(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記軟磁性体シールドは、第1面および当該第1面に対向する第2面を有する柱状部と、前記柱状部の前記第1面側から突出する凸状部または前記柱状部の前記第1面側に形成されてなる凹状部とを含み、前記第2面を前記磁気抵抗効果素子に対向させるようにして位置する
ことを特徴とする請求項11に記載の磁気センサ。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、図面は模式的または概念的なものであり、各部材の寸法、部材間の大きさの比等は、必ずしも現実のものと同一とは限らず、また、同じ部材等を表す場合であっても、図面により互いの寸法や比が異なって表される場合もある。また、本明細書に添付した図面においては、理解を容易にするために、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更したり、誇張したりしている場合がある。
【0019】
[第1実施形態]
図1Aは本発明の第1実施形態に係る磁気センサ1を示す概略斜視図であり、
図1Bは本発明の第1実施形態に係る磁気センサ1を示す概略側面図であり、
図1Cは本発明の第1実施形態に係る磁気センサを示す概略平面図である。磁気センサ1は、回転体等の相対的移動による回転角度や、対象物の直線的な変位等を検出するために用いられるものである。例えば、角度検出対象物である回転体に磁界発生部としての磁石が設けられ、この磁界発生部により被検出磁界が発生される。磁気センサ1が回転角度センサに組み込まれて用いられる場合、磁気センサ1は、基準位置における被検出磁界の方向が基準方向に対してなす角度と対応関係を有する角度検出値を生成する。
【0020】
第1実施形態に係る磁気センサ1は、磁気抵抗効果素子11と軟磁性体シールド12とを備えている。
図1Bに示されるように、第1実施形態に係る磁気センサ1は、側面視において軟磁性体シールド12が磁気抵抗効果素子11の上方に位置し、平面視において磁気抵抗効果素子11の大きさが軟磁性体シールド12に物理的に包含される大きさとなるように構成されている。以下、第1実施形態に係る磁気センサ1が備える各構成要素について詳細に説明する。
【0021】
図2Aは、第1実施形態に係る磁気センサ1を含む磁気センサパッケージ10の概略構成を示す断面図であり、
図2Bは、第1実施形態に係る磁気センサを用いた検出回路の概略構成を示す回路図である。磁気センサパッケージ10は、基部4と、基部4上に設けられる磁気センサ部2と、接続リード6と、磁気センサ部2及び接続リード6を電気的に接続するボンディングワイヤ等の配線部5と、それらを一体に封止する封止部3とを有する。封止部3は、例えばエポキシ樹脂等の樹脂材料により構成される。磁気センサ部2には磁気センサ1が含まれる。
【0022】
磁気センサ部2は、磁界検出部として、外部磁界の変化に伴い検出信号を出力する磁気検出素子回路21、22を有する。磁気検出素子回路21は、被検出磁界の方向が第1の方向D1に対してなす角度と対応関係を有する検出信号V
OUTを出力する。磁気検出素子回路22は、被検出磁界の方向が第2の方向D2に対してなす角度と対応関係を有する検出信号V
OUTを出力する
【0023】
オペアンプ221は、磁気検出素子回路21に接続され、検出信号V
OUTを増幅してセンサ信号S1を出力する。オペアンプ222は、磁気検出素子回路22に接続され、検出信号V
OUTを増幅してセンサ信号S2を出力する。演算部23は、これら2つの信号S1、S2に基づいて、角度θと対応関係を有する角度検出値を算出する。なお、演算部23は、角度検出値算出部と、補正処理部と、補正情報保持部とを含んでいるが、これらについての詳細な説明は省略する。
【0024】
磁気検出素子回路21は、直列接続された2つの磁気検出素子により構成される磁気検出素子対を少なくとも1つ含むホイートストンブリッジ回路を有する。
図2Bに示すように、本実施形態において、磁気検出素子回路21は、第1磁気検出素子MR1及び第2磁気検出素子MR2が直列に接続されてなる第1磁気検出素子対と、第3磁気検出素子MR3及び第4磁気検出素子MR4が直列に接続されてなる第2磁気検出素子対とを含むホイートストンブリッジ回路C21を有する。
【0025】
図2Bに示すように、ホイートストンブリッジ回路C21は、第1磁気検出素子対と、第2磁気検出素子対と、第1磁気検出素子MR1及び第3磁気検出素子MR3の各一端が接続される電源ポートV21と、第2磁気検出素子MR2及び第4磁気検出素子MR4の各一端が接続されるグランドポートG21と、第1出力ポートE211と、第2出力ポートE212とを含む。第1出力ポートE211は、第1磁気検出素子対における第1磁気検出素子MR1と第2磁気検出素子MR2との間(中点)に接続され、第2出力ポートE212は、第2磁気検出素子対における第3磁気検出素子MR3と第4磁気検出素子MR4との間(中点)に接続される。電源ポートV21は、磁気検出素子回路21に電流を供給可能な第1電源供給源V
Sに接続され、グランドポートG21は、グランド(基準電位点)V
Gに接続される。なお、第1電源供給源V
Sは、定電圧を供給可能な定電圧電源であってもよいし、定電流を供給可能な定電流電源であってもよい。
【0026】
上記同様に、磁気検出素子回路22も、直列接続された2つの磁気検出素子により構成される磁気検出素子対を少なくとも1つ含むホイートストンブリッジ回路を有する。
図2Bに示すように、本実施形態において、磁気検出素子回路22は、第1磁気検出素子MR1及び第2磁気検出素子MR2が直列に接続されてなる第1磁気検出素子対と、第3磁気検出素子MR3及び第4磁気検出素子MR4が直列に接続されてなる第2磁気検出素子対とを含むホイートストンブリッジ回路C21を有する。磁気検出素子回路22の具体的な構成は磁気検出素子回路21と同様であるため、説明を省略する。
【0027】
第1実施形態においては、磁気センサ1に、所定範囲を超える磁界強度の外部磁界が印加された場合、磁気検出素子回路21、22からそれぞれ出力される第1の信号S1、第2の信号S2の波形が歪み、理想的な正弦曲線を描くように周期的に変化する理想成分と、この理想成分に対する1つ以上の高調波に相当する1つ以上の誤差成分を含むことになる。信号S1、S2の各々が1つ以上の誤差成分を含むことによって、角度検出値θ
sは誤差を含むことになる。そして、一般的に、磁気センサでは、角度誤差が被検出磁界の強度に応じて変化すること、すなわち角度誤差の磁界強度依存が存在することが分かっている。信号S1には誤差成分として、理想成分に対する第3高調波成分V
3rd1が含まれ、信号S2には誤差成分として、理想成分に対する第3高調波成分V
3rd2が含まれる。第1実施形態に係る磁気センサ1は、検出磁界の磁界強度が変化しても、磁界強度の変化前後で上記の第3高調波成分が略同一になるように構成される。
【0028】
ホイートストンブリッジ回路C21に含まれる第1〜第4磁気検出素子MR1〜MR4としては、例えば、AMR素子、GMR素子、TMR素子等の磁気抵抗効果素子が挙げられ、比較的出力電圧の大きいGMR素子、TMR素子等が特に好ましい。
【0029】
図3Aは、第1実施形態に係る磁気抵抗効果素子11の概略構成を示す斜視図であり、
図3Bは、第1実施形態に係る磁気抵抗効果素子11の概略構成を示す断面図である。第1〜第4磁気検出素子MR1〜MR4としてのGMR素子、TMR素子は、
図3Aに示すように、複数の下部リード電極61と、複数のMR積層体50と、複数の上部リード電極62とを有する。下部リード電極61及び上部リード電極62は、例えば、Cu、Al、Au、Ta、Ti等のうちの1種の導電材料又は2種以上の導電材料の複合膜により構成され、その厚さは、それぞれ0.3〜2.0μm程度である。
【0030】
複数の下部リード電極61は、基板(図示せず)上に設けられている。複数の下部リード電極61は、それぞれ細長い略長方形状を有しており、アレイ状に配列された複数のMR積層体50(
図6参照)の電気的な直列方向において隣接する2つの下部リード電極61の間に所定の隙間を有するように設けられている。下部リード電極61の長手方向の両端近傍のそれぞれに、MR積層体50が設けられている。すなわち、複数の下部リード電極61上には、それぞれ、2つのMR積層体50が設けられている。
【0031】
本実施形態におけるMR積層体50は、
図3Bに示すように、磁化方向が固定された磁化固定層53と、印加される磁界の方向に応じて磁化方向が変化する自由層51と、磁化固定層53及び自由層51の間に配置される非磁性層52と、反強磁性層54とを有する。
【0032】
MR積層体50は、下部リード電極61側から順に自由層51、非磁性層52、磁化固定層53及び反強磁性層54が積層された構造を有する。自由層51は、下部リード電極61に電気的に接続され、反強磁性層54は、上部リード電極62に電気的に接続されている。自由層51及び磁化固定層53を構成する材料としては、例えば、NiFe、CoFe、CoFeB、CoFeNi、Co
2MnSi、Co
2MnGe、FeO
X(Feの酸化物)等が挙げられる。自由層51及び磁化固定層53の厚さは、それぞれ、1〜20nm程度である。
【0033】
非磁性層52は、スペーサ層であり、MR積層体50にトンネル磁気抵抗効果(TMR効果)又は巨大磁気抵抗効果(GMR効果)を発現させるための必須の膜である。非磁性層52を構成する材料としては、MgO、Mg−Al−O、Al−O等の酸化物;Cu、Au、Ag、Cr、Ag−Zn、Ni−Al等の金属材料;等が挙げられる。なお、非磁性層52の厚さは、0.1〜5nm程度である。
【0034】
反強磁性層54は、例えば、Pt,Ru,Rh,Pd,Ni,Cu,Ir,Cr及びFeのグループの中から選ばれる少なくとも1種の元素と、Mnとを含む反強磁性材料により構成される。この反強磁性材料におけるMnの含有量は、例えば35〜95原子%程度である。反強磁性材料により構成される反強磁性層54は、磁化固定層53との間での交換結合により、磁化固定層53の磁化の方向を固定する役割を果たす。なお、反強磁性層54を設けず、磁化固定層53を第1の磁化固定層、非磁性中間層、第2の磁化固定層の3層構造とし、非磁性中間層を介して、第1の磁化固定層と第2の磁化固定層とを反強磁性結合させてもよい。
【0035】
複数の上部リード電極62は、複数のMR積層体50上に設けられている。各上部リード電極62は、細長い略長方形状を有する。上部リード電極62は、アレイ状に配列された複数のMR積層体50の電気的な直列方向において隣接する2つの上部リード電極62の間に所定の隙間を有するように、かつ複数のMR積層体50を直列に接続するように配置され、隣接する2つのMR積層体50の反強磁性層54同士を電気的に接続する。なお、MR積層体50は、下部リード電極61側から順に反強磁性層54、磁化固定層53、非磁性層52及び自由層51が積層されてなる構成を有していてもよい。また、自由層51と下部リード電極61又は上部リード電極62との間にキャップ層(保護層)を有していてもよい。第1実施形態においては、MR積層体50が位置する上部リード電極62の上方に軟磁性体シールド12が配置される。
【0036】
MR積層体50において、自由層51の磁化の方向が磁化固定層53の磁化の方向に対してなす角度に応じて抵抗値が変化し、この角度が0°(互いの磁化の方向が平行)のときに抵抗値が最小となり、180°(互いの磁化の方向が反平行)のときに抵抗値が最大となる。
【0037】
図1A及び
図1Cに示されるように、磁気抵抗効果素子11は略円柱形状であるが、磁気抵抗効果素子11の形状は特に限定されるものではなく、例えば後述する六角柱状等であってもよい。磁気抵抗効果素子11の大きさについても特に限定されるものではないが、検出対象物の大きさや検出対象物との位置関係等に応じて適宜設定され得る。なお、以下の説明において、磁気抵抗効果素子11の直径をφ
mとする。
【0038】
軟磁性体シールド12は保磁力が小さく透磁率が高い軟磁性材料を含み、この特性を利用することで、磁気抵抗効果素子11に所定範囲を超える磁界強度の外部磁界が印加されるのを防止することができる。軟磁性材料としては、例えば酸化鉄を主成分とし、軟磁性を示すフェライト、ニッケル・鉄の化合物であるパーマロイ等が挙げられる。
【0039】
図1A及び
図1Cに示されるように、軟磁性体シールド12は略円柱形状を有し、平面視形状を略同サイズの略円とする上面と下面とを有する。第1実施形態における軟磁性体シールド12の平面視形状としては略円であればよく、真円に限定されるものではないが、磁気抵抗効果素子11の面内方向における外部磁界の磁界強度の分布のムラをできる限り低減する観点では、真円で形成するのが好ましい。なお、ここでの「真円」とは、円の中心を通り円周上に両端がある、互いに直交する2つの線分の長さ(直径)をφ
a、φ
bと定義し、φ
aを1としたとき、φ
bが0.977〜0.987になるものをいう。
【0040】
軟磁性体シールド12の平面視における直径φ
sは、磁気抵抗効果素子11の直径φ
mとの関係において、下記式(1)を満たす大きさに設定されるのが好ましい。
φ
s≧1.3φ
m ・・・(1)
【0041】
直径φ
sが直径φ
mの1.3倍以上である軟磁性体シールド12を、磁気抵抗効果素子11の上方に配置することにより、平面視において、磁気抵抗効果素子11の大きさが軟磁性体シールド12に物理的に包含される大きさである磁気センサ1となり得る。なお、
図1A及び
図1Bに示される通り、ここでは軟磁性体シールド12の中心軸と磁気抵抗効果素子11の中心軸とを同一軸として、軟磁性体シールド12が磁気抵抗効果素子11の上方に配置されている。なお、磁気抵抗効果素子11の大きさが軟磁性体シールド12に物理的に包含される大きさとなる限りにおいて、軟磁性体シールド12が磁気抵抗効果素子11の上方に配置されればよく、例えば、両者の中心軸が多少ずれている場合であっても、上面視において磁気抵抗効果素子11が軟磁性体シールド12からはみ出さないような配置とすればよい。
【0042】
図4は、磁界強度が200mTの外部磁界において、磁気抵抗効果素子11に印加される外部磁界の磁界強度の減衰効果が軟磁性体シールドの直径の大きさごとに異なる特性を示す特性図である。
図4では、縦軸に磁界強度をとり、横軸に磁気抵抗効果素子11の位置をとり、外部磁界の磁界強度の減衰効果が図面下方に突出する曲線で示されている。図の網掛け部分は磁気抵抗効果素子11の位置領域を示している。後述するように、磁気抵抗効果素子11に印加される外部磁界の磁界強度は20〜80mTであるのが好ましい。このため、軟磁性体シールド12による磁界強度の減衰効果としては、200mTの磁界強度の外部磁界が上記の20〜80mTの範囲まで減衰されているのが好ましい。
【0043】
ここでは、磁気抵抗効果素子11の直径φ
mの0.6倍の直径φ
s1を有する軟磁性体シールド12を使用した場合の外部磁界の磁界強度の変化を示す曲線を細線で示し、磁気抵抗効果素子11の直径φ
mの等倍の直径φ
s2を有する軟磁性体シールド12を使用した場合の外部磁界の磁界強度の変化を示す曲線を太線で示し、磁気抵抗効果素子11の直径φ
mの1.3倍の直径φ
s3を有する軟磁性体シールド12を使用した場合の外部磁界の磁界強度の変化を示す曲線を二点鎖線で示し、磁気抵抗効果素子11の直径φ
mの1.6倍の直径φ
s4を有する軟磁性体シールド12を使用した場合の外部磁界の磁界強度の変化を示す曲線を長破線で示し、磁気抵抗効果素子11の直径φ
mの2.0倍の直径φ
s5を有する軟磁性体シールド12を使用した場合の外部磁界の磁界強度の変化を示す曲線を一点鎖線で示し、磁気抵抗効果素子11の直径φ
mの2.3倍の直径φ
s6を有する軟磁性体シールド12を使用した場合の外部磁界の磁界強度の変化を示す曲線を破線で示し、磁気抵抗効果素子11の直径φ
mの2.6倍の直径φ
s7を有する軟磁性体シールド12を使用した場合の外部磁界の磁界強度の変化を示す曲線を実線で示している。
【0044】
図4から明らかなように、外部磁界の磁界強度が上記の20〜80mTの範囲に減衰される、直径φ
s5〜直径φ
s7の軟磁性体シールド12を用いるのが好ましい。すなわち、軟磁性体シールド12の直径φ
sは、磁気抵抗効果素子11の直径φ
mの1.3倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましく、2〜2.75倍であることがさらに好ましい。軟磁性体シールド12の直径φ
sが磁気抵抗効果素子11の直径φ
mの1.3倍未満であると、磁気抵抗効果素子11の面内方向における外部磁界の磁界強度の分布の平坦性が悪化し、磁気センサ1による検出角度に含まれる誤差を低減することが困難になるおそれがある。
【0045】
軟磁性体シールド12の直径φ
sが磁気抵抗効果素子11の直径φ
mの2.75倍を超えると、後述するように複数の磁気抵抗効果素子11をアレイ状に配列して、磁気抵抗効果素子11のそれぞれの直上に軟磁性体シールド12が配置される場合において、軟磁性体シールド12によるシールド効果が低下するおそれがある。
【0046】
軟磁性体シールド12の厚さhは、磁気抵抗効果素子11の直径φ
mとの関係において、下記式(2)を満たす大きさに設定されるのが好ましい。
h>0.3φ
m ・・・(2)
【0047】
軟磁性体シールド12の厚さhを磁気抵抗効果素子11の直径φ
mの0.3倍を超える厚さとすることで、外部磁界の磁界強度の減衰効果をより高めることができる。なお、軟磁性体シールド12の厚さhの上限は特に限定されるものではなく、厚めに設定したとしても、厚すぎることが磁気センサ1の性能を損なわせることにはならないものと推察される。
【0048】
図1A〜
図1Cに示されるように、第1実施形態における磁気センサ1においては、上記の軟磁性体シールド12が磁気抵抗効果素子11の上方に配置される。この場合において、軟磁性体シールド12と磁気抵抗効果素子11との間の距離dが近ければ近いほど外部磁界の磁界強度の減衰効果が高く、軟磁性体シールド12と磁気抵抗効果素子11との間の距離dが遠ければ遠いほど外部磁界の磁界強度の減衰効果が低い。そのため、軟磁性体シールド12と磁気抵抗効果素子11との間の距離dは、例えば0.1μm〜1μmの範囲内で適宜設定され得る。
【0049】
第1実施形態に係る磁気センサ1においては、上述した直径および厚さを有する軟磁性体シールド12が磁気抵抗効果素子11の上方に配置される。これにより、磁気抵抗効果素子11に80mTを超える磁界強度の外部磁界が印加された場合における磁気抵抗効果素子11からの出力信号に含まれる高調波成分V
3rdは、磁気抵抗効果素子11に80mT以下の磁界強度の外部磁界が印加されたときの出力信号に含まれる高調波成分V
3rdと略同一となる。このため、検出範囲を超える磁界強度の外部磁界が磁気抵抗効果素子11に印加されたとしても、磁気抵抗効果素子11は所期の検出信号を出力することができ、これにより対象物の位置検出誤差の増大を防止することが可能となる。
【0050】
なお、上記では磁界強度の検出範囲の上限を80mTに設定しているが、これは第1実施形態における磁気抵抗効果素子11をTMR素子として説明しているからである。すなわち、80mTは磁気抵抗効果素子11をTMR素子とした場合における一般的な検出範囲の上限値である。これに代えて、磁気抵抗効果素子11をGMR素子とした場合における一般的な検出範囲の上限値は70mTに設定される。この場合においては、磁気センサ1は、磁気抵抗効果素子11に70mTを超える磁界強度の外部磁界が印加されたときの出力信号に含まれる高調波成分V
3rdと、磁気抵抗効果素子11に70mT以下の磁界強度の外部磁界が印加されたときの出力信号に含まれる高調波成分V
3rdとが略同一となるように構成される。
【0051】
図5Aは、第1実施形態に係る磁気センサ1の変形例を示す概略側面図であり、
図5Bは変形例に係る磁気センサ1の概略平面図である。
図5A及び
図5Bに示される磁気センサ1においては、磁気抵抗効果素子11の下方に軟磁性体シールド12が配置されている。この点において、
図5A及び
図5Bに示される磁気センサ1は、
図1A〜
図1Cに示される磁気センサ1と相違する。
図5A及び
図5Bに示される磁気センサ1においても、平面視において、磁気抵抗効果素子11の大きさが軟磁性体シールド12に物理的に包含される大きさとなっている。
【0052】
図5Cは、第1実施形態に係る磁気センサの変形例として、
図1A〜
図1C及び
図5A〜
図5Bに示される磁気センサ1と異なる構成を有する磁気センサ1を示す概略側面図である。
図5Cに示される磁気センサ1においては、磁気抵抗効果素子11の上下に軟磁性体シールド12T、12Bがそれぞれ配置されている。この点において、
図5Cに示される磁気センサ1は、
図1A〜
図1Cに示される磁気センサ1及び
図5A〜
図5Bに示される磁気センサ1と相違する。
図5Cに示される磁気センサ1においても、平面視において、磁気抵抗効果素子11の大きさが軟磁性体シールド12T、12Bに物理的に包含される大きさとなっている。
【0053】
すなわち、
図5A〜
図5Cに示される変形例であっても、平面視において、磁気抵抗効果素子11の大きさが軟磁性体シールド12に物理的に包含される大きさとなるように磁気センサ1を構成することで、
図1A〜
図1Cに示される磁気センサ1と同様、検出範囲を超える磁界強度の外部磁界が磁気抵抗効果素子11に印加されたとしても、対象物の位置検出誤差の増大を防止することが可能となる。
【0054】
図6は、軟磁性体シールド12が上方に配置された磁気抵抗効果素子11が複数アレイ状に配列された磁気センサ1を示す概略平面図である。
図6においては、破線で表される磁気抵抗効果素子11が7行×7列で配列され、磁気抵抗効果素子11それぞれに対応して、それらの上方(図示における観察者側)に軟磁性体シールド12が7行×7列で配置された磁気センサ1が示されているが、磁気センサ1の構成が上記に限定されるものではなく、検出対象物の大きさや形状等を考慮した構成が適宜設定され得る。また、
図6において、互いに隣接する軟磁性体シールド12(磁気抵抗効果素子11)同士の間隔を符号Dで表すものとする。なお、磁界強度の減衰効果を確認するため、
図6の破線Bxで示される通り、外部磁界の磁界強度を200mTとして、X軸方向に並ぶ7つの磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定し、
図6の破線Byで示される通り、Y軸方向に並ぶ7つの磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定するものとする。
【0055】
図7は、
図6に示される磁気センサ1における磁界強度の減衰効果の一例を示す特性図であり、
図6における破線Sで囲まれた3つの磁気抵抗効果素子11における磁界強度の減衰効果を曲線MF
Bで示すものである。
図7において、軟磁性体シールド12のシールド領域SRを網線で示すものとする。ここでの磁界強度の減衰効果は、3つの磁気抵抗効果素子11を含む横1列で並ぶ7つの磁気抵抗効果素子11についてX軸方向に磁界強度を測定したものを、横軸に磁気抵抗効果素子11の位置をとり、縦軸に磁界強度をとったグラフに描き入れることで確認され得る。
図7に示されるように、軟磁性体シールド12の直径φ
sを磁気抵抗効果素子11の直径φ
mの2倍に設定した場合の磁界強度の減衰効果(外部磁界強度:200mT)として、3つの磁気抵抗効果素子11の位置P1、P2、P3における磁界強度が、20〜80mTの検出範囲まで減衰されているのが好ましい。また、
図7に示される通り、シールド領域SRで覆われる素子部分(P1、P2、P3)において、磁界強度の分布が実質的に平坦であるのが好ましい。
【0056】
[第2実施形態]
図8Aは本発明の第2実施形態に係る磁気センサ1を示す全体概略斜視図であり、
図8Bは本発明の第2実施形態に係る磁気センサ1を示す概略側面図である。なお、第1実施形態における磁気センサ1と略同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0057】
図8A及び
図8Bに示される通り、第2実施形態に係る磁気センサ1を構成する軟磁性体シールド12は六角柱状を有する。なお、磁気センサ1を構成する軟磁性体シールド12の形状としては、六角柱状に限定されるものではなく、平面視形状がN角形(Nは6以上の偶数)の柱状、例えば、八角柱、十二角柱、十六角柱等であればよい。また、磁気センサ1を構成する軟磁性体シールド12の形状を、平面視において中心軸の周りを所定の角度だけ回転させると自らと重なるM回対称形状(Mは4以上の偶数)のN角柱状とするのが好ましい。軟磁性体シールド12を平面視六角形を含む平面視N角形(Nは6以上の偶数)の柱状とし、好ましくは平面視M回対称形状(Mは4以上の偶数)のN角柱状とすることで、磁気抵抗効果素子11の面内方向における外部磁界の磁界強度の分布のムラを低減することが可能となる。
【0058】
第2実施形態における軟磁性体シールド12を第1実施形態と同様に磁気抵抗効果素子11の上方または下方に配置することにより、検出範囲を超える磁界強度(例えば80mT以上)の外部磁界が磁気抵抗効果素子11に印加されたとしても、磁気抵抗効果素子11からの出力信号に含まれる高調波成分V
3rdは、磁気抵抗効果素子11に80mT以下の磁界強度の外部磁界が印加されたときの出力信号に含まれる高調波成分V
3rdと略同一となる。このため、磁気抵抗効果素子11は所期の検出信号を出力することができ、対象物の位置検出誤差の増大を防止することが可能となる。
【0059】
[第3実施形態]
図9Aは本発明の第3実施形態に係る磁気センサ1を示す全体概略斜視図であり、
図9Bは本発明の第3実施形態に係る磁気センサ1を示す概略側面図である。なお、第1実施形態における磁気センサ1と略同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0060】
図9A及び
図9Bに示される通り、第3実施形態に係る磁気センサ1を構成する軟磁性体シールド12は平面視円形の円柱状部12c上に円錐状部12pが位置する形状を有している。軟磁性体シールド12の形状は上記の形状に限定されるものではなく、円柱状部12cの上面の少なくとも一部が突出する凸状部を有する形状であってもよい。軟磁性体シールド12の形状として、例えば、直径より小さい直径を有し円柱状部12cの厚さより薄い小円柱状部(凸状部)が円柱状部12c上に位置する形状等が適宜設定され得る。なお、軟磁性体シールド12においては、上記の円柱状部12cに限定されるものではなく、例えば六角柱等のN角柱(Nは6以上の偶数)で、好ましくはM回対称形状(Mは4以上の偶数)のN角柱等の柱状部が適宜設定され得る。また、軟磁性体シールド12においては、円錐状部12pに限定されるものではなく、例えば六角錐等のN角錐(Nは6以上の偶数)で、好ましくは平面視M回対称形状(Mは4以上の偶数)のN角錐等の凸状部が適宜設定され得る。第3実施形態に係る磁気センサ1においては、外部磁界の磁界強度の減衰効果を第1実施形態と同様に享受する観点から、磁気抵抗効果素子11の上面と軟磁性体シールド12の略平坦な下面(円錐状部12p、小円柱状部(凸状部)に対向する側の面)とが対向するように双方が配置され得る。
【0061】
第3実施形態に係る軟磁性体シールド12を磁気抵抗効果素子11の上方に配置することにより、検出範囲を超える磁界強度(例えば80mT超)の外部磁界が磁気抵抗効果素子11に印加されたとしても、磁気抵抗効果素子11からの出力信号に含まれる高調波成分V
3rdは、磁気抵抗効果素子11に80mT以下の磁界強度の外部磁界が印加されたときの出力信号に含まれる高調波成分V
3rdと略同一となる。このため、磁気抵抗効果素子11は所期の検出信号を出力することができ、対象物の位置検出誤差の増大を防止することが可能となる。
【0062】
[第4実施形態]
図10は本発明の第4実施形態に係る磁気センサ1を示す全体概略断面図である。なお、第1実施形態における磁気センサ1と略同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0063】
図10に示される通り、第4実施形態に係る磁気センサ1を構成する軟磁性体シールド12には、その上面が下面側にすり鉢状に凹む、すり鉢状部12nが形成されている。なお、軟磁性体シールド12の上面が下面側に凹む形態としてはすり鉢状に限定されるものではなく、軟磁性体シールド12の上面の少なくとも一部が下面側に凹む形態(凹状部)であってもよい。軟磁性体シールド12の形態として、例えば、軟磁性体シールド12の直径φ
sより直径が小さく、軟磁性体シールド12の厚さより薄い略円柱状の空間分、軟磁性体シールド12の上面の一部が下面側に凹む形態等が適宜設定され得る。
【0064】
第3実施形態と同様の観点から、第4実施形態においても、磁気抵抗効果素子11の上面と軟磁性体シールド12の略平坦な下面(すり鉢状部12n、凹状部に対向する側の面)とが対向するように双方が配置され得る。第4実施形態に係る軟磁性体シールド12を磁気抵抗効果素子11の上方に配置することにより、検出範囲を超える磁界強度(例えば80mT超)の外部磁界が磁気抵抗効果素子11に印加されたとしても、磁気抵抗効果素子11からの出力信号に含まれる高調波成分V
3rdは、磁気抵抗効果素子11に80mT以下の磁界強度の外部磁界が印加されたときの出力信号に含まれる高調波成分V
3rdと略同一となる。このため、磁気抵抗効果素子11は所期の検出信号を出力することができ、対象物の位置検出誤差の増大を防止することが可能となる。
【0065】
[第5実施形態]
図11Aは本発明の第5実施形態に係る磁気センサ1を示す全体概略斜視図であり、
図11Bは本発明の第5実施形態に係る磁気センサ1を示す概略側面図である。なお、第1実施形態における磁気センサ1と略同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0066】
図11A及び
図11Bに示される通り、第5実施形態に係る磁気センサ1を構成する軟磁性体シールド12は略円錐形状を有する。なお、軟磁性体シールド12の形状としては略円錐形状に限定されるものではなく、例えば、六角錐状、八角錐状、十二角錐状、十六角錐状等のN角錐形状(Nは6以上の偶数)で、好ましくは平面視M回対称形状(Mは4以上の偶数)のN角錐形状であればよい。ここでN角錐形状の例示としてNが6以上の偶数である形状を列挙しているのは、第2実施形態における六角柱状の軟磁性体シールド12の場合と同様の理由による。
【0067】
第5実施形態において、軟磁性体シールド12が略円錐状であることで、軟磁性体シールド12におけるシールド可能領域(平面視において磁気シールド効果が奏される領域)が平面視における軟磁性体シールド12の面積よりも狭いため、十分なシールド可能領域を確保する観点から、例えば第1実施形態における略円柱状の軟磁性体シールド12に対して相対的に大きなサイズのものが設定され得る。例えば、
図11Bに示される通り、第5実施形態に係る軟磁性体シールド12のサイズとして、底面からの厚さhが2φm以上であり、底面の直径φsbが2φm以上であるのが好ましい。また、第5実施形態に係る軟磁性体シールド12においても、第3実施形態及び第4実施形態と同様の観点から、磁気抵抗効果素子11の上面と軟磁性体シールド12の下面とが対向するように双方が配置され得る。
【0068】
第5実施形態に係る軟磁性体シールド12を磁気抵抗効果素子11の上方に配置することにより、検出範囲を超える磁界強度(例えば80mT超)の外部磁界が磁気抵抗効果素子11に印加されたとしても、磁気抵抗効果素子11からの出力信号に含まれる高調波成分V
3rdは、磁気抵抗効果素子11に80mT以下の磁界強度の外部磁界が印加されたときの出力信号に含まれる高調波成分V
3rdと略同一となる。このため、磁気抵抗効果素子11は所期の検出信号を出力することができ、対象物の位置検出誤差の増大を防止することが可能となる。
【0069】
[第6実施形態]
図12Aは本発明の第6実施形態に係る磁気センサ1を示す全体概略斜視図であり、
図12Bは本発明の第6実施形態に係る磁気センサ1を示す概略断面図である。なお、第1実施形態における磁気センサ1と略同様の構成については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0070】
図12A及び
図12Bに示される通り、第6実施形態に係る磁気センサ1を構成する軟磁性体シールド12は、第1実施形態同様に略円柱形状であるが、中心軸を厚さ方向に貫通する貫通孔12hが形成されている点で、第1実施形態に係る軟磁性体シールド12と異なる。貫通孔12hの深さhは軟磁性体シールド12の厚さに相当する。第6実施形態においては、磁気抵抗効果素子11の面内方向における外部磁界の磁界強度の分布のムラを低減可能とする観点から、貫通孔12hの直径Whと深さhとが調整され得る。貫通孔12hの直径Whは0.03φ
m以下で適宜設定され得る。
【0071】
第6実施形態に係る軟磁性体シールド12を第1実施形態と同様に磁気抵抗効果素子11の上方または下方に配置することにより、検出範囲を超える磁界強度(例えば80mT超)の外部磁界が磁気抵抗効果素子11に印加されたとしても、磁気抵抗効果素子11からの出力信号に含まれる高調波成分V
3rdは、磁気抵抗効果素子11に80mT以下の磁界強度の外部磁界が印加されたときの出力信号に含まれる高調波成分V
3rdと略同一となる。このため、磁気抵抗効果素子11は所期の検出信号を出力することができ、対象物の位置検出誤差の増大を防止することが可能となる。
【0072】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0073】
上記実施形態において、MR素子として、積層膜構造を有するTMR素子、GMR素子を例に挙げて説明したが、本発明はこのような態様に限定されるものではなく、例えば、強磁性材料の単層膜構造を有するAMR素子であってもよい。
【実施例】
【0074】
以下、実施例等を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は下記の実施例等に何ら限定されるものではない。
【0075】
〔実施例1〕
図1A〜
図1Cに示される構成を有する磁気センサ1として、軟磁性体シールド12が上方に配置された磁気抵抗効果素子11が複数アレイ状に配列された磁気センサ1を準備した。かかる磁気センサ1において、略円柱状の磁気抵抗効果素子11の直径をφ
mとし、略円柱状の軟磁性体シールド12の直径φ
sを2.0φ
m、厚さhをφ
mとし、磁気抵抗効果素子11の直上に軟磁性体シールド12を配置し、磁気抵抗効果素子11と軟磁性体シールド12との配置間隔dを0.075φ
mとし、隣り合う2つの軟磁性体シールド12(磁気抵抗効果素子11)同士の間隔Dを3.3φ
mとした。実施例1の磁気センサ1に200mTの外部磁界が印加された場合における、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
1Xと、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
1Yとに基づいて減衰効果を確認した(
図6参照)。結果を表1及び
図13に示す。なお、
図13及びこれ以降で説明する
図14〜
図26、
図27B、
図28B及び
図29に示される特性図において、縦軸に磁界強度MF(単位:mT)をとり、横軸に磁気抵抗効果素子11の位置P(単位:μm)をとり、磁気抵抗効果素子11の直径φmを、横軸から鉛直方向に延びる破線に挟まれる幅(両向き矢印)で示す。実施例1においては、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度と、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度が略同一であるため、曲線MF
1X及び曲線MF
1Yは略重なって描かれている(
図13)。なお、磁界強度の減衰効果の評価基準を以下の通り、「〇」「△」「×」として示した。
[減衰効果の評価基準]
〇:磁気抵抗効果素子11に印加される外部磁界の磁界強度が概ね20〜80mTに収まっている。
△:磁気抵抗効果素子11に印加される外部磁界の磁界強度の一部が20〜80mTから外れていたり、磁気抵抗効果素子11の面内における磁界強度分布の平坦性が低下したりしているものの、実用上問題ない水準である。
×:磁気抵抗効果素子11に印加される外部磁界の磁界強度のほとんどが20〜80mTから外れているか、磁気抵抗効果素子11の面内における磁界強度分布の平坦性が著しく悪化している。
【0076】
〔実施例2〕
軟磁性体シールド12の直径φ
sを2.6φ
mとした以外は、実施例1と同様の構成を有する磁気センサ1を準備した。実施例2の磁気センサ1に200mTの外部磁界を印加した場合における、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
2Xと、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
2Yとに基づいて減衰効果を確認した。結果を表1及び
図14に示す。実施例2においては、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度と、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度が略同一である、曲線MF
2X及び曲線MF
2Yは略重なって描かれている(
図14)。
【0077】
〔実施例3〕
軟磁性体シールド12の厚さhを1.6φ
mとした以外は、実施例1と同様の構成を有する磁気センサ1を準備した。実施例3の磁気センサ1に200mTの外部磁界を印加した場合における、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
3Xと、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
3Yとに基づいて減衰効果を確認した。結果を表1及び
図15に示す。実施例3においては、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度と、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度が略同一であるため、曲線MF
3X及び曲線MF
3Yは略重なって描かれている(
図15)。
【0078】
〔実施例4〕
軟磁性体シールド12の直径φ
sを1.3φ
mとした以外は、実施例1と同様の構成を有する磁気センサ1を準備した。実施例4の磁気センサ1に200mTの外部磁界を印加した場合における、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
4Xと、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
4Yとに基づいて減衰効果を確認した。結果を表1及び
図16に示す。実施例4においては、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度と、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度が略同一であるため、曲線MF
4X及び曲線MF
4Yは略重なって描かれている(
図16)。
【0079】
〔実施例5〕
軟磁性体シールド12の厚さhを0.8φ
mとした以外は、実施例1と同様の構成を有する磁気センサ1を準備した。実施例5の磁気センサ1に200mTの外部磁界を印加した場合における、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
5Xと、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
5Yとに基づいて減衰効果を確認した。結果を表1及び
図17に示す。実施例5においては、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度と、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度が略同一であるため、曲線MF
5X及び曲線MF
5Yは略重なって描かれている(
図17)。
【0080】
〔実施例6〕
図8A〜
図8Bに示される構成、すなわち軟磁性体シールド12の形状を六角柱とした以外は、実施例1と同様の構成を有する磁気センサ1を準備した。実施例6の磁気センサ1に200mTの外部磁界を印加した場合における、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
6Xと、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
6Yとに基づいて減衰効果を確認した。結果を表1及び
図18に示す。実施例6においては、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度と、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度が略同一であるため、曲線MF
6X及び曲線MF
6Yは略重なって描かれている(
図18)。
【0081】
〔実施例7〕
図12A〜
図12Bに示される構成、すなわち軟磁性体シールド12に直径0.2φ
mの貫通孔12hを形成した以外は、実施例1と同様の構成を有する磁気センサ1を準備した。実施例7の磁気センサ1に200mTの外部磁界を印加した場合における、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
7Xと、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
7Yとに基づいて減衰効果を確認した。結果を表1及び
図19に示す。実施例7においては、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度と、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度が略同一であるため、曲線MF
7X及び曲線MF
7Yは略重なって描かれている(
図19)。
【0082】
〔実施例8〕
図11A〜
図11Bに示される構成、すなわち軟磁性体シールド12の形状を底面の直径が2φ
mである略円錐状とし、軟磁性体シールド12の厚さhを2.0φ
mとした以外は、実施例1と同様の構成を有する磁気センサ1を準備した。実施例8の磁気センサ1に200mTの外部磁界を印加した場合における、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
8X(太線)と、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
8Y(太線)とに基づいて減衰効果を確認した。結果を表1及び
図20に示す。実施例8においては、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度と、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度が略同一であるため、曲線MF
8X及び曲線MF
8Yは略重なって描かれている(
図20)。
【0083】
〔実施例9〕
軟磁性体シールド12の厚さhをφ
mとした以外は、実施例8と同様の構成を有する磁気センサ1を準備した。実施例9の磁気センサ1に200mTの外部磁界を印加した場合における、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
9X(細線)と、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
9Y(細線)とに基づいて減衰効果を確認した。結果を表1及び
図20に示す。実施例9においては、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度と、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度が略同一であるため、曲線MF
9X及び曲線MF
9Yは略重なって描かれている(
図20)。
【0084】
〔実施例10〕
図9A〜
図9Bに示される構成、すなわち軟磁性体シールド12を、円柱状部12cと円錐状部12pとをこの順で積層する構成とし、中心軸における厚さをφ
mとした以外は、実施例1と同様の構成を有する磁気センサ1を準備した。実施例10の磁気センサ1に200mTの外部磁界を印加した場合における、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
10X(細線)と、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
10Y(細線)とに基づいて減衰効果を確認した。結果を表1及び
図21に示す。実施例10においては、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度と、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度が略同一であるため、曲線MF
10X及び曲線MF
10Yは略重なって描かれている(
図21)。
【0085】
〔実施例11〕
軟磁性体シールド12を磁気抵抗効果素子11の直下に配置した以外は、実施例10と同様の構成を有する磁気センサ1を準備した。実施例11の磁気センサ1に200mTの外部磁界を印加した場合における、磁気抵抗効果素子11に印加される磁界強度を磁気センサ1の面内におけるX軸方向とY軸方向とにおいて求め、曲線MF
11X及び曲線MF
11Y(太線)に基づいて減衰効果を確認した。結果を表1及び
図21に示す。実施例11においては、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度と、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度が略同一であるため、曲線MF
11X及び曲線MF
11Yは略重なって描かれている(
図21)。
【0086】
〔実施例12〕
図10に示される構成、すなわち軟磁性体シールド12の上面にすり鉢状部12nを形成し、中心軸における厚さを0.8φ
mとした以外は、実施例1と同様の構成を有する磁気センサ1を準備した。実施例12の磁気センサ1に200mTの外部磁界を印加した場合における、磁気抵抗効果素子11に印加される磁界強度を磁気センサ1の面内におけるX軸方向とY軸方向とにおいて求め、曲線MF
12X及び曲線MF
12Y(細線)に基づいて減衰効果を確認した。結果を表1及び
図22に示す。実施例12においては、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度と、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度が略同一であるため、曲線MF
12X及び曲線MF
12Yは略重なって描かれている(
図22)。
【0087】
〔実施例13〕
軟磁性体シールド12を磁気抵抗効果素子11の直下に配置した以外は、実施例12と同様の構成を有する磁気センサ1を準備した。実施例13の磁気センサ1に200mTの外部磁界を印加した場合における、磁気抵抗効果素子11に印加される磁界強度を磁気センサ1の面内におけるX軸方向とY軸方向とにおいて求め、曲線MF
13X及び曲線MF
13Y(太線)に基づいて減衰効果を確認した。結果を表1及び
図22に示す。実施例13においては、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度と、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度が略同一であるため、曲線MF
13X及び曲線MF
13Yは略重なって描かれている(
図22)。
【0088】
〔実施例14〕
図5A〜
図5Bに示される構成、すなわち軟磁性体シールド12を磁気抵抗効果素子11の直下に配置した磁気センサ1とした以外は、実施例1と同様の構成を有する磁気センサ1を準備した。実施例14の磁気センサ1に200mTの外部磁界を印加した場合における、磁気抵抗効果素子11に印加される磁界強度を磁気センサ1の面内におけるX軸方向とY軸方向とにおいて求め、曲線MF
14X及び曲線MF
14Yに基づいて減衰効果を確認した。結果を表1及び
図23に示す。実施例14においては、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度と、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度が略同一であるため、曲線MF
14X及び曲線MF
14Yは略重なって描かれている(
図23)。
【0089】
〔実施例15〕
図5Cに示される構成、すなわち2つの軟磁性体シールド12を磁気抵抗効果素子11の直上および直下にそれぞれ配置した磁気センサ1とした以外は、実施例1と同様の構成を有する磁気センサ1を準備した。実施例15の磁気センサ1に200mTの外部磁界を印加した場合における、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
15Xと、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
15Yとに基づいて減衰効果を確認した。結果を表1及び
図24に示す。実施例15においては、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度と、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度が略同一であるため、曲線MF
15X及び曲線MF
15Yは略重なって描かれている(
図24)。
【0090】
〔実施例16〕
隣り合う軟磁性体シールド12(磁気抵抗効果素子11)同士の間隔Dを2.6φ
mとした以外は、実施例1と同様の構成を有する磁気センサ1を準備した。実施例16の磁気センサ1に200mTの外部磁界を印加した場合における、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
16Xと、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
16Yとに基づいて減衰効果を確認した。結果を表1及び
図25に示す。実施例16においては、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度と、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度が略同一であるため、曲線MF
16X及び曲線MF
16Yは略重なって描かれている(
図25)。
【0091】
〔実施例17〕
隣り合う軟磁性体シールド12(磁気抵抗効果素子11)同士の間隔Dを4.0φ
mとした以外は、実施例1と同様の構成を有する磁気センサ1を準備した。実施例17の磁気センサ1に200mTの外部磁界を印加した場合における、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
17Xと、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
17Yとに基づいて減衰効果を確認した。結果を表1及び
図26に示す。実施例17においては、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度と、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度が略同一であるため、曲線MF
17X及び曲線MF
17Yは略重なって描かれている(
図26)。
【0092】
〔比較例1〕
図27Aに示されるように、軟磁性体シールド12を略四角柱状とした以外は、実施例1と同様の構成を有する磁気センサ1を準備した。比較例1の磁気センサ1に200mTの外部磁界を印加した場合における、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
C1Xと、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
C1Yとに基づいて減衰効果を確認した。結果を表1及び
図27Bに示す。比較例1においては、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度と、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度が略同一であるため、曲線MF
C1X及び曲線MF
C1Yは略重なって描かれている(
図27B)。
【0093】
〔比較例2〕
図28Aに示されるように、軟磁性体シールド12を、平面視が略長方形状である略直方体状とした以外は、実施例1と同様の構成を有する磁気センサ1を準備した。比較例2においては、図の上下方向を長手方向とする平面視略長方形状の軟磁性体シールド12の複数が、その長手方向に対して直交する方向に配列されたものを使用した。比較例2の磁気センサ1に200mTの外部磁界を印加した場合における、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
C2Xと、磁気抵抗効果素子11のY軸方向(長手方向)に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
C2Yに基づいて減衰効果を確認した。結果を表1及び
図28Bに示す。比較例2においては、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度が曲線MF
C2Xで描かれ、磁気抵抗効果素子11のY軸方向に沿って測定された磁界強度が曲線MF
C2Yで描かれている(
図28B)。
【0094】
〔比較例3〕
軟磁性体シールド12の厚さhを0.3φ
mとした以外は、実施例1と同様の構成を有する磁気センサ1を準備した。比較例3の磁気センサ1に200mTの外部磁界を印加した場合における、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
C3Xと、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って磁界強度を測定して得られる曲線MF
C3Yとに基づいて減衰効果を確認した。結果を表1及び
図29に示す。比較例3においては、X軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度と、Y軸方向に並ぶ磁気抵抗効果素子11に沿って測定された磁界強度が略同一であるため、曲線MF
C3X及び曲線MF
C3Yは略重なって描かれている(
図29)。
【0095】
【表1】
【0096】
表1及び
図13〜
図26、
図27B、
図28B及び
図29に示す結果から明らかなように、直径φ
sが磁気抵抗効果素子11の直径φ
mの1.3倍以上で、厚さhが磁気抵抗効果素子11の直径φ
mの0.3倍を超える厚さの軟磁性体シールド12を磁気抵抗効果素子11の上方および/または下方に位置させて、平面視において磁気抵抗効果素子11の大きさが軟磁性体シールド12に物理的に包含される大きさとなることで、磁気抵抗効果素子11の検出範囲を超える外部磁界が印加された場合であっても、20〜80mTの検出範囲内の磁界強度まで減衰された外部磁界が磁気抵抗効果素子11に印加されることが確認された。また、上記の結果から、略四角柱状や平面視略長方形状である軟磁性体シールドより、略円柱状、平面視形状がN角形(Nは6以上の偶数)の柱状、円柱状部上に円錐状部が位置する形状、N角柱状部(Nは6以上の偶数)上にN角錐(Nは6以上の偶数)の凸状部が位置する形状、上面がすり鉢状に凹む柱状、略円錐形状、N角錐形状(Nは6以上の偶数)等である軟磁性体シールドのほうが、磁界強度が20〜80mTの検出範囲に減衰され、かつ、磁気抵抗効果素子11の面内において磁界強度を実質的に変化させないことが確認された。以上から、上記の要件を満たす磁気センサ1を用いることで、対象物の回転位置や直線的変位等の位置検出の誤差を低減することができるものと推察される。