(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の皮膚洗浄剤組成物に用いられる成分(A)は、一般式(1)
R
1O(CH
2CH
2O)
nSO
3NH
4 ・・・(1)
(式中、R
1は炭素数8〜18の脂肪族炭化水素基を示し、nは平均付加モル数を示し、n=0〜1.2である。)
で表されるアニオン性界面活性剤である。
優れた殺菌効果、特にグラム陰性菌に対する殺菌効果を得る観点及び良好な起泡性を得る観点から、成分(A)はアンモニウム塩である。成分(A)のナトリウム塩やカリウム塩では、グラム陰性菌に対する良好な殺菌効果が得られず、起泡性も十分でない。
また、優れた殺菌効果、特にグラム陰性菌に対する殺菌効果を得る観点及び良好な起泡性を得る観点から、一般式(1)中の平均付加モル数nは0〜1.2である。nが2以上の化合物を用いると、グラム陰性菌に対する良好な殺菌効果が得られず、起泡性も十分でない。より好ましいnは0〜1.0である。
【0012】
R
1としては、炭素数8〜16の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数10〜16の脂肪族炭化水素基がより好ましい。さらには、炭素数8〜16のアルキル基又はアルケニル基が好ましく、炭素数10〜16のアルキル基又はアルケニル基がより好ましい。
【0013】
具体的には、成分(A)としては、ラウリル硫酸アンモニウム、ミリスチル硫酸アンモニウム等のアルキル硫酸アンモニウム塩;ポリオキシエチレン(1モル)ラウリルエーテル硫酸アンモニウム塩、ポリオキシエチレン(1モル)ミリスチルエーテル硫酸アンモニウム塩等のポリオキシエチレン(1モル)アルキルエーテル硫酸アンモニウム塩等が挙げられる。なお、本明細書において、これらの化合物のかっこ内の数値はエチレンオキシドの平均付加モル数を意味する。成分(A)として、これらの化合物の1種を単独で用いてもよく、又2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、成分(A)の商品としては、エマール125A〔花王社製〕、エマールAD−25R〔花王社製〕等が挙げられる。
【0014】
成分(A)の皮膚洗浄剤組成物中の含有量は、殺菌効果、消臭効果、洗浄効果及び起泡性を向上させる観点から、0.1質量%以上が好ましく、0.5質量%以上がより好ましく、1質量%以上がさらに好ましく、3質量%以上がさらに好ましく、また35質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、20質量%以下がさらに好ましく、15質量%以下がさらに好ましい。具体的には、0.1〜35質量%が好ましく、0.5〜30質量%がより好ましく、1〜20質量%がさらに好ましく、3〜15質量%がさらに好ましい。
【0015】
本発明の皮膚洗浄剤組成物に用いられる成分(B)は殺菌剤であり、具体的にはトリクロサン、イソプロピルメチルフェノール及びパラクロロメタキシレノールから選ばれる少なくとも1種が好ましい。これらの殺菌剤のうち、高い殺菌効果を得る観点からトリクロサン及びイソプロピルメチルフェノールから選ばれる少なくとも1種がより好ましい。
これらの殺菌剤は2種以上を含有させることができ、その場合には、イソプロピルメチルフェノールとその他の殺菌剤を組み合わせるのが好ましい。具体的には、本発明の皮膚洗浄剤組成物は、イソプロピルメチルフェノールに加えて、トリクロサン及び/又はパラクロロメタキシレノールを含有するのが好ましい。
【0016】
成分(B)の皮膚洗浄剤組成物中の含有量は、十分な殺菌効果を得る観点から、0.03質量%以上が好ましく、0.05質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましく、また、組成物の安定性を確保する観点から2質量%以下が好ましく、1.5質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。具体的には、0.03〜2質量%が好ましく、0.05〜1.5質量%がより好ましく、0.1〜1質量%がさらに好ましい。
【0017】
本発明の皮膚洗浄剤組成物に用いられる成分(C)は、エデト酸ナトリウム塩である。
成分(A)及び(B)に加えて、成分(C)を含有させることにより、殺菌効果、消臭効果及び起泡性が顕著に向上する。成分(C)は、エデト酸ナトリウム塩であることが重要であり、エデト酸カリウム塩を用いても優れた消臭効果や起泡性は得られない。成分(A)としては、エデト酸2ナトリウム塩がより好ましい。
【0018】
成分(C)の皮膚洗浄剤中の含有量は、十分な殺菌効果、消臭効果及び起泡性を得る観点から、0.01質量%以上が好ましく、0.04質量%以上がより好ましく、0.1質量%以上がさらに好ましく、また5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、2質量%以下がさらに好ましい。具体的には、0.01〜5質量%が好ましく、0.04〜3質量%がより好ましく、0.1〜2質量%がさらに好ましい。
【0019】
本発明の皮膚洗浄剤組成物においては、成分(A)と成分(C)の含有質量比(A/C)は、殺菌効果、消臭効果及び起泡性を向上させる観点から、0.5以上が好ましく、1以上がより好ましく、2以上がさらに好ましく、また1,000以下が好ましく、500以下がより好ましく、100以下がさらに好ましい。具体的には、0.5〜1,000が好ましく、1〜500がより好ましく、2〜100がさらに好ましい。
【0020】
本発明の皮膚洗浄剤組成物に用いられる成分(D)は、水である。したがって、本発明の皮膚洗浄剤組成物は、水を媒体とする液状であるのが好ましい。成分(D)の皮膚洗浄剤組成物の含有量は、殺菌効果、消臭効果及び起泡性を向上させる観点から、60質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、80質量%以上がさらに好ましく、また99質量%以下が好ましく、98.5質量%以下がより好ましく、98質量%以下がさらに好ましい。具体的には、60〜99質量%が好ましく、70〜98.5質量%がより好ましく、80〜98質量%がさらに好ましい。
【0021】
本発明の皮膚洗浄剤組成物の25℃におけるpHは、殺菌効果、消臭効果及び皮膚刺激性の点から、5.5未満であり、5.3以下が好ましく、5.0以下がより好ましい。pHが5.5以下の場合には、殺菌効果及び消臭効果が向上下する。
また、皮膚刺激性を低減する観点からは、2.5以上が好ましく、2.8以上がより好ましく、3.0以上がさらに好ましい。
pHの調整は、酢酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等を含有させることにより行うことができる。
【0022】
本発明の皮膚洗浄剤組成物には、特許文献1〜3において良好な殺菌効果を得るために0.5質量%以上含有されているグリセリルエーテルの含有量は、優れた殺菌効果、消臭効果及び起泡性を得る観点から0.5質量%未満(グリセリルエーテルを含有しない場合を含む)である。グリセリルエーテルの含有量は、0〜0.4質量%が好ましく、0〜0.3質量%がより好ましく、0〜0.2質量%がさらに好ましい。
【0023】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、通常の皮膚用洗浄剤組成物に用いられる成分、例えばエタノール等の炭素数1〜5の低級アルコール類;グリセリン、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジプロピレングリコール、ソルビトール等の多価アルコール類;グアーガム等の植物由来の多糖類;キサンタンガム等の微生物由来の多糖類;ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース類;染料、顔料等の着色剤;塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム等の無機塩類;植物エキス類;防腐剤;ビタミン剤;香料;抗炎症剤;酸化防止剤等を、本発明の効果を損なわない範囲で含有してもよい。
なお、これらの各剤は、各剤としての用途に限られず、目的に応じて他の用途、たとえば、抗炎症剤を香料として使用したり、他の用途との併用として、たとえば、抗炎症剤と香料としての効果を奏するものとして使用することができる。
【0024】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は、通常使用されている容器に充填して使用することが可能であるが、フォーマー容器に充填することにより、起泡性が良く、泡の安定性も良好となるため、フォーマー容器に充填することがより好ましい。
【0025】
本発明の皮膚洗浄剤組成物は常法に従って製造することができる。さらに本発明の皮膚洗浄剤組成物は、身体用の液体殺菌洗浄剤として、例えばハンドソープ等の手指用の洗浄剤、ボディーシャンプー及びヘアーシャンプーとして用いられるのが好ましく、ハンドソープ等の手指用の洗浄剤として用いられるのがより好ましい。
【実施例】
【0026】
次に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。
【0027】
製造例1:EO平均付加モル数1.0のラウリルエーテル硫酸アンモニウム〔ES(1)NH
4〕
カルコール2470(花王社製,ドデシルアルコール:テトラデシルアルコール=約3:1)2000g及び水酸化カリウム1.45gを耐圧密閉式反応装置に仕込み、110℃、10mmHgで30分脱水を行った後、系内を165℃まで昇温した。昇温後、酸化エチレン456gを圧入し、そのままの温度で30分間付加反応を行った。その後、80℃まで冷却し、酢酸1.3gで中和し、上記原料アルコールの酸化エチレン付加物を得た。
次に、上記操作で得た混合物1793gと硫酸ガス607gを用い、40℃で硫酸化反応を行った。反応後28重量%アンモニア水150gとイオン交換水600gで中和を行った。更に28重量%アンモニア水及びイオン交換水を用いて濃度とpHの調整を行い、表1〜6に記載のES(1)NH
4の25重量%水溶液を10000g得た。
得られた硫酸塩は、化粧品原料基準に則り、硫酸塩、アニオン及びEO鎖の確認を行った。
【0028】
製造例2:EO平均付加モル数1.0のラウリルエーテル硫酸カリウム〔ES(1)K〕
カルコール2470(花王社製,ドデシルアルコール:テトラデシルアルコール=約3:1)2000g及び水酸化カリウム1.45gを耐圧密閉式反応装置に仕込み、110℃、10mmHgで30分脱水を行った後、系内を165℃まで昇温した。昇温後、酸化エチレン456gを圧入し、そのままの温度で30分間付加反応を行った。その後、80℃まで冷却し、酢酸1.3gで中和し、上記原料アルコールの酸化エチレン付加物を得た。
次に、上記操作で得た混合物1793gと硫酸ガス607gを用い、40℃で硫酸化反応を行った。反応後48重量%水酸化カリウム水溶液288gとイオン交換水600gで中和を行った。更に48重量%水酸化カリウム水溶液及びイオン交換水を用いて濃度とpHの調整を行い、表1に記載のES(1)Kの25重量%水溶液を10000g得た。
得られた硫酸塩は、化粧品原料基準に則り、硫酸塩、アニオン及びEO鎖の確認を行った。
【0029】
実施例1〜13及び比較例1〜10
表1〜6に記載の成分を混合して皮膚洗浄剤組成物を製造した。次に、各成分を示す。
ES(0)NH
4:ラウリル硫酸アンモニウム
ES(2)NH
4:ポリオキシエチレン(2モル)アルキル(C
10〜C
16)エーテル硫酸アンモニウム(エマール270S−A(花王社製))
ES(1)Na:ポリオキシエチレン(1モル)アルキル(C
10〜C
16)エーテル硫酸ナトリウム(エマール170−J(花王社製))
IPMP:イソプロピルメチルフェノール
EDTA/2Na:エデト酸2Na
EDTA/2K:エデト酸2K
2−エチルヘキシルグリセリルエーテル(ペネトールGE−EH(花王社製))
なお、各実施例、比較例において、pH調剤剤である、NaOH,リンゴ酸は、それぞれ10%水溶液として使用した。
【0030】
<殺菌効果>
以下の殺菌力試験を行った。
(1)試験菌
黄色ブドウ球菌(Staphylococcus Aureus,NBRC 13276)
大腸菌(Escherichia coli, NBRC 3972)
(2)評価法
1.評価サンプル
実施例及び比較例の洗浄剤組成物を滅菌済イオン交換水にて10倍希釈した溶液を試験液とした。
2.菌液の調製
試験菌を15mLのソイビーン・カゼイン・ダイジェスト(SCD)液体培地に一白金耳分を接種し、37度に設定した振盪培養器にて前培養を行った。前培養の時間は黄色ブドウ球菌24時間、大腸菌16時間とした。前培養終了後、遠心分離にて試験菌を沈殿させた後、上清を捨て、滅菌済生理食塩水10mLで再び試験菌を撹拌させた。その後、試験菌が吸光度1になるように滅菌済生理食塩水にて調製し、その液を菌液とした。
3.試験方法
25℃にて、試験液2mLに、菌液50μLを添加して十分に撹拌した。また、対照として、滅菌済生理食塩水2mLに菌液を50μL添加した。添加60秒後に100μLを採取し、レシチン・ポリソルベート80添加SCD液体培地1mLに添加し、洗浄剤組成物の殺菌活性を停止した。その後、殺菌活性を停止させた液体培地及びその希釈液をレシチン・ポリソルベート80加SCD寒天培地に塗布し、37度24時間培養後に生育したコロニー数を生存菌数としてカウントした。
4.評価
対照である滅菌済生理食塩水の菌数に対する各試験液の生存菌数の割合を殺菌率(%)として算出し、結果を下記の評価基準で示した。なお、黄色ブドウ球菌、大腸菌に対してはともに殺菌率が高いほど殺菌性に優れることを示す。
〈評価基準〉
A:殺菌率90%以上
B:殺菌率70%以上90%未満
C:殺菌率50%以上70%未満
D:殺菌率50%未満
【0031】
<消臭効果>
1%トリメチルアミン1mLをゴム手袋に擦り込ませた後、実施例及び比較例の洗浄組成物1mLをゴム手袋に擦り込ませた。そのゴム手袋とチャック付ポリ袋に入れた。また、対照として、1%トリメチルアミン1mLのみを擦り込ませたゴム手袋をチャック付ポリ袋に入れた。各手袋が入ったゴム手袋を専門パネル(1〜3名)に嗅いでもらい、対照と比べたトリメチルアミンの臭いの強度を下記の評点に従って評価した。
2点:臭いを感じない
1点:臭いは感じられるが、対照と比べて臭いの強度が減少している
0点:対照と同強度の臭いが感じられる
評点の平均点を取り、下記の基準を設定した。
A:1.0点以上
B:0.5点以上1.0点未満
C:0点超0.5点未満
D:0点
【0032】
<泡立ちの速さの評価>
15mL試験管(ベクトンアンドディッキンソン社製ポリプロピレン製コニカルチューブFalcon
TM)にて、実施例及び比較例の洗浄用組成物1mLとイオン交換水4mLを泡立たないように混和した。その後、ボルテックスミキサーで10秒間撹拌し、生じた泡の高さを測定した。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】
【表6】
【0039】
表1〜表6から明らかなように、成分(A)、(B)、(C)及び(D)を含有し、pHが5.5未満、グリセリルエーテルの含有量が0.5質量%未満の皮膚洗浄剤組成物は、グラム陽性菌だけでなくグラム陰性菌に対する抗菌活性が強く、消臭効果も優れており、起泡性も良好であった。なお、皮膚刺激性も低かった。
一方、成分(A)としてn=2のアンモニウム塩、n=1のナトリウム塩、n=1のカリウム塩を用いた洗浄剤は、殺菌効果が十分でなく、起泡性も十分満足できるものではなかった(比較例1〜4)。エデト酸2カリウムを用いた洗浄剤は、エデト酸2ナトリウムを用いた場合に比べて殺菌効果が十分でなかった(比較例5、6)。pHが5.5以上の洗浄剤は、殺菌効果及び消臭効果が十分でなかった(比較例7、8)。また、グリセリルエーテルを0.5質量%以上含有する洗浄剤は、殺菌効果、消臭効果及び起泡
力が十分でなかった。
【0040】
処方例1(ハンドソープ)
【0041】
【表7】
【0042】
処方例2(ハンドソープ)
【表8】
【0043】
処方例3(ハンドソープ)
【表9】