特許第6489927号(P6489927)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6489927
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】燃料電池スタック
(51)【国際特許分類】
   H01M 8/247 20160101AFI20190318BHJP
   H01M 8/12 20160101ALN20190318BHJP
【FI】
   H01M8/247
   !H01M8/12 101
【請求項の数】4
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-99336(P2015-99336)
(22)【出願日】2015年5月14日
(65)【公開番号】特開2016-219116(P2016-219116A)
(43)【公開日】2016年12月22日
【審査請求日】2017年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀田 信行
(72)【発明者】
【氏名】八木 宏明
【審査官】 近藤 政克
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−146253(JP,A)
【文献】 特開2013−080650(JP,A)
【文献】 特開2004−014299(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 8/247
H01M 8/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の配列方向に並べて配置された複数の発電単位と、前記複数の発電単位にわたって前記配列方向に延びるように形成された複数の孔のそれぞれに挿入された締結部材とを備え、各前記締結部材で締結された燃料電池スタックにおいて、
各前記発電単位は、
電解質層と前記電解質層を挟んで前記配列方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む単セルと、
前記燃料極に面する燃料室と前記空気極に面する空気室との一方を構成する貫通孔と、前記貫通孔の周囲に配置された前記複数の孔とが形成され、前記配列方向において他の2つの部材に挟持されることにより前記燃料室と前記空気室との前記一方をシールするシール部材と、を備え、
前記配列方向視で、
前記シール部材の前記貫通孔の内周線は、互いに略垂直な第1の線分と第2の線分と、前記第1の線分に略平行な第3の線分と、前記第2の線分に略平行な第4の線分とを含み、
前記複数の孔は、前記第2の線分に略平行な第2の方向において前記第1の線分の外側に位置する第1の孔と、前記第1の線分に略平行な第1の方向において前記第2の線分の外側に位置する第2の孔と、前記第1の方向と前記第2の方向との両方において、前記第1の孔の中心位置より前記第2の孔の中心位置側で、かつ、前記第2の孔の中心位置より前記第1の孔の中心位置側に中心が位置する第3の孔と、前記第2の方向において前記第3の線分の外側に位置する第4の孔と、前記第1の方向において前記第4の線分の外側に位置する第5の孔と、を含み、
前記複数の孔は、前記第1の孔の中心を通り前記第1の線分に略平行な直線の一部と、前記第2の孔の中心を通り前記第2の線分に略平行な直線の一部と、前記第4の孔の中心を通り前記第3の線分に略平行な直線の一部と、前記第5の孔の中心を通り前記第4の線分に略平行な直線の一部と、から構成された矩形線と重なる、ことを特徴とする、燃料電池スタック。
【請求項2】
請求項1に記載の燃料電池スタックにおいて、
前記複数の孔は8つ以下である、ことを特徴とする、燃料電池スタック。
【請求項3】
所定の配列方向に並べて配置された複数の発電単位と、前記複数の発電単位にわたって前記配列方向に延びるように形成された複数の孔のそれぞれに挿入された締結部材とを備え、各前記締結部材で締結された燃料電池スタックにおいて、
各前記発電単位は、
電解質層と前記電解質層を挟んで前記配列方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む単セルと、
前記燃料極に面する燃料室と前記空気極に面する空気室との一方を構成する貫通孔と、前記貫通孔の周囲に配置された前記複数の孔とが形成され、前記配列方向において他の2つの部材に挟持されることにより前記燃料室と前記空気室との前記一方をシールするシール部材と、を備え、
前記配列方向視で、
前記シール部材の前記貫通孔の内周線は、互いに略垂直な第1の線分と第2の線分とを含み、
前記複数の孔は、前記第2の線分に略平行な第2の方向において前記第1の線分の外側に位置する第1の孔と、前記第1の線分に略平行な第1の方向において前記第2の線分の外側に位置する第2の孔と、前記第1の方向と前記第2の方向との両方において、前記第1の孔の中心位置より前記第2の孔の中心位置側で、かつ、前記第2の孔の中心位置より前記第1の孔の中心位置側に中心が位置する第3の孔と、を含み、
前記複数の孔は8つ以下である、ことを特徴とする、燃料電池スタック。
【請求項4】
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の燃料電池スタックにおいて、
前記第1の孔は、前記第2の線分に略平行な前記第2の方向において、前記第1の線分の中点の外側に位置し、
前記第2の孔は、前記第1の線分に略平行な前記第1の方向において、前記第2の線分の中点の外側に位置する、ことを特徴とする、燃料電池スタック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書によって開示される技術は、燃料電池スタックに関する。
【背景技術】
【0002】
固体酸化物形燃料電池(以下、「SOFC」ともいう)は、一般に、所定の方向(以下、「配列方向」ともいう)に並べて配置された複数の発電単位を備える燃料電池スタックの形態で利用される。発電単位は、発電の最小単位であり、電解質層と、電解質層を挟んで上記配列方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む単セルを備える。燃料電池スタックは、上記配列方向に延びる複数のボルト孔のそれぞれに挿入されたボルトによって締結される。
【0003】
発電単位は、また、空気極に面する空気室をシールするシール部材を備える(例えば特許文献1参照)。シール部材は、空気室を構成する貫通孔が形成されたフレーム形状の部材である。シール部材が上記配列方向において他の2つの部材に挟持されることにより、空気室がシールされる。なお、貫通孔の内周線の形状は、上記配列方向視で、例えば略矩形である。
【0004】
シール部材の貫通孔の周囲には、上述の複数のボルト孔が形成されている。例えば、シール部材の貫通孔の周囲には、8つのボルト孔が形成されており、その内の4つのボルト孔(以下、「角部ボルト孔」という)は、貫通孔の内周線の4つの角部付近に配置され、残りの4つのボルト孔(以下、「辺部ボルト孔」という)は、貫通孔の内周線の4つの辺の外側に配置される。より詳細には、例えば、4つの角部ボルト孔の中心は、貫通孔を取り囲む仮想的な矩形の4つの頂点に位置し、4つの辺部ボルト孔の中心は、当該仮想的な矩形の各辺の中点に位置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2007/138984号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来のボルト孔の配置構成では、シール部材に作用する上記配列方向の圧力(以下、「面圧」という)の面方向のばらつきが大きくなり、シール部材によるガスシール性が低下するおそれがある。すなわち、上記従来の構成では、上記配列方向視で、空気室(すなわち貫通孔)の中心から角部ボルト孔の中心までの距離と、空気室の中心から辺部ボルト孔の中心までの距離との差が大きくなる。ここで、空気室の中心からボルト孔の中心までの距離が長いほど、当該ボルト孔に挿入されたボルトの締結荷重による各部材のたわみ量(上記配列方向への変形量)が大きくなり、シール部材における当該ボルト孔の位置での面圧が大きくなる。そのため、上記従来の構成では、シール部材における角部ボルト孔の位置に面圧が集中し、他の領域、例えば角部ボルト孔と辺部ボルト孔との間の領域において面圧が過小となり、そのような領域でガスリークが発生するおそれがある。
【0007】
なお、このような課題は、上述したボルト孔の数や配置、貫通孔の形状等に限られず、シール部材の貫通孔の周囲に複数のボルト孔が形成された構成に共通の課題である。また、このような課題は、締結部材としてボルトを使用する構成に限られず、複数の孔のそれぞれに挿入された締結部材により燃料電池スタックを締結する構成に共通の課題である。また、このような課題は、発電単位が空気室をシールするシール部材を備える構成に限られず、発電単位が燃料極に面する燃料室をシールするシール部材を備える構成にも共通の課題である。また、このような課題は、SOFCに限らず、他のタイプの燃料電池にも共通の課題である。
【0008】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0010】
(1)本明細書に開示される燃料電池スタックは、所定の配列方向に並べて配置された複数の発電単位と、前記複数の発電単位にわたって前記配列方向に延びるように形成された複数の孔のそれぞれに挿入された締結部材とを備え、各前記締結部材で締結された燃料電池スタックにおいて、各前記発電単位は、電解質層と前記電解質層を挟んで前記配列方向に互いに対向する空気極および燃料極とを含む単セルと、前記燃料極に面する燃料室と前記空気極に面する空気室との一方を構成する貫通孔と、前記貫通孔の周囲に配置された前記複数の孔とが形成され、前記配列方向において他の2つの部材に挟持されることにより前記燃料室と前記空気室との前記一方をシールするシール部材と、を備え、前記配列方向視で、前記シール部材の前記貫通孔の内周線は、互いに略垂直な第1の線分と第2の線分とを含み、前記複数の孔は、前記第2の線分に略平行な第2の方向において前記第1の線分の外側に位置する第1の孔と、前記第1の線分に略平行な第1の方向において前記第2の線分の外側に位置する第2の孔と、前記第1の方向と前記第2の方向との両方において、前記第1の孔の中心位置より前記第2の孔の中心位置側で、かつ、前記第2の孔の中心位置より前記第1の孔の中心位置側に中心が位置する第3の孔と、を含むことを特徴とする。本燃料電池スタックによれば、燃料室または空気室の中心から第3の孔の中心までの距離と、燃料室または空気室の中心から第1または第2の孔の中心までの距離との差を、比較的小さくすることができるため、シール部材の面圧が第3の孔の位置に集中することが抑制され、これにより、シール部材の面圧が過小になる領域が生ずることが抑制され、ガスリークの発生が抑制される。
【0011】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、燃料電池スタック、燃料電池スタックを備える発電モジュール、発電モジュールを備える燃料電池システム等の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態における燃料電池スタック100の外観構成を示す斜視図である。
図2】本実施形態における燃料電池スタック100の上側のXY平面構成を示す説明図である。
図3】本実施形態における燃料電池スタック100の下側のXY平面構成を示す説明図である。
図4図1から図3のIV−IVの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図である。
図5図1から図3のV−Vの位置における燃料電池スタック100のXZ断面構成を示す説明図である。
図6図1から図3のVI−VIの位置における燃料電池スタック100のYZ断面構成を示す説明図である。
図7図5に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のXZ断面構成を示す説明図である。
図8図6に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102のYZ断面構成を示す説明図である。
図9図7のIX−IXの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。
図10図7のX−Xの位置における発電単位102のXY断面構成を示す説明図である。
図11】熱交換部103のXY断面構成を概略的に示す説明図である。
図12】ボルト孔108の配置を詳細に示す説明図である。
図13】空気極側フレーム130における角領域FCAを示す説明図である。
図14】比較例における空気極側フレーム130Xの面圧分布のシミュレーション結果の一例を示す説明図である。
図15】本実施形態における空気極側フレーム130の面圧分布のシミュレーション結果の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
A.実施形態:
A−1.構成:
(燃料電池スタック100の構成)
図1から図6は、本実施形態における燃料電池スタック100の構成を概略的に示す説明図である。図1には、燃料電池スタック100の外観構成が示されており、図2には、燃料電池スタック100の上側の平面構成が示されており、図3には、燃料電池スタック100の下側の平面構成が示されており、図4には、図1から図3のIV−IVの位置における燃料電池スタック100の断面構成が示されており、図5には、図1から図3のV−Vの位置における燃料電池スタック100の断面構成が示されており、図6には、図1から図3のVI−VIの位置における燃料電池スタック100の断面構成が示されている。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向と呼び、Z軸負方向を下方向と呼ぶものとするが、燃料電池スタック100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。図7以降についても同様である。
【0014】
燃料電池スタック100は、複数の(本実施形態では6つの)発電単位102と、熱交換部103と、一対のエンドプレート104,106とを備える。6つの発電単位102は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向)に並べて配置されている。ただし、6つの発電単位102の内、3つの発電単位102は互いに隣接するように配置され、残りの3つの発電単位102も互いに隣接するように配置され、上記3つの発電単位102と上記残りの3つの発電単位102との間に熱交換部103が配置されている。すなわち、熱交換部103は、6つの発電単位102と熱交換部103とから構成される集合体における上下方向の中央付近に配置されている。一対のエンドプレート104,106は、6つの発電単位102と熱交換部103とから構成される集合体を上下から挟むように配置されている。
【0015】
燃料電池スタック100を構成する各層(発電単位102、熱交換部103、エンドプレート104,106)のZ方向回りの周縁部には、上下方向に貫通する複数の(本実施形態では8つの)孔が形成されており、各層に形成され互いに対応する孔同士が上下方向に連通して、一方のエンドプレート104から他方のエンドプレート106にわたって上下方向に延びるボルト孔108を構成している。以下の説明では、ボルト孔108を構成するために燃料電池スタック100の各層に形成された孔も、ボルト孔108と呼ぶものとする。
【0016】
各ボルト孔108には上下方向に延びるボルト22が挿入されており、ボルト22とボルト22の両側に嵌められたナット24とによって、燃料電池スタック100は締結されている。ボルト22は、特許請求の範囲における締結部材に相当し、ボルト孔108は、特許請求の範囲における孔に相当する。ボルト孔108の配置については、後に詳述する。
【0017】
図4から図6に示すように、ボルト22の一方の側(上側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の上端を構成するエンドプレート104の上側表面との間、および、ボルト22の他方の側(下側)に嵌められたナット24と燃料電池スタック100の下端を構成するエンドプレート106の下側表面との間には、絶縁シート26が介在している。ただし、後述のガス通路部材27が設けられた箇所では、ナット24とエンドプレート106の表面との間に、ガス通路部材27とガス通路部材27の上側および下側のそれぞれに配置された絶縁シート26とが介在している。絶縁シート26は、例えばマイカシートや、セラミック繊維シート、セラミック圧粉シート、ガラスシート、ガラスセラミック複合剤等により構成される。
【0018】
各ボルト22の軸部の外径は各ボルト孔108の内径より小さい。そのため、各ボルト22の軸部の外周面と各ボルト孔108の内周面との間には、空間が確保されている。図2から図4に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの頂点(Y軸負方向側およびX軸負方向側の頂点)付近に位置するボルト22(ボルト22A)により形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から酸化剤ガスOGが導入されるガス流路である酸化剤ガス導入マニホールド161として機能し、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22C)により形成された空間は、熱交換部103から排出された酸化剤ガスOGを各発電単位102に向けて運ぶガス流路である酸化剤ガス供給マニホールド163として機能する。また、図2図3および図5に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(Y軸に平行な2つの辺の内のX軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22B)により形成された空間は、各発電単位102から排出された未反応の酸化剤ガスOGである酸化剤オフガスOOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する酸化剤ガス排出マニホールド162として機能する。本実施形態では、酸化剤ガスOGとして、例えば空気が使用される。
【0019】
また、図2図3および図6に示すように、燃料電池スタック100のZ方向回りの外周における1つの辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸正方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22D)により形成された空間は、燃料電池スタック100の外部から燃料ガスFGが導入され、その燃料ガスFGを各発電単位102に供給する燃料ガス導入マニホールド171として機能し、該辺の反対側の辺(X軸に平行な2つの辺の内のY軸負方向側の辺)の中点付近に位置するボルト22(ボルト22E)により形成された空間は、各発電単位102から排出された未反応の燃料ガスFGと燃料ガスFGの発電後のガスを含む燃料オフガスFOGを燃料電池スタック100の外部へと排出する燃料ガス排出マニホールド172として機能する。本実施形態では、燃料ガスFGとして、例えば都市ガスを改質した水素リッチなガスが使用される。
【0020】
図4から図6に示すように、燃料電池スタック100には、4つのガス通路部材27が設けられている。各ガス通路部材27は、中空筒状の本体部28と、本体部28の側面から分岐した中空筒状の分岐部29とを有している。分岐部29の孔は本体部28の孔と連通している。各ガス通路部材27の分岐部29には、ガス配管(図示せず)が接続される。図4に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161を形成するボルト22Aの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス導入マニホールド161に連通している。図5に示すように、酸化剤ガス排出マニホールド162を形成するボルト22Bの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、酸化剤ガス排出マニホールド162に連通している。図6に示すように、燃料ガス導入マニホールド171を形成するボルト22Dの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス導入マニホールド171に連通しており、燃料ガス排出マニホールド172を形成するボルト22Eの位置に配置されたガス通路部材27の本体部28の孔は、燃料ガス排出マニホールド172に連通している。
【0021】
(エンドプレート104,106の構成)
一対のエンドプレート104,106は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばステンレスにより形成されている。一方のエンドプレート104は、最も上に位置する発電単位102の上側に配置され、他方のエンドプレート106は、最も下に位置する発電単位102の下側に配置されている。一対のエンドプレート104,106によって複数の発電単位102と熱交換部103とが押圧された状態で挟持されている。上側のエンドプレート104は、燃料電池スタック100のプラス側の出力端子として機能し、下側のエンドプレート106は、燃料電池スタック100のマイナス側の出力端子として機能する。
【0022】
(発電単位102の構成)
図7から図10は、発電単位102の詳細構成を示す説明図である。図7には、図5に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102の断面構成が示されており、図8には、図6に示す断面と同一の位置における互いに隣接する2つの発電単位102の断面構成が示されており、図9には、図7のIX−IXの位置における発電単位102の断面構成が示されており、図10には、図7のX−Xの位置における発電単位102の断面構成が示されている。
【0023】
図7および図8に示すように、発電の最小単位である発電単位102は、単セル110と、セパレータ120と、空気極側フレーム130と、空気極側集電体134と、燃料極側フレーム140と、燃料極側集電体144と、発電単位102の最上層および最下層を構成する一対のインターコネクタ150とを備えている。セパレータ120、空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、インターコネクタ150におけるZ方向回りの周縁部には、上述したボルト22が挿入されるボルト孔108が形成されている。
【0024】
インターコネクタ150は、略矩形の平板形状の導電性部材であり、例えばフェライト系ステンレスにより形成されている。インターコネクタ150は、発電単位102間の電気的導通を確保すると共に、発電単位102間での反応ガスの混合を防止する。なお、本実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合、1つのインターコネクタ150は、隣接する2つの発電単位102に共有されている。すなわち、ある発電単位102における上側のインターコネクタ150は、その発電単位102の上側に隣接する他の発電単位102における下側のインターコネクタ150と同一部材である。また、燃料電池スタック100は一対のエンドプレート104,106を備えているため、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102は上側のインターコネクタ150を備えておらず、最も下に位置する発電単位102は下側のインターコネクタ150を備えていない(図4から図6参照)。
【0025】
単セル110は、電解質層112と、電解質層112を挟んで上下方向(発電単位102が並ぶ配列方向)に互いに対向する空気極(カソード)114および燃料極(アノード)116とを備える。なお、本実施形態の単セル110は、燃料極116で電解質層112および空気極114を支持する燃料極支持形の単セルである。
【0026】
電解質層112は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、YSZ(イットリア安定化ジルコニア)、ScSZ(スカンジア安定化ジルコニア)、SDC(サマリウムドープセリア)、GDC(ガドリニウムドープセリア)、ペロブスカイト型酸化物等の固体酸化物により形成されている。空気極114は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、ペロブスカイト型酸化物(例えばLSCF(ランタンストロンチウムコバルト鉄酸化物)、LSM(ランタンストロンチウムマンガン酸化物)、LNF(ランタンニッケル鉄))により形成されている。燃料極116は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、Ni(ニッケル)、Niとセラミック粒子からなるサーメット、Ni基合金等により形成されている。このように、本実施形態の単セル110(発電単位102)は、電解質として固体酸化物を用いる固体酸化物形燃料電池(SOFC)である。
【0027】
セパレータ120は、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔121が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。セパレータ120における孔121の周囲部分は、電解質層112における空気極114の側の表面の周縁部に対向している。セパレータ120は、その対向した部分に配置されたロウ材(例えばAgロウ)により形成された接合部124により、電解質層112(単セル110)と接合されている。セパレータ120により、空気極114に面する空気室166と燃料極116に面する燃料室176とが区画され、単セル110の周縁部における一方の電極側から他方の電極側へのガスのリークが抑制される。なお、セパレータ120が接合された単セル110をセパレータ付き単セルともいう。
【0028】
空気極側フレーム130は、図7から図9に示すように、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔131が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、マイカ等の絶縁体により形成されている。空気極側フレーム130の孔131は、空気極114に面する空気室166を構成する。空気極側フレーム130は、セパレータ120における電解質層112に対向する側とは反対側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面の周縁部とに接触している。すなわち、空気極側フレーム130は、セパレータ120とインターコネクタ150とにより挟持されている。そのため、空気極側フレーム130によって、空気室166のシール(コンプレッションシール)が実現される。また、空気極側フレーム130によって、発電単位102に含まれる一対のインターコネクタ150間が電気的に絶縁される。上述したように、空気極側フレーム130における孔131の周囲には、上述したボルト22が挿入されるボルト孔108が形成されている。また、空気極側フレーム130には、酸化剤ガス供給マニホールド163と空気室166とを連通する酸化剤ガス供給連通孔132と、空気室166と酸化剤ガス排出マニホールド162とを連通する酸化剤ガス排出連通孔133とが形成されている。空気極側フレーム130は、特許請求の範囲におけるシール部材に相当し、孔131は、特許請求の範囲における貫通孔に相当する。
【0029】
燃料極側フレーム140は、図7図8および図10に示すように、中央付近に上下方向に貫通する略矩形の孔141が形成されたフレーム状の部材であり、例えば、金属により形成されている。燃料極側フレーム140の孔141は、燃料極116に面する燃料室176を構成する。燃料極側フレーム140は、セパレータ120における電解質層112に対向する側の表面の周縁部と、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面の周縁部とに接触している。上述したように、燃料極側フレーム140における孔141の周囲には、上述したボルト22が挿入されるボルト孔108が形成されている。また、燃料極側フレーム140には、燃料ガス導入マニホールド171と燃料室176とを連通する燃料ガス供給連通孔142と、燃料室176と燃料ガス排出マニホールド172とを連通する燃料ガス排出連通孔143とが形成されている。
【0030】
空気極側集電体134は、図7から図9に示すように、空気室166内に配置されている。空気極側集電体134は、所定の間隔をあけて並べられた複数の略四角柱状の導電性部材から構成されており、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。空気極側集電体134は、空気極114における電解質層112に対向する側とは反対側の表面と、インターコネクタ150における空気極114に対向する側の表面とに接触することにより、空気極114とインターコネクタ150とを電気的に接続する。なお、空気極側集電体134とインターコネクタ150とが一体の部材として形成されていてもよい。
【0031】
燃料極側集電体144は、図7図8および図10に示すように、燃料室176内に配置されている。燃料極側集電体144は、インターコネクタ対向部146と、複数の電極対向部145と、各電極対向部145とインターコネクタ対向部146とをつなぐ連接部147とを備えており、例えば、ニッケルやニッケル合金、ステンレス等により形成されている。各電極対向部145は、燃料極116における電解質層112に対向する側とは反対側の表面に接触し、インターコネクタ対向部146は、インターコネクタ150における燃料極116に対向する側の表面に接触する。そのため、燃料極側集電体144は、燃料極116とインターコネクタ150とを電気的に接続する。なお、電極対向部145とインターコネクタ対向部146との間には、例えばマイカにより形成されたスペーサー149が配置されている。そのため、燃料極側集電体144が温度サイクルや反応ガス圧力変動による発電単位102の変形に追随し、燃料極側集電体144を介した燃料極116とインターコネクタ150との電気的接続が良好に維持される。
【0032】
(熱交換部103の構成)
図11は、熱交換部103の断面構成を概略的に示す説明図である。図11には、配列方向に直交する方向における熱交換部103の断面構成が示されている。図4から図6および図11に示すように、熱交換部103は、略矩形の平板形状部材であり、例えば、フェライト系ステンレスにより形成されている。上述したように、熱交換部103のZ方向回りの周縁部には、ボルト22が挿入されるボルト孔108が形成されている。また、熱交換部103の中央付近には、上下方向に貫通する孔182が形成されている。さらに、熱交換部103には、中央の孔182と酸化剤ガス導入マニホールド161を形成するボルト孔108とを連通する連通孔184と、中央の孔182と酸化剤ガス供給マニホールド163を形成するボルト孔108とを連通する連通孔186とが形成されている。熱交換部103は、熱交換部103の上側に隣接する発電単位102に含まれる下側のインターコネクタ150と、熱交換部103の下側に隣接する発電単位102に含まれる上側のインターコネクタ150とに挟持されている。これらのインターコネクタ150間において、孔182と連通孔184と連通孔186とにより形成される空間は、後述する熱交換のために酸化剤ガスOGを流す熱交換流路188として機能する。
【0033】
A−2.燃料電池スタック100の動作:
図4に示すように、酸化剤ガス導入マニホールド161の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して酸化剤ガスOGが供給されると、酸化剤ガスOGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して酸化剤ガス導入マニホールド161に供給される。酸化剤ガス導入マニホールド161に供給された酸化剤ガスOGは、図4および図11に示すように、熱交換部103内に形成された熱交換流路188内に流入し、熱交換流路188を通って酸化剤ガス供給マニホールド163へと排出される。熱交換部103は、上側および下側について発電単位102に隣接している。また、後述するように、発電単位102における発電反応は発熱反応である。そのため、酸化剤ガスOGが熱交換部103内の熱交換流路188を通過する際に、酸化剤ガスOGと発電単位102との間で熱交換が行われ、酸化剤ガスOGの温度が上昇する。なお、酸化剤ガス導入マニホールド161は、各発電単位102の空気室166には連通していないため、酸化剤ガス導入マニホールド161から各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給されることはない。
【0034】
熱交換流路188を通って酸化剤ガス供給マニホールド163へと排出された酸化剤ガスOGは、図4図5図7および図9に示すように、酸化剤ガス供給マニホールド163から各発電単位102の酸化剤ガス供給連通孔132を介して、空気室166に供給される。
【0035】
また、図6図8および図10に示すように、燃料ガス導入マニホールド171の位置に設けられたガス通路部材27の分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料ガスFGが供給されると、燃料ガスFGは、ガス通路部材27の分岐部29および本体部28の孔を介して燃料ガス導入マニホールド171に供給され、燃料ガス導入マニホールド171から各発電単位102の燃料ガス供給連通孔142を介して、燃料室176に供給される。
【0036】
各発電単位102の空気室166に酸化剤ガスOGが供給され、燃料室176に燃料ガスFGが供給されると、単セル110において酸化剤ガスOGおよび燃料ガスFGの電気化学反応による発電が行われる。この発電反応は発熱反応である。各発電単位102において、単セル110の空気極114は空気極側集電体134を介して一方のインターコネクタ150に電気的に接続され、燃料極116は燃料極側集電体144を介して他方のインターコネクタ150に電気的に接続されている。また、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102は、熱交換部103を介しているものの、電気的に直列に接続されている。そのため、燃料電池スタック100の出力端子として機能するエンドプレート104,106から、各発電単位102において生成された電気エネルギーが取り出される。なお、SOFCは、比較的高温(例えば700℃から1000℃)で発電が行われることから、起動後、発電により発生する熱で高温が維持できる状態になるまで、燃料電池スタック100が加熱器(図示せず)により加熱されてもよい。
【0037】
各発電単位102において発電反応に利用されなかった酸化剤ガスOGである酸化剤オフガスOOGは、図5図7および図9に示すように、空気室166から酸化剤ガス排出連通孔133を介して酸化剤ガス排出マニホールド162に排出され、さらに酸化剤ガス排出マニホールド162の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示せず)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。また、各発電単位102において発電反応に利用されなかった燃料ガスFGと燃料ガスFGの発電後のガスを含む燃料オフガスFOGは、図6図8および図10に示すように、燃料室176から燃料ガス排出連通孔143を介して燃料ガス排出マニホールド172に排出され、さらに燃料ガス排出マニホールド172の位置に設けられたガス通路部材27の本体部28および分岐部29の孔を経て、当該分岐部29に接続されたガス配管(図示しない)を介して燃料電池スタック100の外部に排出される。
【0038】
A−3.ボルト孔108の配置:
図12は、ボルト孔108の配置を詳細に示す説明図である。図12には、図9のP1部が拡大して示されている。上述したように、発電単位102を構成する各部材(空気極側フレーム130、燃料極側フレーム140、セパレータ120、インターコネクタ150)におけるZ方向回りの周縁部には、ボルト22が挿入されるボルト孔108が形成されている。以下、空気極側フレーム130の位置を例にして、ボルト孔108の配置について詳細に説明する。
【0039】
図9および図12に示すように、配列方向(Z方向)視で、空気極側フレーム130の孔131の内周線は、略矩形である。より詳細には、空気極側フレーム130の孔131の内周線は、X方向に略平行な第1の線分LS1および第3の線分LS3と、Y方向に略平行な第2の線分LS2および第4の線分LS4と、第1の線分LS1と第2の線分LS2とをつなぐ第1の角部CO1と、第2の線分LS2と第3の線分LS3とをつなぐ第2の角部CO2と、第3の線分LS3と第4の線分LS4とをつなぐ第3の角部CO3と、第4の線分LS4と第1の線分LS1とをつなぐ第4の角部CO4とから構成されている。本実施形態では、4つの角部CO1〜CO4はR形状である。なお、第1の線分LS1の一方の端点と第2の線分LS2の一方の端点とが同一の点である場合には、当該点が第1の角部CO1に該当する。他の角部COについても同様である。
【0040】
空気極側フレーム130の孔131の内周線を構成する4つの線分LS1〜LS4の外側(各線分に略垂直な方向に孔131から離れる側)には、4つのボルト孔108(以下、「辺部ボルト孔108S」ともいう)が配置される。以下、第1の線分LS1の外側に配置された辺部ボルト孔108Sを第1の辺部ボルト孔108S1といい、第2の線分LS2の外側に配置された辺部ボルト孔108Sを第2の辺部ボルト孔108S2といい、第3の線分LS3の外側に配置された辺部ボルト孔108Sを第3の辺部ボルト孔108S3といい、第4の線分LS4の外側に配置された辺部ボルト孔108Sを第4の辺部ボルト孔108S4という。本実施形態では、各辺部ボルト孔108Sの中心は、各線分LSの中点の外側に位置する。
【0041】
また、空気極側フレーム130の孔131の内周線を構成する4つの角部CO1〜CO4の付近には、4つのボルト孔108(以下、「角部ボルト孔108C」ともいう)が配置される。以下、第1の角部CO1付近に配置された角部ボルト孔108Cを第1の角部ボルト孔108C1といい、第2の角部CO2付近に配置された角部ボルト孔108Cを第2の角部ボルト孔108C2といい、第3の角部CO3付近に配置された角部ボルト孔108Cを第3の角部ボルト孔108C3といい、第4の角部CO4付近に配置された角部ボルト孔108Cを第4の角部ボルト孔108C4という。
【0042】
ここで、第1の角部ボルト孔108C1に着目すると、図12に示すように、第1の角部ボルト孔108C1が角部CO1付近に位置するとは、以下の「要件1」を満たすことを意味する。
・要件1
第1の角部ボルト孔108C1の中心CPの位置は、第1の線分LS1に略平行な方向(X方向)においては、第1の辺部ボルト孔108S1の中心CPの位置より第2の辺部ボルト孔108S2の中心CPの位置側であり、第2の線分LS2に略平行な方向(Y方向)においては、第2の辺部ボルト孔108S2の中心CPの位置より第1の辺部ボルト孔108S1の中心CPの位置側である。
【0043】
さらに、本実施形態では、図12に示すように、第1の角部ボルト孔108C1の中心CPの位置は、第1の辺部ボルト孔108S1の中心CPを通り第1の線分LS1に略平行な直線L1と、第2の辺部ボルト孔108S2の中心CPを通り第2の線分LS2に略平行な直線L2との交点XP1より、空気室166の中心CPC(すなわち孔131の中心)に近い側に位置している。すなわち、第1の角部ボルト孔108C1の配置は、以下の「要件2」を満たしている。
・要件2
第1の角部ボルト孔108C1の中心CPの位置は、第2の線分LS2に略平行な方向(Y方向)においては、第1の辺部ボルト孔108S1の中心CPの位置より第2の辺部ボルト孔108S2の中心CPの位置側であり、第1の線分LS1に略平行な方向(X方向)においては、第2の辺部ボルト孔108S2の中心CPの位置より第1の辺部ボルト孔108S1の中心CPの位置側である。なお、空気室166(孔131)の中心CPCは、配列方向視で、孔131の内周線の図心(重心)である。
【0044】
上記「要件1」および「要件2」をまとめて整理すると、以下の「要件3」となる。
・要件3
第1の角部ボルト孔108C1の中心CPの位置は、第2の線分LS2に略平行な方向(Y方向)と第1の線分LS1に略平行な方向(X方向)との両方において、第1の辺部ボルト孔108S1の中心CPの位置より第2の辺部ボルト孔108S2の中心CPの位置側で、かつ、第2の辺部ボルト孔108S2の中心CPの位置より第1の辺部ボルト孔108S1の中心CPの位置側である。
【0045】
なお、上記「要件3」は、第1の角部ボルト孔108C1の中心CPは、第1の辺部ボルト孔108S1の中心CPと第2の辺部ボルト孔108S2の中心CPと交点XP1と他の1点とを4つの頂点とする矩形領域内(ただし境界線上は除く)に位置すると言い換えることができる。また、当然、第1の角部ボルト孔108C1の中心CPの配置は、第1の角部ボルト孔108C1が孔131と干渉しないという制約を受ける。
【0046】
図9に示すように、第1の角部ボルト孔108C1以外の他の角部ボルト孔108Cの配置も、第1の角部ボルト孔108C1の配置に関する上記「要件3」と同様の要件を満たしている。すなわち、第2の角部ボルト孔108C2の中心CPの位置は、X方向とY方向との両方において、第2の辺部ボルト孔108S2の中心CPの位置より第3の辺部ボルト孔108S3の中心CPの位置側で、かつ、第3の辺部ボルト孔108S3の中心CPの位置より第2の辺部ボルト孔108S2の中心CPの位置側である。また、第3の角部ボルト孔108C3の中心CPの位置は、X方向とY方向との両方において、第3の辺部ボルト孔108S3の中心CPの位置より第4の辺部ボルト孔108S4の中心CPの位置側で、かつ、第4の辺部ボルト孔108S4の中心CPの位置より第3の辺部ボルト孔108S3の中心CPの位置側である。また、第4の角部ボルト孔108C4の中心CPの位置は、X方向とY方向との両方において、第4の辺部ボルト孔108S4の中心CPの位置より第1の辺部ボルト孔108S1の中心CPの位置側で、かつ、第1の辺部ボルト孔108S1の中心CPの位置より第4の辺部ボルト孔108S4の中心CPの位置側である。なお、図9には、上述した直線L1および直線L2に加えて、第3の辺部ボルト孔108S3の中心CPを通り第3の線分LS3に略平行な直線L3と、第4の辺部ボルト孔108S4の中心CPを通り第4の線分LS4に略平行な直線L4とが示されている。さらに、図9には、上述した直線L1と直線L2との交点XP1に加えて、直線L2と直線L3との交点XP2と、直線L3と直線L4との交点XP3と、直線L4と直線L1との交点XP4とが示されている。
【0047】
また、本実施形態では、図12に示すように、交点XP1と空気室166の中心CPCとを結ぶ線分における空気極側フレーム130と重なる部分を角部線分LSCとしたとき、第1の角部ボルト孔108C1の中心CPの位置は、角部線分LSC上に位置し、より詳細には、角部線分LSCの中点MPより交点XP1側に位置する。他の角部ボルト孔108Cについても同様である。
【0048】
また、本実施形態では、上述したように、各角部ボルト孔108Cは、空気極側フレーム130の孔131の内周線を構成する各角部COの付近に配置されているが、各角部ボルト孔108Cは、空気極側フレーム130における角付近の領域である角領域FCA内に配置されていることが好ましい。図13は、空気極側フレーム130における角領域FCAを示す説明図である。図13に示すように、第1の角部CO1付近に位置する第1の角部ボルト孔108C1は、ハッチングを付して示す第1の角領域FCA1内に配置されていることが好ましい。ここで、第1の角領域FCA1は、以下のように規定される。すなわち、空気室166(孔131)の中心CPCと第1の角部CO1付近において中心CPCから最も遠い空気極側フレーム130の外周上の点FP1とを結ぶ線分CLS1を引き、線分CLS1と空気極側フレーム130の内周線との交点を点IP1として、点IP1を通り第1の線分LS1に略平行な直線AL1と点IP1を通り第2の線分LS2に略平行な直線BL1とを引き、2本の直線AL1,BL1と空気極側フレーム130の外周線とで囲まれた領域の内の最も小さい領域が、第1の角領域FCA1である。他の各角部ボルト孔108Cについても、同様に規定される各角領域FCA内に配置されていることが好ましい。
【0049】
また、これまで空気極側フレーム130の位置を例にして、ボルト孔108の配置について詳細に説明したが、ボルト孔108は配列方向に延びるように形成されているため、発電単位102を構成する他の部材(燃料極側フレーム140、セパレータ120、インターコネクタ150)の位置においても、ボルト孔108の配置は同様である。
【0050】
なお、本実施形態における第1の線分LS1および第2の線分LS2が、それぞれ、特許請求の範囲における第1の線分および第2の線分に相当するものとすると、本実施形態における第1の辺部ボルト孔108S1、第2の辺部ボルト孔108S2、および、第1の角部ボルト孔108C1は、それぞれ、特許請求の範囲における第1の孔、第2の孔、および第3の孔に相当する。また、本実施形態における第2の線分LS2および第3の線分LS3が、それぞれ、特許請求の範囲における第1の線分および第2の線分に相当するものとすると、本実施形態における第2の辺部ボルト孔108S2、第3の辺部ボルト孔108S3、および、第2の角部ボルト孔108C2は、それぞれ、特許請求の範囲における第1の孔、第2の孔、および第3の孔に相当する。また、本実施形態における第3の線分LS3および第4の線分LS4が、それぞれ、特許請求の範囲における第1の線分および第2の線分に相当するものとすると、本実施形態における第3の辺部ボルト孔108S3、第4の辺部ボルト孔108S4、および、第3の角部ボルト孔108C3は、それぞれ、特許請求の範囲における第1の孔、第2の孔、および第3の孔に相当する。また、本実施形態における第4の線分LS4および第1の線分LS1が、それぞれ、特許請求の範囲における第1の線分および第2の線分に相当するものとすると、本実施形態における第4の辺部ボルト孔108S4、第1の辺部ボルト孔108S1、および、第4の角部ボルト孔108C4は、それぞれ、特許請求の範囲における第1の孔、第2の孔、および第3の孔に相当する。
【0051】
A−4.空気極側フレーム130における面圧分布
本実施形態の燃料電池スタック100では、上述したようなボルト孔108の配置を採用しているため、以下に説明するように、空気極側フレーム130による空気室166のガスシール性を向上させることができる。図14は、比較例における発電単位102Xに含まれる空気極側フレーム130Xの面圧分布のシミュレーション結果の一例を示す説明図である。ここで、空気極側フレーム130の面圧は、燃料電池スタック100がボルト22により締結された状態において空気極側フレーム130に作用する上記配列方向の圧力を意味する。
【0052】
図14に示す比較例は、角部ボルト孔108Cの配置が上述した実施形態と異なっている。具体的には、図14に示す比較例では、第1の角部ボルト孔108C1の中心CPが、直線L1と直線L2との交点XP1に位置する。他の角部ボルト孔108Cの配置についても同様であり、図示しないが、第2の角部ボルト孔108C2の中心CPが、直線L2と直線L3との交点XP2に位置し、第3の角部ボルト孔108C3の中心CPが、直線L3と直線L4との交点XP3に位置し、第4の角部ボルト孔108C4の中心CPが、直線L4と直線L1との交点XP4に位置する。すなわち、図14に示す比較例では、4つの角部ボルト孔108Cの中心CPが、孔131を取り囲む仮想的な矩形の4つの頂点XP1〜XP4に位置し、4つの辺部ボルト孔108Sの中心CPが、当該仮想的な矩形の各辺の中点に位置する。
【0053】
このような構成の比較例では、空気室166の中心CPCから角部ボルト孔108Cの中心CPまでの距離と、空気室166の中心CPCから辺部ボルト孔108Sの中心CPまでの距離との差が、比較的大きくなる。ここで、空気室166の中心CPCからボルト孔108の中心CPまでの距離が長いほど、当該ボルト孔108に挿入されるボルト22の締結荷重による各部材のたわみ量(配列方向への変形量)が大きくなり、空気極側フレーム130における当該ボルト孔108の位置での面圧が大きくなる。そのため、比較例の構成では、空気極側フレーム130における角部ボルト孔108Cの位置に面圧が集中し、これに伴い面圧が過小となった領域でガスリークGLが発生するおそれがある。図14に示す例では、角部ボルト孔108Cの位置で面圧が過大となっている一方、例えば角部ボルト孔108Cと辺部ボルト孔108Sとの間に面圧が過小な領域が存在し、この領域が空気室166側から発電単位102Xの外部側まで連続している。そのため、空気極側フレーム130Xにおけるこの領域を介して、空気室166から外部へのガスリークGLが発生するおそれがある。
【0054】
図15は、本実施形態における空気極側フレーム130の面圧分布のシミュレーション結果の一例を示す説明図である。本実施形態では、角部ボルト孔108Cの配置が上述した「要件3」を満たしているため、図14に示す比較例と比べて、空気室166の中心CPCから角部ボルト孔108Cの中心CPまでの距離が、比較的短い。そのため、空気室166の中心CPCから角部ボルト孔108Cの中心CPまでの距離と、空気室166の中心CPCから辺部ボルト孔108Sの中心CPまでの距離との差が、比較的小さい。すなわち、本実施形態では、図14に示す比較例と比べて、8つのボルト孔108の配置が、配列方向視で円に近くなっている。従って、本実施形態では、角部ボルト孔108Cの位置において、発電単位102を構成する各部材のたわみ量が比較的小さくなり、空気極側フレーム130の面圧が角部ボルト孔108Cの位置に集中することが抑制される。これにより、空気極側フレーム130の面圧が過小になる領域が生ずることが抑制され、ガスリークの発生が抑制される。図15に示す例では、図14に示す比較例と比べて、角部ボルト孔108Cの位置で面圧が低下している一方、面圧が過小な領域が小さくなっており、空気室166側から発電単位102Xの外部側まで連続する面圧が過小な領域が存在しない。そのため、空気室166から外部へのガスリークが抑制される。
【0055】
なお、本実施形態では、上述したように、角部ボルト孔108Cの中心CPの位置は、角部線分LSC上の、角部線分LSCの中点MPより交点XP側に位置するため(図12)、角部ボルト孔108Cと孔131との間の位置において、十分なシール長を確保することができ、この位置でのガスリークを抑制することができる。なお、シール性能の確保のため、角部ボルト孔108Cと孔131との間の最短距離は、1mm以上が好ましく、2.5mm以上であることがより好ましい。
【0056】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0057】
上記実施形態では、燃料電池スタック100に形成されるボルト孔108の数は8つであるが、ボルト孔108の数は7つ以下であってもよいし、9つ以上であってもよい。また、複数のボルト孔108の配置は上記実施形態の配置に限られない。複数のボルト孔の内の3つのボルト孔に着目したときに、それらの配置が上述の「要件3」を満たせば、上述したように空気室166から外部へのガスリーク抑制効果を奏する。
【0058】
また、上記実施形態では、空気極側フレーム130の孔131の内周線は略矩形であるとしているが、孔131の内周線の形状は、互いに略垂直な2つの線分を含む形状であれば、任意の形状を取り得る。例えば、空気極側フレーム130の孔131の内周線は、角部COの無い純粋な矩形であってもよいし、八角形等の多角形であってもよい。例えば、空気極側フレーム130の孔131の内周線が八角形である場合であっても、八角形を構成する互いに略垂直な2つの辺(線分)に注目して、上述した「要件3」を満たすボルト孔108の配置を採用すれば、ガスリークを抑制することができる。
【0059】
また、上記実施形態では、角部ボルト孔108Cの中心CPの位置は、角部線分LSC上の、角部線分LSCの中点MPより交点XP側に位置するとしているが、反対に、角部ボルト孔108Cの中心CPの位置は、角部線分LSC上の、角部線分LSCの中点MPより孔131側(交点XPとは反対側)に位置するとしてもよい。このようにすれば、角部ボルト孔108Cの中心CPと空気室166の中心CPCとの間の距離をより短くすることができるため、空気極側フレーム130の面圧が角部ボルト孔108Cの位置に集中することがより効果的に抑制され、ガスリークの発生がより効果的に抑制される。
【0060】
また、上記実施形態では、空気室166をシールする空気極側フレーム130の位置におけるボルト孔108の配置について説明したが、燃料室176のシールが燃料極側フレーム140によるコンプレッションシールにより実現されている場合には、空気極側フレーム130に加えて、あるいは空気極側フレーム130に代えて、燃料極側フレーム140の位置におけるボルト孔108の配置についても上記実施形態と同様の配置とすれば、燃料室176からのガスリークを抑制することができる。
【0061】
なお、本明細書において、略垂直とは、互いのなす角が89度以上、91度以下であることを意味する。また、略平行とは、互いのなす角が−1度以上、1度以下であることを意味する。
【0062】
また、上記実施形態において、燃料電池スタック100に含まれる発電単位102の個数は、あくまで一例であり、発電単位102の個数は燃料電池スタック100に要求される出力電圧等に応じて適宜決められる。
【0063】
また、上記実施形態において、燃料電池スタック100の配列方向における熱交換部103の位置はあくまで一例であり、熱交換部103の位置は任意の位置に変更可能である。ただし、熱交換部103の位置は、燃料電池スタック100に含まれる複数の発電単位102の内、より高温になる発電単位102に隣接する位置であることが、燃料電池スタック100の配列方向における熱分布の緩和のために好ましい。例えば、燃料電池スタック100の配列方向中央付近の発電単位102がより高温になりやすい場合には、上記実施形態のように、燃料電池スタック100の配列方向中央付近に熱交換部103を設けることが好ましい。また、燃料電池スタック100が2つ以上の熱交換部103を備えていてもよい。
【0064】
また、上記実施形態では、熱交換部103が酸化剤ガスOGの温度を上昇させるように構成されているが、熱交換部103が、酸化剤ガスOGに代えて燃料ガスFGの温度を上昇させるように構成されてもよいし、酸化剤ガスOGと共に燃料ガスFGの温度を上昇させるように構成されてもよい。
【0065】
また、上記実施形態では、ボルト22の両側にナット24が嵌められているとしているが、ボルト22が頭部を有し、ナット24はボルト22の頭部の反対側にのみ嵌められているとしてもよい。また、上記実施形態では、締結部材としてボルト22が用いられているが、ボルト22以外の他の締結部材により燃料電池スタック100が締結されるとしてもよい。
【0066】
また、上記実施形態では、エンドプレート104,106が出力端子として機能するとしているが、エンドプレート104,106の代わりに、エンドプレート104,106のそれぞれと接続された別部材(例えば、エンドプレート104,106のそれぞれと発電単位102との間に配置された導電板)が出力端子として機能するとしてもよい。
【0067】
また、上記実施形態では、各ボルト22の軸部の外周面と各ボルト孔108の内周面との間の空間を各マニホールドとして利用しているが、これに代えて、各ボルト22の軸部に軸方向の孔を形成し、その孔を各マニホールドとして利用してもよい。また、各マニホールドを、各ボルト22が挿入されるボルト孔108と別に設けてもよい。
【0068】
また、上記実施形態では、2つの発電単位102が隣接して配置されている場合には、1つのインターコネクタ150が隣接する2つの発電単位102に共有されるとしているが、このような場合でも、2つの発電単位102がそれぞれのインターコネクタ150を備えてもよい。また、上記実施形態では、燃料電池スタック100において最も上に位置する発電単位102の上側のインターコネクタ150や、最も下に位置する発電単位102の下側のインターコネクタ150は省略されているが、これらのインターコネクタ150を省略せずに設けてもよい。
【0069】
また、上記実施形態において、燃料極側集電体144は、空気極側集電体134と同様の構成であってもよく、燃料極側集電体144と隣接するインターコネクタ150とが一体部材であってもよい。また、空気極側フレーム130ではなく燃料極側フレーム140が絶縁体であってもよい。また、空気極側フレーム130や燃料極側フレーム140は、多層構成であってもよい。
【0070】
また、上記実施形態における各部材を形成する材料は、あくまで例示であり、各部材が他の材料により形成されてもよい。
【0071】
また、上記実施形態において、都市ガスを改質して水素リッチな燃料ガスFGを得るとしているが、LPガスや灯油、メタノール、ガソリン等の他の原料から燃料ガスFGを得るとしてもよいし、燃料ガスFGとして純水素を利用してもよい。
【0072】
また、上記実施形態において、電解質層112と空気極114との間に、例えばセリアを含む反応防止層を設け、電解質層112内のジルコニウム等と空気極114内のストロンチウム等とが反応することによる電解質層112と空気極114との間の電気抵抗の増大を抑制するとしてもよい。なお、本明細書において、Aを挟んでBとCとが互いに対向するとは、AとBまたはCとが隣接することを必要とせず、AとBまたはCとの間に他の構成要素が介在する形態を含む。例えば、電解質層112と空気極114との間に反応防止層が設けられた構成であっても、空気極114と燃料極116とは電解質層112を挟んで互いに対向すると言える。
【0073】
また、上記実施形態では、固体酸化物形燃料電池(SOFC)を例に説明したが、本発明は、固体高分子形燃料電池(PEFC)、リン酸型燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)といった他のタイプの燃料電池にも適用可能である。
【符号の説明】
【0074】
22:ボルト 24:ナット 26:絶縁シート 27:ガス通路部材 28:本体部 29:分岐部 100:燃料電池スタック 102:発電単位 103:熱交換部 104:エンドプレート 106:エンドプレート 108:ボルト孔 110:単セル 112:電解質層 114:空気極 116:燃料極 120:セパレータ 121:孔 124:接合部 130:空気極側フレーム 131:孔 132:酸化剤ガス供給連通孔 133:酸化剤ガス排出連通孔 134:空気極側集電体 140:燃料極側フレーム 141:孔 142:燃料ガス供給連通孔 143:燃料ガス排出連通孔 144:燃料極側集電体 145:電極対向部 146:インターコネクタ対向部 147:連接部 149:スペーサー 150:インターコネクタ 161:酸化剤ガス導入マニホールド 162:酸化剤ガス排出マニホールド 163:酸化剤ガス供給マニホールド 166:空気室 171:燃料ガス導入マニホールド 172:燃料ガス排出マニホールド 176:燃料室 182:孔 184:連通孔 186:連通孔 188:熱交換流路
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