(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記張力調整部材は、第2の巻取部材においてカスが巻き取られるカス上げ速度と、第1の巻取部材においてラベル紙本体が巻き取られる巻取速度とを等しくする請求項1に記載の媒体巻取装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。この場合、画像形成装置としてのプリンタ、該プリンタに隣接させて配設された給紙装置、及び媒体巻取装置としてのロール紙巻取装置から成る印刷巻取ユニット、並びに印刷巻取ユニットを使用した媒体巻取方法としてのロール紙巻取方法について説明する。
【0018】
図1は本発明の第1の実施の形態におけるカス上げ部の斜視図、
図2は本発明の第1の実施の形態における印刷巻取ユニットの正面図、
図3は本発明の第1の実施の形態におけるアイドルローラの駆動機構の斜視図である。
【0019】
図において、Pは、裏面に粘着剤が塗布された剥離紙を台紙に貼着し、剥離紙の所定の部分をラベルの形状にハーフカットすることによって形成された連続紙から成る原紙、Paは原紙Pから取り除かれるカス、Pbは、カスPaが取り除かれた後の、台紙上に複数のラベルを備えるラベル紙本体である。
【0020】
また、10は印刷巻取ユニットであり、該印刷巻取ユニット10は、原紙Pを給紙する原紙供給部としての給紙装置(フィーダ)11、該給紙装置11に隣接させて配設され、給紙装置11から送られた原紙Pに対して印刷を行うプリンタ12、及び該プリンタ12に隣接させて配設され、印刷が行われ、プリンタ12から排出された原紙Pを受け、原紙PからカスPaを取り除き、カスPaをロール状に巻き取るとともに、ラベル紙本体Pbをロール状に巻き取るためのロール紙巻取装置13を備える。
【0021】
前記給紙装置11は、回転自在に配設された給紙ローラ81を備え、該給紙ローラ81にロール紙82がセットされる。該ロール紙82は、巻芯83に原紙Pを巻き付けることによって形成される。
【0022】
また、前記プリンタ12は、プリンタ12の本体、すなわち、装置本体内に図示されない印刷部を備える。給紙装置11から給紙された原紙Pは、プリンタ12に送られ、前記印刷部において印刷が行われた後、筐体Csに形成された排出口91からプリンタ12外に排出される。また、前記筐体Csには、プリンタ12を操作するための操作部としてのパネル部12aが配設され、該パネル部12aに、プリンタ12内における原紙Pの搬送量であるとともに、プリンタ12から排出される原紙Pの排出量であるフィード量を任意に設定するための設定部としての図示されないボタンが配設される。
【0023】
そして、前記ロール紙巻取装置13は、ハウジングHsのフロントパネル131から突出させて回転自在に配設され、回転に伴って、ラベル紙本体Pbをロール状に巻き取るための第1の巻取部材としての巻取ローラ14、ラベル紙本体Pbの搬送方向における前記巻取ローラ14より上流側において、前記フロントパネル131から突出させて回転自在に配設され、原紙Pにテンション(張力)を付与する第1の張力付与部材としての、回転摩擦部材としてのアイドルローラ16、フロントパネル131から突出させて、かつ、前記アイドルローラ16と対向させて配設され、原紙Pにおいて台紙からカスPaを剥がすための、剥離部材としての剥離バー84、ラベル紙本体Pbの搬送方向におけるアイドルローラ16及び剥離バー84より上流側において、フロントパネル131から突出させて、回転自在に、かつ、ハウジングHsに形成されたスリット17に沿って、鉛直方向に移動自在に配設され、原紙Pに付与されるテンションによって上下方向に移動させられ、ラベル紙本体Pbにテンションを付与するとともに、巻取ローラ14に対するラベル紙本体Pbの巻取りタイミングを生成する第2の張力付与部材としての、巻取りタイミング生成部材としてのテンションバー18、フロントパネル131から突出させて回転自在に配設され、回転に伴って、剥離バー84によって台紙から剥がされたカスPaをロール状に巻き取るための第2の巻取部材としてのカス上げローラ86等を備える。
【0024】
そして、前記巻取ローラ14には、カスPaが取り除かれたラベル紙本体Paがロール状に収容される。
【0025】
なお、前記テンションバー18は、自重によって下方に位置させられ、プリンタ12とアイドルローラ16との間の原紙Pに付与されるテンションに応じて位置が変更される。すなわち、テンションバー18は、原紙Pにテンションが付与された状態が継続すると上昇させられ、原紙Pにテンションが付与されなくなると自重で下降する。
【0026】
また、前記巻取ローラ14は、ラベル紙本体Pbの幅方向に延在させて、巻取軸sh1を回転中心として回転自在に配設されたローラ部141、及び該ローラ部141の両縁において、径方向外方に向けて突出させて形成された環状プレート部142を備える。該環状プレート部142は、巻取ローラ14を回転させたときにラベル紙本体Pbが幅方向に蛇行するのを防止する。
【0027】
さらに、前記巻取ローラ14は、第1の駆動部としての、かつ、巻取用の駆動部としての後述される巻取モータ(M)28(
図4)を駆動することによって回転させられる。そのために、巻取モータ28の出力軸と前記ローラ部141とが図示されない回転伝達系としてのギヤ機構を介して連結される。なお、前記巻取ローラ14、巻取モータ28、ギヤ機構等によってラベル紙本体巻取部が構成される。
【0028】
前記アイドルローラ16は、原紙Pの幅方向に延在させて、中心軸sh2を回転中心として回転自在に配設されたローラ部161、及び該ローラ部161の外周面に被覆され、摩擦係数の大きい材料から成る高摩擦材21を備える。したがって、ラベル紙本体Pbが巻取ローラ14に巻き取られるのに伴って搬送されるときの、アイドルローラ16上のラベル紙本体Pbの搬送速度(線速)とアイドルローラ16の周速度とが等しくされ、アイドルローラ16は、ラベル紙本体Pbが搬送されるのに伴って、ラベル紙本体Pbに対して滑ることなく回転させられる。そのために、本実施の形態においては、前記高摩擦材21として、ポリウレタン系のゴムが使用されるようになっている。なお、高摩擦材として、ゴム以外の摩擦係数の高い材料を使用することができる。
【0029】
また、本実施の形態においては、スリット17上のテンションバー18の位置、巻取ローラ14におけるロール紙の径、すなわち、ロール紙巻取径等が変化したときに、ラベル紙本体Pbに付与されるテンションが変化することがないように、ラベル紙本体Pbが搬送されるのに伴って回転させられるアイドルローラ16に一定の負荷が与えられるようになっている。
【0030】
そのために、前記ハウジングHs内においてハウジングHsのフロントパネル131にフレームFrが取り付けられ、該フレームFr内においてアイドルローラ16と連結させて張力調整装置164が配設される。該張力調整装置164は、前記中心軸sh2上において前記ローラ部161の後端に取り付けられたギヤg1、前記中心軸sh2と平行に延びる中心軸sh5上に配設され、前記ギヤg1と噛合させられるギヤg2、及び前記中心軸sh5上に配設され、前記ギヤg2に取り付けられた第1の張力調整部材としてのトルクリミッタ22を備える。なお、本実施の形態において、トルクリミッタ22は、永久磁石を使用したマグネット式のトルクリミッタであり、永久磁石の磁力によって、アイドルローラ16の表面において、400〔gf〕の負荷がアイドルローラ16に与えられる。
【0031】
したがって、スリット17上のテンションバー18の位置、巻取ローラ14におけるロール紙巻取径等が変化しても、原紙Pに一定のテンションが付与されるので、巻取ローラ14におけるロール紙の巻取り硬さを均一にすることができる。また、回転している巻取ローラ14を停止させた場合等において、アイドルローラ16上のラベル紙本体Pbが、巻取ローラ14に巻き取られるラベル紙本体Pbの速度(線速)である巻取速度Vrより速い搬送速度で搬送されるのを防止することができる。
【0032】
なお、前記ギヤg1、g2によって回転伝達系が構成される。また、本実施の形態においては、トルクリミッタ22が中心軸sh5上に配設されるようになっているが、トルクリミッタ22を中心軸sh2上に配設することができる。
【0033】
ところで、前記カス上げローラ86は、カスPaの幅方向に延在させて、巻取軸sh13を回転中心として回転自在に配設されたカス上げ巻取部181を備える。
【0034】
そして、前記カス上げローラ86は、第2の駆動部としての、かつ、カス上げ用の駆動部としてのカス上げモータ(M)182を駆動することによって回転させられる。そのために、カス上げモータ182の出力軸sh8と前記カス上げ巻取部181とが回転伝達機構184を介して連結される。
【0035】
該回転伝達機構184は、前記出力軸sh8上に配設されたギヤg8、出力軸sh8と平行に延びる中心軸sh9上に配設され、前記ギヤg8と噛合させられるギヤg9、前記中心軸sh9と平行に延びる中心軸sh10の一端に配設され、前記ギヤg9と噛合させられるギヤg10a、前記中心軸sh10と平行に延びる中心軸sh11上に配設され、前記中心軸sh10の他端に配設されたギヤg10bと噛合させられるギヤg11a、前記中心軸sh11と平行に延びる中心軸sh12の一端に配設され、前記ギヤg11aと隣接させて配設されたギヤg11bと噛合させられるギヤg12、前記巻取軸sh13上に配設され、前記ギヤg12と噛合させられるギヤg13、及びカス上げモータ182とカス上げローラ86との間、本実施の形態においては、中心軸sh10上におけるギヤg10a、g10b間に配設された第2の張力調整部材としてのトルクリミッタ122を備える。なお、本実施の形態において、トルクリミッタ122は、永久磁石を使用したマグネット式のトルクリミッタである。
【0036】
前記カス上げローラ86に所定の負荷(トルク)が加わると、トルクリミッタ122に滑りが生じ、トルクリミッタ122におけるカス上げモータ182側とカス上げローラ86側とが相対的に回転させられ、カスPaに一定のテンションが付与される。
【0037】
また、カス上げモータ182は、巻取ローラ14において想定される前記巻取速度Vrの最高速度、すなわち、巻取ローラ14におけるロール紙巻取径が最大のときの巻取速度(以下「最大巻取速度」という。)をVmaxとしたとき、カス上げローラ86によって、カスPaを最大巻取速度Vmaxより速い速度(線速)、すなわち、カス上げ速度でカス上げローラ86に巻き取ることができるようにあらかじめ設定された一定の回転速度Nkで駆動される。この場合、巻取軸sh13に所定の負荷が加わると、トルクリミッタ122に滑りが生じ、ギヤg10a、g10bが相対的に回転させられる。その結果、実際に、カス上げローラ86においてカスPaが巻き取られるカス上げ速度、すなわち、実カス上げ速度Vkは巻取ローラ14における巻取速度Vrと等しくなる。
【0038】
前記カス上げローラ86、カス上げモータ182、回転伝達機構184等によってカス上げ部が構成される。
【0039】
なお、前記フロントパネル131の所定の箇所、本実施の形態においては、巻取ローラ14の上方に、操作者が押下することによってロール紙巻取装置13を始動するための第1の操作要素としての始動スイッチ88、及び操作者が押下することによってロール紙巻取装置13を停止させるための第2の操作要素としての停止スイッチ89が配設される。
【0040】
図4は本発明の第1の実施の形態におけるロール紙巻取装置の制御ブロック図である。
【0041】
図において、17はスリット、18は該スリット17に沿って鉛直方向に移動自在に配設されたテンションバーであり、テンションバー18は、巻取モータ28の駆動又は停止に伴って、スリット17に沿って上昇又は下降させられる。
【0042】
また、テンションバー18は、シャフトsh21、及び原紙P(
図2)の幅方向に延在させて、シャフトsh21を回転中心として回転自在に配設されたローラ部19を備え、原紙Pが搬送されるのに伴って、連れ周りで回転させられる。
【0043】
そして、テンションバー18には、テンションバー18の位置を検出するための被検出要素としての遮光板29が上下方向に延在させて取り付けられ、該遮光板29はテンションバー18とともに上下方向に移動させられる。また、前記ハウジングHs内には、テンションバー18の位置を検出する位置検出部材としての複数のバー検出センサSi(i=1、2、…、5)が、スリット17に沿って所定のピッチで配設される。各バー検出センサSiは、遮光板29の一方の面と対向させて配設された発光部、及び遮光板29の他方の面と対向させて配設された受光部を備え、発光部によって発光させられた光が受光部によって受光されるときにオフになり、発光部によって発光させられた光が遮光板29によって遮光され、受光部によって受光されないときにオンになる。本実施の形態においては、遮光板29が使用され、発光部によって発光させられた光が遮光板29によって遮光され、受光部によって受光されないときにオンになるようになっているが、被検出要素として反射板を使用し、発光部によって発光させられた光が反射板によって反射され、受光部によって受光されるときにオンにすることができる。
【0044】
前記バー検出センサSiのセンサ出力、すなわち、オン・オフは制御部30に送られ、該制御部30は、バー検出センサSiのオン・オフに基づいてテンションバー18の位置を判断し、テンションバー18の位置に応じて前記巻取モータ28及びカス上げモータ182を駆動したり、停止させたりする。すなわち、本実施の形態においては、ロール紙巻取装置13において巻取ローラ14の回転及び停止を繰り返すことによってラベル紙本体Pbが巻取ローラ14に巻き取られ、カス上げローラ86の回転及び停止を繰り返すことによってカスPaがカス上げローラ86に巻き取られるようになっている。
【0045】
また、制御部30は、巻取モータ28の駆動条件が成立したかどうかを、テンションバー18が、スリット17における最下位置RLより所定の距離だけ上方に設定された位置、すなわち、下位置に到達したかどうか、本実施の形態においては、バー検出センサS5がオンになるかどうかによって判断し、巻取モータ28の停止条件が成立したかどうかを、テンションバー18が、スリット17に設定された上位置に到達したかどうか、本実施の形態においては、すべてのバー検出センサS1〜S5がオフになったかどうかによって判断する。
【0046】
前記巻取モータ28及びカス上げモータ182としては、入力電流に対して安定したトルクを発生させることができるDCモータが使用される。
【0047】
次に、印刷巻取ユニット10の動作について説明する。
【0048】
図5は本発明の第1の実施の形態における印刷巻取ユニットの動作を説明するための図である。
【0049】
まず、操作者が、給紙装置11(
図2)に原紙Pをセットし、プリンタ12のパネル部12aを操作し、原紙Pの供給を指示すると、原紙Pは、プリンタ12内を搬送され、印刷部によって所定の印刷が行われ、排出口91からプリンタ12外に排出される。原紙Pが、ラベル紙本体Pbを巻取ローラ14にテープ留めすることができるだけの長さ分供給されると、操作者は、アイドルローラ16と剥離バー84との間に原紙Pを通し、原紙PからカスPaをめくり、カスPaの先端をカス上げローラ86の所定の箇所に貼り付け、ラベル紙本体Pbの先端を巻取ローラ14にテープ留めする。なお、カスPaの裏面には粘着剤が塗布されているので、カスPaをテープ留めする必要がない。
【0050】
続いて、操作者は、プリンタ12とアイドルローラ16との間の原紙Pに弛みが形成されないように巻取ローラ14及びカス上げローラ86を手で回し、カスPa及びラベル紙本体Pbを張った状態にする。これにより、テンションバー18が最上位置RUに置かれる(テンションバー18及び遮光板29の下端が最上位置RUに置かれる。)。
【0051】
そして、操作者がフロントパネル131上の始動スイッチ88を押下してカスPa及びラベル紙本体Pbのセットの完了を制御部30に通知すると、制御部30は、タイミングt0で印刷データを印刷部に送り、印刷を開始する。
【0052】
これにより、プリンタ12で原紙Pに対して所定の印刷速度Vdで印刷が行われ、原紙Pがプリンタ12から印刷速度Vdと等しい排出速度で排出されるが、巻取モータ28は停止させられているので、プリンタ12とアイドルローラ16との間の原紙Pが弛み、テンションバー18が自重により下方に移動する。これに伴って、遮光板29が下方に移動し、バー検出センサS1〜S4が順次オンになる。
【0053】
テンションバー18が、タイミングt1で、前記下位置に到達し、バー検出センサS5がオンになると、巻取モータ28の駆動条件が成立し、制御部30は、タイミングt2で巻取モータ28及びカス上げモータ182を駆動する。
【0054】
なお、テンションバー18が最下位置RLに到達したときにバー検出センサS5がオンになるようにすると、巻取モータ28及びカス上げモータ182が駆動されるまでの間に、テンションバー18が同じ位置に置かれたまま原紙Pが弛んでしまい、原紙Pにテンションを付与することができなくなってしまう。そこで、本実施の形態においては、テンションバー18が下位置に到達したときに、巻取モータ28及びカス上げモータ182が駆動されるようになっている。
【0055】
この場合、巻取モータ28は、巻取ローラ14を回転させたときのラベル紙本体Pbの巻取速度Vrが、プリンタ12における印刷速度Vdより速くなるように駆動される。
【0056】
また、カス上げモータ182は、カスPaを、巻取ローラ14において想定される最大巻取速度Vmaxより速いカス上げ速度でカス上げローラ86に巻き取ることができるように回転速度Nkで駆動されるが、巻取軸sh13に所定の負荷が加わると、トルクリミッタ122に滑りが生じ、実カス上げ速度Vkと巻取速度Vrとが等しくなる。
【0057】
その結果、プリンタ12とアイドルローラ16との間の原紙Pの弛みが小さくなり、テンションバー18が自重に抗して上方に移動する。これに伴って、遮光版29が上方に移動し、バー検出センサS5、S4、S3、S2、S1が順次オフになる。
【0058】
そして、テンションバー18が、上位置に到達し、すべてのバー検出センサS1〜S5がオフになると、巻取モータ28の停止条件が成立し、制御部30は巻取モータ28及びカス上げモータ182を停止させる。
【0059】
前記制御部30は、テンションバー18が下方に移動し、下位置に到達すると、巻取モータ28及びカス上げモータ182を駆動し、テンションバー18が上方に移動し、上位置に到達すると、巻取モータ28及びカス上げモータ182を停止させ、これらの動作を印刷が停止させられるまで繰り返す。
【0060】
このように、本実施の形態においては、カス上げモータ182と前記カス上げローラ86との間にトルクリミッタ122が配設され、前記カス上げローラ86に所定の負荷が加わると、カス上げモータ182側とカス上げローラ86側とが相対的に回転させられ、カスPaに一定のテンションが付与されるので、カスPaを安定させてカス上げローラ86に巻き取ることができる。
【0061】
また、カス上げモータ182からカス上げローラ86に伝達されるトルクを制御するためにパウダクラッチを使用する必要がないので、ロール紙巻取装置13の構造を簡素化することができるだけでなく、ロール紙巻取装置13のコストを低くすることができる。
【0062】
そして、カスPaがカス上げローラ86に巻き取られる状態を監視し、カスPaの状態に応じてトルクを調整するようにしたトルク調整機構を使用する必要がないので、熟練した操作者が常にカスPaの状態を監視してトルクを調整する必要がなく、ロール紙巻取装置13の操作性を向上させることができる。
【0063】
ところで、本実施の形態においては、巻取モータ28の駆動条件が成立し、巻取モータ28が駆動され、ラベル紙本体Pbの巻取りが開始されるとともに、カス上げモータ182が駆動され、カスPaの巻取りが開始され、巻取ローラ14においてラベル紙本体Pbは巻取速度Vrで巻き取られ、カス上げローラ86においてカスPaが実カス上げ速度Vkで巻き取られる。
【0064】
ところが、カス上げローラ86における、カスPaがロール状に巻かれたロールカス87の径、すなわち、カス巻取径が変化すると、カス上げモータ182が駆動されるときに、カスPaを円滑にカス上げローラ86に巻き取ることができなくなることがある。
【0065】
そこで、巻取速度Vrを段階的に加速することによって、原紙Pから取り除かれたカスPaが巻取ローラ14に巻き取られるのを防止することができるようにした本発明の第2の実施の形態について説明する。なお、第1の実施の形態と同じ構造を有するものについては、同じ符号を付与し、同じ構造を有することによる発明の効果については同実施の形態の効果を援用する。
【0066】
図6は本発明の第2の実施の形態における巻取モータ及びカス上げモータが駆動されるときの巻取速度及び実カス上げ速度の立上り特性を説明するための図である。なお、図において、横軸に時間を、縦軸に巻取速度Vr及び実カス上げ速度Vkを採ってある。
【0067】
図において、L1は、第1の駆動部としての、かつ、巻取用の駆動部としての巻取モータ28(
図4)が駆動されるときの第1の実施の形態における巻取速度Vrの推移を示す線、L2は、カス巻取径が小さい場合に、第2の駆動部としての、かつ、カス上げ用の駆動部としてのカス上げモータ182が駆動されるときの実カス上げ速度Vkの推移を示す線、L3はカス巻取径が大きい場合にカス上げモータ182が駆動されるときの実カス上げ速度Vkの推移を示す線、L4は巻取モータ28が駆動されるときの本実施の形態における巻取速度Vrの推移を示す線、Vdはプリンタ12における印刷速度、Vrmは、印刷速度Vdより速い値に設定された巻取速度Vrの目標速度である。
【0068】
本実施の形態においては、第1の実施の形態と同様に、カス上げモータ182と第2の巻取部材としてのカス上げローラ86(
図1)との間に第2の張力調整部材としてのトルクリミッタ122が配設され、巻取軸sh13に所定の負荷が加わることによってトルクリミッタ122に滑りが生じ、実カス上げ速度Vkと巻取速度Vrとが等しくなる。
【0069】
カス巻取径が小さい場合、ロールカス87による慣性モーメントが小さいので、カス上げモータ182が駆動されると、線L2で示されるように、実カス上げ速度Vkの立上がりが速くなることがあり、カス巻取径が大きい場合、ロールカス87による慣性モーメントが大きいので、カス上げモータ182が駆動されると、線L3で示されるように、実カス上げ速度Vkの立上がりが遅くなることがある。
【0070】
これに対して、巻取モータ28と第1の巻取部材としての巻取ローラ14との間には、ギヤ機構が配設されるだけであり、トルクリミッタが配設されず、しかも、巻取モータ28としてDCモータが使用されるので、巻取ローラ14におけるロール紙巻取径が小さい場合でも、大きい場合でも、線L1で示されるように、巻取速度Vrの立上がりは変化しない。
【0071】
したがって、ロール紙巻取径及びカス巻取径が大きくなった場合に、巻取モータ28及びカス上げモータ182が駆動されたときに、実カス上げ速度Vkの立上がりが巻取速度Vrの立上がりより遅くなると、原紙Pから取り除かれたカスPaがカス上げローラ86に巻き取られず、巻取ローラ14に巻き取られてしまうことがあり、その場合、カスPaが切断されてしまう。
【0072】
そこで、本実施の形態においては、線L4で示されるように、巻取速度Vrを印刷速度Vdに対して遅い側から複数の、例えば、8個の段kj(j=1、2、…、8)によって段階的に加速し、巻取速度Vrの立上げを疑似的に遅くするようにしている。なお、段k7、k8において巻取速度Vrは印刷速度Vdより速くされる。
【0073】
ところで、巻取ローラ14において、ロール紙巻取径が大きくなるにつれて巻取速度Vrは速くなるので、第1の張力付与部材としての、かつ、回転摩擦部材としてのアイドルローラ16の回転速度に基づいて巻取速度Vrを推定することができる。
【0074】
次に、アイドルローラ16の回転速度に基づいて巻取速度Vrの立上げを疑似的に遅くするための巻取速度制御装置について説明する。
【0075】
図7は本発明の第2の実施の形態における巻取速度制御装置を示す図である。
【0076】
図において、16はアイドルローラ、23は、アイドルローラ16の中心軸sh2上に取り付けられ、所定の間隔で複数のスリット231が形成された円形の形状を有するスリット板、24は、該スリット板23の外周縁と対向させて配設され、アイドルローラ16の回転速度を検出するための検出要素としての、かつ、速度検出部としての透過型センサ、30は制御部である。
【0077】
前記透過型センサ24は、前記スリット板23の一方の面と対向させて配設された発光部241、及び前記スリット板23の他方の面と対向させて配設された受光部242を備え、発光部241によって発光させられ、前記スリット231を透過した光を受光部242が受光することによって、センサ出力であるパルス信号が発生させられ、制御部30に送られる。前記パルス信号は、受光部242が受光するとオンになる複数のパルスから成り、スリット板23の回転速度に応じて、すなわち、アイドルローラ16の回転速度に応じて、各パルスのオンになる時間、すなわち、パルス幅が変化する。
【0078】
そこで、本実施の形態においては、制御部30において、巻取モータ28の駆動条件が成立し、巻取モータ28が駆動される際に、パルス幅に基づいて巻取速度Vrを推定し、推定した巻取速度Vrを各段kjにおいて段階的に加速するようにしている。
【0079】
そのために、前記制御部30は、第2の張力付与部材としての、かつ、巻取りタイミング生成部材としてのテンションバー18の位置を検出する位置検出部材としてのバー検出センサSi(
図4)のオン・オフを読み込み、巻取モータ28の駆動条件が成立したかどうかを判断する駆動条件判定部34、巻取モータ28が駆動されたときの透過型センサ24のパルス信号を読み込むセンサ出力取得部としてのカウント部25、巻取速度Vrが目標速度Vmに到達したかどうかを判断する目標速度判定部26、並びに駆動条件判定部34及び目標速度判定部26の判断結果に基づいて巻取モータ28を駆動するモータ制御部27を備える。
【0080】
前記カウント部25は、200〔ms〕の切替時間ごとに透過型センサ24から各段kjのパルス信号を読み込み、各段kjのパルス信号の1周期を表すカウント値Cj(j=1、2、…、8)を1〔ms〕の制御周期でカウントし、カウント値Cjを取得する。また、前記目標速度判定部26は、各段kjにおいて巻取速度Vrを段階的に加速するために、巻取モータ28の回転速度Nj(j=1、2、…、8)を生成するとともに、前記カウント部25からカウント値Cjを読み込み、該カウント値Cjと、あらかじめ設定された閾値Cth1(本実施の形態においては52。)、Cth2(本実施の形態においては62。)とを比較し、巻取速度Vrが目標速度Vmに到達したかどうかを判断する。
【0081】
前記モータ制御部27は、前記駆動条件が成立すると、巻取モータ28を駆動し、巻取速度Vrが目標速度Vmに到達すると、巻取モータ28による段階的な加速を停止させる。
【0082】
次に、印刷巻取ユニット10の動作について説明する。
【0083】
図8は本発明の第2の実施の形態における印刷巻取ユニットの動作を説明するための図であり、
図8(a)は印刷速度が速いときの印刷巻取ユニットの動作を説明するための図、
図8(b)は印刷速度が遅いときの印刷巻取ユニットの動作を説明するための図である。
【0084】
まず、操作者が、原紙供給部としての前記給紙装置11に原紙Pをセットし、画像形成装置としてのプリンタ12の操作部としてのパネル部12aを操作し、原紙Pの供給を指示すると、原紙Pは、プリンタ12内を搬送され、排出口91からプリンタ12外に排出される。次に、操作者が、カスPaの先端をカス上げローラ86の所定の箇所に貼り付け、ラベル紙本体Pbの先端を巻取ローラ14にテープ留めする。
【0085】
続いて、操作者が、巻取ローラ14及びカス上げローラ86を手で回し、カスPa及びラベル紙本体Pbを張った状態にする。これにより、テンションバー18が最上位置RUに置かれる。
【0086】
そして、操作者がフロントパネル131上の第1の操作要素としての始動スイッチ88を押下してカスPa及びラベル紙本体Pbのセットの完了を制御部30に通知すると、制御部30は、タイミングt10で印刷データを印刷部に送り、印刷を開始する。
【0087】
これにより、プリンタ12で原紙Pに対して所定の印刷速度Vdで印刷が行われ、原紙Pがプリンタ12から排出されるが、巻取モータ28は停止させられているので、プリンタ12とアイドルローラ16との間の原紙Pが弛み、テンションバー18が自重により下方に移動する。これに伴って、テンションバー18の位置を検出するための被検出要素としての遮光板29が下方に移動し、バー検出センサS1〜S5が順次オンになる。
【0088】
テンションバー18が、タイミングt11で、最下位置RLより印刷速度Vdに応じて設定された距離だけ上方に設定された下位置に到達し、
図8(a)の印刷速度が速い場合はバー検出センサS3が、
図8(b)の印刷速度が遅い場合はバー検出センサS4がオンになると、巻取モータ28の駆動条件が成立し、制御部30は、タイミングt12で巻取モータ28及びカス上げモータ182を駆動する。
【0089】
なお、テンションバー18が最下位置RLに到達したときにバー検出センサS5がオンになると、巻取モータ28及びカス上げモータ182が駆動されるまでの間に、テンションバー18が同じ位置に置かれたまま原紙Pが弛んでしまい、原紙Pにテンションを付与することができなくなってしまう。そこで、第1の実施の形態と同様に、最下位置RLより所定の距離だけ上方に設定された下位置に到達したときに、巻取モータ28及びカス上げモータ182が駆動されるようになっている。したがって、テンションバー18のストロークが変化しないようにすることができ、巻取ローラ14におけるロール紙の巻取り硬さを均一にすることができる。
【0090】
この場合、前記巻取モータ28は、巻取速度Vrを、8個の段kjにおいて段階的に加速し、段k1〜k6において印刷速度Vdより遅く、段k7、k8において印刷速度Vdより速くなるようにする。
【0091】
したがって、
図8(a)の印刷速度が速い場合において、テンションバー18は、バー検出センサS3がオンになってからバー検出センサS5がタイミングt13でオンになるまでの間、継続して下方に移動し、タイミングt14で上方に移動し始める。また、
図8(b)の印刷速度が遅い場合において、テンションバー18は、バー検出センサS4がオンになってからバー検出センサS5がタイミングt13でオンになるまでの間、継続して下方に移動し、タイミングt14で上方に移動し始める。
【0092】
次に、8個の段kjにおいて巻取速度Vrを段階的に加速したときの、巻取モータ28の回転速度Nj、透過型センサ24によって発生させられたパルス信号、及びカウント部25によってカウントされたカウント値Cj(j=1、2、…、8)の推移について説明する。
【0093】
図9は本発明の第2の実施の形態におけるロール紙巻取径が小さい場合の巻取速度制御装置の動作の例を説明するための第1のタイムチャート、
図10は本発明の第2の実施の形態におけるロール紙巻取径が小さい場合の巻取速度制御装置の動作の例を説明するための第2のタイムチャート、
図11は本発明の第2の実施の形態におけるロール紙巻取径が大きい場合の巻取速度制御装置の動作の例を説明するためのタイムチャートである。
【0094】
この場合、制御部30は、あらかじめ設定された切替時間、本実施の形態においては、200〔ms〕が経過するたびに、各段kjを更新し、各段kjにおいて、前記カウント部25は、パルス信号の1周期(切替時間中に複数の周期を取ることができる場合は最後の1周期)をカウントし、カウント値Cjを更新し、前記目標速度判定部26は、切替時間の各切替タイミングmj(j=1、2、…、8)で、カウント値Cjと閾値Cth1、Cth2とを比較し、回転速度Njを上昇(UP)させるか、又は下降(DOWN)させるかを判断し、前記モータ制御部27は、目標速度判定部26の判断に基づいてモータ28の回転速度Njを決定する。
【0095】
前記目標速度判定部26は、カウント値Cjを取得することができない場合、及びカウント値Cjが62より大きい場合、回転速度Njを上昇させ、カウント値Cjが52より小さい場合、回転速度Njを下降させ、カウント値Cjが52以上、かつ、62以下である場合、巻取速度Vrが目標速度Vmに到達したと判断し、回転速度Njを変更しない。
【0096】
ロール紙巻取径が小さい場合、
図9及び10に示されるように、200〔ms〕の切替時間ごとに、切替タイミングmjが設定され、段k1において、カウント部25はカウント値を取得することができず、モータ制御部27は回転速度N1を初期値である525〔rpm〕にする。
【0097】
続いて、段k2において、カウント部25はカウント値C1(=152)を取得し、モータ制御部27は、段k1においてカウント値が取得されなかったので、回転速度N2を上昇させ、579〔rpm〕にする。
【0098】
また、段k3において、カウント部25はカウント値C2(=129)を取得し、モータ制御部27は、カウント値C1が62より大きいので、回転速度N3を上昇させ、685〔rpm〕にし、段k4において、カウント部25はカウント値C3(=108)を取得し、モータ制御部27は、カウント値C2が62より大きいので、回転速度N4を上昇させ、812〔rpm〕にし、段k5において、カウント部25はカウント値C4(=91)を取得し、モータ制御部27は、カウント値C3が62より大きいので、回転速度N5を上昇させ、966〔rpm〕にし、段k6において、カウント部25はカウント値C5(=77)を取得し、モータ制御部27は、カウント値C4が62より大きいので、回転速度N6を上昇させ、1146〔rpm〕にし、段k7において、カウント部25はカウント値C6(=64)を取得し、モータ制御部27は、カウント値C5が62より大きいので、回転速度N7を上昇させ、1363〔rpm〕にし、段k8において、カウント部25はカウント値C7(=54)を取得し、モータ制御部27は、カウント値C6が62より大きいので、回転速度N8を上昇させ、1631〔rpm〕にする。
【0099】
この場合、段k8において、カウント値C7が62以下で、かつ、52以上であるので、制御部30は巻取速度Vrが目標速度Vmに到達したと判断し、モータ制御部27は、テンションバー18が最上位置RUに到達するまで回転速度N8を変更することなく、1631〔rpm〕にする。
【0100】
また、ロール紙巻取径が大きい場合、
図11に示されるように、200〔ms〕の切替時間ごとに、切替タイミングmjが設定され、段k1において、カウント部25はカウント値C1(=69)を取得し、モータ制御部27は回転速度N1を初期値である525〔rpm〕にする。
【0101】
続いて、段k2において、カウント部25はカウント値C2(=63)を取得し、モータ制御部27は、カウント値C1が62より大きいので、回転速度N2を上昇させ、579〔rpm〕にする。
【0102】
また、段k3において、カウント部25はカウント値C3(=53)を取得し、モータ制御部27は、カウント値C2が62より大きいので、回転速度N3を上昇させ、685〔rpm〕にする。
【0103】
この場合、段k3において、カウント値C3が62以下で、かつ、52以上であるので、制御部30は巻取速度Vrが目標速度Vmに到達したと判断し、モータ制御部27は、テンションバー18が最上位置RUに到達するまで回転速度N3を変更することなく、685〔rpm〕にする。
【0104】
このように、本実施の形態においては、前記巻取モータ28を駆動するときの、巻取ローラ14にラベル紙本体Pbが巻き取られる巻取速度Vrが段階的に加速されるので、巻取速度Vrの立上りを、カス巻取径が最も大きくなったときの実カス上げ速度Vkの立上りより遅くすることができる。したがって、原紙Pから取り除かれたカスPaが巻取ローラ14に巻き取られてしまうことがなく、カスPaが切断されるのを防止することができる。
【0105】
前記各実施の形態においては、印刷巻取ユニット10にプリンタ12が配設されるようになっているが、プリンタ12に代えて複写機、ファクシミリ、複合機等の画像形成装置を配設することができる。
【0106】
なお、本発明は前記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づいて種々変形させることが可能であり、それらを本発明の範囲から排除するものではない。