特許第6489916号(P6489916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ アズビル株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6489916-転写塗布装置及び転写塗布方法 図000002
  • 特許6489916-転写塗布装置及び転写塗布方法 図000003
  • 特許6489916-転写塗布装置及び転写塗布方法 図000004
  • 特許6489916-転写塗布装置及び転写塗布方法 図000005
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6489916
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】転写塗布装置及び転写塗布方法
(51)【国際特許分類】
   B41K 1/38 20060101AFI20190318BHJP
   B05C 1/02 20060101ALI20190318BHJP
   B05D 1/28 20060101ALI20190318BHJP
   B05D 3/00 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   B41K1/38
   B05C1/02 101
   B05D1/28
   B05D3/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-86559(P2015-86559)
(22)【出願日】2015年4月21日
(65)【公開番号】特開2016-203464(P2016-203464A)
(43)【公開日】2016年12月8日
【審査請求日】2018年3月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006666
【氏名又は名称】アズビル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123434
【弁理士】
【氏名又は名称】田澤 英昭
(74)【代理人】
【識別番号】100101133
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 初音
(74)【代理人】
【識別番号】100199749
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 成
(74)【代理人】
【識別番号】100156351
【弁理士】
【氏名又は名称】河村 秀央
(74)【代理人】
【識別番号】100188880
【弁理士】
【氏名又は名称】坂元 辰哉
(74)【代理人】
【識別番号】100197767
【弁理士】
【氏名又は名称】辻岡 将昭
(72)【発明者】
【氏名】松田 有紀
(72)【発明者】
【氏名】片桐 宗和
【審査官】 亀田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−203058(JP,A)
【文献】 特開昭61−157379(JP,A)
【文献】 特開平1−184079(JP,A)
【文献】 特開平10−128203(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2003/0152693(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41K 1/38
B05C 1/02
B05D 1/28
B05D 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体を収容した容器と、
前記容器内に立てられ、当該容器内の液面から突出したピンと、
孔を有するワークが載置される載置台と、
前記ピンを挿通可能な貫通孔を有するスタンプと、
前記スタンプを前記容器及び前記載置台に対してそれぞれ相対的に移動可能な移動部と、
前記移動部を制御する制御部とを備え、
前記制御部は、
前記貫通孔に前記ピンを挿入させながら前記スタンプを前記容器内の前記液体に浸漬する浸漬制御部と、
前記浸漬制御部による制御後、前記貫通孔を前記ピンに沿って引抜くことで前記スタンプを前記液体から引上げる引上げ制御部と、
前記引上げ制御部による制御後、前記スタンプを前記載置台に載置された前記ワークの前記孔に挿入することで、当該孔に前記液体を転写塗布する転写塗布制御部とを有する
ことを特徴とする転写塗布装置。
【請求項2】
液体を収容した容器と、
前記容器内に立てられ、当該容器内の液面から突出したピンと、
孔を有するワークが載置される載置台と、
前記ピンを挿通可能な貫通孔を有するスタンプと、
前記スタンプを前記容器及び前記載置台に対してそれぞれ相対的に移動可能な移動部と、
前記移動部を制御する制御部とを備えた転写塗布装置による転写塗布方法であって、
前記制御部は、
浸漬制御部が、前記貫通孔に前記ピンを挿入させながら前記スタンプを前記容器内の前記液体に浸漬する浸漬制御ステップと、
引上げ制御部が、前記浸漬制御部による制御後、前記貫通孔を前記ピンに沿って引抜くことで前記スタンプを前記液体から引上げる引上げ制御ステップと、
転写塗布制御部が、前記引上げ制御部による制御後、前記スタンプを前記載置台に載置された前記ワークの前記孔に挿入することで、当該孔に前記液体を転写塗布する転写塗布制御ステップと
を有することを特徴とする転写塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スタンプから余分な液体が垂れ落ちることを防止する転写塗布装置及び転写塗布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
リミットスイッチの製造工程において、ハウジングの軸受部に対して油を塗布する場合がある。この場合、従来では、シリンジに油を入れて、人の手で、軸受部の内面に油を塗布している。
一方で、スタンプによる転写塗布方式を採用した装置もある。このスタンプによる転写塗布では、まず、スタンプを油溜まり内の油に浸漬させることで、スタンプに油を保持させる。その後、油を保持したスタンプをハウジングの軸受部に挿入することで、軸受部に油を転写塗布することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−039523号公報
【特許文献2】特開平08−091488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、スタンプを用いた転写塗布装置では、スタンプを油溜まり内の油に浸漬させて引上げると、スタンプから余分な油が垂れ落ちるという課題がある。そのため、軸受部への油の転写塗布において、ハウジングの不要な箇所に油が垂れてしまう恐れがある。
一方、液体への浸漬後に、被浸漬部材を速度を落として引上げることで、当該被浸漬部材から余分な液体が垂れ落ちることを防止する手法も知られている(例えば特許文献1,2参照)。しかしながら、この手法では、一時的に動作速度を下げる必要があるため作業に時間がかかり、大量生産には適さないという課題がある。
【0005】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたもので、動作速度を下げることなく、スタンプから余分な液体が垂れ落ちることを防止することができる転写塗布装置及び転写塗布方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る転写塗布装置は、液体を収容した容器と、容器内に立てられ、当該容器内の液面から突出したピンと、孔を有するワークが載置される載置台と、ピンを挿通可能な貫通孔を有するスタンプと、スタンプを容器及び載置台に対してそれぞれ相対的に移動可能な移動部と、移動部を制御する制御部とを備え、制御部は、貫通孔にピンを挿入させながらスタンプを容器内の液体に浸漬する浸漬制御部と、浸漬制御部による制御後、貫通孔をピンに沿って引抜くことでスタンプを液体から引上げる引上げ制御部と、引上げ制御部による制御後、スタンプを載置台に載置されたワークの孔に挿入することで、当該孔に液体を転写塗布する転写塗布制御部とを有するものである。
【0007】
また、この発明に係る転写塗布方法は、液体を収容した容器と、容器内に立てられ、当該容器内の液面から突出したピンと、孔を有するワークが載置される載置台と、ピンを挿通可能な貫通孔を有するスタンプと、スタンプを容器及び載置台に対してそれぞれ相対的に移動可能な移動部と、移動部を制御する制御部とを備えた転写塗布装置による転写塗布方法であって、制御部は、浸漬制御部が、貫通孔にピンを挿入させながらスタンプを容器内の液体に浸漬する浸漬制御ステップと、引上げ制御部が、浸漬制御部による制御後、貫通孔をピンに沿って引抜くことでスタンプを液体から引上げる引上げ制御ステップと、転写塗布制御部が、引上げ制御部による制御後、スタンプを載置台に載置されたワークの孔に挿入することで当該孔に液体を転写塗布する転写塗布制御ステップとを有するものである。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、上記のように構成したので、動作速度を下げることなく、スタンプから余分な液体が垂れ落ちることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】この発明の実施の形態1に係る転写塗布装置の構成例を示す図である。
図2】この発明の実施の形態1に係るスタンプの構成例を示す図である。
図3】この発明の実施の形態1に係る転写塗布装置の動作例を示すフローチャートである。
図4】この発明の実施の形態1に係るスタンプの引上げを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る転写塗布装置の構成例を示す図である。
転写塗布装置は、図1に示すように、油溜まり(容器)1、載置台2、載置台移動部3、スタンプ4、スタンプ保持部5、スタンプ移動部6及び制御部7を備えている。また以下では、液体の転写塗布が行われる孔を有するワークとして、油11の転写塗布が行われる軸受部1001を有するハウジング100を用いるものとする。
【0011】
油溜まり1は、油11を収容したものである。
また、油溜まり1内には、油切りピン(ピン)12が立てられている。この油切りピン12は、油溜まり1内の油面から突出している(図4参照)。
【0012】
載置台2は、所定位置に軸受部1001を有するハウジング100が載置される台である。
載置台移動部3は、載置台2を移動可能なものである。図1の例では、載置台移動部3は、載置台2を左右方向に移動可能とするアクチュエータにより構成されている。
【0013】
スタンプ4は、油溜まり1に収容された油11に浸漬され、当該浸漬の後、載置台2に載置されたハウジング100の軸受部1001に、後述する挿入部41が非接触で挿入されるものである。このスタンプ4により、軸受部1001に対する油11の転写塗布を行う。このスタンプ4の構成については後述する。
【0014】
スタンプ保持部5は、スタンプ4を保持するものである。
スタンプ移動部6は、スタンプ保持部5を介してスタンプ4を移動可能なものである。図1の例では、スタンプ移動部6は、スタンプ4を高さ方向に移動可能とするアクチュエータにより構成されている。
なお、載置台移動部3及びスタンプ移動部6は、スタンプ4を油溜まり1及び載置台2に対してそれぞれ相対的に移動可能な移動部を構成する。
【0015】
この制御部7は、図1に示すように、浸漬制御部71、引上げ制御部72及び転写塗布制御部73を有している。なお、制御部7は、PLC(プログラマブルコントローラ)等により制御されている。
【0016】
浸漬制御部71は、スタンプ移動部6を介してスタンプ4を移動させ、スタンプ4の後述する貫通孔44に油切りピン12を挿入させながらスタンプ4を油溜まり1内の油11に浸漬するものである。
引上げ制御部72は、浸漬制御部71による制御後、スタンプ移動部6を介してスタンプ4を移動させ、貫通孔44を油切りピン12に沿って引抜くことでスタンプ4を油11から引上げるものである。
転写塗布制御部73は、引上げ制御部72による制御後、載置台移動部3及びスタンプ移動部6を介して載置台2及びスタンプ4を移動させ、スタンプ4の挿入部41を載置台2に載置されたハウジング100の軸受部1001に非接触で挿入することで、当該軸受部1001に油11を転写塗布するものである。
【0017】
次に、スタンプ4の構成例について、図2を参照しながら説明する。
スタンプ4には、図2に示すように、軸の先端に、挿入部41が設けられている。この挿入部41は、軸受部1001の内径より細く且つ油11を保持した状態で当該軸受部1001に非接触で挿入されることで当該軸受部1001へ当該油11の転写塗布が可能な外形であり、例えばポリアセタール等の樹脂部材から構成される。この際、軸受部1001と、当該軸受部1001に挿入された挿入部41とのギャップは、コンマ数mm程度に設計される。この挿入部41は、軸受部1001の形状及び寸法に応じて形状及び寸法が設計された専用部品である。また、挿入部41は軸受部1001の深さに対して半分程度挿入されればよく、挿入部41の長さは軸受部1001の深さに対して短くてよい。なお、スタンプ4の挿入部41以外の部分は、例えばステンレス等の金属部材で構成されており、この金属部材に樹脂製の挿入部41を差し込むことでスタンプ4が構成される。
【0018】
また、スタンプ4の軸には、挿入部41の上部に、つば部42が設けられている。このつば部42は、軸受部1001の内径より太い外形を有している。
また、つば部42には、溝部43が設けられている。この溝部43は、挿入部41に連なって設けられている。この溝部43は、油溜まり1内の油11に浸漬されることで、挿入部41とともに油11を保持する。この溝部43による油11の保持量は、数十mm程度に設計される。なお、この溝部43の空間(幅、深さ等)を調整することで、軸受部1001への油11の転写塗布量を制御することができる。
【0019】
また、スタンプ4には、貫通孔44が設けられている。図2の例では、軸心に貫通孔44を設けた場合を示しているが、軸心からずれていてもよい。この貫通孔44は、油溜まり1に立てられた油切りピン12を挿通可能な寸法に構成されている。
【0020】
次に、上記のように構成された転写塗布装置の動作例について説明する。なお、載置台2の所定位置には、油11の転写塗布が行われるハウジング100が載置される。
転写塗布装置の動作例では、図3に示すように、まず、浸漬制御部71は、スタンプ移動部6を介してスタンプ4を下降させ、貫通孔44に油切りピン12を挿入させながらスタンプ4を油溜まり1内の油11に浸漬する(ステップST1、浸漬制御ステップ)。これにより、スタンプ4の挿入部41及びつば部42が油溜まり1内の油11に浸漬される。
【0021】
そして、一定時間(数秒程度)スタンプ4を油11に浸漬させた後、引上げ制御部72は、スタンプ移動部6を介してスタンプ4を上昇させ、貫通孔44を油切りピン12に沿って引抜くことでスタンプ4を油11から引上げる(ステップST2、引上げ制御ステップ)。これにより、スタンプ4の溝部43及び挿入部41に表面張力によって油11が保持される。
【0022】
またこの際、図4に示すように、スタンプ4を、油溜まり1内の油面から突出した油切りピン12に沿わせながら引上げることで、スタンプ4に付着した余分な油11が、油切りピン12を伝わって油溜まり1の中に流れる。これにより、スタンプ4から余分な油11が垂れ落ちることを防止することができる。また、スタンプ4を油11から引上げる際に、動作速度を下げる必要はない。
【0023】
次いで、転写塗布制御部73は、載置台移動部3を介して載置台2をスタンプ4側に移動させ、また、スタンプ移動部6を介してスタンプ4を下降させ、スタンプ4の挿入部41を載置台2に載置されたハウジング100の軸受部1001に挿入することで、当該軸受部1001に油11を転写塗布する(ステップST3、転写塗布制御ステップ)。ここで、図2に示すスタンプ4を用いた場合には、挿入部41を軸受部1001に非接触で挿入する。これにより、スタンプ4の溝部43及び挿入部41に保持された油11が軸受部1001に触れ、表面張力により油11が軸受部1001に流れ込み転写される。
【0024】
そして、一定時間(数秒程度)転写塗布を行った後、載置台移動部3及びスタンプ移動部6を介して載置台2及びスタンプ4を元の位置に戻す(ステップST4)。以上の工程により、ハウジング100の軸受部1001への油11の塗布が完了する。
その後、次のハウジング100が載置台2に載置された後、上記と同様の動作を繰り返す。
【0025】
以上のように、この実施の形態1によれば、油溜まり1内に油面から突出した油切りピン12を立て、スタンプ4に当該油切りピン12を挿通可能な貫通孔44を設け、貫通孔44にピンを挿通させながらスタンプ4の油溜まり1内の油11への浸漬及び引上げを行うように構成したので、動作速度を下げることなく、スタンプ4から余分な油11が垂れ落ちることを防止することができる。
【0026】
なお上記では、移動部として、スタンプ4を高さ方向に移動可能なスタンプ移動部6と、載置台2を左右方向に移動可能な載置台移動部3とを用いた場合について示した。しかしながら、これに限るものではなく、移動部は、スタンプ4を油溜まり1及び載置台2に対してそれぞれ相対的に移動可能な構成であればよい。例えば、載置台2は移動させず、スタンプ4のみを高さ方向及び左右方向に動かして、油溜まり1及び載置台2まで移動させてもよい。
【0027】
また上記では、油11を転写塗布する場合を示したが、これに限るものではなく、その他の液体を転写塗布する場合にも同様に適用可能である。
また上記では、孔を有するワークとして、軸受部1001を有するハウジング100を用いた場合を示した。しかしながら、これに限るものではなく、その他の孔を有するワークについても同様に本発明を適用可能である。
【0028】
また上記では、スタンプ4を図2に示すような形状としたが、これに限るものではなく、油切りピン12を挿通可能な貫通孔44を有するスタンプ4であればよい。例えば、液体の転写塗布対象の孔に非接触で挿入されるスタンプ4ではなく、当該孔に直接接触して転写塗布を行うスタンプ4を用いてもよい。
【0029】
また、本願発明はその発明の範囲内において、各実施の形態の自由な組み合わせ、あるいは各実施の形態の任意の構成要素の変形、もしくは各実施の形態において任意の構成要素の省略が可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 油溜まり(容器)
2 載置台
3 載置台移動部
4 スタンプ
5 スタンプ保持部
6 スタンプ移動部
7 制御部
11 油
12 油切りピン(ピン)
41 挿入部
42 つば部
43 溝部
44 貫通孔
71 浸漬制御部
72 引上げ制御部
73 転写塗布制御部
100 ハウジング
1001 軸受部
図1
図2
図3
図4