【実施例】
【0010】
[実施例1の構成]
図1ないし
図7は、本発明を適用したバルブ装置(実施例1)を示したものである。
【0011】
本実施例のバルブ装置は、自動車に搭載されるボール型ロータリバルブ装置であり、ボールバルブ1にバルブシート2を弾性的に押し付けるスプリング3を備えている。このバルブ装置は、ボールバルブ1を回動操作することで、流体の一例であるエンジン冷却水(以下冷却水)の流量制御(流路の開閉および開度調整)、あるいは分配制御(流路切替)を行うものである。
【0012】
バルブ装置は、1つの冷却水入口(インレット)と、1つまたは複数(例えば2つや3つ等)の冷却水出口(アウトレット)を備えている。
なお、複数の冷却水出口を備える場合、各冷却水出口の基本構造は同じであり、以下では1つの冷却水出口に通じる開閉部を例に説明する。
バルブ装置は、ケーシング、多面の球面体形状のボールバルブ1、円環形状のバルブシート2、スプリング3および電動アクチュエータを備えている。
【0013】
ボールバルブ1は、その回転軸線(CL)方向に真っ直ぐに延びるシャフト(図示せず)を備えている。このボールバルブ1は、
図3に示したように、回転軸線(CL)を中心にして矢印Rで示す回転方向に往復移動(回動)するようになっている。
シャフトは、ボールバルブ1をそのCL方向に貫通するように設置されて、ボールバルブ1と一体回転可能に連結されている。このシャフトは、ケーシングのうちのハウジング4に対して相対回転可能に支持されている。
電動アクチュエータは、ボールバルブ1のシャフトをその回転方向に往復駆動(回動駆動)する動力を発生する電動モータを備えている。
【0014】
ケーシングは、ハウジング4、5、プレート6およびスリーブ7等によって構成されている。このケーシングは、ボールバルブ1を回転可能に収容するハウジング4と、このハウジング4のスリーブ規制部(後述する)に対して接触可能に対向し、且つバルブシート2と共にスプリング3の押し付け荷重方向へ移動可能なスリーブ7とによって構成されている。すなわち、ケーシングは、少なくともハウジング4、5およびスリーブ7を備えている。
【0015】
また、スリーブ7とハウジング5の間には、例えばリップシール等のシール部品8が配置されており、ハウジング4とハウジング5の間にも例えばOリング等のシール部材9が配置されている。
ケーシングの内部には、バルブシート2のシート開口12よりも冷却水の流れ方向の下流側に位置し、且つシート開口12を介して、ボールバルブ1のバルブ開口11と連通する冷却水流路13、14が形成されている。また、ケーシングの内部には、ボールバルブ1を回転可能に収容するバルブ収容室が設けられている。
【0016】
ボールバルブ1は、例えば合成樹脂(PPS等の熱可塑性樹脂)によって設けられるものであり、少なくともバルブシート2と接触する面が凸球面形状を呈する平滑なボール面21に設けられている。すなわち、ボールバルブ1は、シャフトを介して電動アクチュエータにより回動操作される。このボールバルブ1は、一例として略カップ形状を呈する。また、ボールバルブ1は、その回転軸線(CL)の周りを回動する(
図3参照)。
なお、冷却水の流れ方向は限定するものではないが、理解補助の一例としてインレットから供給された冷却水がカップ開口部からボールバルブ1の内側の冷却水流路10に供給される。そして、ボールバルブ1が開弁すると、冷却水流路10に供給された冷却水が、バルブ開口11と、シート開口12と、冷却水流路13、14を通ってアウトレットへ導かれる。
【0017】
ボールバルブ1は、所定の回転軸線(シャフトの中心軸線)CLを中心とする半径方向外側に凸となる凸球面形状を呈する複数(例えば2つや3つ等)のボール面21、22を有するものであり、電動アクチュエータによって回動操作される。
ボール面21は、バルブシート2のシール面(第2摺動面)31と摺動接触可能な第1摺動面である。このボール面21には、ボールバルブ1の円周方向に延びると共に、シート開口12と連通可能なバルブ開口11が形成されている。
ボール面22は、バルブシート2とは異なる他のバルブシート(図示せず)のシール面(第4摺動面)と摺動接触可能な第3摺動面である。このボール面22には、他のバルブシートの第4開口であるシート開口(図示せず)と連通可能なバルブ開口15が形成されている。
【0018】
バルブ開口11は、ボール面21で開口し、冷却水が通過可能な第1開口である。このバルブ開口11は、ボール面21の円周方向に延びる長孔形状を呈する。また、バルブ開口11には、その開口壁面同士を繋ぐ補強用のブリッジ16が設けられている。
バルブ開口15は、ボール面22で開口し、冷却水が通過可能な円孔形状の第3開口である。
また、ボールバルブ1のCL方向のバルブ開口11の開口周縁には、テーパ形状の面取り部54が設けられている。面取り部54は、バルブ開口11の開口面積をボールバルブ1の半径方向外側に向かって次第に漸増するように傾斜した傾斜面を有している。
【0019】
シャフトは、バルブ収容室の略中心部を通って配置される駆動軸であり、ハウジング4に対してベアリング等を介して回転自在に支持される。
このシャフトを駆動する電動アクチュエータは、周知な構成を採用するものであり、一例を開示すると、電力を回転トルクに変化させる電動モータと、この電動モータの回転出力を減速してシャフトの駆動トルクを増大させる減速機構(例えば歯車減速装置等)と、シャフトの回転角度(すなわち、ボールバルブ1の作動角)を検出する非接触型の回転角度センサとを組み合わせて構成される。
【0020】
バルブシート2は、その中心部を貫通し、冷却水が通過可能なシート開口12が形成されるリング円板である。
シート開口12は、バルブ開口11と連通可能な第2開口である。
バルブシート2は、閉弁時の密閉性や操作時の摺動性を高めるという目的や、製造コストを抑えるという目的から、バルブシート2が合成樹脂(PTFE等)によって設けられる。
バルブシート2には、ボール面21に対して摺動接触可能に対向し、スプリング3の弾性力によってボール面21に押し付けられる円環状の対向部が設けられている。この対向部の対向面には、シール面31が形成されている。
また、バルブシート2のうち、シール面31の反対側の面(
図1および
図2の図示上側の面)は、シート裏面である。
【0021】
バルブシート2は、ハウジング4に支持されるものであり、ハウジング4にはバルブシート2を支持するための支持手段が設けられる。
この支持手段は、スプリング3、ハウジング4、ハウジング5、プレート6およびスリーブ7等を用いて構成される。
スプリング3は、バルブシート2とハウジング5の間に配置される、例えば圧縮コイルスプリングであり、圧縮された状態で組み付けられている。このスプリング3は、一端がプレート6に保持され、他端がスリーブ7のシート保持部(後述する)に保持され、ボールバルブ1にバルブシート2を弾性的に押し付ける荷重方向の弾性力を発生する弾性部材である。また、スプリング3の弾性力は、バルブシート2をボールバルブ1に所定の押し付け荷重で押圧するように設定される。
【0022】
ハウジング4の上流端には、冷却水入口が設けられている。このハウジング4の下流端には、冷却水出口が設けられている。
ハウジング4には、ボールバルブ1をハウジング4内に組み入れる開口部と、ボールバルブ1を収容するバルブ収容室とが設けられる。
ハウジング4がエンジンに直接組み付けられる場合を説明する。ハウジング4は、エンジン(例えばシリンダヘッド等)に直接組み付けられるものであり、ハウジング4がエンジンに固定されることで、ハウジング4の開口部がエンジンの冷却水の出口に合致して、エンジンを通過して冷却水がハウジング4の開口部を介してハウジング4の内部のバルブ収容室(具体的には、ボールバルブ1の内側)へ供給される。
【0023】
一方、ハウジング4がエンジンから独立して搭載される場合、ハウジング4にはエンジンを通過した冷却水をバルブ収容室へ導くインレットパイプが設けられる。
また、ハウジング4には、バルブ装置で調量した冷却水を外部へ導くアウトレットパイプが固定される。そして、アウトレットパイプに接続される配管を介して、バルブ装置で調量された冷却水が、ラジエータやヒータコア等へ導かれる。
【0024】
ハウジング5は、ハウジング4の内側に固定された円環状のスペーサであり、ハウジング4と別体で構成されている。このハウジング5の内部には、冷却水流路14が形成されている。また、ハウジング5は、例えばバルブシート2を通過した冷却水を冷却水出口へ導くアウトレットパイプの一部であっても良いし、あるいはアウトレットパイプとは異なる部品(筒状体等)であっても良い。
ハウジング4、5、特にハウジング5の内周には、スリーブ7の被係止部(後述する)と接触してスリーブ7のバルブ側への移動を規制するスリーブ規制部(以下、内周突起と呼ぶ)51が設けられている。また、スリーブ7は、内周突起51に対して接触可能に対向し、且つ内周突起51に係止される被係止部(以下外周突起)42を備えている。
【0025】
プレート6は、リング円板形状を呈し、スプリング3とハウジング5との間に配置されている。このプレート6は、スプリング3の一端を保持する金属製のバネ座であり、ハウジング4、5と別体で構成されている。
スリーブ7は、内周突起51に対して接離可能に対向する外周突起42、およびバルブシート2を保持するシート保持部(リング板43、周壁44)を備えている。
外周突起42は、ボールバルブ1の閉弁時に、内周突起51との間に環状隙間Sを隔てて対向して配置されている。また、外周突起42は、ボールバルブ1の開弁時に、内周突起51と接触して係止される。
【0026】
スリーブ7は、一端側(ボールバルブ1に近い側)においてバルブシート2を支持し、他端側がハウジング5の内部に挿し入れられる円筒体である。このスリーブ7は、内側に冷却水流路13が形成されるものであり、シート開口12を通過した冷却水を冷却水流路14へ導く。
具体的には、スリーブ7は、耐腐食性に優れたステンレス等の金属材料によって設けられるものであり(限定するものではない)、筒状を呈するスリーブ7の一端には、バルブシート2を支持する手段として、バルブシート2の外周面を拘束する筒体と、シート裏面に圧接するリング板43とが一体となっている。
【0027】
本実施例のバルブ装置は、ボールバルブ1の閉弁時に、バルブシート2の両面(シール面側とシート裏面側)に冷却水の圧力(以下水圧)を意図的に導くように設けられている。
この技術的手段を以下において具体的に説明する。
シート裏面側には、インレットからバルブ装置の内部(すなわち、ハウジング4の内部)に流入する冷却水が導かれる背圧空間45が設けられる。
【0028】
具体的な背圧空間45は、スプリング3が配置されるスリーブ7の周囲の空間であり、更に詳しく説明すると、背圧空間45は、ハウジング4においてアウトレットに通じる流路壁、プレート6、スリーブ7、リング板43に囲まれる空間である。
この背圧空間45は、ハウジング4とリング板43との間に形成される隙間を介して、ハウジング4内においてボールバルブ1を収容する空間に連通する。ボールバルブ1を収容する空間は、インレットと常に連通する。このため、背圧空間45には、図中の破線矢印Wに示すように、インレットを介してエンジンから冷却水が導かれる。
【0029】
ここで、本実施例のバルブシート2には、シール面31およびシート接触面32とが設けられている。
シール面31は、ボールバルブ1が回動操作されると、ボール面21とシート開口12が重なり合う閉弁時、つまりボールバルブ1の閉弁時に、ボール面21と摺動接触する。 シート接触面32は、シール面31と異なる面に設けられている。このシート接触面32は、バルブ開口11とシート開口12が重なり合う開弁時、つまりボールバルブ1の開弁時に、バルブ開口11の開口内壁面17と摺動接触する。
【0030】
また、本実施例のバルブ装置は、スプリング3、ハウジング4、5およびスリーブ7を備えている。
ハウジング5は、スリーブ7の外周突起42と接触してスリーブ7のバルブ側への移動を規制する内周突起51を設けている。また、スリーブ7は、内周突起51に対して接触可能に対向し、且つ内周突起51に係止される外周突起42を設けている。
スリーブ7のシート保持部は、バルブシート2のシート裏面を固定(接合または接着)する円環状のリング板43、およびバルブシート2の外周面を固定(接合または接着または圧入またはカシメ固定)する円筒状の周壁44等により構成されている。すなわち、スリーブ7は、バルブシート2と一体移動可能に連結されている。
【0031】
スリーブ7は、ハウジング5の内周突起51に対して接触可能に対向し、且つバルブシート2と共にスプリング3の押し付け荷重方向へ移動可能な円筒体である。このスリーブ7の内側には、シート開口12と冷却水流路
14とを連通する冷却水流路
13が形成されている。
そして、ハウジング5の内周に内周突起51を設け、スリーブ7の外周に外周突起42を設けている。すなわち、スリーブ7の円筒部の外側に外周突起42の外周端面よりも半径方向内側に凹んだ外周凹部内に内周突起51が嵌まり込むような構造を備えている。
【0032】
また、ボールバルブ1の閉弁時には、ボール面21とシール面31が摺動接触しているため、スリーブ7がスプリング3の押し付け荷重方向の反対側に移動している。これにより、内周突起51の図示上端面と外周突起42の図示下端面との間に、スプリング3の押し付け荷重方向の隙間が設けられており、内周突起51と外周突起42は非接触となる。また、閉弁時には、スリーブ7がスプリング3の押し付け荷重方向に隙間分だけ自由に変位できる。
一方、ボールバルブ1の開弁時には、ボール面21とシール面31が非接触状態となり、若干バルブ開口11内にバルブシート2が入り込むため、スリーブ7がスプリング3の押し付け荷重方向に移動する。これにより、内周突起51の図示上端面と外周突起42の図示下端面との間の隙間がなくなり、内周突起51と外周突起42は接触する。したがって、バルブシート2は、スプリング3の押し付け荷重方向の位置が固定される。
【0033】
[実施例1の効果]
以上のように、本実施例のバルブ装置において、スプリング3の押し付け荷重によって、ボールバルブ1のボール面21およびバルブ開口11の開口内壁面17に押し付けられるバルブシート2にシール面31およびシート接触面32を備えている。
そして、ボールバルブ1の閉弁時には、スプリング3の押し付け荷重によって、バルブシート2がボールバルブ1に押し付けられることで、バルブシート2のシール面31とボール面21とが摺動接触する。すなわち、ボールバルブ1の閉弁時には、ボール面21とシール面31が接触状態となり、ボール面21とシール面31の間の隙間が液密的にシールされる。
【0034】
一方、ボールバルブ1の開弁時には、スプリング3の押し付け荷重によって、バルブシート2がボールバルブ1に押し付けられることで、内周突起51と外周突起42とが接触する。これにより、バルブシート2のシール面31がバルブ開口11の内部に入り込んだ状態で固定されるので、シート接触面32とバルブ開口11の開口内壁面17とが摺動接触する。すなわち、ボールバルブ1の開弁時には、シール面31とボール面21とは非接触状態となる。
【0035】
これによって、ボールバルブ1の閉弁時にボール面21と摺動接触するシール面31と、ボールバルブ1の開弁時にバルブ開口11の開口内壁面17と摺動接触するシート接触面32とを分離することで、バルブシート2のシール面31の摩耗を低減することができる。これにより、ボール面21とシール面31の間から冷却水が漏れ難くなり、ボールバルブ1の閉弁時における冷却水のシール性能を長期間に渡って確保することができる。したがって、バルブシート2のシール面31の耐摩耗性の向上と、冷却水の漏れ防止に対する信頼性の向上の両立が可能となる。
【0036】
また、ボールバルブ1の開弁時には、スプリング3の押し付け荷重によって、バルブシート2のシール面31がボールバルブ1に押し付けられた場合であっても、ボール面21とシール面31が非接触状態となり、シール面31の摩耗を低減できるので、ボール面21とシール面31の接触面積が増えることはない。
これによって、ボールバルブ1に対するシール面31の接触面圧が確保されることで、ボール面21とシール面31のシール部から冷却水が漏れ難くなり、ボールバルブ1の閉弁時における冷却水のシール性能を長期間に渡って確保することができる。したがって、バルブシート2の摩耗に関係なく、常時一定の接触面圧を均等に保持できるため、バルブシート2のシール面31の耐摩耗性の向上と、冷却水の漏れ防止に対する信頼性の向上の両立が可能となる。
【0037】
ここで、
図6は、縦軸にエンジンの内部水温TWの平均値[℃]を示し、横軸にエンジンを始動してからの経過時間Time[sec]を示している。なお、Gは、実施例1の冷却水の漏れ流量の変化を示し、Hは、従来例(実施例1のバルブ装置の無いシステム)の冷却水の漏れ流量の変化を示す。
また、
図7は、縦軸に燃費改善効果[%]を示し、横軸に冷却水の漏れ流量[L/min]を示している。
そして、本実施例のバルブ装置においては、ボールバルブ1の開弁時に、シート接触面32と開口内壁面17とを接触させ、ボール面21とシール面31を非接触化することで、シール面31の摩耗を抑制することができる。
【0038】
このようなバルブ装置をエンジン冷却水の流量制御に用いた場合、
図6および
図7に示したように、ボールバルブ1の閉弁時における冷却水の漏れ流量を、従来例がA(例えば25〜35[L/min])であったものが、実施例1が0[L/min]となり高いシール性能を長期間維持できるようになる。
すなわち、長期に渡ってシール性能を維持できれば、燃費改善効果:α%以上を達成することができ、信頼性の向上に繋がる。
なお、燃費改善効果:α%とは、エンジンの始動から暖機完了までの時間が、従来例の場合と比べて、ΔT秒間短くなると、燃費がα%向上することを言う。
【0039】
また、エンジンの暖機運転とは、エンジン始動直後にエンジン回転数やエンジン負荷を抑えた運転状態を一定時間維持して、エンジンの内部水温(TW)を適正な温度(例えば内部水温:TW=80[℃])まで上昇させることを言う。すなわち、エンジンの始動から暖機完了までとは、エンジンを始動してからエンジンの内部水温が適正な温度に上昇するまでの期間を言う。
【0040】
[実施例2の構成]
図8および
図9は、本発明を適用したバルブ装置(実施例2)を示したものである。ここで、実施例1と同じ符号は、同一の構成または機能を示すものであって、説明を省略する。
【0041】
本実施例のバルブ装置は、実施例1と同様に、多面の球面体形状のボールバルブ1、円環形状のバルブシート2、スプリング3およびケーシングを備えている。
ケーシングは、少なくともハウジング4、5および筒状のスリーブ7を備えている。
ボールバルブ1のボール面21には、バルブ開口11の回転方向に延びる一対の開口周縁に突条部52、53が一体で設けられている。これらの突条部52、53は、ボール面21のボール基準面23よりも半径方向外側に突出したバルブ凸部である。
【0042】
突条部52、53のCL方向のバルブ開口11の開口周縁には、テーパ形状の面取り部54が設けられている。また、突条部52、53のCL方向のバルブ開口11の反対側には、テーパ形状の面取り部55が設けられている。そして、面取り部54は、面取り部55よりも緩やかな傾斜面であり、バルブ開口11の開口面積をボールバルブ1の半径方向外側に向かって次第に漸増するように傾斜した傾斜面を有している。
突条部52、53の回転方向の両端部には、テーパ形状の面取り部56がそれぞれ設けられている。面取り部56は、ボール基準面23から各突条部52、53の頂き面に向かって上り勾配となるように傾斜した傾斜面を有している。
【0043】
そして、ボール面21には、ボールバルブ1の外周面(突条部52、53以外の凸球面)に沿ったボール基準面23が設けられている。また、バルブシート2には、ボールバルブ1の各突条部52、53の頂き面に沿ったボール接触面24が設けられている。
ボール基準面23には、ボールバルブ1の閉弁時にシール面31が摺動接触する。
ボール接触面24は、ボールバルブ1の回転軸線(CL)を中心とする半径方向外側に凸となる凸球面形状を呈し、ボール基準面23よりも半径方向外側に突出した位置に設けられている。このボール接触面24は、バルブ開口11の開口端面であり、ボール基準面23と比べてスプリング3の押し付け荷重方向の反対側に突出するように設けられている。
【0044】
バルブシート2には、ボールバルブ1の閉弁時に、スプリング3の弾性力によってボール面21に押し付けられて、ボール面21のボール基準面23に摺動接触する円環状のシール面31が形成されている。
このシール面31よりも半径方向外側には、ボールバルブ1の開弁時に、スプリング3の弾性力によってボールバルブ1に押し付けられて、ボール接触面24と摺動接触する円環状のシート接触面33が設けられている。このシート接触面33は、シール面31の周囲を周方向に取り囲むように設けられている。
【0045】
ここで、ボールバルブ1の閉弁時には、バルブシート2がスプリング3の押し付け荷重方向に移動することで、ボール基準面23とシール面31が摺動接触する。このとき、内周突起51の図示上端面と外周突起42の図示下端面との間の隙間が最も狭くなる。
また、閉弁時には、バルブシート2およびスリーブ7がスプリング3の押し付け荷重方向に所定の距離分だけ自由に変位できる。
また、閉弁時には、スプリング3の押し付け荷重によって、バルブシート2のシール面31がボールバルブ1に押し付けられることで、ボール基準面23とシール面31が接触状態となり、ボール面21とシール面31の間の隙間が液密的にシールされる。
【0046】
一方、ボールバルブ1の開弁動作時には、バルブシート2が、ボール基準面23から面取り部56を経てボール接触面24上に乗り上げるため、ボール接触面24とシート接触面33が摺動接触し、且つボール基準面23とシール面31が非接触状態となる。このとき、シール面31は、バルブ開口11の内壁面よりも内側に位置する。
また、ボール接触面24とシート接触面33が接触している。このため、バルブシート2の、スプリング3の押し付け荷重方向の位置が固定される。
【0047】
したがって、バルブシート2のシール面31の耐摩耗性を向上させるという目的で、ボールバルブ1の閉弁時にボール面21のボール基準面23と摺動接触するシール面31と、ボールバルブ1の開弁時にボール接触面24と摺動接触するシート接触面33とを分離することで、バルブシート2のシール面31の摩耗を低減することができる。
以上のように、本実施例のバルブ装置においては、実施例1と同様な効果を奏する。
【0048】
[実施例3の構成]
図10および
図11は、本発明を適用したボール型ロータリバルブ装置(実施例3)を示したものである。ここで、実施例1及び2と同じ符号は、同一の構成または機能を示すものであって、説明を省略する。
【0049】
本実施例のハウジング5には、スリーブ7の外周突起42と接触してスリーブ7の移動を規制する内周突起51が設けられている。
スリーブ7には、内周突起51に対して接触可能に対向し、且つ内周突起51に係止される外周突起42が設けられている。
そして、内周突起51および外周突起42には、スプリング3の押し付け荷重方向に対して傾斜した傾斜面61、62が形成されている。
傾斜面61は、ハウジング5の図示上端から図示下端へ向かって冷却水流路14の流路断面積が次第に漸減するように傾斜した円錐面である。
傾斜面62は、スリーブ7の図示上端から図示下端へ向かって外周突起42の突出量が次第に漸減するように傾斜した円錐面である。
【0050】
以上のように、本実施例のバルブ装置においては、実施例1及び2と同様な効果を奏する。
その他、内周突起51と外周突起42の対向面を傾斜化することで、バルブシート2およびスリーブ7の水平方向(図示左右方向)の変位を拘束し、ボールバルブ1の開弁時に、エンジン振動や自動車の振動による、ボール面21とシール面31の摺動接触を避けることができる。これにより、ボール面21およびシール面31の摩耗を抑制することができる。
【0051】
[実施例4の構成]
図12および
図13は、本発明を適用したバルブ装置(実施例4)を示したものである。ここで、実施例1〜3と同じ符号は、同一の構成または機能を示すものであって、説明を省略する。
【0052】
本実施例のバルブ装置は、実施例1と同様に、多面の球面体形状のボールバルブ1、円環形状のバルブシート2、スプリング3およびケーシングを備えている。
ケーシングは、少なくともハウジング4、5および筒状のスリーブ7を備えている。
ボールバルブ1は、ボール面21およびボール接触面25を有している。
ボール接触面25は、バルブ開口11の開口端面であり、バルブ開口11の開口周縁に設けられている。このボール接触面25には、ボールバルブ1の開弁時にシート接触面35が摺動接触する。
【0053】
ボールバルブ1のCL方向のバルブ開口側の開口周縁には、テーパ形状の面取り部54が設けられている。
また、ボールバルブ1の回転方向におけるバルブ開口11の両端部には、テーパ形状の面取り部58がそれぞれ設けられている。これらの各面取り部58は、バルブ開口11の開口周縁に円弧状に設けられて、バルブ開口11の開口端に向かって上り勾配となるように傾斜した傾斜面を有している。すなわち、面取り部58は、ボールバルブ1の閉弁動作時に、バルブシート2がバルブ開口11からボール面21上へ円滑に乗り上げるテーパ形状に形成されている。
【0054】
バルブシート2には、円環状のシール面31よりも半径方向外側に円環状のシート凹部34が設けられている。このシート凹部34は、スプリング3の押し付け荷重方向の反対側に凹むように設けられている。
シート凹部34の半径方向外側には、ボール面21に対して摺動接触可能に対向し、スプリング3の弾性力によってボール面21に押し付けられる円環状のシート接触面35が形成されている。
【0055】
シート接触面35は、円環状の段差36を介してシール面31と接続している。このシート接触面35は、シール面31の周囲を周方向に取り囲むように設けられている。また、シート接触面35は、ボールバルブ1の開弁時にボール接触面25と摺動接触し、且つボールバルブ1の閉弁時にボール面21と非接触状態となる。
ここで、ボールバルブ1の閉弁時におけるシート接触面35の位置は、図中の一点鎖線で示す基準線SLで示されて、開弁時におけるシート接触面35の位置よりも図示上方に位置している。なお、基準線SLは、実際はバルブシート2を保持するリング板43の位置を示している。すなわち、ボールバルブ1の開弁時には、基準線SLよりも図示下方にリング板43が配置される。
【0056】
シート凹部34の半径方向内側には、シール面31が配置されている。このシール面31は、シート開口12の開口周縁に設けられている。また、シール面31は、シート接触面35と比べてスプリング3の押し付け荷重方向に突出するように設けられている。また、シール面31は、ボールバルブ1の閉弁時にボール面21と摺動接触し、且つボールバルブ1の開弁時にボール面21およびボール接触面25と非接触状態となる。
【0057】
そして、バルブ装置には、ハウジング5に内周突起が設けられておらず、また、スリーブ7に外周突起が設けられていない。これにより、ボール面21にシール面31が接触している場合(閉弁状態)よりも、ボール面21にシート接触面35が接触している場合(開弁状態)と比べて、バルブシート2およびスリーブ7の位置が図示下方で固定される。 よって、バルブシート2は、開弁時に、バルブシート2とスリーブ7の移動をボール面21が規制した際に、シール面31がバルブ開口11の内部に入り込んだ状態で固定される。すなわち、ボール面21は、バルブシート2と接触してバルブシート2とスリーブ7の移動を規制するシート規制部としての機能を有している。
【0058】
ここで、ボールバルブ1の閉弁時には、シール面31がボール面21に乗り上げることで、バルブシート2がスプリング3の押し付け荷重方向に移動する。つまりバルブシート2が
図12(b)に示した矢印方向(図示上方)に移動する。
また、ボールバルブ1の閉弁時には、スプリング3の押し付け荷重によって、シール面31がボールバルブ1に押し付けられることで、ボール面21とシール面31が接触状態となり、ボール面21とシール面31の間の隙間が液密的にシールされる。
また、ボールバルブ1の閉弁時には、ボール面21とシール面31が接触しているので、バルブシート2およびスリーブ7のリング板43が、開弁時よりも図示上方側に固定される。
【0059】
一方、ボールバルブ1の開弁動作時には、バルブシート2のシール面31が、ボール面21から面取り部58を経てバルブ開口11に侵入するため、ボール接触面25とシート接触面35が摺動接触し、且つボール面21とシール面31が非接触状態となる。このとき、シール面31は、バルブ開口11の内壁面よりも内側に位置する。また、ボール接触面25とシート接触面35が接触している。このため、バルブシート2の、スプリング3の押し付け荷重方向の位置が固定される。
また、ボールバルブ1の閉弁動作時には、バルブシート2のシール面31が、バルブ開口11から面取り部58を経てボール面21へ乗り上げるため、ボール面21とシール面31が摺動接触し、且つボール接触面25とシート接触面35が非接触状態となる。
【0060】
したがって、シール面31の耐摩耗性を向上させるという目的で、ボールバルブ1の閉弁時にボール面21と摺動接触するシール面31と、ボールバルブ1の開弁時にボール接触面25と摺動接触するシート接触面35とを分離することで、シール面31の摩耗を低減することができる。
以上のように、本実施例のボール型ロータリバルブにおいては、実施例1〜3と同様な効果を奏する。
【0061】
[変形例]
本実施例では、回転型のバルブの一例としてボールバルブを用いる例を示したが、限定するものではなく、例えば外周面が凸球面形状を呈するロータリバルブに本発明を適用しても良い。
本実施例では、開弁時に流体(実施例では冷却水)が回転型のバルブ(実施例ではボールバルブ)の内側から外側へ向かって流れる例を示したが、流体を流す方向は逆でも良い。
【0062】
本実施例では、電動アクチュエータによってボールバルブを回動操作する例を示したが、ボールバルブの駆動手段を限定しない。
本実施例では、スリーブとバルブシートの固定技術として圧入を用いる例を示したが、結合手段を限定せず、例えば接着剤等を用いても良い。
本実施例では、スプリングの一例として圧縮コイルスプリングを用いたが、ボールバルブと、スプリング機能を有するベローズを用いたり、ゴム部材を用いる等、種々適用可能なものである。
【0063】
本実施例では、エンジン冷却水のコントロールを行うバルブ装置に本発明を適用する例を示したが、エンジンを搭載しない車両の冷却水のコントロールを行うバルブ装置に本発明を適用しても良い。
本実施例では、液体(具体的な一例として冷却水)のコントロールを行うバルブ装置に本発明を適用する例を示したが、流体は液体に限定されるものではなく、気体(ガス類)のコントロールを行うバルブ装置に本発明を適用しても良い。