特許第6490436号(P6490436)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6490436複合粒子、トナー用外添剤および複合粒子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6490436
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】複合粒子、トナー用外添剤および複合粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03G 9/097 20060101AFI20190318BHJP
   C01B 33/18 20060101ALI20190318BHJP
   C08J 3/12 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   G03G9/097 372
   C01B33/18 C
   G03G9/097 374
   G03G9/097 375
   C08J3/12 ZCER
   C08J3/12CEZ
【請求項の数】14
【全頁数】54
(21)【出願番号】特願2015-16679(P2015-16679)
(22)【出願日】2015年1月30日
(65)【公開番号】特開2016-142811(P2016-142811A)
(43)【公開日】2016年8月8日
【審査請求日】2017年10月4日
(73)【特許権者】
【識別番号】503447036
【氏名又は名称】サムスン エレクトロニクス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100088605
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 公延
(74)【代理人】
【識別番号】100101890
【弁理士】
【氏名又は名称】押野 宏
(72)【発明者】
【氏名】宮尾 宙
(72)【発明者】
【氏名】神 勲充
【審査官】 高橋 純平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−040707(JP,A)
【文献】 特開2013−210574(JP,A)
【文献】 特開2014−065014(JP,A)
【文献】 特開2010−003926(JP,A)
【文献】 特開2006−173480(JP,A)
【文献】 特開昭64−091141(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03G 9/00− 9/16
C01B 33/00−33/193
C08J 3/00− 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア粒子と微粒子とを備える複合粒子において、
前記コア粒子が有機材料および無機材料のいずれか一方から形成され
前記微粒子が前記コア粒子上に存在し、前記コア粒子が有機材料から形成される場合にあっては、前記微粒子が無機材料から形成され、前記コア粒子が無機材料から形成される場合にあっては、前記微粒子が有機材料から形成され
前記コア粒子の平均粒子径が80nm以上300nm以下であり、前記コア粒子の平均粒子径の変動係数が2%以上10%以下であり、
前記微粒子の平均粒子径が5nm以上30nm以下であり、且つ前記コア粒子の前記平均粒子径に対する前記微粒子の平均粒子径の比が0.016以上0.25以下であり、
前記複合粒子の平均粒子径が90nm以上350nm以下であり、
前記複合粒子の体積抵抗ρv=α1×10β1(Ω・cm)および表面抵抗ρs=α2×10β2(Ω/cm)における乗数の比率β1/β2が0.7以上1.4以下であり、
前記複合粒子が1重量%になるように水に分散させた複合粒子分散液に、出力110W、周波数31kHzの条件で、超音波を30分間照射する前後における、前記コア粒子上に存在する前記微粒子の個数変化が0.5%以上5%以下であり、
前記複合粒子は前記コア粒子の表面全体および前記微粒子を被覆する無機材料層を備える複合粒子。
【請求項2】
前記複合粒子の比誘電率が2以上300以下である請求項1に記載の複合粒子。
【請求項3】
前記コア粒子の表面における前記微粒子の被覆率が5%以上68%以下である請求項1または2に記載の複合粒子。
【請求項4】
前記コア粒子は有機材料から形成され、前記微粒子は無機材料から形成される請求項1から3のいずれか1項に記載の複合粒子。
【請求項5】
さらに、有機材料から形成される微粒子を備える請求項4に記載の複合粒子。
【請求項6】
前記無機材料は、シリカ、チタニア、酸化セリウムおよびチタン酸ストロンチウムからなる群から選択される請求項4または5に記載の複合粒子。
【請求項7】
前記コア粒子は無機材料から形成され、前記微粒子は有機材料から形成される請求項1から3のいずれか1項に記載の複合粒子。
【請求項8】
さらに、無機材料から形成される微粒子を備える請求項7に記載の複合粒子。
【請求項9】
前記無機材料は、シリカ、チタニア、酸化セリウムおよびチタン酸ストロンチウムからなる群から選択される請求項7または8に記載の複合粒子。
【請求項10】
請求項1からのいずれか1項に記載の複合粒子を含むトナー用外添剤。
【請求項11】
コア粒子と微粒子とを備える複合粒子の製造方法において、
有機材料および無機材料のいずれか一方から形成される前記コア粒子と有機材料および無機材料のいずれか他方から形成される前記微粒子とを含む分散液から前記コア粒子の表面に前記微粒子が付着した粒子付着体を形成する粒子付着体形成工程と、
前記粒子付着体が形成された前記分散液に、前記コア粒子および前記微粒子のいずれか一方と結合し且ついずれか他方と相互作用するシランカップリング剤および塩基性物質を添加して、前記コア粒子の表面に前記微粒子を固定化させた前記複合粒子を形成する複合粒子形成工程と
を備え
前記コア粒子の平均粒子径の変動係数が2%以上10%以下である、複合粒子の製造方法。
【請求項12】
コア粒子と微粒子とを備える複合粒子において、
前記コア粒子が無機材料から形成され、
前記微粒子が前記コア粒子上に存在し、前記微粒子が有機材料から形成され、
前記コア粒子の平均粒子径が80nm以上300nm以下であり、前記コア粒子の平均粒子径の変動係数が2%以上10%以下であり、
前記微粒子の平均粒子径が5nm以上30nm以下であり、且つ前記コア粒子の前記平均粒子径に対する前記微粒子の平均粒子径の比が0.016以上0.25以下であり、
前記複合粒子の平均粒子径が90nm以上350nm以下であり、
前記複合粒子の体積抵抗ρv=α1×10β1(Ω・cm)および表面抵抗ρs=α2×10β2(Ω/cm)における乗数の比率β1/β2が0.7以上1.4以下であり、
前記複合粒子が1重量%になるように水に分散させた複合粒子分散液に、出力110W、周波数31kHzの条件で、超音波を30分間照射する前後における、前記コア粒子上に存在する前記微粒子の個数変化が0.5%以上5%以下である複合粒子。
【請求項13】
前記複合粒子の比誘電率が2以上300以下である請求項12に記載の複合粒子。
【請求項14】
前記コア粒子の表面における前記微粒子の被覆率が5%以上68%以下である請求項11または12に記載の複合粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、電子写真用トナーに外添して使用されるトナー外添剤の構成成分として、適用可能な複合粒子及びその製造方法、並びに、該複合粒子を含むトナー用外添剤に関する。
【背景技術】
【0002】
複合粒子は、有機材料から形成された部分と、無機材料から形成された部分を備えているため、有機材料に由来する加工性と、無機材料に由来する特性を併せもつことができることから、両材料特性を活かした様々な用途への適用が期待される機能性材料である。
複合粒子の種類としては、コア部分を構成する樹脂粒子の表面にシェル部分を構成する無機材料層を被覆した構造を有する、いわゆるコアシェル型粒子(例えば、特許文献1〜4参照)、有機材料から形成される大粒子径のコア粒子の表面上に無機材料から形成される小粒子径の微粒子を付着させた構造を有する、いわゆるラズベリー型粒子(例えば、特許文献5〜9参照)などが知られており、用途に応じて多様な形状や構成を有するものが開発されている。
【0003】
ここで、複合粒子を電子写真用トナーに外添されるトナー外添剤の構成成分として使用する場合、複合粒子は、複写機等の画像形成装置内の部材等との接触時にせん断力や摩擦力などの様々なストレスを受ける。複合粒子を電子写真用トナーなどの用途に適用する場合、その複合粒子の帯電量は用途に応じて適切な範囲に制御される必要があり、また、複合粒子を適用した電子写真用トナーなどに対して、その用途に応じた流動性を付与する必要がある。
このように電子写真用トナーなどの用途に適用される複合粒子には、上述のようなストレスに耐えうるに十分な強度と、良好な帯電量を併せもち、また、複合粒子を適用した電子写真用トナーなどに対して、その用途に応じた適切な流動性を付与することが求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2012-189881号公報
【特許文献2】特開2005-173480号公報
【特許文献3】特開2012-13776号公報
【特許文献4】特開2012-073468号公報
【特許文献5】特表2007-504307号公報
【特許文献6】特開2002-131976号公報
【特許文献7】特開2005-202131号公報
【特許文献8】特開2005-202133号公報
【特許文献9】特開2014-065014号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の複合粒子は、上述の要求に対応することが困難な問題点を有している。
特許文献1〜4に開示されたコアシェル型の複合粒子では、コアを構成する球状の有機粒子の柔軟性が高いため、上述のようなストレスを受けると、コア部分の形状が容易に変化し、球状を維持できなくなる可能性がある。複合粒子が球状を維持できない場合、複合粒子の流動性が低下するため、電子写真用トナーに対して適切なレベルの流動性を付与することが困難となる。
特許文献5〜8に開示された従来のラズベリー型の複合粒子では、コア粒子上に微粒子を付着させただけの構造であるため、微粒子のコア粒子上への付着強度が低い。微粒子のコア粒子上への付着強度が低い場合、上述のようなストレスを受けると、コア粒子から微粒子が脱離し易いため、初期の特性を維持することが困難となる。
これに対し、特許文献9に開示された従来のラズベリー型の複合粒子は、無機材料から形成される微粒子と有機材料から形成される微粒子を有機疎水化剤で結合した構造を有しているので、上述の特許文献5〜8に開示された従来のラズベリー型の複合粒子よりも粒子間の付着強度が高いと考えられる。しかし、特許文献9に開示された従来のラズベリー型の複合粒子では、その表面に有機疎水化剤由来の有機成分が多く露出している。有機成分は無機成分より帯電量が高いため、複合粒子の表面に有機成分が多く存在していると、その複合粒子の帯電量を制御することが困難となる。
【0006】
その一方で、例えば、有機ポリマーから形成されるコア粒子表面にナノサイズの無機粒子を付着させた構造を有するラズベリー型の複合粒子は、その表面上に存在する無機粒子によって形成された微細な凹凸形状に基づく、いわゆる蓮の葉効果により撥水性を発揮することから、撥水性材料として活用されている。また、そのようなラズベリー型の複合粒子は、その表面の比表面積が表面に凹凸をもたない球状粒子と比較して大きいことから、触媒の担体としても活用されている。このようにラズベリー型の複合粒子には、その構造や表面形状に由来する特性から新たな用途への適用拡大の余地がある点でも注目を集めている。
従って、さらに、ラズベリー型の複合粒子が活用され、その適用範囲が拡大されるためには、上述した問題点を解決する必要がある。
【0007】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、微粒子のコア粒子上への付着強度が高く、良好な帯電量、高い流動性を確保できる複合粒子及びその製造方法、並びに、該複合粒子を含むトナー用外添剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明は以下の構成を有する。
【0009】
(構成1)
コア粒子と微粒子とを備える複合粒子において、
前記コア粒子の主成分が有機材料および無機材料のいずれか一方であり、
前記微粒子が前記コア粒子上に存在し、前記コア粒子の主成分が有機材料である場合にあっては、前記微粒子の主成分が無機材料であり、前記コア粒子の主成分が無機材料である場合にあっては、前記微粒子の主成分が有機材料であり、
前記コア粒子の平均粒子径が80nm以上300nm以下であり、前記コア粒子の平均粒子径の変動係数が2%以上10%以下であり、
前記微粒子の平均粒子径が5nm以上30nm以下であり、且つ前記コア粒子の前記平均粒子径に対する前記微粒子の平均粒子径の比が0.016以上0.25以下であり、
前記複合粒子の平均粒子径が90nm以上350nm以下であり、
前記複合粒子の体積抵抗ρv=α1×10β1(Ω・cm)および表面抵抗ρs=α2×10β2(Ω/cm)における乗数の比率β1/β2が0.7以上1.4以下であり、
前記複合粒子が1重量%になるように水に分散させた複合粒子分散液に、出力110W、周波数31kHzの条件で、超音波を30分間照射する前後における、前記コア粒子上に存在する記微粒子の個数変化が0.5%以上5%以下である複合粒子。
【0010】
(構成2)
前記複合粒子の比誘電率が2以上300以下である構成1に記載の複合粒子。
【0011】
(構成3)
前記コア粒子の表面における前記微粒子の被覆率が5%以上68%未満である構成1または2に記載の複合粒子。
【0012】
(構成4)
前記コア粒子は有機材料から形成され、前記微粒子は無機材料から形成される構成1から3のいずれか1項に記載の複合粒子。
【0013】
(構成5)
さらに、有機材料から形成される微粒子を備える構成4に記載の複合粒子。
【0014】
(構成6)
前記無機材料は、シリカ、チタニア、酸化セリウムおよびチタン酸ストロンチウムからなる群から選択される構成4または5に記載の複合粒子。
【0015】
(構成7)
前記コア粒子は無機材料から形成され、前記微粒子は有機材料から形成される構成1から3のいずれか1項に記載の複合粒子。
【0016】
(構成8)
さらに、無機材料から形成される微粒子を備える構成7に記載の複合粒子。
【0017】
(構成9)
前記無機材料は、シリカ、チタニア、酸化セリウムおよびチタン酸ストロンチウムからなる群から選択される構成7または8に記載の複合粒子。
【0018】
(構成10)
前記複合粒子は前記コア粒子の表面および前記微粒子を被覆する無機材料層を備えることを特徴とする構成1から9のいずれか1項に記載の複合粒子。
【0019】
(構成11)
構成1から10のいずれか1項に記載の複合粒子を含むトナー用外添剤。
【0020】
(構成12)
コア粒子と微粒子とを備える複合粒子の製造方法において、
有機材料および無機材料のいずれか一方を主成分とする前記コア粒子と有機材料および無機材料のいずれか他方を主成分とする前記微粒子とを含む分散液から前記コア粒子の表面に前記微粒子が付着した粒子付着体を形成する粒子付着体形成工程と、
前記粒子付着体が形成された前記分散液に、前記コア粒子および前記微粒子のいずれか一方と結合し且ついずれか他方と相互作用するシランカップリング剤および塩基性物質を添加して、前記コア粒子の表面に前記微粒子を固定化させた前記複合粒子を形成する複合粒子形成工程と
を備える複合粒子の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る複合粒子によれば、コア粒子と微粒子とを備える複合粒子において、コア粒子の主成分は、有機材料および無機材料のいずれか一方であり、微粒子は、コア粒子上に存在し、微粒子の主成分は有機材料および無機材料のいずれか他方であり、すなわち、コア粒子の主成分が有機材料である場合にあっては、微粒子の主成分が無機材料であり、コア粒子の主成分が無機材料である場合にあっては、微粒子の主成分が有機材料であり、コア粒子の平均粒子径が80nm以上300nm以下であり、コア粒子の平均粒子径の変動係数が2%以上10%以下であり、微粒子の平均粒子径が5nm以上30nm以下であり、かつコア粒子の平均粒子径に対する微粒子の平均粒子径の比が0.016以上0.25以下であり、複合粒子の平均粒子径が90nm以上350nm以下であり、複合粒子のρv=α1×10β1(Ω・cm)および表面抵抗ρs=α2×10β2(Ω/cm)における乗数の比率β1/β2が0.7以上1.4以下であり、複合粒子が1重量%になるように水に分散させた複合粒子分散液に、出力110W、周波数31kHzの条件で、超音波を30分間照射する前後における、コア粒子上に存在する微粒子の個数変化が0.5%以上5%以下である。
上述した各物性を併せもつ複合粒子は、以下のような効果を有する。
(i)複合粒子は、コア粒子の表面に微粒子状に存在し、且つ、所定条件の超音波照射の前後における、コア粒子の表面に存在する微粒子の個数変化が極めて小さいので、微粒子がコア粒子上に単に付着された従来の複合粒子と比較して、微粒子のコア粒子上への付着強度が高い。微粒子のコア粒子上への付着強度が高いので、せん断力などの様々なストレスを受けても、コア粒子から微粒子が脱離しにくい。
(ii)複合粒子は、体積抵抗ρvおよび表面抵抗ρsが所定の数値範囲にあり、比誘電率が所定の範囲にあるため、初期特性として、帯電の立ち上がりが早く、帯電レベルを維持する、すなわち良好な帯電量を確保できる。この良好な帯電量は、微粒子のコア粒子上への付着強度が高く、コア粒子から微粒子が脱離しにくいので、長期間にわたって維持できる。
(iii)コア粒子および微粒子が所定の数値範囲にある平均粒子径、平均粒子径の比を持ち、且つ所定の数値範囲にある被覆率を持つため、例えばトナー用外添剤などの構成成分として用いた場合、トナーと複合粒子は、常にトナーと複合粒子上に存在する微粒子が接触することとなるため、転がり性が低下することなく、初期特性として、高い流動性を確保できる。高い流動性をもつ複合粒子は、トナー用外添剤などの構成成分として良好に適用されることができる。高い流動性は、微粒子のコア粒子上への付着強度が高く、コア粒子から微粒子が脱離しにくいので、長期間にわたって維持できる。
従って、本発明に係る複合粒子は、微粒子のコア粒子上への付着強度が高く、良好な帯電量、高い流動性を確保できる。
【0022】
本発明に係る複合粒子の製造方法によれば、コア粒子と微粒子とを備える複合粒子の製造方法において、有機材料および無機材料のいずれか一方を主成分とするコア粒子と有機材料および無機材料のいずれか他方を主成分とする微粒子とを含む分散液からコア粒子の表面に微粒子が付着した粒子付着体を形成する粒子付着体形成工程と、粒子付着体が形成された分散液に、コア粒子および微粒子のいずれか一方と結合し且ついずれか他方と相互作用するシランカップリング剤および塩基性物質を添加して、コア粒子の表面に微粒子を固定化させた複合粒子を形成する複合粒子形成工程と、を備える。
粒子付着体形成工程では、ヘテロ凝集により、コア粒子上に微粒子を存在させ、コア粒子の表面に微粒子を静電的に付着させた粒子付着体を形成し、複合粒子形成工程では、シランカップリング剤の作用によって、コア粒子の表面に微粒子を固定化させた複合粒子を形成する。この複合粒子は、上述した各物性を併せもつことができる。
従って、本発明に係る複合粒子の製造方法によれば、微粒子のコア粒子上への付着強度が高く、良好な帯電量、高い流動性を確保できる複合粒子を製造することができる。
【0023】
本発明に係るトナー用外添剤によれば、上述した複合粒子を含む。従って、このトナー用外添剤は、微粒子のコア粒子上への付着強度が高く、良好な帯電量、高い流動性を確保できるので、従来よりも高い劣化耐性をもち、長期間にわたってトナー用外添剤とトナー粒子との付着性を維持でき、転写効率を高い状態で維持できると共に、トナー用外添剤がトナー粒子から遊離しにくいので、部材汚染に起因する画像欠陥を抑制し、安定した画像品質を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】走査型電子顕微鏡による画像(SEM画像)に基づいて複合粒子の外観を示す模式図である。
図2図1に示した複合粒子の表面構造の一部を模式的に示す拡大断面図である。
図3図1に示した複合粒子の平均粒子径の求め方を説明するための模式図である。
図4図1に示した複合粒子の一部を構成することとなる粒子の平均粒子径の求め方を説明するための模式図である。
図5】複合粒子の体積抵抗を測定するための回路図である。
図6】複合粒子の表面抵抗を測定するための回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、具体的に説明する。尚、以下の実施の形態は、本発明を具体化する際の一形態であって、本発明をその範囲内に限定するものではない。
【0026】
実施の形態1.
A.複合粒子
この実施の形態1による複合粒子は、コア粒子と微粒子とを備える。コア粒子の主成分は有機材料であり(以下、このコア粒子を有機コア粒子という場合がある)、微粒子はコア粒子上に存在し、微粒子の主成分は無機材料である(以下、この微粒子を無機微粒子という場合がある)。また、複合粒子は、次の物性(1)〜(6)を併せもつ。
物性(1):有機コア粒子の平均粒子径が80nm以上300nm以下である。
物性(2):有機コア粒子の平均粒子径の変動係数が2%以上10%以下である。
物性(3):無機微粒子の平均粒子径が5nm以上30nm以下であり、且つ有機コア粒子の平均粒子径に対する無機微粒子の平均粒子径の比(以下、無機微粒子の平均粒子径/有機コア粒子の平均粒子径という)が0.016以上0.25以下である。
物性(4):複合粒子の平均粒子径が90nm以上350nm以下である。
物性(5):複合粒子の体積抵抗ρv=α1×10β1(Ω・cm)および表面抵抗ρs=α2×10β2(Ω/cm)における乗数の比率β1/β2が0.7以上1.4以下である。
物性(6):複合粒子が1重量%になるように水に分散させた複合粒子分散液に、出力110W、周波数31kHzの条件で、超音波を30分間照射する前後における、有機コア粒子上に存在する無機微粒子の個数変化が0.5%以上5%以下である。
尚、本明細書においては、平均粒子径等の寸法を物性に含めるものとする。
【0027】
有機コア粒子を形成する有機材料としては、複合粒子の粒子中心を構成する有機コア粒子に求められる機械強度を有する材料であることが望ましく、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステルおよびこれらの共重合体や、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
無機微粒子を形成する無機材料としては、複合粒子の用途や有機コア粒子を形成する有機材料の種類などを考慮して、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン(チタニア)、酸化ジルコニウム(ジルコニア)、酸化アルミニウム(アルミナ)、酸化セリウム、酸化タングステン、酸化アンチモン、酸化銅、酸化テルル、酸化マンガン、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ベリリウム、酸化鉛、酸化ビスマス、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化炭素などの無機材料から適宜、選択することができる。特に、無機微粒子を形成する無機材料としては、シリカ、チタニア、酸化セリウムおよびチタン酸ストロンチウムからなる群から選択されることが望ましいが、これらに限定されるものではない。
【0029】
ここで、複合粒子、有機コア粒子および無機微粒子の形状、並びに、有機コア粒子と無機微粒子の関係を説明する。
図1はSEM画像に基づいて複合粒子の外観を示す模式図であり、図2図1に示した複合粒子の表面構造の一部を模式的に示す拡大断面図である。
複合粒子は、例えば、図1に示すように、全体として球形状を有する、いわゆるラズベリー型粒子であり、その粒子中心を構成する、大粒子径を有する1個の有機コア粒子Aと、その有機コア粒子Aの表面に固定化して合一した、有機コア粒子Aよりも小粒子径を有する複数個の無機微粒子Bとから概略構成されている。
【0030】
有機コア粒子Aおよび無機微粒子Bは、いずれも、後述する製造方法により製造されるものであるので、球形状を有している。
有機コア粒子Aの表面には、図1に示すように、複数個の無機微粒子Bが有機コア粒子Aの表面の少なくとも一部を構成するような態様で固定化されている。この態様では、有機コア粒子Aの表面の少なくとも一部を構成する複数個の無機微粒子Bは、有機コア粒子Aの表面全体において偏ることなく、均等に固定化されることが望ましい。有機コア粒子Aの表面の一部に偏って不均等に固定化した無機微粒子Bの存在によって、複合粒子の特性に偏りをもたらすことなる点で、また、複合粒子が球形状を維持できないために、複合粒子に求められる流動性を低下させる可能性がある点で好ましくないからである。また、有機コア粒子Aの表面の一部に偏らない限り、有機コア粒子Aの表面の一部は、無機微粒子Bが露出した状態であってもよい。
【0031】
有機コア粒子Aは、その表面に微粒子を固定化させる前段階において、上述の物性(1)等の条件を満たすのであれば、図1においてC1、C2、C3・・・Cn(nは1以上の整数)で示すように、異なる種類の有機材料を主成分とする有機粒子が合一し全体として一つの有機コア粒子を構成するものであってもよい。また、一つの有機コア粒子を構成するために合一する各粒子が異なる粒子径を有するものであってもよい。
【0032】
上述の物性(1)〜(4)は、複合粒子、有機コア粒子A、無機微粒子Bの各平均粒子径に関わるものであり、これらの平均粒子径は、いずれも、SEM画像観察により求められる。
【0033】
以下、SEM画像観察による複合粒子の平均粒子径の求め方を説明する。
図3図1に示した複合粒子の平均粒子径の求め方を説明するための模式図であり、図4図1に示した複合粒子の一部を構成することとなる粒子の平均粒子径の求め方を説明するための模式図である。
SEM画像観察では、SEM画像の視野を変えながら、合計100個分の複合粒子についてのSEM画像をそれぞれ二値化処理し、得られた複合粒子の二値化処理画像を得る。このような二値化処理画像を基にして、図3に示すように、複合粒子断面の円形の輪郭を有機コア粒子Aの表面に相当するものと仮定した場合、有機コア粒子Aの表面は、その円形の輪郭の直径DA(有機コア粒子Aの平均粒子径)を有する想定最大内接円(図3において内側の破線で示す)で示すことができる。この想定最大内接円からはみ出した略円形部分は、有機コア粒子Aの表面上に存在する無機微粒子Bに相当することになる。従って、想定最大内接円からはみ出した略円形部分のうち想定最大内接円から最も離れた部分を複合粒子の外表面に相当するものとする仮定することができるので、複合粒子の表面は、想定最大内接円から最も離された部分の直径D(複合粒子の平均粒子径)を有する想定最大外接円(図3において外側の破線で示す)で示すことができる。
また、有機コア粒子Aおよび無機微粒子Bの複合化前の平均粒子径の求め方を説明する。
この場合も、上述と同様に、SEM画像観察を利用し、そのSEM画像の視野を変えながら、合計100個分の有機コア粒子Aまたは無機微粒子BについてのSEM画像をそれぞれ二値化処理し、得られた有機コア粒子Aまたは無機微粒子Bの二値化処理画像を得る。このような二値化処理画像から、有機コア粒子Aの直径DAまたは無機微粒子Bの直径DBを求めることができる。すなわち、二値化処理画像を基にした図4に示すように、粒子表面に相当する略円形部分内に少なくとも2本の弦X、Yを任意に引く。これら2本の弦X、Yに対する直交線(垂線)の交点と、略円形部分のうち交点から最も離された位置との距離は、図4に示すように、有機コア粒子Aの半径DA/2または無機微粒子Bの半径DB/2に相当するものとすることができるので、これらの半径から有機コア粒子Aの直径DA(有機コア粒子Aの平均粒子径)または無機微粒子Bの直径DB(無機微粒子Bの平均粒子径)を求めることができる。
【0034】
以下、物性(1)〜(4)を個別に説明する。
物性(1)の有機コア粒子Aの平均粒子径の数値範囲は、例えば、複合粒子をトナー用外添剤などの構成成分として使用する場合に実用上適切な、無機微粒子Bの有機コア粒子A上への固定化前における有機コア粒子Aの粒度範囲を示している。
有機コア粒子Aの平均粒子径は、上述のように、80nm以上300nm以下であり、好ましくは、80nm以上200nm以下である。
ここで、有機コア粒子Aの平均粒子径が80nmを下回ると、粒子径が小さなものも混在することになるため、小さな粒子径の有機コア粒子を含む複合粒子が、例えば、大粒子径のトナー用外添剤として求められるスペーサ効果を十分に発揮できない点で好ましくない。有機コア粒子Aの平均粒子径が300nmを上回ると、粒子径の極めて大きなものも混在することになるため、無機微粒子Bの平均粒子径を含めた複合粒子の平均粒子径が、例えば、トナー用外添剤の構成成分として大きくなりすぎることから、トナー用外添剤のトナー粒子への付着力が小さくなる点で好ましくない。
【0035】
物性(2)の有機コア粒子Aの平均粒子径の変動係数の数値範囲は、例えば、複合粒子をトナー用外添剤などの構成成分として使用する場合に実用上適切な、無機微粒子Bの有機コア粒子A上へ固定化前における有機コア粒子Aの平均粒子径のばらつきの範囲を示している。この変動係数は有機コア粒子Aの粒子径の測定値分布の標準偏差÷平均粒子径×100より算出される。
ここで、有機コア粒子Aの平均粒子径の変動係数が10%を上回ると、有機コア粒子Aの粒子径のばらつきが大きすぎるため、例えば、複合粒子をトナー用外添剤などの構成成分として使用する場合に、複合粒子のトナーへの付着性が安定せず、トナーの特性が安定しないという不都合が生じる点で好ましくない。
【0036】
物性(3)の無機微粒子Bの平均粒子径/有機コア粒子Aの平均粒子径の数値範囲は、例えば、複合粒子をトナー用外添剤などの構成成分として使用する場合に実用上適切な、無機微粒子Bの有機コア粒子A上への固定化前における無機微粒子Bの平均粒子径と有機コア粒子Aの平均粒子径とのバランスを示している。
物性(3)の無機微粒子の粒子径は5nm以上30nm以下であり、且つ無機微粒子Bの平均粒子径/有機コア粒子Aの平均粒子径は、上述のように、0.016以上0.25以下であり、好ましくは、0.018以上0.2以下である。
ここで、無機微粒子の粒子径が5nmを下回ると1次粒子の状態で存在することが困難になり、コア粒子状に均一に存在させることができない。また、30nmを上回ると、微粒子がストレスを受けた際に離脱しやすくなり、トナー用外添剤などとして流動性を確保できなくなる点で好ましくない。また、無機微粒子Bの平均粒子径/有機コア粒子Aの平均粒子径が0.016を下回ると、有機コア粒子Aの平均粒子径に対して無機微粒子Bの平均粒子径が極めて小さいため、両粒子の大きさのバランスが悪く、有機コア粒子Aの平均粒子径が80nm近傍の値をとる場合の複合粒子が、例えば、スペーサ効果を発揮できる程度の大粒子径となりにくい点で好ましくない。無機微粒子Bの平均粒子径/有機コア粒子Aの平均粒子径が0.25を上回ると、有機コア粒子Aの平均粒子径に対して無機微粒子Bの平均粒子径が極めて大きいため、両粒子の大きさのバランスが悪く、コア粒子と微粒子がストレスを受けた際に離脱しやすくなり、トナー用外添剤などとして流動性を確保できなくなる点で好ましくない。
【0037】
物性(4)の複合粒子の平均粒子径の数値範囲は、例えば、複合粒子をトナー用外添剤などの構成成分として使用する場合に実用上適切な複合粒子の粒度範囲を示している。
物性(4)の複合粒子の平均粒子径は、上述のように、90nm以上350nm以下であり、好ましくは、90nm以上250nm以下である。
ここで、複合粒子の平均粒子径の数値範囲が90nmを下回ると、複合粒子が小さすぎるため、例えば、その複合粒子がスペーサ効果を発揮しにくい点で好ましくない。複合粒子の平均粒子径の数値範囲が350nmを上回ると、例えば、その複合粒子がトナー用外添剤などの構成成分として大きすぎる点で好ましくない。
【0038】
尚、物性(1)〜(4)に関わる複合粒子、有機コア粒子A、無機微粒子Bの各平均粒子径は、上述したSEM画像観察以外の方法(例えば、動的光散乱法)によっても求めることができる。本発明の複合粒子以外の特定の複合粒子について、上述したSEM画像観察以外の方法によって求められた平均粒子径が物性(1)〜(4)の数値範囲と異なる場合であっても、当該特定の複合粒子について、上述したSEM画像観察によって求められた平均粒子径が物性(1)〜(4)の数値範囲に含まれるときは、当該特定の複合粒子は物性(1)〜(4)をもつものとして認識することができる。
【0039】
物性(1)〜(4)を併せもつ複合粒子は、上述のように、さらに、複合粒子の体積抵抗ρv=α1×10β1(Ω・cm)および表面抵抗ρs=α2×10β2(Ω/cm)における乗数の比率β1/β2が0.7以上1.4以下であるという物性(5)を有する。ここで、乗数の比率β1/β2は、抵抗比ρrという場合がある。α、αは1以上10未満の実数であり、β、βは0以上20以下の整数であり、α、α、β、βはそれぞれ同じ数値でもあってもよく、また、異なる数値であってもよい。
物性(5)の複合粒子の抵抗比ρrの数値範囲は、例えば、複合粒子をトナー用外添剤などの構成成分として使用する場合に実用上適切な、複合粒子の体積抵抗ρvと、複合粒子の表面抵抗ρsとのバランスを示している。複合粒子の体積抵抗ρvは、有機コア粒子Aを形成する有機材料および、微粒子Bを形成する無機材料の電気抵抗に依存するものであり、複合粒子の表面抵抗ρsは、複合粒子の表面を形成する材料に特有の電気抵抗に依存するものである。従って、抵抗比ρrは、両抵抗値のバランスによって決まる。複合粒子の体積抵抗ρvと複合粒子の表面抵抗ρsとのバランスが適切であり、抵抗比ρrが上述の数値範囲にあれば、複合粒子に帯電した電荷が複合粒子の表面全体から他の粒子等へ均一に移行するので、その複合粒子は、帯電速度、帯電量(μC/g)、その安定性などの良好な帯電特性をもつことになる。
【0040】
物性(5)の複合粒子の体積抵抗ρvおよび表面抵抗ρsは、上述のように、β1/β2が0.7以上1.4以下である。このような複合粒子では、その体積抵抗ρvは、有機コア粒子Aを形成する有機材料および、無機微粒子Bを形成する無機材料の各電気抵抗に依存し、その表面抵抗ρsは、複合粒子の表面を形成する材料に特有の電気抵抗に依存する。無機微粒子Bを形成する無機材料の電気抵抗は、有機コア粒子Aを形成する有機材料よりも低いので、上述した構成を有する複合粒子では、体積抵抗ρvが高く、表面抵抗ρsが低くなる。一般に、粒子表面で帯電した電荷は、粒子内部に入り、もしくは粒子表面を伝わって、その粒子の別の表面(例えば、複合粒子が外添されたトナー粒子との接触面)から、他の粒子へ移行すると考えられる。有機コア粒子Aと無機微粒子Bを備える複合粒子では、その表面で帯電した電荷は、複合粒子内部(有機コア粒子Aの部分)に入らず、複合粒子の表面(主に、無機微粒子Bの表面部分)から外部へとリークされるため、複合粒子の表面電荷が少なく、複合粒子の内部電荷が多くなり、複合粒子が保持する電荷の均一性が損なわれると推測される。このため、体積抵抗ρvと表面抵抗ρsとの関係が物性(5)の適切な数値範囲にあることが重要となる。
ここで、抵抗比ρrが0.7を下回ると、複合粒子の表面抵抗ρsが体積抵抗ρvに対して極めて小さいため、複合粒子の表面電荷が外部へとリークされやすく、複合粒子の帯電量を適切な範囲に維持できない点で好ましくない。抵抗比ρrが1.4を上回ると、逆に、複合粒子の表面抵抗ρsが体積抵抗ρvより極めて大きいため、例えば、複合粒子をトナー用外添剤の構成成分として使用する場合に、複合粒子の表面において過剰帯電(チャージアップ)を生じやすく、画像劣化を招く可能性がある点と、表面電荷の外部へのリークなどにより複合粒子が保持する電荷の均一性が損なわれ、複合粒子の帯電量を適切な範囲に維持できない点で好ましくない。
【0041】
ここで、複合粒子の抵抗比ρrを求めるために必要となる複合粒子の体積抵抗ρv(Ω・cm)および表面抵抗ρs(Ω/cm)の測定方法を説明する。
図5は、複合粒子の体積抵抗を測定するための回路図であり、図6は複合粒子の表面抵抗を測定するための回路図である。
<体積抵抗の測定>
先ず、メタノール中に複合粒子および熱硬化型エポキシ樹脂を加え、熱硬化型エポキシ樹脂中に複合粒子を分散し混練して混練物を得る。その後、混練物を、乳棒および乳鉢により所定時間、解砕してゲル状物質を得る。得られたゲル状物質を型に流し、加圧して成型し、その成型物を乾燥させ、複合粒子およびエポキシ樹脂の複合物からなるペレットを得る。
ペレットの一面に主電極を、その反対面に対電極をそれぞれ銀ペーストにより取り付け、主電極を取り付けた一面に主電極を囲む位置にガード電極を銀ペーストにより取り付け、図5に示す体積抵抗測定用回路を構成し、ペレットの体積抵抗を求める。複合粒子およびエポキシ樹脂のペレット中への配合比率を変えて同様の測定を行い、エポキシ樹脂の比率に対する体積抵抗の変化に基づく検量線を引き、この検量線が交わる座標軸の切片の値(エポキシ樹脂の比率が0%のときの体積抵抗)を複合粒子の体積抵抗(Ω・cm)として算出する。
<表面抵抗の測定>
表面抵抗についても、上述と同様のペレットを用いる。ペレットの一面に主電極および対電極を、その反対面にガード電極をそれぞれ銀ペーストにより取り付け、図6に示す表面抵抗測定用回路を構成し、ペレットの表面抵抗を求める。
この場合においても、複合粒子およびエポキシ樹脂のペレット中への配合比率を変えて同様の測定を行い、エポキシ樹脂の比率に対する表面抵抗の変化に基づく検量線を引き、この検量線が交わる座標軸の切片の値(エポキシ樹脂の比率が0%のときの表面抵抗)を複合粒子の表面抵抗(Ω/cm)として算出する。
【0042】
尚、物性(5)の複合粒子の抵抗比ρrは、図5および図6に示した測定回路を用いて測定する方法以外の方法によっても求めることができる。本発明の複合粒子以外の特定の複合粒子について、図5および図6に示した測定回路を用いて測定する方法以外の方法によって求められた抵抗比ρrが物性(5)の数値範囲と異なる場合であっても、当該特定の複合粒子について、図5および図6に示した測定回路を用いて測定する方法によって求められ抵抗比ρrが物性(5)の数値範囲に含まれるときは、当該特定の複合粒子は物性(5)をもつものとして認識することができる。
【0043】
また、物性(5)の複合粒子の抵抗比ρrが上述した数値範囲にあれば、その複合粒子は、帯電速度、帯電量(μC/g)、その安定性などの良好な帯電特性をもつ。
複合粒子の良好な帯電量は、−300以上−100以下であり、好ましくは、−250以上−150以下である。
複合粒子の帯電量は、以下のような方法によって測定することができる。
先ず、フタ付きのガプラスチック容器に、スチレン/メチルメタクリレート樹脂で被覆されたフェライト粒子を秤量し、その後、フェライト粒子上に載置した状態で複合粒子を秤量する。その後、常温常湿(23℃/50%RH)下で放置して24時間シーズニングした後、ターブラーミキサーで3分間撹拌振盪することにより、複合粒子に対してフェライト粒子との衝突による摩擦帯電を生じさせる負荷を与える。この粒子の帯電量(μC/g)を飛翔式帯電量測定装置(電界飛翔式帯電量測定装置II−DC電界(商品名)、ディーアイティー株式会社製)で測定する。
【0044】
物性(1)〜(5)を併せもつ複合粒子は、上述のように、さらに、複合粒子が1重量%になるように水に分散させた複合粒子分散液に、出力110W、周波数31kHzの条件で、超音波を30分間照射する前後における、有機コア粒子Aの表面存在する無機微粒子Bの個数変化が0.5%以上5%以下であるという物性(6)を有する。
物性(6)の超音波照射前後における、有機コア粒子Aの表面に固定化無機微粒子Bの個数変化の数値範囲は、例えば、複合粒子をトナー用外添剤などの構成成分として使用する場合に実用上適切な、無機微粒子Bの有機コア粒子A上への付着強度を示している。
物性(6)の個数変化は、上述のように、0.5%以上5%以下である。
ここで、個数変化が5%を上回ると、無機微粒子Bの有機コア粒子A上への付着強度が低く、無機微粒子Bが脱離しやすくなり、例えば、複合粒子をトナー用外添剤などの構成成分として使用する場合にトナー劣化を招き、画像劣化を招く可能性がある点で好ましくない。
【0045】
ここで、物性(6)の個数変化の求め方を説明する。
先ず、乾燥させた状態の複合粒子100個について、上述したSEM画像観察により有機コア粒子Aの表面に存在する無機微粒子Bの個数を計測する(超音波照射前における個数)。
一方、同じ複合粒子を用い、その複合粒子が1重量%になる配合割合で、水に分散させて複合粒子分散液を調製する。その後、複合粒子分散液に、出力110W、周波数31kHzの条件で、超音波を30分間照射する。その後、複合粒子分散液を遠心沈降により固液分離し、その沈降物を分取し、その沈降物を乾燥させる。この乾燥させた固形物中の100個の複合粒子について、上述したSEM画像観察により有機コア粒子Aの表面に存在する無機微粒子Bの個数を計測する(超音波照射後における個数)。
このようにして得られた超音波照射前における個数と超音波照射後における個数とを比較して超音波照射前後における個数変化(%)を求める。
物性(6)の個数変化の測定条件は、上述のように、出力110W、周波数31kHzの超音波の照射対象となる複合粒子分散液は、複合粒子1重量%水分散液であり、超音波の照射時間は30分間である。超音波の出力、周波数、照射時間は、例えば、複合粒子をトナー用外添剤などの構成成分として使用する場合に受ける可能性のあるせん断力などのストレスに相当する負荷を複合粒子に与えることができるように決められる。また、複合粒子1重量%水分散液中の複合粒子の存在量は、分散液中の複合粒子が過密になりすぎない程度に、且つ、分散液中の複合粒子が希薄になりすぎない程度に、複合粒子を分散液中に分散させ、超音波の照射効率を妨げない点を考慮して設定される。従って、上述の測定条件によって個数変化を求めることは、例えば、複合粒子をトナー用外添剤などの構成成分として使用する場合において、実質的な耐久試験に相当するものであり、無機微粒子Bの有機コア粒子A上への付着強度の程度を比較的正確に、且つ、短時間に知ることが可能となる。
【0046】
尚、物性(6)の個数変化は、上述した超音波照射による耐久試験以外の耐久試験(例えば、後述するターブラーミキサーを用いた撹拌振盪による耐久試験)と、上述したSEM画像観察による求め方以外の求め方(例えば、TEM画像を用いた顕微鏡観察による求め方)を組み合わせることによって求めることができる。本発明の複合粒子以外の特定の複合粒子について、上述した超音波照射による耐久試験以外の耐久試験と上述したSEM画像観察による求め方以外の求め方を組み合わせた方法によって求められた個数変化が物性(6)の数値範囲と異なる場合であっても、当該特定の複合粒子について、上述した超音波照射による耐久試験と、上述したSEM画像観察による求め方を組み合わせることによって求められた個数変化が物性(6)の数値範囲に含まれるときは、当該特定の複合粒子は物性(6)をもつものとして認識することができる。
【0047】
上述した物性(1)〜(6)を併せもつ複合粒子は、さらに、比誘電率が2以上300以下であるという物性(以下、物性(7)という)を有することが望ましい。
物性(7)の比の数値範囲は、例えば、複合粒子をトナー用外添剤などの構成成分として使用する場合に実用上適切な複合粒子の比誘電率を示している。複合粒子の比誘電率は、真空の誘電率に対する複合粒子の誘電率の比である。つまり、真空の誘電率をεとし、複合粒子の誘電率をεとした場合、複合粒子の比誘電率εrは、ε/ε=εrの関係式を満たす。また、複合粒子の比誘電率は、上述した複合粒子の体積抵抗ρvおよび表面抵抗ρsの変化に応じて変化する。
物性(7)の比誘電率は、上述のように、2以上300以下であり、好ましくは、2以上200以下である。
ここで、比誘電率が2を下回ると、複合粒子が高い絶縁性を示すため、複合粒子の帯電量が少なくなる点で好ましくない。比誘電率が300を上回ると、複合粒子が比較的高い導電性を示すため、電荷がリークしてしまう点で好ましくない。
複合粒子の比誘電率εrを求めるために必要な複合粒子の誘電率εは、上述した体積抵抗、表面抵抗の測定に用いられるペレットを用い、例えば、誘電率測定装置(E4991A RFインピーダンス/マテリアル・アナライザ(商品名)、キーサイトテクノロジー合同会社製)を用いて以下のような方法で求めることができる。
上述のペレット中の複合粒子およびエポキシ樹脂の配合比率を変えて上述の誘電率測定装置で誘電率を測定し、エポキシ樹脂の比率に対する誘電率の変化に基づく検量線を引き、この検量線が交わる座標軸の切片の値(エポキシ樹脂の比率が0%のときの誘電率)を複合粒子の誘電率ε(F/m)として求める。その後、真空の誘電率ε(約8.854×10−12F/m)に対する複合粒子の誘電率εの比(複合粒子の比誘電率:εr=ε/ε)を算出する。
【0048】
物性(7)の比誘電率は、上述した体積抵抗、表面抵抗の測定に用いられるペレット以外のペレットと上述した誘電率測定装置以外の装置を組み合わせることによって求めることができる。本発明の複合粒子以外の特定の複合粒子について、上述したペレット以外のペレットと上述した装置以外の装置を組み合わせた方法によって求められた比誘電率が物性(7)の数値範囲と異なる場合であっても、当該特定の複合粒子について、上述したペレットと上述した装置を組み合わせることによって求められた比誘電率が物性(7)の数値範囲に含まれるときは、当該特定の複合粒子は物性(7)をもつものとして認識することができる。
【0049】
上述した物性(1)〜(6)を併せもつ複合粒子、または、上述した物性(1)〜(7)を併せもつ複合粒子は、さらに、有機コア粒子Aの表面における無機微粒子Bの被覆率が5%以上68%未満であるという物性(以下、物性(8)という)を有することが望ましい。
物性(8)の被覆率は、上述のように、5%以上68%未満であり、好ましくは、5%以上50%以下である。
ここで、被覆率が5%を下回ると、複合粒子の表面、つまり、有機コア粒子Aの表面上の無機微粒子Bによって形成される凹凸形状が十分ではないために、例えば、複合粒子をトナー用外添剤などの流動性向上剤として使用する場合、複合粒子が転がることによって、他の複合粒子を構成する有機コア粒子Aとトナー表面に接触する回数が増えることから、複合粒子の流動性が十分得られない点で好ましくない。また、被覆率が68%を上回る場合、有機コア粒子Aの表面上において無機微粒子B同士が重なり合うことになるため、有機コア粒子Aの表面に接触せずに、無機微粒子B上に重なった無機微粒子Bの付着強度が低下することになり、脱離しやすく、微粉の原因となる点で好ましくない。
【0050】
物性(8)の被覆率は、上述したSEM画像観察から求めることができる。
先ず、上述した平均粒子径を求める場合と同様にして、SEM画像の視野を変えながら、合計100個の複合粒子についてのSEM画像を得る。その後、得られたSEM画像の複合粒子の投影画像に対して四角形領域を設定し、その領域内で、有機コア粒子Aの表面において無機微粒子Bが被覆する面積を求め、その領域の面積に対する無機微粒子Bの被覆率(%)を求める。
【0051】
物性(8)の被覆率は、上述したSEM画像観察以外の方法によっても求めることができる。本発明の複合粒子以外の特定の複合粒子について、上述したSEM画像観察以外の方法によって求められた被覆率が物性(8)の数値範囲と異なる場合であっても、当該特定の複合粒子について、上述したSEM画像観察によって求められた被覆率が物性(8)の数値範囲に含まれるときは、当該特定の複合粒子は物性(8)をもつものとして認識することができる。
【0052】
上述の物性(1)〜(6)を併せもつ複合粒子、または、上述の物性(1)〜(6)に物性(7)あるいは物性(8)を併せもつ複合粒子は、例えば、図2に示すように、有機コア粒子Aの表面および無機微粒子Bの表面を被覆する無機材料層Nをさらに備えることが望ましい。
無機材料層Nは、有機コア粒子Aと相互作用し、且つ、塩基性条件下で、無機微粒子Bの表面に存在する水酸基(OH基)と結合(縮合)することにより形成される。このような物質としてはシランカップリング剤が好適に用いられ、塩基性条件下では、無機微粒子Bの表面上の水酸基(OH基)およびシランカップリング剤自身がネットワーク構造を構成し、内部にケイ素(Si)をもった、シリカの非晶質構造に類似する構造を有する無機材料層Nが形成される。
このように、無機材料層Nは、有機コア粒子Aの表面および無機微粒子Bの表面を被覆するネットワーク構造を有するので、無機微粒子Bの有機コア粒子A上への付着強度を高める役割と、ケイ素(Si)を含むことでシリカの非晶質構造に類似する構造を有するので、シリカのような無機材料から形成される被膜と同程度の電気抵抗を示すことから、複合粒子の体積抵抗ρvおよび表面抵抗ρsのバランスを調整する役割と、を担う。
無機材料層Nの形成に用いられるシランカップリング剤としては、式R−Si(OR(但し、Rは、酸素および窒素のいずれか片方もしくは両方を含む炭素原子数1〜6の炭化水素基または酸素および窒素を含まない炭素原子数1〜18の炭化水素基であり、Rは、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である)で示されるシランカップリング剤のうち、上述のケイ素を含有するネットワーク構造を形成できる化合物が挙げられる。具体的には、無機材料層Nの形成に用いられるシランカップリング剤としては、メタクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル(以下、MAPTMSという)、アクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル、トリエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)シラン、オクタデシルトリエトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
このようなシランカップリング剤は、有機コア粒子Aを形成する有機材料の種類に応じて適宜選択される。例えば、有機コア粒子Aを形成する有機材料がアクリル樹脂またはメタクリル樹脂であれば、アクリル樹脂またはメタクリル樹脂の官能基と相互作用する反応性結合基(例えば、メトキシ基などのアルコキシ基)を有するシランカップリング剤が選択される。当該有機材料がポリエステル樹脂であれば、ポリエステル樹脂の官能基と相互作用する反応性結合基(イソシアネート基)を有するシランカップリング剤が選択される。当該有機材料がエポキシ樹脂であれば、エポキシ樹脂の官能基と相互作用する反応性結合基(エポキシ基)を有するシランカップリング剤が選択される。当該有機材料がウレタン樹脂であれば、ウレタン樹脂の官能基と相互作用する反応性結合基(ウレタン基)を有するシランカップリング剤が選択される。ここで、相互作用とは、有機材料の種類に応じて異なるが、有機材料の官能基とシランカップリング剤の反応性結合基との間の親和性に基づき、ネットワーク構造を形成し、且つ、維持するのに十分な分子間力をいう。
塩基性条件は、pH8以上pH13以下であり、好ましくは、pH8以上pH12以下である。
塩基性条件を得るために用いられる塩基性物質としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0053】
上述の物性を併せもつ実施の形態1による複合粒子は、ヘテロ凝集により、負電荷に帯電した有機コア粒子A上に正電荷に帯電した無機微粒子Bを存在させ、両粒子を静電的に付着させることで、有機コア粒子Aの表面に無機微粒子Bを合一して複合化して得た粒子付着体の表面に、上述のシランカップリング剤の作用により形成される無機材料層Nによって、有機コア粒子Aの表面および無機微粒子Bの表面を被覆して有機コア粒子Aの表面に無機微粒子Bを固定化させてなるものである。このような複合粒子に対応する実施例は、後述する実施例1−1〜1−17である。
また、このように複合化時に、全体として正電荷に帯電している有機コア粒子Aの表面に、ヘテロ凝集により、負電荷に帯電した有機微粒子を存在させ、静電的に付着させることができる。そして、有機コア粒子Aの表面に無機微粒子Bおよび有機微粒子を合一して複合化して得た粒子付着体の表面に、上述のシランカップリング剤の作用により形成される無機材料層Nによって、有機コア粒子A、無機微粒子Bおよび有機微粒子の各表面を被覆して有機コア粒子Aの表面に無機微粒子Bおよび有機微粒子に存在させた複合粒子を形成することができる。つまり、この複合粒子は、有機コア粒子Aと、この有機コア粒子Aの表面上に存在する無機微粒子Bおよび有機微粒子(図示せず)を合一してなるものである。このような複合粒子に対応する実施例は、後述する実施例3−1〜3−6である。
【0054】
B.複合粒子の製造方法
この複合粒子の製造方法は、有機コア粒子Aと、無機微粒子Bとを備える複合粒子の製造方法において、粒子付着体形成工程と、複合粒子形成工程を含む。
尚、この製造方法は、上述のAで説明した物性をもつ複合粒子を製造することができる製造方法の一例である。
以下、工程ごとに説明する。
【0055】
1.粒子付着体形成工程
この粒子付着体形成工程は、有機コア粒子Aと無機微粒子Bとを含む分散液(以下、有機無機粒子分散液という場合がある)から有機コア粒子Aの表面に無機微粒子Bが付着した粒子付着体を形成する工程である。この粒子付着体は、次の複合粒子形成工程によって得られる複合粒子を製造する前に形成される中間生成物である。
先ず、粒子付着体形成工程に先立ち、その事前準備として、以下のようにして、有機無機粒子分散液を調製する。
【0056】
有機無機粒子分散液を調製するために、その事前準備として、有機コア粒子Aおよび無機微粒子Bを個別に形成する。
【0057】
(イ)有機コア粒子Aの形成
有機コア粒子Aは、以下に説明するように、(i)有機コア粒子Aの原材料の準備、(ii)有機コア粒子Aの合成、(iii)反応残渣の除去の各ステップを経て、形成される。
【0058】
(i)有機コア粒子Aの原材料の準備
原材料として、有機コア粒子Aを形成する有機材料の出発物質、複合化助剤、反応開始剤、粒子径制御剤を準備する。
有機材料の出発物質としては、上述のAで説明した有機材料のモノマー、オリゴマーなどが挙げられる。有機材料がアクリル樹脂材料であれば、出発物質としては、メタクリル酸メチル(MMA)、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレートなどのアルコシキ基を有するモノマー、オリゴマーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
出発物質中のアルコキシ基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
有機材料がアクリル樹脂材料であれば、複合化助剤としては、メタクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル(以下、MAPTMSという)、アクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル、アクリル酸3−(トリエトキシシリル)プロピル、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシランなどのアルコシキ基を有するモノマー、オリゴマーなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
複合化助剤中のアルコキシ基としては、メチル基、エチル基、プロピル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
有機材料がアクリル樹脂材料であれば、反応開始剤としては、過硫酸カリウム(以下、KPSという)、過硫酸ナトリウム、アゾビスイソブチロニトリルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
粒子径制御剤としては、p−スチレンスルホン酸ナトリウム(以下、NaSSという)、p−スチレンスルホン酸アンモニウムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0059】
(ii)有機コア粒子Aの合成
準備した出発物質等を用いて、有機コア粒子Aを合成する。
例えば、冷却機、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、所定量の水を加えた後、反応容器内の雰囲気を窒素ガス雰囲気に置換して酸素を除去する。その後、MMA、NaSSおよびMAPTMSを加えて撹拌した後、混合液に所定量のKPSを加え、その混合液中で、MMAとMAPTMSを重合反応させ、MMAをMAPTMSによって架橋し、粒子径が制御されたポリメタクリル酸メチル(以下、PMMAという)粒子を合成し、そのPMMA粒子を分散した分散液を得る。
反応系への水、MMA、MAPTMS、KPSの各配合量は、有機コア粒子Aに求められる機械強度などを考慮して決められ、NaSSの配合量は、有機コア粒子Aに求められる粒子径を考慮して決められる。
重合反応温度は、0℃以上150℃以下であり、好ましくは、25℃以上80℃以下である。また、重合反応時間は、15分以上24時間以下であり、好ましくは、1時間以上16時間以下である。
【0060】
(iii)分散液中の反応残渣の除去
分散液中のPMMA粒子を、例えば、遠心沈降による固液分離、上澄み液のデカンテーション、所定量の蒸留水の添加の一連の操作を繰り返して反応残渣を除去し、最後に、所定量の水を加えて、PMMA粒子(有機コア粒子A)水分散液を得る。
【0061】
(ロ)無機微粒子Bの形成
無機微粒子Bは、(i)無機微粒子Bの原材料の準備、(ii)含有成分の調製、(iii)無機微粒子Bの合成および反応残渣の除去の各ステップを経て、形成される。
【0062】
(i)無機微粒子Bの原材料の準備
原材料として、無機微粒子Bを形成する無機材料の出発物質、有機溶媒、触媒を準備する。
無機材料の出発物質としては、上述のAで説明した無機材料中の無機物(例えば、ケイ素、チタン、ジルコニウム、アルミニウム)を含む化合物などが挙げられる。無機材料がシリカであれば、出発物質としては、例えば、式:RSi(OR、式:RSi(OR、式:Si(OR(但し、各式における各Rは炭素原子数1〜6の1価炭化水素基であり、RおよびRはいずれも炭素原子数1〜20の炭化水素基である)で示されるシラン化合物およびその加水分解縮合物などが挙げられる。
上述のシラン化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、テトラエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、プロピルメチルジエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシランなどのシラン化合物(モノマー成分)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。上述のシラン化合物の加水分解縮合物としては、上述のシラン化合物中の加水分解性基(メトキシ基、エトキシ基など)を縮合して得られる加水分解縮合物(ダイマーやオリゴマーなど)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0063】
有機溶媒としては、プロトン性溶媒、非プロトン性溶媒などが挙げられるが、これに限定されるものではない。プロトン性溶媒としては、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノールなどが挙げられる。非プロトン性溶媒としては、アセトニトリル、アセトン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、トルエンなどが挙げられる。
【0064】
触媒としては、アンモニア、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基性化合物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
(ii)含有成分の調製
出発物質としてのシラン化合物または加水分解縮合物(以下、有機ケイ素化合物という)を含む成分(以下、ケイ素含有成分という)と、触媒を含む成分(以下、触媒含有成分という)を個別に調製する。
先ず、所定量の有機ケイ素化合物、有機溶媒を混合してケイ素含有成分を調製する。
一方、所定量の塩基性化合物、溶媒を混合して触媒含有成分を調製する。
ケイ素含有成分中への有機ケイ素化合物、有機溶媒の各配合量は、無機微粒子Bに求められる機械強度などを考慮して決められ、触媒含有成分中への塩基性化合物、溶媒の各配合量は、ケイ素含有成分の配合量などを考慮して決められる。
【0066】
(iii)無機微粒子Bの合成および反応残渣の除去
先ず、調製したケイ素含有成分の液温を制御し、且つ、撹拌しておく。
一方で、調製した触媒含有成分の液温を、ケイ素含有成分の液温となるように制御し、その液温となった後に、触媒含有成分をケイ素含有成分中に一気に添加し、混合する。
その後、両成分を含む混合液を撹拌し、液量が半分になるまで加熱濃縮する。その後、例えば、遠心沈降による固液分離、上澄み液のデカンテーション、所定量の蒸留水の添加の一連の操作を繰り返し、最後に、所定量の水を加え、反応残渣を除去した、シリカ微粒子(無機微粒子B)を分散した分散液を得る。
反応系へのケイ素含有成分、触媒含有成分の各配合量は、無機微粒子Bに求められる機械強度などを考慮して決められる。
反応温度は、0℃以上100℃以下であり、好ましくは、15℃以上80℃以下である。また、反応時間は、1時間以上24時間以下であり、好ましくは、2時間以上12時間以下である。
【0067】
<粒子付着体の形成>
粒子付着体は、上述のように合成した有機コア粒子Aと、上述のように合成した無機微粒子Bとを用いて行う、(i)有機無機粒子分散液の調製ステップ、(ii)有機無機粒子分散液の調製後の撹拌ステップ、(iii)有機無機粒子分散液のpH調整ステップ、(iv)付着ステップを経て、形成される。
【0068】
(i)有機無機粒子分散液の調製ステップ
先ず、反応容器に、有機コア粒子A(例えば、PMMAコア粒子)を含む分散液と、無機微粒子B(例えば、シリカ微粒子)を含む分散液を撹拌しながら混合して、有機無機粒子分散液を得る。
有機無機粒子分散液中の有機コア粒子Aおよび無機微粒子Bの各配合率、両粒子の配合比は、有機コア粒子Aおよび無機微粒子Bの各平均粒子径の大小関係に基づき、有機コア粒子Aの表面に付着させる無機微粒子Bの想定個数などを考慮して決められる。
有機無機粒子分散液の調製時の液温は、0℃以上100℃以下であり、好ましくは、15℃以上80℃以下である。
【0069】
(ii)有機無機粒子分散液の調製後の撹拌ステップ
その後、必要に応じて、有機無機粒子分散液を所定の液温、所定の時間、撹拌する。
この撹拌ステップでは、中性領域にある有機無機粒子分散液中において有機コア粒子Aと無機微粒子Bを十分に分散させ、両粒子の接触機会を与え、有機コア粒子Aの表面上に多くの無機微粒子Bを存在させる。この段階では、有機コア粒子Aおよび無機微粒子Bの表面は、いずれも負電荷に帯電しているため、両粒子は、静電的に結合しないと考えられる。
撹拌ステップにおける分散液の液温は、0℃以上100℃以下であり、好ましくは、15℃以上80℃以下であり、撹拌時間は、0時間以上24時間以下であり、好ましくは、15分以上15時間以下である。
【0070】
(iii)有機無機粒子分散液のpH調整ステップ
その後、液温および撹拌速度を維持した有機無機粒子分散液に、そのpHを測定しながら、分散液中の無機微粒子Bを形成する無機材料の等電点(シリカの場合、pH2.0)になるまで時間かけて酸性溶液を滴下し続け、等電点(シリカの場合、pH2.0)になったところで酸性溶液の滴下を停止する。
このpH調整ステップでは、分散液を中性領域から等電点(シリカの場合、pH2.0)まで低下させることで、分散液中の無機微粒子Bの表面は、中性領域からpH2近傍の酸性領域では負電荷に帯電しているが、等電点以下では正電荷に変わる。一方、分散液中の有機コア粒子Aの表面は中性領域から無機材料の等電点以下まで、負電荷に帯電し続けている。従って、分散液のpHが等電点にあれば、有機コア粒子Aと無機微粒子Bは逆電荷に帯電するので、互いに凝集しやすくなり、両粒子は静電的に付着することが可能となる。
酸性溶液としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0071】
(iv)付着ステップ
その後、有機無機粒子分散液を所定の液温まで昇温してから、所定の液温で所定時間、撹拌し、有機コア粒子A(例えば、PMMAコア粒子)の表面に無機微粒子B(例えば、シリカ微粒子)を付着させた粒子付着体を形成する。
この付着ステップでは、ヘテロ凝集により、有機コア粒子A上に無機微粒子Bを存在させ、負電荷に帯電した有機コア粒子Aの表面に、上述のpH調整ステップにて正電荷に帯電した無機微粒子Bを静電的に付着させることにより、粒子付着体を形成する。
液温は、0℃以上100℃以下であり、好ましくは、15℃以上80℃以下である。
撹拌時間は、0時間以上24時間以下であり、好ましくは、5分以上12時間以下である。
【0072】
2.複合粒子形成工程
この複合粒子形成工程は、上述の粒子付着体が形成された分散液に、有機コア粒子Aの表面に存在する反応性結合基と相互作用し、且つ、塩基性条件下で、無機微粒子Bの表面に存在する水酸基(OH基)と結合するシランカップリング剤および塩基性物質を添加して、シランカップリング剤を作用させて得られる無機材料層Nにより有機コア粒子Aの表面および無機微粒子Bの表面を被覆して有機コア粒子Aの表面に無機微粒子Bを固定化させた複合粒子を形成する工程である。ここでいう反応性結合基としては、例えば水酸基、カルボキシル基、ウレタン基、メトキシ基などのアルコキシ基を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
このような複合粒子形成工程では、粒子付着体形成工程においてヘテロ凝集により有機コア粒子A上に存在させた無機微粒子Bの有機コア粒子A上への静電的な付着を、シランカップリング剤の作用によって形成された無機材料層Nにより無機微粒子Bの有機コア粒子A上に固定化し、無機微粒子Bの有機コア粒子A上への付着強度を向上させる。
【0073】
無機材料層Nの形成に用いられるシランカップリング剤としては、式R−Si(OR(但し、Rは、酸素および窒素のいずれか片方もしくは両方を含む炭素原子数1〜6の炭化水素基または酸素および窒素を含まない炭素原子数1〜18の炭化水素基であり、Rは、炭素原子数1〜6の1価炭化水素基である)で示されるシランカップリング剤のうち、ケイ素を含有するネットワーク構造を形成できる化合物が挙げられる。具体的には、無機材料層Nの形成に用いられるシランカップリング剤としては、メタクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル(MAPTMS)、アクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、3−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシシラン、トリエトキシ(3−グリシジルオキシプロピル)シラン、3−イソシアネートプロピルトリエトキシシランなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
このようなシランカップリング剤は、有機コア粒子Aを形成する有機材料の種類に応じて適宜選択される。例えば、有機コア粒子Aを形成する有機材料がアクリル樹脂またはメタクリル樹脂であれば、アクリル樹脂またはメタクリル樹脂の官能基と相互作用する反応性結合基(例えば、メトキシ基などのアルコキシ基)を有するシランカップリング剤が選択される。当該有機材料がポリエステル樹脂であれば、ポリエステル樹脂の官能基と相互作用する反応性結合基(イソシアネート基)を有するシランカップリング剤が選択される。当該有機材料がエポキシ樹脂であれば、エポキシ樹脂の官能基と相互作用する反応性結合基(エポキシ基)を有するシランカップリング剤が選択される。当該有機材料がウレタン樹脂であれば、ウレタン樹脂の官能基と相互作用する反応性結合基(イソシアネート基)を有するシランカップリング剤などが選択される。
塩基性条件は、pH8以上pH13以下であり、好ましくは、pH8以上pH10以下である。
塩基性条件を得るために用いられる塩基性物質としては、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
尚、複合粒子が、有機コア粒子と、この有機コア粒子の表面に存在する無機微粒子および有機微粒子を合一してなるものである場合における上述の粒子付着体形成工程では、先ず、有機コア粒子と無機微粒子を含む分散液のpHを無機微粒子の形成材料の等電点(例えば、pH2.0)に調整することで、ヘテロ凝集により、有機コア粒子上に無機微粒子を存在させ、有機コア粒子表面に無機微粒子を静電的に付着させ、その後、当該分散液に、有機微粒子を含む分散液を添加することで、表面に無機微粒子を静電的に付着させた有機コア粒子の表面に有機微粒子をさらに静電的に付着させた粒子付着体を形成する。その後の複合粒子形成工程は、上述の複合粒子形成工程と同様に行うことによって、有機コア粒子の表面に無機微粒子および有機微粒子を固定化した複合粒子を得ることができる。
【0075】
3.粒子回収工程
この粒子回収工程は、上述の複合粒子形成工程で得られた複合粒子の分散液から複合粒子を回収する工程として行うことができる。
この工程では、複合粒子の分散液から複合粒子のみを分離して回収する。回収方法としては、分散液中の複合粒子の表面に変形を与えず、且つ、複合粒子に損傷を与えない方法であれば特に限定されるものではなく、例えば、エバポレータを用いた加熱濃縮、遠心沈降機による固液分離、凍結乾燥を挙げることができる。
粒子回収工程によって回収された複合粒子は、上述のAで説明した物性を併せもつことができるので、無機微粒子Bの有機コア粒子Aへの付着強度が高く、良好な帯電量、高い流動性を確保できる。
【0076】
4.粒子疎水化工程
この粒子疎水化工程は、複合粒子表面の一部に残る水酸基(OH基)と疎水化剤を反応させて、複合粒子表面に疎水基を導入することにより、複合粒子の表面を疎水化する工程である。尚、この粒子疎水化工程は、複合粒子をトナー用外添剤などの構成成分として使用する場合など、高い疎水性を求められる用途などに応じて任意に行われる。
この粒子疎水化工程で疎水化される複合粒子としては、上述の粒子回収工程で回収された複合粒子、又は、上述の複合粒子形成工程で形成された複合粒子の分散液中に分散するゾル状態の複合粒子のいずれでもよい。前者の場合は、複合粒子形成工程、粒子回収工程、粒子疎水化工程の順で、複合粒子を製造する。後者の場合は、複合粒子形成工程、粒子疎水化工程、粒子回収工程の順で、複合粒子を製造する。
【0077】
疎水化剤として、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)、1,3−ジフェニルテトラメチルジシラザン、1,3−ビス(3,3,3−トリフルオロプロピル)−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザンなどのシラザン化合物、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシランなどのシラン化合物を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
このような疎水化剤として機能する、シラザン化合物又はシラン化合物の溶媒としては、水、エタノール、メタノールなどのなどのプロトン性溶媒、もしくはアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどの非プロトン性溶媒を挙げることができる。
【0078】
上述の粒子疎水化工程によって表面が疎水化された複合粒子は、上述のAで説明した物性および疎水性を併せもつので、無機微粒子Bの有機コア粒子Aへの付着強度が高く、良好な帯電量、高い流動性を確保できるとともに、高い疎水化度を保持できる。
【0079】
C.トナー用外添剤
このトナー用外添剤は、上述のAで説明した複合粒子を含む。
トナー用外添剤としての複合粒子は、無機微粒子Bの有機コア粒子Aへの付着強度が高く、無機微粒子Bが有機コア粒子Aから脱離しにくいので、その複合粒子を含むトナー用外添剤は、使用時にせん断力などの様々なストレスを受けても、長期間にわたってトナー粒子に強固に付着する。また、トナー用外添剤としての複合粒子は、良好な帯電量、および高い流動性を確保できる。トナー用外添剤としての複合粒子を外添したトナーは、高い劣化耐性をもち、長期間にわたって高い転写効率を維持したまま使用できるので、感光体上へのトナー融着現象等の部材汚染に起因する画像劣化を抑制し、安定した画像品質を提供できるものとなる。
また、トナー用外添剤としての複合粒子が上述の物性(4)の平均粒子径の数値範囲のうち、比較的小さな平均粒子径を有する場合、トナー粒子に高い流動性を付与することができる。
さらに、トナー用外添剤としての複合粒子が上述の物性(4)の平均粒子径の数値範囲のうち、比較的大きな平均粒子径を有する場合、スペーサ効果を十分に発揮することができる。
【0080】
実施の形態1の複合粒子によれば、有機コア粒子Aと無機微粒子Bとを備える複合粒子において、有機コア粒子Aの主成分は、有機材料であり、無機微粒子Bは、有機コア粒子A上に存在し、無機微粒子Bの主成分は無機材料であり、有機コア粒子Aの平均粒子径が80nm以上300nm以下であり、有機コア粒子Aの平均粒子径の変動係数が2%以上10%以下であり、無機微粒子の平均粒子径が5nm以上30nm以下であり、且つ有機コア粒子Aの平均粒子径に対する無機微粒子Bの平均粒子径の比が0.016以上0.25以下であり、複合粒子の平均粒子径が90nm以上350nm以下であり、複合粒子の体積抵抗ρvおよび表面抵抗ρsの比ρrが0.7以上1.4以下であり、複合粒子が1重量%になるように水に分散させた複合粒子分散液に、出力110W、周波数31kHzの条件で、超音波を30分間照射する前後における、有機コア粒子A上に存在する無機微粒子Bの個数変化が0.5%以上5%以下である。
上述した各物性を併せもつ複合粒子は、以下のような効果を有する。
(i)複合粒子は、有機コア粒子Aに無機微粒子Bが存在し、且つ、所定条件の超音波照射の前後における、有機コア粒子Aに存在する無機微粒子Bの個数変化が極めて小さいので、無機微粒子Bが有機コア粒子Aに単に付着された従来の複合粒子と比較して、無機微粒子Bの有機コア粒子A上への付着強度が高い。無機微粒子Bの有機コア粒子A上への付着強度が高いので、せん断力などの様々なストレスを受けても、有コア粒子Aから無機微粒子Bが脱離しにくい。
(ii)複合粒子は、体積抵抗ρvおよび表面抵抗ρsが所定の数値範囲にあるので、初期特性として、良好な帯電量を確保できる。この良好な帯電量は、無機微粒子Bの有機コア粒子A上への付着強度が高く、有機コア粒子Aから無機微粒子Bが脱離しにくいので、長期間にわたって維持できる。
(iii)有機コア粒子Aおよび無機微粒子Bが所定の数値範囲にある平均粒子径、平均粒子径の比をもち、且つ所定の数値範囲にある被覆率を持つため、例えばトナー用外添剤などの構成成分として用いた場合、トナーと複合粒子は、常にトナーと複合粒子上に存在する微粒子が接触することとなるため、転がり性が低下することなく、初期特性として、高い流動性を確保できる。高い流動性をもつ複合粒子は、トナー用外添剤などの構成成分として良好に適用されることができる。高い流動性は、無機微粒子Bの有機コア粒子A上への付着強度が高く、有機コア粒子Aから無機微粒子Bが脱離しにくいので、長期間にわたって維持できる。
従って、実施の形態1の複合粒子は、無機微粒子Bの有機コア粒子A上への付着強度が高く、良好な帯電量、高い流動性を確保できる。
【0081】
実施の形態1の複合粒子の製造方法によれば、有機コア粒子Aと無機微粒子Bとを備える複合粒子の製造方法において、有機材料を主成分とする有機コア粒子Aと無機材料を主成分とする無機微粒子Bとを含む分散液から有機コア粒子Aの表面に無機微粒子Bが付着した粒子付着体を形成する粒子付着体形成工程と、粒子付着体が形成された分散液に、有機コア粒子Aの表面に存在する反応性結合基と相互作用し、且つ、塩基性条件下で、無機微粒子Bの表面に存在する水酸基(OH基)と結合(縮合)するシランカップリング剤および塩基性物質を添加して、有機コア粒子Aの表面に無機微粒子Bを固定化させた複合粒子を形成する複合粒子形成工程と、を備える。
粒子付着体形成工程では、ヘテロ凝集により、有機コア粒子A上に無機微粒子Bを存在させ、有機コア粒子Aの表面に無機微粒子Bを静電的に付着させた粒子付着体を形成し、複合粒子形成工程では、シランカップリング剤の作用によって形成された無機材料層Nにより、有機コア粒子Aの表面に無機微粒子Bを固定化させた複合粒子を形成することができる。この複合粒子は、上述した各物性を併せもつことができる。
従って、実施の形態1の複合粒子の製造方法によれば、無機微粒子Bの有機コア粒子A上への付着強度が高く、良好な帯電量、高い流動性を確保できる複合粒子を製造することができる。
【0082】
実施の形態1のトナー用外添剤によれば、上述した複合粒子を含む。従って、このトナー用外添剤は、無機微粒子Bの有機コア粒子A上への付着強度が高く、良好な帯電量、高い流動性を確保できるので、従来よりも高い劣化耐性をもち、長期間にわたってトナー用外添剤とトナー粒子との付着性を維持でき、転写効率を高い状態で維持できると共に、トナー用外添剤がトナー粒子から遊離しにくいので、部材汚染に起因する画像欠陥を抑制し、安定した画像品質を提供することができる。
【0083】
実施の形態2.
A.複合粒子
この複合粒子は、実施の形態1による複合粒子とは異なり、無機材料を主成分とするコア粒子(以下、このコア粒子を無機コア粒子という場合がある)と、この無機コア粒子上に存在し、有機材料を主成分とする微粒子(以下、この微粒子を有機微粒子という場合がある)を備える。また、複合粒子は、実施の形態1と同様に、次の物性(1)〜(6)を併せもつ。
物性(1):無機コア粒子の平均粒子径が80nm以上300nm以下である。
物性(2):無機コア粒子の平均粒子径の変動係数が2%以上10%以下である。
物性(3):有機微粒子の平均粒子径が5nm以上30nm以下であり、且つ無機コア粒子の平均粒子径に対する有機微粒子の平均粒子径の比(以下、有機微粒子の平均粒子径/無機コア粒子の平均粒子径という)が0.016以上0.25以下である。
物性(4):複合粒子の平均粒子径が90nm以上350nm以下である。
物性(5):複合粒子の体積抵抗ρvおよび表面抵抗ρsの比ρrが0.7以上1.4以下である。
物性(6):複合粒子が1重量%になるように水に分散させた複合粒子分散液に、出力110W、周波数31kHzの条件で、超音波を30分間照射する前後における、無機コア粒子に存在する有機微粒子の個数変化が0.5%以上5%以下である。
【0084】
この複合粒子を構成するコア粒子および微粒子は、実施の形態1による複合粒子を構成するコア粒子および微粒子とは、以下のような共通点と相違点を有する。
<無機コア粒子>
無機コア粒子は、実施の形態1のAで説明した無機材料と同様の無機材料を主成分とする点で、実施の形態1における無機微粒子Bと共通する。
但し、無機コア粒子は、コア粒子であるので、物性(1)〜(3)を満たす平均粒子径を有する点で、物性(3)のみを満たす平均粒子径を有する実施の形態1における無機微粒子Bとは異なる。
<有機微粒子>
有機微粒子は、実施の形態1のAで説明した有機材料と同様の有機材料を主成分とする点で、実施の形態1における有機コア粒子Aと共通する。
但し、有機微粒子は、微粒子であるので、物性(3)のみを満たす平均粒子径を有する点で、物性(1)〜(3)を満たす平均粒子径を有する実施の形態1における有機コア粒子Aとは異なる。
【0085】
また、複合粒子では、その体積抵抗ρvは無機コア粒子を形成する無機材料および微粒子Bを形成する有機材料の抵抗に依存し、その表面抵抗ρsは複合粒子の表面に特有の電気抵抗に依存する。無機コア粒子を形成する無機材料の電気抵抗は、有機微粒子を形成する有機材料よりも低いので、上述した構成を有する複合粒子では、体積抵抗ρvが低く、表面抵抗ρsが高くなる。一般に、粒子表面で帯電した電荷は、粒子内部に入り、もしくは粒子表面を伝わって、その粒子の別の表面(例えば、複合粒子が外添されたトナー粒子との接触面)から、他の粒子へ移行すると考えられる。しかし、無機コア粒子と有機微粒子を備える複合粒子では、その表面で帯電した電荷は、他の粒子(例えば、トナー粒子)への移行が限定的となり、特に湿度が低い状態では電荷が複合粒子内部に徐々に蓄積されていくと推測される。このため、体積抵抗ρvと表面抵抗ρsとの関係が物性(5)の適切な数値範囲にあることが重要となる。
【0086】
上述の物性(1)〜(6)を併せもつ複合粒子は、実施の形態1による複合粒子と同様に、さらに、比誘電率が2以上300以下であるという物性(7)を有することが望ましい。
上述の物性(1)〜(6)を併せもつ複合粒子、または、上述の物性(1)〜(6)に物性(7)を併せもつ複合粒子は、実施の形態1による複合粒子と同様に、さらに、無機コア粒子の表面における有機微粒子の被覆率が5%以上68%未満であるという物性(8)を有することが望ましい。
【0087】
上述の物性(1)〜(6)を併せもつ複合粒子、または、上述の物性(1)〜(6)に物性(7)あるいは物性(8)を併せもつ複合粒子は、実施の形態1による複合粒子と同様に、無機コア粒子の表面および有機微粒子の表面を被覆する無機材料層Nをさらに備えることが望ましい。
無機材料層Nは、有機微粒子と相互作用し、且つ、塩基性条件下で、無機コア粒子の表面に存在する水酸基(OH基)と結合(縮合)するシランカップリング剤の作用により形成される。このシランカップリング剤の作用により、塩基性条件下では、無機コア粒子の表面上の水酸基(OH基)およびシランカップリング剤自身がネットワーク構造を構成し、内部にケイ素(Si)をもった、シリカの非晶質構造に類似する構造を有する無機材料層Nが形成される。
このように、無機材料層Nは、無機コア粒子の表面および有機微粒子の表面を被覆するネットワーク構造を有するので、有機微粒子の無機コア粒子上への付着強度を高める役割と、ケイ素(Si)を含むことでシリカの非晶質構造に類似する構造を有するので、シリカのような無機材料から形成される被膜と同程度の電気抵抗を示すことから、複合粒子の体積抵抗ρvおよび表面抵抗ρsのバランスを調整する役割と、を担う。
【0088】
上述の物性を併せもつ実施の形態2による複合粒子は、ヘテロ凝集により、正電荷に帯電した無機コア粒子上に負電荷に帯電した有機微粒子を存在させ、両粒子を静電的に付着させることで、無機コア粒子の表面に有機微粒子を合一して複合化して得た粒子付着体の表面に、上述のシランカップリング剤の作用により形成される無機材料層Nによって、無機コア粒子の表面および有機微粒子の表面を被覆して無機コア粒子の表面に有機微粒子を固定化させてなるものである。このような複合粒子に対応する実施例は、後述する実施例2−1〜2−8である。
また、このように複合化時に、全体として負電荷に帯電している複合粒子の表面に、ヘテロ凝集により、正電荷に帯電した無機微粒子を存在させ、静電的に付着させることができる。そして、無機コア粒子の表面に有機微粒子および無機微粒子を合一して複合化して得た粒子付着体の表面に、上述のシランカップリング剤の作用により形成される無機材料層Nによって、無機コア粒子、有機微粒子および無機微粒子の各表面を被覆して無機コア粒子の表面に有機微粒子および無機微粒子を固定化させた複合粒子を形成することができる。つまり、この複合粒子は、無機コア粒子と、この無機コア粒子の表面に固定化した有機微粒子および無機微粒子を合一してなるものである。このような複合粒子に対応する実施例は、後述する実施例4−1〜4−6である。
【0089】
B.複合粒子の製造方法
この複合粒子の製造方法は、無機コア粒子と有機微粒子とを備える複合粒子の製造方法において、無機材料を主成分とする無機コア粒子と有機材料を主成分とする有機微粒子とを含む分散液から無機コア粒子の表面に有機微粒子が付着した粒子付着体を形成する粒子付着体形成工程と、粒子付着体が形成された分散液に、有機微粒子の表面に存在する反応性結合基と相互作用し、且つ、塩基性条件下で、無機コア粒子の表面に存在する水酸基(OH基)と結合(縮合)するシランカップリング剤および塩基性物質を添加して、無機コア粒子の表面に有機微粒子を固定化させた複合粒子を形成する複合粒子形成工程と、を備える。
粒子付着体形成工程では、ヘテロ凝集により、無機コア粒子上に有機微粒子を存在させ、無機コア粒子の表面に有機微粒子を静電的に付着させた粒子付着体を形成し、複合粒子形成工程では、シランカップリング剤の作用によって形成された無機材料層Nにより、無機コア粒子の表面に有機微粒子を固定化させた複合粒子を形成する。
尚、この製造方法は、上述のAで説明した物性をもつ複合粒子を製造することができる製造方法の一例である。
これら粒子付着体形成工程、その事前準備、および、複合粒子形成工程は、有機コア粒子Aを無機コア粒子に代え、無機微粒子Bを有機微粒子に代える以外は、実施の形態1による複合粒子の製造方法における粒子付着体形成工程、その事前準備、および、複合粒子形成工程と同様に行うことができる。
【0090】
また、複合粒子が、無機コア粒子と、この無機コア粒子の表面に存在する有機微粒子および無機微粒子を合一してなるものである場合における粒子付着体形成工程では、先ず、無機コア粒子と有機微粒子を含む分散液のpHを無機コア粒子の形成材料の等電点(例えば、pH2.0)に調整することで、ヘテロ凝集により、無機コア粒子上に有機微粒子を存在させ、無機コア粒子表面に有機微粒子を静電的に付着させ、その後、当該分散液に、無機微粒子を含む分散液を添加することで、表面に有機微粒子を静電的に付着させた無機コア粒子の表面に無機微粒子をさらに静電的に付着させた粒子付着体を形成する。その後の複合粒子形成工程は、有機コア粒子Aを無機コア粒子に代え、無機微粒子Bを有機微粒子に代える以外は、実施の形態1による複合粒子の製造方法における複合粒子形成工程と同様に行うことによって、無機コア粒子の表面に有機微粒子および無機微粒子を固定化した複合粒子を得ることができる。
【0091】
C.トナー用外添剤
このトナー用外添剤は、上述のAで説明した複合粒子を含む。
トナー用外添剤としての複合粒子は、有機微粒子の無機コア粒子への付着強度が高く、有機微粒子が無機コア粒子から脱離しにくいので、その複合粒子を含むトナー用外添剤は、使用時にせん断力などの様々なストレスを受けても、長期間にわたってトナー粒子に強固に付着する。また、トナー用外添剤としての複合粒子は、良好な帯電量および高い流動性を確保できる。トナー用外添剤としての複合粒子を外添したトナーは、高い劣化耐性をもち、長期間にわたって高い転写効率を維持したまま使用できるので、感光体上へのトナー融着現象等の部材汚染に起因する画像劣化を抑制し、安定した画像品質を提供できるものとなる。
また、トナー用外添剤としての複合粒子が上述の物性(4)の平均粒子径の数値範囲のうち、比較的小さな平均粒子径を有する場合、トナー粒子に高い流動性を付与することができる。
さらに、トナー用外添剤としての複合粒子が上述の物性(4)の平均粒子径の数値範囲のうち、比較的大きな平均粒子径を有する場合、スペーサ効果を十分に発揮することができる。
【0092】
実施の形態2の複合粒子によれば、無機コア粒子と有機微粒子とを備える複合粒子において、無機コア粒子の主成分は、無機材料であり、有機微粒子は、無機コア粒子上に存在し、有機微粒子の主成分は有機材料であり、無機コア粒子の平均粒子径が80nm以上300nm以下であり、無機コア粒子の平均粒子径の変動係数が2%以上10%以下であり、有機微粒子の平均粒子径が5nm以上30nm以下であり、且つ無機コア粒子の平均粒子径に対する有機微粒子の平均粒子径の比が0.016以上0.25以下であり、複合粒子の平均粒子径が90nm以上350nm以下であり、複合粒子の体積抵抗ρvおよび表面抵抗ρsの比ρrが0.7以上1.4以下であり、複合粒子が1重量%になるように水に分散させた複合粒子分散液に、出力110W、周波数31kHzの条件で、超音波を30分間照射する前後における、無機コア粒子に存在する有機微粒子の個数変化が0.5%以上5%以下である。
上述した各物性を併せもつ複合粒子は、以下のような効果を有する。
(i)複合粒子は、無機コア粒子に有機微粒子が固定化され、且つ、所定条件の超音波照射の前後における、無機コア粒子上に存在する有機微粒子の個数変化が極めて小さいので、有機微粒子が無機コア粒子上に単に付着された従来の複合粒子と比較して、有機微粒子の無機コア粒子上への付着強度が高い。有機微粒子の無機コア粒子上への付着強度が高いので、せん断力などの様々なストレスを受けても、無機コア粒子から有機微粒子が脱離しにくい。
(ii)複合粒子は、体積抵抗ρvおよび表面抵抗ρsが所定の数値範囲にあるので、初期特性として、良好な帯電量を確保できる。この良好な帯電量は、有機微粒子の無機コア粒子上への付着強度が高く、無機コア粒子から有機微粒子が脱離しにくいので、長期間にわたって維持できる。
(iii)無機コア粒子および有機微粒子が所定の数値範囲にある平均粒子径、平均粒子径の比を持ち、且つ所定の数値範囲にある被覆率を持つため、例えばトナー用外添剤などの構成成分として用いた場合、トナーと複合粒子は、常にトナーと複合粒子上に存在する微粒子が接触することとなるため、転がり性が低下することなく、初期特性として、高い流動性を確保できる。高い流動性をもつ複合粒子は、トナー用外添剤などの構成成分として良好に適用されることができる。高い流動性は、有機微粒子の無機コア粒子上への付着強度が高く、無機コア粒子から有機微粒子が脱離しにくいので、長期間にわたって維持できる。
従って、実施の形態2の複合粒子は、有機微粒子の無機コア粒子上への付着強度が高く、良好な帯電量、高い流動性を確保できる。
【0093】
実施の形態2の複合粒子の製造方法によれば、無機コア粒子と有機微粒子とを備える複合粒子の製造方法において、無機材料を主成分とする無機コア粒子と有機材料を主成分とする有機微粒子とを含む分散液から無機コア粒子の表面に有機微粒子が付着した粒子付着体を形成する粒子付着体形成工程と、粒子付着体が形成された分散液に、有機微粒子の表面に存在する反応性結合基と相互作用し、且つ、塩基性条件下で、無機コア粒子の表面に存在する水酸基(OH基)と結合(縮合)するシランカップリング剤および塩基性物質を添加して、無機コア粒子の表面に有機微粒子を固定化させた複合粒子を形成する複合粒子形成工程と、を備える。
粒子付着体形成工程では、ヘテロ凝集により、無機コア粒子上に有機微粒子を存在させ、無機コア粒子の表面に有機微粒子を静電的に付着させた粒子付着体を形成し、複合粒子形成工程では、シランカップリング剤の作用によって形成された無機材料層Nにより、無機コア粒子の表面に有機微粒子を固定化させた複合粒子を形成することができる。この複合粒子は、上述した各物性を併せもつことができる。
従って、実施の形態2の複合粒子の製造方法によれば、有機微粒子の無機コア粒子上への付着強度が高く、良好な帯電量および高い流動性を確保できる複合粒子を製造することができる。
【0094】
実施の形態2のトナー用外添剤によれば、上述した複合粒子を含む。従って、このトナー用外添剤は、有機微粒子の無機コア粒子上への付着強度が高く、良好な帯電量、高い流動性を確保できるので、従来よりも高い劣化耐性をもち、長期間にわたってトナー用外添剤とトナー粒子との付着性を維持でき、転写効率を高い状態で維持できると共に、トナー用外添剤がトナー粒子から遊離しにくいので、部材汚染に起因する画像欠陥を抑制し、安定した画像品質を提供することができる。
【実施例】
【0095】
以下、実施例に基づいて、本発明をより具体的に説明するが、各実施例は本発明を限定するものではない。
以下の実施例は、本発明に係る複合粒子をトナー用外添剤として用いる場合について説明する。
実施例および比較例の説明に先立って、実施例および比較例における各種の測定方法、評価テストの内容を説明する。
【0096】
<平均粒子径の求め方>
複合粒子、複合化前のコア粒子および微粒子の各平均粒子径は、以下のようなSEM画像観察により求めた。
1.複合粒子の平均粒子径
SEM画像観察では、SEM画像の視野を変えながら、合計100個分の複合粒子についてのSEM画像をそれぞれ二値化処理し、得られた複合粒子の二値化処理画像を得た。
二値化処理画像を基にして、図3に示す複合粒子断面の円形の輪郭から想定最大内接円(図3において内側の破線で示す)を求めた上で、複合粒子の平均粒子径は、その想定最大内接円から最も離された部分(図3において外側の破線で示す)の直径Dとして求めた。
2.複合化前のコア粒子および微粒子の平均粒子径
この場合も、上述と同様に、SEM画像観察を利用し、そのSEM画像の視野を変えながら、合計100個分のコア粒子または微粒子についてのSEM画像をそれぞれ二値化処理し、得られたコア粒子または微粒子の二値化処理画像を得た。このような二値化処理画像を基にした図4に示すように、コア粒子の直径DAまたは微粒子の直径DBは、任意の2本の弦(図4に示す弦X、Y)に対する直交線(垂線)の交点と、粒子表面に相当する略円形部分のうち交点から最も離された位置との距離の2倍として求めた。
【0097】
<複合粒子の体積抵抗、表面抵抗の評価>
体積抵抗、表面抵抗の測定値を以下の方法により求めた。
1.体積抵抗の測定
先ず、メタノール10g中に、複合粒子10gと、熱硬化型エポキシ樹脂(SPECIFIX−20(商品名)、ストルマス社製)3.3gを加え、熱硬化型エポキシ樹脂中に複合粒子を分散し混練して得られた混練物を、乳棒、乳鉢を用いて1時間解砕した。得られたゲル状の物質を型に流し、油圧のプレス機を用いて20MPaの圧力を加えて成型した後、その成型物を80℃で12時間乾燥させ、複合粒子およびエポキシ樹脂の複合物からなるペレットを得た。得られたペレットの両面に銀ペーストを用いて電極を取り付け、図5に示す体積抵抗測定用回路を構成し、体積抵抗を求めた。複合粒子およびエポキシ樹脂のペレット中への配合比率を変えて同様の測定を行い、エポキシ樹脂の比率に対する体積抵抗の変化に基づく検量線を引き、この検量線が交わる座標軸の切片の値(エポキシ樹脂の比率が0%のときの体積抵抗)を複合粒子の体積抵抗(Ω・cm)として算出した。
2.表面抵抗の測定
表面抵抗についても、上述と同様のペレットを用いて、図6に示す表面抵抗測定用回路を構成し、上述と同様の方法で、複合粒子の表面抵抗(Ω/cm)を測定した。
<複合粒子の比誘電率の測定>
複合粒子の比誘電率を以下の方法により求めた。
上述のペレット中の複合粒子およびエポキシ樹脂の配合比率を変えて上述の誘電率測定装置で誘電率を測定し、エポキシ樹脂の比率に対する誘電率の変化に基づく検量線を引き、この検量線が交わる座標軸の切片の値(エポキシ樹脂の比率が0%のときの誘電率)を複合粒子の誘電率ε(F/m)として求めた。その後、真空の誘電率ε(約8.854×10−12F/m)に対する複合粒子の誘電率εの比(複合粒子の比誘電率:εr=ε/ε)を算出した。
【0098】
<複合粒子の帯電量の評価>
フタ付きのガラス瓶に、スチレン/メチルメタクリレート樹脂で被覆されたフェライト粒子(体積平均粒子径:35μm)30質量部を秤量し、その後、フェライト粒子上に載置した状態で複合粒子1質量部を秤量した。その後、常温常湿(25℃/50%RH)下で放置して24時間シーズニングした後、ターブラーミキサーで3分間撹拌振盪することにより、複合粒子に対してフェライト粒子との衝突による摩擦帯電を生じさせる負荷を与えた。この粒子の帯電量(μC/g)を飛翔式帯電量測定装置(電界飛翔式帯電量測定装置II−DC電界(商品名)、ディーアイティー株式会社製)で測定した。尚、フェライト粒子の体積平均粒子径は、粒度分布測定装置(マルチサイザー(登録商標)、ベックマン・コールター社製)を用いて測定した。
【0099】
<複合粒子における微粒子のコア粒子上への付着強度の評価>
先ず、乾燥させた状態の複合粒子100個について、SEM画像観察により、コア粒子の表面に存在する微粒子の個数を計測した(超音波照射前における個数)。
一方、同じ複合粒子を用い、その複合粒子が1重量%になる配合割合で、水に分散させて複合粒子分散液を調製した。その後、複合粒子分散液に、出力110W、周波数31kHzの条件で、超音波を30分間照射した。その後、複合粒子分散液を遠心沈降により固液分離し、その沈降物を分取し、その沈降物を凍結乾燥により乾燥させた。この乾燥させた固形物中の100個の複合粒子について、SEM画像観察により、コア粒子に存在する微粒子の個数を計測した(超音波照射後における個数)。
このようにして得られた超音波照射前における個数と超音波照射後における個数とを比較して超音波照射前後における個数変化(%)を求めた。
A:個数変化が0.5%以上3%未満であり、微粒子のコア粒子上の付着強度が極めて高く、極めて高い付着強度によってコア粒子に微粒子固定化されていると判断される(好適に使用可)。
B:個数変化が3%以上5未満であり、微粒子のコア粒子上の付着強度が高く、高い付着強度によってコア粒子に微粒子が固定化されていると判断される(十分に使用可)。
C:個数変化が5%以上10%未満であり、微粒子のコア粒子上の付着強度が低く、低い付着強度によってコア粒子上に微粒子が付着していると判断される(用途によっては使用の判断が分かれるレベル)。
D:個数変化が10%以上であり、微粒子のコア粒子上の付着強度が極めて低く、極めて低い付着強度によってコア粒子上に微粒子が付着していると判断される(用途を問わず、使用に適さないレベル)。
【0100】
<複合粒子の流動性評価>
アクリル粒子(MX−1000(商品名)、綜研化学(株)製)100重量部に対し、複合粒子2重量部を加え、サンプルミルにて10,000rpmで30秒間ブレンドし、粒子混合物102重量を得た。得られた粒子混合物102重量部のうち、評価用として複合粒子2.0質量部をフタ付きのガラス瓶に秤量し、常温/常湿(23℃/50%RH)下で放置して24時間シーズニングした後、3段ふるいを備えたパウダーテスタ(商品名、ホソカワミクロン社製)により初期の凝集度を測定した。また、残りの粒子混合物100重量部から分取した粒子1重量部とスチレン/メチルメタクリレート樹脂で被覆されたフェライト粒子(体積平均粒子径:35μm)30質量部とをフタ付きのガラス瓶に秤量し、常温/常湿(23℃/50%RH)の環境下、ターブラーミキサーで1時間撹拌振盪することによって、上述の複合粒子に対する耐久試験を行った。その後、フェライト粒子を磁石により取り除いた後に残った複合粒子について、上述のパウダーテスタにより耐久試験後の凝集度を測定し、初期の凝集度に対する凝集度変化を求めた。この耐久試験は、複合粒子に対して、複合粒子より比重の大きいフェライト粒子との衝突によるストレスを与えるものである。ストレスを受けることで、複合粒子がその球形状を維持できない、もしくはフェライト樹脂に付着した場合、その複合粒子は流動性を失い、凝集度変化が大きくなる。尚、フェライト粒子の体積平均粒子径は、粒度分布測定装置(マルチサイザー(登録商標)、ベックマン・コールター社製)を用いて測定した。
A:凝集度変化が10%未満であり、耐久試験後においても、極めて高い流動性が確保されていると判断される(好適に使用可)。
B:凝集度変化が10%以上20%未満であり、耐久試験後においても、高い流動性が確保されていると判断される(十分に使用可)。
C:凝集度変化が20%以上30%未満であり、耐久試験後において、流動性を失った粒子が少なからず存在していると判断される(用途によっては使用の判断が分かれるレベル)。
D:凝集度変化が30%以上であり、耐久試験後において、流動性を失った粒子が多く存在していると判断される(用途を問わず、使用に適さないレベル)。
【0101】
以下に、有機粒子および無機粒子の形成方法を説明する。
有機粒子は、以下の合成例1〜6によって形成され、コア粒子または微粒子のいずれかとして使用して複合粒子の一部を構成する。無機粒子は、以下の合成例7〜12によって形成され、微粒子またはコア粒子のいずれかとして使用して複合粒子の一部を構成する。
【0102】
合成例1.
<有機粒子の合成>
冷却機、温度計、窒素導入管を備えた3リットルの反応容器に、水2400gを加え、反応容器内に1時間窒素ガスを導入することで反応容器内の酸素を除去した。その後メタクリル酸メチル(MMA)(東京化成製)150gと、粒子径制御剤としてのp−スチレンスルホン酸ナトリウム(NaSS)5gと、メタクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル(MAPTMS)30gを加えた後、反応開始剤としての過硫酸カリウム(KPS)5gを加え、80℃で6時間反応させ、有機粒子として、MAPTMSによって架橋されたポリメタクリル酸メチル(PMMA)粒子を得た。
その後、遠心沈降によりPMMA粒子を固液分離し、上澄み液をデカンテーションで除去した後、蒸留水500gを加え、1時間撹拌し、分散液を得た。蒸留水500gの添加、遠心沈降による固液分離、上澄み液のデカンテーションの一連の操作を合計3度繰り返し、最後に、水820gを加え、PMMA粒子水分散液を得た。得られたPMMA粒子の、SEM画像観察による平均粒子径は80nm、平均粒子径の変動係数は5%であった。
この合成例1の上述したMMA、NaSS、MAPTMS、KPS、水の各配合量の一覧を以下の表1に示す。
【0103】
合成例2〜5
上述したMMA、NaSS、MAPTMS、KPS、水の各配合量を以下の表1に示す配合量に変更した以外は、合成例1と同様の方法で有機粒子としてのPMMA粒子(SEM画像観察による平均粒子径:8nm〜300nm、コア平均粒子径の変動係数:2%〜10%)を合成した。
【0104】
【表1】
【0105】
合成例6.
<シリカ粒子の合成>
冷却機、温度計、窒素導入管を備えた5リットルの反応容器に、エタノール1250gとアセトニトリル1250gとテトラエトキシシラン178gを入れ、50℃に制御し、150rpmで撹拌しているところに、蒸留水600gと10%アンモニア水40gの混合物を50℃まで加温した後、直ちに一気に添加した。その後、50℃で10時間撹拌を行った後、蒸留水1000gを添加し、液量が半分になるまでエバポレータを用いて濃縮し、遠心沈降により固液分離した。上澄み液をデカンテーションで除去した後、蒸留水800gを加え、1時間撹拌し、同様に固液分離を行った。蒸留水800gの添加、遠心沈降による固液分離、上澄み液のデカンテーションの一連の操作を合計3度繰り返した後、最後に、水200gを加え、シリカ粒子(SEM画像観察による平均粒子径:20nm、平均粒子径の変動係数:10%)を分散させた白色分散液を得た。
この合成例6の上述したエタノール、アセトニトリル、テトラエトキシシラン、水、10%アンモニアの各配合量の一覧を以下の表2に示す。
【0106】
合成例6〜11
上述したテトラエトキシシラン、水、10%アンモニアの各配合量を以下の表2に示す配合量に変更した以外は、合成例7と同様の方法で無機粒子としてのシリカ粒子(SEM画像観察による平均粒子径:9〜290nm、コア粒子の平均粒子径の変動係数:2%〜10%)を合成した。
【0107】
合成例12
<チタン酸ストロンチウムの合成>
グローブボックス内に反応容器を準備し、金属ストロンチウム(ナカライテクス(株)社製)18gを2−メトキシエタノール(和光純薬工業(株)社製)1100g中に溶解させた。金属ストロンチウムが完全に溶解した後チタンテトラエトキシド(東京化成工業(株)社製)48gを加え、蓋をしてグローブボックス内から取り出した。
次に、冷却機、温度計、窒素導入管を上記反応容器に設置し、窒素雰囲気下で二時間還流させることにより、チタン酸ストロンチウムの分散液を得た。その後、蒸留水1000gを添加し、液量が半分になるまでエバポレータを用いて濃縮し、遠心沈降により固液分離した。上澄み液をデカンテーションで除去した後、蒸留水800gを加え、1時間撹拌し、同様に固液分離を行った。蒸留水800gの添加、遠心沈降による固液分離、上澄み液のデカンテーションの一連の操作を合計3度繰り返した後、最後に水200gを加え、粒子径が18nmのチタン酸ストロンチウムを分散させた分散液を得た。
この合成例13の上述したストロンチウム、2−メトキシエタノール、チタンテトラエトキシドの配合量を以下の表2に示す。
【0108】
【表2】
【0109】
実施例1−1〜1−14
この実施例1−1〜1−14は、1種類の有機コア粒子と、1種類の無機微粒子を備える複合粒子の製造例である。
【0110】
実施例1−1
<複合粒子の製造>
1.粒子付着体形成工程
冷却機、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、液温30℃の、合成例1で合成したPMMA粒子(平均粒子径:80nm)100gを含む有機粒子分散液555gと、液温30℃の、合成例6で合成したシリカ微粒子(平均粒子径:20nm)313gを含む無機微粒子分散液1565gとを混合して分散液を得た。その後、分散液の全量が2500gになるまで蒸留水を加えた。その後、分散液を30℃に保ったまま3時間撹拌した。その後、液温および撹拌を維持した分散液に、そのpHを測定しながら、pH2.0になるまで2時間かけて0.1M塩酸溶液を滴下し続け、pH2.0になったところで塩酸の滴下を停止した。その後、60℃まで昇温してから、60℃で5時間撹拌し、PMMA粒子にシリカ微粒子を付着させた粒子付着体を形成した。
【0111】
2.複合粒子形成工程
粒子付着体が形成された分散液を室温まで冷却した後、分散液に50.0gのMAPTMSを一気に添加し撹拌しながら、10%アンモニア水をpH8.0になるまで2時間かけて徐々に滴下した。分散液がpH8.0になったことを確認した後、そのpHを維持したまま50℃まで昇温し、50℃で6時間反応させ、PMMA粒子の表面にシリカ微粒子を固定化させた複合粒子を得た。
その後、遠心沈降により固液分離した後、上澄み液をデカンテーションで除去し、蒸留水を500g添加し、1時間撹拌し、再度、分散液を得た。蒸留水500gの添加、遠心沈降による固液分離、上澄み液のデカンテーションの一連の操作を合計3度繰り返した後、最後に再び遠心分離により固液分離を行い、沈殿物を24時間凍結乾燥させることにより、白色粉末を得た。
【0112】
3.粒子疎水化工程
その後、複合粒子形成工程によって得られた白色粉末10gを、水200gとヘキサメチルジシラザン(HMDS)15gの混合物に加え、室温で30分間、撹拌し、さらに、60℃で4時間、撹拌した後、固液分離を行い、得られた沈殿物をメタノールで洗浄し、その後、50℃で48時間乾燥させることにより、表面を疎水化した複合粒子の白色粉末(SEM画像観察による平均粒子径:122nm)を得た。
この実施例1−1における有機粒子、無機粒子、水、MAPTMS、HMDSの各配合量の一覧を以下の表3に示す。
【0113】
<実施例1−1の複合粒子の物性確認>
実施例1−1の複合粒子の、コア粒子の平均粒子径、その変動係数、微粒子平均粒子径/コア粒子平均粒子径、抵抗比ρr、複合粒子の平均粒子径、比誘電率、被覆率の各物性値を表1、表2および以下の表3に示す。また、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価より分かるように、個数変化が3%未満であった。
これにより、実施例1−1の複合粒子は、上述の物性(1)〜(8)を併せもつことを確認した。
<実施例1−1の複合粒子の評価>
実施例1−1の複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価、および、凝集度変化による流動性評価は、いずれも「A」評価であった。また、実施例1−1の複合粒子は、良好な帯電量をもつことを確認した。
【0114】
実施例1−2〜1−11
<実施例1−2〜1−11の複合粒子の製造>
これらの実施例1−2〜1−11の複合粒子として、有機粒子、シリカ粒子、水の各配合量を以下の表3に示す配合量に変更した以外は、実施例1−1と同様の方法で製造した複合粒子を用いた。
【0115】
実施例1−12
<実施例1−12の複合粒子の製造>
実施例1−12ではシリカ粒子を合成例12で合成したチタン酸ストロンチウムに変更して用いた以外は実施例1−1と同様の方法で製造した複合粒子を用いた。
【0116】
実施例1−13
<実施例1−13の複合粒子の製造>
また、実施例1−13ではシリカ粒子を酸化チタンSRD−02W(堺化学工業(株)社製):平均粒子径9nmに変更して用いた以外は、実施例1−1と同様の方法で製造した複合粒子を用いた。
【0117】
実施例1−14
<実施例1−14の複合粒子の製造>
また、実施例1−14ではシリカ粒子を酸化セリウムTECNADIS−CE−115(TECNAN社製):平均粒子径5nmに変更して用いた以外は、実施例1−1と同様の方法で製造した複合粒子を用いた。
【0118】
上記実施例1−2〜1−14における有機粒子、無機粒子、水、MAPTMS、HMDSの各配合量の一覧を以下の表3に示す。
【0119】
<実施例1−2〜1−14の複合粒子の物性確認>
実施例1−2〜1−14の各複合粒子についての、コア粒子の平均粒子径、その変動係数、微粒子平均粒子径/コア粒子平均粒子径、抵抗比ρr、複合粒子の平均粒子径、比誘電率、被覆率の物性値を表1、表2および以下の表3に示す。
実施例1−2、1−3、1−5、1−6、1−8、1−9、1−11〜1−14の各複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価より分かるように、個数変化が3%未満であり、実施例1−4、1−7、1−10の各複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価より分かるように、個数変化が3%以上5%未満であった。
これにより、実施例1−2〜1−14の各複合粒子は、いずれも、上述の物性(1)〜(8)を併せもつことを確認した。
<実施例1−2〜1−14の複合粒子の評価>
実施例1−2〜1−14の複合粒子のうち、実施例1−4、1−7、1−10の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価が「B」評価であった以外は、いずれも「A」評価であった。
実施例1−2〜1−14の複合粒子のうち、実施例1−4、1−7、1−10、1−13の凝集度変化による流動性評価が「B」評価であった以外は、いずれも「A」評価であった。
実施例1−2〜1−14の複合粒子は、いずれも良好な帯電量をもつことを確認した。
【0120】
【表3】
【0121】
実施例2−1〜2−8
この実施例2−1〜2−8は、1種類の無機コア粒子と、1種類の有機微粒子を備える複合粒子の製造例である。
【0122】
実施例2−1
<実施例2−1の複合粒子の製造>
1.粒子付着体形成工程
冷却機、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、液温30℃の、合成例9で合成したシリカ粒子(平均粒子径:110nm)100gを含む無機粒子分散液500gと、液温30℃の、合成例5で合成したPMMA微粒子(平均粒子径:8nm)160gを含む有機微粒子分散液888gを混合して分散液を得た。その後、分散液の全量が2500gになるまで蒸留水を加えた。その後、分散液を30℃に保ったまま3時間、撹拌した。その後、液温および撹拌を維持した分散液に、そのpHを測定しながら、pH2.0になるまで2時間かけて0.1M塩酸溶液を滴下し続け、pH2.0になったところで塩酸の滴下を停止した。その後、60℃まで昇温してから、60℃で5時間、撹拌することにより、シリカコア粒子表面にPMMA微粒子を付着させた。
【0123】
2.複合粒子形成工程
粒子付着体が形成された分散液を室温まで冷却した後、分散液に50.0gのMAPTMSを一気に添加し、撹拌しながら、10%アンモニア水をpH8.0になるまで2時間かけて徐々に滴下した。分散液がpH8.0になったことを確認した後、そのpHを維持したまま室温で6時間反応させることにより、コア粒子の表面にシリカ粒子を固定化させた粒子付着体を得た。
その後、蒸留水を100g添加し、液量が半分になるまでエバポレータを用いて濃縮し、遠心沈降により固液分離した。上澄み液をデカンテーションで除去した後、蒸留水300gを加え、同様に固液分離を行った。蒸留水300gの添加、遠心沈降による固液分離、上澄み液のデカンテーションの一連の操作を合計3度繰り返した後、沈殿物を24時間凍結乾燥させることにより、白色粉末を得た。
【0124】
3.粒子疎水化工程
その後、複合粒子形成工程によって得られた白色粉末10gを、水200gとヘキサメチルジシラザン(HMDS)15gの混合物に加え、室温で30分間、撹拌し、さらに、60℃で4時間、撹拌した後、固液分離を行い、得られた沈殿物をメタノールで洗浄し、その後、50℃で48時間乾燥させることにより、表面を疎水化した複合粒子の白色粉末(SEM画像観察による平均粒子径:125nm)を得た。
この実施例2−1における有機粒子、無機粒子、水、MAPTMS、HMDSの各配合量の一覧を以下の表4に示す。
【0125】
<実施例2−1の複合粒子の物性確認>
実施例2−1の複合粒子の、コア粒子の平均粒子径、その変動係数、微粒子平均粒子径/コア粒子平均粒子径、抵抗比ρr、複合粒子の平均粒子径、比誘電率、被覆率の各物性値を表1、表2および以下の表4に示す。また、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価より分かるように、個数変化が3%未満であった。
これにより、実施例2−1の複合粒子は、上述の物性(1)〜(8)を併せもつことを確認した。
<実施例2−1の複合粒子の評価>
実施例2−1の複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価は「B」評価であり、凝集度変化による流動性評価は「A」評価であった。また、実施例2−1の複合粒子は、良好な帯電量をもつことを確認した。
【0126】
実施例2−2〜2−8
<実施例2−2〜2−8の複合粒子の製造>
これらの実施例2−2〜2−8の複合粒子として、有機粒子、無機粒子、水の各配合量を以下の表4に示す配合量に変更した以外は、実施例2−1と同様の方法で製造した複合粒子を用いた。
この実施例2−2〜2−8における有機粒子、無機粒子、水、MAPTMS、HMDSの各配合量の一覧を以下の表4に示す。
【0127】
<実施例2−2〜2−8の複合粒子の物性確認>
実施例2−2〜2−8の各複合粒子についての、コア粒子の平均粒子径、その変動係数、微粒子平均粒子径/コア粒子平均粒子径、抵抗比ρr、複合粒子の平均粒子径、比誘電率、被覆率の物性値を表1、表2および以下の表4に示す。
実施例2−2〜2−8の各複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価より分かるように、個数変化が3%未満であった。
これにより、実施例2−2〜2−8の各複合粒子は、いずれも、上述の物性(1)〜(8)を併せもつことを確認した。
<実施例2−2〜2−8の複合粒子の評価>
実施例2−2〜2−8の複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価は、いずれも「A」評価であった。
実施例2−2〜2−8の複合粒子のうち、実施例2−5の凝集度変化による流動性評価が「B」評価であった以外は、いずれも「A」評価であった。
実施例2−2〜2−8の複合粒子は、いずれも良好な帯電量をもつことを確認した。
【0128】
【表4】
【0129】
実施例3−1〜3−6
この実施例3−1〜3−6は、1種類の有機コア粒子と、1種類の無機微粒子と、1種類の有機微粒子を備える複合粒子の製造例である。
【0130】
実施例3−1
<実施例3−1の複合粒子の製造>
1.粒子付着体形成工程
冷却機、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、液温30℃の、合成例1で合成したPMMA粒子(平均粒子径:80nm)100gを含む有機粒子分散液555gと、液温30℃の、合成例6で合成したシリカ微粒子(平均粒子径:20nm)80gを含む無機粒子分散液400gと蒸留水1564gを混合して分散液を得た。その後、分散液を30℃に保ったまま3時間、撹拌した。その後、液温および撹拌を維持した分散液に、そのpHを測定しながら、pH2.0になるまで2時間かけて0.1M塩酸溶液を滴下し続け、pH2.0になったところで塩酸の滴下を停止した。その後、60℃まで昇温してから、60℃で5時間、撹拌することにより、PMMAコア粒子表面にシリカ微粒子を付着させた。
その後、予め、60℃に加温しておいた、合成例5で合成したPMMA微粒子(平均粒子径:8nm)35gを含む分散液194gを直ちに加え、60℃で5時間、撹拌することにより、表面にシリカ微粒子を付着させたPMMAコア粒子の表面にPMMA微粒子をさらに付着させた粒子付着体を形成した。この工程では、分散液の全量が2500gになるまで蒸留水を加えており、その蒸留水の合計量を2285gとした。
【0131】
2.複合粒子形成工程
粒子付着体が形成された分散液を室温まで冷却した後、分散液に10.0gのMAPTMSを一気に添加し、10%アンモニア水をpH8.0になるまで2時間かけて徐々に滴下した。分散液がpH8.0になったことを確認した後、そのpHを維持したまま室温で6時間反応させ、PMMAコア粒子の表面にシリカ微粒子およびPMMA微粒子固定化させた複合粒子を得た。
その後、蒸留水100gを添加し、液量が半分になるまでエバポレータを用いて濃縮し、遠心沈降により生成物を固液分離した。上澄み液をデカンテーションで除去した後、蒸留水300gを加え、同様に固液分離を行った。蒸留水300gの添加、遠心沈降による固液分離、上澄み液のデカンテーションの一連の操作を合計3度繰り返した後、沈殿物を24時間凍結乾燥させることにより、白色粉末を得た。
【0132】
3.粒子疎水化工程
その後、複合粒子形成工程によって得られた白色粉末10gを、水200gとヘキサメチルジシラザン(HMDS)15gの混合物に加え、室温で30分間、撹拌し、さらに、60℃で4時間、撹拌した後、固液分離を行い、得られた沈殿物をメタノールで洗浄し、その後、50℃で48時間乾燥させることにより、表面を疎水化した複合粒子の白色粉末(SEM画像観察による平均粒子径:123nm)を得た。
この実施例3−1における有機粒子、無機粒子、水、MAPTMS、HMDSの各配合量の一覧を以下の表5に示す。
【0133】
<実施例3−1の複合粒子の物性確認>
実施例3−1の複合粒子の、コア粒子の平均粒子径、その変動係数、微粒子平均粒子径/コア粒子平均粒子径、抵抗比ρr、複合粒子の平均粒子径、比誘電率、被覆率の各物性値を表1、表2および以下の表5に示す。また、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価より分かるように、個数変化が3%未満であった。
これにより、実施例3−1の複合粒子は、上述の物性(1)〜(8)を併せもつことを確認した。
<実施例3−1の複合粒子の評価>
実施例3−1の複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価、および、凝集度変化による流動性評価は、いずれも「A」評価であった。また、実施例3−1の複合粒子は、良好な帯電量をもつことを確認した。
【0134】
実施例3−2〜3−6
<実施例3−2〜3−6の複合粒子の製造>
これらの実施例3−2〜3−6の複合粒子として、有機粒子、無機粒子、水の各配合量を以下の表5に示す配合量に変更した以外は、実施例3−1と同様の方法で製造した複合粒子を用いた。
この実施例3−2〜3−6における有機粒子、無機粒子、水、MAPTMS、HMDSの各配合量の一覧を以下の表5に示す。
【0135】
<実施例3−2〜3−6の複合粒子の物性確認>
実施例3−2〜3−6の各複合粒子についての、コア粒子の平均粒子径、その変動係数、微粒子平均粒子径/コア粒子平均粒子径、抵抗比ρr、複合粒子の平均粒子径、比誘電率、被覆率の物性値を表1、表2および以下の表5に示す。
実施例3−2〜3−6の各複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価より分かるように、個数変化が3%未満であった。
これにより、実施例3−2〜3−6の各複合粒子は、いずれも、上述の物性(1)〜(8)を併せもつことを確認した。
<実施例3−2〜3−6の複合粒子の評価>
実施例3−2〜3−6の複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価は、いずれも「A」評価であった。
実施例3−2〜3−6の複合粒子のうち、実施例3−2、3−5の凝集度変化による流動性評価が「B」評価であった以外は、いずれも「A」評価であった。
実施例3−2〜3−6の複合粒子は、いずれも良好な帯電量をもつことを確認した。
【0136】
【表5】
【0137】
実施例4−1〜4−6
この実施例4−1〜4−6は、無機コア粒子と、1種類の有機微粒子と、1種類の無機微粒子を備える複合粒子の製造例である。
【0138】
実施例4−1
<実施例4−1の複合粒子の製造>
1.粒子付着体形成工程
冷却機、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、液温30℃の、合成例9で合成したシリカ粒子(平均粒子径:110nm)100gを含む無機粒子分散液500gと、液温30℃の、合成例5で合成したPMMA微粒子(平均粒子径:8nm)30gを含む有機微粒子分散液167gと蒸留水1863gを混合して分散液を得た。その後、分散液を30℃に保ったまま3時間、撹拌した。その後、液温および撹拌速度を維持した分散液に、そのpHを測定しながら、pH2.0になるまで2時間かけて0.1M塩酸溶液を滴下し続け、pH2.0になったところで塩酸の滴下を停止した。その後、60℃まで昇温してから、60℃で5時間、撹拌することにより、シリカコア粒子表面にPMMA微粒子を付着させた。
その後、予め、60℃に加温しておいた、合成例6で合成したシリカ微粒子(平均粒子径:20nm)25gを含む分散液125gを直ちに加え、60℃で5時間、撹拌することにより、表面にPMMA微粒子を付着させたシリカコア粒子の表面にシリカ微粒子をさらに付着させた粒子付着体を形成した。この工程では、分散液の全量が2500gになるまで蒸留水を加えており、その蒸留水の合計量を2345gとした。
【0139】
2.複合粒子形成工程
粒子付着体が形成された分散液を室温まで冷却した後、分散液に10.0gのMAPTMSを一気に添加し、10%アンモニア水をpH8.0になるまで2時間かけて徐々に滴下した。分散液がpH8.0になったことを確認した後、そのpHを維持したまま室温で6時間反応させ、シリカコア粒子の表面にPMMA微粒子およびシリカ微粒子を固定化させた複合粒子を得た。
その後、蒸留水を100g添加し、液量が半分になるまでエバポレータを用いて濃縮し、遠心沈降により固液分離した。上澄み液をデカンテーションで除去した後、蒸留水300gを加え、同様に固液分離を行った。蒸留水300gの添加、遠心沈降による固液分離、上澄み液のデカンテーションの一連の操作を合計3度繰り返した後、沈殿物を24時間凍結乾燥させることにより、白色粉末を得た。
【0140】
3.粒子疎水化工程
その後、複合粒子形成工程によって得られた白色粉末10gを、水200gとヘキサメチルジシラザン(HMDS)15gの混合物に加え、室温で30分間、撹拌し、さらに、60℃で4時間撹拌した後、固液分離を行い、得られた沈殿物をメタノールで洗浄し、その後、50℃で48時間乾燥させることにより、表面を疎水化した複合粒子の白色粉末(SEM画像観察による平均粒子径:153nm)を得た。
この実施例4−1における有機粒子、無機粒子、水、MAPTMS、HMDSの各配合量の一覧を以下の表6に示す。
【0141】
<実施例4−1の複合粒子の物性確認>
実施例4−1の複合粒子の、コア粒子の平均粒子径、その変動係数、微粒子平均粒子径/コア粒子平均粒子径、抵抗比ρr、複合粒子の平均粒子径、比誘電率、被覆率の各物性値を表1、表2および以下の表6に示す。また、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価より分かるように、個数変化が3%未満であった。
これにより、実施例4−1の複合粒子は、上述の物性(1)〜(8)を併せもつことを確認した。
<実施例4−1の複合粒子の評価>
実施例4−1の複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価、および、凝集度変化による流動性評価は、いずれも「A」評価であった。また、実施例4−1の複合粒子は、良好な帯電量をもつことを確認した。
【0142】
実施例4−2〜4−6
<実施例4−2〜4−6の複合粒子の製造>
これらの実施例4−2〜4−6の複合粒子として、有機粒子、無機粒子、水の各配合量を以下の表6に示す配合量に変更した以外は、実施例4−1と同様の方法で製造した複合粒子を用いた。
この実施例4−2〜4−6における有機粒子、無機粒子、水、MAPTMS、HMDSの各配合量の一覧を以下の表6に示す。
【0143】
<実施例4−2〜4−6の複合粒子の物性確認>
実施例4−2〜4−6の各複合粒子についての、コア粒子の平均粒子径、その変動係数、微粒子平均粒子径/コア粒子平均粒子径、抵抗比ρr、複合粒子の平均粒子径、比誘電率、被覆率の物性値を表1、表2および以下の表6に示す。
実施例4−2〜4−6の各複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価より分かるように、個数変化が3%未満であった。
これにより、実施例4−2〜4−6の各複合粒子は、いずれも、上述の物性(1)〜(8)を併せもつことを確認した。
<実施例4−2〜4−6の複合粒子の評価>
実施例4−2〜4−6の複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価は、いずれも「A」評価であった。
実施例4−2〜4−6の複合粒子のうち、実施例4−2の凝集度変化による流動性評価が「B」評価であった以外は、いずれも「A」評価であった。
実施例4−2〜4−6の複合粒子は、いずれも良好な帯電量をもつことを確認した。
【0144】
【表6】
【0145】
比較例1.
<比較例1の複合粒子の製造>
この比較例1の複合粒子として、合成例1で合成したPMMAコア粒子(平均粒子径:80nm)に合成例6で合成したシリカ微粒子(平均粒子径:20nm)を付着させた粒子付着体に対してMAPTMSによる表面処理を行わない以外は、実施例1−1と同様の方法で製造した複合粒子を用いた。
この比較例1における有機粒子、無機粒子、水、HMDSの各配合量の一覧を以下の表7に示す。
【0146】
<比較例1の複合粒子の物性確認>
比較例1の複合粒子についての、コア粒子の平均粒子径、その変動係数、微粒子平均粒子径/コア粒子平均粒子径、抵抗比ρr、複合粒子の平均粒子径、比誘電率、被覆率の物性値を表1、表2および以下の表7に示す。
比較例1の複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価より分かるように、個数変化が5%以上10%未満であり、抵抗比ρrが1.5であり、上述の物性(5)の数値範囲を満たしていないことを確認した。
<比較例1の複合粒子の評価>
比較例1の複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価および凝集度変化による流動性評価は、いずれも「C」評価であり、帯電量は適切な範囲より低い−320であった。
従って、比較例1の複合粒子は、流動性を失った粒子が少なからず存在し、また、帯電量が少ないことを確認した。この評価結果は、比較例1の複合粒子の抵抗比ρrが物性(5)の数値範囲を満たしていないことに起因していると考えられる。
【0147】
比較例2.
<比較例2の複合粒子の製造>
この比較例2の複合粒子として、合成例1で合成したPMMAコア粒子(平均粒子径:80nm)に合成例7で合成したシリカ微粒子(平均粒子径:30nm)を付着させた粒子付着体に対してMAPTMSによる表面処理を行わない以外は、実施例1−4と同様の方法で製造した複合粒子を用いた。
この比較例2における有機粒子、無機粒子、水、HMDSの各配合量の一覧を以下の表7に示す。
【0148】
<比較例2の複合粒子の物性確認>
比較例2の複合粒子についての、コア粒子の平均粒子径、その変動係数、微粒子平均粒子径/コア粒子平均粒子径、抵抗比ρr、複合粒子の平均粒子径、比誘電率、被覆率の物性値を表1、表2および以下の表7に示す。
比較例2の複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価より分かるように、個数変化が10%以上であり、抵抗比ρrが3であり、上述の物性(5)および(6)の数値範囲を満たしていないことを確認した。
<比較例2の複合粒子の評価>
比較例2の複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価および凝集度変化による流動性評価は、いずれも「D」評価であった。
従って、比較例2の複合粒子は、付着強度が低く、流動性を失っていることを確認した。この評価結果は、比較例2の複合粒子の個数変化および抵抗比ρrが物性(5)および(6)の数値範囲を満たしていないことに起因していると考えられる。
【0149】
比較例3.
<比較例3の複合粒子の製造>
この比較例3の複合粒子として、合成例1で合成したPMMAコア粒子(平均粒子径:80nm)に合成例8で合成したシリカ微粒子(平均粒子径:9nm)を付着させた粒子付着体に対してMAPTMSによる表面処理を行わない以外は、実施例1−5と同様の方法で製造した複合粒子を用いた。
この比較例3における有機粒子、無機粒子、水、HMDSの各配合量の一覧を以下の表7に示す。
【0150】
<比較例3の複合粒子の物性確認>
比較例3の複合粒子についての、コア粒子の平均粒子径、その変動係数、微粒子平均粒子径/コア粒子平均粒子径、抵抗比ρr、複合粒子の平均粒子径、比誘電率、被覆率の物性値を表1、表2および以下の表7に示す。
比較例3の複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価より分かるように、個数変化が5%以上10%未満、抵抗比ρrが1.6であり、上述の物性(5)および(6)の数値範囲を満たしていないことを確認した。
<比較例3の複合粒子の評価>
比較例3の複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価は「C」評価であり、凝集度変化による流動性評価は「B」評価であり、帯電量は適切な範囲より低い−350であった。
従って、比較例3の複合粒子は、付着強度が極めて低く、流動性を失っていることを確認した。この評価結果は、比較例3の複合粒子の個数変化および抵抗比ρrが物性(5)および(6)の数値範囲を満たしていないことに起因していると考えられる。
【0151】
比較例4.
<比較例4の複合粒子の製造>
この比較例4の複合粒子として、合成例2で合成したPMMAコア粒子(平均粒子径:205nm)に合成例6で合成したシリカ微粒子(平均粒子径:20nm)を付着させた粒子付着体に対してMAPTMSによる表面処理を行わない以外は、実施例1−6と同様の方法で製造した複合粒子を用いた。
この比較例4における有機粒子、無機粒子、水、HMDSの各配合量の一覧を以下の表7に示す。
【0152】
<比較例4の複合粒子の物性確認>
比較例4の複合粒子についての、コア粒子の平均粒子径、その変動係数、微粒子平均粒子径/コア粒子平均粒子径、抵抗比ρr、複合粒子の平均粒子径、比誘電率、被覆率の物性値を表1、表2および以下の表7に示す。
比較例4の複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価より分かるように、個数変化が5%以上10%未満であり、抵抗比ρrが1.5であり、上述の物性(5)および(6)の数値範囲を満たしていないことを確認した。
<比較例4の複合粒子の評価>
比較例4の複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価および凝集度変化による流動性評価は、いずれも「C」評価であり、帯電量は適切な範囲より低い−400であった。
従って、比較例4の複合粒子は、付着強度が低く、流動性を失っていることを確認した。この評価結果は、比較例4の複合粒子の個数変化および抵抗比ρrが物性(5)および(6)の数値範囲を満たしていないことに起因していると考えられる。
【0153】
比較例5.
<比較例5の複合粒子の製造>
この比較例5の複合粒子として、合成例3で合成したPMMAコア粒子(平均粒子径:300nm)に合成例6で合成したシリカ微粒子(平均粒子径:20nm)を付着させた粒子付着体に対してMAPTMSによる表面処理を行わない以外は、実施例1−9と同様の方法で製造した複合粒子を用いた。
この比較例5における有機粒子、無機粒子、水、HMDSの各配合量の一覧を以下の表7に示す。
【0154】
<比較例5の複合粒子の物性確認>
比較例5の複合粒子についての、コア粒子の平均粒子径、その変動係数、微粒子平均粒子径/コア粒子平均粒子径、抵抗比ρr、複合粒子の平均粒子径、比誘電率、被覆率の物性値を表1、表2および以下の表7に示す。
比較例5の複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価より分かるように、個数変化が5%以上10%未満であり、抵抗比ρrが1.5であり、上述の物性(5)および(6)の数値範囲を満たしていないことを確認した。
<比較例5の複合粒子の評価>
比較例5の複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価および凝集度変化による流動性評価は、いずれも「C」評価であり、帯電量は適切な範囲より低い−330であった。
従って、比較例5の複合粒子は、付着強度が低く、流動性を失っていることを確認した。この評価結果は、比較例5の複合粒子の個数変化および抵抗比ρrが物性(5)および(6)の数値範囲を満たしていないことに起因していると考えられる。
【0155】
比較例6.
<比較例6の複合粒子の製造>
この比較例6の複合粒子として、合成例9で合成したシリカコア粒子(平均粒子径:110nm)上に合成例5で合成したPMMA微粒子(平均粒子径:8nm)を付着させた複合粒子に対してMAPTMSによる表面処理を行わない以外は、実施例2−2と同様の方法で製造した複合粒子を用いた。
この比較例6における有機粒子、無機粒子、水、HMDSの各配合量の一覧を以下の表7に示す。
【0156】
<比較例6の複合粒子の物性確認>
比較例6の複合粒子についての、コア粒子の平均粒子径、その変動係数、微粒子平均粒子径/コア粒子平均粒子径、抵抗比ρr、複合粒子の平均粒子径、比誘電率、被覆率の物性値を表1、表2および以下の表7に示す。
比較例6の複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価より分かるように、個数変化が5%以上10%未満であり、抵抗比ρrが1.5であり、上述の物性(5)および(6)の数値範囲を満たしていないことを確認した。
<比較例6の複合粒子の評価>
比較例6の複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価および凝集度変化による流動性評価は、いずれも「C」評価であり、帯電量は適切な範囲より低い−420であった。
従って、比較例6の複合粒子は、付着強度が低く、流動性を失っていることを確認した。この評価結果は、比較例6の複合粒子の個数変化および抵抗比ρrが物性(5)および(6)の数値範囲を満たしていないことに起因していると考えられる。
【0157】
比較例7.
<比較例7の複合粒子の製造>
この比較例7の複合粒子として、合成例10で合成したシリカコア粒子(平均粒子径:80nm)上に合成例5で合成したPMMA微粒子(平均粒子径:8nm)を付着させた複合粒子に対してMAPTMSによる表面処理を行わない以外は、実施例2−5と同様の方法で製造した複合粒子を用いた。
この比較例7における有機粒子、無機粒子、水、HMDSの各配合量の一覧を以下の表7に示す。
【0158】
<比較例7の複合粒子の物性確認>
比較例7の複合粒子についての、コア粒子の平均粒子径、その変動係数、微粒子平均粒子径/コア粒子平均粒子径、抵抗比ρr、複合粒子の平均粒子径、比誘電率、被覆率の物性値を表1、表2および以下の表7に示す。
比較例7の複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価より分かるように、個数変化が10%以上であり、抵抗比ρrが1.5であり、上述の物性(5)および(6)の数値範囲を満たしていないことを確認した。
<比較例7の複合粒子の評価>
比較例7の複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価は「D」評価であり、凝集度変化による流動性評価は「C」評価であり、帯電量は適切な範囲より低い−460であった。
従って、比較例7の複合粒子は、付着強度が極めて低く、流動性を失っていることを確認した。この評価結果は、比較例7の複合粒子の個数変化および抵抗比ρrが物性(5)および(6)の数値範囲を満たしていないことに起因していると考えられる。
【0159】
比較例8.
<比較例8の複合粒子の製造>
この比較例8の複合粒子として、合成例11で合成したシリカコア粒子(平均粒子径:290m)上に合成例5で合成したPMMA微粒子(平均粒子径:8m)を付着させた複合粒子に対してMAPTMSによる表面処理を行わない以外は、実施例2−7と同様の方法で製造した複合粒子を用いた。
この比較例8における有機粒子、無機粒子、水、HMDSの各配合量の一覧を以下の表7に示す。
【0160】
<比較例8の複合粒子の物性確認>
比較例8の複合粒子についての、コア粒子の平均粒子径、その変動係数、微粒子平均粒子径/コア粒子平均粒子径、抵抗比ρr、複合粒子の平均粒子径、比誘電率、被覆率の物性値を表1、表2および以下の表7に示す。
比較例8の複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価より分かるように、個数変化が5%以上10%未満であり、抵抗比ρrが1.5であり、上述の物性(5)および(6)の数値範囲を満たしていないことを確認した。
<比較例8の複合粒子の評価>
比較例8の複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価および凝集度変化による流動性評価は、いずれも「C」評価であり、帯電量は適切な範囲より低い−390であった。
従って、比較例8の複合粒子は、付着強度が低く、流動性を失っていることを確認した。この評価結果は、比較例8の複合粒子の個数変化および抵抗比ρrが物性(5)および(6)の数値範囲を満たしていないことに起因していると考えられる。
【0161】
比較例9.
<比較例9の粒子の製造>
この比較例9の粒子として、合成例9で合成したシリカ粒子(平均粒子径:110nm)の表面を、実施例2−1の疎水化工程と同様の方法で、ヘキサメチルジシラザン(HMDS)により疎水化したシリカ粒子を用いた。この比較例9の粒子は、複合粒子ではなく、無機粒子であり、その表面はMAPTMSによる表面処理を行っていない。
この比較例9における有機粒子、無機粒子、水、HMDSの各配合量の一覧を以下の表7に示す。
【0162】
<比較例9の粒子の物性確認>
比較例9の粒子についての、コア粒子の平均粒子径、その変動係数、抵抗比ρr、比誘電率の物性値を表1、表2および以下の表7に示す。
比較例9の粒子は、複合粒子ではないので、上述の物性(3)および(6)の数値範囲を満たさない。
<比較例9の粒子の評価>
比較例9の粒子の凝集度変化による流動性評価は「C」評価であった。
従って、比較例9の粒子は、流動性を失っていることを確認した。この評価結果は、ターブラーミキサーによる撹拌振盪時にアクリル樹脂から離脱し、フェライト樹脂に移行したことに起因していると考えられる。
【0163】
比較例10.
<比較例10の粒子の製造>
この比較例10の粒子として、合成例1で合成したPMMA粒子(平均粒子径:80nm)をそのまま用いた。この比較例10の粒子は、複合粒子ではなく、有機粒子であり、その表面はMAPTMSによる表面処理を行っていない。
この比較例10における有機粒子、無機粒子、水の各配合量の一覧を以下の表7に示す。
【0164】
<比較例10の粒子の物性確認>
比較例10の粒子についての、コア粒子の平均粒子径、その変動係数、抵抗比ρr、比誘電率の物性値を表1、表2および以下の表7に示す。
比較例10の粒子は、複合粒子ではないので、上述の物性(3)および(6)の数値範囲を満たさない。
<比較例10の粒子の評価>
比較例10の粒子の凝集度変化による流動性評価は「D」評価であった。
従って、比較例10の粒子は、流動性を失っていることを確認した。この評価結果は、ターブラーミキサーによる撹拌振盪時にアクリル樹脂から離脱し、フェライト樹脂に移行したことに起因していると考えられる。
また、帯電量は−480であり、適切な範囲に制御できないことが分かった。
【0165】
比較例11.
<比較例11の複合粒子の製造>
この比較例11の複合粒子として、合成例1で合成したPMMAコア粒子(平均粒子径:80nm)と合成例6で合成したシリカ微粒子(平均粒子径:20nm)を付着させた後、MAPTMSによる表面処理を行わずに、ターブラーミキサーを用いて30分間撹拌振盪した後、水200gとヘキサメチルジシラザン(HMDS)15gを加え、室温で30分間、撹拌し、さらに、60℃で4時間撹拌した後、固液分離を行い、得られた沈殿物をメタノールで洗浄し、その後、48時間乾燥させた複合粒子を用いた。
この比較例11における有機粒子、無機粒子、水、HMDSの各配合量の一覧を以下の表7に示す。
【0166】
<比較例11の複合粒子の物性確認>
比較例11の複合粒子についての、コア粒子の平均粒子径、その変動係数、微粒子平均粒子径/コア粒子平均粒子径、抵抗比ρr、複合粒子の平均粒子径、比誘電率、被覆率の物性値を表1、表2および以下の表7に示す。
比較例11の複合粒子は、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価より分かるように、個数変化が10%以上であり、抵抗比ρrが1.5であり、上述の物性(5)および(6)の数値範囲を満たしていないことを確認した。
<比較例11の複合粒子の評価>
比較例11の複合粒子の、コア粒子に対する微粒子の付着強度評価および凝集度変化による流動性評価は、いずれも「D」評価であり、帯電量は適切な範囲より低い−350であった。
従って、比較例11の粒子は、付着強度が低く、流動性を失っていることを確認した。この評価結果は、比較例11の粒子のような製造方法では、コア粒子と微粒子の付着強度が十分でないことに起因していると考えられる。
【0167】
【表7】
【0168】
上述した実施の形態では、本発明の複合粒子をトナー用外添剤に適用する例を説明し、上述した実施例では、本発明の複合粒子が、トナー用外添剤に求められる、微粒子のコア粒子上への付着強度、良好な帯電量、高い流動性を確保できることを確認したが、本発明の複合粒子を、粉体塗料、撥水剤、ディスプレイ、アンチグレアフィルム(反射防止フィルム)などの他の用途に適用する場合においても、上述した実施例で示した効果と同様の効果を得ることができるので、それらの各用途においても好適に使用可能である。
【0169】
上述した実施例では、本発明の複合粒子が1種類の有機材料または無機材料を主成分とする1個のコア粒子を備える例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、1個のコア粒子が、例えば、図1にC1,C2,C3・・・Cnで示した複数種類の有機材料または無機材料を主成分とする粒子を合一してなる集合体としてもよい。このように複数種類の粒子を合一してなる集合体であるコア粒子を備える本発明の複合粒子は、上述した実施例で示した効果と同様の効果を得ることができる。
また、上述した実施例では、有機コア粒子または有機微粒子を形成する有機材料としてアクリル樹脂を用いた例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの他の有機材料を用いた場合であっても、上述した実施例で示した効果と同様の効果を得ることができる。
さらに、上述した実施例では、無機コア粒子または無機微粒子を形成する無機材料としてシリカを用いた例を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、他の無機材料を用いた場合であっても、上述した実施例で示した効果と同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0170】
A,C1,C2,C3・・・Cn コア粒子, B 微粒子,
N 無機材料層, D 複合粒子の平均粒子径,
DA コア粒子の平均粒子径, DB 微粒子の平均粒子径,
X,Y 弦。
図1
図2
図3
図4
図5
図6