特許第6490445号(P6490445)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ グラフテック株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6490445-エンボス加工機の制御方法 図000002
  • 特許6490445-エンボス加工機の制御方法 図000003
  • 特許6490445-エンボス加工機の制御方法 図000004
  • 特許6490445-エンボス加工機の制御方法 図000005
  • 特許6490445-エンボス加工機の制御方法 図000006
  • 特許6490445-エンボス加工機の制御方法 図000007
  • 特許6490445-エンボス加工機の制御方法 図000008
  • 特許6490445-エンボス加工機の制御方法 図000009
  • 特許6490445-エンボス加工機の制御方法 図000010
  • 特許6490445-エンボス加工機の制御方法 図000011
  • 特許6490445-エンボス加工機の制御方法 図000012
  • 特許6490445-エンボス加工機の制御方法 図000013
  • 特許6490445-エンボス加工機の制御方法 図000014
  • 特許6490445-エンボス加工機の制御方法 図000015
  • 特許6490445-エンボス加工機の制御方法 図000016
  • 特許6490445-エンボス加工機の制御方法 図000017
  • 特許6490445-エンボス加工機の制御方法 図000018
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6490445
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】エンボス加工機の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B31F 1/07 20060101AFI20190318BHJP
   B26D 5/00 20060101ALI20190318BHJP
   B26D 3/08 20060101ALI20190318BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   B31F1/07
   B26D5/00 F
   B26D3/08 Z
   B29C59/02 Z
【請求項の数】3
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2015-32570(P2015-32570)
(22)【出願日】2015年2月23日
(65)【公開番号】特開2016-155229(P2016-155229A)
(43)【公開日】2016年9月1日
【審査請求日】2017年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000105062
【氏名又は名称】グラフテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100064621
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 政樹
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】岡 良一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 和宏
(72)【発明者】
【氏名】大平 努
【審査官】 新田 亮二
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−277353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B31F 1/07
B26D 3/08
B26D 5/00
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工媒体が貼り付けられた支持体を第1の方向に移動させる第1の駆動装置の動作と、刃を有する切断ツールおよび被加工媒体を押して凹ませるエンボス加工ツールを前記支持体の主面と平行でかつ前記第1の方向とは異なる第2の方向に移動させる第2の駆動装置の動作とを制御することにより、前記切断ツールを前記被加工媒体の予め定めた第1の目標位置と対向する位置に移動させる第1のハーフカットステップと、
前記切断ツールを前記支持体の主面とは直交する第3の方向に移動させる押圧装置の動作を制御することにより、前記刃を前記被加工媒体に刺して刃先が前記被加工媒体の表面と裏面との間に位置する状態で止める第2のハーフカットステップと、
前記刃が前記被加工媒体に刺さっている状態で、前記支持体を第1の駆動装置によって前記第1の方向に移動させるとともに、前記切断ツールを前記第2の駆動装置によって前記第2の方向に移動させることにより、エンボス加工が施されることがない非加工部とエンボス加工部との境界部分に切断線を形成する第3のハーフカットステップと、
前記押圧装置の動作を制御することにより、前記切断ツールを刃が前記被加工媒体から抜ける位置に移動させる第4のハーフカットステップと、
前記被加工媒体を押して凹ませるエンボス加工ツールを、前記第1の駆動装置および第2の駆動装置の動作を制御することにより、前記被加工媒体の前記切断線に沿う第2の目標位置と対向する位置に移動させる第1のエンボス加工ステップと、
前記エンボス加工ツールを前記第3の方向に移動させる押圧装置の動作を制御することにより、前記第2の目標位置に前記エンボス加工ツールを押し付け、前記被加工媒体に凹部を形成する第2のエンボス加工ステップと、
前記第3のハーフカットステップの後に、前記エンボス加工ツールが前記被加工媒体を押圧している状態で、前記支持体を第1の駆動装置によって前記第1の方向に移動させるとともに、前記エンボス加工ツールを前記第2の駆動装置によって前記第2の方向に移動させることにより、前記被加工媒体に前記切断線に沿って延びる連続した凹部からなる前記エンボス加工部を形成し、前記境界部分を前記切断線の部分で折る第3のエンボス加工ステップとを有することを特徴とするエンボス加工機の制御方法。
【請求項2】
請求項1記載のエンボス加工機の制御方法において、
前記第3のハーフカットステップで形成される前記切断線の形状が閉じた線形状である場合は、前記エンボス加工部を前記閉じた線形状の内部に形成することを特徴とするエンボス加工機の制御方法。
【請求項3】
請求項2記載のエンボス加工機の制御方法において、
前記閉じた線形状の内部に他の閉じた線形状が存在する場合は、前記閉じた線形状と、前記他の閉じた線形状との間に前記エンボス加工部を形成することを特徴とするエンボス加工機の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート状の被加工媒体に加工ツールを押し付けてエンボス加工を施すエンボス加工機の制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、シート状の被加工媒体にエンボス加工を施すエンボス加工機としては、例えば特許文献1に記載されているものがある。この特許文献1に開示されたエンボス加工機は、帯状の被加工媒体を送る機能を有するプラテンローラと、このプラテンローラ上の被加工媒体に押し付けられるエンボス加工ツールとを備えている。帯状の被加工媒体は、プラテンローラに隣接して配置された供給用リールから引き出して使用されている。
【0003】
プラテンローラは、被加工媒体を巻掛けることが可能な大きさの円筒状に形成されており、駆動装置によって駆動されて回転する。このプラテンローラの外周部は、弾性を有している。また、プラテンローラの軸方向の両端部には、スプロケットが設けられている。このスプロケットは、被加工媒体の両側部に形成された多数の送り穴に係合し、プラテンローラの回転に伴って被加工媒体を長手方向に送る。
【0004】
エンボス加工ツールは、被加工媒体に押し付けられる回転自在なボールを有している。このエンボス加工ツールは、ツールヘッドに支持されており、プラテンローラの上方であって、プラテンローラと被加工媒体を挟んで対向する位置に配置されている。ツールヘッドは、エンボス加工ツールを選択的に被加工媒体に押し付ける機能と、エンボス加工ツールとともにプラテンローラの軸線方向に移動する機能とを有している。
【0005】
このエンボス加工機においては、エンボス加工ツールのボールが被加工媒体に押し付けられることによって、被加工媒体に凹部からなるエンボス加工部が形成される。エンボス加工は、このようにエンボス加工部が形成される状態でプラテンローラとツールヘッドとを動作させて行われる。エンボス加工部は、プラテンローラが回転することより被加工媒体の長手方向に延びる。また、エンボス加工部は、ツールヘッドがプラテンローラの軸線方向に移動することによって、被加工媒体の幅方向に延びる。すなわち、特許文献1に開示されているエンボス加工機によれば、プラテンローラとツールヘッドとが協働することによって、任意の形状にエンボス加工を施すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−277353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されているエンボス加工機では、エンボス加工部の形状が明確になるエンボス加工を行うことは難しいという問題があった。この理由は、エンボス加工が施されていない非加工部とエンボス加工部との境界部分が折れ曲がることなく引っ張られるからだと考えられる。
【0008】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、エンボス加工部の形状が明確になるエンボス加工を行うことが可能なエンボス加工機の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的を達成するために、本発明に係るエンボス加工機の制御方法は、被加工媒体が貼り付けられた支持体を第1の方向に移動させる第1の駆動装置の動作と、刃を有する切断ツールおよび前記被加工媒体を押して凹ませるエンボス加工ツールを前記支持体の主面と平行でかつ前記第1の方向とは異なる第2の方向に移動させる第2の駆動装置の動作とを制御することにより、前記切断ツールを前記被加工媒体の予め定めた第1の目標位置と対向する位置に移動させる第1のハーフカットステップと、前記切断ツールを前記支持体の主面とは直交する第3の方向に移動させる押圧装置の動作を制御することにより、前記刃を前記被加工媒体に刺して刃先が前記被加工媒体の表面と裏面との間に位置する状態で止める第2のハーフカットステップと、前記刃が前記被加工媒体に刺さっている状態で、前記支持体を第1の駆動装置によって前記第1の方向に移動させるとともに、前記切断ツールを前記第2の駆動装置によって前記第2の方向に移動させることにより、エンボス加工が施されることがない非加工部とエンボス加工部との境界部分に切断線を形成する第3のハーフカットステップと、前記押圧装置の動作を制御することにより、前記切断ツールを刃が前記被加工媒体から抜ける位置に移動させる第4のハーフカットステップと、前記被加工媒体を押して凹ませるエンボス加工ツールを、前記第1の駆動装置および第2の駆動装置の動作を制御することにより、前記被加工媒体の前記切断線に沿う第2の目標位置と対向する位置に移動させる第1のエンボス加工ステップと、前記エンボス加工ツールを前記第3の方向に移動させる押圧装置の動作を制御することにより、前記第2の目標位置に前記エンボス加工ツールを押し付け、前記被加工媒体に凹部を形成する第2のエンボス加工ステップと、前記第3のハーフカットステップの後に、前記エンボス加工ツールが前記被加工媒体を押圧している状態で、前記支持体を第1の駆動装置によって前記第1の方向に移動させるとともに、前記エンボス加工ツールを前記第2の駆動装置によって前記第2の方向に移動させることにより、前記被加工媒体に前記切断線に沿って延びる連続した凹部からなる前記エンボス加工部を形成し、前記境界部分を前記切断線の部分で折る第3のエンボス加工ステップとによって実施する。
【0010】
本発明は、前記エンボス加工機の制御方法において、前記第3のハーフカットステップで形成される前記切断線の形状が閉じた線形状である場合は、前記エンボス加工部を前記閉じた線形状の内部に形成してもよい。
【0011】
本発明は、前記エンボス加工機の制御方法において、前記閉じた線形状の内部に他の閉じた線形状が存在する場合は、前記閉じた線形状と、前記他の閉じた線形状との間に前記エンボス加工部を形成してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、エンボス加工が施されることがない非加工部とエンボス加工部との境界部分にハーフカット加工が施された後にエンボス加工が行われるから、エンボス加工を行うときにこの境界部分がハーフカット部分で折れる。
したがって、エンボス加工部の形状が明確になるエンボス加工を行うことが可能なエンボス加工機の制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明に係る制御方法により制御されるエンボス加工機の斜視図である。
図2】可動ステージの分解斜視図である。
図3】ワークテーブルの下面を示す斜視図である。
図4】エンボス加工機本体の一部を拡大して示す斜視図である。
図5】搬送装置の一部を拡大して示す斜視図である。
図6】ワークテーブルの下面の一部を拡大して示す斜視図である。
図7】エンボス加工機本体の一部を拡大して示す断面図である。
図8】エンボス加工機本体の一部を拡大して示す斜視図である。
図9】第1のペンツールの側面図である。
図10】第2のペンツールを示す図で、図10(A)は側面図、図10(B)は縦断面図である。
図11】制御系の構成を示すブロック図である。
図12】ハーフカット加工とエンボス加工を行うための制御データを作成する手順を示すフローチャートである。
図13】制御データを作成するときのデータの一例を示す模式図で、図13(A)ハーフカット加工の輪郭形状の一例を示す模式図、図13(B)はエンボス加工の形状の一例を示す模式図である。
図14】本発明に係るエンボス加工機の制御方法を説明するためのフローチャートである。
図15】エンボス加工後の被加工媒体の一部を拡大して示す断面図である。
図16】他の実施の形態による制御データを作成する手順を示すフローチャートである。
図17】エンボス加工用の制御データを作成する手順を説明するための図である。図17(A)は、エンボス加工の目標となる図形の平面図である。図17(B)〜(J)は、塗り潰しパターンを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るエンボス加工機の制御方法の一実施の形態を図1図15によって詳細に説明する。ここでは先ず、本発明による制御方法を実施するために用いるエンボス加工機の構成を図1図11によって説明する。
図1に示すエンボス加工機1は、シート状の被加工媒体2にエンボス加工を施すためのものである。シート状の被加工媒体2は、例えば紙によって形成されたグリーティングカードやその他のメッセージカード、ポストカードなどである。この実施の形態による被加工媒体2には、エンボス加工を行うときの加工位置を特定するために、基準となる位置を示す基準マーク3が設けられている。この基準マーク3は、被加工媒体2の基準となる位置に予め印刷されている。
【0015】
このエンボス加工機1は、被加工媒体2を重ねた状態で保持する可動ステージ4と、この可動ステージ4が通る搬送路5を有するエンボス加工機本体6とによって構成されている。搬送路5は、エンボス加工機本体6の底部に前後方向へ延びる状態で設けられている。ここでいう前後方向とは、被加工媒体2の主面2aと平行な方向であって、図1においてエンボス加工機本体6から右斜め下と左斜め上とを指向する方向である。すなわち、搬送路5は、被加工媒体2の主面2aと平行な方向であって前後方向に延びている。この実施の形態においては、この前後方向が本発明でいう「第1の方向」に相当する。
【0016】
可動ステージ4は、詳細は後述するが、搬送路5の延びる方向である前後方向に移動する。この実施の形態においては、便宜上、図1においてエンボス加工機1から右斜め下を指向する方向(エンボス加工機本体6の正面が指向する方向)を「前方」といい、図において矢印Fによって示す。「後方」は、図においては矢印Rによって示す。また、以下においては、被加工媒体2の主面2aと平行な方向であって、搬送路5の延びる方向(前後方向)とは直交する方向を単に「幅方向」という。この実施の形態においては、この幅方向が本発明でいう「第2の方向」に相当する。
【0017】
可動ステージ4は、図2に示すように、複数の部材を上下方向に重ねて組み立てられている。複数の部材とは、図2において最も下に位置するワークテーブル7と、このワークテーブル7の上に位置する板状スペーサ8、ベース板9およびマット10である。板状スペーサ8と、ベース板9とマット10は、この順序で重ねられている。ワークテーブル7は、剛体によって板状に形成されている。この実施の形態においては、ワークテーブル7が本発明でいう「支持体」に相当する。
【0018】
板状スペーサ8は、マット10の高さを調整するためのものである。この板状スペーサ8としては、厚みが異なる複数種類のものが予め用意されており、被加工媒体2の厚みと対応する厚みのものが使用される。この実施の形態による板状スペーサ8は、厚みが3mmものと、厚みが2mmのものと、厚みが1mmのものとが用意されている。板状スペーサ8を形成する材料は、剛性を有するプラスチック材料や、いわゆるスポンジなどの軽量の素材を使用することができる。
ベース板9は、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂によって薄い板状に形成されている。
【0019】
この実施の形態によるワークテーブル7は、容易に撓むことができない剛性を有するプラスチック材料によって形成されている。ワークテーブル7の下面には、変形を可及的少なくするために、ハニカム状の補強リブ7a(図3参照)が設けられている。
ワークテーブル7の上面には、図2に示すように、板状スペーサ8の下面の全域と重なる平坦な載置面7bが形成されている。この載置面7bが本発明でいうワークテーブル7の「主面」に相当する。ワークテーブル7の幅方向の両端には、後述する搬送路5に沿って移動するときのガイドとなる第1のガイドレール11が設けられている。ワークテーブル7の下面であって、幅方向の一端部には、図3に示すように、第2のガイドレール12が設けられている。これらの第1および第2のガイドレール11,12は、それぞれワークテーブル7の前後方向の一端から他端まで延びる細い板状に形成されている。
【0020】
第1のガイドレール11は、前後方向に延びるとともに幅方向においてワークテーブル7の外方に向けて突出する板状に形成されている。この第1のガイドレール11は、上面11aおよび下面11b(図3参照)と、幅方向の外端面11cとをガイド面として使用される。第2のガイドレール12は、ワークテーブル7が後方に進むときの移動方向に対して上方から見て右側に位置する端部に設けられている。この第2のガイドレール12は、前後方向に延びるとともにワークテーブル7の下方に向けて突出する板状に形成されている。また、第2のガイドレール12は、幅方向の2つの側面のうち、ワークテーブル7の幅方向の中央を指向する一方の端面をガイド面として使用される。
【0021】
ワークテーブル7の幅方向の両端部には、図2に示すように、板状スペーサ8とベース板9とを位置決めするための2本のピン13と、このワークテーブル7上に可動ステージ4の他の部材を固定するための4つのクランプ機構14とを備えている。
2本のピン13は、ワークテーブル7の上面に、上方に向けて突出する形状に一体成形によって形成されている。これらのピン13は、板状スペーサ8とベース板9とにそれぞれ形成された貫通穴15,16にそれぞれ嵌合する。
【0022】
クランプ機構14は、ワークテーブル7と協働して他の部材を上下方向に挟んで保持する構造のものである。この実施の形態によるクランプ機構14は、可動ステージ4の他の部材を貫通する軸部材14aと、この軸部材14aに着脱可能に係止されたストッパープレート14bとを備えている。軸部材14aは、板状スペーサ8の貫通穴17と、ベース板9の貫通穴18とに通される。ストッパープレート14bは、最も上に位置するベース板9から上方に突出した軸部材14aに上方から係止される。軸部材14aには、図示してはいないが、多数の刃が上下方向に並ぶ状態で設けられている。ストッパープレート14bは、作業者(図示せず)によって下方に向けて押されることによって、刃の先端を越えて下方に移動し、次の刃に係止される。ストッパープレート14bは、係止状態が解除されて刃から外れることによって、軸部材14aから上方に取り外すことができる。
【0023】
マット10は、柔軟性と弾性とを有する材料によって、予め定めた厚みを有する板状に形成されており、ベース板9に例えばアクリル粘着剤によって貼り付けられている。この実施の形態によるマット10を形成する材料は、軟質の発泡体である。このマット10の表面は、被加工媒体2の貼り付けおよび剥離を容易に行うことが可能である。このような表面は、マット10の材料として自己吸着性を有する軟質発泡体を使用したり、自己吸着性を有していない発泡体の表面に粘着性材料を塗布することによって実現可能である。ここでいう自己吸着性とは、粘着剤を使用することなく、貼り付けおよび剥離を容易に行うことが可能な性質である。自己吸着性は、軟質発泡体の表面に設けられた多数の微細な凹部からなるミクロ吸盤(図示せず)によって実現される。
【0024】
このマット10は、ベース板9に接着された状態で板状スペーサ8とともに上述したクランプ機構14によってワークテーブル7に固定されている。被加工媒体2は、マット10に上方から貼り付けられる。なお、マット10の表面の粘着力が低下したときには、ベース板9ごと新しいものと交換するか、或いは、ベース板9から剥がし、新しいものと交換することができる。
【0025】
エンボス加工機本体6は、図1に示すように、搬送路5の幅方向の両側に位置する一対の側壁部21,22と、これらの側壁部21,22どうしを搬送路5の下方で接続する底壁部23と、搬送路5を上方から覆うための開閉式カバー部24とを備えている。
【0026】
側壁部21,22と底壁部23との境界部分であって、搬送路5の幅方向の両端部には、ワークテーブル7の上下方向および幅方向への移動を規制するために複数の回転自在なローラ25〜28(図4参照)が設けられている。
これらのローラのうち、ワークテーブル7の上下方向への移動を規制するためのローラは、搬送路5の幅方向を軸線方向として回転する上側ローラ25と下側ローラ26である。上側ローラ25は、ワークテーブル7の第1のガイドレール11の上面11a(図2参照)に接触して回転する。下側ローラ26は、第1のガイドレール11の下面11b(図3参照)に接触して回転する。
【0027】
上側ローラ25は、搬送路5の前後方向の3箇所に設けられている。
下側ローラ26は、3箇所にある上側ローラ25のうち、搬送路5の前後方向の両端部に位置する2つの上側ローラ25の下方にそれぞれ配置されている。この下側ローラ26は、上側ローラ25と協働して第1のガイドレール11が上下方向において挟まれる位置に設けられている。このため、ワークテーブル7は、前後方向の両端部と幅方向の両端部とにおいて、上側ローラ25と下側ローラ26とによって上下方向への移動が規制された状態で搬送路5内に前後方向へ移動自在に保持される。
【0028】
ワークテーブル7の幅方向への移動を規制するためのローラは、上下方向を軸線方向として回転する外側ローラ27と内側ローラ28である。これらの外側ローラ27と内側ローラ28は、幅方向の一端部にのみ設けられている。この幅方向の一端部とは、搬送路5を前方から見た状態で右側に位置する一端部である。外側ローラ27は、ワークテーブル7の一方の第1のガイドレール11の端面11c(図2参照)に接触して回転する。この一方の第1のガイドレール11とは、搬送路5に挿入されたワークテーブル7を前方から見た状態で右側に位置する第1のガイドレール11である。
【0029】
内側ローラ28は、第2のガイドレール12の右側の端面に接触して回転する。この右側の端面とは、第2のガイドレール12を前方から見た状態で右側に位置する端面である。これらの外側ローラ27と内側ローラ28は、搬送路5の前後方向の2箇所にそれぞれ設けられている。ワークテーブル7は、搬送路5内に前方から挿入されることにより、これらのローラ25〜28に保持される。すなわち、ワークテーブル7は、載置面7b(主面)が主面が搬送路5と平行な状態で搬送路5に着脱自在かつ前後方向(第1の方向)へ移動自在に取付けられている。
この実施の形態による底壁部23には、図1および図4に示すように、ワークテーブル7の中央部を支えるための2つの中央側ローラ29が設けられている。これらの中央側ローラ29は、幅方向を軸線方向として底壁部23に回転自在に支持されており、幅方向に所定の間隔をおいて配置されている。
【0030】
エンボス加工機本体6の底壁部23には、図4に示すように、後述する搬送装置31の一部となるピニオン32が設けられている。搬送装置31は、ワークテーブル7を搬送路5の延びる方向(前後方向)に移動させるものである。この実施の形態においては、この搬送装置31によって、本発明でいう「第1の駆動装置」が構成されている。
【0031】
搬送装置31は、ピニオン32を有する駆動部33(図5参照)と、ワークテーブル7の下面に設けられたラック34(図3参照)とによって構成されている。駆動部33は、エンボス加工機本体6に設けられている。駆動部33は、図5に示すように、上述したラック34に噛み合うピニオン32と、このピニオン32が一端部に設けられた回転軸35と、この回転軸35の他端部に減速機構36を介して接続された第1のモータ37とを有している。
【0032】
減速機構36は、回転軸35の他端部に取付けられた大径ギヤ36aと、第1のモータ37の回転軸37aに取付けられた小径ギヤ36bとによって構成されている。この駆動部33は、搬送路5の幅方向の一端側に配置されている。この一端側とは、搬送路5を前方から見たときの右側である。回転軸35は、底壁部23に搬送路5の幅方向を軸線方向として回転自在に支持されている。第1のモータ37の動作は、後述する制御装置39(図11参照)によって制御される。第1のモータ37の回転軸37aが回転することにより、この回転が減速機構36および回転軸35を介してピニオン32に伝達され、ピニオン32が回転する。
【0033】
ラック34は、図3および図6に示すように、ワークテーブル7の下面であって上述した第2のガイドレール12の近傍に前後方向(搬送路5の延びる方向)と平行に設けられている。このラック34は、図7に示すように、ワークテーブル7が上述した複数のローラ25〜28に保持されることによって、ピニオン32と噛み合う。
ワークテーブル7を有する可動ステージ4は、このピニオン32が第1のモータ37によって駆動されて正転あるいは逆転することにより、エンボス加工機本体6に対して前方あるいは後方に移動する。
【0034】
エンボス加工機本体6の一対の側壁部21,22は、図1に示すように、搬送路5の上方で幅方向に延びる下部ガイドロッド41と上部ガイドロッド42とを支持している。これらの下部ガイドロッド41と上部ガイドロッド42は、それぞれ断面円形のパイプによって形成されており、互いに上下方向に離間する状態で側壁部21,22に支持されている。
【0035】
下部ガイドロッド41と上部ガイドロッド42には、後述するペンキャリッジ43がこれらのロッド41,42の長手方向へ移動自在に支持されている。言い換えれば、ペンキャリッジ43は、底壁部23から離間して、搬送路5に取付けられたワークテーブル7の載置面7b(主面)と平行でかつ前後方向(第1の方向)とは異なる幅方向(第2の方向)へ移動自在に支持されている。
【0036】
ペンキャリッジ43は、第1のペンツール44と第2のペンツール45をワークテーブル7の載置面7bとは直交する第3の方向に移動可能に支持している。第3の方向は、この実施の形態においては上下方向である。
第1のペンツール44は、いわゆるカッティングペンである。この実施の形態においては、この第1のペンツールが本発明でいう「切断ツール」に相当する。
第1のペンツール44は、図9に示すように、軸部44aと、この軸部44aの下端から突出する刃44bとを備えている。軸部44aは、ペンキャリッジ43のペン用ホルダー46(図8参照)に着脱可能に取付けられる。ペン用ホルダー46には、軸部44aが固定される状態と、軸部44aの固定が解除される状態とを切替えるためのレバー47が設けられている。
【0037】
刃44bは、被加工媒体2を切断(カット)可能なものである。この刃44bは、軸部44aの下端から下方に向けて所定の突出長さだけ突出している。
軸部44aから突出する刃44bの突出長さは、軸部44の下端部に設けられたねじ式のカバー44cを作業者(図示せず)が軸部44bに対して回すことによって、変えることができる。刃44bの突出長さが被加工媒体2の厚みより長い場合は、第2のペンツール45によって被加工媒体2を切断することができる。また、刃44bの突出長さが被加工媒体2の厚みより短い場合は、被加工媒体2にいわゆるハーフカットを施すことができる。
【0038】
第2のペンツール45は、エンボス加工を行うためのものである。この第2のペンツール45が本発明でいう「エンボス加工ツール」に相当する。
第2のペンツール44は、図10に示すように、軸部45aと、この軸部45aの下端部に設けられたツール本体45bとによって構成されている。軸部45aは、第1のペンツール44の軸部44aと同様に、ペンキャリッジ43のペン用ホルダー46(図8参照)に着脱可能に取付けられる。
ツール本体44bの先端部(下端部)には、ボール48が回転自在に取付けられている。
【0039】
ペンキャリッジ43は、第1のペンツール44を昇降させる(ワークテーブル7の載置面7bとは直交する第3の方向に移動させる)第1のソレノイド51(図10参照)と、第2のペンツール45を昇降させる(第3の方向に移動させる)第2のソレノイド52とを備えている。これらの第1および第2のソレノイド51,52の動作は、後述する制御装置39によって制御される。
【0040】
第1のソレノイド51は、第1のペンツール44を被加工媒体2に選択的に押し付ける。第1のペンツール44が被加工媒体2に押し付けられると、刃44bが被加工媒体2に刺さる。すなわち、第2のソレノイド52は、第1のペンツール44を被加工媒体2に選択的に押し付ける。
第2のペンツール45は、第2のソレノイド52によって駆動されることにより、被加工媒体2に押し付けられる。すなわち、第2のソレノイド52は、第2のペンツール45を被加工媒体2に選択的に押し付ける。
この実施の形態においては、第1のソレノイド51が本発明でいう「切断ツールを支持体の主面とは直交する第3の方向に移動させる押圧装置」に相当し、第2のソレノイド52が本発明でいう「エンボス加工ツールを前記第3の方向に移動させる押圧装置」に相当する。
【0041】
ペンキャリッジ43の後端部には、図8に示すように、左右方向に延びるタイミングベルト53が取付けられている。このタイミングベルト53は、ペンキャリッジ43を幅方向(第2の方向)に移動させる幅方向駆動装置54の一部を構成するものである。タイミングベルト53は、無端ベルト状に形成されており、一方の側壁部21内の駆動プーリ55(図8参照)と、他方の側壁部22内の従動プーリ(図示せず)とに巻掛けられている。
【0042】
幅方向駆動装置54は、このタイミングベルト53と、駆動プーリ55が一端部に設けられた回転軸56と、この回転軸56の他端部に大径ギア57と小径ギア(図示せず)とからなる減速機構58を介して接続された第2のモータ59などを備えている。この第2のモータ59の動作は、後述する制御装置39によって制御される。
ペンキャリッジ43は、駆動プーリ55が第2のモータ59によって駆動されて回転し、この回転がタイミングベルト53に伝達されることによって、幅方向に移動する。この実施の形態においては、この幅方向駆動装置54によって、本発明でいう「第2の駆動装置」が構成されている。
【0043】
ペンキャリッジ43の前端部には、フォトセンサ61(図11参照)が設けられている。このフォトセンサは、被切断媒体に設けられた基準マーク3を検出するためのもので、検出したデータを信号として制御装置39に送る。
【0044】
制御装置39は、例えばマイクロプロセッサを用いて構成され、図11に示すように、上述した第1および第2のモータ37,59と、第1および第2のソレノイド51,52と、フォトセンサ61などが接続されているとともに、後述する複数の機能部を有している。また、制御装置39は、加工に際して必要なデータを受信するために、パーソナルコンピュータ62が接続されるインターフェイス63を備えている。
【0045】
制御装置39に設けられている複数の機能部とは、加工位置特定部64と、カッティング制御部65と、エンボス加工制御部66などである。
加工位置特定部64は、フォトセンサ61の検出結果に基づいてワークテーブル7に対する被加工媒体2の位置を特定する機能を有している。この加工位置特定部64は、被加工媒体2の位置を求めるにあたって、搬送装置31(第1のモータ37)と幅方向駆動装置54(第2のモータ59)とを予め定めた検出プログラムに基づいて動作させる。検出プログラムが実行されることにより、フォトセンサ61が被加工媒体2に対して前後方向と幅方向とに移動し、被加工媒体2上の基準マーク3がフォトセンサ61によって検出される。
【0046】
制御装置39のカッティング制御部65は、後述する2つの機能を有している。第1の機能は、第1のソレノイド51の動作を制御して第1のペンツール44を昇降させる機能である。第2の機能は、第1のモータ37と第2のモータ59の動作を制御し、第1のペンツール44を被加工媒体2に対して前後方向と幅方向とに移動させる機能である。
第1のペンツール44の刃44bの突出長さを被加工媒体2の厚みより短く設定した状態で第1のペンツール44が下降することにより、刃先が被加工媒体2の表面と裏面との間に位置する状態になる。この状態で第1のペンツール44が前後方向や幅方向に移動することによって、被加工媒体2に所定の形状で切断線が形成され、ハーフカットが施される。このハーフカット加工は、エンボス加工が行われる以前に行われる。
【0047】
刃44bの突出長さが被加工媒体2の厚みより長くなる状態で第1のペンツール44が下降し、被加工媒体2に対して前後方向や左右方向に移動することにより、被加工媒体2が所定の形状に切断される。この切断加工は、エンボス加工が終了した後に成果物を被加工媒体2から切り離す場合に行われる。これらのハーフカット加工や切断加工は、パーソナルコンピュータ62から送られた制御データに基づいて行われる。この制御データには、詳細は後述するが、ハーフカット加工や切断加工およびエンボス加工を施す位置、加工部分の形状などのデータが含まれている。
【0048】
制御装置39のエンボス加工制御部66は、後述する2つの機能を有している。第1の機能は、第2のソレノイド52の動作を制御して第2のペンツール45を昇降させる機能である。第2の機能は、第1のモータ37と第2のモータ59の動作を制御し、第2のペンツール45を被加工媒体2に対して前後方向と幅方向とに移動させる機能である。第2のペンツール45が下降してボール48が被加工媒体2に押し付けられることより、被加工媒体2がマット10を圧縮しながら凹み、被加工媒体2に凹部が形成される。
【0049】
第2のペンツール45がこのように被加工媒体2に押し付けられている状態で被加工媒体2に対して前後方向や幅方向に移動することによって、被加工媒体2に連続した凹部からなるエンボス加工部が形成される。すなわち、制御装置39は、搬送装置31と、幅方向駆動装置54と、第2のソレノイド52(第1、第2および第2のペンツール用押圧装置)の動作を制御し、第2のペンツール45(エンボス加工ツール)によって被加工媒体2にエンボス加工を施す。
【0050】
このエンボス加工は、ハーフカット加工と同様に、パーソナルコンピュータ62から送られた制御データに基づいて行われる。
ここで、上述した制御データを作成する手順を図12に示すフローチャートと図13および図14に示す模式図とを用いて説明する。
制御データは、例えばパーソナルコンピュータ62で動作する専用のアプリケーションソフトを使用して作業者によって作成される。この制御データを作成する作業は、作業者がパーソナルコンピュータ62のモニタを見ながら実施する。
【0051】
この実施の形態による制御データは、後述する輪郭データとオフセットデータとによって構成されている。輪郭データは、ハーフカット加工を行う形状のデータである。ハーフカット加工を行うことにより、輪郭データと同一形状の切断線が被加工媒体2に形成される。
オフセットデータは、エンボス加工を行うために第2のペンツール45が移動するときの移動軌跡に相当する形状のデータである。
このアプリケーションソフトにおいては、輪郭データを設定するにあたり、予め登録されている図形データを用いる方法と、新たに図形データを作成する方法とを選ぶことが可能である。
【0052】
この制御データを作成するにあたっては、先ず、図12に示すフローチャートのステップS1において、上述したアプリケーションソフト内で輪郭データとなる図形データを選択するか新たに作成する。以下においては、輪郭データとして図13(A)に示す二重の四角形を選択した場合について説明する。図13(A)に示す図形は、外側に位置する第1の四角形71と、この第1の四角形71の内側に位置する第2の四角形72とから構成されている。
【0053】
次に、ステップS2において、オフセットデータを作成する。オフセットデータは、第2のペンツール45に設けられているボール48の外径に適合する寸法だけ輪郭データから離間させて形成される。なお、この実施の形態においては第2のペンツール45に設けられたボール48の外径に適合した寸法としたが、適宜設定可能とし、作業者が設定した値とすることができる。輪郭データが図13(A)に示すように二重の四角形である場合、すなわち、第1の四角形71からなる閉じた線形状の内部に第2の四角形72からなる他の閉じた線形状が存在する場合は、外側に位置する閉じた線形状と、内側に位置する他の閉じた線形状との間にオフセットデータを形成する。このオフセットデータは、図13(B)に示すように、第1の四角形71の内側近傍に位置する第3の四角形73と、第2の四角形72の外側近傍に位置する第4の四角形74の形状データである。輪郭データが第1の四角形71のみである場合、言い換えれば切断線の形状が閉じた線形状で、内側に他の形状が存在していない場合は、オフセットデータを第1の四角形71の内部(閉じた線形状の内部)形成する。
【0054】
このようにオフセットデータを作成した後、ステップS3において、輪郭データとオフセットデータとを識別可能にする。これを行うにあたっては、輪郭データとオフセットデータとに含まれる線のデータに、互いに異なる色の情報を付与したり、これらの線のデータが作成されるレイヤを変える。このように輪郭データとオフセットデータとを識別可能にする理由は、エンボス加工機1の制御装置39がこれらのデータを使用するときに区別できるようにするためである。
【0055】
次に、ステップS4において、ハーフカット加工とエンボス加工とを実施するために必要な設定を行う。詳述すると、輪郭データに基づいてハーフカット加工を行うときの加工速度、筆圧、ペン番号と、オフセットデータに基づいてエンボス加工を行うときの加工速度、筆圧、ペン番号を設定する。加工速度とは、第1および第2のペンツール44,45が被加工媒体2に対して相対的に移動するときの移動速度である。筆圧とは、第1および第2のペンツール44,45を被加工媒体2に押し付けるときの押圧力である。この筆圧は、ソレノイドに印加する電圧を変えることによって調整することができる。ペン番号は、第1のペンツール44と第2のペンツール45とに予め付与されている個別の番号である。
【0056】
ステップS1〜S4が実施されることにより、制御データが作成される。この制御データは、ステップS5において、作業者またはアプリケーションソフトによってエンボス加工機1の制御装置39に送信される。制御装置39は、この制御データに基づいてハーフカット加工とエンボス加工とを実施する。
【0057】
次に、本発明に係るエンボス加工機1の制御方法を図14に示すフローチャートによって詳細に説明する。
エンボス加工機1によって被加工媒体2にエンボス加工を施すためには、先ず、作業者が可動ステージ4のマット10に被加工媒体2を貼り付け、この可動ステージ4を搬送路5に挿入する。このとき、ワークテーブル7が複数のローラ25〜28によって保持されるとともに、ラック34にピニオン32が噛み合う。その後、制御装置39が制御を開始し、先ず、フォトセンサ61を使用して被加工媒体2の位置が特定される。このとき、可動ステージ4が搬送装置31によって駆動されて前後方向に移動するとともに、ペンキャリッジ43が幅方向駆動装置54によって駆動されて幅方向に移動する。
【0058】
次に、図14に示すフローチャートのステップP1において、制御装置39が第1のハーフカットステップを実行する。第1のハーフカットステップにおいては、制御装置39が第1のモータ37と第2のモータ59の動作を制御することにより、第1のペンツール44を被加工媒体2の予め定めた第1の目標位置と対向する位置に移動させる。第1の目標位置とは、被加工媒体2における、輪郭データの所定の加工開始点と対応する位置である。
【0059】
第1のペンツール44が第1の目標位置に位置付けられた後、ステップP2において、第2のハーフカットステップが実施される。第2のハーフカットステップP2においては、制御装置39が第1のソレノイド51の動作を制御し、刃44bを被加工媒体2に刺して刃先が被加工媒体2の表面と裏面との間に位置する状態で止める。その後、ステップP3において、第3のハーフカットステップが実施される。
【0060】
第3のハーフカットステップP3においては、刃44bが被加工媒体2に刺さっている状態で、制御装置39が上述した輪郭データに基づいて第1のペンツール44を被加工媒体2に対して移動させ、被加工媒体2に切断線を形成する。第1のペンツール44を被加工媒体2に対して移動させるにあたっては、ワークテーブル7を搬送装置31によって前後方向に移動させるとともに、第1のペンツール44を幅方向駆動装置54によって幅方向に移動させることによって行う。切断線は、図13(A)に示す第1の四角形71と第2の四角形72と同一の形状に形成される。
【0061】
このように切断線が形成された後、制御装置39が第4のハーフカットステップP4を実施する。第4のハーフカットステップP4においては、制御装置39が第1のソレノイド51の動作を制御することにより、第1のペンツール44を刃44bが被加工媒体2から抜ける位置に移動させる。
次に、制御装置39は、第1のエンボス加工ステップP5を実施する。第1のエンボス加工ステップP5においては、制御装置39が第1のモータ37と第2のモータ59の動作を制御することにより、第2のペンツール45を被加工媒体2の切断線に沿う予め定めた第2の目標位置と対向する位置に移動させる。第2の目標位置とは、被加工媒体2における、オフセットデータの所定の加工開始点と対応する位置である。
【0062】
その後、制御装置39は、第2のエンボス加工ステップP6を実施する。第2のエンボス加工ステップP6においては、制御装置39が第2のソレノイド52の動作を制御することにより、第2の目標位置に第2のペンツール45を押し付ける。制御装置39は、この第2のエンボス加工ステップP6で第2のペンツール45が被加工媒体2を押圧している状態で、第3のエンボス加工ステップP7を実施する。
【0063】
第3のエンボス加工ステップP7においては、制御装置39がオフセットデータに基づいて第2のペンツール45を被加工媒体2に対して前後方向と幅方向とに移動させる。この移動は、第1のモータ37の動作を制御してワークテーブル7を前後方向に移動させるとともに、第2のモータ59の動作を制御して第2のペンツール45を幅方向に移動させることによって行われる。このように第2のペンツール45が被加工媒体2に対して移動することにより、被加工媒体2に切断線に沿って延びる連続した凹部からなるエンボス加工部が形成される。エンボス加工部は、図13(B)に示す第3の四角形73と第4の四角形74の同一の形状に形成される。
【0064】
第3のエンボス加工ステップP7でエンボス加工が行われると、図15に示すように、ハーフカット部75によって被加工媒体2の表面が曲がり易くなり、被加工媒体2にエッジが明確となり立体感に富むエンボス部(凹部)76を形成することができる。
【0065】
第3のエンボス加工ステップP7が終了した後、制御装置39は、第4のエンボス加工ステップP8において、第2のソレノイド52によって第2のペンツール45を上昇させて被加工媒体2から離間させるとともに、第1のモータ37と第2のモータ59の動作を制御してペンキャリッジ43を所定の初期位置に移動させる。このようにペンキャリッジ43が初期位置に戻ることにより、エンボス加工が完了する。そして、作業者が被加工媒体2をマット10から剥離させることにより、エンボス加工が施された成果物が得られる。
【0066】
この実施の形態によるエンボス加工機の制御方法によれば、エンボス加工が施されることがない非加工部77(図15参照)とエンボス加工部76との境界部分にハーフカット加工が施された後にエンボス加工が行われる。このため、エンボス加工を行うときに非加工部77とエンボス加工部76との境界部分がハーフカット部分で折れる。
したがって、この実施の形態によれば、エンボス加工部76の形状が明確になるエンボス加工を行うことが可能なエンボス加工機の制御方法を提供することができる。
【0067】
この実施の形態においては、第3のハーフカットステップP3で形成される切断線の形状が閉じた線形状(第1の四角形71)であり、この閉じた線形状の内部に第3の四角形73と同一形状のエンボス加工部76が形成されている。このため、輪郭が明確になる閉じた形状のエンボス加工部が形成される。
この実施の形態においては、切断線の形状である閉じた線形状(第1の四角形71)の内部に他の閉じた線形状(第2の四角形72)が存在しており、外側に位置する閉じた線形状と、内側に位置する他の閉じた線形状との間に、第3の四角形73と第4の四角形74と同一形状のエンボス加工部76が形成されている。このため、第2の四角形72の内側に位置する非加工部77がエンボス加工部76で囲まれるから、被加工媒体2にエンボス加工によって浮き彫り状の模様を形成することができる。
【0068】
上述した実施の形態においては、外側のエンボス加工部76と内側のエンボス加工部との間に非加工部が残存する例を示した。しかし、本発明は、このような限定にとらわれることはない。エンボス加工部は、閉じた線形状の内部の全域に形成することができる。この場合の制御データの作成手順を図16および図17によって説明する。
ここでは、図17(A)に示す四角形状にエンボス加工を施す場合について説明する。
【0069】
この場合は、先ず、図16に示すフローチャートのステップS11において、上述したアプリケーションソフト内で図17(A)に示す四角形の図形データを選択するか、新たに作成する。次に、ステップS12において、ハーフカット加工を行うための輪郭データを作成する。その後、ステップS13において、エンボス加工を行うときの第2のペンツール44の移動パターンを設定する。この場合のエンボス加工は、図形内をインキペンで塗り潰すときと同様に、被加工媒体2に対する第2のペンツール45の位置を、予め定めた移動パターンに基づいて変化させて行われる。移動パターンとしては、例えば図17(B)〜(J)に示すように、9通りの移動パターンが登録されている。
【0070】
ステップS13においては、図17(B)〜(J)に示す9通りの移動パターンの中から1つの移動パターンを選ぶ。図17(B)〜(J)には、図形内を線画によって塗り潰すときのペンの移動経路が図示されている。これらの図に示す線画は、前後方向と幅方向とに並ぶ複数の直線部分を有している。複数の直線部分どうしは、予め定めたピッチ(以下、このピッチを塗り潰しピッチという)だけ前後方向あるいは幅方向に互いに離れている。
【0071】
ステップS13において移動パターンを選択した後、ステップS14において、塗り潰しデータを作成する。塗り潰しデータは、予め登録されている複数の塗り潰しピッチの中からボール48の外径に適した塗り潰しピッチを選択することにより作成される。
その後、ステップS15において、輪郭データと塗り潰しデータとを識別可能にする。これを行うにあたっては、輪郭データと塗り潰しデータとに含まれる線のデータに、互いに異なる色の情報を付与したり、これらの線のデータが作成されるレイヤを変える。
【0072】
次に、ステップS16において、ハーフカット加工とエンボス加工を実施するために必要な設定を行う。詳述すると、輪郭をハーフカット加工するときの加工速度、筆圧、ペン番号と、塗り潰し部分をエンボス加工するときの加工速度、筆圧、ペン番号を設定する。加工速度とは、第1および第2のペンツール44,45が被加工媒体2に対して相対的に移動するときの移動速度である。筆圧とは、第1および第2のペンツール44,45を被加工媒体2に押し付けるときの押圧力である。この筆圧は、ソレノイドに印加する電圧を変えることによって調整することができる。ペン番号は、第1のペンツール44と第2のペンツール45とに予め付与されている個別の番号である。
【0073】
ステップS11〜S15が実施されることにより、制御データが作成される。この制御データは、ステップS17において、作業者またはアプリケーションソフトによってエンボス加工機1の制御装置39に送信される。
このように閉じた形状の内部の全域にエンボス加工が施される制御方向を採る場合であっても、上述した実施の形態と同等の効果が得られる。
【0074】
上述した実施の形態においては、第1のペンツール44と第2のペンツール45とが一つのペンキャリッジ43に装備されているエンボス加工機1を使用する場合の一例を示した。しかし、本発明は、このような限定にとらわれることはなく、ペンツールを一つしか装備していないエンボス加工機を使用しても実施可能である。この場合、第1のペンツール44(カッティングペン)によるハーフカット動作後に、この第1のペンツール44を第2のペンツール45(エンボスツール)に交換し、その後、この第2のペンツール45でエンボス加工を行う。
【0075】
上述した実施の形態においては、被加工媒体2がマット9を含めてワークテーブル7の上に載せられた状態でエンボス加工を行う例を示した。しかし、本発明は、このような限定にとらわれることはなく、粘着剤が塗布された台紙に被加工媒体を貼り付けた状態でエンボス加工を行ってもよい。
【符号の説明】
【0076】
1…エンボス加工機、2…被加工媒体、3…基準マーク、5…搬送路、6…エンボス加工機本体、7…ワークテーブル、7b…載置面(主面)、10…マット、31…搬送装置(第1の駆動装置)、32…ピニオン、34…ラック、38…第1のモータ、39…制御装置、43…ペンキャリッジ、44…第1のペンツール(切断ツール)、45…第2のペンツール(エンボス加工ツール)、51…第1のソレノイド(押圧装置)、52…第2のソレノイド(押圧装置)、54…幅方向駆動装置(第2の駆動装置)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17