特許第6490115号(P6490115)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6490115
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】撮像レンズ
(51)【国際特許分類】
   G02B 13/00 20060101AFI20190318BHJP
   G02B 13/18 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   G02B13/00
   G02B13/18
【請求項の数】11
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2017-8798(P2017-8798)
(22)【出願日】2017年1月20日
(65)【公開番号】特開2018-116240(P2018-116240A)
(43)【公開日】2018年7月26日
【審査請求日】2018年8月10日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391014055
【氏名又は名称】カンタツ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】新田 耕二
【審査官】 堀井 康司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−242449(JP,A)
【文献】 特開2017−003703(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0243108(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0335834(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0138431(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0153546(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 9/00−17/08
G02B 21/02−21/04
G02B 25/00−25/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
物体側から像側に向かって順に配置された、
両面に非球面が形成された第1レンズと、
正または負の屈折力を有する第2レンズと、
開口絞りと、
正の屈折力を有する第3レンズと、
少なくとも一面に非球面が形成された負の屈折力を有する第4レンズと、
少なくとも一面に非球面が形成された正または負の屈折力を有する第5レンズと、
両面に非球面が形成され、正の屈折力を有する第6レンズとからなり、
前記第6レンズの像側の面は、光軸近傍で像側に凹面を向けており、
光軸から離れた位置で凸面に変化する非球面に形成され、
前記第4レンズは光軸近傍で物体側に凹面を向けたメニスカスレンズであり、
前記第1レンズの物体側の面は、光軸近傍で平面または物体側に凹面を向けており、
以下の条件式(9)、および(10)を満足することを特徴とする撮像レンズ。
(9)18<νd2<28
(10)25<|νd3−νd4|<45
ただし、
νd2:第2レンズのd線に対するアッベ数
νd3:第3レンズのd線に対するアッベ数
νd4:第4レンズのd線に対するアッベ数
【請求項2】
前記第1レンズの像側の面は光軸近傍で平面または像側に凸面を向けていることを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項3】
前記第1レンズの物体側の面は周辺部で凸面に変化する非球面が形成されていることを特徴とする請求項2に記載の撮像レンズ。
【請求項4】
前記第1レンズの像側の面は周辺部で凹面に変化する非球面が形成されていることを特徴とする請求項3に記載の撮像レンズ。
【請求項5】
前記第2レンズは光軸近傍で像側に凹面を向けたメニスカスレンズであり、前記第3レンズは光軸近傍で両面に凸面を向けた両凸レンズであり、前記第5レンズは光軸近傍で物体側に凹面を向けたメニスカスレンズであることを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項6】
前記第6レンズは光軸近傍で物体側に凸面を向けており、光軸から離れた位置で凸面から凹面に変化する非球面に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
【請求項7】
以下の条件式(1)を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
(1)0.6<t23/t34<1.6
ただし、
t23:第2レンズの像側の面から第3レンズの物体側の面までの光軸上の距離
t34:第3レンズの像側の面から第4レンズの物体側の面までの光軸上の距離
【請求項8】
以下の条件式(2)、および(3)を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
(2)−0.3<(Nd1−1)/r1≦0.0
(3)0≦(1−Nd1)/r2<0.3
ただし、
Nd1:第1レンズのd線における屈折率
r1:第1レンズの物体側の面の近軸における曲率半径
r2:第1レンズの像側の面の近軸における曲率半径
【請求項9】
以下の条件式(4)から(7)を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
(4)3.0<|f2/f|
(5)0.5<f3/f<1.5
(6)−2.5<f4/f<−0.8
(7)15<|f5/f|
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f2:第2レンズの焦点距離
f3:第3レンズの焦点距離
f4:第4レンズの焦点距離
f5:第5レンズの焦点距離
【請求項10】
以下の条件式(8)を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
(8)1.0<f6/f<2.0
ただし、
f :撮像レンズ全系の焦点距離
f6:第6レンズの焦点距離
【請求項11】
以下の条件式(11)を満足することを特徴とする請求項1に記載の撮像レンズ。
(11)0.6<TTL/2ih<1.0
ただし、
TTL:光学全長
ih:最大像高
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型の撮像装置に使用されるCCDセンサやC-MOSセンサの固体撮像素子上に被写体の像を結像させる撮像レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、多くの情報機器にカメラが搭載されるようになった。スマートフォンを始めとする携帯電話機にカメラ機能を付加することは、今や製品の機能上必須の要件になっている。また、カメラ機能を融合させた様々な商品開発も進んでいる。
【0003】
このような機器に搭載される撮像レンズは、小型でありながらも高い解像性能が要求される。例えば、以下の特許文献1、特許文献2には6枚で構成された撮像レンズが開示されている。
【0004】
特許文献1には、物体側から順に、正の屈折力を有する第1レンズ群と、負の屈折力を有する第2レンズ群と、正の屈折力を有する第3レンズ群と、負の屈折力を有する第4レンズ群と、正の屈折力を有する第5レンズ群と、負の屈折力を有する第6レンズ群とを備えた撮像レンズが開示されている。
【0005】
特許文献2には、物体側より順に、物体側に凸面を向けた正の屈折力の第1レンズと、第2レンズと、第3レンズと、少なくとも1つの非球面を有する第4レンズと、物体側が凸面で像側が凹面の第5レンズと、物体側および像側に凹面を向けた少なくとも1つの非球面を有する第6レンズとからなる撮像レンズが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−155223号公報
【特許文献2】米国特許出願公開2012/0243108号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1、および2に記載のレンズ構成で、低背化と広画角化、さらに低Fナンバー化を図ろうとした場合、周辺部における収差補正が非常に困難であり、良好な光学性能を得ることはできない。
【0008】
本発明は、上述した課題に鑑みてなされたものであり、低背化と広画角化、低Fナンバー化をバランスよく満足しながらも、諸収差が良好に補正された解像力の高い撮像レンズを提供することを目的とする。
【0009】
なお、ここでいう低背とは、光学全長(TTL)と撮像素子の有効撮像面の対角線の長さ(2ih)との比(TTL/2ih(全長対角比という))が1.0未満のレベルを、広画角とは全画角で90°以上のレベルを、低FナンバーとはF2.4以下のレベルをそれぞれ指している。
【0010】
また、本発明において使用する用語に関し、レンズ面の凸面、凹面とは光軸近傍(近軸)における形状を指し、屈折力とは、特に断りが無い限り、光軸近傍(近軸)における屈折力を指し、極点とは、光軸上以外のレンズ面において接平面が光軸に垂直に交わる非球面上の点を指す。さらに、光学全長とは、最も物体側に位置する光学素子の物体側の面から撮像面までの光軸上の距離として定義し、撮像レンズとセンサの撮像面との間に配置するIRカットフィルタやカバーガラス等の厚みは、空気換算するものとする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による撮像レンズは、物体側から像側に向かって順に、両面に非球面が形成された第1レンズと、正または負の屈折力を有する第2レンズと、開口絞りと、正の屈折力を有する第3レンズと、少なくとも一面に非球面が形成された負の屈折力を有する第4レンズと、少なくとも一面に非球面が形成された正または負の屈折力を有する第5レンズと、
両面に非球面が形成され、正の屈折力を有する第6レンズとからなり、前記第6レンズの像側の面は、光軸近傍で像側に凹面を向けており、光軸から離れた位置で凸面に変化する非球面に形成されて構成される。
【0012】
第1レンズは、両面に非球面を用いることにより、広い画角であっても、中心から軸外にわたって、良好な収差補正が可能となる。
【0013】
第2レンズは、屈折力を持つことにより第1レンズで発生した球面収差とコマ収差を良好に補正する。
【0014】
なお、第2レンズは像側に凹面を向けたメニスカス形状が望ましく、屈折力は正、または負のどちらでもよい。
【0015】
開口絞りを第2レンズと第3レンズとの間、すなわち光学系の中間位置付近に配置することにより、絞りを挟んで対称性を生じさせ、歪曲収差を小さく抑制する。
【0016】
第3レンズは、正の屈折力を有することにより、低背化を図るとともに球面収差を補正する。
【0017】
第4レンズは、負の屈折力を有することにより、色収差を補正しながらも非点収差を補正する。また、少なくとも一面に形成した非球面により、さらにその効果を高めることができる。
【0018】
第5レンズは、広画角化に伴って発生する非点収差を良好に補正する。また、少なくとも一面に形成した非球面により、さらにその効果を高めることができる。
【0019】
なお、第5レンズの形状は物体側に凹面を向けたメニスカス形状が望ましく、屈折力は正、または負のどちらでもよい。
【0020】
第6レンズは、低背化を維持しながらバックフォーカスを確保する。また、像側の面は光軸近傍で像側に凹面を向けており、光軸から離れた位置で像側に凸面を向けるよう変化する非球面形状を形成することで、像面湾曲補正、歪曲収差補正、撮像素子への光線入射角度の制御を行うことができる。
【0021】
上記構成の撮像レンズにおいては、第1レンズの物体側の面は光軸近傍で平面または物体側に凹面を向けていることが望ましい。
【0022】
第1レンズの物体側の面を光軸近傍で平面または物体側に凹面とすることで、主点位置を像側に移動させることができ、全系の焦点距離が短くなっても、必要なバックフォーカスを確保することができる。
【0023】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第1レンズの像側の面は光軸近傍で平面または像側に凸面を向けていることが望ましい。
【0024】
第1レンズの像側の面を光軸近傍で平面または像側に凸面とすることで、主点位置を像側に移動させることができ、より適切なバックフォーカスを確保することができる。
【0025】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第1レンズの物体側の面は周辺部で凸面に変化する非球面が形成されていることが望ましい。
【0026】
第1レンズの物体側の面の周辺部の形状を凸面にすることにより、第1レンズの周辺部に入射する光線をレンズ面の法線に近い角度で入射させることができる。これにより、高次収差の発生を抑えることができる。また、第1レンズの物体側の面の周辺部の形状を、極点を有する凸面にすることにより、SAG量を抑えることができ、低背化にも寄与する。さらに、このような形状は、最終レンズである第6レンズの像側の面形状と対称的な関係になるため、歪曲収差を良好に補正することができる。
【0027】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第1レンズの像側の面は周辺部で凹面に変化する非球面が形成されていることが望ましい。
【0028】
第1レンズの像側の面の周辺部の形状を凹面にすることにより、第1レンズの周辺部から出射する光線をレンズ面の法線に近い角度で出射させることができる。これにより、より高次収差の発生を抑えることができる。また、第1レンズの像側の面の周辺部の形状を、極点を有する凹面にすることにより、SAG量を抑えることができ、低背化にも寄与する。さらに、このような形状は、最終レンズである第6レンズの物体側の面形状と対称的な関係になるため、歪曲収差をより良好に補正することができる。
【0029】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第2レンズは光軸近傍で像側に凹面を向けたメニスカスレンズとすることが望ましい。
【0030】
第2レンズを像側に凹面をむけたメニスカス形状にすることで、広画角であっても球面収差を補正しながら、コマ収差の補正が容易になる。
【0031】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第3レンズは光軸近傍で両面に凸面を向けた両凸レンズとすることが望ましい。
【0032】
第3レンズを両凸形状にすることで、物体側、および像側の面の正の屈折力によって、低背化が図られる。また、光学系の中心付近に主たる正の屈折力を有するレンズを配置することで、光学系全体の収差のバランスがとり易くなる。さらに、両面を凸面にすることで強い曲率になることを抑え、製造誤差感度を低減させることができる。
【0033】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第4レンズは光軸近傍で物体側に凹面を向けたメニスカスレンズとすることが望ましい。
【0034】
第4レンズを光軸近傍で物体側に凹面を向けたメニスカスレンズにすることで、効率的に色収差を補正しながらも非点収差の補正を容易にする。
【0035】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第5レンズは光軸近傍で物体側に凹面を向けたメニスカスレンズとすることが望ましい。
【0036】
第5レンズを光軸近傍で物体側に凹面を向けたメニスカスレンズにすることで、広画角化に伴って増加する非点収差を効率的に補正することが出来る。
【0037】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第6レンズの物体側の面は光軸近傍で物体側に凸面を向けており、光軸から離れた位置で極点を有する凹面に変化する非球面に形成されていることが望ましい。
【0038】
第6レンズの物体側の面を光軸近傍で物体側に凸面を向けた形状、すなわち光軸近傍でメニスカス形状にすることで、バックフォーカスの確保が容易になる。また、第6レンズの物体側の面の周辺部を、極点を有する凹面に形成することで、撮像素子へ入射する光線の角度を制御することができ、また、緩やかに凸面から凹面へ変化させることで中間像高における像面湾曲を良好に抑えることができる。
【0039】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(1)を満足することが望ましい。
(1)0.6<t23/t34<1.6
ただし、
t23:第2レンズの像側の面から第3レンズの物体側の面までの光軸上の距離
t34:第3レンズの像側の面から第4レンズの物体側の面までの光軸上の距離
【0040】
条件式(1)は第2レンズと第3レンズの間隔、および第3レンズと第4レンズの間隔を適切な関係に規定するものである。条件式(1)の範囲を満足することで低背化と低Fナンバー化を実現しながら良好な収差補正が可能になる。
【0041】
なお、条件式(1)については以下の条件式(1a)がより好ましく、条件式(1b)が特に好ましい条件である。
(1a)0.6<t23/t34<1.2
(1b)0.65≦t23/t34≦0.90
【0042】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(2)、および(3)を満足することが望ましい。
(2)−0.3<(Nd1−1)/r1≦0.0
(3)0≦(1−Nd1)/r2<0.3
ただし、
Nd1:第1レンズのd線における屈折率
r1:第1レンズの物体側の面の近軸における曲率半径
r2:第1レンズの像側の面の近軸における曲率半径
【0043】
条件式(2)は第1レンズの物体側面の近軸における面の屈折力を、条件式()は第1レンズの像側面の近軸における面の屈折力をそれぞれ適切な範囲に規定するものである。条件式(2)、および(3)の範囲は第1レンズの物体側の面、および像側の面を弱い屈折力に設定することを意味し、低背化、および広画角化を維持しながら、両面に形成した非球面による球面収差補正の効果を高めるためのものである。なお、条件式(1)の上限値「0.0」、および条件式(3)の下限値「0.0」は実質的に屈折力を有さない面、すなわち平面も含まれることを意味する。
【0044】
なお、条件式(2)、および(3)については以下の条件式(2a)、および(3a)
がより好ましい条件である。
(2a)−0.2(Nd−1)/r1≦0.0
(3a)0.0≦(1−Nd)/r2≦0.25
【0045】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(4)から(7)を満足することが望ましい。
(4)3.0<|f2/f|
(5)0.5<f3/f<1.5
(6)−2.5<f4/f<−0.8
(7)15<|f5/f|
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f2:第2レンズの焦点距離
f3:第3レンズの焦点距離
f4:第4レンズの焦点距離
f5:第5レンズの焦点距離
【0046】
条件式(4)は、撮像レンズ全系の焦点距離に対する第2レンズの焦点距離の比を適切な範囲に規定するものである。条件式(4)の範囲に規定することで、光学全長、バックフォーカスに過剰な影響を与えず、コマ収差の補正が可能である。
【0047】
なお、条件式(4)については以下の条件式(4a)がより好ましい条件である。
(4a)3.0<|f2/f|<40.0
【0048】
条件式(5)は、撮像レンズ全系の焦点距離に対する第3レンズの焦点距離の比を適切な範囲に規定するものである。条件式(5)の下限値を上回ることで、第3レンズの正の屈折力を強めすぎず、高次収差の発生を抑えるとともに、製造誤差感度が高まることを抑制する。一方、上限値を下回ることで、第3レンズの正の屈折力を弱めすぎず、低背化の維持と球面収差の補正が容易になる。
【0049】
なお、条件式(5)については以下の条件式(5a)がより好ましい条件である。
(5a)0.6<f3/f<1.0
【0050】
条件式(6)は、撮像レンズ全系の焦点距離に対する第4レンズの焦点距離の比を適切な範囲に規定するものである。条件式(6)の下限値を上回ることで、第4レンズの負の屈折力による色収差の補正と非点収差の補正が容易になる。一方、上限値を下回ることで、第4レンズの負の屈折力が強まりすぎるのを抑え、球面収差が補正過剰になることを抑制する。
【0051】
なお、条件式(6)については以下の条件式(6a)がより好ましい条件である。
(6a)−2.5<f4/f<−1.2
【0052】
条件式(7)は、撮像レンズ全系の焦点距離に対する第5レンズの焦点距離の比を適切な範囲に規定するものである。条件式(7)の下限値を上回り、適切な屈折力を持つことによって、倍率色収差の発生を抑制しながらも、非点収差、および像面湾曲を補正することができる。
【0053】
なお、条件式(7)については以下の条件式(7a)がより好ましい条件である。
(7a)15<|f5/f|<50
【0054】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(8)を満足することが望ましい。
(8)1.0<f6/f<2.0
ただし、
f :撮像レンズ全系の焦点距離
f6:第6レンズの焦点距離
【0055】
条件式(8)は、撮像レンズ全系の焦点距離に対する第6レンズの焦点距離の比を適切な範囲に規定するものである。条件式(8)の下限値を上回ることで、第6レンズの正の屈折力が強くなることを抑え、像面湾曲、および歪曲収差を補正することができる。一方、上限値を下回ることで、第6レンズの正の屈折力が弱くなることを抑え、低背化を容易にする。
【0056】
なお、条件式(8)については以下の条件式(8a)がより好ましい条件である。
(8a)1.5≦f6/f≦1.80
【0057】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(9)、および(10)を満足することが望ましい。
(9)18<νd2<28
(10)25<|νd3−νd4|<45
ただし、
νd2:第2レンズのd線に対するアッベ数
νd3:第3レンズのd線に対するアッベ数
νd4:第4レンズのd線に対するアッベ数
【0058】
条件式(9)、および(10)は、第2レンズ、第3レンズ、および第4レンズそれぞれの、d線に対するアッべ数を規定するものである。第2レンズから第4レンズそれぞれのレンズのアッべ数を条件式(9)、(10)の関係にすることで、良好な色収差補正を可能にする。
【0059】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(1)を満足することが望ましい。
(11)0.6<TTL/2ih<1.0
ただし、
TTL:光学全長
ih:最大像高
【0060】
条件式(11)は近年要求されている撮像レンズの低背化、広画角化の要求に応えるためのものであり、条件式(11)の範囲を満足することで、レンズ系全体を低背化しつつ、良好な諸収差の補正が可能である。
【0061】
なお、条件式(11)については以下の条件式(11a)がより好ましい条件である。
(11a)0.6<TTL/2ih≦0.8
【0062】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(12)を満足することが望ましい。
(12)0.8<(L1F−L3F)/(L3R−L5R)<1.2
ただし、
(L1F−L3F):第1レンズの物体側の面から第3レンズの物体側の面までの光軸上の距離
(L3R−L5R):第3レンズの像側の面から第5レンズの像側の面までの光軸上の距離
【0063】
条件式(12)は、第1レンズの物体側の面から第3レンズの物体側の面までの光軸上の距離と第3レンズの像側の面から第5レンズの像側の面までの光軸上の距離の関係を適切な範囲に規定するものである。条件式(12)の範囲を満足することによって、低背化を維持しながらも、各レンズのパワーバランスが適度に保たれ、良好な諸収差の補正が容易になる。
【0064】
なお、条件式(12)については以下の条件式(12a)がより好ましい条件である。
(12a)0.9≦(L1F−L3F)/(L3R−L5R)≦1.1
【0065】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(13)を満足することが望ましい。
(13)0.2<EPD/TTL<0.4
ただし、
EPD:入射瞳直径
TTL:光学全長
【0066】
条件式(13)は、光学全長に対する入射瞳径の大きさを適切な範囲に規定するものである。条件式(13)の範囲を満足することで、近年要求される明るい撮像レンズを得ることができる。
【0067】
なお、条件式(13)については以下の条件式(13a)がより好ましい条件である。
(13a)0.25≦EPD/TTL≦0.35
【発明の効果】
【0068】
本発明により、低背化、広画角化、および低Fナンバー化をバランスよく満足した高解像力の撮像レンズを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
図1】本発明の実施例1の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図2】本発明の実施例1の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図3】本発明の実施例2の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図4】本発明の実施例2の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図5】本発明の実施例3の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図6】本発明の実施例3の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図7】本発明の実施例4の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図8】本発明の実施例4の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
図9】本発明の実施例5の撮像レンズの概略構成を示す図である。
図10】本発明の実施例5の撮像レンズの球面収差、非点収差、歪曲収差を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下、本発明に係る実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0071】
図1図3図5図7、および図9はそれぞれ、本発明の実施形態の実施例1から5に係る撮像レンズの概略構成図を示している。いずれも基本的なレンズ構成は同様であるため、ここでは主に実施例1の概略構成図を参照しながら、本実施形態の撮像レンズ構成について説明する。
【0072】
図1に示すように、本実施形態の撮像レンズは、物体側から像側に向かって順に、両面に非球面が形成された第1レンズL1と、正または負の屈折力を有する第2レンズL2と、開口絞りSTOと、正の屈折力を有する第3レンズL3と、少なくとも一面に非球面が形成された負の屈折力を有する第4レンズL4と、少なくとも一面に非球面が形成された正または負の屈折力を有する第5レンズL5と、両面に非球面が形成され、正の屈折力を有する第6レンズL6とからなり、前記第6レンズL6の像側の面は、光軸Xの近傍で像側に凹面を向けており、光軸から離れた位置で凸面に変化する非球面に形成されて構成されている。
【0073】
また、第6レンズL6と撮像面IMG(すなわち、撮像素子の撮像面)との間には赤外線カットフィルタやカバーガラス等のフィルタIRが配置されている。なお、このフィルタIRは省略することが可能である。
【0074】
第1レンズL1は、両面に非球面を用いることにより、広い画角からの入射光線に対し、中心から軸外にわたって、良好な収差補正を行っている。また、図1において、第1レンズL1の形状は光軸Xの近傍で物体側、および像側ともに平面であり、近軸では実質的に屈折力を有さないレンズになっているが、第1レンズL1の形状はこれに限らず、図3のように、光軸Xの近傍で物体側の面が平面であり、像側の面が凸面の平凸形状や、図5から図9のように光軸Xの近傍で物体側の面が凹面であり、像側の面が凸面のメニスカス形状であってもよい。
【0075】
第1レンズL1の光軸Xの近傍における形状を、物体側の面は平面または凹面に、像側の面は平面または凸面にすることで、主点位置を像側に移動させることができる。従って、全系の焦点距離を短くし、広画角化に対応させても、必要なバックフォーカスが確保できている。
【0076】
また、第1レンズL1の物体側の面は周辺部で凸面に変化する非球面が形成されており、像側の面は周辺部で凹面に変化する非球面が形成されている。物体側の面の周辺部の凸面は極点を有し、像側の面の周辺部の凹面も極点を有している。
【0077】
このような非球面形状に形成しているため、周辺部に入射する光線を物体側のレンズ面の法線に近い角度で入射させ、像側のレンズ面の法線に近い角度で出射させているため、高次収差の発生が抑えられている。また、極点を設けることでSAG量を抑え、低背化にも寄与している。さらに、このようなレンズ形状は、最終レンズである第6レンズL6の形状と対称的な関係になり、その結果歪曲収差が良好に補正されている。
【0078】
第2レンズL2は、像側に凹面を向けたメニスカス形状で、正の屈折力を有するレンズであり、第1レンズL1で発生した球面収差とコマ収差を良好に補正している。なお、第2レンズL2の屈折力は図3から図9に示すように、第1レンズL1が正の屈折力を有する際は、負の屈折力にしてもよい。その場合、色収差を良好に補正する。
【0079】
開口絞りSTOは第2レンズL2と第3レンズL3との間、すなわち光学系の中間位置付近に配置している。絞りを挟んで対称性が生まれるため、広画角化にともなって増加する歪曲収差が小さく抑えられている。
【0080】
第3レンズL3は、物体側、および像側が凸面の両凸形状で、正の屈折力を有するレンズである。第3レンズL3を両凸形状にすることで、低背化が図られている。また、光学系の中心付近に主たる正の屈折力を有するレンズを配置することで、光学系全体の収差のバランスがとり易くなっている。さらに、両面を凸面にすることで強い曲率の面になることが抑えられ、製造誤差感度を低減させている。
【0081】
第4レンズL4は、光軸Xの近傍で物体側に凹面を向けたメニスカス形状で負の屈折力を有するレンズであり、少なくとも一面に形成した非球面により色収差を補正しながら、非点収差を補正している
【0082】
第5レンズL5は、光軸Xの近傍で物体側に凹面を向けたメニスカス形状で、負の屈折力を有するレンズである。少なくとも一面に形成した非球面により広画角化に伴って発生する非点収差を良好に補正している。なお、第5レンズL5の屈折力は図9に示すように正であってもよい。
【0083】
第6レンズL6は、光軸Xの近傍で像側に凹面を向けたメニスカス形状で正の屈折力を有する両面が非球面のレンズであり、低背化を維持しながらバックフォーカスを確保している。また、像側の面は光軸Xの近傍では像側に凹面を、光軸から離れた位置では像側に凸面を向けるように変化する非球面形状が形成されている。従って、像面湾曲補正、歪曲収差補正、撮像素子への光線入射角度の制御が行われている。また、第6レンズL6の物体側の面は光軸Xの近傍で物体側に凸面を、光軸から離れた位置では物体側に凹面を向けるように変化する非球面形状が形成されている。従って像側の面と併せて撮像素子へ入射する光線の角度を適切に制御している。また、凸面から凹面への形状変化を緩やかなものとすることで中間像高における像面湾曲を良好に抑えている。
【0084】
本実施形態の撮像レンズは、以下の条件式(1)から条件式(13)を満足する。
(1)0.6<t23/t34<1.6
(2)−0.3<(Nd1−1)/r1≦0.0
(3)0≦(1−Nd1)/r2<0.3
(4)3.0<|f2/f|
(5)0.5<f3/f<1.5
(6)−2.5<f4/f<−0.8
(7)15<|f5/f|
(8)1.0<f6/f<2.0
(9)18<νd2<28
(10)25<|νd3−νd4|<45
(11)0.6<TTL/2ih<1.0
(12)0.8<(L1F−L3F)/(L3R−L5R)<1.2
(13)0.2<EPD/TTL<0.4
ただし、
t23:第2レンズL2と第3レンズL3の光軸上の間隔
t34:第レンズLと第4レンズL4の光軸上の間隔
Nd1:第1レンズL1のd線における屈折率
r1:第1レンズL1の物体側の面の近軸における曲率半径
r2:第1レンズL1の像側の面の近軸における曲率半径
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f2:第2レンズL2の焦点距離
f3:第3レンズL3の焦点距離
f4:第4レンズL4の焦点距離
f5:第5レンズL5の焦点距離
f6:第6レンズL6の焦点距離
νd2:第2レンズL2のd線に対するアッベ数
νd3:第3レンズL3のd線に対するアッベ数
νd4:第4レンズL4のd線に対するアッベ数
TTL:光学全長
ih:最大像高
(L1F−L3F):第1レンズL1の物体側の面から第3レンズL3の物体側の面までの光軸上の距離
(L3R−L5R):第3レンズL3の像側の面から第5レンズL5の像側の面までの光軸上の距離
EPD:入射瞳直径
【0085】
また、本実施形態の撮像レンズにおいて、すべての条件式を満足することが望ましいが、条件式を単独に満足することにより、条件式に対応する作用効果をそれぞれ得ることができる。
【0086】
本実施形態において、レンズ面の非球面に採用する非球面形状は、光軸方向の軸をZ、光軸に直交する方向の高さをH、曲率半径をR、円錐係数をk、非球面係数をA4、A6、A8、A10、A12、A14、A16としたとき、数1により表わされる。
【0087】
【数1】
【0088】
次に、本実施形態に係る撮像レンズの実施例を示す。各実施例において、fは撮像レンズ全系の焦点距離を、FnoはFナンバーを、ωは半画角を、ihは最大像高(撮像素子の有効撮像面の対角線の長さ)を、TTLは光学全長を、EPDは入射瞳の直径をそれぞれ示す。また、iは物体側から数えた面番号、rは曲率半径、dは光軸上のレンズ面間の距離(面間隔)、Ndはd線(基準波長)の屈折率、νdはd線に対するアッベ数をそれぞれ示す。なお、非球面に関しては、面番号iの後に*(アスタリスク)の符号を付加して示す。
【0089】
(実施例1)
基本的なレンズデータを以下の表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
実施例1の撮像レンズは、表6に示すように条件式(1)から(13)を満たしている。
【0092】
図2は実施例1の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。球面収差図は、F線(486nm)、d線(588nm)、C線(656nm)の各波長に対する収差量を示している。また、非点収差図にはサジタル像面S、タンジェンシャル像面Tにおけるd線の収差量をそれぞれ示している(図4図6図8、および図10においても同じ)。図2に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【0093】
(実施例2)
基本的なレンズデータを以下の表2に示す。
【0094】
【表2】
【0095】
実施例2の撮像レンズは、表6に示すように条件式(1)から(13)を満たしている。
【0096】
図4は実施例2の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。図4に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【0097】
(実施例3)
基本的なレンズデータを以下の表3に示す。
【0098】
【表3】
【0099】
実施例3の撮像レンズは、表6に示すように条件式(1)から(13)を満たしている。
【0100】
図6は実施例3の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。図6に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【0101】
(実施例4)
基本的なレンズデータを以下の表4に示す。
【0102】
【表4】
【0103】
実施例4の撮像レンズは、表6に示すように条件式(1)から(13)を満たしている。
【0104】
図8は実施例4の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。図8に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【0105】
(実施例5)
基本的なレンズデータを以下の表5に示す。
【0106】
【表5】
【0107】
実施例5の撮像レンズは、表6に示すように条件式(1)から(13)を満たしている。
【0108】
図10は実施例5の撮像レンズについて、球面収差(mm)、非点収差(mm)、歪曲収差(%)を示したものである。図10に示すように、各収差は良好に補正されていることが分かる。
【0109】
本発明の実施形態に係る撮像レンズは、以下に示すように、低背化、広画角化、および低Fナンバー化を実現していることが分かる。
全長対角比 全画角(°) Fナンバー
実施例1 0.74 100.0 1.82
実施例2 0.74 100.0 1.82
実施例3 0.74 99.8 1.82
実施例4 0.74 100.0 1.82
実施例5 0.73 99.8 1.82
【0110】
表6に実施例1から実施例5に係る条件式(1)から(13)の値を示す。
【0111】
【表6】
【産業上の利用可能性】
【0112】
本発明に係る撮像レンズを、カメラ機能を備える製品へ適用した場合、当該カメラの低背化、広画角化、および低Fナンバー化への寄与とともに、高性能化を図ることができる。
【符号の説明】
【0113】
STO 開口絞り
L1 第1レンズ
L2 第2レンズ
L3 第3レンズ
L4 第4レンズ
L5 第5レンズ
L6 第6レンズ
IMG 撮像面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10