(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ポリマー主鎖に連結しておりかつラテックスへの親和性を有する前記疎水性官能基は、前記ポリマー主鎖と、脂肪族化合物、芳香族化合物および脂肪族−芳香族化合物の群から選択される化合物との反応によって形成されるものである、請求項1に記載のポリマー。
前記ポリマー主鎖に連結しておりかつラテックスへの親和性を有する前記疎水性官能基は、前記ポリマー主鎖と、脂肪族化合物、芳香族化合物および脂肪族−芳香族化合物の群から選択される化合物との反応によって形成されるものである、請求項8に記載のポリマー改質二酸化チタン顔料。
前記ポリマー主鎖に連結しておりかつラテックスへの親和性を有する前記疎水性官能基は、前記ポリマー主鎖と、脂肪族アルコール、飽和エトキシ化アルコール、アルキルフェノール、アリールフェノール、エトキシ化アルキルフェノールおよびエトキシ化アリールフェノールからなる群から選択される化合物との反応によって形成されるものである、請求項11に記載のポリマー改質二酸化チタン顔料。
前記ポリマー主鎖に連結しておりかつラテックスへの親和性を有する前記疎水性官能基は、前記ポリマー主鎖と、エステル、チオール、酸、無水物およびハロゲン化アシルからなる群から選択される化合物との反応によって形成されるものである、請求項8に記載のポリマー改質二酸化チタン顔料。
本発明の方法に従って提供される前記個々のラテックス粒子および本発明の方法に従って提供される前記ラテックス系塗料配合物の前記ラテックス粒子が、同じ組成を有する、請求項22に記載の方法。
本発明の方法に従って提供される前記個々のラテックス粒子および本発明の方法に従って提供される前記ラテックス系塗料配合物の前記ラテックス粒子が、異なる組成を有する、請求項22に記載の方法。
【背景技術】
【0002】
二酸化チタンを製造するための硫酸化物法では、チタンスラグ鉱を硫酸中に溶解させて、硫酸チタニルを形成させる。硫酸チタニルは、次いで、加水分解されて含水二酸化チタンを形成する。水和二酸化チタンをか焼炉で加熱して、二酸化チタン結晶を顔料の寸法に成長させる。
【0003】
二酸化チタンを製造するための塩化物法では、乾燥二酸化チタン鉱を、塩素化器にコークスおよび塩素と共に供給し、ガス状のハロゲン化チタン(四塩化チタンなど)を生成させる。生成したハロゲン化チタンを精製し、特別に設計された反応器中において高温で酸化させて、所望の粒径を有する二酸化チタン粒子を生成させる。ルチル形成を促進し、粒径を制御するために、通常、酸化反応器中のハロゲン化チタンに塩化アルミニウムまたは他の何らかの共酸化剤を添加する。次いで、二酸化チタンおよびガス状反応生成物を冷却し、二酸化チタン粒子を回収する。
【0004】
硫酸化物法または塩化物法のどちらで生成されても、生成した二酸化チタン粒子は、特定の用途のための顔料の特性および特徴を改質または増強するために、通常1種または複数の無機材料でコーティングされる。例えば、顔料粒子は、多くの場合、顔料の不透明度、光安定性および耐久性を向上させるように機能する化合物でコーティングされる。二酸化チタン顔料をコーティングするのに使用される無機材料の例には、アルミナおよびシリカがある。
【0005】
二酸化チタン顔料が、塗料、紙、プラスチックおよび他の製品に与える主要な特性は、隠蔽力である。二酸化チタン顔料の隠蔽力は、それが添加されるベース生成物(例えば、塗料配合物)中で光を散乱させる顔料の能力に基づいている。それが添加されるベース生成物中で光を散乱させる顔料の能力(顔料の光散乱効率)は、顔料の粒径、顔料粒子とそれらの周囲との屈折率の差(例えば、顔料粒子とベース生成物との屈折率の大きな差は高い散乱効率をもたらす)、および顔料粒子の互いへの近接度を含む、様々な因子によって決まる。これらの因子は、様々な方法で対処されており、その成功の程度は様々である。
【0006】
水性塗料配合物における二酸化チタン顔料の使用に関連する潜在的な問題は、顔料粒子が塗料配合物中で凝集する傾向である。塗料配合物中での顔料粒子の凝集は、顔料の不透明度、明度、着色力および他の光学的性質を含む顔料の望ましい特性に悪影響を与え得る。
【0007】
例えば、水性塗料配合物における問題のある顔料凝集は、塗料フィルムが基材に塗布された後および塗料フィルムが乾燥する間に起こることが多い。光学的クラウディングと呼ばれることがあるこの現象は、顔料粒子の光散乱効率を低下させ得る。その結果、顔料の着色力が低減し得る。
【0008】
塗料配合物中で顔料が高い顔料体積濃度(「PVC」)で利用される場合、水性塗料配合物における顔料粒子の凝集の問題が悪化する。塗料配合物中のPVCが特定のレベルに上昇すると、顔料の光散乱効率が実質的に低下し得る。高PVC値においては、顔料粒子が互いにより近接し、その結果粒子のそれぞれの光散乱断面積の重なりが生じ、それによって、分散した顔料の光散乱効率が低下する。光学的クラウディング効果は、顔料の光散乱効率に加えて、顔料の光安定性、明度および不透明度をも低下させ得る。
【0009】
光学的クラウディング効果を低減させ、上述の他の問題に対処するために、種々の技術が利用されてきた。例えば、隣接する顔料粒子を互いに間隔を空けて離すために、粘土、炭酸カルシウム、アルミナおよびシリカなどの充填剤ならびに増量剤が、塗料ベース生成物に添加されてきた。顔料粒子の間隔を離すように機能する気泡をベース生成物中に生じさせるために、中空球、不透明ポリマーがベース塗料生成物に添加されてきた。また、顔料粒子は、粒子の凝集を妨げる態様で粒子の表面特性を改質するように機能する特定の無機化合物でコーティングされてきた。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の以下の詳細な説明は、本発明の種々の態様および実施形態を説明しており、当業者が本発明を実施できるように十分詳細に本発明を説明するものである。本発明の範囲から逸脱することなく、他の実施形態を利用することができ、変更を行うことができる。以下の詳細な説明は、したがって、限定的な意味に取るべきではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲が権利を有する等価物の全範囲と共に、添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。
【0017】
一態様では、本発明は、それらと共に混ぜたときに二酸化チタン粒子およびラテックス粒子と複合体を形成することができる新規なポリマーである。別の態様では、本発明は、それと共に混ぜたときにラテックス粒子と複合体を形成することができるポリマー改質二酸化チタン顔料である。さらに別の態様では、本発明は、着色された塗料配合物を形成する方法である。
【0018】
それらと共に混ぜたときに二酸化チタン粒子およびラテックス粒子と複合体を形成することができる本発明のポリマーは、水溶性ポリマー主鎖と、ポリマー主鎖に連結しておりかつラテックスへの親和性を有する少なくとも1個の疎水性官能基(以後「ラテックス官能基」)と、ポリマー主鎖に連結しておりかつ二酸化チタンと結合を形成することができる少なくとも1個の官能基(以後「二酸化チタン官能基」)とを含む。例えば、ラテックス官能基および二酸化チタン官能基は、ポリマー主鎖と共有結合することができる。
【0019】
本明細書および添付の特許請求の範囲では、二酸化チタンおよび二酸化チタン顔料はそれぞれ複数の二酸化チタン粒子を表す。ラテックスおよびラテックス粒子はそれぞれ、水などの水性媒体中に分散させて水性ラテックスコーティング配合物、例えばラテックス塗料配合物などを形成することができるラテックス樹脂粒子を表す。ラテックスは、合成または天然ラテックスであってよい。例えば、ラテックスは、アクリル、ビニルアクリルまたはスチレンアクリルラテックス樹脂であってよい。
本明細書および添付の特許請求の範囲では、用語「ポリマー」には、ホモポリマーおよびコポリマーが含まれる。二酸化チタン官能基は、二酸化チタンと結合を形成することができる官能基を表す。ラテックス官能基は、ラテックスへの親和性を有する疎水性官能基を表す。
【0020】
また、本明細書および添付の特許請求の範囲では、第2の成分に「親和性を有する」1つの成分は、2つの成分が一緒に混ぜられた場合、ファンデルワールス力、水素結合、極性−極性引力、疎水性−疎水性会合および/または他の類似の相互作用のために、その1つの成分が第2の成分に近接して保持されることを表す。1つまたは複数の相互作用のタイプは、官能基の性質によって異なりうる。本明細書では、第2の成分と「結合を形成することができる」1つの成分は、2つの成分が一緒に混ぜられた場合、その1つの成分が第2の成分と共有結合、イオン結合、または水素結合を形成する、または形成したことを表す。1つまたは複数の結合のタイプは、官能基の性質によって異なりうる。
【0021】
一実施形態では、二酸化チタン官能基は、ポリマー主鎖と、リンを含む酸、ヒドロキシルカルボン酸、ヒドロキシルカルボン酸の塩、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸の塩、カルボキシレート系ベタイン、スルホネート系ベタイン、ホスフェート系ベタインおよびそれらの混合物からなる群から選択される化合物との反応によって形成されるものである。例えば、ポリマー主鎖と反応して二酸化チタン官能基を形成することができる特定のリンを含む酸には、リン酸、リン酸の塩、ホスホン酸、ホスホン酸の塩、リン酸−カルボン酸、リン酸−カルボン酸(phosphoric carboxylic acid)の塩、ホスホン酸−カルボン酸およびホスホン酸−カルボン酸の塩がある。
【0022】
例えば、二酸化チタン官能基は、ポリマー主鎖と、ホスホン酸−カルボン酸、ホスホン酸−カルボン酸の塩、ヒドロキシルカルボン酸、ヒドロキシルカルボン酸の塩、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸の塩、カルボキシレート系ベタイン、スルホネート系ベタイン、ホスフェート系ベタインおよびそれらの混合物からなる群から選択される化合物との反応によって形成することができる。
【0023】
例えば、二酸化チタン官能基は、ポリマー主鎖と、リン酸およびリン酸の塩からなる群から選択される化合物との反応によって形成することができる。例えば、二酸化チタン官能基は、ポリマー主鎖と、ホスホン酸およびホスホン酸の塩からなる群から選択される化合物との反応によって形成することができる。さらなる例として、二酸化チタン官能基は、ポリマー主鎖とホスホン酸との反応によって形成することができる。
【0024】
例えば、二酸化チタン官能基は、ポリマー主鎖と、リン酸−カルボン酸およびリン酸−カルボン酸の塩からなる群から選択される化合物との反応によって形成することができる。
【0025】
例えば、二酸化チタン官能基は、ポリマー主鎖とホスホン酸−カルボン酸およびホスホン酸−カルボン酸の塩からなる群から選択される化合物との反応によって形成することができる。例えば、二酸化チタン官能基は、ポリマー主鎖とホスホン酸−カルボン酸との反応によって形成することができる。さらなる例として、二酸化チタン官能基は、ポリマー主鎖と2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸との反応によって形成することができる。
【0026】
例えば、二酸化チタン官能基は、ポリマー主鎖と、ヒドロキシルカルボン酸、ヒドロキシルカルボン酸の塩、ポリカルボン酸およびポリカルボン酸の塩からなる群から選択される化合物との反応によって形成することができる。例えば、二酸化チタン官能基は、ポリマー主鎖とヒドロキシルカルボン酸との反応によって形成することができる。例えば、二酸化チタン官能基は、ポリマー主鎖と、クエン酸、酒石酸およびそれらの混合物からなる群から選択される化合物との反応によって形成することができる。例えば、二酸化チタン官能基は、ポリマー主鎖とクエン酸との反応によって形成されるものである。例えば、二酸化チタン官能基は、ポリマー主鎖と酒石酸との反応によって形成されるものである。
【0027】
例えば、二酸化チタン官能基は、ポリマー主鎖と、カルボキシレート系ベタイン、スルホネート系ベタイン、ホスフェート系ベタインおよびそれらの混合物からなる群から選択される化合物との反応によって形成することができる。本明細書では、ベタインは、そのカチオン性官能基が水素原子を含まない、正に帯電したカチオン性官能基を有し、かつカチオン性官能基に隣接していない負に帯電した官能基を有する化合物である。したがって、カルボキシレート系ベタインは、カルボキシレート官能基をさらに含むベタインであり、スルホネート系ベタインは、スルホネート系官能基をさらに含むベタインであり、ホスフェート系ベタインは、ホスフェート系官能基をさらに含む官能基である。
【0028】
例えば、ラテックス官能基は、超疎水性官能基であってよい。本明細書および添付の特許請求の範囲では、疎水性官能基は、水に対する引力を欠く、または水によってはじかれた官能基を表す。超疎水性官能基は、官能基に対する水の接触角が150°を超えることを表す。
【0029】
例えば、ラテックス官能基は、ポリマー主鎖と、脂肪族化合物、芳香族化合物および脂肪族−芳香族化合物の群から選択される化合物との反応によって形成することができる。さらなる例として、ラテックス官能基は、ポリマー主鎖と、アルキル/シクロアルキル/アリール/アルキルアリールアルコール、アルキル/シクロアルキル/アリール/アルキルアリール酸、およびアルキル/シクロアルキル/アリール/アルキルアリールアミドの群から選択される化合物との反応によって形成することができる。さらなる例として、ラテックス官能基は、ポリマー主鎖とエトキシ化アルキル/シクロアルキル/アリール/アルキルアリールアルコールとの反応によって形成することができる。
【0030】
さらなる例として、ラテックス官能基は、ポリマー主鎖とアルコールとの反応によって形成することができる。例えば、ラテックス官能基は、ポリマー主鎖と、脂肪族アルコール、飽和エトキシ化アルコール、アルキルフェノール、アリールフェノール、エトキシ化アルキルフェノールおよびエトキシ化アリールフェノールからなる群から選択される化合物との反応によって形成することができる。例えば、ラテックス官能基は、ポリマー主鎖と、脂肪族アルコール、エトキシ化アルコールおよびフェノールからなる群から選択される化合物との反応によって形成することができる。例には、セチルアルコールおよびステアリルアルコールなどのC6〜C24飽和アルコール、エルシルアルコールなどのC6〜C24不飽和アルコール、ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル(例えば、Croda(登録商標)によってBrij(商標)S10として販売されている)などのC6〜C24飽和エトキシ化アルコール、ならびにポリオキシエチレン(20)オレイルエーテル(例えば、Croda(登録商標)によって販売されているBrij(商標)O20)、ノニルフェノール、およびトリスチリルフェノールなどのC6〜C24不飽和エトキシ化アルコールがある。
【0031】
例えば、ラテックス官能基は、ポリマー主鎖と、エステル、チオール、酸、無水物およびハロゲン化アシルからなる群から選択される化合物との反応によって形成することができる。例えば、ラテックス官能基は、ポリマー主鎖と、脂肪酸エステル、脂肪チオール、脂肪酸および脂肪酸無水物からなる群から選択される化合物との反応によって形成することができる。例には、ステアリン酸メチル、1−ドデカンチオール、パルミチン酸および脂肪酸塩化物がある。
【0032】
例えば、水溶性ポリマー主鎖は、窒素を含んでいてよい。例えば、水溶性ポリマー主鎖は、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリオキサゾリンおよびポリアミドからなる群から選択することができる。
【0033】
例えば、水溶性ポリマー主鎖は、ポリオキシアルキレン、多糖、ポリオキサゾリン、およびポリビニルエーテルからなる群から選択することができる。例えば、水溶性ポリマー主鎖は、ポリオキシアルキレンポリマーまたはコポリマーであってよい。さらなる例として、水溶性ポリマー主鎖は、ポリオキシメチレンであってよい。例えば、水溶性ポリマー主鎖は、ポリエチレングリコールまたはポリプロピレングリコールであってよい。例えば、水溶性ポリマー主鎖は、ポリエチレングリコール−co−ポリプロピレングリコールであってよい。例えば、水溶性ポリマー主鎖は、ポリアクリル酸であってよい。一例として、水溶性ポリマー主鎖は、ポリ(メチルビニルエーテル)またはポリ(エチルビニルエーテル)であってよい。
【0034】
ポリマー主鎖に連結した二酸化チタン官能基およびラテックス官能基の数は、変わり得る。例えば、一実施形態では、ポリマーは、複数の二酸化チタン官能基、および単一のラテックス官能基を含む。別の実施形態では、ポリマーは、複数のラテックス官能基、および単一の二酸化チタン官能基を含む。さらに別の実施形態では、ポリマーは、複数の二酸化チタン官能基および複数のラテックス官能基を含む。二酸化チタン官能基およびラテックス官能基は、ポリマー主鎖上の任意のポイントで連結していてよい。
【0035】
二酸化チタン官能基およびラテックス官能基は、ポリマー主鎖上の任意のポイントで連結していてよい。例えば、1個または複数個の二酸化チタン官能基は、ポリマー主鎖の一端で連結していてよく、1個または複数個のラテックス官能基は、ポリマー主鎖の他端で連結していてよい。
【0036】
水溶性ポリマー主鎖は、直鎖状、分枝状、または星形であってよい。例えば、水溶性ポリマー主鎖は、分子量が1,000〜60,000の範囲であってよい。さらなる例として、水溶性ポリマー主鎖は、分子量が1,500〜30,000の範囲であってよい。さらなる例として、水溶性ポリマー主鎖は、分子量が2,000〜10,000の範囲であってよい。本明細書および添付の特許請求の範囲では、ポリマー主鎖または他のポリマーの「分子量」は、ポリマー主鎖または他のポリマーの数平均分子量を表す。水溶性の主鎖は、水性媒体(例えば、水)中で溶媒和させることができ、それによってポリマーの二酸化チタン官能基に結合した二酸化チタン粒子とポリマーのラテックス官能基と会合したラテックス粒子との間の接続橋として作用する。
【0037】
一実施形態では、水溶性ポリマー主鎖は、長手方向軸を有し、かつ第1の端部および第2の端部を有する直鎖状ポリマー主鎖である。例えば、1個または複数個の二酸化チタン官能基は、ポリマー主鎖の第1の端部に連結させることができ、それによってそれぞれがポリマーの頭部を形成し、1個または複数個のラテックス官能基は、ポリマー主鎖の第2の端部に連結させることができ、それによってそれぞれがポリマーの尾部を形成する。他の実施形態では、ポリマーは、1個または複数個の二酸化チタン官能基および1個または複数個のラテックス官能基に連結した複数の主鎖を含んでいてよい。
【0038】
例えば、一実施形態では、それらと共に混ぜたときに二酸化チタン粒子およびラテックス粒子と複合体を形成することができる本発明のポリマーは、以下の式を有し:
【化1】
式中、R
0は、水溶性ポリマー主鎖であり、R
1は、ポリマー主鎖に連結しておりかつラテックスへの親和性を有する疎水性官能基であり、R
2は、ジイソシアネートまたはポリイソシアネートと水溶性ポリマー主鎖との反応によって形成され、R
3は、ポリマー主鎖に連結しておりかつ二酸化チタンと結合を形成することができる官能基であり、xは、1以上の任意の整数である。例えば、R
0は、以下の式を有していてよく:
【化2】
式中、R
4およびR
5は、水素、メチル、エチル、プロピル、ブチル、またはペンチル基からなる群から選択される化合物であり、同じであっても異なっていてもよく、yおよびzは、どちらも1以上の任意の整数であってよい。例えば、R
1は、アルキル、アリール、もしくはアルキルアリール基、または6個より多い炭素原子を有するアルキル、アリール、もしくはアルキルアリール基のエトキシレートであってよい。R
2を形成するのに使用できるイソシアネートの例には、ヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートホモポリマー、イソホロンジイソシアネート、およびイソホロンジイソシアネートホモポリマーがある。
【0039】
本発明のポリマーに関連して使用するのに適したポリマー主鎖およびラテックス官能基を含む市販されているポリマーの例は、ポリオキシエチレンステアリルエーテルである。例えば、このような化合物は、以下の式を有していてよく:
【化3】
式中、nは、30〜200である。
上記化合物のエチレンオキシド繰返し単位は、本発明のポリマーのポリマー主鎖として機能し得る。上記化合物の直鎖状炭素脂肪族尾部は、本発明のポリマーのラテックス官能基として機能し得る。したがって、ポリオキシエチレンステアリルエーテルは、ラテックス官能基として役立つ尾部と適当なポリマー主鎖のどちらも有する。例えば、上記式中の「n」が100であるような化合物は、名称Brij(商標)S100に関連するポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテルとしてCroda(登録商標)USAによって販売されている。水溶性ポリマー主鎖とラテックス官能基のどちらも含有し、かつ本発明のポリマーに関連して使用できる市販されているポリマーの他の例には、ノニルフェノールエトキシレート(例えば、Rhodia(登録商標)によって販売されているIgepal(登録商標)CO−987)、ジノニルフェノールエトキシレート(例えば、Rhodia(登録商標)によって販売されているIgepal(登録商標)DM−970)、トリ−sec−ブチルフェノールエトキシレート(例えば、Clariant(登録商標)によって販売されているSapogenat(登録商標)T 500)、およびトリスチリルフェノールエトキシレート(例えば、Clariant(登録商標)によって販売されているEmulsogen(登録商標)TS540)がある。
【0040】
ポリマー主鎖の水溶性は、本発明のポリマーが二酸化チタン媒体の表面上で崩壊するのを防ぐのに役立ち、かつコーティング配合物が乾燥するときでさえポリマーが水性コーティング配合物中で機能し続けることを保証するのに役立つ。本発明のポリマーのポリマー主鎖は一般に水溶性だが、水性媒体中に不溶性のいくつかの繰返し単位を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、ポリマー主鎖は、いくつかの不溶性の繰返し単位を有するコポリマーである。
【0041】
ここで図面、特に
図1および2を参照すると、それらと共に混ぜたときに二酸化チタン粒子およびラテックス粒子と複合体を形成することができる本発明のポリマーの特定の一実施形態が、概略的に例示されており、符号10で全体として表されている。この実施形態では、ポリマー10は、長手方向軸16を有する直鎖状ポリマー主鎖12を含む。ポリマー主鎖12は、第1の端部18および第2の端部20を有する。二酸化チタン官能基30は、ポリマー主鎖12の第1の端部18に連結しており、ポリマー10の頭部32を形成する。ラテックス官能基40は、ポリマー主鎖12の第2の端部20に連結しており、ポリマー10の尾部42を形成する。
【0042】
図2は、ポリマー10と二酸化チタン粒子50およびラテックス粒子60との相互作用を示す。
図2が示すとおり、ポリマー10の頭部32は、二酸化チタン粒子50と結合しており、それによってポリマーの残りが二酸化チタン粒子50と会合する。ポリマー10の尾部42は、ラテックス粒子60と会合しており、それによってポリマーの残りがラテックス粒子60と会合する。
【0043】
それと共に混ぜたときにラテックス粒子と複合体を形成することができる本発明のポリマー改質二酸化チタン顔料は、複数の二酸化チタン粒子と、二酸化チタン粒子と会合したポリマーを含む。二酸化チタン粒子と会合したポリマーは、本明細書に記載された本発明のポリマーである(上記ならびに以下の実施例および特許請求の範囲の本発明のポリマーの全ての形態および実施形態を含む)。ポリマー主鎖に連結しておりかつ二酸化チタンと結合を形成することができる本発明のポリマーの官能基は、二酸化チタン粒子と結合している。
【0044】
本発明のポリマー改質二酸化チタン顔料の二酸化チタン粒子は、例えば、その両方が当技術分野で既知である硫酸化物法または塩化物法によって製造することができる。例えば、本発明のポリマー改質二酸化チタン顔料の二酸化チタン粒子は、塩化物法によって製造されたルチル型二酸化チタン粒子であってよい。例えば、アルミナは、二酸化チタン粒子の格子構造に取り込まれてルチル化(rutilization)を促進し、粒径を制御することができる。二酸化チタン粒子を製造するための塩化物法を使用した場合、プロセスの気相酸化ステップ中に塩化アルミニウムを反応物に添加することにより、アルミナを粒子の格子構造に付与することができる。
【0045】
二酸化チタン粒子は、特定の用途のための、顔料の特性および特徴を改質するために、1種または複数の材料でコーティングすることができる。一実施形態では、二酸化チタン粒子は、シリカ、アルミナおよびそれらの混合物からなる群から選択される材料によってコーティングされている。
【0046】
例えば、ポリマーは、本発明のポリマー改質二酸化チタン顔料中に、二酸化チタン粒子の重量に基づいて約0.02重量%〜約2重量%の範囲の量で存在する。特に指定のない限り、実施例および特許請求の範囲を含めた本明細書では、重量パーセントの形で表される成分の量は、成分の乾燥重量に基づいている。例えば、ポリマーは、ポリマー改質二酸化チタン顔料中に、二酸化チタン粒子の重量に基づいて約0.05重量%〜約1重量%の範囲の量で存在する。さらなる例として、ポリマーは、ポリマー改質二酸化チタン顔料中に、二酸化チタン粒子の重量に基づいて約0.05重量%〜約0.5重量%の範囲の量で存在する。
【0047】
例えば、本発明のポリマー改質二酸化チタン顔料は、複数の二酸化チタン粒子をポリマーと水性媒体中で混合することによって形成することができる。例えば、本発明のポリマー改質二酸化チタン顔料は、スラリー形態で提供することができる。さらなる例として、ポリマー改質二酸化チタン顔料は、複数の二酸化チタン粒子をポリマーと乾燥形態で混合することによって形成することができる。例えば、複数の二酸化チタン粒子は、実質的に水分を含まない粉末の形態であってよい。
【0048】
一実施形態では、本発明のポリマーは、粒子の表面上に本発明のポリマーの層を直接被着させることによって、二酸化チタン粒子と会合している。別の実施形態では、本発明のポリマーは、ポリマー粒子と、水などの水性媒体中で混合することによって、二酸化チタン粒子と会合している。二酸化チタン粒子と共に溶液中に入れられた場合、ポリマーは、ポリマーの二酸化チタン官能基が二酸化チタン粒子に結合するように、それ自体を配向させる。一実施形態では、本発明のポリマーは、顔料製造プロセス中に二酸化チタン粒子と会合することができる。ポリマー改質二酸化チタン顔料粒子は、次いで、水性ラテックス含有塗料配合物に添加することができる。
【0049】
それと共に混ぜたときにラテックス粒子と複合体を形成することができる本発明のポリマー改質二酸化チタン顔料は、ほとんどのタイプのラテックスに対して一般に親和性を有している。それは、ラテックスとの複合体を形成するのにラテックスと十分強い相互作用がある。着色されたラテックス系塗料配合物における二酸化チタン粒子の間隔をより良くし、隠蔽力の向上をもたらす、ポリマー改質、顔料−ラテックス複合体を形成することができる。ポリマー改質二酸化チタン顔料粒子とラテックス粒子の間の相互作用は主として、ラテックスとは対照的なポリマー改質二酸化チタン顔料の特性によるものである。結果として、本発明のポリマー改質二酸化チタン顔料は、非吸収性の従来のラテックス樹脂を含むほとんどのタイプのラテックス樹脂と組み合せて使用でき、対応するコーティング配合物に関連して隠蔽力が向上する。本発明のポリマー改質二酸化チタン顔料は、コーティング配合物の他の全体的な特性および性能を著しく変化させない。
【0050】
着色された塗料配合物を形成する本発明の方法は:ポリマー改質二酸化チタン顔料を提供するステップ;複数の個々のラテックス粒子を提供するステップ、ラテックス粒子を含むラテックス系塗料配合物を提供するステップ;ポリマー改質二酸化チタン顔料を個々のラテックス粒子と混合して、ポリマー改質顔料−ラテックス複合体を形成するステップ;およびポリマー改質顔料−ラテックス複合体をラテックス系塗料配合物と混合して、着色されたラテックス系塗料配合物を形成するステップを含む。本明細書および添付の特許請求の範囲では、個々のラテックス粒子は、本発明の方法に従って提供されるラテックス系塗料配合物の一部ではないラテックス粒子を表す。
【0051】
本発明の方法に従って提供されるポリマー改質二酸化チタン顔料は、本明細書に記載された、それと共に混ぜたときにラテックス粒子と複合体を形成することができる本発明のポリマー改質二酸化チタン顔料である(上記ならびに以下の実施例および特許請求の範囲の本発明のポリマー改質二酸化チタン顔料の全ての形態および実施形態を含む)。
【0052】
例えば、本発明の方法に従って提供される個々のラテックス粒子および本発明の方法に従って提供されるラテックス系塗料配合物のラテックス粒子は、同じ組成または異なる組成を有していてもよい。ほとんどの場合、本発明の方法に従って提供される個々のラテックス粒子および本発明の方法に従って提供されるラテックス系塗料配合物のラテックス粒子は、同じ組成を有する。
【0053】
種々の異なるタイプのラテックス粒子は、本発明の方法に従って提供される個々のラテックス粒子、および/または本発明の方法に従って提供されるラテックス系塗料配合物のラテックス粒子として使用することができる。利用されるラテックス粒子のタイプは、本発明のポリマー改質二酸化チタン顔料を形成するために使用される本発明のポリマーのラテックス官能基の性質によって決まるはずである。例えば、本発明の方法に従って提供される個々のラテックス粒子、および/または本発明の方法に従って提供されるラテックス系塗料配合物のラテックス粒子は、アクリルラテックス、スチレンアクリルラテックスおよびポリビニルアクリルラテックスからなる群から選択されるラテックスで成形することができる。例えば、本発明の方法に従って提供される個々のラテックス粒子、および/または本発明の方法に従って提供されるラテックス系塗料配合物のラテックス粒子は、アクリルラテックスで成形することができる。例えば、本発明の方法に従って提供される個々のラテックス粒子、および/または本発明の方法に従って提供されるラテックス系塗料配合物のラテックス粒子は、スチレンアクリルラテックスで成形することができる。例えば、本発明の方法に従って提供される個々のラテックス粒子、および/または本発明の方法に従って提供されるラテックス系塗料配合物のラテックス粒子は、ポリビニルアクリルラテックスで成形することができる。
【0054】
例えば、個々のラテックス粒子は、
ポリマー改質二酸化チタン顔料中の二酸化チタン粒子の重量に基づいて約20重量%〜約70重量%の範囲の量において、ポリマー改質二酸化チタン顔料と混合して
、ポリマー改質顔料−ラテックス複合体を形成する。例えば、個々のラテックス粒子は、
ポリマー改質二酸化チタン顔料中の二酸化チタン粒子の重量に基づいて約30重量%〜約60重量%の範囲の量において、ポリマー改質二酸化チタン顔料と混合して
、ポリマー改質顔料−ラテックス複合体を形成する。例えば、個々のラテックス粒子は、
ポリマー改質二酸化チタン顔料中の二酸化チタン粒子の重量に基づいて約30重量%〜約40重量%の範囲の量において、ポリマー改質二酸化チタン顔料と混合して
、ポリマー改質顔料−ラテックス複合体を形成する。
【0055】
ここで
図3を参照すると、本発明の方法が部分的に例示されている。ポリマー改質二酸化チタン顔料を提供するステップ、複数の個々のラテックス粒子を提供するステップ、およびラテックス系塗料配合物を提供するステップは、
図3によって示されていない。
【0056】
図3のセクション1Aおよび1Bが示すとおり、ポリマー改質二酸化チタン顔料粒子100は、個々のラテックス粒子120と水性媒体(図示せず)中で混合して、水性媒体中にポリマー改質顔料−ラテックス複合体粒子130を形成する。ポリマー改質二酸化チタン顔料粒子100はそれぞれ、二酸化チタン粒子102およびそれと会合した本発明のポリマー106を含む。特に、ポリマー106の二酸化チタン官能基は、対応する二酸化チタン粒子102に結合している。ポリマー106のラテックス官能基は、ラテックスの個々の粒子120と相互作用して、ポリマー改質二酸化チタン顔料粒子100の表面上に個々のラテックス粒子120を吸着させ、粒子100を取り囲んでポリマー改質顔料−ラテックス複合体粒子130を形成する。ポリマー改質二酸化チタン顔料粒子100は、個々のラテックス粒子120と水性媒体(図示せず)中で混合して、ポリマー改質顔料−ラテックス複合体粒子130を低剪断で形成する。
【0057】
図3のセクション1Bおよび1Cが示すとおり、ポリマー改質顔料−ラテックス複合体粒子130は、次いで、ラテックス系塗料配合物140(水性媒体中に分散されたラテックス粒子122を含む;例えば、液体塗料)(塗料配合物140のラテックス粒子122だけが示されている)と混合して、着色されたラテックス系塗料配合物150(ポリマー改質顔料−ラテックス複合体粒子130、ラテックス粒子120およびラテックス粒子122だけが示されている)を形成する。ポリマー改質顔料−ラテックス複合体粒子130は、着色されたラテックス系塗料配合物150の全体にわたって均等に分散されている。
【0058】
図3のセクション1Dは、壁または他の表面170に塗布され、乾燥された、着色されたラテックス系塗料配合物150の乾燥塗料フィルム160を例示している。ラテックス粒子120がポリマー改質二酸化チタン粒子100上に強力に吸着しているので、二酸化チタン粒子100は、互いの接触が妨げられ、塗料配合物が乾燥した後でも塗料配合物150中に均等に分散したままである。
【0059】
したがって、特定の一実施形態では、本発明は、それらと共に混ぜたときに二酸化チタン粒子およびラテックス粒子と複合体を形成することができる新規なポリマーである。ポリマーは、水溶性ポリマー主鎖、ポリマー主鎖に連結しておりかつラテックスへの親和性を有する少なくとも1個の疎水性官能基、およびポリマー主鎖に連結しておりかつ二酸化チタンと結合を形成することができる少なくとも1個の官能基を含む。この実施形態では、前記ポリマー主鎖に連結しておりかつ二酸化チタンと結合を形成することができる官能基は、前記ポリマー主鎖と、リンを含む酸、ヒドロキシルカルボン酸、ヒドロキシルカルボン酸の塩、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸の塩、カルボキシレート系ベタイン、スルホネート系ベタイン、ホスフェート系ベタインおよびそれらの混合物からなる群から選択される化合物との反応によって形成されるものである。
【0060】
特定の別の実施形態では、本発明は、それと共に混ぜたときにラテックス粒子と複合体を形成することができるポリマー改質二酸化チタン顔料である。ポリマー改質二酸化チタン顔料は、複数の二酸化チタン粒子、および二酸化チタン粒子と会合したポリマーを含む。二酸化チタン粒子と会合したポリマーは、本発明のポリマーである。この実施形態では、ポリマー主鎖に連結しておりかつ二酸化チタンと結合を形成することができる本発明のポリマーの官能基は、二酸化チタン粒子と結合しており、前記ポリマー主鎖と、リンを含む酸、ヒドロキシルカルボン酸、ヒドロキシルカルボン酸の塩、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸の塩、カルボキシレート系ベタイン、スルホネート系ベタイン、ホスフェート系ベタインおよびそれらの混合物からなる群から選択される化合物との反応によって形成されるものである。
【0061】
さらに別の実施形態では、本発明は、着色された塗料配合物を形成する方法である。この方法は、ポリマー改質二酸化チタン顔料を提供するステップ、複数の個々のラテックス粒子を提供するステップ、ラテックス系塗料配合物を提供するステップ、ポリマー改質二酸化チタン顔料を個々のラテックス粒子と混合して、ポリマー改質顔料−ラテックス複合体を形成するステップ、およびポリマー改質顔料−ラテックス複合体をラテックス系塗料配合物と混合して、着色されたラテックス系塗料配合物を形成するステップを含む。この方法に従って提供されたポリマー改質二酸化チタン顔料は、複数の二酸化チタン粒子、および二酸化チタン粒子と会合したポリマーを含む。二酸化チタン粒子と会合したポリマーが本発明のポリマーである。この実施形態では、ポリマー主鎖に連結しておりかつ二酸化チタンと結合を形成することができる本発明のポリマーの官能基は、二酸化チタン粒子と結合しており、前記ポリマー主鎖と、リンを含む酸、ヒドロキシルカルボン酸、ヒドロキシルカルボン酸の塩、ポリカルボン酸、ポリカルボン酸の塩、カルボキシレート系ベタイン、スルホネート系ベタイン、ホスフェート系ベタインおよびそれらの混合物からなる群から選択される化合物との反応によって形成されるものである。
【実施例】
【0062】
本発明は、以下の実施例によって例示されている。
【0063】
以下の実施例では、Brij(商標)S100は、Croda(登録商標)USAによって販売されているポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテルを意味する。Tolonate(商標)HDB−LVは、Vencorex(登録商標)によって販売されているヘキサメチレンジイソシアネートホモポリマーを意味する。Bayhibit AM(登録商標)は、Lanxess(登録商標)によって販売されている2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸溶液を意味する。FTIRは、フーリエ変換赤外分光法を意味する。
【0064】
以下の各合成例1〜7では、ポリオキシエチレン(100)ステアリルエーテル(Croda(登録商標)USAによって販売されているBrij(商標))を使用して、本発明のポリマーの水溶性ポリマー主鎖および疎水性ラテックス官能基を形成した。本発明のポリマーの二酸化チタン官能基は、各実施例で異なっていた。合成に使用したイソシアネート基も異なっていた。合成手順を例示した概略図を以下に記載する:
【化4】
【0065】
(合成例1)
2−ホスホノブタン−1,2,
4−トリカルボン酸とジメチルホルムアミドの溶液を調製した。最初に、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸(Bayhibit AM(登録商標))の50%水溶液を、乾燥器中105℃で乾燥させて、溶液から水を除去した。残留物を乾燥ジメチルホルムアミド中で溶解させて、11.5% 2−ホスホノブタン−1,2,
4−トリカルボン酸/ジメチルホルムアミド溶液を形成した。
【0066】
反応中に窒素保護を使用した。Brij(登録商標)S100 9.34グラムとトルエン60ミリリットルを三つ口丸底フラスコ中で混ぜ合わせた。混合物からの残留水を共沸蒸留によって除去した。次いで生成物を50℃まで冷まし、その時点でトルエン5ミリリットル中Tolonate(商標)HDB−LV 1.07グラムとジラウリン酸ジブチルスズ0.10グラムを撹拌しながら添加した。次いで生成物を50℃で3時間混合し、その時点で2−ホスホノブタン−1,2,
4−トリカルボン酸/ジメチルホルムアミド溶液(11.5%)9.39グラムを添加した。生成物を乾燥ジメチルホルムアミド5ミリリットルで洗浄し、反応器中に投入し、さらなる反応のために50℃で混合した。FTIRを使用して、イソシアネート基のピークを消えるまでモニターした。生成物中に残っている溶媒を真空蒸発によって除去し、生成物を恒量まで乾燥させた。
【0067】
(合成例2)
反応中に窒素保護を使用した。Brij(登録商標)S100 9.34グラムとトルエン60ミリリットルを三つ口丸底フラスコ中で混ぜ合わせた。混合物からの残留水を共沸蒸留によって除去した。次いで生成物を50℃まで冷まし、その時点でトルエン5ミリリットル中Tolonate(商標)HDB−LV 1.07グラムとジラウリン酸ジブチルスズ0.10グラムを撹拌しながら添加した。次いで生成物を50℃で3時間混合し、その時点でジメチルホルムアミド10ミリリットル中酒石酸0.600グラムを次いで添加した。生成物を乾燥ジメチルホルムアミド5ミリリットルで洗浄し、反応器中に投入し、さらなる反応のために50℃で混合した。FTIRを使用して、イソシアネート基のピークを消えるまでモニターした。生成物中に残っている溶媒を真空蒸発によって除去し、恒量まで乾燥させた。
【0068】
(合成例3)
反応中に窒素保護を使用した。Brij(登録商標)S100 9.34グラムとトルエン60ミリリットルを三つ口丸底フラスコ中で混ぜ合わせた。混合物からの残留水を共沸蒸留によって除去した。次いで生成物を50℃まで冷まし、その時点でトルエン5ミリリットル中Tolonate(商標)HDB−LV 1.07グラムとジラウリン酸ジブチルスズ0.10グラムを撹拌しながら添加した。次いで生成物を50℃で3時間混合し、その時点でジメチルホルムアミド10ミリリットル中クエン酸0.768グラムを添加した。生成物を次いで乾燥ジメチルホルムアミド5ミリリットルで洗浄し、反応器中に投入し、さらなる反応のために50℃で混合した。FTIRを使用して、イソシアネート基のピークを消えるまでモニターした。生成物中に残っている溶媒を真空蒸発によって除去し、生成物を恒量まで乾燥させた。
【0069】
(合成例4)
2−ホスホノブタン−1,2,
4−トリカルボン酸とジメチルホルムアミドの溶液を調製した。最初に、2−ホスホノブタン−1,2,4−トリカルボン酸(Bayhibit AM(登録商標))の50%水溶液を、乾燥器中105℃で乾燥させて、溶液から水を除去した。残留物を乾燥ジメチルホルムアミド中で溶解させて、11.5% 2−ホスホノブタン−1,2,
4−トリカルボン酸/ジメチルホルムアミド溶液を形成した。
【0070】
反応中に窒素保護を使用した。Brij(登録商標)S100 9.34グラムとトルエン60ミリリットルを三つ口丸底フラスコ中で混ぜ合わせた。混合物からの残留水を共沸蒸留によって除去した。生成物を70℃まで冷まし、その時点でトルエン5ml中イソホロンジイソシアネート0.466グラムとジラウリン酸ジブチルスズ0.10グラムを撹拌しながら添加した。次いで生成物を95℃で3時間混合し、その時点で2−ホスホノブタン−1,2,
4−トリカルボン酸/ジメチルホルムアミド溶液(11.5%)4.70グラムを添加した。次いで生成物を乾燥ジメチルホルムアミド5ミリリットルで洗浄し、反応器中に投入し、さらなる反応のために85℃で混合した。FTIRを使用して、イソシアネート基のピークを消えるまでモニターした。生成物中に残っている溶媒を真空蒸発によって除去し、生成物を恒量まで乾燥させた。
【0071】
(合成例5)
反応中に窒素保護を使用した。Brij(登録商標)S100 9.34グラムとトルエン60ミリリットルを三つ口丸底フラスコ中で混ぜ合わせた。混合物からの残留水を共沸蒸留によって除去した。生成物を70℃まで冷まし、その時点でトルエン5ミリリットル中イソホロンジイソシアネート0.466グラムとジラウリン酸ジブチルスズ0.10グラムを撹拌しながら添加した。次いで生成物を95℃で3時間混合し、その時点でジメチルホルムアミド10ミリリットル中酒石酸0.300グラムを添加した。次いで生成物を乾燥ジメチルホルムアミド5ミリリットルで洗浄し、反応器中に投入し、さらなる反応のために85℃で混合した。FTIRを使用して、イソシアネート基のピークを消えるまでモニターした。生成物中に残っている溶媒を真空蒸発によって除去し、生成物を恒量まで乾燥させた。
【0072】
(合成例6)
反応中に窒素保護を使用した。Brij(登録商標)S100 9.34グラムとトルエン60ミリリットルを三つ口丸底フラスコ中で混ぜ合わせた。残留水を共沸蒸留によって除去した。生成物を70℃まで冷まし、その時点でトルエン5ミリリットル中イソホロンジイソシアネート0.466グラムとジラウリン酸ジブチルスズ0.10グラムも撹拌しながら添加した。生成物を95℃で3時間混合し、その時点でジメチルホルムアミド10ミリリットル中クエン酸0.384グラムを添加した。次いで生成物を乾燥ジメチルホルムアミド5ミリリットルで洗浄し、反応器中に投入し、さらなる反応のために85℃で混合した。FTIRを使用して、イソシアネート基のピークを消えるまでモニターした。生成物中に残っている溶媒を真空蒸発によって除去し、生成物を恒量まで乾燥させた。
【0073】
(合成例7)
反応中に窒素保護を使用した。Brij(登録商標)S100 14.01グラムとトルエン80ミリリットルを三つ口丸底フラスコ中で混ぜ合わせた。残留水を共沸蒸留によって除去した。生成物を70℃まで冷まし、その時点でトルエン5ミリリットル中イソホロンジイソシアネート0.699グラムとジラウリン酸ジブチルスズ0.15グラムを撹拌しながら添加した。生成物を95℃で3時間混合した。温度を50℃まで下げ、その時点でN,N−ジメチルエチレンジアミン0.264グラムを添加した。FTIRを使用して、イソシアネート基のピークを消えるまでモニターした。混合物を室温まで冷まし、1,3−プロパンスルトン0.366gを添加した。生成物を周囲条件で2時間混合した。生成物中に残っている溶媒を真空蒸発によって除去し、生成物を恒量まで乾燥させた。カルボキシレートならびにホスフェート系ベタインを用いて類似のポリマーを合成した。
【0074】
(合成例の試験)
上記のように合成したポリマーを試験するために、各ポリマーを、プロピレングリコールと水の混合物中に溶解させた。次いで二酸化チタンスラリーの調製中にポリマーを使用して二酸化チタンを処理した。使用した二酸化チタンは、Tronox LLC製のユニバーサルグレードCR−826顔料であった。
【0075】
二酸化チタンスラリーは、親水性アクリル酸コポリマー系分散剤を用いて作製した。各合成ポリマーを二酸化チタン粒子に二酸化チタン粒子の重量に基づいて0.02重量%〜2重量%の範囲の量で添加した。
【0076】
次いでポリマー改質二酸化チタン顔料を、着色力について評価した。得られたスラリーは、アクリルラテックス(Rhoplex(商標)VSR−50)、スチレンアクリルラテックス(EPS 2512)およびポリビニルアクリルラテックス(Rovace(登録商標)9900)(表1〜3)を含む異なるタイプの樹脂を用いた1種または複数の以下の種々のモデルのラテックス塗料配合物で試験した。各試験において、ポリマー改質顔料−ラテックス複合体は、複合体中に存在する樹脂粒子の量が二酸化チタン粒子の重量に基づいて約20重量%〜約70重量%の範囲になるように、対応するポリマー改質二酸化チタン顔料粒子を含むスラリーを対応するラテックス塗料配合物中に存在するタイプの樹脂粒子と混合することによって低剪断で作製した。複合体スラリーを低速で15分間混合し、次いで塗料配合物に添加した。塗料100グラムを、Color Trend(登録商標)808−9907ユニバーサルカーボンブラック着色剤1.00グラムで着色した。色許容差は、色ラブアップ(rub−up)方法によって試験した。
【0077】
各配合系について、2つの試料を調製し:(1)対照として使用するための100%二酸化チタンを含む塗料(二酸化チタンの量の低減はなく、二酸化チタンは本発明によってポリマー改質されていない)、および85%二酸化チタンで作製され(使用した二酸化チタンの量を15%低減した)、二酸化チタンが本発明のポリマー改質二酸化チタンであった塗料。
【0078】
試料では、ポリマー顔料(Ropaque(登録商標)Ultra)または他の増量剤のいずれかを添加して、対照と同じPVCを維持した。着色力は、対照の着色力が100%であると仮定してUltraScan(登録商標)XEで測定した。対照および本発明のポリマー改質チタン顔料試料を含む塗料を同一の配合で調製した。次いで両方の塗料をLeneta(登録商標)カード上に並べて描記した。乾燥させた塗料のCIE L
*およびb
*値を、積分球分光光度計を使用して測定し、これらの値を使用して着色力および着色色調(tint tone)を計算した。
着色力は、Kubelka Munk方程式:
【数1】
式中:K=カーボンブラック顔料の吸光度
S=二酸化チタン顔料の散乱
を使用して計算した。
着色色調は、以下のように計算した:
【数2】
【0079】
(試験例8)
最初に、実施例1で合成したポリマーを使用して上記のように作製したポリマー改質二酸化チタン顔料組成物を、異なるタイプの樹脂を用いた3種のモデルのラテックス塗料配合物で上記のように試験した。結果は、以下の表1、1A、2、2A、3および3Aに列挙する:
【表1-1】
【表1-2】
【表2-1】
【表2-2】
【表3-1】
【表3-2】
【0080】
結果は、本発明のポリマーの使用により、ラテックス系塗料配合物中の二酸化チタン量を約15%低減することが可能であり、二酸化チタンを低減しない組成物と比較して同様の品質の塗料組成物をまださらに達成できることを示す。当業者は、本開示に含まれる組成物および方法が、多種多様なラテックス系塗料組成物に適用可能であることを認識するであろう。
【0081】
(試験例9)
次に、実施例1、3、4、5および6で合成したポリマーを使用して上記のように作製したポリマー改質二酸化チタン顔料組成物は、標準プロセス(対照配合:表4A)の対照に対して100%TiO2充填時の複合体プロセス(試料配合:表4)を使用して24%PVC半光沢アクリル塗料配合物で上記のように試験した。塗料の特性を表4Bに列挙する。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【0082】
結果は、試験例8で得られた結果と類似している。
【0083】
特定の実施形態を参照して技術が特に示され、説明されているが、当業者には、添付の特許請求の範囲によって定義された技術の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態および詳細の種々の変更を行うことができることを理解されたい。