特許第6490025号(P6490025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6490025
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】スパークプラグ
(51)【国際特許分類】
   H01T 13/20 20060101AFI20190318BHJP
【FI】
   H01T13/20 B
【請求項の数】4
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-86686(P2016-86686)
(22)【出願日】2016年4月25日
(65)【公開番号】特開2017-199455(P2017-199455A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2018年4月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】特許業務法人しんめいセンチュリー
(72)【発明者】
【氏名】中野 成治
(72)【発明者】
【氏名】上垣 裕則
【審査官】 澤崎 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−315954(JP,A)
【文献】 国際公開第2012/105255(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01T 13/00 − 13/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1孔部と当該第1孔部より内径の大きい第2孔部とが段部を介して連なる軸孔を備える絶縁体と、
前記絶縁体の前記段部に配置される鍔部と、前記鍔部から前記第2孔部側へ突出する頭部と、前記鍔部から前記第1孔部側へ延びる脚部とを備える中心電極と、
前記鍔部および前記頭部を前記第2孔部に固定するガラスシールとを備えるスパークプラグにおいて、
前記頭部は、頂面に形成される凹みと、前記頂面の外周の角を取った面取部とを備え、
前記中心電極の中心軸と前記凹みの最深部とを含む断面または前記中心軸に平行な直線と前記凹みの最深部とを含む断面において、前記最深部と前記面取部とをそれぞれ結ぶ2本の直線が前記最深部で交わる角度は90°以上であることを特徴とするスパークプラグ。
【請求項2】
前記第2孔部の内径d1と前記頭部の外径d2との差d1−d2は0.9mm以下であることを特徴とする請求項1記載のスパークプラグ。
【請求項3】
前記第2孔部の内径d1、前記頭部の外径d2、前記頭部の軸方向の長さhは、
h≧5/2×(d1−d2)の関係を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載のスパークプラグ。
【請求項4】
前記面取部は、前記頭部の外周面と前記凹みとに接し、
前記面取部の値は0.1〜1mmであることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のスパークプラグ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はスパークプラグに関し、特に耐衝撃性を向上できるスパークプラグに関するものである。
【背景技術】
【0002】
スパークプラグは、絶縁体の軸孔に挿入された中心電極が、中心電極の鍔部および頭部の周囲に充填されたガラスシールによって軸孔に固着される。頭部に接合するガラスシールの接合強度を向上させるため、頭部の頂面に凹みが形成される(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−315954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら近年のエンジンの高出力化等に伴い、スパークプラグに加えられる負荷や衝撃はより大きくなるので、耐衝撃性のさらなる向上が望まれる。
【0005】
本発明は上述した要求に応えるためになされたものであり、耐衝撃性を向上できるスパークプラグを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段および発明の効果】
【0006】
この目的を達成するために請求項1記載のスパークプラグによれば、絶縁体は、第1孔部と第1孔部より内径の大きい第2孔部とが段部を介して連なる軸孔を備え、中心電極は、絶縁体の段部に配置される鍔部と、鍔部から第2孔部側へ突出する頭部と、鍔部から第1孔部側へ延びる脚部とを備える。ガラスシールは、鍔部および頭部を第2孔部に固定する。頭部は頂面に凹みが形成され、頂面の外周の角を取った面取部が設けられる。
【0007】
中心電極の中心軸と凹みの最深部とを含む断面または中心軸に平行な直線と凹みの最深部とを含む断面において、最深部と面取部とをそれぞれ結ぶ2本の直線が最深部で交わる角度は90°以上である。頭部の角に面取部が設けられているので、頭部の角が取られていない場合に比べて、頭部と第2孔部との隙間にガラスシールを充填し易くできると共に、角をガラスシールの破壊の起点にさせ難くできる。よって、耐衝撃性を向上できる効果がある。
【0008】
請求項2記載のスパークプラグによれば、第2孔部の内径d1と頭部の外径d2との差d1−d2は0.9mm以下である。第2孔部の内径d1と頭部の外径d2との差d1−d2が小さくなるにつれて、頭部と第2孔部との隙間にガラスシールが充填し難くなるが、頭部の角に面取部が設けられているので、それを防止できる。その結果、請求項1の効果に加え、第2孔部の内径と頭部の外径との差が0.9mm以下のスパークプラグであっても、頭部と第2孔部との隙間にガラスシールを充填し易くして強度を向上できると共に、ガラスシールを破壊し難くできる効果がある。
【0009】
請求項3記載のスパークプラグによれば、第2孔部の内径d1、頭部の外径d2、頭部の軸方向の長さhは、h≧5/2×(d1−d2)の関係を満たす。第2孔部の内径d1と頭部の外径d2との差d1−d2が小さくなるにつれて、頭部と第2孔部との隙間にガラスシールが充填し難くなるが、頭部の角に面取部が設けられているので、それを防止できる。
【0010】
その結果、請求項1又は2の効果に加え、h≧5/2×(d1−d2)の関係を満たすスパークプラグであっても、頭部と第2孔部との隙間にガラスシールを充填し易くして強度を向上できると共に、ガラスシールを破壊し難くできる効果がある。
【0011】
請求項4記載のスパークプラグによれば、面取部は頭部の外周面と凹みとに接し、面取部の値は0.1〜1mmである。凹みの表面積を確保できるので、請求項1から3のいずれかの効果に加え、頭部に接合するガラスシールの接合強度を向上できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1実施の形態におけるスパークプラグの断面図である。
図2】中心電極の斜視図である。
図3図1の部分拡大図である。
図4】第2実施の形態におけるスパークプラグの中心電極の斜視図である。
図5】第3実施の形態におけるスパークプラグの部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照して説明する。図1は本発明の第1実施の形態におけるスパークプラグ10の中心軸Oを含む面で切断した断面図である。図1では、紙面下側をスパークプラグ10の先端側、紙面上側をスパークプラグ10の後端側という。図1に示すようにスパークプラグ10は、主体金具20、接地電極30、絶縁体40、中心電極50、端子金具60及び抵抗体70を備えている。
【0014】
主体金具20は、内燃機関のねじ穴(図示せず)に固定される略円筒状の部材であり、中心軸Oに沿って貫通する貫通孔21が形成されている。主体金具20は導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成されている。主体金具20は、径方向の外側へ鍔状に張り出す座部22と、座部22より先端側の外周面に形成されたねじ部23とを備えている。座部22とねじ部23との間に環状のガスケット24が嵌め込まれている。ガスケット24は、内燃機関のねじ穴にねじ部23が嵌められたときに、主体金具20と内燃機関(エンジンヘッド)との隙間を封止する。
【0015】
接地電極30は、主体金具20の先端に接合される金属製(例えばニッケル基合金製)の電極母材31と、電極母材31の先端に接合されるチップ32とを備えている。電極母材31は、中心軸Oと交わるように中心軸Oへ向かって屈曲する棒状の部材である。チップ32は、白金、イリジウム、ルテニウム、ロジウム等の貴金属またはこれらを主成分とする合金によって形成される柱状の部材であり、レーザ溶接によって中心軸Oと交わる位置に接合されている。
【0016】
絶縁体40は、機械的特性や高温下の絶縁性に優れるアルミナ等により形成された略円筒状の部材であり、中心軸Oに沿って貫通する軸孔41が形成されている。絶縁体40は、主体金具20の貫通孔21に挿入され、外周に主体金具20が固定されている。絶縁体40は、先端および後端が、主体金具20の貫通孔21からそれぞれ露出している。
【0017】
軸孔41は、絶縁体40の先端側に位置する断面が円形状の第1孔部42と、第1孔部42の後端に連なり後端側へ向かって拡径する段部43と、段部43の後端側に位置する断面が円形状の第2孔部44とを備えている。第2孔部44は、内径が、第1孔部42の内径より大きく設定されている。
【0018】
中心電極50は、有底筒状に形成された電極母材の内部に、電極母材よりも熱伝導性に優れる芯材54を埋設した棒状の電極である。芯材54は銅または銅を主成分とする合金で形成されている。中心電極50は、軸孔41の段部43に配置される鍔部51と、中心軸Oに沿って鍔部51から第2孔部44側へ突出する頭部52と、鍔部51から中心軸Oに沿って第1孔部42側へ延びる脚部53とを備えている。
【0019】
脚部53は先端が第1孔部42から露出し、チップ55がレーザ溶接によって接合されている。チップ55は、白金、イリジウム、ルテニウム、ロジウム等の貴金属またはこれらを主成分とする合金によって形成される柱状の部材であり、火花ギャップを介して接地電極30のチップ32と対向する。
【0020】
端子金具60は、高圧ケーブル(図示せず)が接続される棒状の部材であり、導電性を有する金属材料(例えば低炭素鋼等)によって形成されている。端子金具60の先端側は絶縁体40の軸孔41内に配置される。
【0021】
抵抗体70は、スパーク時に発生する電波ノイズを抑えるための部材であり、端子金具60と中心電極50との間の第2孔部44内に配置されている。抵抗体70と中心電極50との間、抵抗体70と端子金具60との間に、導電性を有するガラスシール80,90がそれぞれ配置される。ガラスシール80は抵抗体70と中心電極50とにそれぞれ接触し、ガラスシール90は抵抗体70と端子金具60とにそれぞれ接触する。この結果、中心電極50と端子金具60とは、抵抗体70とガラスシール80,90とを介して電気的に接続される。
【0022】
ガラスシール80,90は、例えばガラス粒子と金属粒子(Cu,Fe等)とを1対1程度の比率で含んでいる。ガラス粒子としては、例えばB−SiO系、BaO−B系、SiO−B−CaO−BaO系などの材料が採用され得る。ガラスシール80,90は、比抵抗が、中心電極50及び端子金具60の比抵抗と抵抗体70の比抵抗との間にある。よって、中心電極50及び端子金具60や抵抗体70との接触抵抗を安定化させることができ、中心電極50と端子金具60との間の抵抗値を安定にできる。
【0023】
スパークプラグ10は、例えば、以下のような方法によって製造される。まず、絶縁体40の第2孔部44から中心電極50を挿入する。中心電極50は、脚部53の先端にチップ55が溶接されている。中心電極50は段部43に鍔部51が支持され、先端部が軸孔41の先端から外部に露出するように配置される。
【0024】
次に、ガラスシール80の原料粉末を第2孔部44から入れて、鍔部51及び頭部52の周囲および後端側に充填する。圧縮用棒材(図示せず)を用いて、第2孔部44に充填したガラスシール80の原料粉末を予備圧縮する。成形されたガラスシール80の原料粉末の成形体の上に、抵抗体70の原料粉末を充填する。圧縮用棒材(図示せず)を用いて、第2孔部44に充填した抵抗体70の原料粉末を予備圧縮する。次いで、抵抗体70の原料粉末の上に、ガラスシール90の原料粉末を充填する。圧縮用棒材(図示せず)を用いて、第2孔部44に充填したガラスシール90の原料粉末を予備圧縮する。
【0025】
その後、軸孔41の後端側から端子金具60の先端部61を挿入して、先端部61がガラスシール90の原料粉末に接触するように端子金具60を配置する。次いで、例えば各原料粉末に含まれるガラス成分の軟化点より高い温度まで加熱しつつ、端子金具60の後端側に設けられた張出部62の先端面が絶縁体40の後端面に当接するまで端子金具60を圧入して、先端部61によってガラスシール80、抵抗体70及びガラスシール90の原料粉末に軸方向の荷重を加える。この結果、各原料粉末が圧縮・焼結され、絶縁体40の内部にガラスシール80、抵抗体70及びガラスシール90が形成される。
【0026】
次に、予め接地電極30が接合された主体金具20を絶縁体40の外周に組み付ける。その後、接地電極30の電極母材31にチップ32を溶接し、接地電極30のチップ32が中心電極50のチップ54と軸方向に対向するように電極母材31を屈曲して、スパークプラグ10を得る。
【0027】
図2及び図3を参照して中心電極50について説明する。図2は中心電極50の斜視図であり、図3図1のガラスシール80付近の部分拡大図である。なお、図2では脚部53の先端側の図示が省略されている。図2及び図3に示すように中心電極50は、円盤状に形成される鍔部51と、鍔部51から脚部53の反対側へ突出する円柱状の頭部52とを備えている。頭部52は、頂面(鍔部51の反対側の面)に凹み56が形成されている。
【0028】
凹み56は、逆円錐形に形成されており、中心電極50の中心軸O上に最深部57が位置する。頭部52は、頂面の外周の角に全周に亘って面取部58が設けられている。面取部58は、頭部52の外周の角を取って角を角面または丸面にするための部位である。凹み56及び面取部58は、頭部52の冷間圧造加工時に設けられる。
【0029】
図3に示すように面取部58は、本実施の形態では、頭部52の外周面59と凹み56とに接する丸みである。面取部58の値(丸みを表す半径の大きさ)は0.1〜1mmである。凹み56は、面取部58を介して頭部52の外周面59に接しており、面取部58の値が0.1〜1mmなので、頭部52の頂面のほぼ全体に凹み56を設けることができる。よって、凹み56の表面積を確保できる。
【0030】
中心電極50の中心軸Oと凹み56の最深部57とを含む断面において、最深部57と面取部58とをそれぞれ結ぶ2本の直線L1,L2が最深部57で交わる角度θは90°以上に設定されている。直線L1,L2の交わる角度θが90°以上なので、冷間圧造加工時に頭部52の凹み56にプレス工具を付着し難くできる。また、スパークプラグ10の製造工程において、ガラスシール80を凹み56に充填させ易くすることができ、ガラスシール80の接合強度を確保できる。
【0031】
頭部52の外周に面取部58が設けられているので、スパークプラグ10の製造工程において、ガラスシール80の原料粉末を鍔部51及び頭部52の周りに充填するときに、面取部58を設けない場合に比べて、原料粉末を頭部52と第2孔部44との隙間に流入させ易くできる。頭部52と第2孔部44との隙間の原料粉末の充填密度を向上できるので、原料粉末を圧縮・焼結した後のガラスシール80の接合強度を確保できると共に、気密性や耐衝撃性も確保できる。頭部52の外周の角に面取部58が付けられているので、頭部52の角が、焼結後のガラスシール80の破壊の起点になることを抑制できる。よって、耐衝撃性を向上できる。
【0032】
面取部58(丸み)によって頭部52の外周の角に丸面が作られているので、稜が作られない。よって、頭部52の外周の角を角面にする面取りに比べて、ガラスシール80に生じる応力を緩和できる。その結果、頭部52に面取りを施すよりも、頭部52に丸みを付けることによって、ガラスシール80の破壊の起点になり難くできる。
【0033】
ここで、面取部58の値(丸みを表す半径の大きさ)が0.1mmより小さくなると、面取部58を設けた効果が得られなくなるおそれがある。また、面取部58の分だけ頭部52の表面積が小さくなるので、面取部58の値が1mmより大きくなると、ガラスシール80の接合強度が低下するおそれがある。面取部58の値を0.1〜1mmに設定することにより、ガラスシール80の接合強度を確保できると共に耐衝撃性を向上できる。なお、面取部58の値(丸みを表す半径の大きさ)は、中心軸Oを含む頭部52の断面をSEMやCTスキャナ等によって観察し、画像解析等を行うことによって求められる。
【0034】
頭部52に面取部58を設けるのは、絶縁体40に形成された第2孔部44の内径d1と中心電極50の頭部52の外径d2との差d1−d2が0.9mm以下に設定されるスパークプラグ10に好適である。スパークプラグ10の製造工程において、差d1−d2が小さくなるにつれて(特に差d1−d2が0.9mm以下になると)、頭部52と第2孔部44との隙間にガラスシール80の原料粉末が流入し難くなるが、面取部58によってこれを抑制できるからである。
【0035】
また、差d1−d2が小さくなるにつれて(特に差d1−d2が0.9mm以下になると)、頭部52と第2孔部44との間のガラスシール80が薄くなるので、頭部52が破壊の起点になってガラスシール80に生じたクラックが絶縁体40に伝搬し易くなるが、面取部58によってクラックの発生自体を抑制できるからである。なお、差d1−d2は0.1mm以上が好ましい。差d1−d2が0.1mm未満になると、頭部52と第2孔部44との隙間にガラスシール80の原料粉末が流入し難くなるからである。
【0036】
また、頭部52に面取部58を設けるのは、第2孔部44の内径d1、頭部52の外径d2、頭部52の軸方向の長さhがh≧5/2×(d1−d2)の関係を満たすスパークプラグ10に好適である。(d1−d2)/2は第2孔部44と頭部52の外周面59との隙間の大きさを示すので、h≧5/2×(d1−d2)の関係を満たすのは、頭部52の長さhが、その隙間の大きさの5倍以上の場合である。スパークプラグ10の製造工程において、差d1−d2が小さく且つ長さhが長くなるにつれて、頭部52と第2孔部44との隙間にガラスシール80の原料粉末が充填され難くなるが、面取部58によってこれを抑制できるからである。
【0037】
次に図4を参照して第2実施の形態について説明する。第1実施の形態では、頭部52の頂面のほぼ全体に凹み56が形成される場合について説明した。これに対し第2実施の形態では、頭部52の頂面101の一部に凹み102が形成される場合について説明する。なお、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0038】
図4は第2実施の形態におけるスパークプラグの中心電極100の斜視図である。図4では脚部53の先端側の図示が省略されている。中心電極100は、第1実施の形態で説明した中心電極50に代えてスパークプラグ10に配置される。
【0039】
図4に示すように中心電極100は、中心軸Oに直交する平面である頂面101の中央に凹み102が形成されている。凹み102は、逆四角錐形に形成されており、中心電極100の中心軸O上に最深部103が位置する。頭部52は、頂面101の外周の角に全周に亘って面取部104が設けられている。
【0040】
面取部104は、本実施の形態では、頭部52の頂面101と外周面59とに接する面取りである。面取部104(円錐状の傾斜面)によって、頂面101の外周の角が斜めに取られている。面取部104の値は0.1〜1mmに設定される。面取部104(面取り)の値は、中心軸Oを含む断面において、外周面59に平行な、面取部104に接する直線と外周面59との距離である。中心軸Oを含む断面における面取部104と外周面59との角度は、本実施の形態では略45°であるが、これに限られるものではなく適宜設定できる。なお、面取部104の値は、中心軸Oを含む頭部52の断面をSEMやCTスキャナ等によって観察し、画像解析等を行うことによって求められる。
【0041】
凹み102は、第1実施の形態と同様に、中心電極100の中心軸Oと凹み102の最深部103とを含む断面(凹み102の稜を含む断面)において、最深部103と面取部104とをそれぞれ結ぶ2本の直線(図示せず)が最深部103で交わる角度θが90°以上に設定されている。本実施の形態のように、断面の位置によって角度θが変わる場合には、角度θが最も大きくなる断面における角度θを採用する。その結果、第1実施の形態で説明した作用効果と同様の作用効果が得られる。さらに、頭部52の頂面101と外周面59とに接する位置に面取部104が形成されているので、凹み102の大きさを適宜設定することができ、中心電極100の設計の自由度を向上できる。
【0042】
次に図5を参照して第3実施の形態について説明する。第1実施の形態では、頭部52に逆円錐形の凹み56が形成される場合について説明した。これに対し第3実施の形態では、中心電極111の頭部52に半球形の112が形成される場合について説明する。なお、第1実施の形態で説明した部分と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。図5は第3実施の形態におけるスパークプラグ110の中心軸Oを含む部分拡大断面図である。スパークプラグ110は、中心電極111が、第1実施の形態で説明したスパークプラグ10の中心電極50に代えて配置されている。
【0043】
図5に示すようにスパークプラグ110は、中心電極111は、頭部52の頂面(鍔部51の反対側の面)に凹み112が形成されている。凹み112は、逆半円形に形成されており、中心電極111の中心軸O上に最深部113が位置する。頭部52は、頂面の外周の角に全周に亘って面取部114が設けられている。
【0044】
面取部114は、頭部52の外周面59と凹み112とに接する丸みである。面取部58の値(丸みを表す半径の大きさ)は0.1〜1mmである。中心電極111の中心軸Oと凹み112の最深部113とを含む断面において、最深部113と面取部114とをそれぞれ結ぶ2本の直線L1,L2が最深部113で交わる角度θは90°以上に設定されている。スパークプラグ110は頭部52の外周に面取部114が設けられているので、第1実施の形態と同様の作用効果を実現できる。
【実施例】
【0045】
本発明を実施例によりさらに詳しく説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0046】
<実施例1>
第1実施の形態で説明したスパークプラグ10において、面取部58(丸み)の値が異なる供試体を作成した。これらの供試体は、第2孔部44の内径d1=3.0mm、頭部52の外径d2=2.2mm、頭部52の軸方向の長さh=1.2mm、直線L1,L2の交わる角度θ=130°に設定した。なお、面取部58(丸み)の値は、2.0mm、1.5mm、1.0mm、0.5mm、0.1mm、0mm(丸み無し)の6種とした。
【0047】
これらの供試体について、JIS B8031(2006年版)に準拠した耐衝撃性試験を行った。試験は振動振幅22mmの衝撃を毎分400回の割合で各供試体に30分間加え、試験前後の中心電極と接地電極との間の絶縁抵抗を測定した。試験前の抵抗値に対する試験後の抵抗値の増加率が5%未満を「優れている(○)」、5%以上15%未満を「やや劣っている(△)」、15%以上を「劣っている(×)」と評価した。表1は丸みの値(単位:mm)と評価との関係を示す表である。試験後の抵抗値の増加は、ガラスシール80と頭部52との接合やガラスシール80等に異常があることを示している。
【0048】
【表1】
表1に示すように、面取部58(丸み)の値を0.1〜1.0mmにすることにより、試験前の抵抗値に対する試験後の抵抗値の増加率を5%未満にすることができた。なお、面取部58(丸み)の値が2.0mmの供試体の抵抗値の増加率が15%以上になったのは、面取部58の大きさに起因して頭部52の表面積が低下し、頭部52とガラスシール80との接合力が低下したことが原因ではないかと推察している。
【0049】
<実施例2>
第1実施の形態で説明したスパークプラグ10において、面取部58(丸み)の値が異なる供試体を作成した。これらの供試体は、第2孔部44の内径d1=3.9mm、頭部52の外径d2=2.9mm、頭部52の軸方向の長さh=1.5mm、直線L1,L2の交わる角度θ=130°に設定した。なお、面取部58(丸み)の値は、2.0mm、1.5mm、1.0mm、0.5mm、0.1mm、0mm(丸み無し)の6種とした。
【0050】
これらの供試体について、実施例1で行ったのと同じ耐衝撃性試験を行った。試験結果は実施例1と同様であり、面取部58(丸み)の値を0.1〜1.0mmにすることにより、試験前の抵抗値に対する試験後の抵抗値の増加率を5%未満にすることができた。
【0051】
<実施例3>
第2実施の形態で説明したスパークプラグにおいて、面取部104(面取り)の値が異なる供試体を作成した。これらの供試体は、第2孔部44の内径d1=3.0mm、頭部52の外径d2=2.2mm、頭部52の軸方向の長さh=1.2mm、直線L1,L2の交わる角度θ=90°に設定した。なお、面取部104の面取りの角度は45°、面取りの値は、2.0mm、1.5mm、1.0mm、0.5mm、0.1mm、0mm(面取り無し)の6種とした。
【0052】
これらの供試体について、実施例1で行ったのと同じ耐衝撃性試験を行った。試験結果は実施例1と同様であり、面取部104(面取り)の値を0.1〜1.0mmにすることにより、試験前の抵抗値に対する試験後の抵抗値の増加率を5%未満にすることができた。
【0053】
<実施例4>
第1実施の形態で説明したスパークプラグ10において、頭部52の軸方向の長さhが異なる供試体を作成した。これらの供試体は、第2孔部44の内径d1=3.0mm、頭部52の外径d2=2.2mm、直線L1,L2の交わる角度θ=130°、面取部58(丸み)の値は0.5mmに設定した。なお、頭部52の軸方向の長さhは0.8mm、1.2mm、1.6mm、2.0mm、2.4mm、2.8mmの6種とした。
【0054】
これらの供試体について、実施例1で行ったのと同じ耐衝撃性試験を行った。表2はh(単位:mm)と評価との関係を示す表である。
【0055】
【表2】
表2に示すように、長さhが0.8〜2.8mmの全ての供試体において、試験前の抵抗値に対する試験後の抵抗値の増加率を5%未満にすることができた。
【0056】
<比較例>
面取部58を設けない以外は実施例4と同様にして、比較例における供試体を作成した。これらの供試体について、実施例1で行ったのと同じ耐衝撃性試験を行った。表3はh(単位:mm)と評価との関係を示す表である。
【0057】
【表3】
表3に示すように、長さhが0.8〜1.6mmの供試体において、試験前の抵抗値に対する試験後の抵抗値の増加率を5%未満にすることができた。しかし、長さhが2.0〜2.8mmの供試体は、試験前の抵抗値に対する試験後の抵抗値の増加率が15%以上であった。抵抗値の増加率が15%以上となった長さh=2.0〜2.8mmの供試体は、h=n/2×(d1−d2)の関係式においてn=5,6,7の値を示す。上記の関係式においてn≧5の場合は、面取部58が設けられないと、頭部52と第2孔部44との隙間にガラスシール80が形成され難くなるので、耐衝撃性が低下するものと推察される。実施例4によれば、上記の関係式においてn≧5の場合であっても、面取部58を設けることにより耐衝撃性を向上できることが明らかになった。
【0058】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、凹み56,102,112や面取部58,104,114の形状や大きさは一例であり適宜設定できる。凹み56,102,112の形状は逆円錐形、逆四角錐形、逆半球形に限らない。
【0059】
上記各実施の形態では、中心電極50,100,111の鍔部51の外径よりも頭部52の外径が小さい場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではなく、鍔部51の外径と頭部52の外径とを等しくすることは当然可能である。この場合も頭部52に面取部58,104,114を設けることによって、上記各実施の形態と同様の作用効果を実現できる。
【0060】
上記各実施の形態では、抵抗体70が絶縁体40に内蔵されるスパークプラグ10,110について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。抵抗体70を内蔵しないスパークプラグに上記各実施の形態を適用することは当然可能である。中心電極50,100,111がガラスシール80によって固定されていれば、上記各実施の形態と同様の作用効果を実現できるからである。
【0061】
上記各実施の形態では、凹み56,102,112の最深部57,103,113がスパークプラグ10,110の中心軸O上に位置する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。凹み56,102,112の最深部57,103,113がスパークプラグ10,110の中心軸O上に存在しなくても良いのは当然である。この場合には、角度θは、凹み56,102,112の最深部57,103,113を通る、中心軸Oに平行な直線を考え、この直線と最深部57,103,113とを含む断面において、最深部57,103,113と面取部58,104,114とをそれぞれ結ぶ2本の直線L1,L2が最深部57,103,113で交わる角度とする。
【0062】
なお、上記の各実施形態は、それぞれ、他の実施形態が有する構成の一部または複数部分を、その実施形態に追加し或いはその実施形態の構成の一部または複数部分と交換等することにより、その実施形態を変形して構成するようにしても良い。例えば、第2実施の形態で説明した頭部52の頂面101の中央に凹み102が形成される構成を、第1実施の形態や第3実施の形態の凹み56,112に採用することは当然可能である。また、第2実施の形態で説明した面取部104(面取り)と、第1実施の形態や第3実施の形態で説明した面取部58,114(丸み)とを交換することは当然可能である。
【符号の説明】
【0063】
10,110 スパークプラグ
40 絶縁体
41 軸孔
42 第1孔部
43 段部
44 第2孔部
50,100,111 中心電極
51 鍔部
52 頭部
53 脚部
56,102,112 凹み
57,103,113 最深部
58,104,114 面取部
59 外周面
80 ガラスシール
101 頂面
d1 内径
d2 外径
h 長さ
L1,L2 直線
O 中心軸
θ 角度
図1
図2
図3
図4
図5