(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6490004
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】電極内蔵基材
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20190318BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H01L21/68 N
H02N13/00 D
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2015-256472(P2015-256472)
(22)【出願日】2015年12月28日
(65)【公開番号】特開2017-120825(P2017-120825A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2018年5月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】檜野 誠
【審査官】
内田 正和
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−057013(JP,A)
【文献】
特開2003−007432(JP,A)
【文献】
特開2003−077783(JP,A)
【文献】
米国特許第06108190(US,A)
【文献】
特開2016−218834(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/683
H02N 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性の基材にメッシュ電極からなる内部電極を埋設してなる電極内蔵基材であって、
前記内部電極は、同一幅の複数の直線部が折り曲がり部を介して連接され、少なくとも1か所が開いたそれぞれが環状の複数の電極パターンが同円心状に配置され、径方向に隣接する前記電極パターンが連結されてなり、前記径方向に隣接する前記電極パターンの直線部は非平行であることを特徴とする電極内蔵基材。
【請求項2】
前記複数の電極パターンは、互いに相似し、前記少なくとも1か所が開いた正多角形であり、前記径方向に隣接する電極パターンの位相がずれていることを特徴とする請求項1に記載の電極内蔵基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電極内蔵基材、例えば半導体製造装置に使用される静電チャック電極、ヒータ電極、プラズマ電極などの電極が基材に内蔵された電極内蔵基材に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンウエハ等の半導体基板や他の各種基板等の製造、検査工程において、各種の処理、測定、搬送時にその基板を保持する必要が生じる。例えば、半導体製造工程において半導体ウエハへ微細加工を施すエッチング工程、薄膜を形成する成膜工程、フォトレジスト膜を用いた露光処理工程等は、真空下で処理が行われるため、ウエハを保持するために静電チャックを使用している。このような静電チャックには所定の温度で処理がなされるためにヒータ機能が内蔵されている。
【0003】
静電チャックは、例えば、低熱膨張セラミックからなる誘電体層の上面をウエハの吸着面とし、誘電体層に埋設した静電吸着用電極(内部電極)とウエハとの間に電圧を印加して得られる静電吸着力によりウエハを吸着面に保持している。
【0004】
特許文献1には、内部電極の電極パターンを同心円状として、ウエハ支持面の温度分布を同心円状に分布させ、均熱性を高める技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3477062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来、内部電極の素材として板状のパンチングメタルを用いて基材の焼結を行い、静電チャックを製造することがあった。しかし、パンチングメタル電極は平板形状であるため伸縮性に乏しく、反り等の電極の変形が発生しやすいという問題があった。
【0007】
そこで、基材と内部電極の密着性を向上させるために、内部電極を金網からなるメッシュ電極とすることがある。メッシュ電極を埋設したセラミック等の基材を焼結させると、メッシュ電極の伸縮性により電極に変形が発生し難い。
【0008】
しかしながら、メッシュ電極は、網目状に織り込んだものであるので、その抵抗値には異方性が存在する。具体的には、メッシュ電極の単位長さ当りの抵抗値は、網目方向からずれるほど大きくなる。そして、メッシュ電極は、その全体において網目方向は同じであるので、上記特許文献1に記載されたように同心円状に内部電極を配置すると、静電チャックの径方向における抵抗値には、大きなばらつきが生じる。そのため、静電チャックの周方向に周期的な伝熱むらが生じる。
【0009】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、内部電極がメッシュ電極である場合に、周方向における伝熱むらの解消を図り得る電極内蔵基材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、絶縁性の基材にメッシュ電極からなる内部電極を埋設してなる電極内蔵基材であって、前記内部電極は、同一幅の複数の直線部が折り曲がり部を介して連接され、少なくとも1か所が開いたそれぞれが環状の複数の電極パターンが同円心状に配置され、径方向に隣接する前記電極パターンが連結されてなり、前記径方向に隣接する前記電極パターンの直線部は非平行であることを特徴とする。
【0011】
内部電極は、メッシュ電極であるので、単位長さ当りの抵抗値は、線状の導電性材料体が延びる方向からずれるほど大きくなる。上記特許文献1に記載されたように内部電極の電極パターンを同心円状に配置した場合、径方向において、電極パターンの線状の導電性材料体が延びる方向に対するずれ角度が同じであるので、電極パターンの径方向における抵抗値は周方向において大きなばらつきが生じる。
【0012】
しかし、本発明によれば、内部電極は、同一幅の複数の直線部が折り曲がり部を介して連接され、少なくとも1か所が開いたそれぞれが環状の複数の電極パターンが同円心状に配置され、径方向に隣接する電極パターンが連結されてなり、径方向に隣接する電極パターンの直線部は非平行である。
【0013】
そのため、例えば、電極パターンの一部においてメッシュ電極を構成する線状の導電性材料体が延びる方向から角度が大きくずれた直線部があっても、この直線部に対して径方向に隣接する直線部は、線状の導電性材料体が延びる方向からずれた角度は小さくなっている。そのため、電極内蔵基材の径方向における抵抗値の周方向のむらは、上記特許文献1にように同心円状の電極パターンとした場合と比較して小さく、電極内蔵基材の周方向における伝熱むらの抑制を図ることが可能となる。
【0014】
本発明において、前記複数の電極パターンは、互いに相似し、前記少なくとも1か所が開いた正多角形であり、前記径方向に隣接する電極パターンの位相がずれていることが好ましい。
【0015】
この場合、電極内蔵基材の周方向における伝熱むらが周期的になり、伝熱むらの抑制を図ることが簡易に可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の実施形態に係る静電チャックの内部電極を示す模式上面図。
【
図4】線状の導電性材料体が延びる方向からのずれ角度θとメッシュ電極の径方向の抵抗値Rとの関係を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0017】
まず、本発明の電極内蔵基材の実施形態に係る静電チャック100について
図1及び
図2を参照して、説明する。なお、本発明の電極内蔵基材は、例えば、ヒータ電極又はプラズマ電極などの電極を基材に内蔵したものであってもよい。
【0018】
静電チャック100は、ウエハ(基板)Xを吸着保持するための略円板状の絶縁体からなる基材10を備えている。基材10は、セラミックス焼結体により形成された誘電体である。
【0019】
基材10は、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、マグネシアスピネル等からなるセラミックス焼結体である。基材10は、上記の材料を所定形状の型に入れて成形し、緻密化させるため、例えばホットプレス焼成等によって円板状に作製すればよい。
【0020】
基材10には内部電極20が埋設されている。内部電極20は、複数の所定の方向に延びる線状の導電性材料体からなるメッシュ電極からなっている。メッシュ電極は、例えば、モリブデンやタングステン等の高融点金属線を細目の網目状に編んだものである。ここでは、メッシュ電極の網目は、
図3に示すように、正方形となっており、線状の導電性材料体は互いに直交する方向に延びている。
【0021】
ただし、メッシュ電極のメッシュは、正方形に限定されず、例えば、長方形、平行四辺形などでの矩形状であってもよく、三角形、六角形、八角形などの多角形のメッシュであってもよい。また、メッシュ電極は、導電性材料からなる線状体を編み込んだものに限定されず、パンチングメタルなど、導電性材料が網目状に形成されたものであってもよい。
【0022】
基材10の内部電極20より上の部分と下の部分との間に内部電極20を挟み込んだ状態で、基材10は焼成される。
【0023】
内部電極20のパターンの一例を、
図1を参照して説明する。
【0024】
内部電極20は、静電チャック100の径方向に間隔を隔てて配置された略同心円状の複数の電極パターン21a〜21fが連結されている。
【0025】
そして、各電極パターン21a〜21eは、一番外側の電極パターン21fを除いて、2分割、図面では左右に2分割されている。各電極パターン21a〜21eは、分割して開いた部分を除いては、互いに相似した多角形、特に正多角形であることが好ましい。ここでは、各電極パターン21a〜21fは、分割して開いた部分を除いては、正十二角形となっている。このように、各電極パターン21a〜21fは、複数の直線部Aが折り曲がり部Bを介して連接されている。
【0026】
各電極パターン21a〜21fの直線部Aは、それぞれ線幅は同一である。ただし、線幅が同一には、線幅が実質的に同一である場合も含まれる。折れ曲がり部Bは、角張ったものであっても、曲線部を有するものであってもよい。折れ曲がり部Bの線幅は、直線部Aの線幅を同じであっても、相違していてもよい。
【0027】
ここでは、径方向に隣り合う電極パターン、例えば電極パターン21cと電極パターン21dとは、電極パターン21a〜21fの中心Oを中心として位相が15度ずれており、径方向に隣接する辺が非平行となっている。これにより、径方向に隣接する電極パターン21a〜21fの直線部Aは非平行となっている。
【0028】
なお、電極パターン21a〜21fの個数は、6個に限定されず、2個以上であればよい。また、電極パターン21a〜21fの形状は、開いた部分を有する正十二角形に限定されず、開いた部分を有する多角形、そして隅部(折れ曲がり部B)は曲線部を有していてもよい。ただし、電極パターン21a〜21fの形状を正多角形とすれば、電極パターン21a〜21fの配置設計が容易となる。
【0029】
径方向に隣接する電極パターン21a〜21fにおいて、2分割されたそれぞれの端部が接続パターン22a〜22eによって交互に連結されている。例えば、電極パターン21cの端部と電極パターン21dの端部とが、接続パターン22cによって連結されている。接続パターン22a〜22eの線幅は、電極パターン21a〜21fの線幅よりも広くなっている。
【0030】
中央の電極パターン21aには、給電端子30と接続される2か所の給電パターン23と接続されている。
【0031】
そして、静電チャック100には、図示しないリフトピンが挿通される貫通孔40が形成されている。貫通孔40は、電極パターン21a〜21fの間に形成されている。
【0032】
内部電極20は、高融点金属を細目の網目状に編んだメッシュ電極であるので、単位長さ当りの抵抗値Rは、線状の導電性材料体が延びる方向からずれるほど大きくなる。具体的には、
図3を参照して、メッシュ電極の線状の導電性材料体が延びる方向に対する角度をθ、網目方向から角度θだけずれた方向における同じ長さで同じ幅のメッシュ電極(
図3の2点鎖線で挟まれた部分)の抵抗値をRとする。ただし、
図3は模式図である。
【0033】
例えば、メッシュ電極は、メッシュを構成するワイヤの線径が0.04mmから0.25mm、メッシュサイズ(1インチ当たりのワイヤ本数)が#50から#300の平織りである。各電極パターン21a〜21fの幅は3mmから30mmである。
【0034】
図4に示すように、線状の導電性材料体が延びる方向からの角度θがずれるほど、抵抗値Rは大きくなる。
【0035】
そして、メッシュ電極は、その全体において線状の導電性材料体が延びる方向(網目方向)は同じである。そのため、上記特許文献1に記載されたように内部電極の電極パターンを同心円状に配置すると、静電チャックの径方向における抵抗値Rに、大きなばらつきが生じる。具体的には、各円状の電極パターンにおいて、網目に沿った部分の抵抗値Rは小さいのに対して、線状の導電性材料体が延びる方向から角度θずれた部分における抵抗値Rは角度θと共に大きくなる。そして、これは各円状の電極パターンに当てはまるので、静電チャックの径方向における抵抗値Rは、周方向に周期的なむらが生じる。よって、静電チャックの周方向に伝熱むらが生じる。
【0036】
一方、本実施形態における静電チャック100においては、内部電極20は、多角形からなる複数の電極パターン21a〜21fが連結されており、これら電極パターン21a〜21fの径方向に隣接する直線部Aが非平行となっている。
【0037】
そのため、例えば、電極パターン21a〜21fの一部において線状の導電性材料体が延びる方向から角度θが大きくずれた直線部Aがあっても、この直線部Aと径方向に隣接する直線部Aは、線状の導電性材料体が延びる方向からずれた角度θが小さくなっている。そのため、静電チャック100全体として、静電チャック100の径方向における抵抗値Rの周方向のむらは、上記特許文献1にように同心円状の電極パターンとした場合と比較して小さく、静電チャック100の周方向に伝熱むらの抑制を図ることが可能となる。
【0038】
さらに、上記特許文献1にように同心円状の電極パターンとした場合、電極パターン間の間隔は、静電チャックの周方向において同じである。そのため、電極パターン間に、前記リフトピンを挿通させる貫通孔を配置するとき、電極パターンの間隔を全体に亘って、貫通孔の直径を超えるように離す必要がある。
【0039】
一方、本実施形態における静電チャック100においては、多角形からなる複数の電極パターン21a〜21fと間隔には広い部分と狭い部分とがある。そのため、この間隔の広い部分に貫通孔40(
図2参照)を配置することにより、電極パターン21a〜21fと間隔を全体的に離す必要がないので、電極パターン21a〜21fの間隔が制限されるおそれの低減を図ることが可能となる。
【0040】
また、線状の導電性材料体が延びる方向と電極パターン21の辺が延びる方向とがなす角度が小さいほど、当該電極パターン21の辺における径方向における抵抗値Rは大きくなる。
【0041】
よって、線状の導電性材料体が延びる方向と電極パターン21の直線部Aが延びる方向とがなす角度が小さいほど、電極パターン21の当該辺の幅を広くする、又は、電極パターン21と径方向に隣接する電極パターン21との間隔を大きくすることが好ましい。
【0042】
これにより、静電チャック100の周方向における伝熱むらの抑制を図ることが可能となる。
【符号の説明】
【0043】
10…基材、 20…内部電極、 21a〜21f…電極パターン、 22…接続パターン、 23…給電パターン、 30…給電端子、 40…貫通孔、 100…静電チャック(電極内蔵基材)、 A…直線部、 B…折り曲がり部、 X…ウエハ(基板)。