特許第6490296号(P6490296)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6490296
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】半導体製造装置用部品
(51)【国際特許分類】
   C04B 37/00 20060101AFI20190318BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   C04B37/00 A
   H01L21/68 N
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2018-502271(P2018-502271)
(86)(22)【出願日】2017年7月13日
(86)【国際出願番号】JP2017025611
(87)【国際公開番号】WO2018016420
(87)【国際公開日】20180125
【審査請求日】2018年1月17日
(31)【優先権主張番号】特願2016-142494(P2016-142494)
(32)【優先日】2016年7月20日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-151326(P2016-151326)
(32)【優先日】2016年8月1日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2016-205640(P2016-205640)
(32)【優先日】2016年10月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001911
【氏名又は名称】特許業務法人アルファ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】三矢 耕平
(72)【発明者】
【氏名】丹下 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】堀田 元樹
(72)【発明者】
【氏名】小川 貴道
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平11−278950(JP,A)
【文献】 特開平02−192471(JP,A)
【文献】 特開昭57−160956(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 37/00 − 37/04
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
AlNを主成分とする材料により形成された第1のセラミックス部材と、
AlNを主成分とする材料により形成された第2のセラミックス部材と、
前記第1のセラミックス部材と前記第2のセラミックス部材との間に配置され、前記第1のセラミックス部材と前記第2のセラミックス部材とを接合する接合層と、を備える半導体製造装置用部品において、
前記接合層は、GdとAlとを含む複合酸化物と、Alとを含み、AlNを含まないことを特徴とする、半導体製造装置用部品。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体製造装置用部品において、
前記接合層において、
前記複合酸化物の含有率は、10mol%以上、86mol%以下であることを特徴とする、半導体製造装置用部品。
【請求項3】
AlNを主成分とする材料により形成された第1のセラミックス部材と、
AlNを主成分とする材料により形成された第2のセラミックス部材と、
前記第1のセラミックス部材と前記第2のセラミックス部材との間に配置され、前記第1のセラミックス部材と前記第2のセラミックス部材とを接合する複数の接合部と、を備える半導体製造装置用部品において、
前記接合部は、GdとAlとを含む複合酸化物と、Alとを含み、AlNを含まないことを特徴とする、半導体製造装置用部品。
【請求項4】
請求項に記載の半導体製造装置用部品において、
前記接合部において、
前記複合酸化物の含有率は、10mol%以上、86mol%以下であることを特徴とする、半導体製造装置用部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される技術は、半導体製造装置用部品に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造装置用部品として、サセプタ(加熱装置)が用いられる。サセプタは、例えば、内部にヒータを有する板状のセラミックス製の保持部材と、保持部材の一方の面側に配置される円筒状のセラミックス製の支持部材と、保持部材と支持部材との間に配置され、保持部材の一方の面と支持部材の一方の面とを接合する接合層とを備える。保持部材の一方の面とは反対側の保持面にウェハが配置される。サセプタは、ヒータに電圧が印加されることにより発生する熱を利用して、保持面に配置されたウェハを加熱する。このようなサセプタの中には、保持部材と支持部材とが、比較的に熱伝導率が高いAlN(窒化アルミニウム)を主成分とする材料により形成されており、接合層は、AlNを含む材料により形成されたものが知られている(例えば特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4032971号公報
【特許文献2】特開2004−345952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したAlNを含む接合層が用いられた半導体製造用部品では、AlNを主成分とする保持部材と支持部材とをAlN粉末を含む接合剤で接合する際の接合温度は、保持部材と支持部材とを焼成する際の焼成温度より低い温度に設定される。接合温度が、保持部材と支持部材とを焼成する際の焼成温度以上に設定されると、AlNを主成分とする保持部材や支持部材自体が変形することがあるためである。
【0005】
しかし、接合温度が、保持部材と支持部材とを焼成する際の焼成温度より低い温度に設定されると、接合剤中のAlN粉末が十分に焼成されず粉末状態のままで凝集することがある。AlN粉末が粉末状態のままで凝集すると、接合層内に空洞が生じることによって保持部材と支持部材との接合強度が低下することがある。
【0006】
なお、このような課題は、サセプタを構成する保持部材と支持部材との接合に限らず、例えば静電チャック等の保持装置を構成するセラミックス部材同士の接合にも共通の課題である。また、このような課題は、保持装置に限らず、例えばシャワーヘッド等の半導体製造装置用部品を構成するセラミックス部材同士の接合に共通の課題である。
【0007】
本明細書では、上述した課題を解決することが可能な技術を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本明細書に開示される技術は、例えば、以下の形態として実現することが可能である。
【0009】
(1)本明細書に開示される半導体製造装置用部品は、AlNを主成分とする材料により形成された第1のセラミックス部材と、AlNを主成分とする材料により形成された第2のセラミックス部材と、前記第1のセラミックス部材と前記第2のセラミックス部材との間に配置され、前記第1のセラミックス部材と前記第2のセラミックス部材とを接合する接合層と、を備える半導体製造装置用部品において、前記接合層は、GdとAlとを含む複合酸化物と、Alとを含み、AlNを含まない。本願の発明者は、実験等により、Gd(ガドニウム)とAl(アルミニウム)とを含む複合酸化物と、Al(酸化アルミニウム)とを含み、AlN(窒化アルミニウム)を含まない接合層は、AlNを含む接合層に比べて、AlNを主成分とする材料により形成されたセラミックス部材同士を接合する際の接合温度を、当該セラミックス部材を焼成する際の焼成温度より低くしても、高い接合強度で形成することができることを見出した。そこで、本半導体製造装置用部品によれば、接合層を、GdとAlとを含む複合酸化物と、Alとを含み、AlNを含まない構成とすることによって、接合層がAlNを含む場合に比べて、第1のセラミックス部材と第2のセラミックス部材との接合強度の低下を抑制することができる。
【0010】
(2)上記半導体製造装置用部品において、前記接合層において、前記複合酸化物の含有率は、10mol%以上、86mol%以下である構成としてもよい。本半導体製造装置用部品によれば、接合層がAlNを含む場合に比べて、接合温度をより低い温度としつつ、接合強度が低下することを抑制することができる。
【0011】
(3)本明細書に開示される半導体製造装置用部品の製造方法は、AlNを主成分とする材料により形成された第1のセラミックス部材を準備する工程と、AlNを主成分とする材料により形成された第2のセラミックス部材を準備する工程と、前記第1のセラミックス部材と前記第2のセラミックス部材との間に、Gdと、Alとを含み、AlNを含まない接合剤を介在させた状態で加熱加圧することにより前記第1のセラミックス部材と前記第2のセラミックス部材とを接合する工程とを含む。
【0012】
(4)本明細書に開示される半導体製造装置用部品は、AlNを主成分とする材料により形成された第1のセラミックス部材と、AlNを主成分とする材料により形成された第2のセラミックス部材と、前記第1のセラミックス部材と前記第2のセラミックス部材との間に配置され、前記第1のセラミックス部材と前記第2のセラミックス部材とを接合する複数の接合部と、を備える半導体製造装置用部品において、前記接合部は、GdとAlとを含む複合酸化物と、Alとを含み、AlNを含まない。本半導体製造装置用部品によれば、接合部を、GdとAlとを含む複合酸化物と、Alとを含み、AlNを含まない構成とすることによって、接合部がAlNを含む場合に比べて、第1のセラミックス部材と第2のセラミックス部材との接合強度の低下を抑制することができる。
【0013】
(5)上記半導体製造装置用部品において、前記接合部において、前記複合酸化物の含有率は、10mol%以上、86mol%以下である構成としてもよい。本半導体製造装置用部品によれば、接合部がAlNを含む場合に比べて、接合温度をより低い温度としつつ、接合強度が低下することを抑制することができる。
【0014】
なお、本明細書に開示される技術は、種々の形態で実現することが可能であり、例えば、静電チャック、真空チャック等の保持装置、サセプタ等の加熱装置、シャワーヘッド等の半導体製造装置用部品の形態で実現することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本実施形態におけるサセプタ100の外観構成を概略的に示す斜視図である。
図2】本実施形態におけるサセプタ100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。
図3】本実施形態におけるサセプタ100の製造方法を示すフローチャートである。
図4】AlとGdとの温度に対する状態変化を示す説明図である。
図5】実施例のサセプタ100の試験片のSEM画像を模式的に示す説明図である。
図6】比較例のサセプタの試験片のSEM画像を模式的に示す説明図である。
図7】変形例のサセプタの試験片のSEM画像を模式的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
A.実施形態:
A−1.サセプタ100の構成:
図1は、本実施形態におけるサセプタ100の外観構成を概略的に示す斜視図であり、図2は、本実施形態におけるサセプタ100のXZ断面構成を概略的に示す説明図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとするが、サセプタ100は実際にはそのような向きとは異なる向きで設置されてもよい。サセプタ100は、請求の範囲における半導体製造装置用部品に相当する。
【0017】
サセプタ100は、対象物(例えばウェハW)を保持しつつ所定の処理温度に加熱する装置であり、例えば半導体装置の製造工程で使用される薄膜形成装置(例えばCVD装置やスパッタリング装置)やエッチング装置(例えばプラズマエッチング装置)に備えられている。サセプタ100は、所定の配列方向(本実施形態では上下方向(Z軸方向))に並べて配置された保持部材10および支持部材20を備える。保持部材10と支持部材20とは、保持部材10の下面(以下、「保持側接合面S2」という)と支持部材20の上面(以下、「支持側接合面S3」という)とが上記配列方向に対向するように配置されている。サセプタ100は、さらに、保持部材10の保持側接合面S2と支持部材20の支持側接合面S3との間に配置された接合層30を備える。保持部材10は、請求の範囲における第1のセラミックス部材に相当し、支持部材20は、請求の範囲における第2のセラミックス部材に相当する。
【0018】
(保持部材10)
保持部材10は、例えば円形平面の板状部材であり、AlN(窒化アルミニウム)を主成分とするセラミックスにより形成されている。なお、ここでいう主成分とは、含有割合(重量割合)の最も多い成分を意味する。保持部材10の直径は、例えば100mm〜500mm程度であり、保持部材10の厚さは、例えば3mm〜15mm程度である。
【0019】
保持部材10の内部には、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等)により形成された線状の抵抗発熱体で構成されたヒータ50が設けられている。ヒータ50の一対の端部は、保持部材10の中央部付近に配置されている。また、保持部材10の内部には、一対のビア52が設けられている。各ビア52は、上下方向に延びる線状の導電体であり、各ビア52の上端は、ヒータ50の各端部に接続されており、各ビア52の下端は、保持部材10の保持側接合面S2側に配置されている。また、保持部材10の保持側接合面S2の中央部付近には、一対の受電電極54が配置されている。各受電電極54は、各ビア52の下端に接続されている。これにより、ヒータ50と各受電電極54とが電気的に接続されている。
【0020】
(支持部材20)
支持部材20は、例えば上下方向に延びた円筒状部材であり、支持側接合面S3(上面)から下面S4まで上下方向に貫通する貫通孔22が形成されている。支持部材20は、保持部材10と同様に、AlNを主成分とするセラミックスにより形成されている。支持部材20の外径は、例えば30mm〜90mm程度であり、内径は、例えば10mm〜60mm程度であり、上下方向の長さは、例えば100mm〜300mm程度である。支持部材20の貫通孔22内には、一対の電極端子56が収容されている。各電極端子56は、上下方向に延びる棒状の導電体である。各電極端子56の上端は、各受電電極54にロウ付けにより接合されている。一対の電極端子56に電源(図示せず)から電圧が印加されると、ヒータ50が発熱することによって保持部材10が温められ、保持部材10の上面(以下、「保持面S1」という)に保持されたウェハWが温められる。なお、ヒータ50は、保持部材10の保持面S1をできるだけ満遍なく温めるため、例えばZ方向視で略同心円状に配置されている。なお、支持部材20の貫通孔22内には、熱電対の2本の金属線60(図2では1本のみ図示)が収容されている。各金属線60は、上下方向に延びように配置され、各金属線60の上端部分62は、保持部材10の中央部に埋め込まれている。これにより、保持部材10内の温度が測定され、その測定結果に基づきウェハWの温度制御が実現される。
【0021】
(接合層30)
接合層30は、円環状のシート層であり、保持部材10の保持側接合面S2と支持部材20の支持側接合面S3とを接合している。接合層30は、GdAlOとAl(アルミナ)とを含み、AlNを含まない材料により形成されている。接合層30の外径は、例えば30mm〜90mm程度であり、内径は、例えば10mm〜60mm程度であり、厚さは、例えば1μm〜100μm程度である。
【0022】
A−2.サセプタ100の製造方法:
次に、本実施形態におけるサセプタ100の製造方法を説明する。図3は、本実施形態におけるサセプタ100の製造方法を示すフローチャートである。はじめに、保持部材10と支持部材20とを準備する(S110)。上述したように、保持部材10と支持部材20とは、いずれもAlNを主成分とするセラミックスにより形成されている。なお、保持部材10および支持部材20は、公知の製造方法によって製造可能であるため、ここでは製造方法の説明を省略する。
【0023】
次に、接合層30の形成材料であるペースト状の接合剤を準備する(S120)。具体的には、Gd(ガドリニア)粉末とAl粉末とを所定の割合で混合し、さらに、アクリルバインダおよびブチルカルビトールと共に混合することにより、ペースト状の接合剤を形成する。なお、ペースト状の接合剤の形成材料の組成比は、例えば、Gdが24mol%であり、Alが76mol%であることが好ましい。次に、保持部材10と支持部材20との間に、準備されたペースト状の接合剤を配置する(S130)。具体的には、保持部材10の保持側接合面S2と支持部材20の支持側接合面S3とをラップ研磨し、各接合面S2,S3の表面粗さを1μm以下、平坦度を10μm以下にする。そして、保持部材10の保持側接合面S2と支持部材20の支持側接合面S3との少なくとも一方に、マスクを介して印刷することによってペースト状の接合剤を塗布する。その後、支持部材20の支持側接合面S3と保持部材10の保持側接合面S2とを、ペースト状の接合剤を介して重ね合わせることにより、保持部材10と支持部材20との積層体を形成する。
【0024】
次に、保持部材10と支持部材20との積層体をホットプレス炉内に配置し、加圧しつつ加熱する(S140)。これにより、ペースト状の接合剤が溶融して接合層30が形成され、保持部材10と支持部材20とが接合層30により接合される。この加熱・加圧接合における圧力は、0.1MPa以上、15MPa以下の範囲内に設定されることが好ましい。加熱・加圧接合における圧力が0.1MPa以上に設定されると、被接合部材(保持部材10や支持部材20)の表面にうねり等があった場合でも被接合部材間に接合されない隙間が生じることが抑制され、初期の接合強度が低下することを抑制することができる。また、加熱・加圧接合における圧力が15MPa以下に設定されると、保持部材10の割れや支持部材20の変形が発生することを抑制することができる。なお、接合面S2,S3には、0.2Kgf/cm〜3Kgf/cmの圧力が付与される。
【0025】
また、この加熱・加圧接合における温度は、1750℃まで上昇させることが好ましい。加熱・加圧接合における温度が1750℃まで上昇したら、1750℃の状態を約10分維持した後、ホットプレス炉内の温度を室温まで下げる。加熱・加圧接合の後、必要により後処理(外周や上下面の研磨、端子の形成等)を行う。以上の製造方法により、上述した構成のサセプタ100が製造される。
【0026】
次に、接合剤におけるGdの含有率について説明する。接合剤におけるGdの含有率は5mol%以上、43mol%以下であることが好ましい。図4は、AlとGdとの温度に対する状態変化を示す説明図である。図4によれば、接合剤におけるGdの含有率が5mol%以上、43mol%以下である場合、比較的に低い接合温度(1720度に近い温度)で接合剤を接合層30に形成することができることが理解できる。ここで、接合剤におけるGdの含有率が5mol%以上、43mol%以下であると、接合層30におけるGdAlOの含有率は10mol%以上、86mol%以下となる。すなわち、接合層30におけるGdAlOの含有率が10mol%以上、86mol%以下である場合、AlNを含む接合剤に比べて、接合温度をより低い温度としつつ、保持部材10と支持部材20との接合強度(接合層30の接合強度)が低下することを抑制することができる。
【0027】
A−3.性能評価:
実施例のサセプタ100と比較例のサセプタとについて、以下に説明する性能評価を行った。
【0028】
A−3−1.実施例および比較例について:
実施例のサセプタ100は、上述した製造方法で製造されたものである。比較例のサセプタは、保持板と支持体と接合層とを備える。実施例のサセプタ100と比較例のサセプタとは、以下の点で共通している。
(保持部材の構成)
・材料:AlNを主成分とするセラミックス
・直径:100mm〜500mm
・厚さ:3mm〜15mm
(支持部材の構成)
・材料:AlNを主成分とするセラミックス
・外径:30mm〜90mm
・内径:10mm〜60mm
・上下方向の長さ:100mm〜300mm
(接合層の外形)
・外径:30mm〜90mm
・内径:10mm〜60mm
・厚さ:1μm〜100μm
【0029】
実施例のサセプタ100と比較例のサセプタとは、以下の点で相違している。
(接合層の材料)
・実施例のサセプタ100の接合層30の材料:GdAlOとAlとを含み、AlNを含まない。
・比較例のサセプタの接合層の材料:AlNを含む。
比較例のサセプタの製造方法は、実施例のサセプタ100の上述の製造方法に対して、Gd粉末に加えて、AlN粉末を、Al粉末、アクリルバインダおよびブチルカルビトールと共に混合することにより、Gd粉末とAlN粉末とAl粉末との合計を100重量%としたときに5重量%のAlN粉末を含むペースト状の接合剤を形成する点が相違しているが、これ以外の点は基本的に共通している。
【0030】
A−3−2.評価手法:
接合層の接合強度の評価として、実施例のサセプタ100および比較例のサセプタについて、三点曲げ試験を行った。
【0031】
(三点曲げ試験について)
三点曲げ試験では、例えば実施例のサセプタ100の保持部材10と支持部材20と接合層30とを含む所定サイズの接合部分を試験片として切り出して、一対の支点と圧子を備える三点曲げ試験機に配置する。具体的には、切り出した試験片の内、保持部材10の部分と支持部材20の部分とを各支点上に配置し、接合層30の部分に上方から圧子を圧接させた。次に、接合層30に対する圧子の圧接力を大きくしていくことによって接合層30の部分にかかる荷重を大きくしていき、接合層30が破壊したときの破壊荷重を測定した。そして、全体がAlNを主成分とするセラミックスで形成された母材の破壊荷重を基準荷重とし、その基準荷重に対する試験片の破壊荷重の割合に基づき、接合層30の接合強度を評価した。
【0032】
A−3−3.評価結果:
(三点曲げ試験について)
実施例のサセプタ100では、三点曲げ試験において、接合層30の接合強度は、基準荷重に対して約90%程度の強度であった。一方、比較例のサセプタでは、接合層30の接合強度は、基準荷重に対して40%程度の強度であり、実施例のサセプタ100の接合層30の接合強度より低かった。
【0033】
A−4.本実施形態の効果:
上述したように、GdAlOとAlとを含み、AlNを含まない接合層30は、AlNを含む接合層に比べて、AlNを主成分とする材料により形成されたセラミックス部材(保持部材10、支持部材20)同士を接合する際の接合温度を、当該セラミックス部材を焼成する際の焼成温度より低くしても、高い接合強度で形成することができる。図5は、実施例のサセプタ100の試験片をSEM(走査型電子顕微鏡)により観察した際のSEM画像を模式的に示す説明図である。図5に示すように、接合層30の形成材料の内、特にGdAlOは、低い温度でも流動性が高いことによって保持部材10および支持部材20の形成材料であるAlN間の隙間を埋めるように広がっていることがわかる。このSEM画像からも、接合層30によって、保持部材10と支持部材20とを高い接合強度で接合することができることを理解することができる。また、接合温度が保持部材10等の焼成温度より低いため、AlNを主成分とする保持部材10や支持部材20自体が変形することを抑制することができる。
【0034】
なお、本明細書において、「AlNを含まない」とは、接合層において、複数のAlN粒子の凝集体であって、互いに隣り合う複数のAlN粒子によって囲まれた隙間を有する凝集体を、含まないことを意味する。図6は、比較例のサセプタの試験片のSEM画像を模式的に示す説明図である。比較例のサセプタは、上記実施形態とは異なり、AlNを含む材料により形成された接合層30xによって保持部材10と支持部材20とが接合されたサセプタである。同図に示すように、AlNが意図的に添加された接合層30xでは、複数のAlN粒子の凝集体Gが形成されることがある。この凝集体Gは、当該凝集体Gを構成し、互いに隣り合う複数のAlN粒子によって囲まれた隙間Pを有する。一方、上記実施形態のように、AlNを含まない材料で形成された接合層30であっても、例えば半導体製造装置用部品の製造工程等において、AlNを主成分とする保持部材10や支持部材20に起因するAlN粒子が析出することがある。ただし、このようにAlNが意図的には添加されなかった接合層30では、保持部材10や支持部材20の成分に起因するAlN粒子の析出はあるものの、AlN粒子が凝集体Gを形成することはなく、接合層30にAlN粒子が離散的に存在する形態となる。したがって、本明細書において、「AlNを含まない」とは、接合層(接合部)において、複数のAlN粒子の凝集体であって、互いに隣り合う複数のAlN粒子によって囲まれた隙間を有する凝集体を、含まないことを意味する。なお、サセプタの断面視において、接合層(接合部)とセラミックス部材との境界付近において、断面視で遊離したAlN粒子間に接合層(接合部)の一部が入り込んでいることがあるが、この形態は空隙を有する凝集体には該当しない。
【0035】
B.変形例:
本明細書で開示される技術は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0036】
図7は、変形例のサセプタの試験片のSEM画像を模式的に示す説明図である。変形例のサセプタは、接合層30ではなく、複数の接合部30Xによって、保持部材10と支持部材20とが接合されている点で、上記実施形態のサセプタ100とは異なる。換言すれば、変形例のサセプタでは、保持部材10と支持部材20との間に、複数の接合部30Xが離散的に形成されている。具体的には、図7に示すように、保持部材10と支持部材20とは、保持部材10および支持部材20の形成材料であるAlN粒子を介して部分的に連結されている。
【0037】
ここで、本明細書において、接合部(接合層)と、保持部材10および支持部材20との境界は、保持部材10および支持部材20を構成するAlN粒子が互いに連結されてなる一つながりのAlN粒子群の表面に沿った外形線により画定されるものとする。即ち、外形線により囲まれた領域が接合層(接合部)となり得る。図7では、外形線L1によって囲まれた接合部30Xと外形線L2によって囲まれた接合部30Xとが示されている。各接合部は、GdAlOとAlとを含み、AlNを含まない。このような変形例のサセプタであっても、上記実施形態と同様、保持部材10と支持部材20との接合強度の低下を抑制することができる。また、変形例のサセプタにおいて、各接合部30Xにおいて、GdAlOの含有率は、10mol%以上、86mol%以下であれば、各接合部がAlNを含む場合に比べて、接合温度をより低い温度としつつ、接合強度が低下することを抑制することができる。
【0038】
上記実施形態および変形例における保持部材10および支持部材20を形成するセラミックスは、AlN(窒化アルミニウム)を主成分として含んでいれば、他の元素を含んでいてもよい。
【0039】
上記実施形態および変形例において、接合層30(接合部30X)を形成する材料は、GdAlO以外のAlとGdを含む複合酸化物を含んでいてもよい。また、接合層30(接合部30X)は、AlとGdを含む複合酸化物と、Alとを含んでいれば、AlN以外の物質を含んでいてもよい。例えば、上記実施形態では、接合層30に、保持部材10や支持部材20等のセラミックス部材から拡散したY(イットリウム)により生成されるYとAlとを含む複合酸化物が含まれることがある。
【0040】
上記実施形態および変形例において、保持部材10と支持部材20との間に、例えば、接合層30(接合部30X)と共に、該接合層30(接合部30X)とは組成が異なる第2の接合層(第2の接合部)が介在しているとしてもよい。すなわち、保持部材10と支持部材20とが、組成が互いに異なる複数の接合層または接合部を介して接合されているとしてもよい。
【0041】
また、上記実施形態におけるサセプタ100の製造方法はあくまで一例であり、種々変形可能である。
【0042】
本発明は、サセプタ100に限らず、ポリイミドヒータ等の他の加熱装置、セラミックス板とベース板とを備え、セラミックス板の表面上に対象物を保持する保持装置(例えば、静電チャックや真空チャック)、シャワーヘッド等の他の半導体製造装置用部品にも適用可能である。
【符号の説明】
【0043】
10:保持部材 20:支持部材 22:貫通孔 30:接合層 30X:接合部 50:ヒータ 52:ビア 54:受電電極 56:電極端子 60:金属線 62:上端部分 100:サセプタ G:凝集体 L1,L2:外形線 P:隙間 S1:保持面 S2:保持側接合面 S3:支持側接合面 S4:下面 W:ウェハ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7