(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
蓋部材を有するボデー内に回転自在に設けたボールと、このボールとシール接続するシートリテーナと、このシートリテーナをシール側に弾発力を付与するバネ部材と、前記シートリテーナの外周面に装着したシール部材からなるトラニオン型ボール弁であって、前記ボールの上下に同一径の上ステムと下ステムをそれぞれ延設してボール部材を構成し、この上下ステムには、前記ボールを中心に対称位置に同一構造の軸装シール機構を装着し、この上下の軸装シール機構のボール側には、同一シール径のUリングシールを設けてバランス構造とすることによりスラスト荷重を回避すると共に、前記上下ステムのボール近傍位置に鍔部が設けられ、この鍔部で前記上下ステムの外周に設けた軸受のボール側を保持したことを特徴とする高圧用トラニオン型ボール弁。
前記ボデーのボトム側より前記ボール部材を装入してボデー内に配設し、前記ボデーのボトム側より前記蓋部材で被蓋し、この蓋部材に前記下ステムを軸装した請求項1又は2に記載の高圧用トラニオン型ボール弁。
前記ボデーの流路方向の両側位置に流入部と流出部を固着すると共に、前記ボデーの流路方向と交差する外周面をフラット面に形成し、このフラット面に内部と連通するリークポートを穿設した請求項1乃至5の何れか1項に記載の高圧用トラニオン型ボール弁。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前者の特許文献1の高圧ボール弁は、2500psi(約17MPa)や6000psi(約41MPa)の流体圧力に対応する技術に留まり、これ以上の高圧流体に対応することは難しい。
そして、特許文献1の軸シールに採用されているOリングとバックアップリングとの組み合わせによるシール部材では、上記のような高圧流体を封止することが難しく、Oリング溝からOリングが飛び出すおそれがある。このOリングの飛び出しを防止するため、剛性を上げたシール部材を採用することも考えられるが、特許文献1はシール部材(Oリング)をステム外周に設けた溝に装着する構造のため、シール部材の剛性を上げると溝への装着が困難になる。
この高圧ボール弁の弁体に高圧流体が加わると、弁体からステムにラジアル方向(ステム軸と直交方向)の力が働くことで、弁体開閉時の操作トルクが大きくなる。
さらに、上ステムが分割構造であり、弁体から分割された操作ステムにラジアル方向の軸受やスラスト方向(ステム軸方向)の軸受を設けているために構造が複雑になり、バルブの組立てやメンテナンスに手間がかかるという問題もある。
【0007】
一方、後者の特許文献2のボールバルブは、軸シールを上部ステムと別体の操作軸のみでおこなっているため、キャビティ内の高圧流体によりこの操作軸には大きなスラスト荷重が加わり、弁の操作トルクが大きくなる。この操作トルクを確実に伝達するためにはスラストベアリングが必要となるほか、ボールやステムの軸を太く設ける必要があり、特に、ボールとステムとの嵌合部の強度が軸全体の最弱点になることを防ぐために、この付近の軸を太く設ける必要がある。
しかし、軸を太く設けると、これに伴ってバルブ本体の耐久性を高めるようにバルブ本体の肉厚を厚くしなければならず、この場合、バルブ全体が大きく、重いものとなる。
【0008】
本発明は、上記の課題点を解決するために開発したものであり、その目的とするところは、特に高圧流体に適しており、高圧下においても弁座シール性を確保しながら、特にステムへのスラスト荷重を抑えて低トルク性を実現し、かつ、略一定の安定した操作トルクにより開閉操作でき小型化可能な高圧用トラニオン型ボール弁およびこれを用いた水素ステーションを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、請求項1に係る発明は、蓋部材を有するボデー内に回転自在に設けたボールと、このボールとシール接続するシートリテーナと、このシートリテーナをシール側に弾発力を付与するバネ部材と、シートリテーナの外周面に装着したシール部材からなるトラニオン型ボール弁であって、ボールの上下に同一径の上ステムと下ステムをそれぞれ延設してボール部材を構成し、この上下ステムには、ボールを中心に対称位置に同一構造の軸装シール機構を装着し
、この上下の軸装シール機構のボール側には、同一シール径のUリングシールを設けてバランス構造とすることによりスラスト荷重を回避すると共に、上下ステムのボール近傍位置に鍔部
が設け
られ、この鍔部で上下ステムの外周に設けた軸受のボール側を保持した高圧用トラニオン型ボール弁である。
【0011】
請求項2に係る発明は、軸装シール機構は
、Uリングシールにバックアップリングを積層し、外周位置に内周径をやや突設させた金属リングを設けた高圧用トラニオン型ボール弁である。
【0012】
請求項3に係る発明は、ボデーのボトム側よりボール部材を装入してボデー内に配設し、ボデーのボトム側より蓋部材で被蓋し、この蓋部材に下ステムを軸装した高圧用トラニオン型ボール弁である。
【0013】
請求項4に係る発明は、蓋部材には、下ステムの下部と連通するリリーフ孔を穿設した高圧用トラニオン型ボール弁である。
【0014】
請求項5に係る発明は、ボデーと蓋部材との当接面には、回動防止板材を装着した高圧用トラニオン型ボール弁である。
【0015】
請求項6に係る発明は、ボデーの流路方向の両側位置に流入部と流出部を固着すると共に、ボデーの流路方向と交差する外周面をフラット面に形成し、このフラット面に内部と連通するリークポートを穿設した高圧用トラニオン型ボール弁である。
【0021】
請求項
7に係る発明は、高圧水素の供給ラインに高圧用トラニオン型ボール弁を用いて構成した水素ステーションである。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に係る発明によると、シール部材を装着したシートリテーナをバネ部材でシール側に弾発させてボールをシールするトラニオン型としていることで、特に高圧流体に適しており、上下ステムを同一径とし、この上下ステムにボールを中心として対称位置に同一構造の軸装シール機構を装着し
、上下の軸装シール機構のボール側に同一シール径のUリングシールを設けてバランス構造として、特にスラスト荷重の発生を回避するようにしているのでスラスト荷重による摩擦力が発生せず、また、高圧下においてもボールがシール部材に対してずれることを防止し、弁座シール性を維持できることで確実に漏れを防ぐことができ、上下ステムでバランスよく均等にボールを支えることで低トルク性を実現する。このように、スラスト荷重の発生を回避することにより、スラストベアリングを用いる必要もなくなり、また、軸装シール機構をスラスト荷重から保護する構造も不要になるため、部品点数の削減も可能となる。
【0023】
しかも、鍔部により軸受のボール側への飛び出しを防ぎ、この軸受のバランスを維持しながらボールを保持し、ボールを中心に対称位置に装着された軸受によりボールが流体圧によって受ける力を均等に受けて、バルブを弁閉や弁開操作する際に、特に弁閉位置近傍のバルブ操作をスムーズにおこなうことができる。
【0024】
請求項2に係る発明によると、Uリングシールで摺動抵抗を少なくしつつシール性を発揮できる。Uリングシールにバックアップリングを積層することにより、高シール性を維持しながらUリングのはみだしを防いで耐久性を向上できる。内周径をやや突設させた金属リングを外周位置に設けていることで、この金属リングを利用してUリングシールなどのシール部品を破壊することなく簡単にボデーから取り出すことができる。さらに、これらUリングシール、バックアップリング、金属リング、軸受などの部品の内径を一致させることで、上下ステムをそれぞれシンプルな一本軸にでき、加工の容易化、高精度化が可能になる。
【0025】
請求項3に係る発明によると、ボデーのボトム側よりボール部材を装入して組み込むボトムエントリ構造であることで、ボデーのトップ側より組み込むことが困難な場合でも容易に組み込み作業できる。これにより、例えば、上ステムの上部に操作用アクチュエータやハンドルが設けられる場合もこれら操作部材と蓋部材とが干渉することなく、簡単に組立てできる。また、ボデーのトップ側よりボール部材を装入するトップエントリ構造に比べて、バルブの大きさを小さくすることができる。
【0026】
請求項4に係る発明によると、蓋部材に空気が内封されることを防ぎつつ、この蓋部材に内挿された軸装シール機構に下ステムを挿入できる。
【0027】
請求項5に係る発明によると、ボデーと蓋部材との当接面に回動防止板材を装着していることで、蓋部材の緩みを防いでボールの位置決め状態を保持でき、高圧流体の漏れを防ぎつつ確実にシール性と操作性とを発揮できる。
【0028】
請求項6に係る発明によると、ボデーの流路方向に流入部と流出部とを固着して流路を確保すると共に、ボデーにフラット面を形成することで余分な肉厚を減らして全体をコンパクト化し、しかも、フラット面にリークポートを形成していることでこのリークポートを容易に設けることができる。
【0033】
請求項
7に係る発明によると、特に高圧流体に適し、高圧下においても
軸装部分の密封性を維持しながら、ステムへのスラスト荷重を抑えて低トル
ク性を実現し、略一定の安定した操作トルクにより開閉操作可能な高圧用ト
ラニオン型ボール弁を備えており、このボール弁により高圧流体の漏れを確
実に防止しつつ、優れたトルク性により自動や手動で弁体を操作して所定量
の水素を供給又は停止できる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下に、本発明における高圧用トラニオン型ボール弁およびこれを用いた水素ステーションの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1においては、本発明における高圧用トラニオン型ボール弁の一実施形態を示しており、
図2においては、
図1の拡大断面図を示している。
【0038】
図において、本発明におけるボール弁本体(以下、バルブ本体という)1は、特に、高圧流体を流す場合に好適なトラニオン構造からなり、蓋部材2を有するボデー3と、これらの内部にボール10、シートリテーナ11、バネ部材12、シール部材13、バネ押え14、補助リング15、軸装シール機構20を有している。本実施形態における高圧とは、例えば、35MPa以上であり、水素ステーション用の配管設備用バルブとして70〜105MPa、具体的には103MPa程度の高圧を想定している。そして、本発明におけるバルブ本体1は、例えば、−50〜85℃までの流体の温度変化に対応可能になっている。
【0039】
バルブ本体1のボデー3は、例えばステンレス鋼(SUS)からなり、このボデー3において、内部の流路方向(
図2における水平方向)には穴状の装着部21が設けられ、ボデー3上部側のボール10の軸装方向(
図2における鉛直方向)に軸装穴22が設けられ、ボデー3の下部側(ボトム側)に装入穴23が設けられ、この装入穴23の内周の一部にはメネジ部24が設けられている。バルブ本体1は、例えば、2.5kg程度の重さに設けられる。
【0040】
図2に示した蓋部材2は、例えばSUSにより蓋状に形成され、メネジ部24に螺合するオネジ部25を有し、このオネジ部25を介してボデー3のボトム側より着脱可能に設けられる。蓋部材2の内部にはボデー3の軸装穴22と同径の軸装穴26が設けられ、さらに、この軸装穴26に続けて底面側には後述する下ステム51の下部と連通するリリーフ孔28が穿設されている。このリリーフ孔28は、バルブ本体1の組立て時の部品挿入時の空気抜きの機能を発揮し、組立て後には、リークポート部位の機能を発揮する。メネジ部24の奥側(ボール側)には、例えば銅製からなる環状ガスケット31を装着し、ボデー3と蓋部材2との間をシールしている。
【0041】
図2、
図5において、ボデー3の装着部21にはボール10やシートリテーナ11等が装着可能に設けられ、これらを介してボデー3内には流路30が形成される。さらに、ボデー3の両側にはめねじ3aが設けられ、このめねじ3aに、例えばSUSからなるキャップ状の流入部32と流出部33とにそれぞれ設けられたおねじ32a、33aが螺着され、この流入部32、流出部33がそれぞれボデー3に固着される。めねじ3aの奥側(ボール側)には、例えば銅製からなる環状ガスケット31が装着され、ボデー3と流入部32、流出部33との間がシールされる。本実施形態においては、前述のボデー3と蓋部材2との間をシールするガスケットと同一寸法、同一材質のガスケット31が用いられる。
【0042】
流入部32、流出部33のボデー接続側には段状の装着穴34、34がそれぞれ形成され、これら装着穴34、34にそれぞれシートリテーナ11、バネ部材12、シール部材13、バネ押え14、補助リング15が装着される。流出部32、流入部33における装着穴34の他方側にはそれぞれ雌ねじ35、35が形成され、これら雌ねじ35、35を介して図示しない外部の配管が接続可能に設けられている。
ボデー3内における流入側、流出側とも同じ弁座シール構造、すなわち、
図2において左右対称構造に設けられている。
【0043】
図1に示すように、ボデー3における流路方向と交差する外周面は、フラット面36に形成され、このフラット面36には内部と連通するリークポート部37aがリークポート37の一つとして穿設されている。
【0044】
図2におけるボデー3内のシートリテーナ11は、例えばBeCu合金(ベリリウム銅合金)などの銅基合金を母材として形成され、この母材に適宜の熱処理を行うことで、例えばビッカース硬さHv360〜450程度に設けられる。シートリテーナ11を銅基合金で形成した場合には、水素による脆化が防がれる。
【0045】
シートリテーナ11は、ボール10とシール接続可能に設けられ、ボール10側に対向配置される拡径部40と、この拡径部40よりも縮径した筒部41とを有している。拡径部40のボール10側との対向面にはシール面42が設けられ、
図7においてこのシール面42には、例えばDLC(ダイヤモンドライクカーボン)によるコーティング層42aが施される。DLCは、主に炭化水素、或は炭素の同素体からなるアモルファスの硬質膜であり、高硬度であって、潤滑性、耐摩耗性、表面平滑性、化学的安定性などの特性に優れている。DLCを施す際の製法としては、例えば、プラズマCVD法やPVD法などの成膜法がある。
【0046】
ここで、
図7において、シートリテーナ11のシール面42を設ける場合を述べる。図において、ボール10のボール面10aの球径中心点Pからボール10の流路方向にX軸、このX軸と交差するY軸を設ける。球径中心点PからY軸方向に所定距離Hの間をあけて2箇所の偏位点(オフセット点)Q、Qを設ける。各オフセット点Q、Qから偏位(オフセット)側と反対方向に180°の角度でボール面10aの半径R
Bよりもやや長い半径Rで半球面S、Sをそれぞれ描くことにより、この半球面Sの一部を軌跡面としたシール面42が構成される。すなわち、
図7において、シール面42は、所定距離Hのオフセット点Q、Qから描かれたボール面10aのやや長い半径Rの軌跡の一部であり、このシール面42は半径Rで描かれることになる。
【0047】
このとき、シール面42のボール面10aとのシール位置Tが当該シール面42の略中央位置になるようにオフセット点Qの所定距離Hを設定する。一例として、
図3におけるボール10の内部流路径dNが10mmであって、ボール面10aの球径φDがφ20mm(半径R
Bが10mm)のときには、やや長い半径R(半径R
B+Δr)として、距離HをΔhとしたオフセット点Qを設定し、このオフセット点Qより軌跡面を描くようにすればよい。オフセット点Qの球径中心点Pからの所定距離Hは、ボール面10aの球径に応じて適宜変更することができる。本実施形態においては、Δr>Δhの関係になるよう設定している。
【0048】
仮に、オフセット点Qを設けることなく、シートリテーナ11のシール面42をボール面10aよりやや長い半径で設定してしまうと、ボール10がシートリテーナ11のシール面42の内周縁部位に当接してしまう。すると、内周縁部位がボール面10aに極所的に当接することとなり、DLCが破損するおそれが高くなる。これを回避するために内周縁部位に丸みをつけ、極所的な当接を避ける技術も考えられるが、ボール10の位置がX軸方向にずれることになり、このボール10上部の軸部などを細くせざるを得ないなどの新たな問題を生じてしまう。
本実施形態では、オフセット点Qを設けることにより、シートリテーナ11のシール面42と前記ボール面10aとのシール位置を当該シール面の略中央位置になるようにした。その上で、DLCを施す前の仕上加工をボール10に施すことにより、シートリテーナ11とボール10とを面接触シールにてシールさせるようにしている。
【0049】
この場合、線接触又は面接触で当接させたシール面を有し、線接触といえども、実際には所定の巾を有した接触シール面を形成している。例えば、面接触シールの幅は、Y軸と略平行に形成される環状の密着部位であり、例えば、0.5mm程度の幅になるようにする。本実施形態のトラニオン型ボール弁は高圧用であるため、ボール10は流体圧により微少量変位するが、面接触シール幅を前記のように設定することで、環状の密着部位が維持される。しかも、シール位置Tは、シール面42の略中央位置に設定されていることから、ボール弁の使用中にこのシール位置Tの位置が若干ずれた場合にも環状の密着状態が維持される。なお、シートリテーナ11は、DLC以外の表面処理を施したり、オフセット点Q以外の形状であってもよく、また、シートリテーナ11に別途、樹脂などのボールシートを組み込む構造を採用してもよい。
【0050】
図2、
図5に示すように、筒部41の外周にはバネ部材12、バネ押え14、シール部材13、補助リング15が装着され、この状態で装着穴34に装入されることでシートリテーナ11が流路方向に移動可能になっている。
【0051】
バネ部材12は、例えばSUSによりコイルスプリング状に設けられ、シートリテーナ11の拡径部40とバネ押え14との間に弾発状態で装着される。これにより、バネ部材12によりシートリテーナ11に対してボール10をシールする側に弾発力が付与される。バネ部材12は、コイルスプリングに限られることはなく、例えば、図示しない皿バネであってもよい。皿バネをバネ部材として設ける場合、適宜のばね係数の皿バネを複数枚設けることにより、コイルスプリングと略同等のスペースで高荷重を得ることができ、特にボール弁の流入側と流出側とが低差圧の状態下におけるシール性を向上することが可能になる。
【0052】
バネ押え14は、例えばSUSにより略筒状に形成され、拡径環状部45と、この拡径環状部45よりも縮径した挿入筒部46とを有している。バネ押え14の拡径環状部45の内周側には上記バネ部材12が装着され、挿入筒部46は装着穴34の縮径側の縮径穴部47に装着される。
【0053】
シール部材13は、例えばエチレンプロピレンゴム等のゴム製のOリングよりなり、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)により形成され、バックアップ用の補助リング15の間に挟まれた状態で筒部41と縮径穴部47との間に装着される。この装着構造により、シール部材13は、補助リング15で両側が保護された状態でシートリテーナ11の外周面に装着される。
【0054】
図2〜
図4において、ボール10は例えばSUSからなり、このボール12の上下には少なくとも後述する軸装シール機構20でシールされる部位が同一径の上ステム50と下ステム51とがそれぞれ延設され、これらによりボール部材52が構成されている。
図3の上ステム50と下ステム51の外径φdは、ボール10の球径φDよりも小径に設定されている。これにより、ボデー3の軸装穴22や装入穴23の径もそれぞれ小さく設定することができ、流体の耐圧に必要なボデー3や蓋部材2の肉厚を薄くすることができ、バルブ本体1の大きさを小さくすることができる。上ステム50、下ステム51の外径が小さくなることで、これら上ステム50、下ステム51の軸心から軸受58との接触面までの距離(モーメントアーム)が小さくなるため、上下ステム50、51回転時の摺動抵抗が抑えられて操作トルクの上昇を防ぐことができる。ボール球径φDとしては、例えば、φD=20mmとすればよい。仮に、上下側のステム外径がボール球径よりも大きい場合には、そのステム外径に伴ってボデーが大きくなると共に、上記のモーメントアームが大きくなり、摺動抵抗が増加して操作トルクも大きくなるが、前記によりこれを防ぐことが可能になっている。
【0055】
ボール10は、ボデー3のボトム側より装入可能に設けられ、これによりボデー3内の軸装穴22に上ステム50が軸装され、この状態でボデー3のボトム側が蓋部材2で被蓋されてこの蓋部材2の軸装穴26に下ステム51が軸装されることで、ボール10がボデー3内の所定位置に配設可能になっている。
【0056】
上下ステム50、51の外周の軸装穴22、26には、それぞれ軸装シール機構20、20が装着され、この軸装シール機構20を介してボール部材52がボデー3内に回転自在に配設される。ボール10は、上ステム50により回動操作され、このボール10内部に形成された連通孔10aとシートリテーナ11の内部流路11aとが連通したときに、バルブ本体1内に流体が流れるようになっている。上下ステム50、51のボール10近傍位置にはそれぞれ鍔部53が設けられている。
【0057】
軸装シール機構20は、Uリングシール55、バックアップリング56、金属リング57を有しており、これらの各部品の内径、外径寸法は、略同一に設定されている。
軸装シール機構20において、ボール10側にUリングシール55が設けられ、このUリングシール55にバックアップリング56が積層され、このバックアップリング56の外周位置(ボール10から見た外周側の位置)に金属リング57が積層されている。
【0058】
Uリングシール55は、例えば、ポリエチレン製の外周部55aと芯金(スプリング)55bとからなり、シール機能を発揮させるために、その内径が上ステム50の外径よりもやや小さく、外径が軸装穴22の内径よりもやや大きく設定されている。
本実施形態におけるUリングシール55は、市販のUパッキンと同等に設けられる。このUリングシール55は、U字形断面の外周部55aがリップ部となり、このリップ部が流体圧により拡径し、上下ステム50、51とボデー3、蓋部材2とをシールする構造となっている。従って、Oリングのように押圧力を加える構造のシール部品に比べてシール領域を小さくでき、摺動抵抗を小さくすることができる。このようなUリングシール55は、リップパッキンとも称される。
【0059】
バックアップリング56は、例えば、ポリエチレンからなり、Uリングシール55と金属リング57との間に介在され、Uリングシール55の軸装穴22中心側へのはみ出しを防ぎ、かつ、Uリングシール55と金属リング57との間でクッションの役割を果たしており、キャビティ側からの高圧にも耐えうるようになっている。このバックアップリング56の材質や構造を変えることにより、軸受としての機能を発揮させることも可能となる。
【0060】
金属リング57はアルミニウム銅合金からなっている。金属リング57が配置されるボデー3には、軸装穴22の上部には小径部22aが設けられ、この小径部22aにより段部22bが形成されている。金属リング57は、この段部22bにより上面が係止される。金属リング57の内径は、上下ステム50、51の外径よりもやや大きく、小径部22aの内径よりも小さく設定される。これにより、金属リング57の内径側を小径部22aの上方から視認可能となっている。金属リング57には、スラストベアリングとしての機能は不要になっている。
【0061】
図2に示すように、小径部22aにはOリング54が装着される。Oリング54は、流体圧をシールするために設けられたものではなく、小径部22aへの水やほこりの浸入を防いだり、後述するリークポート37の機能を補助するために装着される。
【0062】
ボデー3側、蓋部材2側の各軸装穴22、26において、軸装シール機構20よりもボール10側の上下ステム50、51の外周には軸受58が設けられ、この軸受58は、例えばPTFCと芯金とからなる内周側のラジアルベアリング59と、アルミニウム銅合金からなる外周側のスペーサ60とにより構成される。
【0063】
軸受58にはシール機能がなく、内径側、外径側共に流体が通過可能になっている。これにより、軸受58の上面、底面には流体圧が加わるが、各面の面積は略同一であるため、流体圧により各面に加わる荷重は、略同一となり、しかも、荷重を受ける方向が対向するため、これらが相殺される。
従って、その上面、底面間に差圧が加わらないので、軸受58は、流体圧によって移動することがなく、フローティング状態で軸装穴22と、上ステム50又は下ステム51との間に内装され、上下の軸受58、58でラジアル方向の荷重をバランスよく均等に受けるようになっている。
【0064】
このようにして、軸受58は軸装穴22に係止される必要がないため、Uリングシール55などのシール部品に連続して軸受58を装着することができ、バルブの構造がシンプルで、組立てやメンテナンスが容易となり、スラストベアリングも不要となる。
さらに、軸受58の上面に流体圧を十分に伝えるために、
図3に示すように、軸装穴22の軸受58との対向位置に、Uリングシール55の手前まで軸方向の流体導入溝69を設けてもよい。この場合、流体導入溝69により流体圧をUリングシール55に十分伝えることもでき、確実に軸シールをおこなうこともできる。
【0065】
軸受58は、上下ステム50、51の鍔部53でボール10側が保持されている。これにより、軸受58が自重によりボール10側に移動することが規制される。本実施形態における鍔部53は、軸受58の外周を構成するスペーサ60を保持できる外径に形成されている。下ステム51側の軸受58は、自重によりUリングシール55の上面に当接しても良い。
【0066】
図3に示すように、軸受58を構成する前記スペーサ60のUリングシール55側端面は、断面略L字形状に形成されている。これにより、スペーサ60の内径側に装着されるラジアルベアリング59が断面略L字形状部位に係止され、スペーサ60とラジアルベアリング59とが仮組みしやすくなっている。略L字形状部位の内径先端側は、ラジアルベアリング59の内径よりもやや拡径するように形成され、これにより、この内径先端側が上下ステム50、51に接触することがなく、スペーサ60の破損等が防止される。
【0067】
軸装シール機構20は、上記の構成によりボール10を中心に対称位置に同一構造になるように上下ステム50、51に装着される。ここで、同一構造とは、少なくともシール部材(本実施形態においてはUリングシール55)のシール径が同一であることをいう。ボール10において前述したように上ステム50と下ステム51とは同一径であり、この上ステム50と下ステム51に軸装シール機構20が装着されることでバランス構造に設けられる。このバランス構造により、スラスト荷重が回避されるようになっている。
【0068】
バランス構造とは、流体圧が加わった場合でも、ボール10がスラスト方向(ステム軸方向)に移動しようとする荷重を上下対称にすることで相殺する構造をいう。バランス構造は、ボール10と上ステム50、下ステム51とを一体化し、且つ、各ステム50、51にシール部材を装着することで得られる。本実施形態において、シール部材は、Uリングシール55となる。
【0069】
バランス構造を得るためには、上下ステム50、51のUリングシール55、55のシール径が一致している必要があり、これによりボール10のスラスト方向への移動が阻止される。この場合、ボール10からUリングシール55のシール位置までの距離が上下で一致している必要はない。すなわち、上下のUリングシール55、55のシール径が同一であれば、ボール10からシール位置までが同距離又は異なる距離であっても、バランス構造によりスラスト荷重を相殺可能となる。例えば、上ステム50、下ステム51に段部が形成されていたとしても、上下Uリングシール55、55のシール径が同じであればバランス構造による機能が発揮される。一方、ボール10からUリングシール55の上下のシール位置までが同距離であっても、上下Uリングシール55、55のシール径が異なっていると、バランス構造による機能が発揮されることが難しくなる。
【0070】
軸装シール機構20、20のうち、下ステム51に装着される軸装シール機構20は、蓋部材2に内挿される。この蓋部材2は、バルブ本体1の内方側(ボール側)が最小径部となるように形成され、この最小径部に軸受58が内挿されている。本実施形態においては、最小径部をボール10の球径よりもやや大きく形成することにより、最小径部に対応する蓋部材2の装入穴23の奥部23aを介してボール10をバルブ本体1内に内挿するようにしている。
【0071】
リークポート37は、リークポート部37a、リークポート孔37bとリリーフ孔28、リークポート穴37cの3つに大別される。前記したリークポート部37aは、環状のガスケット部材31のシール性の確認用として設けられ、蓋部材2や流入部32、流出部33とバルブ本体1とのシール部分に装着される。このリークポート部37aを介して、ガスケット部材31からの漏れの有無を確認可能になっている。
【0072】
図1、
図4において、ボデー3の金属リング57装着部位付近にリークポート孔37bが形成され、このリークポート孔37bと、前記したリリーフ孔28とにより、上下ステム50、51に装着されたUリングシール55からの漏れの有無を確認可能となる。特に、上ステム50側のリークポート孔37bは、金属リング57に対向する位置に設けられ、これにより、軸装シール機構20の構成部品が高圧の流体によってこのリークポート孔37bにはみ出したり、破損しないようになっている。この場合、金属リング57であることではみ出しや破損が確実に防がれており、例えば、金属リング57の代わりにポリエチレン樹脂等の樹脂製リングを設けた場合、高圧に耐えきれずに破裂等が生じるおそれがある。
【0073】
リークポート穴37cは、配管と接続部位とのシール性を確認するために、外部配管との接続部位付近に設けられる。このリークポート穴37cにより、流入部32、流出部33における、配管との図示しないシール部分からの漏れの有無を確認可能となる。
【0074】
図4、
図6に示すように、ボデー3と蓋部材2との当接面には、回動防止板材61が装着される。回動防止板材61は、例えばボデー3や蓋部材2と同材料であるSUSにより略環状に形成され、
図2において、中央に蓋部材2のオネジ部25が装入可能な貫通穴62が設けられ、外形は、蓋部材2の六角面2aよりも部分的に突出するように形成され、この突出部が折り曲げられて六角面に沿うように設けられる。これにより、取付後の蓋部材2はボデー3に対して緩みにくくなっており蓋部材2に強固に一体化される。
【0075】
さらに、回
動防止板材61には、止部材となる固着ボルト63取付用の取付穴64が設けられ、
図6に示すように、回
動防止部材61は、固着ボルト63によりボデー3に固定される。これによって回
動防止部材61は、ボデー3に対して回転しにくくなり、蓋部材2が一層緩みにくくなっている。なお、ボルト63の代わりに、あらかじめ
図3のように曲げ加工を施して突起部位を設けた回
動防止部材61を用いてもよい。この場合、取付穴64はネジではなく、突起部位を係止可能な孔であればよい。
【0076】
この実施形態においては、ボデー3と蓋部材2とを設け、これらの内部にそれぞれ形成した軸装穴22、26に装着した軸装シール機構20によって上ステム50と下ステム51とを支承する構成であるが、図示しない一体構造のボデー内の上下部に軸装シール機構を配置するようにしてもよい。この場合、上下ステムを一体構造のボデーで支承してボールをボデー内部に高精度に装着できるため、回転防止板材や止部材を不要にしつつ、ボールに対するリートリテーナのずれやボール部材の軸ブレを防ぎながら全体を一体化できる。
【0077】
図1においては、バルブ本体1に手動ハンドル65を装着した状態を示している。手動ハンドル65は、上ステム50の上端部に着脱可能に装着可能に設けられ、ボール10回転操作用の把持部66が設けられている。図示しないが、この把持部66の先端側には突設部が設けられている。
【0078】
図1、
図2に示すように、ボデー3上面には複数のストッパ部67が一体に突設形成され、このストッパ部67に回転操作時のハンドル65の突設部が当接可能になっている。このようにストッパ部67に突設部が当接することにより、ハンドル65の回転を所定の操作角度に規制できる。これによって、ストッパ部67を90°間隔で形成しておけば、ハンドル65を90°回転操作して所定の弁閉又は弁開状態にできる。また、弁開・弁閉用のストッパ部67を複数組設けていることにより、操作方向やバルブ本体1に対する向きを変更しながらハンドル65を取付け可能になっている。
【0079】
バルブ本体1には、図示しないアクチュエータを搭載して自動でバルブ開閉操作をおこなうこともできる。この場合、
図8の二点鎖線に示すように、アクチュエータが搭載されるボデー3の上面側に、適宜の高さ寸法の円筒部材68を載置し、この円筒部材68を介してアクチュエータの図示しない出力軸と上ステム50とを接続すればよい。このように、円筒部材68を介在させることで、ストッパ部67がアクチュエータ搭載の邪魔になることがなく、かつ、アクチュエータとバルブ本体1に対して所定間隔で搭載することが可能になる。さらに、円筒部材68の高さを適宜設定することで、各種の規格に対応したアクチュエータの搭載も可能となる。
【0080】
次に、本発明における高圧用トラニオン型ボール弁の上記実施形態における作用を説明する。
本発明の高圧用トラニオン型ボール弁は、バネ部材12により一、二次側のシートリテーナ11、11をそれぞれシール側に弾発したトラニオン型バルブであることから、ボール10に対してシートリテーナ11を密着させた状態で開閉操作でき、例えば103MPa程度の水素等の高圧流体を流す場合でも、この高圧流体を利用してボール10に対してシートリテーナ11を押圧する自緊力を利用して封止性を確保することで漏れを確実に防止する。
【0081】
その際、ボール10の上下に同一径の上ステム50と下ステム51とをそれぞれ延設してボール部材52を構成し、上下ステム50、51には、ボール10を中心に対称位置に同一構造の軸装シール機構20を装着しているため、ボール10に流体圧が負荷されたときの上ステム50、下ステム51に加わるスラスト方向(各ステム50、51の軸心方向)の荷重を同一にさせて相殺できる。このようにバランス構造に設けていることで、スラスト荷重の発生を回避できる。
【0082】
具体的には、上ステム50と下ステム51とにそれぞれ装着された軸装シール機構20、とりわけUリングシール55の内径が同一寸法に設定されている。これにより、上ステム50と下ステム51とにおける軸シール径が同一となるので、流体圧によって各ステム50、51がバルブ外方側に受ける力Fが同一になり、これらが相殺される。
従って、流体圧を受けてもスラスト荷重の発生が回避され、ボール10は上下動せず、シートリテーナ11のシール面42との弁座シール性が維持される。軸装シール機構20は、ボール10を中心に対称位置に配置しているので、各軸装シール機構20のボール10側に装着する軸受58も、ボール10を中心に対称位置に配置することができる。上下ステム50、51は、ボール10側が流体圧によるラジアル方向への変位が大きくなることから、この部位を軸受58で支持することにより、上記の変位が抑制された上下ステム50、51を軸装シール機構20により、確実にシールすることができる。
【0083】
しかも、軸受58もボール10を中心に対称位置に同一構造になるように上ステム50、下ステム51にそれぞれ装着されている。これにより、ボール10が流体圧によって受ける力を上下ステム50、51に装着された軸受58で均等に受けることができる。
特に、弁閉状態では、ボール10は上記流体圧によるラジアル方向(ステムの径方向)の荷重により二次側に移動しようとする。これをボール10に一体に形成した上下ステム50、51を介して各軸受58、58で上下均等に支持するため、バルブを弁閉や弁開操作する際に、特に弁閉位置近傍のバルブ操作をスムーズにおこなうことができる。
【0084】
これによって、ボール10の上下移動を防止でき、このボール10がシートリテーナ11に対してずれるおそれがない。そのため、ボール10にシートリテーナ11が適切なシール位置により均圧状態で接し、安定した弁座シール性を確保して漏れを防止する。ボール10の回転操作時には、このボール10に対してスラスト荷重による摩擦抵抗力の発生を防いで、シートリテーナ11を介して上下ステム50、51でボール部材52を均等に支えて低トルク性を発揮し、軽い力で開閉操作できるため手動操作も容易となる。このとき、トルクむらも抑えて、略一定の安定した操作トルクで操作可能となる。
【0085】
上下ステム50、51のボール10近傍位置に設けた鍔部53で軸受58のボール10側を保持していることで、この軸受58がボール10側に飛び出すことを防ぎ、この軸受58で上下ステム50、51の所定位置を支えることができる。このため、軸受58のシートリテーナ11やボール10への干渉を防ぎ、高シール性を維持できる。
【0086】
軸装シール機構20をUリングシール55、バックアップリング56、金属リング57の各部材により構成していることで、ボール10回転時の摺動性とシール性とを両立しながら、メンテナンス時にも容易にこれら各部材の交換等をおこなえる。具体的には、金属リング57の内周径は、軸装穴22の中央側にやや突設しているため、この軸装穴22の外側から適宜の治具を用いて金属リング57を押し出すようにすれば、この金属リング57、Uリングシール55、バックアップリング56をボール10装着位置付近まで移動させて容易にボデー3の側方より取外しでき、各部材の破損もない。
このとき、ボデー3側、蓋部材2側の軸装穴22、26は突き当たり構造ではなく連通した構造であるため、軸装シール機構20の各部材を取り出しやすくなっている。軸装シール機構20の各部材は、軸装穴22の外方から適宜の治具により引っ掛けて抜き出しにより取り外すこともできる。
【0087】
軸装シール機構20は、軸受58に近接配置されているので、鍔部53で位置保持された軸受58により軸装シール機構20の軸方向の移動が阻止され、上ステム50、下ステム51のシール位置がずれることが防がれる。これらの近接によりバルブ本体1の高さも低くなっている。
【0088】
ボデー3のボトム側よりボール部材52を装入して蓋部材2で被蓋したボトムエントリ構造としていることで、バルブ本体1の上方側にボール部材52の抜き出し用の構造を設ける必要がなく、バルブ本体1の上方側を手動ハンドル65やアクチュエータの取り付け用として高い自由度により任意の構造に設けることも可能となる。蓋部材2をボデー3から取外したときには、このボデー3のボトム側が大きく開口することで、バルブ本体1の分解・組立てがしやすい。このようにボトム側に開口部位を設けていることで、例えば、本実施形態において、ボール10の球径20mm、軸シール部位の外径18mmであるとき、開口側を軸シール部位の外径に合わせて小さくすることなく大きく開口したことで容易に組立て可能としながら、ボデー3を厚く形成して高圧用バルブとして必要な肉厚を確保して強度を向上できる。
【0089】
バルブ本体1の組立て時には、ボデー3の軸装穴22に上ステム50に装着する上方側の軸装シール機構20の構成部品を順次内挿する。この段階において、
図2に示したOリング54を小径部22aの溝状部位に装着しておく。
このような軸装シール機構20が内挿された軸装穴22に、ボール10や下ステム51が一体成形された上ステム50を挿入し、ボデー3内の所定位置に収納する。このとき、上ステム50の上部には、ハンドル65が嵌合される嵌合部位との段部50aがあるが、この段部50aはテーパ状に形成されているため、上ステム50を軸装シール機構20に円滑に挿入できる。
【0090】
一方、蓋部材2には、予め下ステム51に装着される下方側の軸装シール機構20をボデー3の場合と同様に内挿しておく。そして、この蓋部材2を、ボデー3に収納されたボール10に一体成形した下ステム51に差し込みながら、オネジ部25とメネジ部24とを螺着してボデー3の装入穴23に装着する。このとき、蓋部材2にリリーフ孔28が開いているので、蓋部材2に空気が内封されることを防ぎつつ、この蓋部材2に内挿された軸装シール機構20に下ステム51を挿入することができる。その後、下ステム51を挿入した蓋部材2をボデー3に螺着固定する。この状態で、ボール10は上下ステム50、51の軸芯方向に拘束されておらず、上下動可能となっている。
【0091】
次いで、これらの軸装シール機構20を内部に装着しながら一体化したボデー3と蓋部材2とに対して、シートリテーナ11、バネ部材12、バネ押え14、シール部材13、補助リング15からなる弁座シール部品を内挿した流入部32、流出部33を、おねじ32a、33a、めねじ3a、3aの螺着によりそれぞれ装着して一体化する。このような手順により、組立後にはボール10の流入側、流出側がそれぞれバネ部材12により弾発されたシートリテーナ11により保持され、ボール10と各シートリテーナ11とが正確に調心された状態でバルブ本体1が設けられる。
このバルブ本体1の上ステム50の上端部に対して、ハンドル65を装着するようにすれば、ボール10を手動操作により開閉することが可能になり、アクチュエータを搭載して自動でバルブ開閉操作をおこなうこともできる。
【0092】
バルブ本体1の修理やメンテナンス時には、基本的には組立方法の逆の手順により実施する。このとき、特に上ステム50に装着された軸装シール機構20の各部品を、
図2において、軸装穴22の外側から円筒状の治具によりボデー3の下方(ボール10側)に押し出すことができるため、取外しが容易となる。
【0093】
バルブ本体1は高圧用バルブであるため、蓋部材2のオネジ部25とボデー3のメネジ部24とを長くして螺着強度を高めることが必要になっているが、このメネジ部24が軸装シール機構20と並列するように設けられていることで、蓋部材2が軸方向に必要以上に大きくなることを防いで最小限の長さにでき、上述した軸装シール機構20と軸受58との近接構造とあいまってバルブ本体1の高さが低くなっている。しかも、ボデー3の流路方向と交差する外周面をフラット面36に形成していることでボデー3の流路方向の幅を短くでき、これらによってボデー3全体をコンパクト化して狭い場所への設置にも対応する。
【0094】
蓋部材2に下ステム51の下部と連通するリリーフ孔28を穿設していることにより、上ステム50側の軸装部分と下ステム51側の軸装部分との間に圧力差が生じた場合に、このリリーフ孔28を介してリークを検知できる。さらに、ボデー3のフラット面36に穿設されたリークポート部37aからもリークされ、バルブ本体1内の内部圧力が高くなることを解消して弁座シール性や操作性が損なわれることを回避する。リークポート部37aをフラット面36に穿設していることで、このリークポート部37aをボデー3の所定位置に正確に位置決めしながら形成可能となる。
【0095】
ボデー3と蓋部材2との当接面には、止部材63を介して回動防止板材61を装着しているため、ボデー3と蓋部材2とを強固に一体化でき、これらボデー3と蓋部材2とで上ステム50と下ステム51とを所定位置で支承し、ボール10とシートリテーナ11とを位置決めしてシール状態を維持してスラスト荷重を回避できる。
【0096】
図9においては、本発明の高圧用トラニオン型ボール弁の他の実施形態を示している。なお、この実施形態以降において、前記実施形態と同一部分は同一符号によって表し、その説明を省略する。
図2の実施形態では、軸受58の内周側に、芯金にPTFC等の樹脂がコーティングされたラジアルベアリング59が用いられている。樹脂は、摺動性の維持に好適な材料ではあるが、バルブの開閉頻度が多い場合など、使用条件によっては摩耗する場合がある。樹脂コーティングが摩耗すると、軸受58と上下ステム50、51との隙間(クリアランス)が拡がるので、超高圧流体を受けるボール10が下流側に押されてわずかに移動する量が増加し、これに伴って上下ステム50、51がボール10を中心としたくの字形に傾倒し、軸装シール機構20によるシール性が低下するおそれがある。また、軸受58と上下ステム50、51とのクリアランスが拡がることにより、上下ステム50、51とラジアルベアリング59との面接触が損なわれ、上下ステム50、51のスラスト荷重が増すおそれもある。
【0097】
これを回避するために、この実施形態におけるバルブ本体90では、ボール部材91の上下ステム50、51に、これらよりも拡径した拡径摺動部100が一体に設けられている。拡径摺動部100は、ボデー3に同径に設けられた軸装穴22、26に密着可能な外径に形成され、ボール部材91をボデー3に装着したときに、軸装穴22、26に密着状態で摺動自在に設けられる。
【0098】
これにより、上下ステム50、51と軸装穴22、26とのクリアランスは、拡径摺動部100と軸装穴22、26との間のみに低減され、また、拡径摺動部100がボール10付近に設けられていることでボール部材91中央付近の強度が向上する。そのため、ボール10に対して103MPa以上のいわゆる超高圧流体が流れる場合にも、上下ステム50、51がボール10を中心としたくの字形に曲がりにくくなる。よって、ボール部材91から軸装穴22、26へのラジアル荷重の上昇が阻止されて操作時のトルクの上昇が回避されるとともに、上下ステム50、51と軸装シール機構20とのシール性も確保される。ボール10を中心とした上下側において、同一構造の軸装シール機構20、20の対向位置に、同一径の上下ステム50、51が設けられていることで、そのバランス構造が維持されてスラスト荷重の上昇も回避される。
【0099】
拡径摺動部100を設けたボール部材91の表面には、シートリテーナ11の場合と同様に、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)によるコーディング層101が設けられる。ボール部材91は、例えばBeCu合金を材料として形成され、このボール部材91の拡径摺動部100を含む上下ステム50、51、及びボール10を含む部位の表面にDLCによる被覆処理が施される。
【0100】
このようにDLCのコーティング層101がボール部材91に設けられている場合には、ボール部材91の表面平滑性や潤滑性、耐摩耗性などが向上される。そのため、拡径摺動部100が設けられた上下ステム50、51側には優れたベアリング機能が発揮されつつ軸装穴22、26への密着性が高められ、クリアランスがより抑えられた状態で摺動性が確保され、ボール部材91の円滑な操作が可能となる。ボール10側においては、シートリテーナ11とのシール性が高められて漏れが確実に防止される。
【0101】
ここで、例えば、拡径摺動部100と軸装穴22とが、上ステム50において流体をシールする程に全周に渡って密着した場合には、軸装シール機構20でシールしている下ステム51に対しシール径が大きくなり、その結果、スラスト方向の荷重の大きさが上ステム50側に偏るのでバランス構造が失われてしまう。これにより、ボール10が上ステム50側に移動してしまい、弁座シール性が失われるおそれがある。
【0102】
そこで、
図10に示すように、上下ステム50、51の各拡径摺動部100には、ボール10側と軸装シール機構20とを連通する連通部110が設けられる。連通部110は、拡径摺動部100の中心軸と交差する方向に貫通する連通孔からなり、
図9において、ボール部材91がボデー3に装着されたときに、拡径摺動部100の外周の対向位置に傾斜状態で形成される。連通部110は、ボール10側と軸装シール機構20側とを連通可能であれば、その傾斜方向や孔径を適宜変更可能であり、さらには曲線状や切欠き状、或は軸方向に設けることも可能である。本実施形態のように連通部を連通孔110として傾斜状に設けた場合には、拡径摺動部100の上下面に孔径を大きく確保しながら上下ステム50、51の強度を低下させることなく連通可能となり、この連通孔110を形成するためのスペースの点でも制約が少なくなる。
【0103】
このように拡径摺動部100に圧抜き用の連通部110が設けられていることで、ボール10側から軸装シール機構20側に流体圧が抜けてキャビティ内が均圧状態になると共に、軸装シール機構20による軸シール性が維持される。このため、流体圧による上下ステム50、51へのスラスト荷重が変化することがなく、これら上下ステム50、51側が均等な圧力に保持されて、ボール部材91の上下のバランス状態が確保される。このことから、前述した拡径摺動部100と軸装穴22、26とのクリアランスを極限まで小さくした場合にも、拡径摺動部100にボール10側から流体圧が加わろうとしたときにも軸方向へのずれが防止され、軸装シール機構20を装着したバランス構造が維持されてスラスト荷重の偏りが確実に回避される。
【0104】
なお、この実施形態では、シートリテーナ11に複数の皿バネ111がバネ部材として装着されている。このように皿バネ111を用いた場合、ボール10方向への弾発力が高められてシール性が向上する。また、拡径摺動部100の径は、上下ステム50、51でそれぞれ異なっていてもよい。
【0105】
図11においては、本発明の高圧用トラニオン型ボール弁の更に他の実施形態を示しており、
図11(a)は、高圧用トラニオン型ボール弁の縦断面図、
図11(b)は、
図11(a)のB−B断面図を示している。
いる。
この実施形態のバルブ本体120では、
図11(a)に示すように、ボール部材121の上下ステム50、51よりも拡径され、軸装穴22、26に密着可能な外径に設けられた摺動筒体130が別体に形成され、この摺動筒体130が上下ステム50、51にそれぞれ装着されている。上下ステム50、51の径は、摺動筒体130に対向する位置及び軸装シール機構20に対向する位置でも同一径を採用している。
【0106】
摺動筒体130は、上下ステム50、51の鍔部53でボール10側が保持されている。これにより、摺動筒体130がボール10側に移動することが規制される。本実施形態における鍔部53は、摺動筒体130を保持できる外径に形成されている。下ステム51側の摺動筒体130は、自重によりUリングシール55の上面に当接しても良い。
【0107】
摺動筒体130は、例えばアルミブロンズを材料として一層の態様で形成され、ボール部材121のボデー3への装着時に、軸装穴22、26に摺動自在に設けられる。これによって、前述したバルブ本体1に比して上下ステム50、51と軸装穴22、26との間の各クリアランスが低減され、103MPa以上の超高圧流体が流れる場合にも、ボール10の移動や上下ステム50、51の傾倒を防止して操作時における低トルク性と軸シール性とが確保される。
【0108】
この場合、ボール部材121は、例えばステンレス材料により形成され、このボール部材121の上下ステム50、51に対して摺動筒体130が装着される。
また、図示しないが、別体に設けた摺動筒体130の少なくとも内周には、一体に設けた場合と同様に、DLCによるコーティング層が設けられていてもよい。
【0109】
図12に示すように、各摺動筒体130には、ボール10側と軸装シール機構20とを連通する連通溝からなる連通部140が設けられる。連通溝140は、摺動筒体130の外周に軸方向に沿って2条形成される。この連通溝140により、
図11(b)において、摺動筒体130と軸装穴22、26との間に流体流路が設けられ、摺動筒体130の上下で差圧が発生するのを防ぐことにより、連通溝140を介して摺動筒体130が流体圧を受けてバルブ外方側に移動しようとする、いわゆるピストン現象の発生が防がれる。そのため、各摺動筒体130の上下側に配置されている軸装シール機構20のUリングシール55の損傷が回避され、軸装シール機構20による軸装シール力が維持される。この場合、ピストン現象の発生しやすいイオニックリキッドなどの非圧縮性流体が流れる場合であっても、連通溝140によってピストン現象が確実に回避される。なお、上記の連通溝140に加え、各摺動筒体130の外周に対向する軸装穴22、26に、前述のボール弁本体1と同様に流体導入溝を設けてもよい。
【0110】
しかも、連通溝140が摺動筒体130外周の対向位置に2つ設けられていることにより、何れか一方の連通溝140による流体流路がごみ等より狭くなったり塞がった場合にも、他方の連通溝140を介して流体が流れるためキャビティ内の均圧状態が確実に維持される。以上の構成により、上下ステム50、51において軸装シール機構20によるシール性が維持され、前述のバランス構造が保たれる。
【0111】
図13においては、本発明の高圧用トラニオン型ボール弁を設けた水素ステーションを示している。水素ステーションには前述したバルブ本体1が接続され、このバルブ本体1は、例えば、水素ステーションの高圧水素の供給ラインに用いられる。
水素ステーションは、蓄圧器70、圧縮機71、ディスペンサ72、プレクール熱交換器73、迅速継手74、充填ホース75、充填ノズル76、車載タンク77を有し、これらは高圧水素の供給ライン78としてシステムを構成している。
【0112】
本発明の高圧用トラニオンボール弁は、圧力損失が小さいため、蓄圧器70の二次側に設けたり、その他の供給ラインに設けることによって、システム全体の圧力損失が小さくなり、
図13に示すシステムに好適である。図に示すように、水素ステーションの各ユニットの接続部位に手動弁81を設け、各ユニットの一次側又は二次側に適宜に自動弁80を設けて開閉制御している。
【0113】
蓄圧器70の内部は、複数のタンクに分かれており、それぞれのタンクと圧縮機71とを接続するバルブ80、及びそれぞれのタンクとディスペンサ72とを接続するバルブ80を適宜切り替えることにより、所定圧に至ったタンクから水素をディスペンサに供給する一方、所定の下限値圧を下回ったタンクには、圧縮機71から水素を前記所定圧に至るまで充填する。
【0114】
図13の水素ステーションのブロック図の供給ライン78に示したように、所定のプログラムによってシステムにおける水素供給を制御したり、車両供給量に応じて適宜に水素を供給制御可能になる。
なお、上記の水素ステーションではバルブ本体1を設けているが、バルブ本体90、120についても、同様に水素ステーションに用いることができる。