【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による撮像レンズは、物体側から像側に向かって順に、両面に非球面が形成された第1レンズと、正または負の屈折力を有する第2レンズと、開口絞りと、正の屈折力を有する第3レンズと、少なくとも一面に非球面が形成された負の屈折力を有する第4レンズと、少なくとも一面に非球面が形成された正または負の屈折力を有する第5レンズと、
両面に非球面が形成され、正の屈折力を有する第6レンズとからなり、前記第6レンズの像側の面は、光軸近傍で像側に凹面を向けており、光軸から離れた位置で凸面に変化する非球面に形成されて構成される。
【0012】
第1レンズは、両面に非球面を用いることにより、広い画角であっても、中心から軸外にわたって、良好な収差補正が可能となる。
【0013】
第2レンズは、屈折力を持つことにより第1レンズで発生した球面収差とコマ収差を良好に補正する。
【0014】
なお、第2レンズは像側に凹面を向けたメニスカス形状が望ましく、屈折力は正、または負のどちらでもよい。
【0015】
開口絞りを第2レンズと第3レンズとの間、すなわち光学系の中間位置付近に配置することにより、絞りを挟んで対称性を生じさせ、歪曲収差を小さく抑制する。
【0016】
第3レンズは、正の屈折力を有することにより、低背化を図るとともに球面収差を補正する。
【0017】
第4レンズは、負の屈折力を有することにより、色収差を補正しながらも非点収差を補正する。また、少なくとも一面に形成した非球面により、さらにその効果を高めることができる。
【0018】
第5レンズは、広画角化に伴って発生する非点収差を良好に補正する。また、少なくとも一面に形成した非球面により、さらにその効果を高めることができる。
【0019】
なお、第5レンズの形状は物体側に凹面を向けたメニスカス形状が望ましく、屈折力は正、または負のどちらでもよい。
【0020】
第6レンズは、低背化を維持しながらバックフォーカスを確保する。また、像側の面は光軸近傍で像側に凹面を向けており、光軸から離れた位置で像側に凸面を向けるよう変化する非球面形状を形成することで、像面湾曲補正、歪曲収差補正、撮像素子への光線入射角度の制御を行うことができる。
【0021】
上記構成の撮像レンズにおいては、第1レンズの物体側の面は光軸近傍で平面または物体側に凹面を向けていることが望ましい。
【0022】
第1レンズの物体側の面を光軸近傍で平面または物体側に凹面とすることで、主点位置を像側に移動させることができ、全系の焦点距離が短くなっても、必要なバックフォーカスを確保することができる。
【0023】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第1レンズの像側の面は光軸近傍で平面または像側に凸面を向けていることが望ましい。
【0024】
第1レンズの像側の面を光軸近傍で平面または像側に凸面とすることで、主点位置を像側に移動させることができ、より適切なバックフォーカスを確保することができる。
【0025】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第1レンズの物体側の面は周辺部で凸面に変化する非球面が形成されていることが望ましい。
【0026】
第1レンズの物体側の面の周辺部の形状を凸面にすることにより、第1レンズの周辺部に入射する光線をレンズ面の法線に近い角度で入射させることができる。これにより、高次収差の発生を抑えることができる。また、第1レンズの物体側の面の周辺部の形状を、極点を有する凸面にすることにより、SAG量を抑えることができ、低背化にも寄与する。さらに、このような形状は、最終レンズである第6レンズの像側の面形状と対称的な関係になるため、歪曲収差を良好に補正することができる。
【0027】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第1レンズの像側の面は周辺部で凹面に変化する非球面が形成されていることが望ましい。
【0028】
第1レンズの像側の面の周辺部の形状を凹面にすることにより、第1レンズの周辺部から出射する光線をレンズ面の法線に近い角度で出射させることができる。これにより、より高次収差の発生を抑えることができる。また、第1レンズの像側の面の周辺部の形状を、極点を有する凹面にすることにより、SAG量を抑えることができ、低背化にも寄与する。さらに、このような形状は、最終レンズである第6レンズの物体側の面形状と対称的な関係になるため、歪曲収差をより良好に補正することができる。
【0029】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第2レンズは光軸近傍で像側に凹面を向けたメニスカスレンズとすることが望ましい。
【0030】
第2レンズを像側に凹面をむけたメニスカス形状にすることで、広画角であっても球面収差を補正しながら、コマ収差の補正が容易になる。
【0031】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第3レンズは光軸近傍で両面に凸面を向けた両凸レンズとすることが望ましい。
【0032】
第3レンズを両凸形状にすることで、物体側、および像側の面の正の屈折力によって、低背化が図られる。また、光学系の中心付近に主たる正の屈折力を有するレンズを配置することで、光学系全体の収差のバランスがとり易くなる。さらに、両面を凸面にすることで強い曲率になることを抑え、製造誤差感度を低減させることができる。
【0033】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第4レンズは光軸近傍で物体側に凹面を向けたメニスカスレンズとすることが望ましい。
【0034】
第4レンズを光軸近傍で物体側に凹面を向けたメニスカスレンズにすることで、効率的に色収差を補正しながらも非点収差の補正を容易にする。
【0035】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第5レンズは光軸近傍で物体側に凹面を向けたメニスカスレンズとすることが望ましい。
【0036】
第5レンズを光軸近傍で物体側に凹面を向けたメニスカスレンズにすることで、広画角化に伴って増加する非点収差を効率的に補正することが出来る。
【0037】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、第6レンズの物体側の面は光軸近傍で物体側に凸面を向けており、光軸から離れた位置で極点を有する凹面に変化する非球面に形成されていることが望ましい。
【0038】
第6レンズの物体側の面を光軸近傍で物体側に凸面を向けた形状、すなわち光軸近傍でメニスカス形状にすることで、バックフォーカスの確保が容易になる。また、第6レンズの物体側の面の周辺部を、極点を有する凹面に形成することで、撮像素子へ入射する光線の角度を制御することができ、また、緩やかに凸面から凹面へ変化させることで中間像高における像面湾曲を良好に抑えることができる。
【0039】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(1)を満足することが望ましい。
(1)0.6<t23/t34<1.6
ただし、
t23:第2レンズの像側の面から第3レンズの物体側の面までの光軸上の距離
t34:第3レンズの像側の面から第4レンズの物体側の面までの光軸上の距離
【0040】
条件式(1)は第2レンズと第3レンズの間隔、および第3レンズと第4レンズの間隔を適切な関係に規定するものである。条件式(1)の範囲を満足することで低背化と低Fナンバー化を実現しながら良好な収差補正が可能になる。
【0041】
なお、条件式(1)については以下の条件式(1a)がより好ましく、条件式(1b)が特に好ましい条件である。
(1a)0.6<t23/t34<1.2
(1b)0.65≦t23/t34≦0.90
【0042】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(2)、および(3)を満足することが望ましい。
(2)−0.3<(Nd1−1)/r1≦0.0
(3)0≦(1−Nd1)/r2<0.3
ただし、
Nd1:第1レンズのd線における屈折率
r1:第1レンズの物体側の面の近軸における曲率半径
r2:第1レンズの像側の面の近軸における曲率半径
【0043】
条件式(2)は第1レンズの物体側面の近軸における面の屈折力を、条件式(
3)は第1レンズの像側面の近軸における面の屈折力をそれぞれ適切な範囲に規定するものである。条件式(2)、および(3)の範囲は第1レンズの物体側の面、および像側の面を弱い屈折力に設定することを意味し、低背化、および広画角化を維持しながら、両面に形成した非球面による球面収差補正の効果を高めるためのものである。なお、条件式(1)の上限値「0.0」、および条件式(3)の下限値「0.0」は実質的に屈折力を有さない面、すなわち平面も含まれることを意味する。
【0044】
なお、条件式(2)、および(3)については以下の条件式(2a)、および(3a)
がより好ましい条件である。
(2a)−0.2(Nd
1−1)/r1≦0.0
(3a)0.0≦(1−Nd
1)/r2≦0.25
【0045】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(4)から(7)を満足することが望ましい。
(4)3.0<|f2/f|
(5)0.5<f3/f<1.5
(6)−2.5<f4/f<−0.8
(7)15<|f5/f|
ただし、
f:撮像レンズ全系の焦点距離
f2:第2レンズの焦点距離
f3:第3レンズの焦点距離
f4:第4レンズの焦点距離
f5:第5レンズの焦点距離
【0046】
条件式(4)は、撮像レンズ全系の焦点距離に対する第2レンズの焦点距離の比を適切な範囲に規定するものである。条件式(4)の範囲に規定することで、光学全長、バックフォーカスに過剰な影響を与えず、コマ収差の補正が可能である。
【0047】
なお、条件式(4)については以下の条件式(4a)がより好ましい条件である。
(4a)3.0<|f2/f|<40.0
【0048】
条件式(5)は、撮像レンズ全系の焦点距離に対する第3レンズの焦点距離の比を適切な範囲に規定するものである。条件式(5)の下限値を上回ることで、第3レンズの正の屈折力を強めすぎず、高次収差の発生を抑えるとともに、製造誤差感度が高まることを抑制する。一方、上限値を下回ることで、第3レンズの正の屈折力を弱めすぎず、低背化の維持と球面収差の補正が容易になる。
【0049】
なお、条件式(5)については以下の条件式(5a)がより好ましい条件である。
(5a)0.6<f3/f<1.0
【0050】
条件式(6)は、撮像レンズ全系の焦点距離に対する第4レンズの焦点距離の比を適切な範囲に規定するものである。条件式(6)の下限値を上回ることで、第4レンズの負の屈折力による色収差の補正と非点収差の補正が容易になる。一方、上限値を下回ることで、第4レンズの負の屈折力が強まりすぎるのを抑え、球面収差が補正過剰になることを抑制する。
【0051】
なお、条件式(6)については以下の条件式(6a)がより好ましい条件である。
(6a)−2.5<f4/f<−1.2
【0052】
条件式(7)は、撮像レンズ全系の焦点距離に対する第5レンズの焦点距離の比を適切な範囲に規定するものである。条件式(7)の下限値を上回り、適切な屈折力を持つことによって、倍率色収差の発生を抑制しながらも、非点収差、および像面湾曲を補正することができる。
【0053】
なお、条件式(7)については以下の条件式(7a)がより好ましい条件である。
(7a)15<|f5/f|<50
【0054】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(8)を満足することが望ましい。
(8)1.0<f6/f<2.0
ただし、
f :撮像レンズ全系の焦点距離
f6:第6レンズの焦点距離
【0055】
条件式(8)は、撮像レンズ全系の焦点距離に対する第6レンズの焦点距離の比を適切な範囲に規定するものである。条件式(8)の下限値を上回ることで、第6レンズの正の屈折力が強くなることを抑え、像面湾曲、および歪曲収差を補正することができる。一方、上限値を下回ることで、第6レンズの正の屈折力が弱くなることを抑え、低背化を容易にする。
【0056】
なお、条件式(8)については以下の条件式(8a)がより好ましい条件である。
(8a)1.5≦f6/f≦1.80
【0057】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(9)、および(10)を満足することが望ましい。
(9)18<νd2<28
(10)25<|νd3−νd4|<45
ただし、
νd2:第2レンズのd線に対するアッベ数
νd3:第3レンズのd線に対するアッベ数
νd4:第4レンズのd線に対するアッベ数
【0058】
条件式(9)、および(10)は、第2レンズ、第3レンズ、および第4レンズそれぞれの、d線に対するアッべ数を規定するものである。第2レンズから第4レンズそれぞれのレンズのアッべ数を条件式(9)、(10)の関係にすることで、良好な色収差補正を可能にする。
【0059】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(1
1)を満足することが望ましい。
(11)0.6<TTL/2ih<1.0
ただし、
TTL:光学全長
ih:最大像高
【0060】
条件式(11)は近年要求されている撮像レンズの低背化、広画角化の要求に応えるためのものであり、条件式(11)の範囲を満足することで、レンズ系全体を低背化しつつ、良好な諸収差の補正が可能である。
【0061】
なお、条件式(11)については以下の条件式(11a)がより好ましい条件である。
(11a)0.6<TTL/2ih≦0.8
【0062】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(12)を満足することが望ましい。
(12)0.8<(L1F−L3F)/(L3R−L5R)<1.2
ただし、
(L1F−L3F):第1レンズの物体側の面から第3レンズの物体側の面までの光軸上の距離
(L3R−L5R):第3レンズの像側の面から第5レンズの像側の面までの光軸上の距離
【0063】
条件式(12)は、第1レンズの物体側の面から第3レンズの物体側の面までの光軸上の距離と第3レンズの像側の面から第5レンズの像側の面までの光軸上の距離の関係を適切な範囲に規定するものである。条件式(12)の範囲を満足することによって、低背化を維持しながらも、各レンズのパワーバランスが適度に保たれ、良好な諸収差の補正が容易になる。
【0064】
なお、条件式(12)については以下の条件式(12a)がより好ましい条件である。
(12a)0.9≦(L1F−L3F)/(L3R−L5R)≦1.1
【0065】
また、上記構成の撮像レンズにおいては、以下の条件式(13)を満足することが望ましい。
(13)0.2<EPD/TTL<0.4
ただし、
EPD:入射瞳直径
TTL:光学全長
【0066】
条件式(13)は、光学全長に対する入射瞳径の大きさを適切な範囲に規定するものである。条件式(13)の範囲を満足することで、近年要求される明るい撮像レンズを得ることができる。
【0067】
なお、条件式(13)については以下の条件式(13a)がより好ましい条件である。
(13a)0.25≦EPD/TTL≦0.35