【実施例】
【0049】
以下、本発明について、具体的な実施例に基づいて、さらに詳細に説明する。本発明は、以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能である。
【0050】
X線回折は、リガク社製「UltimaIV」を用いて、X線管球:Cu、検出器:D/tex Ultra2、電圧:40kV、電流:40mA、サンプリング幅:0.02°で測定した。半価幅は、X線回折パターンを平滑化処理し、Sonneveld−Visser法でバックグランド除去後に、スピネル型チタン酸リチウムのメインピークである2θ:18°のピーク半価幅を算出した。結晶子径は、前述の半価幅から、Scherrer式を用いて求めた。
【0051】
複合体の形状は走査型電子顕微鏡(SEM)(日立ハイテク社製、S−4800)により観察した。複合体の平均粒子径は島津製作所社製のレーザー回折式粒子径分布測定装置「SALD−2100」で測定した。なお、平均粒子径は、レーザー回折法によって求めた粒度分布における積算値50%の粒子径を意味する。
【0052】
複合体の比表面積はMicromeritics社製「TriStarII」にてBET法により測定した。
【0053】
(実施例1)
フェノール類化合物としてレゾルシノール(0.4mol)、アルデヒド類化合物として37質量%ホルムアルデヒド水溶液(0.7mol)及び溶媒として水(8.9mol)をビーカーに加え5分間混合した。
【0054】
得られた混合溶液にリチウム化合物として酢酸リチウム(1.5mol)を加え、リチウム化合物が完全に溶解するまで10分間混合することでゾルを得た。
【0055】
得られたゾル溶液にチタン化合物としてアナターゼ型酸化チタン(IV)粒子(1.8mol、平均一次粒子径10nm)を加え15分間混合し、大気雰囲気下にて120℃で4時間乾燥した。
【0056】
得られた乾燥物を窒素雰囲気下にて875℃で2時間加熱処理し、乳鉢で解砕することで、チタン酸リチウム粒子と炭素質物質の複合体を得た。
図1に得られた複合体のSEM写真を示す。写真の倍率は10万倍である。
【0057】
得られた複合体は、X線回折により結晶相がスピネル型のLi
1.33Ti
1.66O
4であり、半価幅は0.45°、結晶子径は17nmであった。X線回折のチャートを
図5に示した。また、比表面積は118m
2/g、平均粒子径は7μmであった。
【0058】
得られた複合体の炭素質物質を燃焼除去し、乳鉢で解砕することで、複合体に含まれるチタン酸リチウム粒子の性状を確認した。
図2に得られたチタン酸リチウム粒子のSEM写真を示す。写真の倍率は10万倍である。
【0059】
チタン酸リチウム粒子の形状は走査型電子顕微鏡(SEM)(日立ハイテク社製、S−4800)により観察した。観察された1000個分の一次粒子の長径を解析ソフト「WinROOF」(三谷商事社製)を用いて測定し、その算術平均を平均一次粒子径とした。なお、チタン酸リチウム粒子の平均一次粒子径の測定には、10万倍で観察したSEM写真を用いた。ここでいう一次粒子とは、二次粒子を構成し得る個々の粒子であって、個々の粒子として識別できる最小単位の粒子を意味する。
【0060】
チタン酸リチウム粒子の平均二次粒子径は、島津製作所社製のレーザー回折式粒子径分布測定装置「SALD−2100」で測定した。チタン酸リチウム粒子の比表面積はMicromeritics社製「TriStarII」にてBET法により測定した。なお、平均二次粒子径は、レーザー回折法によって求めた粒度分布における積算値50%の粒子径を意味する。
【0061】
チタン酸リチウム粒子の比表面積は65m
2/g、平均二次粒子径は5μm、平均一次粒子径は23nmであった。
【0062】
(実施例2)
フェノール類化合物をフェノール(0.4mol)、アルデヒド類化合物を37質量%ホルムアルデヒド水溶液(0.9mol)に変更した以外は実施例1と同様の方法でチタン酸リチウム粒子と炭素質物質の複合体を得た。
【0063】
得られた複合体は、X線回折により結晶相がスピネル型のLi
1.33Ti
1.66O
4であり、半価幅は0.43°、結晶子径は19.6nmであった。X線回折のチャートを
図5に示した。また、比表面積は43m
2/g、平均粒子径は38μmであった。
【0064】
(実施例3)
フェノール類化合物をm−クレゾール(0.4mol)に変更した以外は実施例1と同様の方法でチタン酸リチウム粒子と炭素質物質の複合体を得た。
【0065】
得られた複合体は、X線回折により結晶相がスピネル型のLi
1.33Ti
1.66O
4であり、半価幅は0.38°、結晶子径は22nmであった。X線回折のチャートを
図5に示した。また、比表面積は77m
2/g、平均粒子径は7μmであった。
【0066】
(実施例4)
アルデヒド類化合物をヘキサメチレンテトラミン(0.04mol)に変更した以外は実施例1と同様の方法でチタン酸リチウム粒子と炭素質物質の複合体を得た。
【0067】
得られた複合体は、X線回折により結晶相がスピネル型のLi
1.33Ti
1.66O
4であり、半価幅は0.33°、結晶子径は26nmであった。X線回折のチャートを
図5に示した。また、比表面積は75m
2/g、平均粒子径は4μmであった。
【0068】
(実施例5)
チタン化合物を含水水酸化チタン粒子(1.8mol、平均一次粒子径10nm)に変更した以外は実施例1と同様の方法でチタン酸リチウム粒子と炭素質物質の複合体を得た。
【0069】
得られた複合体は、X線回折により結晶相がスピネル型のLi
1.33Ti
1.66O
4であり、半価幅は0.43°、結晶子径は19.6nmであった。X線回折のチャートを
図5に示した。また、比表面積は38m
2/g、平均粒子径は82μmであった。
【0070】
(実施例6)
チタン化合物をアナターゼ型酸化チタン(IV)粒子(1.8mol、平均一次粒子径150nm)に変更した以外は実施例1と同様の方法でチタン酸リチウム粒子と炭素質物質の複合体を得た。
図3に得られた複合体のSEM写真を示す。写真の倍率は10万倍である。
【0071】
得られた複合体は、X線回折により結晶相がスピネル型のLi
1.33Ti
1.66O
4であり、半価幅は0.15°、結晶子径は56nmであった。X線回折のチャートを
図5に示した。また、比表面積は9m
2/g、平均粒子径は9μmであった。
【0072】
(実施例7)
リチウム化合物を水酸化リチウム(0.5mol)に変更した以外は実施例1と同様の方法でチタン酸リチウム粒子と炭素質物質の複合体を得た。
【0073】
得られた複合体は、X線回折により結晶相がスピネル型のLi
1.33Ti
1.66O
4であり、半価幅は0.33°、結晶子径は25nmであった。X線回折のチャートを
図5に示した。また、比表面積は71m
2/g、平均粒子径は19μmであった。
【0074】
(比較例1)
リチウム化合物として酢酸リチウム(1.5mol)及び溶媒として水(8.9mol)をビーカーに加えて混合し、酢酸リチウムが完全に溶解するまで10分間混合した。
【0075】
得られた溶液にチタン化合物としてアナターゼ型酸化チタン(IV)粒子(1.8mol、平均一次粒子径10nm)を加え15分間混合し、大気雰囲気下にて120℃で4時間乾燥した。
【0076】
得られた乾燥物を窒素雰囲気下にて875℃で2時間加熱処理し、乳鉢で解砕することで、チタン酸リチウム粒子を得た。
図4に得られたチタン酸リチウム粒子のSEM写真を示す。写真の倍率は10万倍である。
【0077】
得られたチタン酸リチウム粒子は、X線回折により結晶相がLi
1.33Ti
1.66O
4とルチル型酸化チタン(IV)であり、半価幅は0.15°、結晶子径は81nm。X線回折のチャートを
図5に示した。また、比表面積は1.2m
2/g、平均二次粒子径400μm、平均一次粒子径331nmであった。なお、チタン酸リチウム粒子の比表面積、平均二次粒子径及び平均一次粒子径は、実施例1と同様にして測定した。チタン酸リチウム粒子の平均一次粒子径の測定には、1万倍で観察したSEM写真を用いた。
【0078】
<電池の製造>
実施例1の複合体と、結着剤としてSBRゴム(BM400B、日本ゼオン社製)とを、複合体とSBRゴムの質量比が97.5:2.5となるように微量の水と共に乳鉢で混合してスラリー状にして電極組成物を調製した。この電極組成物をアルミニウム集電体上に塗布、乾燥することで電極を得た。
【0079】
得られた電極を、LiBF
4、プロピレンカーボネート溶液を注入したコインセル型電池に、ポリオレフィン微多孔質フィルムを介して、リチウム金属箔と対向させて半電池を製造した。
【0080】
実施例2〜7の複合体、比較例1のチタン酸リチウム粒子についても、上記と同様にして半電池を製造した。
【0081】
<電池評価>
上記で得られた半電池の初期放電容量と放電容量維持率を評価し、結果を表1に示した。初期放電容量と放電容量維持率は以下のように行った。
【0082】
(初期放電容量)
25℃にて電池評価を行った。対極(リチウム電極)に対して10Cに相当する電流で1.0Vまで充電した。放電はリチウム極に対して10Cに相当する電流で2.5Vまで行い初期放電容量を測定した。容量は、用いたチタン酸リチウムの重量当たりに換算した。
【0083】
(放電容量維持率)
リチウム電極に対して100Cに相当する電流で1.0Vまで充電し、放電をリチウム電極に対して100Cに相当する電流で2.5Vまで行い初期放電容量を測定した。以下の式に示すように、100Cにおける放電容量の10Cにおける放電容量に対する比として放電容量維持率を算出し、レート特性を評価した。
【0084】
ここでいうxCとは1/x時間で充電又は放電が完了する電流値を意味する。したがって、100Cの放電レートとは(1/100)時間で充電又は放電が完了する電流値を意味する。
【0085】
放電容量維持率(%)=[(100Cにおける放電容量)/(10Cにおける放電容量)]X100
【0086】
なお、比較例1のチタン酸リチウム粒子を用いた半電池は抵抗が大きく、電流値を大きくすると過電圧となり、測定を行うことができなかった。
【0087】
【表1】
【0088】
表1に示すように、実施例1〜7の複合体を用いた半電池は、初期放電容量及び放電容量維持率において、比較例1のチタン酸リチウム粒子を用いた半電池に比べて優れており、電気的特性に優れていることがわかる。