特許第6490435号(P6490435)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6490435
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】成膜方法及び成膜装置
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/24 20060101AFI20190318BHJP
   G02B 1/10 20150101ALI20190318BHJP
【FI】
   C23C14/24 D
   G02B1/10
【請求項の数】10
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-14228(P2015-14228)
(22)【出願日】2015年1月28日
(65)【公開番号】特開2016-125135(P2016-125135A)
(43)【公開日】2016年7月11日
【審査請求日】2017年10月10日
(31)【優先権主張番号】特願2014-266153(P2014-266153)
(32)【優先日】2014年12月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】300075751
【氏名又は名称】株式会社オプトラン
(74)【代理人】
【識別番号】100135828
【弁理士】
【氏名又は名称】飯島 康弘
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 優
(72)【発明者】
【氏名】範 賓
(72)【発明者】
【氏名】島田 修一
【審査官】 若土 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−299081(JP,A)
【文献】 特開2013−170088(JP,A)
【文献】 国際公開第2007/135870(WO,A1)
【文献】 特開2013−040357(JP,A)
【文献】 特開平05−287510(JP,A)
【文献】 特開平05−247631(JP,A)
【文献】 特開2009−097044(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/074551(WO,A1)
【文献】 特開2007−332458(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00−14/58
G02B 1/10−1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜基板を保持した基板ホルダと蒸着材料の分配器が内部に設けられた成膜チャンバと、
前記成膜チャンバの外部に設けられた少なくとも一つの供給チャンバと、
前記成膜チャンバ内部の前記分配器と前記供給チャンバとを所定間隔をおいて連通するように接続する接続部と、
前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバとを連通させまたは仕切り閉じた状態とすることが可能な仕切り部と、
前記成膜チャンバに接続された第1の真空ポンプと、
前記供給チャンバに接続された第2の真空ポンプと、
を有し、
前記供給チャンバは、
蒸着材料溶液供給部と、
前記供給チャンバの内部における前記蒸着材料溶液供給部の下方から前記分配器の内部へと移動可能に設けられた蒸着材料受部と、
前記蒸着材料受部の前記分配器の内部への移動に付随して移動し、前記蒸着材料受部が前記分配器の内部に移動されたときに、前記成膜チャンバ内において前記分配器と接続される前記接続部の所定の位置を遮蔽する遮蔽部と、を含む成膜装置を用いた成膜方法であって、
前記仕切り部を閉じ、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを仕切った状態で、前記第1の真空ポンプを用いて前記成膜チャンバを真空引きする工程と、
前記仕切り部を閉じ、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを仕切った状態で前記供給チャンバにおいて前記蒸着材料溶液供給部の下方に配置された前記蒸着材料受部に前記蒸着材料溶液供給部から蒸着材料溶液を供給する工程と、
前記仕切り部を閉じ、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを仕切った状態で、前記第2の真空ポンプを用いて前記供給チャンバを真空引きすることにより、前記蒸着材料受部に供給された前記蒸着材料溶液に含有される蒸着材料を残して前記蒸着材料溶液の溶媒を除去する工程と、
前記仕切り部を開けて前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを連通させる工程と、
前記蒸着材料受部を前記蒸着材料溶液供給部の下方から前記分配器の内部に移動する工程と、
前記蒸着材料受部を前記蒸着材料溶液供給部の下方から前記分配器の内部に移動する工程において、前記蒸着材料受部の移動に付随して移動するように前記蒸着材料受部に接続して設けられている遮蔽板により前記成膜チャンバ内において前記分配器と接続される前記接続部の所定の位置を遮蔽する工程と、
前記分配器の加熱により前記蒸着材料受部の前記蒸着材料を気化させ、前記分配器に設けられた開口部より気化した前記蒸着材料を前記成膜チャンバ内に噴出させ、前記蒸着材料を前記成膜基板上に成膜する工程と
を有する成膜方法。
【請求項2】
前記仕切り部を閉じ、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを仕切った状態で、前記成膜チャンバ内の当該分配器と前記供給チャンバ内を前記接続部により所定間隔をおいて接続させていることにより、少なくとも前記供給チャンバにおいて前記蒸着材料溶液供給部の下方に配置された前記蒸着材料受部に前記蒸着材料溶液供給部から蒸着材料溶液を供給する工程、および前記供給チャンバを真空引きすることにより、前記蒸着材料受部に供給された前記蒸着材料溶液に含有される蒸着材料を残して前記蒸着材料溶液の溶媒を除去する工程における前記供給チャンバ内の状態の前記成膜チャンバへの影響を抑制し、
前記蒸着材料受部を前記蒸着材料溶液供給部の下方から前記分配器の内部に移動する工程において、前記蒸着材料受部の移動に付随して移動するように前記蒸着材料受部に接続して設けられている遮蔽板により前記成膜チャンバ内において前記分配器と接続される前記接続部の所定の位置を遮蔽し、前記成膜チャンバ内の当該分配器と前記供給チャンバ内を前記接続部により所定間隔をおいて接続させていることにより、前記分配器の加熱により前記蒸着材料受部の前記蒸着材料を気化させる工程において、気化した前記蒸着材料の前記供給チャンバへの進入を抑制する
請求項1に記載の成膜方法。
【請求項3】
前記蒸着材料が防汚性の蒸着材料であり、前記成膜基板上に防汚膜を成膜する
請求項1または2に記載の成膜方法。
【請求項4】
前記蒸着材料受部に前記蒸着材料溶液を供給する工程から気化した前記蒸着材料を前記成膜基板上に成膜する工程までを、1組の成膜基板ごとにバッチ方式で行う
請求項1〜3のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項5】
前記蒸着材料受部に前記蒸着材料溶液を供給する工程から気化した前記蒸着材料を前記成膜基板上に成膜する工程までを、枚葉方式あるいはインライン方式で前記成膜チャンバに搬送される1組の成膜基板に対して断続的に行う
請求項1〜3のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項6】
前記蒸着材料受部に前記蒸着材料溶液を供給する工程を、前記供給チャンバの内部を大気圧下、加圧下、または減圧下で行う
請求項1〜5のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項7】
前記蒸着材料受部が加熱可能に構成されており、前記蒸着材料溶液を供給する工程から前記蒸着材料を前記成膜基板上に成膜する工程までの少なくともいずれかの工程において前記蒸着材料受部が加熱する
請求項1〜6のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項8】
1個の分配器に対して、前記仕切り部、前記蒸着材料溶液供給部、前記蒸着材料受部、及び、前記供給チャンバの組を複数個有した構成の成膜装置を用い、前記蒸着材料受部に前記蒸着材料溶液を供給する工程から気化した前記蒸着材料を前記成膜基板上に成膜する工程までを行う
請求項1〜7のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項9】
前記分配器、前記仕切り部、前記蒸着材料溶液供給部、前記蒸着材料受部、及び、前記供給チャンバの組を複数個有した構成の成膜装置を用い、前記蒸着材料受部に前記蒸着材料溶液を供給する工程から気化した前記蒸着材料を前記成膜基板上に成膜する工程までを行う
請求項1〜7のいずれかに記載の成膜方法。
【請求項10】
成膜基板を保持した基板ホルダと蒸着材料の分配器が内部に設けられた成膜チャンバと、
前記成膜チャンバの外部に設けられた少なくとも一つの供給チャンバと、
前記成膜チャンバ内部の前記分配器と前記供給チャンバとを所定間隔をおいて連通するように接続する接続部と、
前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバとを連通させまたは仕切り閉じた状態とすることが可能な仕切り部と、
前記成膜チャンバに接続された第1の真空ポンプと、
前記供給チャンバに接続された第2の真空ポンプと、
を有し、
前記供給チャンバは、
蒸着材料溶液供給部と、
前記供給チャンバの内部における前記蒸着材料溶液供給部の下方から前記分配器の内部へと移動可能に設けられた蒸着材料受部と、
前記蒸着材料受部の前記分配器の内部への移動に付随して移動し、前記蒸着材料受部が前記分配器の内部に移動されたときに、前記成膜チャンバ内において前記分配器と接続される前記接続部の所定の位置を遮蔽する遮蔽部と、を含み、
成膜の際には、
前記仕切り部を閉じ、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを仕切った状態で、
前記第1の真空ポンプを用いて前記成膜チャンバを真空引きし、
前記供給チャンバにおいて前記蒸着材料溶液供給部の下方に配置された前記蒸着材料受部に前記蒸着材料溶液供給部から蒸着材料溶液を供給し、
前記仕切り部を閉じ、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを仕切った状態で、前記第2の真空ポンプを用いて前記供給チャンバを真空引きすることにより、前記蒸着材料受部に供給された前記蒸着材料溶液に含有される蒸着材料を残して前記蒸着材料溶液の溶媒を除去し、
前記仕切り部を開けて、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを連通させ、
前記蒸着材料受部を前記蒸着材料溶液供給部の下方から前記分配器の内部に移動し、
前記蒸着材料受部を前記蒸着材料溶液供給部の下方から前記分配器の内部に移動する工程において、前記蒸着材料受部の移動に付随して移動するように前記蒸着材料受部に接続して設けられている遮蔽板により前記成膜チャンバ内において前記分配器と接続される前記接続部の所定の位置を遮蔽し、
前記分配器の加熱により前記蒸着材料受部の前記蒸着材料を気化させ、前記分配器に設けられた開口部より気化した前記蒸着材料を前記成膜チャンバ内に噴出させ、前記蒸着材料を前記成膜基板上に成膜する
成膜装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は成膜方法及び成膜装置に関し、特に、バッチ方式あるいはその他の方式で有機膜形成用蒸着材料の真空蒸着を行う成膜方法及び成膜装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
真空蒸着は無機膜及び有機膜を形成する方法として広く用いられており、真空蒸着により、光学部品などの表面に防汚膜として機能する有機膜を形成する方法が知られている。
例えば、真空蒸着装置を構成するチャンバ中に設けられたヒーターで有機膜形成用蒸着材料を加熱して気化させ、成膜対象物の表面に蒸着材料の蒸気を噴出して蒸着材料を堆積させ、有機膜を形成する。
【0003】
有機膜を形成するための蒸着装置としては、種々の構成のものが知られている。
例えば、特許文献1には、固体あるいは粉体の有機膜形成用蒸着材料を用いて真空蒸着により有機膜を成膜する成膜装置が記載されている。
【0004】
一方、例えば特許文献2の図4及び対応する明細書の記載には、液状の防汚剤を含浸させた多孔性タブレットあるいは液状の防汚剤そのものをボートで加熱して蒸着する蒸着装置が開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、多孔性無機酸化物マトリックスにパーフルロロアルキル基を有するシラン化合物などのオルガノシラン化合物を含浸させてなる蒸着材料を用いて高真空下で真空蒸着することで撥水性コーティングを施す方法が開示されている。
【0006】
上記の真空蒸着で用いられる有機膜形成用蒸着材料は、蒸着材料の劣化防止と均一性の確保の目的で溶媒に溶解された溶液の状態で用いられる場合がある。
しかしながら、例えばバッチ方式あるいはその他の方式で真空蒸着を行う成膜装置において、溶液の状態の有機膜形成用蒸着材料を用いて真空蒸着する場合、蒸着材料に溶媒が混入して成膜されやすく、形成される有機膜の耐久性及び耐摩擦性などの膜質が劣化してしまうという不利益がある。
【0007】
また、蒸着材料に溶媒が混入するのを防止するため、溶媒を含まない有機膜形成用蒸着材料を用いたとしても、真空チャンバ中に蒸着材料供給部から蒸着材料を供給したときに、蒸着材料供給部の供給口近傍で蒸着材料の一部が成膜に供されることなく飛散してしまい、無駄になってしまうことがあり、これは製造コストを高める要因となり、さらに真空チャンバの汚染にも繋がる不利益がある。
上記の真空チャンバ中に蒸着材料供給部から蒸着材料を供給したときに、蒸着材料供給部の供給口近傍で蒸着材料の一部が成膜に供されることなく飛散してしまう問題は、有機膜形成用蒸着材料を溶媒に溶解した溶液を用いた場合でも発生する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2009−263751号公報
【特許文献2】特開2002−155353号公報
【特許文献3】特開平9−137122号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする課題は、バッチ方式あるいはその他の方式で溶液あるいは液体の状態の蒸着材料を用いて真空蒸着する場合に、蒸着材料供給部の供給口近傍で蒸着材料の一部が成膜に供されることなく飛散してしまうことを防止することが難しいことである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の成膜方法は、成膜基板を保持した基板ホルダと蒸着材料の分配器が内部に設けられた成膜チャンバと、前記成膜チャンバの外部に設けられた少なくとも一つの供給チャンバと、前記成膜チャンバ内部の前記分配器と前記供給チャンバとを所定間隔をおいて連通するように接続する接続部と、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバとを連通させまたは仕切り閉じた状態とすることが可能な仕切り部と、前記成膜チャンバに接続された第1の真空ポンプと、前記供給チャンバに接続された第2の真空ポンプと、を有し、前記供給チャンバは、蒸着材料溶液供給部と、前記供給チャンバの内部における前記蒸着材料溶液供給部の下方から前記分配器の内部へと移動可能に設けられた蒸着材料受部と、前記蒸着材料受部の前記分配器の内部への移動に付随して移動し、前記蒸着材料受部が前記分配器の内部に移動されたときに、前記成膜チャンバ内において前記分配器と接続される前記接続部の所定の位置を遮蔽する遮蔽部と、を含む成膜装置を用いた成膜方法であって、前記仕切り部を閉じ、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを仕切った状態で、前記第1の真空ポンプを用いて前記成膜チャンバを真空引きする工程と、前記仕切り部を閉じ、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを仕切った状態で前記供給チャンバにおいて前記蒸着材料溶液供給部の下方に配置された前記蒸着材料受部に前記蒸着材料溶液供給部から蒸着材料溶液を供給する工程と、前記仕切り部を閉じ、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを仕切った状態で、前記第2の真空ポンプを用いて前記供給チャンバを真空引きすることにより、前記蒸着材料受部に供給された前記蒸着材料溶液に含有される蒸着材料を残して前記蒸着材料溶液の溶媒を除去する工程と、前記仕切り部を開けて前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを連通させる工程と、前記蒸着材料受部を前記蒸着材料溶液供給部の下方から前記分配器の内部に移動する工程と、前記蒸着材料受部を前記蒸着材料溶液供給部の下方から前記分配器の内部に移動する工程において、前記蒸着材料受部の移動に付随して移動するように前記蒸着材料受部に接続して設けられている遮蔽板により前記成膜チャンバ内において前記分配器と接続される前記接続部の所定の位置を遮蔽する工程と、前記分配器の加熱により前記蒸着材料受部の前記蒸着材料を気化させ、前記分配器に設けられた開口部より気化した前記蒸着材料を前記成膜チャンバ内に噴出させ、前記蒸着材料を前記成膜基板上に成膜する工程とを有する。
【0011】
上記の本発明の成膜方法は、成膜基板を保持した基板ホルダと蒸着材料の分配器が内部に設けられた成膜チャンバと、前記成膜チャンバの外部に設けられた少なくとも一つの供給チャンバと、前記成膜チャンバ内部の前記分配器と前記供給チャンバとを所定間隔をおいて連通するように接続する接続部と、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバとを連通させまたは仕切り閉じた状態とすることが可能な仕切り部と、前記成膜チャンバに接続された第1の真空ポンプと、前記供給チャンバに接続された第2の真空ポンプと、を有し、前記供給チャンバは、蒸着材料溶液供給部と、前記供給チャンバの内部における前記蒸着材料溶液供給部の下方から前記分配器の内部へと移動可能に設けられた蒸着材料受部と、前記蒸着材料受部の前記分配器の内部への移動に付随して移動し、前記蒸着材料受部が前記分配器の内部に移動されたときに、前記成膜チャンバ内において前記分配器と接続される前記接続部の所定の位置を遮蔽する遮蔽部と、を含む成膜装置を用いて行う。
まず、前記仕切り部を閉じ、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを仕切った状態で、前記第1の真空ポンプを用いて前記成膜チャンバを真空引きし、前記仕切り部を閉じ、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを仕切った状態で前記供給チャンバにおいて前記蒸着材料溶液供給部の下方に配置された前記蒸着材料受部に前記蒸着材料溶液供給部から蒸着材料溶液を供給し、前記仕切り部を閉じ、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを仕切った状態で、前記第2の真空ポンプを用いて前記供給チャンバを真空引きすることにより、前記蒸着材料受部に供給された前記蒸着材料溶液に含有される蒸着材料を残して前記蒸着材料溶液の溶媒を除去し、前記仕切り部を開けて前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを連通させ、前記蒸着材料受部を前記蒸着材料溶液供給部の下方から前記分配器の内部に移動し、前記蒸着材料受部を前記蒸着材料溶液供給部の下方から前記分配器の内部に移動する工程において、前記蒸着材料受部の移動に付随して移動するように前記蒸着材料受部に接続して設けられている遮蔽板により前記成膜チャンバ内において前記分配器と接続される前記接続部の所定の位置を遮蔽し、前記分配器の加熱により前記蒸着材料受部の前記蒸着材料を気化させ、前記分配器に設けられた開口部より気化した前記蒸着材料を前記成膜チャンバ内に噴出させ、前記蒸着材料を前記成膜基板上に成膜する。
【0012】
上記の本発明の成膜方法は、好適には、前記仕切り部を閉じ、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを仕切った状態で、前記成膜チャンバ内の当該分配器と前記供給チャンバ内を前記接続部により所定間隔をおいて接続させていることにより、少なくとも前記供給チャンバにおいて前記蒸着材料溶液供給部の下方に配置された前記蒸着材料受部に前記蒸着材料溶液供給部から蒸着材料溶液を供給する工程、および前記供給チャンバを真空引きすることにより、前記蒸着材料受部に供給された前記蒸着材料溶液に含有される蒸着材料を残して前記蒸着材料溶液の溶媒を除去する工程における前記供給チャンバ内の状態の前記成膜チャンバへの影響を抑制し、前記蒸着材料受部を前記蒸着材料溶液供給部の下方から前記分配器の内部に移動する工程において、前記蒸着材料受部の移動に付随して移動するように前記蒸着材料受部に接続して設けられている遮蔽板により前記成膜チャンバ内において前記分配器と接続される前記接続部の所定の位置を遮蔽し、前記成膜チャンバ内の当該分配器と前記供給チャンバ内を前記接続部により所定間隔をおいて接続させていることにより、前記分配器の加熱により前記蒸着材料受部の前記蒸着材料を気化させる工程において、気化した前記蒸着材料の前記供給チャンバへの進入を抑制する。
【0013】
上記の本発明の成膜方法は、好適には、前記蒸着材料が防汚性の蒸着材料であり、前記成膜基板上に防汚膜を成膜する。
【0014】
上記の本発明の成膜方法は、好適には、前記蒸着材料受部に前記蒸着材料溶液を供給する工程から気化した前記蒸着材料を前記成膜基板上に成膜する工程までを、1組の成膜基板ごとにバッチ方式で行う。
【0015】
上記の本発明の成膜方法は、好適には、前記蒸着材料受部に前記蒸着材料溶液を供給する工程から気化した前記蒸着材料を前記成膜基板上に成膜する工程までを、枚葉方式あるいはインライン方式で前記成膜チャンバに搬送される1組の成膜基板に対して断続的に行う。
【0016】
上記の本発明の成膜方法は、好適には、前記蒸着材料受部に前記蒸着材料溶液を供給する工程を、前記供給チャンバの内部を大気圧下、加圧下または減圧下で行う。
【0017】
上記の本発明の成膜方法は、好適には、前記蒸着材料受部が加熱可能に構成されており、前記蒸着材料溶液を供給する工程から前記蒸着材料を前記成膜基板上に成膜する工程までの少なくともいずれかの工程において前記蒸着材料受部が加熱する。
【0018】
上記の本発明の成膜方法は、好適には、1個の分配器に対して、前記仕切り部、前記蒸着材料溶液供給部、前記蒸着材料受部、及び、前記供給チャンバの組を複数個有した構成の成膜装置を用い、前記蒸着材料受部に前記蒸着材料溶液を供給する工程から気化した前記蒸着材料を前記成膜基板上に成膜する工程までを行う。
【0019】
上記の本発明の成膜方法は、好適には、前記分配器、前記仕切り部、前記蒸着材料溶液供給部、前記蒸着材料受部、及び、前記供給チャンバの組を複数個有した構成の成膜装置を用い、前記蒸着材料受部に前記蒸着材料溶液を供給する工程から気化した前記蒸着材料を前記成膜基板上に成膜する工程までを行う。
【0020】
また、本発明の成膜方法は、成膜基板を保持した基板ホルダと蒸着材料の分配器が内部に設けられた成膜チャンバと、前記成膜チャンバの外部に設けられた少なくとも一つの供給チャンバと、前記成膜チャンバ内部の前記分配器と前記供給チャンバとを所定間隔をおいて連通するように接続する接続部と、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバとを連通させまたは仕切り閉じた状態とすることが可能な仕切り部と、前記成膜チャンバに接続された第1の真空ポンプと、前記供給チャンバに接続された第2の真空ポンプと、を有し、前記供給チャンバは、蒸着材料供給部と、前記供給チャンバの内部における前記蒸着材料供給部の下方から前記分配器の内部へと移動可能に設けられた蒸着材料受部と、前記蒸着材料受部の前記分配器の内部への移動に付随して移動し、前記蒸着材料受部が前記分配器の内部に移動されたときに、前記成膜チャンバ内において前記分配器と接続される前記接続部の所定の位置を遮蔽する遮蔽部と、を含む成膜装置を用いた成膜方法であって、前記仕切り部を閉じ、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを仕切った状態で、前記第1の真空ポンプを用いて前記成膜チャンバを真空引きする工程と、前記仕切り部を閉じ、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを仕切った状態で前記供給チャンバにおいて前記蒸着材料供給部の下方に配置された前記蒸着材料受部に前記蒸着材料供給部から液体の蒸着材料を供給する工程と、前記仕切り部を閉じ、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを仕切った状態で、前記第2の真空ポンプを用いて前記供給チャンバを真空引きする工程と、前記仕切り部を開けて前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを連通させる工程と、前記蒸着材料受部を前記蒸着材料供給部の下方から前記分配器の内部に移動する工程と、前記蒸着材料受部を前記蒸着材料供給部の下方から前記分配器の内部に移動する工程において、前記蒸着材料受部の移動に付随して移動するように前記蒸着材料受部に接続して設けられている遮蔽板により前記成膜チャンバ内において前記分配器と接続される前記接続部の所定の位置を遮蔽する工程と、前記分配器の加熱により前記蒸着材料受部の前記蒸着材料を気化させ、前記分配器に設けられた開口部より気化した前記蒸着材料を前記成膜チャンバ内に噴出させ、前記蒸着材料を前記成膜基板上に成膜する工程とを有する。
【0021】
上記の本発明の成膜方法は、成膜基板を保持した基板ホルダと蒸着材料の分配器が内部に設けられた成膜チャンバと、前記成膜チャンバの外部に設けられた少なくとも一つの供給チャンバと、前記成膜チャンバ内部の前記分配器と前記供給チャンバとを所定間隔をおいて連通するように接続する接続部と、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバとを連通させまたは仕切り閉じた状態とすることが可能な仕切り部と、前記成膜チャンバに接続された第1の真空ポンプと、前記供給チャンバに接続された第2の真空ポンプと、を有し、前記供給チャンバは、蒸着材料供給部と、前記供給チャンバの内部における前記蒸着材料供給部の下方から前記分配器の内部へと移動可能に設けられた蒸着材料受部と、前記蒸着材料受部の前記分配器の内部への移動に付随して移動し、前記蒸着材料受部が前記分配器の内部に移動されたときに、前記成膜チャンバ内において前記分配器と接続される前記接続部の所定の位置を遮蔽する遮蔽部と、を含む成膜装置を用いて行う。
まず、前記仕切り部を閉じ、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを仕切った状態で、前記第1の真空ポンプを用いて前記成膜チャンバを真空引きし、前記仕切り部を閉じ、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを仕切った状態で前記供給チャンバにおいて前記蒸着材料供給部の下方に配置された前記蒸着材料受部に前記蒸着材料供給部から液体の蒸着材料を供給し、前記仕切り部を閉じ、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを仕切った状態で、前記第2の真空ポンプを用いて前記供給チャンバを真空引きし、前記仕切り部を開けて前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを連通させ、前記蒸着材料受部を前記蒸着材料供給部の下方から前記分配器の内部に移動し、前記蒸着材料受部を前記蒸着材料供給部の下方から前記分配器の内部に移動する工程において、前記蒸着材料受部の移動に付随して移動するように前記蒸着材料受部に接続して設けられている遮蔽板により前記成膜チャンバ内において前記分配器と接続される前記接続部の所定の位置を遮蔽し、前記分配器の加熱により前記蒸着材料受部の前記蒸着材料を気化させ、前記分配器に設けられた開口部より気化した前記蒸着材料を前記成膜チャンバ内に噴出させ、前記蒸着材料を前記成膜基板上に成膜する。
【0022】
上記の本発明の成膜方法は、好適には、前記仕切り部を閉じ、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを仕切った状態で、前記成膜チャンバ内の当該分配器と前記供給チャンバ内を前記接続部により所定間隔をおいて接続させていることにより、少なくとも前記供給チャンバにおいて前記蒸着材料供給部の下方に配置された前記蒸着材料受部に前記蒸着材料供給部から液体の蒸着材料溶液を供給する工程、および前記供給チャンバを真空引きする工程における前記供給チャンバ内の状態の前記成膜チャンバへの影響を抑制し、前記蒸着材料受部を前記蒸着材料供給部の下方から前記分配器の内部に移動する工程において、前記蒸着材料受部の移動に付随して移動するように前記蒸着材料受部に接続して設けられている遮蔽板により前記成膜チャンバ内において前記分配器と接続される前記接続部の所定の位置を遮蔽し、前記成膜チャンバ内の当該分配器と前記供給チャンバ内を前記接続部により所定間隔をおいて接続させていることにより、前記分配器の加熱により前記蒸着材料受部の前記蒸着材料を気化させる工程において、気化した前記蒸着材料の前記供給チャンバへの進入を抑制する。
【0023】
上記の本発明の成膜方法は、好適には、前記蒸着材料が防汚性の蒸着材料であり、前記成膜基板上に防汚膜を成膜する。
【0024】
上記の本発明の成膜方法は、好適には、前記蒸着材料受部に液体の前記蒸着材料を供給する工程から気化した前記蒸着材料を前記成膜基板上に成膜する工程までを、1組の成膜基板ごとにバッチ方式で行う。
【0025】
上記の本発明の成膜方法は、好適には、前記蒸着材料受部に液体の前記蒸着材料を供給する工程から気化した前記蒸着材料を前記成膜基板上に成膜する工程までを、枚葉方式あるいはインライン方式で前記成膜チャンバに搬送される1組の成膜基板に対して断続的に行う。
【0026】
上記の本発明の成膜方法は、好適には、前記蒸着材料受部に液体の前記蒸着材料を供給する工程を、前記供給チャンバの内部を大気圧下、加圧下、または減圧下で行う。
【0027】
上記の本発明の成膜方法は、好適には、前記蒸着材料受部が加熱可能に構成されており、液体の前記蒸着材料を供給する工程から前記蒸着材料を前記成膜基板上に成膜する工程までの少なくともいずれかの工程において前記蒸着材料受部が加熱する。
【0028】
上記の本発明の成膜方法は、好適には、1個の分配器に対して、前記仕切り部、前記蒸着材料供給部、前記蒸着材料受部、及び、前記供給チャンバの組を複数個有した構成の成膜装置を用い、前記蒸着材料受部に液体の前記蒸着材料を供給する工程から気化した前記蒸着材料を前記成膜基板上に成膜する工程までを行う。
【0029】
上記の本発明の成膜方法は、好適には、前記分配器、前記仕切り部、前記蒸着材料供給部、前記蒸着材料受部、及び、前記供給チャンバの組を複数個有した構成の成膜装置を用い、前記蒸着材料受部に液体の前記蒸着材料を供給する工程から気化した前記蒸着材料を前記成膜基板上に成膜する工程までを行う。
【0030】
また、本発明の成膜装置は、成膜基板を保持した基板ホルダと蒸着材料の分配器が内部に設けられた成膜チャンバと、前記成膜チャンバの外部に設けられた少なくとも一つの供給チャンバと、前記成膜チャンバ内部の前記分配器と前記供給チャンバとを所定間隔をおいて連通するように接続する接続部と、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバとを連通させまたは仕切り閉じた状態とすることが可能な仕切り部と、前記成膜チャンバに接続された第1の真空ポンプと、前記供給チャンバに接続された第2の真空ポンプと、を有し、前記供給チャンバは、蒸着材料溶液供給部と、前記供給チャンバの内部における前記蒸着材料溶液供給部の下方から前記分配器の内部へと移動可能に設けられた蒸着材料受部と、前記蒸着材料受部の前記分配器の内部への移動に付随して移動し、前記蒸着材料受部が前記分配器の内部に移動されたときに、前記成膜チャンバ内において前記分配器と接続される前記接続部の所定の位置を遮蔽する遮蔽部と、を含み、成膜の際には、前記仕切り部を閉じ、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを仕切った状態で、前記第1の真空ポンプを用いて前記成膜チャンバを真空引きし、前記供給チャンバにおいて前記蒸着材料溶液供給部の下方に配置された前記蒸着材料受部に前記蒸着材料溶液供給部から蒸着材料溶液を供給し、前記仕切り部を閉じ、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを仕切った状態で、前記第2の真空ポンプを用いて前記供給チャンバを真空引きすることにより、前記蒸着材料受部に供給された前記蒸着材料溶液に含有される蒸着材料を残して前記蒸着材料溶液の溶媒を除去し、前記仕切り部を開けて、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを連通させ、前記蒸着材料受部を前記蒸着材料溶液供給部の下方から前記分配器の内部に移動し、前記蒸着材料受部を前記蒸着材料溶液供給部の下方から前記分配器の内部に移動する工程において、前記蒸着材料受部の移動に付随して移動するように前記蒸着材料受部に接続して設けられている遮蔽板により前記成膜チャンバ内において前記分配器と接続される前記接続部の所定の位置を遮蔽し、前記分配器の加熱により前記蒸着材料受部の前記蒸着材料を気化させ、前記分配器に設けられた開口部より気化した前記蒸着材料を前記成膜チャンバ内に噴出させ、前記蒸着材料を前記成膜基板上に成膜する。


【0031】
上記の本発明の成膜装置は、成膜基板を保持した基板ホルダと蒸着材料の分配器が内部に設けられた成膜チャンバと、前記成膜チャンバの外部に設けられた少なくとも一つの供給チャンバと、前記成膜チャンバ内部の前記分配器と前記供給チャンバとを所定間隔をおいて連通するように接続する接続部と、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバとを連通させまたは仕切り閉じた状態とすることが可能な仕切り部と、前記成膜チャンバに接続された第1の真空ポンプと、前記供給チャンバに接続された第2の真空ポンプと、を有し、前記供給チャンバは、蒸着材料溶液供給部と、前記供給チャンバの内部における前記蒸着材料溶液供給部の下方から前記分配器の内部へと移動可能に設けられた蒸着材料受部と、前記蒸着材料受部の前記分配器の内部への移動に付随して移動し、前記蒸着材料受部が前記分配器の内部に移動されたときに、前記成膜チャンバ内において前記分配器と接続される前記接続部の所定の位置を遮蔽する遮蔽部と、を含む。
上記の構成において、成膜の際には、前記仕切り部を閉じ、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを仕切った状態で、前記第1の真空ポンプを用いて前記成膜チャンバを真空引きし、前記供給チャンバにおいて前記蒸着材料溶液供給部の下方に配置された前記蒸着材料受部に前記蒸着材料溶液供給部から蒸着材料溶液を供給しと、記第2の真空ポンプを用いて前記供給チャンバを真空引きすることにより、前記蒸着材料受部に供給された前記蒸着材料溶液に含有される蒸着材料を残して前記蒸着材料溶液の溶媒を除去し、前記仕切り部を開けて、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを連通させ、前記蒸着材料受部を前記蒸着材料溶液供給部の下方から前記分配器の内部に移動し、前記蒸着材料受部を前記蒸着材料溶液供給部の下方から前記分配器の内部に移動する工程において、前記蒸着材料受部の移動に付随して移動するように前記蒸着材料受部に接続して設けられている遮蔽板により前記成膜チャンバ内において前記分配器と接続される前記接続部の所定の位置を遮蔽し、前記分配器の加熱により前記蒸着材料受部の前記蒸着材料を気化させ、前記分配器に設けられた開口部より気化した前記蒸着材料を前記成膜チャンバ内に噴出させ、前記蒸着材料を前記成膜基板上に成膜する。
【0032】
また、本発明の成膜装置は、成膜基板を保持した基板ホルダと蒸着材料の分配器が内部に設けられた成膜チャンバと、前記成膜チャンバの外部に設けられた少なくとも一つの供給チャンバと、前記成膜チャンバ内部の前記分配器と前記供給チャンバとを所定間隔をおいて連通するように接続する接続部と、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバとを連通させまたは仕切り閉じた状態とすることが可能な仕切り部と、前記成膜チャンバに接続された第1の真空ポンプと、前記供給チャンバに接続された第2の真空ポンプと、を有し、前記供給チャンバは、蒸着材料供給部と、前記供給チャンバの内部における前記蒸着材料供給部の下方から前記分配器の内部へと移動可能に設けられた蒸着材料受部と、前記蒸着材料受部の前記分配器の内部への移動に付随して移動し、前記蒸着材料受部が前記分配器の内部に移動されたときに、前記成膜チャンバ内において前記分配器と接続される前記接続部の所定の位置を遮蔽する遮蔽部と、を含み、成膜の際には、前記仕切り部を閉じ、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを仕切った状態で、前記第1の真空ポンプを用いて前記成膜チャンバを真空引きし、前記供給チャンバにおいて前記蒸着材料供給部の下方に配置された前記蒸着材料受部に前記蒸着材料供給部から液体の蒸着材料を供給し、前記第2の真空ポンプを用いて前記供給チャンバを真空引きし、前記仕切り部を開けて前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを連通させ、前記蒸着材料受部を前記蒸着材料供給部の下方から前記分配器の内部に移動し、前記蒸着材料受部を前記蒸着材料供給部の下方から前記分配器の内部に移動する工程において、前記蒸着材料受部の移動に付随して移動するように前記蒸着材料受部に接続して設けられている遮蔽板により前記成膜チャンバ内において前記分配器と接続される前記接続部の所定の位置を遮蔽し、前記分配器の加熱により前記蒸着材料受部の前記蒸着材料を気化させ、前記分配器に設けられた開口部より気化した前記蒸着材料を前記成膜チャンバ内に噴出させ、前記蒸着材料を前記成膜基板上に成膜する。
【0033】
上記の本発明の成膜装置は、成膜基板を保持した基板ホルダと蒸着材料の分配器が内部に設けられた成膜チャンバと、前記成膜チャンバの外部に設けられた少なくとも一つの供給チャンバと、前記成膜チャンバ内部の前記分配器と前記供給チャンバとを所定間隔をおいて連通するように接続する接続部と、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバとを連通させまたは仕切り閉じた状態とすることが可能な仕切り部と、前記成膜チャンバに接続された第1の真空ポンプと、前記供給チャンバに接続された第2の真空ポンプと、を有し、前記供給チャンバは、蒸着材料供給部と、前記供給チャンバの内部における前記蒸着材料供給部の下方から前記分配器の内部へと移動可能に設けられた蒸着材料受部と、前記蒸着材料受部の前記分配器の内部への移動に付随して移動し、前記蒸着材料受部が前記分配器の内部に移動されたときに、前記成膜チャンバ内において前記分配器と接続される前記接続部の所定の位置を遮蔽する遮蔽部と、を含む。
上記の構成において、成膜の際には、前記仕切り部を閉じ、前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを仕切った状態で、前記第1の真空ポンプを用いて前記成膜チャンバを真空引きし、前記供給チャンバにおいて前記蒸着材料供給部の下方に配置された前記蒸着材料受部に前記蒸着材料供給部から液体の蒸着材料を供給し、前記第2の真空ポンプを用いて前記供給チャンバを真空引きし、前記仕切り部を開けて前記接続部および前記分配器側と、前記供給チャンバ側とを連通させ、前記蒸着材料受部を前記蒸着材料供給部の下方から前記分配器の内部に移動し、前記蒸着材料受部を前記蒸着材料供給部の下方から前記分配器の内部に移動する工程において、前記蒸着材料受部の移動に付随して移動するように前記蒸着材料受部に接続して設けられている遮蔽板により前記成膜チャンバ内において前記分配器と接続される前記接続部の所定の位置を遮蔽し、前記分配器の加熱により前記蒸着材料受部の前記蒸着材料を気化させ、前記分配器に設けられた開口部より気化した前記蒸着材料を前記成膜チャンバ内に噴出させ、前記蒸着材料を前記成膜基板上に成膜する。
【発明の効果】
【0034】
本発明の成膜方法及び成膜装置によれば、バッチ方式あるいはその他の方式で溶液あるいは液体の状態の蒸着材料を用いて真空蒸着する場合に、供給チャンバにおいて蒸着材料受部に蒸着材料溶液供給部から蒸着材料溶液を供給した後、供給チャンバの真空引きすることが可能となり、蒸着材料供給部の供給口近傍で蒸着材料の一部が成膜に供されることなく飛散してしまうことを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
図1図1は本発明の第1実施形態に係る成膜装置の模式構成図である。
図2図2は本発明の第1実施形態に係る成膜装置の要部拡大図である。
図3図3は本発明の第1実施形態に係る成膜方法の成膜工程を示す模式図である。
図4図4は本発明の第1実施形態に係る成膜方法の成膜工程を示す模式図である。
図5図5は本発明の第1実施形態に係る成膜方法の成膜工程を示す模式図である。
図6図6は本発明の第1実施形態に係る成膜方法の成膜工程を示す模式図である。
図7図7は本発明の第1実施形態に係る成膜方法の成膜工程を示す模式図である。
図8図8は本発明の第1実施形態に係る成膜方法の成膜工程を示す模式図である。
図9図9は本発明の第2実施形態に係る成膜装置の模式構成図である。
図10図10は本発明の第3実施形態に係る成膜装置の模式構成図である。
図11図11は本発明の第4実施形態に係る成膜装置の模式構成図である。
図12図12は本発明の第5実施形態に係る成膜装置の模式構成図である。
図13図13は本発明の第6実施形態に係る成膜装置の模式構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下に、本発明の成膜装置並びにそれを用いた成膜方法の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0037】
<第1実施形態>
[成膜装置の構成]
図1は本発明の第1実施形態に係る成膜装置の模式構成図である。
成膜装置は、例えば、成膜チャンバ10と、成膜チャンバ10の外部に設けられた供給チャンバ20を有する。
【0038】
成膜チャンバ10は、例えば、排気管を介して真空ポンプ11が接続されており、内部を所定の圧力に減圧可能となっている。真空蒸着による成膜時における成膜チャンバ10内の背圧は、例えば10−2〜10−5Pa程度である。
また、成膜チャンバ10は、例えば、内部に成膜基板12を保持する基板ホルダ13と蒸着材料の分配器25が設けられている。
図面上は、基板ホルダ13として、回転駆動するドラム型の基板ホルダが示されているが、これにドラム型以外の基板ホルダも用いることができる。
本実施形態の成膜装置は、いわゆる、バッチ方式で成膜対象基板に成膜する成膜装置であり、これに合致した基板ホルダが用いられる。
後述のように、成膜を断続的に行うバッチ方式以外の装置及び方法にも適用可能である。
【0039】
図2は本発明の第1実施形態に係る成膜装置の要部である供給チャンバの拡大図である。
供給チャンバ20は、例えば、第1供給チャンバ21aと第2供給チャンバ21bを有する。
第1供給チャンバ21aと第2供給チャンバ21bは、例えば、それぞれ、接続部(22a,22b)と、開閉可能な仕切り部であるゲートバルブ(23a,23b)を介して、分配器25に連通している。
ゲートバルブ(23a,23b)は、例えば、それぞれ、ゲート部(24a,24b)の移動により、第1供給チャンバ21aと第2供給チャンバ21b側と、接続部(22a,22b)及び分配器25側を連通または仕切ることができる。
【0040】
分配器25には、例えば、蒸着材料を噴出するための複数個の開口部26が設けられている。図面上は1個の分配器25に対して4個の開口部が設けられた構成を示しているが、これに限らず、2個以上の任意の個数の開口部26を有する構成であってよい。また、後述の実施形態のように、1個の分配器25に対して1個の開口部が設けられた構成であってもよい。
また、例えば、分配器25の外側に、分配器25の内部を加熱するための加熱部である抵抗加熱によるヒーター27が設けられている。
本実施形態においては抵抗加熱によるヒーター27を示しているが、これに限らず、電子ビーム照射などの種々の手段を採用でき、加熱する位置は適宜選択可能である。
【0041】
また、例えば、第1供給チャンバ21aと第2供給チャンバ21bは、接続部28により連通しており、接続部28には真空ポンプ29が接続されており、第1供給チャンバ21aと第2供給チャンバ21bの内部を所定の圧力に減圧可能となっている。また、真空ポンプ29と一体に第1供給チャンバ21aと第2供給チャンバ21bに雰囲気ガスを導入する構成が設けられている。あるいは、真空ポンプ29と独立の装置であってもよい。
真空蒸着による成膜時における第1供給チャンバ21aと第2供給チャンバ21b内の背圧は、例えば10−2〜10−5Pa程度である。
また、蒸着材料供給時における第1供給チャンバ21aと第2供給チャンバ21b内の雰囲気ガスは、例えば大気、Ar、N、Heあるいはドライエアであり、背圧は、例えば大気圧、加圧、1kPa〜大気圧程度の減圧である。
【0042】
第1供給チャンバ21aと第2供給チャンバ21bは、例えば、それぞれ、蒸着材料溶液供給部(30a,30b)と、供給チャンバの内部における蒸着材料溶液供給部(30a,30b)の下方から分配器25の内部へと移動可能に設けられた蒸着材料受部(31a,31b)とを有する。
【0043】
蒸着材料溶液供給部(30a,30b)は、例えば蒸着材料を溶媒に溶解してなる蒸着材料溶液を供給する。
例えば、蒸着材料溶液供給部(30a,30b)は、ニードルバルブ、ディスペンサ、スクリューポンプなどの手段で構成でき、蒸着材料溶液を蒸着材料受部(31a,31b)に供給することができる。
【0044】
蒸着材料受部(31a,31b)は、例えばシリンダ型駆動部(32a,32b)などにより、蒸着材料溶液供給部(30a,30b)の下方から分配器25の内部へと移動可能に設けられている。シリンダ型駆動部以外に、モータ方式駆動部などを用いてもよい。
蒸着材料受部(31a,31b)は、例えばステンレススチールなどの耐熱性及び耐蝕性を有する材料で形成されている。
【0045】
また、例えば、蒸着材料受部(31a,31b)の移動に付随して移動するように蒸着材料受部(31a,31b)に接続して遮蔽板(33a,33b)が設けられている。
遮蔽板(33a,33b)により、分配器25と供給チャンバ20の間を遮蔽することで、分配器25の加熱により蒸着材料受部(31a,31b)の蒸着材料を蒸発させる際に、気化した蒸着材料の供給チャンバ20への進入を抑制することができる。
ここで、接続部(22a,22b)の一部において内側の寸法が、遮蔽板(33a,33b)の寸法に適合した構成とすることにより、遮蔽板(33a,33b)が接続部(22a,22b)に移動したときの分配器25と供給チャンバ(21a,21b)の間の遮蔽をより精密に行うことができる。
【0046】
例えば、蒸着材料受部(31a,31b)が加熱可能に構成されている。
蒸着材料溶液を供給する工程から蒸着材料を成膜基板上に成膜する工程までの少なくともいずれかの工程において、蒸着材料受部(31a,31b)により直接蒸着材料溶液または蒸着材料溶液から溶媒が除去されてなる蒸着材料を加熱することができる。
【0047】
本実施形態の成膜装置は、例えば、1個の分配器25に対して、仕切り部であるゲートバルブ(23a,23b)、蒸着材料溶液供給部(30a,30b)、蒸着材料受部(31a,31b)、及び、供給チャンバ(21a,21b)の組を複数個有する。
本実施形態では、仕切り部であるゲートバルブ、蒸着材料溶液供給部、蒸着材料受部、及び、供給チャンバの組を2組有する構成を示しているが、これに限らず、3組以上有する構成であってもよく、この場合には、3組以上の組のうちの一部または全部の供給チャンバが接続部28により連通しており、接続部28には真空ポンプ29が接続された構成とすることができる。
【0048】
上記の構成の成膜装置においては、例えば、成膜チャンバ10において、成膜基板12が保持された基板ホルダ13が回転駆動され、仕切り部であるゲートバルブ(23a,23b)を閉じた状態で成膜チャンバ10が真空引きされる。
【0049】
仕切り部であるゲートバルブ(23a,23b)を閉じた状態で、第1供給チャンバ21a及び第2供給チャンバ21bにおいて、蒸着材料溶液供給部(30a,30b)の下方に配置された蒸着材料受部(31a,31b)に蒸着材料溶液供給部(30a,30b)から蒸着材料溶液を供給し、第1供給チャンバ21a及び第2供給チャンバ21bの真空引きにより、蒸着材料受部(31a,31b)に供給された蒸着材料溶液に含有される蒸着材料を残して蒸着材料溶液の溶媒を除去する。
蒸着材料溶液を供給する際の第1供給チャンバ21a及び第2供給チャンバ21bの内部は、例えば大気、Ar、N、Heあるいはドライエアの雰囲気ガスで、背圧は、例えば大気圧、加圧、1kPa〜大気圧程度の減圧とする。
蒸着材料溶液に含有される蒸着材料を残して蒸着材料溶液の溶媒を除去時における第1供給チャンバ21aと第2供給チャンバ21b内の背圧は、真空引きされた成膜チャンバの内部と同程度であり、例えば10−2〜10−5Pa程度である。
【0050】
仕切り部であるゲートバルブ(23a,23b)を開けて、第1供給チャンバ21a及び第2供給チャンバ21bと分配器25を連通させ、蒸着材料受部(31a,31b)を蒸着材料溶液供給部(30a,30b)の下方から分配器25の内部に移動する。
【0051】
分配器25の加熱により、蒸着材料受部(31a,31b)の蒸着材料を気化させ、分配器25に設けられた開口部26より、気化した蒸着材料を成膜チャンバ10内に噴出させ、いわゆるフラッシュコーティングにより、蒸着材料を成膜基板12上に成膜する。
【0052】
[蒸着材料溶液を構成する蒸着材料]
蒸着材料は、目的とする膜の特性に応じて適宜選択可能であり、例えば防汚膜を形成するための蒸着材料としては、フッ化炭素系化合物及びシリコーン樹脂などを用いることができ、例えば、パーフロロアルキルシラザンを好ましく用いることができる。
また、防汚膜以外の用途の蒸着材料を用いることも可能である。
【0053】
また、特許文献3に開示されたオルガノシラン化合物を好ましく用いることができる。
例えば、下記式(1)で示されるパーフロロアルキル基を有するシラン化合物である。
【0054】
(化1)
2n+1−(CH−Si(R) …(1)
【0055】
式(1)中、Rは1〜3個の炭素原子を有するアルコキシであるか、またはC2n+1−(CH−Si(R)−O−であり、R,Rは1〜3個の炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシであり、nは1〜12であり、およびmは1〜6である。
【0056】
式(1)の化合物として、例えば、トリエトキシ(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,7−ウンデカフルオロヘプチル)シラン;トリエトキシ(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)シラン;トリエトキシ(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル)シラン;ジエトキシメチル(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,9,9,10,10,10−ヘプタデカフルオロデシル)シラン;ビス[エトキシメチル(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−トリデカフルオロオクチル)]シリルエーテルを用いることができる。
【0057】
[蒸着材料溶液を構成する溶媒]
蒸着材料溶液を構成する溶媒としては、上記の蒸着材料を溶解するものであり、蒸着材料より少なくとも低温及び低真空のいずれかで蒸発する特性を有していれば特に制限はない。
例えば、パーフルオロ炭化水素などの蒸着材料より少なくとも低温及び低真空のいずれかで蒸発しやすい溶媒を好ましく用いることができる。
【0058】
例えば、蒸着材料溶液として、フッ化炭素系化合物20%、溶媒としてパーフルオロヘキサン80%を含有する「オプツールDSX(商品名、ダイキン工業株式会社製)」を好ましく用いることができる。
例えば、供給チャンバ20の背圧を1×10−1Paとすることで供給チャンバ20においてパーフルオロヘキサンを完全に分離し、成膜チャンバ10においてフッ化炭素系化合物のみを蒸着させることができる。
【0059】
[成膜方法]
次に、本実施形態に係る有機膜形成用蒸着材料を用いた成膜方法について説明する。
例えば、上述の本実施形態に係る、成膜基板12を保持した基板ホルダ13と蒸着材料の分配器25が内部に設けられた成膜チャンバ10と、成膜チャンバ10の外部に設けられた供給チャンバ(21a,21b)を有し、供給チャンバ(21a,21b)と分配器25とが開閉可能な仕切り部であるゲートバルブ(23a,23b)を介して連通しており、供給チャンバ(21a,21b)は蒸着材料溶液供給部(30a,30b)と、供給チャンバ(21a,21b)の内部における蒸着材料溶液供給部(20a,30b)の下方から分配器25の内部へと移動可能に設けられた蒸着材料受部(31a,31b)とを有する成膜装置を用いて行う。
【0060】
まず、図3に示すように、例えば、成膜チャンバ10において、成膜基板12が保持された基板ホルダ13を回転駆動し、仕切り部であるゲートバルブ(23a,23b)を閉じた状態で、即ち、ゲート部(24a,24b)により、供給チャンバ(21a,21b)側と、接続部(22a,22b)及び分配器25側を仕切った状態で、成膜チャンバ10を真空引きする。
【0061】
次に、図4に示すように、例えば、仕切り部であるゲートバルブ(23a,23b)を閉じた状態で供給チャンバ(21a,21b)において蒸着材料溶液供給部(30a,30b)の下方に配置された蒸着材料受部(31a,31b)に蒸着材料溶液供給部(30a,30b)から蒸着材料溶液34sを供給する。
蒸着材料溶液を供給する際の第1供給チャンバ21a及び第2供給チャンバ21bの内部は、例えば大気、Ar、N、Heあるいはドライエアの雰囲気ガスで、背圧は、例えば大気圧、加圧、1kPa〜大気圧程度の減圧とする。
【0062】
次に、図5に示すように、例えば、真空ポンプ29の駆動による供給チャンバ(21a,21b)の真空引きにより、蒸着材料受部(31a,31b)に供給された蒸着材料溶液34sに含有される蒸着材料34を残して蒸着材料溶液34sの溶媒を除去する。
蒸着材料溶液に含有される蒸着材料を残して蒸着材料溶液の溶媒を除去時における第1供給チャンバ21aと第2供給チャンバ21b内の背圧は、真空引きされた成膜チャンバの内部と同程度であり、例えば10−2〜10−5Pa程度である。
【0063】
次に、図6に示すように、例えば、仕切り部であるゲートバルブ(23a,23b)を開けて、即ち、ゲート部(24a,24b)の移動により、供給チャンバ(21a,21b)と、接続部(22a,22b)及び分配器25を連通させる。


【0064】
次に、図7に示すように、例えば、シリンダ型駆動部(32a,32b)の駆動により、蒸着材料受部(31a,31b)を蒸着材料溶液供給部(30a,30b)の下方から分配器25の内部へと移動する。
【0065】
次に、図8に示すように、例えば、分配器25の外側に設けられたヒーター27により、分配器25の内部を加熱し、蒸着材料受部(31a,31b)の蒸着材料34を気化させ、分配器25に設けられた開口部26より気化した蒸着材料34vを成膜チャンバ10内に噴出させ、蒸着材料を成膜基板上に成膜する。
【0066】
以降の工程として、例えば、蒸着材料受部(31a,31b)への蒸着材料溶液の供給とその溶媒の除去、分配器での蒸着材料の蒸発による成膜を繰り返し行うことができる。
例えば、図8に示す工程の後、シリンダ型駆動部(32a,32b)の駆動により、蒸着材料受部(31a,31b)を分配器25の内部から蒸着材料溶液供給部(30a,30b)の下方へと移動し、ゲートバルブ(23a,23b)を閉じる。
次に、真空ポンプ29の弁を解放して供給チャンバ(21a,21b)内に大気を導入するか、あるいは真空ポンプ29と一体にあるいは独立して設けられた第1供給チャンバ21aと第2供給チャンバ21bに雰囲気ガスを導入する構成により、第1供給チャンバ21aと第2供給チャンバ21b内に、例えば大気、Ar、N、Heあるいはドライエアの雰囲気ガスを大気圧、加圧、1kPa〜大気圧程度の減圧条件として導入する。
次に、図4に示す蒸着材料溶液34sを供給する工程から、図8に示す蒸着材料34を気化させ、成膜基板上に成膜する工程を繰り返す。
蒸着材料受部(31a,31b)への蒸着材料溶液の供給とその溶媒の除去、分配器での蒸着材料の蒸発による成膜の繰り返しは、1回あるいは複数回行うことができる。
【0067】
本実施形態の成膜方法は、例えば、蒸着材料受部(31a,31b)を蒸着材料溶液供給部(30a,30b)の下方から分配器25の内部に移動する工程において、蒸着材料受部(31a,31b)の移動に付随して移動するように蒸着材料受部(31a,31b)に接続して設けられている遮蔽板(33a,33b)により分配器25と供給チャンバ(21a,21b)の間を遮蔽することが好ましい。
これにより、分配器25の加熱により蒸着材料受部(31a,31b)の蒸着材料34を蒸発させる工程において、気化した蒸着材料34vの供給チャンバ(21a,21b)への進入を抑制することができる。
ここで、接続部(22a,22b)の一部において内側の寸法が、遮蔽板(33a,33b)の寸法に適合した構成であることが好ましく、これにより、遮蔽板(33a,33b)が接続部(22a,22b)に移動したときの分配器25と供給チャンバ(21a,21b)の間の遮蔽をより精密に行うことができる。
【0068】
本実施形態の成膜方法は、例えば、蒸着材料が防汚性の蒸着材料であり、成膜基板上に防汚膜を成膜する。
防汚性の蒸着材料は、材料の安定性のため溶液の状態で保存されており、真空蒸着する場合蒸着材料に溶媒が混入して成膜されやすく、防汚膜の耐久性及び耐摩擦性などの膜質が劣化してしまうという不利益があるが、本実施形態の成膜方法によれば、供給チャンバ(21a,21b)において溶媒を蒸発させて分離した後、成膜チャンバ10内の分配器25において気化させることができ、形成される膜の膜質の劣化を防止することができる。
【0069】
本実施形態の成膜方法は、例えば、蒸着材料受部(31a,31b)に蒸着材料溶液34sを供給する工程から気化した蒸着材料34vを成膜基板12上に成膜する工程までを、1組の成膜基板ごとにバッチ方式で行う。
供給チャンバ(21a,21b)において蒸着材料溶液供給部(30a,30b)から供給された蒸着材料溶液34sのうちの蒸着材料34を蒸着材料受部(31a,31b)に残して溶媒を蒸発させた後、蒸着材料34を成膜に供するので、バッチ方式などの成膜を断続的に行う装置及び方法に適している。
【0070】
本実施形態の成膜方法は、例えば、蒸着材料受部(31a,31b)に蒸着材料溶液34sを供給する工程を、供給チャンバ(21a,21b)の内部を大気圧下、加圧下、または1kPa〜大気圧程度の減圧下で行う。
供給チャンバ(21a,21b)において蒸着材料溶液供給部(30a,30b)から供給された蒸着材料溶液34sのうちの蒸着材料34を蒸着材料受部(31a,31b)に残して溶媒を蒸発させる工程においては、蒸着材料溶液34sの特性に応じて、供給チャンバ(21a,21b)の内部を溶媒のみの蒸発に適した圧力条件に設定でき、例えば、大気圧下、加圧下、または1kPa〜大気圧程度の減圧下とすることができる。
【0071】
本実施形態の成膜方法は、例えば、蒸着材料受部(31a,31b)が加熱可能な構成とすることができる。
これにより、蒸着材料溶液34sを供給する工程から気化した蒸着材料34vを成膜基板12上に成膜する工程までの少なくともいずれかの工程において、蒸着材料受部(31a,31b)により、直接蒸着材料溶液34sまたは蒸着材料溶液から溶媒が除去されてなる蒸着材料34を加熱することができる。
【0072】
本実施形態の成膜方法は、例えば、1個の分配器に対して、仕切り部であるゲートバルブ(23a,23b)、蒸着材料溶液供給部(30a,30b)、蒸着材料受部(31a,31b)、及び、供給チャンバ(21a,21b)の組を複数個有した構成の成膜装置を用いて、蒸着材料受部に蒸着材料溶液を供給する工程から気化した蒸着材料を成膜基板上に成膜する工程までを行う。
複数の組の仕切り部であるゲートバルブ(23a,23b)、蒸着材料溶液供給部(30a,30b)、蒸着材料受部(31a,31b)、及び、供給チャンバ(21a,21b)を有する構成により、バッチ方式などの成膜を断続的に行う装置及び方法で一度に成膜する基板の枚数及び成膜面積を増加させることができ、また、膜質の均一化を図ることができる。
【0073】
本実施形態の成膜装置及び成膜方法によれば、バッチ方式あるいはその他の方式で溶液の状態の蒸着材料を用いて真空蒸着する場合に、供給チャンバにおいて蒸着材料受部に蒸着材料溶液供給部から蒸着材料溶液を供給した後、供給チャンバの真空引きすることが可能となり、蒸着材料供給部の供給口近傍で蒸着材料の一部が成膜に供されることなく飛散してしまうことを防止することができ、これにより蒸着材料の節約が可能で製造コストを低減し、さらに真空チャンバの汚染を抑制できる。
【0074】
また、バッチ方式あるいはその他の方式で溶液の状態の蒸着材料を用いて真空蒸着する場合であっても、供給チャンバにおいて蒸着材料溶液供給部から供給された蒸着材料溶液のうちの蒸着材料を蒸着材料受部に残して溶媒を蒸発させて分離した後、成膜チャンバの分配器において蒸着材料を気化し、得られた蒸着材料の蒸気を成膜基板に噴出して堆積させ、蒸着材料の膜を形成することにより、形成される膜の膜質の劣化を防止することができる。
例えば防汚膜を形成する場合、防汚膜の耐久性及び耐摩擦性などの高い膜質を実現できる。
これは、成膜チャンバから独立して設けられた供給チャンバを採用することで、少なくとも圧力及び温度のいずれかの異なる2箇所以上の領域を設けることができ、これにより、蒸着材料溶液から溶媒を分離した後で、成膜に供することが可能となったものである。
【0075】
<第2実施形態>
図9は本発明の第2実施形態に係る成膜装置の模式構成図である。
1個の分配器に対して、仕切り部であるゲートバルブ23、蒸着材料溶液供給部30、蒸着材料受部31、及び、供給チャンバ21の組を1組有した構成の成膜装置である。
供給チャンバ21は、例えば、接続部22と、開閉可能な仕切り部であるゲートバルブ23を介して、分配器25に連通している。
ゲートバルブ23は、例えば、ゲート部24の移動により、供給チャンバ21側と、接続部22及び分配器25側を連通または仕切ることができる。
【0076】
分配器25には、例えば、蒸着材料を噴出するための複数個(図面上は4個)の開口部が設けられている。また、例えば、分配器25の外側に、分配器25の内部を加熱するための加熱部である抵抗加熱によるヒーター27が設けられている。
【0077】
また、例えば、供給チャンバ21は、接続部28を介して真空ポンプ29が接続されており、第1供給チャンバ21aと第2供給チャンバ21bの内部を所定の圧力に減圧可能となっている。
【0078】
供給チャンバ21は、例えば、蒸着材料溶液供給部30と、供給チャンバの内部における蒸着材料溶液供給部30の下方から分配器25の内部へと移動可能に設けられた蒸着材料受部31とを有する。
【0079】
蒸着材料溶液供給部30は、例えば蒸着材料を溶媒に溶解してなる蒸着材料溶液を供給する。
【0080】
蒸着材料受部31は、例えばシリンダ型駆動部32などにより、蒸着材料溶液供給部30の下方から分配器25の内部へと移動可能に設けられている。
【0081】
また、例えば、蒸着材料受部31の移動に付随して移動するように蒸着材料受部31に接続して遮蔽板33が設けられている。
遮蔽板33により、分配器25と供給チャンバ21の間を遮蔽することで、分配器25の加熱により蒸着材料受部31の蒸着材料を蒸発させる際に、気化した蒸着材料の供給チャンバ20への進入を抑制することができる。
ここで、接続部22の一部において内側の寸法が、遮蔽板33の寸法に適合した構成とすることにより、遮蔽板33が接続部22に移動したときの分配器25と供給チャンバ21の間の遮蔽をより精密に行うことができる。
【0082】
例えば、蒸着材料受部31が加熱可能に構成されている。
蒸着材料溶液を供給する工程から蒸着材料を成膜基板上に成膜する工程までの少なくともいずれかの工程において、蒸着材料受部31により直接蒸着材料溶液または蒸着材料溶液から溶媒が除去されてなる蒸着材料を加熱することができる。
【0083】
本実施形態の成膜方法は、上記構成の成膜装置を用いて、蒸着材料受部31に蒸着材料溶液34sを供給する工程から気化した蒸着材料34vを成膜基板12上に成膜する工程までを行う。
上記の点を除いては実質的に第1実施形態の成膜装置と同様である。
【0084】
本実施形態の成膜装置及び成膜方法によれば、バッチ方式あるいはその他の方式で溶液の状態の蒸着材料を用いて真空蒸着する場合に、供給チャンバにおいて蒸着材料受部に蒸着材料溶液供給部から蒸着材料溶液を供給した後、供給チャンバの真空引きすることが可能となり、蒸着材料供給部の供給口近傍で蒸着材料の一部が成膜に供されることなく飛散してしまうことを防止することができ、これにより蒸着材料の節約が可能で製造コストを低減し、さらに真空チャンバの汚染を抑制できる。
【0085】
また、バッチ方式あるいはその他の方式で溶液の状態の蒸着材料を用いて真空蒸着する場合であっても、供給チャンバにおいて蒸着材料溶液供給部から供給された蒸着材料溶液のうちの蒸着材料を蒸着材料受部に残して溶媒を蒸発させて分離した後、成膜チャンバの分配器において蒸着材料を気化し、得られた蒸着材料の蒸気を成膜基板に噴出して堆積させ、蒸着材料の膜を形成することにより、形成される膜の膜質の劣化を防止することができる。
【0086】
<第3実施形態>
図10は本発明の第3実施形態に係る成膜装置の模式構成図である。
本実施形態の成膜装置は、第1実施形態と同様に、例えば、1個の分配器25に対して、仕切り部であるゲートバルブ(23a,23b)、蒸着材料溶液供給部(30a,30b)、蒸着材料受部(31a,31b)、及び、供給チャンバ(21a,21b)の組を複数個有する。
本実施形態では、仕切り部であるゲートバルブ、蒸着材料溶液供給部、蒸着材料受部、及び、供給チャンバの組を2組有する構成を示しているが、これに限らず、3組以上有する構成であってもよい。
ここで、本実施形態においては、供給チャンバ(21a,21b)が個別に接続部(28a,28b)を介して真空ポンプ(29a,29b)に接続された構成となっている。
上記の構成の成膜装置では、供給チャンバ(21a,21b)を個別に真空引きすることができる。これにより、蒸着材料溶液の特性に応じて、供給チャンバ(21a,21b)の内部を個別に溶媒のみの蒸発に適した雰囲気ガス及び圧力条件に設定でき、例えば、大気圧下、加圧下、または1kPa〜大気圧程度の減圧下とすることができる。
上記を除いては、実質的に第1実施形態と同様である。
【0087】
本実施形態の係る成膜方法は、例えば、成膜チャンバ10において、成膜基板12が保持された基板ホルダ13を回転駆動し、仕切り部であるゲートバルブ(23a,23b)を閉じた状態で、即ち、ゲート部(24a,24b)により、供給チャンバ(21a,21b)側と、接続部(22a,22b)及び分配器25側を仕切った状態で、成膜チャンバ10を真空引きし、仕切り部であるゲートバルブ(23a,23b)を閉じた状態で供給チャンバ(21a,21b)において蒸着材料溶液供給部(30a,30b)の下方に配置された蒸着材料受部(31a,31b)に蒸着材料溶液供給部(30a,30b)から蒸着材料溶液34sを供給する。
次に、例えば、真空ポンプ(29a,29b)の駆動による供給チャンバ(21a,21b)の真空引きにより、蒸着材料受部(31a,31b)に供給された蒸着材料溶液34sに含有される蒸着材料34を残して蒸着材料溶液34sの溶媒を除去する。
上記以外については、第1実施形態と同様である。
【0088】
本実施形態の成膜装置及び成膜方法によれば、バッチ方式あるいはその他の方式で溶液の状態の蒸着材料を用いて真空蒸着する場合に、供給チャンバにおいて蒸着材料受部に蒸着材料溶液供給部から蒸着材料溶液を供給した後、供給チャンバの真空引きすることが可能となり、蒸着材料供給部の供給口近傍で蒸着材料の一部が成膜に供されることなく飛散してしまうことを防止することができ、これにより蒸着材料の節約が可能で製造コストを低減し、さらに真空チャンバの汚染を抑制できる。
【0089】
また、バッチ方式あるいはその他の方式で溶液の状態の蒸着材料を用いて真空蒸着する場合であっても、供給チャンバにおいて蒸着材料溶液供給部から供給された蒸着材料溶液のうちの蒸着材料を蒸着材料受部に残して溶媒を蒸発させて分離した後、成膜チャンバの分配器において蒸着材料を気化し、得られた蒸着材料の蒸気を成膜基板に噴出して堆積させ、蒸着材料の膜を形成することにより、形成される膜の膜質の劣化を防止することができる。
【0090】
<第4実施形態>
図11は本発明の第4実施形態に係る成膜装置の模式構成図である。
本実施形態の成膜装置は、例えば、分配器(25a,25b)、仕切り部であるゲートバルブ(23a,23b)、蒸着材料溶液供給部(30a,30b)、蒸着材料受部(31a,31b)、及び、供給チャンバ(21a,21b)の組が複数個設けられている構成である。分配器、仕切り部であるゲートバルブ、蒸着材料溶液供給部、蒸着材料受部、及び、供給チャンバの各組の構成は、第2実施形態と同様である。
本実施形態では、分配器、仕切り部であるゲートバルブ、蒸着材料溶液供給部、蒸着材料受部、及び、供給チャンバの組を2組有する構成を示しているが、これに限らず、3組以上有する構成であってもよい。
上記を除いては、実質的に第1実施形態あるいは第2実施形態と同様である。
【0091】
本実施形態の係る成膜方法は、例えば、成膜チャンバ10において、成膜基板12が保持された基板ホルダ13を回転駆動し、仕切り部であるゲートバルブ(23a,23b)を閉じた状態で、即ち、ゲート部(24a,24b)により、供給チャンバ(21a,21b)側と、接続部(22a,22b)及び分配器25側を仕切った状態で、成膜チャンバ10を真空引きし、仕切り部であるゲートバルブ(23a,23b)を閉じた状態で供給チャンバ(21a,21b)において蒸着材料溶液供給部(30a,30b)の下方に配置された蒸着材料受部(31a,31b)に蒸着材料溶液供給部(30a,30b)から蒸着材料溶液34sを供給する。
次に、例えば、真空ポンプ(29a,29b)の駆動による供給チャンバ(21a,21b)の真空引きにより、蒸着材料受部(31a,31b)に供給された蒸着材料溶液34sに含有される蒸着材料34を残して蒸着材料溶液34sの溶媒を除去する。
次に、例えば、仕切り部であるゲートバルブ(23a,23b)を開けて、供給チャンバ(21a,21b)と、接続部(22a,22b)及び分配器(25a,25b)をそれぞれ連通させ、シリンダ型駆動部(32a,32b)の駆動により、蒸着材料受部(31a,31b)を蒸着材料溶液供給部(30a,30b)の下方から分配器25の内部へと移動し、分配器(25a,25b)の外側に設けられたヒーター(27a,27b)により、分配器(25a,25b)の内部をそれぞれ加熱し、蒸着材料受部(31a,31b)の蒸着材料34を気化させ、分配器(25a,25b)に設けられた開口部(26a,26b)より気化した蒸着材料34vを成膜チャンバ10内に噴出させ、蒸着材料を成膜基板上に成膜する。
上記以外については、第1実施形態あるいは第2実施形態と同様である。
【0092】
本実施形態の成膜装置及び成膜方法によれば、バッチ方式あるいはその他の方式で溶液の状態の蒸着材料を用いて真空蒸着する場合に、供給チャンバにおいて蒸着材料受部に蒸着材料溶液供給部から蒸着材料溶液を供給した後、供給チャンバの真空引きすることが可能となり、蒸着材料供給部の供給口近傍で蒸着材料の一部が成膜に供されることなく飛散してしまうことを防止することができ、これにより蒸着材料の節約が可能で製造コストを低減し、さらに真空チャンバの汚染を抑制できる。
【0093】
また、バッチ方式あるいはその他の方式で溶液の状態の蒸着材料を用いて真空蒸着する場合であっても、供給チャンバにおいて蒸着材料溶液供給部から供給された蒸着材料溶液のうちの蒸着材料を蒸着材料受部に残して溶媒を蒸発させて分離した後、成膜チャンバの分配器において蒸着材料を気化し、得られた蒸着材料の蒸気を成膜基板に噴出して堆積させ、蒸着材料の膜を形成することにより、形成される膜の膜質の劣化を防止することができる。
【0094】
<第5実施形態>
図12は本発明の第5実施形態に係る成膜装置の模式構成図である。
本実施形態の成膜装置は、例えば、1つの成膜チャンバ10に対して、分配器(25X,25Y)と供給チャンバ(20X,20Y)の組が複数個設けられた構成であり、分配器(25X,25Y)と供給チャンバ(20X,20Y)の各組の構成は、例えば第1実施形態と同様に、1つの分配器25に対して、仕切り部であるゲートバルブ(23a,23b)、蒸着材料溶液供給部(30a,30b)、蒸着材料受部(31a,31b)、及び、供給チャンバ(21a,21b)の組が複数個設けられている構成である。
あるいは、分配器(25X,25Y)と供給チャンバ(20X,20Y)の各組の構成は、第2実施形態〜第4実施形態と同様とすることもできる。
【0095】
図面上は分配器(25X,25Y)と供給チャンバ(20X,20Y)の組が2組設けられた構成であるが、これに限らず、3組以上であってよい。
また、図面上は分配器(25X,25Y)と供給チャンバ(20X,20Y)の組が成膜チャンバ10を挟んで対向する位置に配置されているが、これに限らず、成膜チャンバ10に対して任意の複数の位置に分配器と供給チャンバの組が設けられている構成とすることができる。
【0096】
1つの成膜チャンバ10に対して、分配器(25X,25Y)と供給チャンバ(20X,20Y)の組が複数個設けられた構成とすることで、成膜基板に対する成膜速度を高め、より広い面積で効率的に成膜することが可能である。
上記を除いては、実質的に第1実施形態〜第4実施形態と同様である。
【0097】
また、本実施形態の成膜方法は、上記のように分配器(25X,25Y)と供給チャンバ(20X,20Y)の組をそれぞれ用いて成膜することを除いて、実質的に第1実施形態〜第4実施形態と同様である。
【0098】
本実施形態の成膜装置及び成膜方法によれば、バッチ方式あるいはその他の方式で溶液の状態の蒸着材料を用いて真空蒸着する場合に、供給チャンバにおいて蒸着材料受部に蒸着材料溶液供給部から蒸着材料溶液を供給した後、供給チャンバの真空引きすることが可能となり、蒸着材料供給部の供給口近傍で蒸着材料の一部が成膜に供されることなく飛散してしまうことを防止することができ、これにより蒸着材料の節約が可能で製造コストを低減し、さらに真空チャンバの汚染を抑制できる。
【0099】
また、バッチ方式あるいはその他の方式で溶液の状態の蒸着材料を用いて真空蒸着する場合であっても、供給チャンバにおいて蒸着材料溶液供給部から供給された蒸着材料溶液のうちの蒸着材料を蒸着材料受部に残して溶媒を蒸発させて分離した後、成膜チャンバの分配器において蒸着材料を気化し、得られた蒸着材料の蒸気を成膜基板に噴出して堆積させ、蒸着材料の膜を形成することにより、形成される膜の膜質の劣化を防止することができる。
【0100】
<第6実施形態>
図13は本発明の第6実施形態に係る成膜装置の模式構成図である。
本実施形態の成膜装置は、例えば、1つの分配器25に1つの開口部26が設けられている構成である。
上記を除いては第1実施形態と同様である。
また、第2〜第5実施形態に係る成膜装置においても、上記と同様に、1つの分配器に1つの開口部が設けられている構成を適用することができる。
【0101】
また、本実施形態の成膜方法は、実質的に第1実施形態〜第5実施形態と同様である。
【0102】
本実施形態の成膜装置及び成膜方法によれば、バッチ方式あるいはその他の方式で溶液の状態の蒸着材料を用いて真空蒸着する場合に、供給チャンバにおいて蒸着材料受部に蒸着材料溶液供給部から蒸着材料溶液を供給した後、供給チャンバの真空引きすることが可能となり、蒸着材料供給部の供給口近傍で蒸着材料の一部が成膜に供されることなく飛散してしまうことを防止することができ、これにより蒸着材料の節約が可能で製造コストを低減し、さらに真空チャンバの汚染を抑制できる。
【0103】
また、バッチ方式あるいはその他の方式で溶液の状態の蒸着材料を用いて真空蒸着する場合であっても、供給チャンバにおいて蒸着材料溶液供給部から供給された蒸着材料溶液のうちの蒸着材料を蒸着材料受部に残して溶媒を蒸発させて分離した後、成膜チャンバの分配器において蒸着材料を気化し、得られた蒸着材料の蒸気を成膜基板に噴出して堆積させ、蒸着材料の膜を形成することにより、形成される膜の膜質の劣化を防止することができる。
【0104】
<第7実施形態>
[成膜装置]
本発明の第7実施形態に係る成膜装置は、図1の模式構成図と同様である。
蒸着材料溶液を供給する蒸着材料溶液供給部の代わりに、溶媒を含まない蒸着材料を供給する蒸着材料供給部が設けられている。
上記を除いて第1実施形態と同様である。
【0105】
[成膜方法]
本実施形態の成膜方法は、上述の本実施形態に係る成膜装置を用いて行う。
まず、図3と同様に、例えば、成膜チャンバ10において、成膜基板12が保持された基板ホルダ13を回転駆動し、仕切り部であるゲートバルブ(23a,23b)を閉じた状態で、即ち、ゲート部(24a,24b)により、供給チャンバ(21a,21b)側と、接続部(22a,22b)及び分配器25側を仕切った状態で、成膜チャンバ10を真空引きする。
【0106】
次に、図4と同様に、例えば、仕切り部であるゲートバルブ(23a,23b)を閉じた状態で供給チャンバ(21a,21b)において蒸着材料供給部の下方に配置された蒸着材料受部(31a,31b)に蒸着材料供給部から液体の蒸着材料を供給する。
【0107】
次に、図5と同様に、例えば、真空ポンプ29の駆動による供給チャンバ(21a,21b)の真空引きを行う。
以降は、第1実施形態と同様にして行う。
【0108】
本実施形態の成膜装置及び成膜方法によれば、バッチ方式あるいはその他の方式で溶媒を含まない液体の状態の蒸着材料を用いて真空蒸着する場合に、供給チャンバにおいて蒸着材料受部に蒸着材料供給部から液体の蒸着材料を供給した後、供給チャンバの真空引きすることが可能となり、蒸着材料供給部の供給口近傍で蒸着材料の一部が成膜に供されることなく飛散してしまうことを防止することができ、これにより蒸着材料の節約が可能で製造コストを低減し、さらに真空チャンバの汚染を抑制できる。
【0109】
<第8実施形態>
第2〜第6実施形態に対して、蒸着材料溶液を供給する蒸着材料溶液供給部の代わりに、溶媒を含まない蒸着材料を供給する蒸着材料供給部が設けられている構成とすることができる。
この場合、成膜方法としては、例えば、成膜チャンバにおいて、成膜基板が保持された基板ホルダを回転駆動し、仕切り部であるゲートバルブを閉じた状態で成膜チャンバを真空引きし、供給チャンバにおいて蒸着材料供給部の下方に配置された蒸着材料受部に蒸着材料供給部から液体の蒸着材料を供給した後に、真空ポンプの駆動による供給チャンバの真空引きを行うことを除いて、第2〜第6実施形態と同様にして行う。
【0110】
本実施形態の成膜装置及び成膜方法によれば、バッチ方式あるいはその他の方式で溶媒を含まない液体の状態の蒸着材料を用いて真空蒸着する場合に、供給チャンバにおいて蒸着材料受部に蒸着材料供給部から液体の蒸着材料を供給した後、供給チャンバの真空引きすることが可能となり、蒸着材料供給部の供給口近傍で蒸着材料の一部が成膜に供されることなく飛散してしまうことを防止することができ、これにより蒸着材料の節約が可能で製造コストを低減し、さらに真空チャンバの汚染を抑制できる。
【0111】
本発明は上記の説明に限定されない。
例えば、蒸着材料としては、防汚膜のほか、防汚膜以外の用途の蒸着材料を用いることも可能である。
蒸着材料が溶媒に溶解された溶液のほか、蒸着材料が分散媒に分散されて保存される蒸着材料にも適用可能であり、供給チャンバにおいて分散媒を除去してから蒸着させることが可能である。
上記の実施形態では、いわゆるバッチ方式の成膜装置及び成膜方法について示しているが、バッチ方式以外の方式での成膜装置及び成膜方法に適用可能である。
例えば、純粋なバッチ方式以外に、成膜基板が保持された基板ホルダの搬出入及び真空排気及び大気解放可能なロードロック室が成膜チャンバに設けられているロードロック方式にも適用可能である。
また、複数個の成膜チャンバが互いに仕切り可能に接続されて設けられており、複数個の成膜チャンバ間に搬送されてくる基板ホルダに保持された成膜基板に断続的に成膜する枚葉方式(マルチチャンバー方式)に適用可能である。
さらに、移動する成膜基板に対して断続的に成膜を行うインライン方式に適用可能である。
バッチ方式以外の方式の場合、その成膜方式に合致した基板ホルダが用いられる。
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0112】
10…成膜チャンバ
11…真空ポンプ
12…成膜基板
13…基板ホルダ
20,20X,20Y…供給チャンバ
21…供給チャンバ
21a…第1供給チャンバ
21b…第2供給チャンバ
22,22a,22b…接続部
23,23a,23b…ゲートバルブ
24,24a,24b…ゲート部
25,25a,25b…分配器
26,26a,26b…開口部
27,27a,27b…ヒーター
28,28a,28b…接続部
29,29a,29b…真空ポンプ
30,30a,30b…蒸着材料供給部
31,31a,31b…蒸着材料受部
32,32a,32b…シリンダ型駆動部
33,33a,33b…遮蔽板
34…蒸着材料
34s…蒸着材料溶液
34v…気化した蒸着材料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13