粒度D40(mm)、粒度D20(mm)、粒度D10(mm)、粒度D5(mm)について、それぞれ回帰式を作成して、当該回帰式に対して、解析対象となる建設材料の画像解析結果から算出される説明変数を代入することにより、解析対象である建設材料の粒度分布を解析する。
【0041】
<含水比の測定結果を用いた品質管理>
建設材料(CSG材)の品質管理を行うには、CSG材の製造時に、画像処理による粒度分布をモニタリングするとともに、含水比をモニタリングする。そして、粒度分布のモニタリング結果において、施工に適した粒度分布の材料であり、かつ表面水量が適正値の範囲であれば、建設材料(CSG材)の品質は安定しているとして、例えば、試験頻度を1回/4時間とする。
【0042】
一方、粒度分布のモニタリング結果において、施工に適した粒度分布の範囲を逸脱している場合、あるいは表面水量が適正値の範囲を逸脱している場合には、建設材料(CSG材)の品質が変動したとして、例えば、試験頻度を1回/1時間とする。すなわち、建設材料の品質が安定していれば試験頻度を低くし、建設材料の品質が安定していなければ試験頻度を高くする。なお、上述した試験頻度は一例であり、解析対象となる建設材料の性状等に応じて、適宜変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0043】
100 粒度分布解析装置
10 供給手段
11 ベルトコンベア
12 ホッパ(傾斜板)
13 敷き均し手段(ベルトフィーダ)
20 質量計測手段
30 拡散流下手段
40 撮像手段
50 粒度分布解析手段(PC)
60 含水比測定手段
図1
図2
図3