【実施例1】
【0021】
図1は、本発明に係る道路管理システムの一実施例の概略構成ブロック図を示す。本実施例の道路管理システムは、主として生活道路である道路の状況の現地調査のための道路情報収集装置10と、収集された道路状況データを分析評価し、道路維持管理の優先度に基づき修繕案を作成する道路情報管理装置40とからなる。道路情報収集装置10は、現地調査する調査員が調査に利用する装置であり、例えば、市販されるカメラ付きタブレット端末またはカメラ付きスマートフォン等の携帯情報処理端末に必要なアプリケーションソフトウエアと地図データ及び道路状況データベースをインストールしたものである。道路情報管理装置40もまた、収集された道路状況情報の分析評価のためのプログラム、及び道路情報管理のためのプログラム等をインストールしたコンピュータからなる。
【0022】
道路情報収集装置10は、主要な要素として、周囲状況を動画及び静止画撮影できるデジタルカメラ12と、調査対象地域の地図データを含む作業用GIS(Geographic Information System)データ14と、調査結果を格納する道路状況データベース16と、GNSSシステムの測位装置18を具備する。作業用GISデータ14と、調査結果を格納する道路状況データベース16は、フラッシュメモリ等の不揮発性メモリ手段からなるストレージに20に格納される。
【0023】
CPU22は、ROM24及びRAM26は、道路情報収集装置10を制御する制御手段として機能する。ROM24には、CPU22が道路情報収集装置10の各部を制御するのに必要なプログラム及び固定定数等が格納され、ストレージ20には、データ収集のためのアプリケーションプログラム(調査支援プログラム)が格納されている。CPU22は、ストレージ20に格納されるアプリケーションプログラムをRAM26に読み込み、実行することで、後述するデータ収集の諸機能を実現する。
【0024】
液晶表示パネル(LCD)28は、GISデータ14の地図、カメラ12のライブビューの画像、ストレージ20に記録された静止画及び動画等の画像、道路状況データベース16に道路状況データの入力画面等を表示することができる。液晶表示パネル28の画面上にはタッチパネル30が配置され、CPU22は、タッチパネル30に対するユーザ操作に従い、液晶表示パネル28の表示及び道路状況データベース16への入力を制御する。
【0025】
CPU22は、タッチパネル30(または図示しない操作手段)に対する所定のユーザ操作に従い、カメラ12による静止画撮影及び動画撮影を制御し、カメラから出力される静止画及び動画をストレージに20に記録する。ストレージ20に記録される静止画及び動画には、測位装置18により測位される現在位置(緯度経度の位置座標)と、タイマ34による撮影時刻情報とがメタデータとして付加される。
【0026】
通信装置32は、携帯電話回線及び無線LAN等の種々の通信媒体を介して、インターネット上のサーバ及び道路情報管理装置40との間で任意のデータを通信することができる。タイマ34は、現在日時データを出力するリアルタイムクロックからなる。
【0027】
道路状況データベース16は、注目地域の道路(路線)ごとに、複数の調査項目についてその評価値を記録し保持するものである。
図2は道路状況データベースの構成例を示す。路線Noは路線を特定する番号であり、少なくとも道路状況データベース16上ではユニークである。道路種別は、当該道路が、5:国道、4:主要地方道、3:都道府県道、2:市区町村道及び1:私道のいずれであるかを示す。指定道路年度は、建築基準法第42条第1項の道路のうち、特定の法律に基づく幅員4m以の指定された年度を示す。本発明の理解には不要であるので、詳細は省略する。
【0028】
道路状況データベース16はその管理上、調査項目1〜N以外に、調査担当者、調査日時及び視点(運転者視点か歩行者視点か)等の欄を有し、その道路に関して撮影した静止画データ及び動画データを埋め込む欄を有する。各路線の調査担当者と視点の項目には、現地調査の開始時に調査担当者が入力した調査担当者氏名及び視点識別情報を転記すればよく、調査日時にはタイマが出力する現在日時データを転記すれば良い。
【0029】
調査項目1〜Nは、歩行者及び運転者が利用する際の満足度及び利用を損なう影響度を判定するのに役立つ要素である。例えば、調査項目1〜Nは、最大・最小車道幅員、最大・最小歩道幅員、縦断勾配、横断勾配、路面凹凸、路面ひび割れ、路面わだち、視距(ドライバーが道路上で見通すことができる距離)、歩道等建築障害、排水状況、擁壁・法面状況、電信柱状況、道路上空看板、店舗等の日除け、樹木状況及び交通量などがありうる。道路管理者は、このような多くの調査項目のなかから必要に応じて選択した調査項目を、道路状況データベース16に設定する。
【0030】
統一した処理及び後述する分析評価のために、定量評価する調査項目に対しては、修理などの対応が必要な程度を示す評価点の数値範囲を同じにしている。例えば、修理不要な状態または良好な状態の評価点を5点とし、修理必要度が高い状態または利用しにくい状態を示す評価点を1点とする。内容(または閾値)に応じた評価点を与える調査項目については、内容(または閾値)と評価点を対としたテンプレートが用意されており、道路状況データベース16に取り込まれた調査項目1〜Nについては、評価点と内容の選択肢が、データベース入力プログラムにセットされる。幅員のように数値が確定するものは、その数値を道路状況データベース16に入力することになる。幾つかの調査項目の評価点とその内容については後述する。
【0031】
道路情報管理装置40は、CPU42、ROM44、RAM46、表示装置48、操作装置50、ハードディスク52及び通信装置54を具備する。通信装置54は、LANまたはインターネットを介して道路情報収集装置10と接続可能である。
【0032】
道路情報管理装置40は、道路情報収集装置10の作業用GISデータ14をハードディスク52に取り込んでGISデータ56としてまとめる。これにより、調査の際の修正を反映したGISデータ56が生成される。調査の際に修正(追加又は変更)した路線データを差分としてハードディスク52に格納してもよい。そうすることで、次回の調査で作業用GISデータに反映させることが容易になる。
【0033】
また、道路情報管理装置40は、道路情報収集装置10の道路状況データベース16を道路状況データベース58に追加する。これにより、ハードディスク52には、調査対象地域の各路線に対する複数の調査結果が道路状況データベース58として蓄積される。本実施例では、理解を容易にするために、道路情報収集装置10を使って収集された道路状況データを道路情報管理装置40に格納するとしているが、もちろん、ハードディスク52に格納されるデータを道路情報管理装置40がアクセス可能なサーバ上に置いてもよい。
【0034】
CPU42、ROM44及びRAM46は、通常のコンピュータと同様に機能する。表示装置48は、分析結果及び評価結果等を表示する。操作装置50はキーボード及びマウス等の指示手段からなり、ユーザの操作をCPU42に入力するのに使用される。ハードディスク52には、CPU42上で動作する分析評価プログラム及び道路情報管理プログラム等が格納されており、CPU42はハードディスク52からこれらのプログラムを読み込み実行することで、以下に説明する種々の機能を実現する。CPU42は、分析評価プログラムにより実現される道路カルテ作成機能68とポートフォリオ分析機能70を具備する。
【0035】
行政サイドによる政策調整または行政と住民との協働による調整が必要とされる場合、現地調査前であれば、調査項目とその評価点区分(または閾値)をその調整内容に応じて選択する。また、分析評価の際には、道路情報管理装置40を使って得られた調査結果を分析評価する分析評価担当者は、例えば、後述する満足度の算出において重み係数を調整する。
【0036】
図3は、本実施例における調査から分析評価に至る処理のフローチャートを示す。
【0037】
道路管理者(自治体)の調査員は、修繕計画の対象とする地域を決定し(S1)、その対象地位の道路(路線)について、調査計画書及び工程表を作成し(S2)、現地調査の準備として、対象地域内のGISデータを道路情報収集装置10のストレージ20に作業用GISデータ14として格納する(S3)。そのようなGISデータには道路管理者が保持するものと、国土地理院等の公的機関が保持するものがあり、内容的には、道路現況平面図、住宅地図、航空写真図、地籍図及び地積測量図を含む。従前の調査で使ったGISデータにその後に新設または変更された路線データを追加したものを、作業用GISデータ14としてストレージ20に格納してもよい。道路状況データベース16についても同様に、過去の調査結果を取り込んでも良い。その際、調査担当者及び調査日時は取り込みから除外される。
【0038】
調査員は、道路情報収集装置10を携行して現地調査を実行し(S4)、必要により、路線を修正する(S5)。路線の修正には、GISに反映されていない、不足する路線の追加と、調査不要の路線の削除、座標の修正がありうる。現地調査には、運転者視点の調査と、歩行者視点の調査がある。
【0039】
現地調査の際、調査員は、道路情報収集装置10でストレージ20に格納される調査支援プログラムを立ち上げる。
図4は、調査支援プログラムの画面例を示す。調査支援プログラム(CPU22)は、
図4に示す入力画面の日付欄102に、タイマ34から出力される現在日時を表示する。調査員は、担当者氏名欄104に自身の氏名を入力すると共に、歩行者視点か運転者視点かを視点欄106で指定する。
図4では、歩行者が指定されている。視点欄調査支援プログラムは、入力された氏名と視点をRAM26に記憶し、この氏名と視点をそれぞれ道路状況データベース16の各路線の調査員氏名の欄と視点の欄に自動でセットする。
【0040】
調査員が撮影ボタン108を操作すると、調査支援プログラム(CPU22)はカメラ機能を起動し、調査員の指示するタイミングでカメラ12による静止画撮影または動画撮影を実行する。これにより、任意の場所の静止画及び動画をストレージ20に記録できる。先に説明したように、記録された静止画及び動画には、撮影場所の位置データと撮影日時データが付加される。
【0041】
路線表示欄110の右端のドロップダウンボタンを操作することで、調査対象地域の路線のリストが表示される。調査員は、その路線リストから調査しようとする1つの路線(調査対象路線)を選択する。これにより、路線表示欄110に、現に調査しようする路線の路線番号が表示され、地図表示エリア112には、選択された路線を含む地域の地図が表示される。地図表示エリア112では、選択された路線が特定の色または線分等を重畳することにより強調表示される。地図表示エリア112に表示される地図は、図示しない拡大縮小ボタンにより任意に拡大縮小することができる。
【0042】
調査項目エリア114には予め設定された調査項目が表示され、調査員は、各調査項目について計測値を入力し、評価値を選択できる。調査支援プログラム(CPU22)は、入力された計測値または評価値を、ストレージ20の道路状況データベース16の該当する路線のレコード又はエントリの対応する項目欄に記録する。調査支援プログラム(CPU22)はまた、カメラ12で撮影されストレージ20に記録された静止画及び動画を道路状況データベース16の該当する路線のレコードの関連画像欄に埋め込む。この画像埋め込み作業は、その場でなく、職場に戻ってから調査員が行っても良い。現場では画像へのリンクのみとし、職場で改めて画像データを該当する路線のレコードに埋め込むようにしても良い。
【0043】
最大・最小車道幅員及び最大・最小歩道幅員は、0.1mで計測される。路線に沿って幅員の最大値と最小値が計測されるが、車両運行または歩行がスムーズにいくのかどうかが重要であるので、評価には専ら最小幅員を採用する。道路幅員については、車両走行/歩行がスムーズに可能かどうか、歩道が併設されているかどうか、及び、車椅子が通行可能かどうか等も重要な要素であり、この観点での評価値を追加しても良い。
【0044】
縦断勾配については、調査対象が専ら市内または住宅地であることを考慮して、高速道路自動車道国道および自動車専用道路以外のその他の道路に対する評価を設定している。縦断勾配は路線縦断の水平方向に対する勾配であり、路線内で最も大きな勾配に対してカテゴリー区分する。例えば、5つのカテゴリー区分としたとき、
5.ほぼ平坦(2%以内)
4.やや勾配あり(2%以上5%未満)
3.勾配あり(5%以上9%未満)
2.やや急勾配(9%以上12%未満)
1.急勾配(12%以上)または階段あり
という5段階の評価値1〜5のいずれかを選択可能としている。
【0045】
路面は排水のために必要な勾配(0.3〜0.5%)を保ちつつ、できるだけ平坦がよい。しかし、現実には地形・地物に対応した勾配をつけざるを得ない。設計速度10km/hごとに最大勾配が定められており、設計速度が最低の20kmの場合、最大縦断勾配は9%(道路構造令12%)と規定され、設計速度が60kmの場合、最大縦断勾配は5%(同令8%)と規定されている。丘陵地を宅地造成した地区では速度が徐行の道路もある。生活道路には階段もある。
【0046】
横断勾配については、縦断勾配と同様に、高速道路自動車道国道および自動車専用道路以外のその他の道路に対する評価を設定している。横断勾配は路線横断の水平線に対する勾配であり、路線内で最も大きな勾配に対してカテゴリー区分する。他追えば、5つのカテゴリー区分としたとき、
5.ほぼ平坦(2%以内)
4.やや勾配あり(2%以上5%未満)
3.勾配あり(5%以上9%未満)
2.やや急勾配(9%以上12%未満)
1.急勾配(12%以上)または階段あり
という5段階の評価値1〜5のいずれかを選択可能としている。
【0047】
路面の凹凸は、車両走行と人の歩行を制約する要因となり、経済的波及効果並びに防塵、騒昔及び振動の環境改善効果に影響する。路面の凹凸は、5ないし3つのカテゴリーに区分可能であり、本実施例では、3カテゴリー区分として、以下のとおり、
5.路面の凹凸がない
3.路面の凹凸が1ヵ所程度あり
1.路面の凹凸が数ヵ所あり
という3つの評価値1,3,5のいずれかを選択可能としている。
【0048】
路面のひび割れも、車両走行と人の歩行を制約する要因となり、経済的波及効果並びに防塵、騒昔及び振動の環境改善効果に影響する。路面ひび割れは、5ないし3つのカテゴリーに区分可能であり、本実施例では、3カテゴリー区分として、以下のとおり、
5.路面のひび割れがない
3.路面のひび割れが1ヵ所程度あり
1.路面のひび割れが数ヵ所あり
という3つの評価値1,3,5のいずれかを選択可能としている。
【0049】
路面のわだちもまた、車両走行と人の歩行を制約する要因となり、経済的波及効果並びに防塵、騒昔及び振動の環境改善効果に影響する。路面のわだちに関して、5ないし3つのカテゴリーに区分可能であり、本実施例では、3カテゴリー区分として、以下のとおり、
5.わだち掘りがない
3.わだち掘りが1ヵ所程度あり
1.わだち掘りが数ヵ所あり
という3つの評価値1,3,5のいずれかを選択可能としている。
【0050】
視距は、上述の通りドライバーが道路上で見通すことができる距離であり、毎時のキロメートルで見た走行速度の数値をメートルで見た距離(例えば、走行速度40km/時の場合、視距は40mとなる)に近似している。歩行者に適用する場合には、道路の起終点の見通し距離とする。本実施例では、視距を5つのカテゴリーに区分し、
5.制限速度とほぼ同距離の見通しが可能である
4.制限速度のほぼ2/3程度の距離の見通しが可能である
3.制限速度のほぼ半分程度の距離の見通しが可能である
2.制限速度のほぼ1/3程度の距離の見通しが可能である
1.見通しが不可能である
という5段階の評価値1〜5のいずれかを選択可能としている。
【0051】
歩道等建築障害については道路構造令では、建築制限物が2.5m以内に存在するのか2.5m以上に離れているのかで区分される。歩道等建築障害に関して、5ないし3つのカテゴリーに区分可能であり、本実施例では、3カテゴリー区分とし、以下のとおり、
5.建築制限物が存在しない
3.2.5m以上に離れた建築制限物が存在する
1.2.5m以内の建築制限物が存在する
という3つの評価値1,3,5のいずれかを選択可能としている。
【0052】
最近の集中豪雨を考えると、路面排水の重要性が増してきている。排水状況として、路面の形状と雨水ますの位置との関係が適当かどうか、雨水マスに枯葉や土砂堆積がないのかどうかを調査する。排水の状況に関して、5ないし3つのカテゴリーに区分可能であり、本実施例では、3カテゴリー区分とし、以下のとおり、
5.両側L字溝等により排水の状況が良好である
3.片側L字溝等により排水の状況が一部良くない
1.L字溝等がなく排水の状況が悪い
という3つの評価値1,3,5のいずれかを選択可能としている。
【0053】
路面排水と同様に、自然災害により擁壁または法面が影響を受けると、道路機能が制約または阻害される。そこで、擁壁・法面が施工時のままなのか、崩壊の可能性が高いのかを調査する。擁壁・法面に関して、5ないし3つのカテゴリーに区分可能であり、本実施例では、3カテゴリー区分とし、以下のとおり、
5.擁壁・法面の状況が良好である
3.擁壁・法面の状況が一部良くない
1.擁壁・法面の状況が悪い
という3つの評価値1,3,5のいずれかを選択可能としている。
【0054】
電信柱が道路際に建っているか道路にはみ出して建っていると、道路機能が制約または阻害される。また、電信柱が傾いて建っていると、倒壊の恐れがある。電信柱の状況として、5カテゴリー区分とし、以下のとおり、
5.電信柱がない
4.ほぼ垂直な電信柱がある
3.やや傾きかけた電信柱がある
2.傾いた電信柱がある
1.道路にはみ出した電信柱がある
という5段階の評価値1〜5のいずれかを選択可能としている。
【0055】
道路上空に看板が存在すると、道路機能が制約または阻害されることがある。そこで、道路上空の看板に関して、5ないし3つのカテゴリーに区分可能であり、本実施例では、3カテゴリー区分とし、以下のとおり、
5.上空に看板がない
3.上空に看板があるものの問題ない
1.上空には看板がない
という3つの評価値1,3,5のいずれかを選択可能としている。
【0056】
看板と同様に、店舗等の日除けがあると、道路機能が制約または阻害されることがある。店舗等の日除けに関して、5ないし3つのカテゴリーに区分可能であり、本実施例では、3カテゴリー区分とし、以下のとおり、
5.店舗等の日除けがない
3.店舗等の日除けがあるものの問題ない
1.店舗等の日除けが障害物となっている
という3つの評価値1,3,5のいずれかを選択可能としている。
【0057】
看板等同様に、沿道または民有地の樹木が道路にはみ出していると、道路機能が制約または阻害されることがある。樹木の状況に関して、5ないし3つのカテゴリーに区分可能であり、本実施例では、3カテゴリー区分とし、以下のとおり、
5.樹木がない
3.樹木があるものの問題ない
1.樹木が障害物となっている
という3つの評価値1,3,5のいずれかを選択可能としている。
【0058】
交通量は道路の損傷に直接影響し、また、積載重量が重い大型貨物車両は、道路に大きな損傷を与える。しかし、交通量の調査は一つの自治体内で、国道、主要な地方道、都道府県道、市区町村道及び私道について同時期の調査が困難であるだけでなく、時期的な変動もあり、さらには、ある程度の期間を考慮する必要がある。そこで、道路幅員と道路種別の組み合わせで評価するとか、道路種別で代用することも考えられる。本実施例では、交通量の状況として、以下のとおり、
5.大型貨物車両が頻繁に運行している(国道で代用)
4.中型貨物が頻繁に運行している(主要地方道で代用)
3.一般車両が運行している(都道府県道で代用)
2.一般車両が時々運行している(市区町村道で代用)
1.車両が通れない(私道で代用)
という5段階の評価値1〜5のいずれかを選択可能としている。
【0059】
行政サイド(道路管理者)による政策調整として、例えば、予算による対象地域・路線の制約や、住民(利用者)の特殊性(病院や介護施設に高齢者や車椅子利用者が通う道路では、他よりも平坦であることが要求される)がある。後者の調整方法として、予め評価値区分の閾値を変更した選択肢を対象路線に用意または設定しておくことで、現地調査が容易かつ迅速に行えるものになる。
【0060】
例えば、路面横断勾配について、以下のように評価区分を厳しくする。すなわち、上述した、2%以内、2%以上5%未満、5%以上9%未満、6%以上12%未満、及び12%以上または階段という5段階の評価分類を、1%以内、1%以上3%未満、3%以上6%未満、6%以上9%未満及び9%以上または階段の5つの評価分類に変更する。また、路面の凹凸については、例えば、
5.路面の凹凸がない
4.路面の凹凸が1ヵ所程度あり
3.路面の凹凸が数ヵ所あり
2.路面の凹凸が十数ヵ所あり、
1.路面の凹凸が数十ヵ所あり
という5区分に変更する。
【0061】
現地調査が終了すると、調査員は、携行した道路情報収集装置10をLANに接続する。道路情報管理装置40は、上述の通り、道路情報収集装置10の道路状況データベース16と作業用GISデータ14をLANを介して取り込み、ハードディスク52の道路状況データベース58及びGISデータ56に追記・蓄積する。
【0062】
対象地域の各路線の道路状況データが道路情報管理装置40に集められると、道路情報管理装置40のオペレータ(分析評価担当者)は、収集した道路状況データの分析評価プログラムによる分析評価を実行する(S6〜S10)。
【0063】
分析評価プログラムの道路カルテ作成機能60は、道路状況データベース58のデータから各路線の道路カルテ62を作成し、ハードディスク52に格納する(S6)。道路カルテ62は、路線単位で調査結果を一覧性が良くなるように整理したものである。
図5は、道路カルテ62の一例を示す。路線番号、道路種別、指定道路年度、入力された調査項目の内容に加えて、周囲の地図と、関連する写真(動画を含む)と、評価値をグラフ化したレーダーチャートを表示する。運転者視点と歩行者視点がある場合、
図5に例示するように、レーダーチャートは、運転者視点のものと、歩行者視点のものが表示される。
図5では、表示項目を理解しやすいように1ページに図示しているが、一部の情報を複数ページまたはポップアップ画面等の別画面で詳細に表示するようにしてもよい。
【0064】
調査項目の評価値の平均点は、後述するポートフォリオ分析の総合評価点として利用出来る。そこで、道路カルテ作成機能60は、分析評価の対象とする路線のそれぞれについて最新の調査結果から全調査項目の平均点または任意に選択した1以上の調査項目の平均点を道路カルテ62から算出し、この平均点を、後述するポートフォリオ分析のための総合評価点59としてハードディスク52に格納する。総合評価点59に行政サイドによる政策調整、行政と住民との協働による調整またはその両方を加味することで、分析評価結果に対し費用負担者と利用者の納得を得られやすくなる。
【0065】
図6は、道路カルテ62に表示する運転者視点のレーダーチャート例を示し、
図7は、歩行者視点のレーダーチャート例を示す。
図6及び
図7では、道路の修繕(改善)の要否の指標となる主要な調査項目に限定してレーダーチャートを作成しているが、その他の調査項目を含めてもよいことはいうまでもない。
【0066】
ポートフォリオ分析機能64は、歩行者視点と運転者視点のそれぞれについて、調査対象地域の調査済みの全路線を対象とする重回帰分析を行うことでそのポートフォリオを分析する(S7)。このポートオフォリオ分析(S7)により、道路の現状について、行者視点と運転者視点のそれぞれにたいする満足度と影響度の定量的な指標を得ることができる。
【0067】
図8は、ポートオフォリオ分析(S7)における統計分析処理の詳細なフローチャートを示す。分析評価担当者は、ポートフォリオ分析機能64を使って、歩行者視点の調査結果、運転者視点の調査結果及びその両者を含めた調査結果のそれぞれについて、
図8に示す統計分析処理を実行する。
【0068】
ポートフォリオ分析機能64はまず、各路線の最新のデータに対して、道路調査項目と総合評価点59の要約統計を行い、欠損データ及び異常値データを点検して、使用すべきデータを完成する(S21)。総合評価点は、全調査項目の平均点(単純平均)、任意に選択した調査項目の平均点、行政サイドによる政策調整点、及び、行政と住民との協働による調整点のうちいずれかである。そして、ポートフォリオ分析機能64は、各調査項目間の相関を取り、説明変数の第一次道路調査項目を決定する(S22)。
【0069】
ポートフォリオ分析機能64は、S22で決定した調査項目を説明変数にするとともに、S21で採用した総合評価点を目的変数とする重回帰分析を行う(S23)。ここで、説明変数として採用する調査項目は、S22で決定した全調査項目でもよいし、S22で決定した調査項目のうちの任意の調査項目であってもよい。この重回帰分析の過程で、分析評価担当者は、多重共線性、P値、t値およびr
2の検定を行う。
【0070】
分析評価担当者は、説明変数である道路調査項目の追加・削除およびカテゴリー分けを変更して(S24)、最終的な道路調査を決定するまで(S25)、ポートフォリオ分析機能64に重回帰分析を再実行させる(S24)。すなわち、分析評価担当者は、ポートフォリオ分析機能64を使い、説明変数である道路調査項目の追加・削除およびカテゴリー分けを調整しつつシミューレーションして、最終的な道路調査項目を決定する(S23〜S25)。
【0071】
最終的な道路調査項目を決定すると(S25)、分析評価担当者は、最終的に決定した道路調査項目の下でポートフォリオ分析機能64を使って重回帰分析を実行する(S26)。ポートフォリオ分析機能64は、この重回帰分析(S26)で得られた道路調査項目ごとの回帰係数と平均点を出力する(S27)。
【0072】
ポートフォリオ分析機能64は、ポートフォリオ分析(S7)の結果に従い、最終次の重回帰分析から算出された道路調査項目別回帰係数と道路調査項目別平均点を使い、運転者視点と歩行者視点のそれぞれについて、利用者の満足度と影響度でゾーニングし、ゾーニング結果を表示装置48に表示する(S8)。このゾーニングでは、縦軸を各道路調査項目がどの程度、安全安心な運転・歩行が可能な状態になっているかどうかを示す満足度とする。本実施例では、満足度を、
満足度=調査項目別回帰係数×(総合評価点-1)×(重み係数)
として定量的に計測する。重み係数は、利用者の要請または行政サイドの政策を考慮するための調整用であり、無調整の場合、重み係数=1とする。また、横軸を各調査項目別の平均点とする。各道路調査項目の平均点は、各道路調査項目の、安全安心な運転・歩行に対する影響の大きさを示すことから、利用者に対する影響度を示す。
【0073】
満足度は、回帰係数の大きさに比例することから、総合評価点への寄与の大きさを示すものともいえる指標であり、満足度が高いければ現状を維持すればよく、満足度が低いほど、早期の対処(修理または改善)が必要となる。影響度は、これが大きいほど、早期の対処(修理または改善)が必要であり、小さければ、対処が遅くても利用者の不満は少ないとみることができる。
【0074】
図9は、運転者視点の道路調査結果に対する重回帰分析例を示す。
図9(A)は、重回帰分析で得られる諸数値例を示す。
図9(B)は、回帰係数の有意性の検定と信頼区間の計算例を示す。
図9(C)は、分析結果の数値例、すなわち、各調査項目の回帰係数と平均点、回帰係数から得られる満足度の数値例を示す。満足度は、先に説明したように、
満足度=回帰係数×(総合評価点−1)×(重み係数)
としている。例えば、総合評価点が5の場合、重み係数=1としたとき、幅員に対する満足度は、その回帰係数が0.7897であることから、
0.7897×4=3.1587
となる。
【0075】
図10は、歩行者視点の道路調査結果に対する重回帰分析例を示す。
図10(A)は、重回帰分析で得られる諸数値例を示す。
図10(B)は、回帰係数の有意性の検定と信頼区間の計算例を示す。
図10(C)は、分析結果の数値例、すなわち、各調査項目の回帰係数と平均点、回帰係数から得られる満足度の数値例を示す。満足度の計算式は、運転者視点の場合と同様に、
満足度=回帰係数×(総合評価点−1)
としている。
【0076】
図11は、ポートフォリオ分析によるゾーニング結果の表示例を示す。分析評価担当者またはオペレータが運転者に対応するプロットボタン202を押下または選択すると、ポートフォリオ分析機能64(CPU42)は、ゾーン表示エリア206に運転者視点の調査項目に対するゾーニング結果を表示する。分析評価担当者が、歩行者に対応するプロットボタン204を押下または選択すると、ポートフォリオ分析機能64(CPU42)は、ゾーン表示エリア206に歩行者視点の調査項目に対するゾーニング結果を表示する。オペレータがプロットボタン202,204の両方を押下または選択すると、ポートフォリオ分析機能64(CPU42)は、ゾーン表示エリア206に運転者視点と歩行者視点の両方のゾーニング結果を表示する。運転者視点の調査項目に対するゾーニング結果と歩行者視点の調査項目に対するゾーニング結果を互いに異なる色及び/又は形状で表示することで、両者を視覚的に識別できる。
【0077】
ポートフォリオ分析機能64(CPU42)は、地図エリア208に調査地域の地図を表示し、調査対象の路線に対して特定色(例えば、赤色)の線分を重ねて表示する。ゾーン表示エリア206のいずれかの調査要素をオペレータが選択すると、ポートフォリオ分析機能64(CPU42)は、その調査要素について、満足度がゾーン表示エリア206での満足度値以下となる路線を別の色(例えば、青色)に変更する。
【0078】
ゾーン表示エリア206で、満足度及び影響度が共に高い右上のゾーンは、現状を強化すべき維持強化ゾーンであり。この維持強化ゾーンに位置する調査要素は、修理とまでは行かないまでも、維持の強化が望まれる要素である。満足度が高いものの影響度が低い左上のゾーンは、現状を維持すべき現状維持ゾーンである。現状維持ゾーンの調査要素は、良好な状態であり、特に修理または改善は必要とされない要素である。満足度が低く影響度が高い右下のゾーンは、最優先の改善を検討すべき最優先改善ゾーンであり、その調査要素は、早急に対処する必要のある要素である。満足度も影響度も共に低い左下のゾーンは、修理または改善の必要性も緊急性も低く、従って放置して良いゾーン、いわば撤退検討ゾーンであり、その調査要素は、修理または改善を継続的に検討していればよい要素である。
【0079】
道路管理者は、ポートフォリオ分析結果をベースとし、利用者の要望を加味して、道路維持管理優先度に従い修理または改善を施す路線の順位を決定する(S9)。道路管理者は、決定された順位に予算、工事期間及び工事の間の代替路の確保等を考慮して、道路修繕案を作成する(S10)。
【0080】
このように、本実施例によれば、道路状況データを効率良く収集でき、修理・改善の必要性を定性的及び定量的に提示することができる。この結果、道路管理者は、修理・改善を要する路線の修理優先度を客観的に決定できる。