特許第6490009号(P6490009)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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6490009有機光起電装置のためのハイブリッド平面混合ヘテロ接合
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6490009
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】有機光起電装置のためのハイブリッド平面混合ヘテロ接合
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/44 20060101AFI20190318BHJP
【FI】
   H01L31/04 112A
   H01L31/04 135
【請求項の数】8
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2015-544154(P2015-544154)
(86)(22)【出願日】2013年11月22日
(65)【公表番号】特表2015-535659(P2015-535659A)
(43)【公表日】2015年12月14日
(86)【国際出願番号】US2013071466
(87)【国際公開番号】WO2014082006
(87)【国際公開日】20140530
【審査請求日】2016年11月11日
(31)【優先権主張番号】61/729,376
(32)【優先日】2012年11月22日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509009692
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニヴァシティ オブ ミシガン
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】八田国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】フォレスト,ステファン,アール.
(72)【発明者】
【氏名】ジマーマン,ジェレミー,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】シャオ,シン
【審査官】 佐竹 政彦
(56)【参考文献】
【文献】 特表2008−509558(JP,A)
【文献】 特表2007−533163(JP,A)
【文献】 特表2012−503320(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0073639(US,A1)
【文献】 国際公開第2011/080470(WO,A1)
【文献】 国際公開第2006/103863(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/041407(WO,A1)
【文献】 特表2012−504343(JP,A)
【文献】 特表2011−520263(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/42−51/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重なり関係にある二つの電極と、
前記二つの電極の間に配置された混合光活性層と、
前記混合光活性層と隣接し、かつ接触している光活性層と、
前記混合光活性層と隣接し、かつ接触しているバッファ層と、
を含み、前記混合光活性層は、最高被占軌道(HOMO)エネルギーを持つ少なくとも一種のドナー材料、および最低空軌道(LUMO)エネルギーを持つ少なくとも一種のアクセプター材料の混合物を含み、前記少なくとも一種のドナー材料および前記少なくとも一種のアクセプター材料は混合ドナー−アクセプターヘテロ接合を形成し、前記混合光活性層は、前記少なくとも一種のドナー材料および前記少なくとも一種のアクセプター材料をドナー:アクセプター比が1:4〜1:25となる範囲で含み、
前記光活性層は、前記少なくとも一種のアクセプター材料のLUMOエネルギーとの差が0.3eV以内であるLUMOエネルギーを持つ材料を含み、且つ厚さが10nm未満であり、
前記バッファ層は、金属酸化物を含む、
有機感光性光電子デバイス。
【請求項2】
前記光活性層は、前記少なくとも一種のアクセプター材料のLUMOエネルギーとの差が0.1eV以内であるLUMOエネルギーを持つ材料を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記少なくとも一種のアクセプター材料のLUMOエネルギーとの差が0.3eV以内であるLUMOエネルギーを持つ材料は前記少なくとも一種のアクセプター材料と同じ材料である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
記ドナー:アクセプター比が1:〜1:10となる範囲で含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項5】
前記ドナー:アクセプター比が1:8である、請求項4に記載のデバイス。
【請求項6】
前記光活性層の厚さは9nmである、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記少なくとも一種のアクセプター材料は、フラーレンまたはその誘導体を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項8】
前記少なくとも一種のドナー材料は、テトラフェニルジベンゾペリフランテン(tetraphenyldibenzoperiflanthene、DBP)を含む、請求項7に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2012年11月22日に出願された米国仮特許出願第61/729,376号の優先権を主張するものであり、その全体の内容が本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
連邦政府支援の研究に関する声明
本発明は、米国エネルギー省から授受した助成金第DE−SC0000957号、および空軍科学研究局から授受した助成金第FA9550−110−1−0339号の下で連邦政府による支援を受けてなされた。米国政府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
共同研究契約
本開示の主題は、共同大学企業研究契約(joint university−corporation research agreement)に関わる以下の当事者:ミシガン大学およびGlobal Photonic Energy Corporationのうちの1つ以上の当事者によって、これらの当事者のために、かつ/またはこれらの当事者と共同で実現された。上記契約は、本開示の主題が実施された日以前に、かつ本開示の主題が、この契約の範囲内で行われた活動の結果として実現された日以前に発効している。
【0004】
本開示は一般的に、有機感光性デバイス、特に混合光活性層の上に光活性層を有するハイブリッド平面混合感光性デバイスに関する。
【背景技術】
【0005】
光電子デバイスは、物質の光学的および電子的性質に基づき、電子的に電磁放射線を生成もしくは検出する、または周囲の電磁放射線から電気を生成する。
【0006】
感光性光電子デバイスは、電磁波を電力に変換する。太陽電池は、光起電(photovoltaic:PV)デバイスとも表記され、一種の感光性光電子デバイスであり、特に、電力を発生させるために使用される。電気エネルギーを太陽光以外の光源から発生させることができるPVデバイスは、例えば照明、加熱を提供するために、または計算機、無線機、コンピュータ、遠隔監視機器、通信機器などの電子回路若しくは電子装置に給電するために、電力消費負荷物の駆動に使用することができる。また、これらの電力発生用途には、多くの場合、太陽または他の光源からの直接照射を利用することができないときに動作を継続させるために、または、PVデバイスの電力出力と特定用途の要求出力とのバランスをとるために、バッテリまたは他のエネルギー蓄積装置を充電することが含まれる。本明細書において使用されるように、「resistive load(抵抗性負荷)」という用語は、電力消費回路または電力蓄積回路、電力消費装置または電力蓄積装置、電力消費機器または電力蓄積機器、あるいは電力消費システムまたは電力蓄積システムを指す。
【0007】
別の種類の感光性光電子デバイスは、光伝導セルである。光伝導セルの機能は、信号検出回路が当該デバイスの抵抗をモニタリングして、光の吸収に起因する変化を検出することである。
【0008】
別の種類の感光性光電子デバイスは、光検出器である。動作状態では、光検出器は、電流検出回路に接続して使用され、この電流検出回路は、光検出器が電磁波に曝され、かつ、光検出器にバイアス電圧が印加されているときに発生する電流を測定する。本明細書において記載される検出回路は、バイアス電圧を光検出器に印加して、電磁波に対する当該光検出器の電子応答を測定することができる。
【0009】
これらの3種類の感光性光電子デバイスは、以下に定義される整流接合が形成されるかどうかに応じて、更には当該デバイスが、バイアスまたはバイアス電圧としても知られる外部印加電圧で動作するかどうかに応じて特徴付けることができる。光伝導セルは、整流接合を有することがなく、通常、バイアスにおいて動作を行う。PVデバイスは、少なくとも1つの整流接合を有し、無バイアスにおいて動作を行う。光検出器は、少なくとも1つの整流接合を有し、通常、必ずではないが、バイアスにおいて動作を行う。原則として、光起電セルは、電力を回路、装置、または機器に供給するが、検出回路を制御するための、または当該検出回路からの情報の出力を制御するための信号または電流を供給しない。これとは異なり、光検出器または光伝導体は、検出回路を制御するための、または当該検出回路からの情報の出力を制御するための信号または電流を供給するが、電力を回路、装置、または機器に供給しない。
【0010】
従来から、感光性光電子デバイスは、いくつかの種類の無機半導体により形成されており、例えば結晶シリコン、多結晶シリコン、およびアモルファスシリコン、砒化ガリウム、テルル化カドミウム、および他の材料により形成されている。本明細書では、「semiconductor(半導体)」という用語は、電荷キャリア群が、熱的に励起されるかまたは電磁波で励起されることにより発生すると電流を流すことができる材料を指す。「photoconductive(光伝導性)」という用語は通常、電磁波エネルギーが吸収されることにより電荷キャリア群の励起エネルギーに変換されて、これらのキャリアで電荷輸送を材料内で行うことができる、すなわち電荷を材料内で輸送することができる過程を指す。「photoconductor(光伝導体)」および「photoconductive material(光伝導性材料)」という用語は本明細書では、電磁波を吸収して電荷キャリア群を発生させる材料特性に合わせて選択される半導体材料を指すために使用される。
【0011】
PVデバイスは、入射太陽光パワーを有用な電力に変換することができる変換効率により特徴付けることができる。結晶シリコンまたはアモルファスシリコンを利用するデバイスは、商業用のアプリケーションがほとんどを占め、そしていくつかのデバイスは、23%以上の変換効率を達成している。しかしながら、高い変換効率の結晶系デバイス、特に大きな表面積を持つ結晶系デバイスは、大きな結晶を、大幅に変換効率を低下させる欠陥を伴うことなく形成する際に特有の問題が生じるので生産するのが難しく、かつコストが高く付く。これとは異なり、高い変換効率のアモルファスシリコンデバイスは依然として、安定性に問題がある。現在市販されているアモルファスシリコンセルは、4〜8%の間の変換効率を有するように安定して製造することができている。最近、有機光起電セルを使用して、許容できる光電変換効率を低い製造コストで実現することに努力が注がれている。
【0012】
PVデバイスは、光電流および光起電力の最大の積として、標準照射条件下(すなわち、1000W/m、AM1.5スペクトル照射の標準試験条件)での最大電力生成で最適化されてもよい。このようなセルの標準照射条件下での電力変換効率は以下の3つのパラメーターに依存する:(1)ゼロバイアス下での電流(すなわち短絡回路電流ISC)、単位はアンペア、(2)開回路状態下での光起電力(すなわち開回路電圧VOC)、単位はボルト、および(3)曲線因子(FF)。
【0013】
PV素子には、これらのPV素子が負荷の両端に接続され、かつ光照射されると光発生電流が流れる。無限大の負荷が接続された状態で光照射される場合、PV素子は、当該PV素子の最大限の電圧、V開回路電圧、またはVOCを発生する。当該PV素子の電気接点群を短絡させた状態で光照射される場合、PV素子は、当該PV素子の最大限の電流、I短絡電流、またはISCを発生する。電力を発生するために実際に使用される場合、PV素子は、有限の負荷抵抗に接続され、そして電力出力は、電流と電圧との積I×Vで与えられる。PV素子から放電される合計最大電力量は本質的に、積ISC×VOCを上回ることはできない。負荷値が、取り出し電力量が最大となるように最適化される場合、電流および電圧は、値Imaxおよび値Vmaxをそれぞれ有する。
PVデバイスの性能指数は曲線因子(FF)であり、下記で定義される。
【0014】
【数1】
【0015】
ここで、ISCおよびVOCは実際の使用では同時には決して得られないので、FFは常に1未満である。それにも関わらず、FFが1に近づくにつれて、デバイスはより小さいタンデム抵抗または内部抵抗を有することになり、その結果、最適条件下で、負荷にISCとVOCとの積のより大きなパーセンテージを与える。Pincがデバイスの入射電力であるとき、デバイスの電力効率ηは以下の式により計算することができる。
【0016】
【数2】
【0017】
半導体の相当の体積を占める内部生成電場を発生させるための通常の方法は、適切に選択された伝導性(特に分子量子エネルギー状態の分布に関して)を有する材料の2つの層(ドナーもしくはアクセプター)を並べることである。これら2つの材料の界面は光起電性接合と呼ばれる。従来の半導体理論では、PV接合を形成するための材料は、n型またはp型になるように作製されうる。ここでn型は多数キャリアの型が電子であることを表す。これは相対的に自由なエネルギー状態にある多数の電子を有する材料として見なされうる。ここでp型は多数キャリアの型がホールであることを表す。このような材料は相対的に自由なエネルギー状態にある多数のホールを有する。バックグラウンドの型では、多数キャリア濃度は主に、意図的ではない欠陥または不純物によるドーピングに依存する。不純物の型および濃度が、伝導帯の最低エネルギーと価電子帯の最高エネルギーとの間のギャップ内にある、フェルミエネルギー(またはフェルミ準位)の値を決定する。フェルミエネルギーは、占有確率が1/2と等しくなるエネルギーの値で表される、分子量子エネルギー状態の統計的な占有を特徴づける。伝導帯の最低エネルギーに近いフェルミエネルギーは、電子が主要なキャリアであることを示す。価電子帯の最高エネルギーに近いフェルミエネルギーは、ホールが主要キャリアであることを示す。したがって、フェルミエネルギーは従来の半導体特性を主に特徴づけており、原型的なPV接合は従来のp−n界面であった。
【0018】
用語「整流」は、特に、界面が非対称な伝導特性を有する、すなわち、界面が、好ましくは一方向の電荷の輸送を支持することを示す。整流は、通常は、適当に選択された材料間の接合で生じるビルトイン電場に関連する。
【0019】
本明細書に使用される場合、および当業者に一般的に理解されるように、第1エネルギー準位が真空エネルギー準位に近い場合、第1「最高被占軌道」(HOMO)または「最低空軌道」(LUMO)エネルギー準位は、第2HOMOまたはLUMOエネルギー準位「より大きい」または「より高い」。イオン化ポテンシャル(IP)が真空準位と比較して負のエネルギーとして測定されるので、より高いHOMOエネルギー準位はより小さい絶対値(より負であるIP)を有しているIPに対応している。同様に、より高いLUMOエネルギー準位はより小さい絶対値(より負であるEA)を有している電子親和力(EA)に対応している。従来のエネルギー準位図(最上位に真空準位がある)において物質のLUMOエネルギー準位は同じ物質のHOMOエネルギー準位より高い。「より高い」HOMOまたはLUMOエネルギー準位は、「より低い」HOMOまたはLUMOエネルギー準位より、そのような図の最上位に近いところにある。
【0020】
有機半導体の重要な特性はキャリア移動度である。移動度とは、電界の印加に対応して、電荷キャリアが導電性材料中を移動することができる容易さの度合いを表わす。有機感光性デバイスについて記述すると、電子移動度が高いために電子を優先的に輸送する材料を含む層は、電子輸送層(electron transport layer)またはETLと表記することができる。正孔移動度が高いために正孔を優先的に輸送する材料を含む層は、正孔輸送層(hole transport layer)またはHTLと表記することができる。いくつかの場合では、アクセプター材料はETLとすることができ、ドナー材料はHTLとすることができる。
【0021】
従来の無機半導体PVセルは、p−n接合を用いて内部電界を形成することができる。しかしながらここで、p−n型接合を形成する他に、ヘテロ接合のエネルギー準位のずれが、重要な役割を果たしていることも認識されたい。
【0022】
有機ドナー/アクセプター(D/A)ヘテロ接合のエネルギー準位のずれは、有機材料における光励起が基本的な性質であることから、有機PV素子の動作にとって重要であると考えられる。有機材料が光励起されると、フレンケル励起子または電荷移動励起子が局所的に誘起される。電流検出または電流生成が行われるためには、結合励起子群を解離して、これらの励起子を構成する電子群および正孔群とする必要がある。このような過程は、内蔵電界によって引き起こすことができるが、有機素子に通常現われる電界(F≒10V/cm)における効率は低い。有機材料内の最も高い効率の励起子の解離は、D/A界面で行われる。このような界面では、イオン化電位が低いドナー材料は、電子親和性が高いアクセプター材料とヘテロ接合を形成する。ドナー材料およびアクセプター材料のエネルギー準位の配置によって異なるが、励起子の解離は、このような界面においてエネルギー的に優先的に行われるようになり、電子ポーラロンがアクセプター材料内を自由に運動することができ、かつ正孔ポーラロンがドナー材料内を自由に運動することができるようになる。
【0023】
キャリア生成には、励起子の生成、拡散、およびイオン化または収集が必要とされる。これらの過程の各過程に関連する効率ηが存在する。添字は、以下の通り:電力変換効率P、外部量子効率EXT,光子吸収効率A、拡散係数ED、収集効率CC、および内部量子効率INTを使用することができる。この表記を使用して、
η〜ηEXT=ηηEDηCC
ηEXT=ηηINT
が得られる。
【0024】
励起子の拡散距離(L)は通常、光吸収長(約500Å)よりもずっと短い(L≒50Å)ため、厚いため抵抗のある複数界面または高密度で折り返した界面を有するセルを使用すること、もしくは光吸収効率が低い薄膜セルを使用することについてトレードオフを必要とする。
【0025】
バッファ層は、キャリア抽出を向上させることができるので、有機光起電(OPV)セルに重要である。バッファ層の一部は、有機活性層を保護し、励起子をブロックすることができる。バッファ層のいくつかは、しかし、また、励起子を消光させことができ、したがって、OPVセルの効率を低下させる。その結果、デバイス内の光パワー分布を最適化し、バッファ層と光活性層の間に励起子消光界面における吸収を低減することが重要である。
【発明の概要】
【0026】
したがって、本明細書に開示された光活性層は、混合光活性層の上に光活性層を含む新規のハイブリッド平面混合装置であり、前記光活性層が励起子を生成する光学スペーサである。このような光学スペーサは、デバイス内部の光パワーを再分配し、いくつかの実施形態において著しくデバイスの性能を向上させることができる。
【0027】
本明細書にさらに開示されたのは、
重なり関係にある二つの電極と、
前記二つの電極の間に配置された混合光活性層と、
前記混合光活性層と隣接し、かつ接触している光活性層と、
前記混合光活性層と隣接し、かつ接触しているバッファ層と、を含み、
前記混合光活性層は、最高被占軌道(HOMO)エネルギーを持つ少なくとも一種のドナー材料、および最低空軌道(LUMO)エネルギーを持つ少なくとも一種のアクセプター材料を含み、前記少なくとも一種のドナー材料および前記少なくとも一種のアクセプター材料は混合ドナー−アクセプターヘテロ接合を形成し、
前記光活性層は、前記少なくとも一種のアクセプター材料のLUMOエネルギーとの差が0.3eV以内であるLUMOエネルギーを持つ材料、または前記少なくとも一種のドナー材料のHOMOエネルギーとの差が0.3eV以内であるHOMOエネルギーを持つ材料を含む、
有機感光性光電子デバイスである。
【0028】
本明細書にさらに開示されたのは、重なり関係にある二つの電極と、前記二つの電極の間に配置された混合光活性層と、前記混合光活性層と隣接し、かつ接触している光活性層と、前記混合光活性層は、最高被占軌道(HOMO)エネルギーを持つ少なくとも一種のドナー材料、および最低空軌道(LUMO)エネルギーを持つ少なくとも一種のアクセプター材料を含み、前記少なくとも一種のドナー材料および前記少なくとも一種のアクセプター材料は混合ドナー−アクセプターヘテロ接合を形成し、前記光活性層は、前記少なくとも一種のアクセプター材料のLUMOエネルギーとの差が0.3eV以内であるLUMOエネルギーを持つ材料、または前記少なくとも一種のドナー材料のHOMOエネルギーとの差が0.3eV以内であるHOMOエネルギーを持つ材料を含み、前記混合光活性層は、前記少なくとも一種のドナー材料および前記少なくとも一種のアクセプター材料をドナー:アクセプター比が1:1〜1:50となる範囲で含む、有機感光性光電子デバイスである。
【0029】
本明細書にさらに開示されたのは、重なり関係にある二つの電極と、前記二つの電極の間に配置された混合光活性層と、前記混合光活性層と隣接し、かつ接触している光活性層と、前記混合光活性層は、最高被占軌道(HOMO)エネルギーを持つ少なくとも一種のドナー材料、および最低空軌道(LUMO)エネルギーを持つ少なくとも一種のアクセプター材料を含み、前記少なくとも一種のドナー材料および前記少なくとも一種のアクセプター材料は混合ドナー−アクセプターヘテロ接合を形成し、前記光活性層は、前記少なくとも一種のアクセプター材料のLUMOエネルギーとの差が0.3eV以内であるLUMOエネルギーを持つ材料、または前記少なくとも一種のドナー材料のHOMOエネルギーとの差が0.3eV以内であるHOMOエネルギーを持つ材料を含み、前記光活性層の膜厚が25nm未満である、有機感光性光電子デバイスである。
【0030】
添付の図面は、本明細書に組み込まれてその一部を構成している。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本開示による典型的なデバイスの概略図である。
図2図2は、DBP、C70及び1:8 DBP:C70混合物の吸収スペクトルの図である。挿入図:DBP(左)、C70(右)の分子構造式。
図3図3(a)は、MoO、励起子ブロック(BPhen)および消光(C60、NPD)層と伴うDBPおよびC70膜のフォトルミネッセンス(PL)励起スペクトルを示す図である。図3(b)は波長λ=500nmで混合HJセルとPM−HJセルの吸収光パワーの空間分布を示す図である。
図4図4(a)は外部量子効率(EQE)を示す図である。図4(b)は、C70:DBP(L:X)の間の比の関数として、1sun、AM1.5G模擬照明下で電圧(JV)特性対電流密度を示す図である。
図5図5は、均整C70キャップ層の厚さ(X)の関数として、1sun、AM1.5G模擬照明下でスペクトル補正後の電流密度対電圧(J−V)特性を示す図である。
図6図6は、混合HJとPM−HJ OPVセルの吸収効率(破線)、外部量子効率(三角)、および内部量子効率((IQE)、四角)スペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
発明の詳細な説明
本願で使用される「有機」の用語は、有機感光性デバイスを作製するために使用されてもよいポリマー材料および低分子有機材料を含む。「低分子」はポリマーでない任意の有機材料を意味し、「低分子」は実際にはかなり大きくてもよい。低分子は、状況次第で繰り返し単位を含んでもよい。たとえば、長鎖アルキル基を置換基として使用しても、分子は「低分子」の分類から除外されない。低分子はまた、たとえばポリマー骨格上のペンダント基として、または当該骨格の一部として、ポリマーに組み込まれてもよい。
【0033】
「電極」および「接点」の用語は、本願では、外部の回路に対して光発生電流を送り出すための、またはデバイスに対してバイアス電流または電圧を供給するための、媒体を供給する層を示すために使用される。つまり、電極または接点は、有機感光性光電子デバイスの活性領域と、外部回路に対してまたは外部回路から、電荷キャリアを輸送するための金属線、リード線、配線または他の手段との間に、接合部分を供給する。アノードおよびカソードが例である。参照により本願に組み込まれる米国特許第6,352,777は、電極を開示し、感光性光電子デバイスにおいて使用されてもよい電極または接点の例を提供する。感光性光電子デバイスでは、外部の装置からの周囲の電磁放射の最大量が、光伝導的に活性である内部領域に受け入れられることが望ましい。つまり、電磁放射は、光伝導性の吸収によってそれが電気に変換されうる場所である、光伝導層に到達しなければならない。これは、電気接点の少なくとも一つが、入力する電磁放射を最小限に吸収し、最小限に反射しているべきであることをしばしば要求する。場合によっては、そのような接点は、透明または少なくとも半透明であるべきである。電極は、関連する波長における周囲の電磁放射の少なくとも50%がそれを通して透過されうる場合、「透明」であると言われる。電極は、関連する波長における周囲の電磁放射の幾分かであるが、50%未満を透過させうる場合、「半透明」であると言われる。反射電極は、吸収されることなくセルを通過していた光が、セルを通して逆側に反射されるような、反射性の材料でありうる。
【0034】
本願で使用され、説明される「層」は、主な次元がX−Yである(すなわち、自身の長さおよび幅に沿う)感光性デバイスの要素または構成要素を意味する。層の用語は、単層または材料のシートに必ずしも限定されないことを理解されたい。さらに、他の材料または層と、そのような層との接合面を含む、ある層の表面は、不完全であってもよく、ここで、当該表面は、他の材料または層と浸透したり、混在されたり、入り組んだりするネットワークを示すことを理解されたい。同様に、X−Y次元に沿う当該層の連続は、他の層または材料によって妨げられたり、あるいは干渉されたりしてもよいように、層が不連続であってもよいこともまた理解されたい。
【0035】
本願で使用される「光活性領域」は、励起子を発生させるために電磁放射を吸収するデバイスの領域を意味する。同様に、層が励起子を発生させるために電磁放射を吸収する場合、層は「光活性」である。励起子は、電流を発生させるために電子および正孔に解離しうる。
【0036】
本開示の有機材料において、「ドナー」および「アクセプター」の用語は、接合しているが異なる二つの有機材料の、HOMOおよびLUMOエネルギー準位の相対的な位置を意味する。他と接する一つの材料のLUMOエネルギー準位がより低い場合、その材料はアクセプターである。そうでない場合、それはドナーである。外部のバイアスがない場合、ドナー−アクセプター接合における電子がアクセプター材料に移動すること、および正孔がドナー材料に移動することは、エネルギー的に起こりやすい。
【0037】
本開示のある実施形態では、有機感光性光電子デバイスに関し、重なり関係にある二つの電極と、
前記二つの電極の間に配置された混合光活性層と、
前記混合光活性層と隣接し、かつ接触している光活性層と、
前記混合光活性層と隣接し、かつ接触しているバッファ層とを含み、前記混合光活性層は、最高被占軌道(HOMO)エネルギーを持つ少なくとも一種のドナー材料、および最低空軌道(LUMO)エネルギーを持つ少なくとも一種のアクセプター材料を含み、前記少なくとも一種のドナー材料および前記少なくとも一種のアクセプター材料は混合ドナー−アクセプターヘテロ接合を形成し、前記光活性層は、前記少なくとも一種のアクセプター材料のLUMOエネルギーとの差が0.3eV以内であるLUMOエネルギーを持つ材料、または前記少なくとも一種のドナー材料のHOMOエネルギーとの差が0.3eV以内であるHOMOエネルギーを持つ材料を含む、有機感光性光電子デバイスである。
【0038】
本開示による非限定的なデバイスの概略図を図1に示す。いくつかの実施形態では、デバイスは、バッファ層を含まない。このような実施形態では、混合光活性層は、電極に隣接し、電極に面していてもよい。
【0039】
本開示の電極の一方はアノードであってもよく、他方の電極はカソードであってもよい。電極が、所望のキャリア(正孔または電子)を受け取り、輸送するために最適化されるべきであることを理解されたい。「カソード」の用語は、周囲の照射下で、抵抗負荷に外部の印加電圧なく接続される非積層のPVデバイスまたは積層のPVデバイスの単一ユニット(たとえばPVデバイス)において、電子が光伝導性材料からカソードに移動するというように本願では使用される。同様に、「アノード」の用語は、照射下のPVデバイスにおいて、正孔が光伝導性材料からアノードに移動するというように本願では使用され、電子は逆に移動することに相当する。
【0040】
本開示の混合光活性層は、少なくとも一つのドナー材料および少なくとも一つのアクセプター材料を含む。適切なドナー材料の例は、銅フタロシアニン(CuPc)、クロロアルミニウムフタロシアニン(ClAlPc)、スズフタロシアニン(SnPc)、亜鉛フタロシアニン(ZnPc)および他の修飾されたフタロシアニンなどのフタロシアニン、ホウ素サブフタロシアニン(SubPc)などのサブフタロシアニン、ナフタロシアニン、メロシアニン色素、ホウ素ジピロメテン(BODIPY)色素、ポリ(3−ヘキシルチオフェン)(P3HT)などのチオフェン、低バンドギャップポリマー、ペンタセンおよびテトラセンなどのポリアセン、ジインデノペリレン(DIP)、スクアライン(SQ)色素、ならびにテトラフェニルジベンゾペリフランテン(DBP)を含むが、これらに限定されない。他の有機ドナー材料は、本開示において考慮される。
【0041】
スクアラインのドナー材料の例は、2,4−ビス[4−(N,N−ジプロピルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル]スクアライン、2,4−ビス[4−(N,N−ジイソブチルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル]スクアライン、2,4−ビス[4−(N,N−ジフェニルアミノ)−2,6−ジヒドロキシフェニル]スクアライン(DPSQ)およびそれらの塩を含むが、これらに限定されない。適切なスクアライン材料のさらなる例は、参照により本願に組み込まれる米国特許公開第2012/0248419において開示されている。
【0042】
本開示における適切なアクセプター材料の例は、ポリマーまたは非ポリマーペリレン、ポリマーまたは非ポリマーナフタレン、ならびにポリマーまたは非ポリマーフラーレンおよびフラーレン誘導体(たとえばPCBM、ICBA、ICMAなど)を含むが、これらに限定されない。C60、C70、C76、C82、C84またはそれらの誘導体、たとえばフェニル−C61−酪酸−メチルエステル([60]PCBM)、フェニル−C71−酪酸−メチルエステル([70]PCBM)もしくはチエニル−C61−酪酸−メチルエステル([60]ThCBM)、ならびに3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸−ビス ベンズイミダゾール(PTCBI)、ヘキサデカフルオロフタロシアニン(F16CuPc)およびそれらの誘導体などの他のアクセプターから選択されたものに限定されない。他の有機アクセプター材料は、本開示において考慮される。
【0043】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのドナー材料は、少なくとも一つのアクセプター材料よりも少ない量で、混合光活性層に存在する。ある実施形態において、混合光活性層は、少なくとも一つのドナー材料および少なくとも一つのアクセプター材料を、ドナー:アクセプター比が、たとえば1:2〜1:50、1:3〜1:35、1:4〜1:25、1:4〜1:20、1:4〜1:16、1:5〜1:15、または1:6〜1:10など、1:1〜1:50となる範囲で含む。いくつかの実施形態において、少なくとも一つのアクセプター材料は、少なくとも一つのドナー材料よりも少ない量で、混合光活性層に存在する。ある実施形態において、混合光活性層は、少なくとも一つのアクセプター材料および少なくとも一つのドナー材料を、ドナー:アクセプター比が1:8で含む。
【0044】
いくつかの実施形態において、少なくとも一つのアクセプター材料は、少なくとも一つのドナー材料よりも少ない量で、混合光活性層に存在する。ある実施形態において、混合光活性層は、少なくとも一つのアクセプター材料および少なくとも一つのドナー材料を、アクセプター:ドナー比が、たとえば1:2〜1:50、1:3〜1:35、1:4〜1:25、1:4〜1:20、1:4〜1:16、1:5〜1:15または1:6〜1:10など、1:1〜1:50となる範囲で含む。
【0045】
図1に示すように、光活性層は、混合光活性層に隣接し、混合光活性層に面する。光活性層は、前記少なくとも一種のアクセプター材料のLUMOエネルギーとの差が0.3eV以内、0.2eV以内、0.1eV以内、または0.05eV以内であるLUMOエネルギーを持つ材料、または前記少なくとも一種のドナー材料のHOMOエネルギーとの差が0.3eV以内、0.2eV以内、0.1eV、または0.05eV以内であるHOMOエネルギーを持つ材料を含んでもよい。いくつかの実施形態では、光活性層を構成する材料の少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%は、前記少なくとも一種のアクセプター材料のLUMOエネルギーとの差が0.3eV以内、0.2eV以内、0.1eV以内、または0.05eV以内であるLUMOエネルギーを持ち、もしくは前記少なくとも一種のドナー材料のHOMOエネルギーとの差が0.3eV以内、0.2eV以内、0.1eV、または0.05eV以内であるHOMOエネルギーを持つ材料である。ある実施形態では、前記少なくとも一種のアクセプター材料のLUMOエネルギーとの差が0.3eV以内、0.2eV以内、0.1eV以内、または0.05eV以内であるLUMOエネルギーを持つ材料は、前記少なくとも一種のアクセプター材料と同じ材料である。ある実施形態では、前記少なくとも一種のドナー材料のHOMOエネルギーとの差が0.3eV以内、0.2eV以内、0.1eV、または0.05eV以内であるHOMOエネルギーをもつ材料は、前記少なくとも一種のドナー材料と同じ材料である。いくつかの実施形態において、前記光活性層の膜厚が50nm未満、40nm未満、30nm未満、25nm未満、20nm未満、15nm未満、10nm未満、8nm未満、5nm未満、3nm未満、または1nm未満である。
【0046】
本発明の光活性層は、積層体の改善された光学位置に混合光活性層を配置する場合、励起子を生成することができる。すなわち、それは光学スペーサとして機能することができる。このような光学スペーサは、デバイス内部の光強度を再配分することができ、いくつかの実施形態ではデバイスの性能を大きく向上させることができる。例えば、実施形態では励起子が混合光活性層とバッファ層との界面で解離せずに消光する場合に、光活性層は、消光界面から離れて光強度を再配分することができ、大部分の励起子を、混合光活性層で解離させることができる。
【0047】
バッファ層は、当技術分野で既知の材料を含んでもよい。電極に所望のキャリアの輸送を阻害しないようにバッファ層を選択してもよい。いくつかの実施形態では、バッファ層は、電子または正孔輸送材料である。いくつかの実施形態では、バッファ層は、励起子阻止電子または励起子ブロッキング正孔輸送材料である。いくつかの実施形態では、バッファ層は、有機材料である。いくつかの実施形態では、バッファ層は、金属酸化物である。いくつかの実施形態では、バッファ層は、導電性ポリマーである。緩衝材の例としては、これらに限定されないが、MoO、V、WO、CrO、Co、NiO、ZnO、TiO、ポリアニリン(PANI)、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)、ポリ(スチレンスルホンサン)(PEDOT−PSS)がある。いくつかの実施形態では、バッファ層は、自己組織化単分子膜である。
【0048】
いくつかの実施形態では、バッファ層は、混合光活性層との界面で励起子を消光させる。
【0049】
また、本明細書に開示されたのは、重なり関係にある二つの電極と、前記二つの電極の間に配置された混合光活性層と、前記混合光活性層と隣接し、かつ接触している光活性層と、を含み、前記混合光活性層は、最高被占軌道(HOMO)エネルギーを持つ少なくとも一種のドナー材料、および最低空軌道(LUMO)エネルギーを持つ少なくとも一種のアクセプター材料を含み、前記少なくとも一種のドナー材料および前記少なくとも一種のアクセプター材料は混合ドナー−アクセプターヘテロ接合を形成し、前記光活性層は、前記少なくとも一種のアクセプター材料のLUMOエネルギーとの差が0.3eV以内であるLUMOエネルギーを持つ材料、または前記少なくとも一種のドナー材料のHOMOエネルギーとの差が0.3eV以内であるHOMOエネルギーを持つ材料を含む、前記混合光活性層は、前記少なくとも一種のドナー材料および前記少なくとも一種のアクセプター材料をドナー:アクセプター比が、たとえば1:2〜1:50、1:3〜1:35、1:4〜1:25、1:4〜1:20、1:4〜1:16、1:5〜1:15、または1:6〜1:10など、1:1〜1:50となる範囲で含む、有機感光性光電子デバイスである。
【0050】
また、本明細書によれば、重なり関係にある二つの電極と、前記二つの電極の間に配置された混合光活性層と、前記混合光活性層と隣接し、かつ接触している光活性層と、を含み、前記混合光活性層は、最高被占軌道(HOMO)エネルギーを持つ少なくとも一種のドナー材料、および最低空軌道(LUMO)エネルギーを持つ少なくとも一種のアクセプター材料を含み、前記少なくとも一種のドナー材料および前記少なくとも一種のアクセプター材料は混合ドナー−アクセプターヘテロ接合を形成し、前記光活性層は、前記少なくとも一種のアクセプター材料のLUMOエネルギーとの差が0.3eV以内であるLUMOエネルギーを持つ材料、または前記少なくとも一種のドナー材料のHOMOエネルギーとの差が0.3eV以内であるHOMOエネルギーを持つ材料を含む、前記光活性層の膜厚が50nm未満、40nm未満、30nm未満、25nm未満、20nm未満、15nm未満、10nm未満、8nm未満、5nm未満、3nm未満、または1nm未満である、有機感光性光電子デバイスも開示される。いくつかの実施形態では、デバイスは、混合光活性層と隣接し、混合光活性層に面するバッファ層を任意に含む。
【0051】
図1に示すように、本開示のいくつかの実施形態では、光活性層は、水平面で混合光活性層と隣接し、混合光活性層に面する。いくつかの実施形態では、バッファ層は、反対側水平面で混合光活性層と隣接し、混合光活性層に面する。
【0052】
本開示の有機感光性光電子デバイスは、このようなデバイスに関する技術分野において周知であるような、追加の層をさらに含んでもよい。たとえば、デバイスは、電荷キャリア輸送層、および/または励起子阻止層(EBL)のような一つ以上の阻止層などのバッファ層をさらに含んでもよい。いくつかの実施形態では、一つ以上のブロック層は、電極と光活性層の間に配置されている。いくつかの実施形態では、一つ以上のブロック層は、電極と混合層との間に、または特定の実施形態では電極とバッファ層との間に配置されている。励起子ブロック層として使用できる材料については、非限定的な挙げると、バソクプロイン(BCP)、バソフェナントロリン(BPhen)、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(NTCDA)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボンビスベンズイミダゾール(PTCBI)、1,3,5−トリス(N−フェニルベンズイミダゾール−2−イル)ベンゼン(TPBI)、トリス(アセチルアセトナト)ルテニウム(III)(Ru(acac))、及びアルミニウム(III)フェノラート(Alq2 OPH)、N,N’−ジフェニル−N,N’−ビス−アルファ−ナフチルベンジジン(NPD)、アルミニウムトリス(8−ヒドロキシキノリン)(Alq3)、およびカルバゾールビフェニル(CBP)から選択されてもよい。ブロック層の例は、参照により本願に組み込まれる米国特許公開第2012/0235125号および第2011/0012091号、ならびに米国特許第7,230,269号および第6,451,415号において開示されている。
【0053】
さらに、デバイスは、少なくとも1つの平滑化層を含んでもよい。平滑化層は、例えば光活性領域と、電極の一方または両方との間に、配置されてもよい。3,4ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホンネート(PEDOT:PSS)を含むフィルムは、平滑化層の一例である。
【0054】
本発明の有機感光性光電子デバイスは、二つ以上のサブセルを含むタンデムデバイスとして存在してもよい。本明細書において使用されるサブセル(Subcell)とは、少なくとも1つのドナー−アクセプターヘテロ接合を備える光活性のデバイスの構成要素を指している。サブセルが光活性光電子デバイスとして個別に使用される際、それは、一般に電極一式を含む。タンデムのデバイスは、タンデムのドナー−アクセプターヘテロ接合間に、電荷輸送材料、電極、または電荷再結合材料もしくはトンネル接合を含んでもよい。いくつかのタンデムの構造において、隣接するサブセルは、共有物(すなわち共有された電極、電荷輸送領域または電荷再結合領域)を使用できる。他の場合において、隣接するサブセルは、共有の電極または電荷輸送領域を共有しない。サブセルは、並列またはタンデムに、電気的に接続されてもよい。
【0055】
いくつかの実施形態において、電荷輸送層または電荷再結合層は、Al、Ag、Au、MoO、Li、LiF、Sn、Ti、WO、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化スズ(TO)、ガリウムインジウムスズ酸化物(GITO)、酸化亜鉛(ZO)または亜鉛インジウムスズ酸化物(ZITO)から選択されてもよい。他の実施形態において、電荷輸送層または電荷再結合層は、金属ナノクラスター、ナノ粒子またはナノロッドから構成されてもよい。
【0056】
本開示のデバイスは、光検出器、光伝導体、または太陽電池などの光起電デバイスであってもよい。
【0057】
層および材料は、当技術分野で公知の技術を用いて堆積されてもよい。例えば、本明細書に記載の層及び材料は、溶液、蒸気、または両方の組み合わせから堆積することができる。いくつかの実施形態では、有機材料または有機層は、溶液処理によって、例えばスピンコーティング、スピンキャスティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、ドクターブレード、インクジェット印刷、転写印刷から選択される1つ以上の技術によって堆積、または同時堆積することができる。
【0058】
他の実施形態では、有機材料は、真空蒸着によって、例えば真空熱蒸着、有機気相堆積、あるいは有機蒸気ジェット印刷によって堆積、または同時堆積することができる。
【0059】
本明細書に記載の実施形態は、様々な構造に関連して使用されてもよいと理解されるべきである。機能性有機光起電デバイスは、様々な方法で記載された様々な層を組み合わせることによって得られる。または層は、設計、性能、およびコスト要因に基づいて、完全に省略してもよい。具体的に記載されていない追加の層が含まれていてもよい。具体的に説明したもの以外の材料を使用してもよい。本明細書において様々な層に与えられた名称は、厳密に限定することを意図するものではない。
【0060】
実施例以外、あるいは特に指定された箇所を除いて、本明細書および特許請求の範囲において使用される、成分の量、反応条件、分析の測定結果などを示す全ての数字は、全ての場合において、「約」の用語によって修飾されるものとして理解されたい。したがって、反対に指定されない限り、本明細書および添付された特許請求の範囲において説明される数値パラメーターは、本開示によって取得しようとする所望の特性に応じて、変更してもよい概算値である。少なくとも、特許請求の範囲に対する均等論の適用を制限するための試みとしてではなく、各数値パラメーターは、有効数字および通常の丸め技法による近似の数字を考慮して解釈されたい。
【0061】
本開示の広い範囲を説明する数値的な範囲およびバラメーターは、概算値であるが、特に指定されない限り、具体的な実施例において説明される数値は、可能な限り正確に記録されている。しかしながら、任意の数値は本質的に、それらのそれぞれの試験の測定結果において見られる標準的な誤差から必然的に生じる一定の誤差を含む。
【0062】
本願で記載されるデバイスおよび方法は、単なる例示を目的とした、以下の限定的でない例によってさらに説明される。
【実施例】
【0063】
実施例1:DBPおよびC70膜のフォトルミネッセンス測定
励起子解離(よって、OPV効率)に対するMoOの影響を調べるために、石英上の8nm厚さのMoO層と接する厚さ60nmのDBP及びC70薄膜のフォトルミネッセンス(PL)励起スペクトルを測定した。比較のため、8nm厚さのバソフェナントロリン(BPhen)層を、DBPおよびC70の両方の励起子ブロック層として使用し、一方、C60及びN、N’−ジフェニル−N、N’−ビス(L−ナフチル)−1−1’ビフェニル−4,4’ジアミン(NPD)を、それぞれDBPとC70の励起子クエンチング層として使用した。DBPおよびC70フィルムのフォトルミネセンスの発光スペクトルは、ガラス基板を通して照射して測定し、それぞれ波長λ=530nm及び460nmにおいて励起された。
【0064】
これらの測定の結果を図3(a)に示す。MoO/DBPサンプルは消光C60/DBP界面を使用するフィルムと同等のPL強度を持っていた。同様に、MoO/C70界面は消光NPD/C70サンプルよりわずかに高いPL強度を示した。両方の場合において、それらのPL強度がブロックBPhen/C70及びBPhen/DBP界面を用いたものに比べて著しく減少した。これらの結果は、以前に予想されるようにMoOが、励起子のブロックではなく、消光することを示している。
【0065】
実施例2:OPVセルの作製
OPVセルは、ガラス基板上にプレコーティングされた15Ω/□ のシート抵抗を有する酸化インジウムスズ(ITO)の100nmの厚さの層の上に成長させた。堆積の前に、ITO表面を洗剤、脱イオン水および一連の有機溶媒で洗浄し、次いで10分間紫外線オゾンに曝露し、その後高真空チャンバ(基準圧<10−7Torr)にロードされた。
【0066】
MoO、C70及びBPhen層は0.5Å/sの速度で堆積し、DBP及びC70は共蒸着され、この際DBP堆積速度は0.2Å/sであり、C70の堆積速度は、所望の体積比を達成するように調整された。数々の直径1mmの円形開口部を有するシャドウマスクは、1000Åの厚さのAl陰極のパターニングに使用されて、これによりセル領域を画定した。
【0067】
基板は直接に超高純度Nを充填したグローブボックス内に移して、暗所でAM1.5G模擬太陽照明の下の電流密度−電圧(JV)、およびEQEを測定した。国立再生可能エネルギー研究所追跡可能なSi基準セルは、光パワーを測定するために使用した。EQEは、NREL追跡可能なSi検出器を参照し、Xeランプからの単色光を用いて測定されて200Hzで細断した。短絡電流Jsc1は、スペクトルの不一致を補正した。
【0068】
テトラフェニルジベンゾペリフラテン(DBP)は、ドナー物質として使用した。そしてC70は、アクセプター物質として使用した。DBPは、高い吸収係数(図2参照)、約10−4cm/(Vs)の高い正孔移動度、−5.5eVの最高被占分子軌道(HOMO)エネルギー、およびスペクトル分解ルミネセンス消光によって測定された16±1nmの励起子拡散距離を有する。C70は、λ=350nmから700nmの間に広い吸収スペクトルを有する。DBPとC70から得られたブレンドはλ=350nmから700nmの間に強く吸収できる。
【0069】
真空熱蒸発MoOは、その大きい仕事関数(陽極での正孔収集効率を向上させる)、高い透過率と低い直列抵抗のため、陽極バッファ層として用いた。
【0070】
PM−HJ構造内のC70のDBPは、太陽スペクトルにわたって1:8 DBP:C70混合物のEQEは最大化なるように(図4(a))、最適化された。図4(b)に示すようにDBP濃度の減少に伴って開回路電圧(VOC)が単調に増加して、これは、ポーラロン対再結合速度の低下が原因と思われた。フィルファクタは、DBP濃度の減少に伴って増加し1:8の比の時に最大値FF=56±0.01に到達し、その後、この不均一な部分的混合の領域でDBP濃度はさらに減少したため、ほとんど変わらなかった。これは、二分子再結合を低減できるため、混合光活性層領域で電子と正孔の移動度がバランスをとれたことが原因と考えられた。
【0071】
AM1.5G、1太陽強度模擬太陽光照度下で異なる厚さのC70キャップのセルのJV特性は、図5に示されており、デバイスの性能特性は、表Iに要約している。すべてのセルは、VOC=0.91±0.01Vであり、およびフィルファクタFF=0.56±0.01であった。混合HJ電池は、JSC=10.7±0.2mA/cmであり、PCE=5.7±0.1%の電力変換効率が結果として得られた。C70層(X=9nm)の添加は、JSCが12.3±0.3mA/cmまでの増加につながって、PCE=6.4±0.3%が結果として得られた。
【0072】
70の厚さは、x=9nmまで増加すると、混合HJ電池に比べてPM−HJセルのEQEはλ=400nmおよび700nmの間に10%まで増加(図6参照)した。これは、今度はJSCが15%増加した。xは11nmまでさらに増加したように、JSCは12.0±0.2mA/cmに減少した。厚さ9nmのC70層を有するPM−HJセルのEQEは、λ=450nm及び550nmの間に>70%であって、そして、スペクトルλ=350nmから650nmの範囲内で平均>65%であって、JSC=12.3±0.3mA/cmの結果になった。
【0073】
内部量子効率IQEは、光活性層に吸収された光子と電極で収集された自由キャリアの比として定義される。吸収効率ηを計算するため、さらにPM−HJ電池でEQEの改善の起源を理解するために変換マトリックス法が用いられた。図6に示すように、光学シミュレーションに基づき、混合HJとPM−HJセルは、λ=400nm及び650nmの範囲内でη>75%の似たような吸収スペクトルを示した。PM−HJセルは、λ=450nmから550nmのスペクトル範囲内IQE>90%であって、その際、混合HJセルのIQEは同じスペクトル領域に約80%のみであった(図6)。図3(b)に示すように、PM−HJセルにC70層の添加は、光活性層内の光場を再分配させて、MoO/有機界面での励起子生成増加と、細胞光活性領域における解離と、還元励起子消光の結果になった。
【0074】
【表1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6