特許第6490135号(P6490135)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6490135
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】切断装置及びこれを備えた延反機
(51)【国際特許分類】
   B26D 7/18 20060101AFI20190318BHJP
   D06H 7/02 20060101ALI20190318BHJP
   B26D 1/20 20060101ALN20190318BHJP
【FI】
   B26D7/18 E
   D06H7/02
   !B26D1/20 A
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-76723(P2017-76723)
(22)【出願日】2017年4月7日
(65)【公開番号】特開2018-176322(P2018-176322A)
(43)【公開日】2018年11月15日
【審査請求日】2018年3月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】000151221
【氏名又は名称】株式会社島精機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(74)【代理人】
【識別番号】100117097
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 充浩
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 基樹
【審査官】 山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−315893(JP,A)
【文献】 特開2008−142816(JP,A)
【文献】 特開2016−55379(JP,A)
【文献】 特開昭49−35981(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 7/00 − 11/00
B26D 1/00 − 1/24
D06B 1/00 − 23/30
D06C 3/00 − 29/00
D06G 1/00 − 5/00
D06H 1/00 − 7/24
D06J 1/00 − 1/12
B41J 11/66 − 11/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御手段により制御されたモータにより回転する回転刃とこれに常時摺接する固定刃とを備えた切断装置であって、
前記制御手段は、
前記回転刃と前記固定刃との間で切断対象物を切断する際にその回転刃に付着する前記切断対象物の溶融物質をクリーニングする機能を有し、
前記回転刃のクリーニング時に、前記回転刃の周速度が前記切断対象物の切断時の周速度よりも低い15m/min〜150m/minの範囲に設定されるように前記モータを制御していることを特徴とする切断装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記回転刃のクリーニング時に、前記モータの駆動を停止するインターバルを設けることを特徴とする請求項1に記載の切断装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記回転刃のクリーニング時に、前記インターバルを繰り返し設けることを特徴とする請求項2に記載の切断装置。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の切断装置を備えた延反機。
【請求項5】
複数の生地を延反する際に順次切断される生地毎の切断スパンの間に前記回転刃のクリーニングを自動で行うことを特徴とする請求項4に記載の切断装置を備えた延反機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転刃と固定刃との間で切断対象物を切断する切断装置及びこれを備えた延反機に関し、詳しくは、切断対象物を切断する際に回転刃に付着した溶融物質をクリーニングする機能を備えたものに係る。
【背景技術】
【0002】
一般に、切断装置にあっては、モータにより回転する回転刃とこれに摺接する固定刃とを備え、回転刃と固定刃との間で切断対象物を切断する際にその回転刃に付着する切断対象物からの粘着性のある溶融物質をクリーニングするクリーニング装置を備えたものが知られている(特許文献1参照)。具体的には、感光感圧記録媒体などの切断対象物をテーブル上に繰り出す繰り出し口に臨むように案内レールを設け、この案内レールに沿って往復移動するホルダに回転刃を設けるとともに、この回転刃の往復移動範囲の両端近傍にクリーニング装置を設けている。このクリーニング装置は、案内レールに沿って回転刃の往復移動範囲に亘って設けられた固定刃と摺接しながら回転刃がその往復移動範囲の両端近傍に到達したときに接触し、固定刃との間で切断対象物を切断する際に回転刃に付着した溶融物質をクリーニングするようにしている。
【0003】
また、案内レールに沿って往復移動するホルダに回転刃と固定刃との双方を設け、回転刃に対し固定刃が常時摺接するようにした切断装置もあり、このものにおいても、回転刃の往復移動範囲の両端のうちの少なくとも一方の近傍の位置、またはホルダなどに、クリーニング装置を設けている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−231425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、回転刃と摺接する固定刃の摺接部位は、摩擦により高温となるために溶融物質が付着し難く、クリーニングが不要であることが分かっている。そのため、回転刃に対し固定刃が常時摺接する切断装置では、回転刃に付着した溶融物質をクリーニングする必要がある。
【0006】
これは、回転刃に対し固定刃が常時摺接していると、互いの摺接面で溶けた切断対象物の溶融物質が回転刃の表面に付着し、次に固定刃に摺接するまでの間に冷やされて粘度が高まり、これが繰り返されて堆積してしまうからである。このとき、回転刃の表面に堆積した堆積物を放置しておくと、固定刃と回転刃との間隔が広がってしまい、切断装置の切れ味が次第に悪化してしまう。
【0007】
その場合、回転刃に対し固定刃が常時摺接する切断装置にあっては、固定刃自体にクリーニング機能が存在していれば、回転刃のクリーニングを固定刃に依存することも考えられる。このとき、固定刃は、回転刃との摺接面に対し常時摺接するように板ばねなどの付勢手段によって押し付けられて、固定刃と回転刃との間にギャップが生じないように追従させている。しかし、回転刃はその組み付け精度などによって回転時に振れが生じると、回転刃の周速度が高くなる切断対象物の切断時などに固定刃が回転刃との摺接面に対し跳ねるように接して当該両刃間にギャップが生じてしまい、回転刃との摺接面に対する固定刃の追従性が低下する。そのため、回転刃に付着する溶融物質が除去しきれず、切断装置の切れ味に影響がなくてもクリーニング効果の低下が否めない。また、切断時あるいは切断直後における溶融物質は、摩擦熱により粘性を有する状態にあり、前記両刃間のギャップが少ない状態であっても、固定刃で削ぎ落とすことは難しい。
【0008】
また、回転刃に付着した溶融物質をクリーニングするために、固定刃に頼らない専用のクリーニング装置を回転刃の往復移動範囲の両端のうちの少なくとも一方の近傍の位置又はホルダなどに設けることも考えられるが、専用のクリーニング装置によってコストアップが否めない上、クリーニング装置を設置するスペースを要して切断装置の大型化が危惧される。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、クリーニング装置を不要にしてコストダウンを図りつつコンパクト化を達成し、固定刃との摺接面に対する回転刃の追従性を高めて回転刃の溶融物質を効率よく除去することでクリーニング効果を向上させることができる切断装置及びこれを備えた延反機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明では、制御手段により制御されたモータにより回転する回転刃とこれに常時摺接する固定刃とを備えた切断装置を前提とする。そして、前記制御手段は、前記回転刃と前記固定刃との間で切断対象物を切断する際にその回転刃に付着する前記切断対象物の溶融物質をクリーニングする機能を有しているとともに、前記回転刃のクリーニング時に、前記回転刃の周速度が前記切断対象物の切断時の周速度よりも低い15m/min〜150m/minの範囲に設定されるように前記モータを制御することを特徴としている。
【0011】
また、前記制御手段は、前記回転刃のクリーニング時に、前記モータの駆動を停止するインターバルを設けていてもよい。
【0012】
更に、前記制御手段は、前記回転刃のクリーニング時に、前記インターバルを繰り返し設けていてもよい。
【0013】
そして、切断装置を延反機に備えていてもよい。
【0014】
また、複数の生地を延反する際に順次切断される生地毎の切断スパンの間に前記回転刃のクリーニングを自動で行っていてもよい。
【発明の効果】
【0015】
以上、要するに、回転刃のクリーニング時に、回転刃の周速度が切断対象物の切断時の周速度よりも低い15m/min〜150m/minの範囲に設定されるようにモータを制御することで、回転刃のクリーニング時に回転刃の組み付け精度などに起因する回転刃の振れの周期が切断対象物の切断時よりも非常にゆっくりとなる。このため、切断対象物の切断時などのように固定刃が回転刃の摺接面に対し跳ねるように接して当該両刃間のギャップが生じることがなくなる。これにより、回転刃のクリーニング時に回転刃との摺接面に対する固定刃の追従性が増すことになり、固定刃が回転刃の摺接面に対しスムーズに摺接し、回転刃のクリーニング時に、回転刃に付着する溶融物質を効率よく除去してクリーニング効果を向上させることができる。また、回転刃の周速度を低速に保つので、回転刃に付着した溶融物質は切断時や切断直後よりも硬化する傾向にあり、固定刃による削ぎ落とし効果が向上する。
【0016】
しかも、回転刃に付着した溶融物質をクリーニングするクリーニング装置が不要となって、コストダウンを図りつつ、切断装置のコンパクト化を図ることもできる。
【0017】
また、回転刃のクリーニング時にモータの駆動を停止するインターバルを設けることで、回転刃の振れが、周速度が15m/min〜150m/minの範囲で駆動するときよりもさらにゆっくりとなって、固定刃との間のギャップがさらに生じ難くなる。これにより、回転刃のクリーニング時に回転刃との摺接面に対する固定刃の追従性がさらに増すことになり、固定刃が回転刃の摺接面に対しスムーズに摺接し、回転刃に付着する溶融物質をより効率よく除去してクリーニング効果をより向上させることができる。
【0018】
更に、回転刃のクリーニング時にインターバルを繰り返し設けることで、回転刃の振れが、周速度が15m/min〜150m/minの範囲で駆動するときよりもより一層ゆっくりとなって、固定刃との間のギャップがより生じ難くなる。これにより、回転刃のクリーニング時に回転刃との摺接面に対する固定刃の追従性がより一層増すことになり、固定刃が回転刃の摺接面に対しスムーズに摺接または密着し、回転刃に付着する溶融物質をさらに効率よく除去してクリーニング効果をより一層向上させることができる。
【0019】
そして、切断装置を延反機に備えることで、延反機により延反される切断対象物の切断時に回転刃に付着する溶融物質を効率よく除去してクリーニング効果を向上させることができる。
【0020】
また、複数の生地を延反する際に順次切断される生地毎の切断スパンの間に回転刃のクリーニングを自動で行うことで、回転刃により生地を切断しない生地毎の切断スパンを利用して回転刃のクリーニングを効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態に係る切断装置を備えた延反機の斜視図である。
図2図1の延反機の延反機本体を正面から見た正面図である。
図3図1の切断装置の正面図である。
図4図3の切断装置の固定刃に対する回転刃の摺接面付近を示す斜視図である。
図5図3の切断装置の回転刃への溶融物質の付着状態を示す一部切欠正面図である。
図6】回転刃をクリーニングする際の時間に対する回転刃の周速度m/minを制御する制御マップである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
図1は本発明の実施の形態に係る切断装置を備えた延反機の斜視図、図2は延反機の繰り出し口を正面から見た正面図をそれぞれ示している。
【0024】
図1及び図2において、延反機1は、切断対象物としての接着芯地Sをロール状に巻いた原反(図示せず)を備えているとともに、この原反から接着芯地Sを引き出す解反部11を備えている。また、延反機1は、水平に設置された延反テーブル12と、この延反テーブル12上をその一側(図1では右側)と他側(図1では左側)との間で進退移動し、解反部11で引き出された接着芯地Sを皺のない状態で繰り出す繰り出し口13を有する延反機本体14とを備えている。
【0025】
延反機本体14は、繰り出し口13に臨むようにその幅方向全域に亘って案内レール15が設けられている。この案内レール15には、当該案内レール15に沿って往復移動するホルダ16が設けられている。ホルダ16は、内部に切断装置2を備え、案内レール15の一側(図2では右側)から他側(図2では左側)に向かって進出移動する際に接着芯地Sを取り込む取り込み口161(図3に表れる)を下端に有し、取り込み口161から取り込んだ接着芯地Sをその一側から切断装置2により切断する。
【0026】
延反機1は、延反機本体14を延反テーブル12の他側へ進出移動させてから一側へ後退移動させるとともに、延反テーブル12上に所望長さの接着芯地Sを繰り出し口13から繰り出し、その状態で、案内レール15に沿ってホルダ16を進出移動させて接着芯地Sを切断装置2で切断することを繰り返し行って、延反テーブル12上に接着芯地Sの切断片S1を一枚ずつ積層する。
【0027】
図3は切断装置2の正面図、図4は切断装置2の固定刃22に対する回転刃21の摺接面付近を示す斜視図をそれぞれ示している。この図3及び図4において、切断装置2は、ホルダ16の下部に回転自在に支持されて延反機本体14の進出方向へ突出する回転軸211に回転一体に支持された円板状の回転刃21と、この回転刃21に対し刃先221が常時摺接するブロック状の固定刃22とを備えている。回転刃21は、その刃先212が取り込み口161に臨むように当該取り込み口161の上縁部に位置する回転軸211に取り付けられている一方、固定刃22は、取り込み口161の下縁部に設けられ、図示しない板ばねの付勢力によって回転刃21との摺接面に対する追従性が高められるようにしている。そして、回転刃21は、ホルダ16の上部に取り付けられたモータ23の軸231に回転一体に支持されたプーリ232からの回転力を回転軸211にベルト24を介して伝達されることによって、図3に示す矢印方向へ回転する。そして、モータ23は、制御手段としての制御装置25からの指令により回転量が制御されるようになっている。この場合、モータ23としては、構造がシンプルで安価なACモータが適用されている。
【0028】
図5は切断装置2の回転刃21への溶融物質の付着状態を示す一部切欠正面図を示している。この図5において、回転刃21の刃先212付近には、その刃先212に沿って接着芯地Sを切断する際に当該接着芯地Sからの溶融する溶融物質Gが付着し、経時的にリング状となって堆積している。この場合、回転刃21としては、直径100mmのものが用いられている。
【0029】
そして、制御装置25は、回転刃21の刃先212付近での溶融物質Gの堆積を解消する上で、回転刃21の溶融物質Gをクリーニングする機能を備えている。具体的には、制御装置25は、回転刃21に付着した溶融物質Gのクリーニング時に、回転刃21の周速度が接着芯地Sの切断時の周速度(例えば1410m/min)よりも低い47m/minに設定されるようにモータ23を制御している。なお、回転刃21のクリーニング時における周速度は、15m/min〜150m/minの範囲、より好ましくは30m/min〜100m/minの範囲に設定されるようにモータ23を制御装置25によって制御していればよい。
【0030】
このとき、制御装置25による回転刃21のクリーニング動作は、約10秒程度の時間を要し、延反機1のホルダ16の切断装置2により接着芯地Sを切断してから次の接着芯地Sを延反し、その延反した接着芯地Sの切断を行うまでの時間も約10秒要している。そのため、制御装置25は、複数の接着芯地Sを延反する際に順次切断される接着芯地S毎の切断スパンの間の約10秒間に回転刃21のクリーニングが自動で行われるように制御している。
【0031】
なお、制御装置25による回転刃21のクリーニング動作は、複数の接着芯地Sを延反する際に順次切断される接着芯地S毎の切断スパンの間に限らず、接着芯地の切断時以外のときに作業者の操作によって行われていてもよく、また、回転刃の刃先付近での溶融物質の堆積状態を検出するセンサからの検出信号や、切断装置による接着芯地の切断回数を計測する計測手段からの計測信号などに基づいて自動的に行われるようにしてもよい。この回転刃のクリーニング動作をこれよりも短い他の動作に合わせて行う場合には、この短い他の動作を、クリーニング動作に要する時間を相殺した残り時間だけ待機させておけばよい。
【0032】
このように、回転刃21のクリーニング時に、回転刃21の周速度が接着芯地Sの切断時の周速度よりも低い47m/minに設定されるようにモータ23が制御されているので、回転刃21のクリーニング時に回転刃21の組み付け精度などに起因する回転刃21の振れの周期が接着芯地Sの切断時よりも非常にゆっくりとなる。このため、接着芯地Sの切断時などのように固定刃22が回転刃21の摺接面に対し跳ねるように接して当該両刃21,22間のギャップが生じることがなくなる。これにより、回転刃21のクリーニング時に回転刃21との摺接面に対する固定刃22の追従性が増すことになり、固定刃22が回転刃21の摺接面に対しスムーズに摺接し、回転刃21に付着する溶融物質Gを効率よく除去してクリーニング効果を向上させることができる。また、回転刃21の周速度を低速に保つので、回転刃21に付着した溶融物質Gは切断時や切断直後よりも硬化する傾向にあり、固定刃22による削ぎ落とし効果が向上する。
【0033】
しかも、回転刃21に付着した溶融物質Gをクリーニングするクリーニング装置が不要となって、コストダウンを図りつつ、切断装置2のコンパクト化を図ることもできる。
【0034】
図6は回転刃21をクリーニングする際の時間Tに対する回転刃21の周速度m/minを制御する制御マップを示している。
【0035】
図6の制御マップに示すように、制御装置25は、回転刃21のクリーニング時に回転刃21を接着芯地Sの切断時の周速度よりも低い周速度(例えば47m/min)にした状態にあるときに、モータ23の駆動を停止するインターバルTbを設け、このインターバルTbを回転刃21の回転を停止させるに十分な長さ(例えば1秒)に設定している。そして、制御装置25は、回転刃21のクリーニング時において、モータ23の駆動を停止するインターバルTbを所定時間Ta(例えば3秒)おきに繰り返すように設けている。
【0036】
このとき、回転刃21のクリーニング時にモータ23を停止させて回転刃21を接着芯地Sの切断時の周速度よりも低い周速度であっても、その周速度が200m/minを超える周速度であれば、回転刃21に付着する溶融物質Gは摩擦熱によって未だ粘性が高い。このため、回転刃21と固定刃22との間にギャップが生じることと相俟って、回転刃21のクリーニング時に回転刃21との摺接面に対する固定刃22の追従性が十分に期待できず、固定刃22が回転刃21の摺接面に対しスムーズに摺接し難くなる。かかる点から、制御装置25による回転刃21のクリーニング時に、回転刃21の周速度が15m/min〜150m/minの範囲に設定されるようにモータ23を制御しておく必要がある。
【0037】
このように、回転刃21のクリーニング時、回転刃21の周速度を接着芯地Sの切断時の周速度よりも低くした状態(例えば47m/min)にあるときに制御装置25によってモータ23の駆動を停止するインターバルTbを設け、このインターバルTbが回転刃21の回転を停止させるに十分な長さに設定されているので、回転刃21のクリーニング時における回転刃21の振れの周期は、周速度が15m/min〜150m/minの範囲で駆動するときよりもさらにゆっくりとなる。停止状態を経てモータ23を再始動するときには、回転刃21との摺接面に対して固定刃22が密着することになる。これにより、回転刃21のクリーニング時に、固定刃22が回転刃21の摺接面に対し密着した状態から回転刃21が回転し始め、回転刃21の溶融物質Gを摺接面に密着した位置からさらに効率よく除去してクリーニング効果をさらに向上させることができる。
【0038】
更に、回転刃21のクリーニング時において、モータ23の駆動を停止するインターバルTbが、回転刃21の回転数を低下させた状態にあるときに所定時間Ta(例えば3秒)おきに繰り返し行われるように制御しているので、回転刃21のクリーニング時に、固定刃22が回転刃21の摺接面に対して密着することが繰り返され、回転刃21の溶融物質Gをより一層効率よく除去してクリーニング効果をより一層向上させることができる。
【0039】
また、制御装置25による回転刃21のクリーニング動作が、複数の接着芯地S毎の切断スパンの間においてこれとほぼ同じ10秒間に自動的に行われるので、複数枚の接着芯地Sを切断する度に回転刃21のクリーニング動作が待ち時間なく円滑に行うことができ、作業効率を向上させることができる。
【0040】
なお、本発明は、前記実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含している。例えば、前記実施の形態では、回転刃21のクリーニング時にモータ23の駆動を停止するインターバルTbを回転刃21の回転を停止に至らしめるに十分な長さ(時間Tb=1秒)に設定したが、回転刃のクリーニング時に回転刃が接着芯地の切断時の周速度よりも低い周速度(たとえば47m/min程度)に設定されるようにするだけであってもよい。
【0041】
また、回転刃の周速度を接着芯地Sの切断時の周速度よりも低くした状態にあるときにモータの駆動を停止するインターバルが回転刃の回転を停止させるに不十分な長さに設定されていてもよい。この場合には、回転刃のクリーニング時における回転刃の振れの周期は、周速度が15m/min〜150m/minの範囲で駆動するときよりもゆっくりとなるため、回転刃との摺接面に対して固定刃が密着し易くなる。これにより、回転刃のクリーニング時に、固定刃が回転刃の摺接面に対し密着し易い状態から回転刃が回転し始め、回転刃の溶融物質を摺接面に密着した位置から効率よく除去してクリーニング効果をより向上させることができる。
【0042】
また、前記実施の形態では、切断対象物として接着芯地を用いたが、切断対象物はこれに限定されるものではなく、たとえば樹脂素材などの切断対象物であってもよい。
【0043】
また、前記実施の形態では、回転刃21のクリーニング時においてモータ23の駆動を停止するインターバルTbを、回転刃21の周速度を接着芯地Sの切断時の周速度よりも低くした状態にあるときに所定時間Ta(例えば3秒)おきに繰り返し行うように制御したが、回転刃21の周速度を接着芯地の切断時の周速度よりも低くした状態にあるときにモータの駆動を停止するインターバルが単一回のみ行われるように制御されていてもよい。
【0044】
また、前記実施の形態では、モータ23としてACモータを適用したが、低速駆動の能力が高いサーボモータが適用されていてもよい。ACモータは、切断時の高速回転に則して選定されていると、低速駆動の能力が低くなることが否めないが、モータ23の駆動を停止するインターバルTbを所定時間Ta(例えば3秒)おきに繰り返し行うように制御することで、低速駆動時に低くなる能力が補われ、低コストなACモータの利点を生かすことができる。
【0045】
更に、前記実施の形態では、切断装置を延反機に用いた場合について述べたが、制御手段により制御されたモータにより回転する回転刃とこれに常時摺接する固定刃とを備えた切断装置であればよく、この切断装置が用いられるあらゆる機器が全て対象であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0046】
1 延反機
2 切断装置
21 回転刃
22 固定刃
23 モータ
25 制御装置(制御手段)
G 溶融物質
S 接着芯地(切断対象物)
Tb モータの駆動を停止するインターバル
図1
図2
図3
図4
図5
図6