特許第6490480号(P6490480)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6490480
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】有機エレクトロルミネセンス素子
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/50 20060101AFI20190318BHJP
【FI】
   H05B33/22 B
   H05B33/14 B
【請求項の数】20
【外国語出願】
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2015-79212(P2015-79212)
(22)【出願日】2015年4月8日
(62)【分割の表示】特願2012-529134(P2012-529134)の分割
【原出願日】2010年8月16日
(65)【公開番号】特開2015-164204(P2015-164204A)
(43)【公開日】2015年9月10日
【審査請求日】2015年4月28日
(31)【優先権主張番号】102009041289.1
(32)【優先日】2009年9月16日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】597035528
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(74)【代理人】
【識別番号】100124394
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 立志
(74)【代理人】
【識別番号】100112807
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 貴志
(74)【代理人】
【識別番号】100111073
【弁理士】
【氏名又は名称】堀内 美保子
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・プフルム
(72)【発明者】
【氏名】フランク・フォゲス
【審査官】 横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−158091(JP,A)
【文献】 特開2003−226870(JP,A)
【文献】 特開2009−076929(JP,A)
【文献】 特開2008−146904(JP,A)
【文献】 特開2004−277377(JP,A)
【文献】 特開2006−253015(JP,A)
【文献】 特表2007−520875(JP,A)
【文献】 特開2008−130840(JP,A)
【文献】 特開2007−223929(JP,A)
【文献】 特開2006−086284(JP,A)
【文献】 特表2013−504882(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも120nmの層厚を有し、10V/cmの場で少なくとも10―5cm/Vsの電子移動度を有する電子輸送層が、発光層とカソードとの間に配置され、電子輸送層のための電子輸送層材料が、チアゾール誘導体から選ばれ、ここで、発光層中の発光化合物は、イリジウムを含む燐光化合物であることを特徴とする、アノード、カソードおよび少なくとも一つの発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項2】
発光層中の発光化合物は、式(5)または(6)の燐光化合物であることを特徴とする、請求項1記載の有機エレクトロルミネッセンス素子:
【化1】
式中
DCyは、出現毎に同一であるか異なり、それを介して環状基が金属に結合する、少なくとも一つのドナー原子を含む環状基であり、1以上の置換基Rを有してよく、基DCyとCCyは、共有結合を介して互いに結合し、
CCyは、出現毎に同一であるか異なり、それを介して環状基が金属に結合する炭素原子を含む環状基であり、1以上の置換基Rを有してよく、
Aは、出現毎に同一であるか異なり、モノアニオン性二座キレートリガンドであり、
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CHO、C(=O)Ar、P(=O)(Ar、S(=O)Ar、S(=O)Ar、CR=CRAr、CN、NO、Si(R、B(OR、B(R、B(N(R、OSO、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、2〜40個のC原子を有する直鎖アルケニルもしくはアルキニル基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SもしくはCONRで置き代えられてよく、また、1以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CNもしくはNOで置き代えられてよい。)、または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、またはこれらの構造の組み合わせであり;ここで、2以上の隣接する置換基Rは、互いに、モノ-あるいはポリ環状脂肪族もしくは芳香族環構造を形成してもよく;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されてよい5〜40個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、CNまたは1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族および/または複素環式芳香族炭化水素基であり、加えて、H原子は、Fで置き代えられてよく;ここで、2以上の隣接する置換基Rは、互いにモノ-あるいはポリ環状、脂肪族もしくは芳香族環構造を形成してもよい。
【請求項3】
電子輸送層の層厚が、少なくとも130nmであることを特徴とする、請求項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項4】
電子輸送層の層厚が、500nmより厚くないことを特徴とする、請求項1〜何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項5】
電子輸送層の層厚が、350nmより厚くないことを特徴とする、請求項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項6】
電子輸送層の電子移動度が、10V/cmの場で少なくとも5×10―5cm/Vsであることを特徴とする、請求項1〜何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項7】
電子輸送層の電子移動度が、10V/cmの場で少なくとも10―4cm/Vsであることを特徴とする、請求項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項8】
電子輸送層が、純粋材料または二以上の材料の混合物から成ることを特徴とする、請求項1〜何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項9】
−4eV未満のHOMOを有する材料だけが、電子輸送層に使用されることを特徴とする、請求項1〜何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項10】
−4.5eV未満のHOMOを有する材料だけが、電子輸送層に使用されることを特徴とする、請求項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項11】
−5eV未満のHOMOを有する材料だけが、電子輸送層に使用されることを特徴とする、請求項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項12】
−3.5eVを超えるLUMOを有する材料だけが、電子輸送層に使用されることを特徴とする、請求項1〜11何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項13】
−3eVを超えるLUMOを有する材料だけが、電子輸送層に使用されることを特徴とする、請求項12記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項14】
電子輸送層材料が、電子輸送層中で有機アルカリ金属化合物と組み合わせて使用されることを特徴とする、請求項1〜13何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項15】
蛍光もしくは燐光発光層を有することを特徴とする、請求項1〜14何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項16】
蛍光層は、青色-もしくは緑色-蛍光であることを特徴とする、請求項15記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項17】
燐光層は、緑色-もしくは赤色-燐光であることを特徴とする、請求項15記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項18】
発光層は緑色発光層であることを特徴とする、請求項1〜17何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項19】
エレクトロルミネッセンス素子において、燐光発光層の使用の場合に、発光層と電子輸送層との間に正孔障壁層を含むことを特徴とする、請求項1〜18何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
【請求項20】
一以上の層が昇華プロセスにより適用されるか、OVPD(有機気相堆積)プロセスにより、もしくはキャリアーガス昇華により適用されるか、一以上の層が、溶液から適用されることを特徴とする、請求項1〜19何れか1項記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、厚い電子輸送層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0002】
有機半導体が、機能性材料として使用される有機エレクトロルミネセンス素子(OLED)の構造は、たとえば、US 4539507、US 5151629、EP 0676461およびWO 98/27136に記載されている。有機エレクトロルミネッセンス素子分野での発展は、燐光OLEDである。これらは、そのより高く達成可能な効率に基づいて、蛍光OLEDと比べて顕著な優位性を有する。
【0003】
しかしながら、蛍光および燐光OLEDの両者の場合に、改善の必要性がなお存在する。素子の効率と寿命に加えて、これは、また、特に、色座標と発光スペクトルと製造効率にもあてはまる。
【0004】
良好な色純度を達成するためには、特に、緑色発光の場合に、半透明のカソードと反射性アノードが微小空隙を形成する頂上発光等の複雑な技術が使用される。これは、発光スペクトルをより狭くし、それにより、色純度を改善する。しかしながら、頂上発光OLEDは、取り扱いの難しいプロセス技術を必要とし、たとえば、異なる層の厚さは、非常に正確に設定されねばならない。
【0005】
上記のとおり、頂上発光OLEDは、そのより複雑な構造に基づいて、工業的に実現することはより込み入っているのに対して、底部発光OLEDは、良好な色座標を実現することが困難であるという問題を有する。これは、特に、緑色発光層の色座標のみならず、赤もしくは青色発光層の色座標にも関連する。
【0006】
色座標を改善するために、カラーフィルターを使用することが原則的に可能であるが、これは、減少した効率をもたらす不利益を有する。
【0007】
さらに、改善された色座標は、より狭い発光スペクトルを有する材料を使用することにより達成される。しかしながら、この型の材料の場合には、かなりの改善の必要性がなお存在する。特に、狭い発光スペクトルを有する燐光材料は、目下のところ、工業的には満足に達成することはできない。したがって、たとえば、底部発光OLEDにおけるIr(ppy)(トリス(フェニルピリジン)イリジウム)の使用は、約0.62のCIEy座標を生じるが、顕著により高いCIE y座標、特に、約0.71のCIE y座標が望まれる。
【0008】
さらに、OLEDの大量生産での収率の改善の必要性が引き続き存在する。必要なTCO(透明伝導性酸化物)が、適用時のスパッタリングにより、OLEDの下にある有機層を部分的に破壊することから、透明OLEDの製造は、同様に単純な方法では不可能である。さらに、寿命、効率と駆動電圧に関する改善が、いまだ、望まれている。
【0009】
それゆえに、本発明が基礎とする技術的目的は、改善された色座標を有し、同時にエレクトロルミネッセンス素子のその他の特性を損なうことのない有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することである。これは、特に、有機エレクトロルミネッセンス素子の寿命、効率と駆動電圧にあてはまる。さらなる目的は、改善された効率を有し、比較的高い製造収率で製造することができ、透明エレクトロルミネッセンス素子の製造のためにも適切である有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することである。
【0010】
先行技術にしたがうと、約10〜50nmの範囲の層厚を有する電子輸送層が、有機エレクトロルミネッセンス素子において、一般的に使用されている。より厚い電子輸送層の場合には、電圧の顕著な増加と、それゆえの顕著により低いパワー効率が、得られる。
【0011】
驚くべきことに、顕著な改善と上記技術的目的は、少なくとも80nmの層厚を有する電子輸送層であって、電子輸送層に使用される材料が、10V/cmの場で少なくとも10―5cm/Vsの電子移動度を有する電子輸送層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子の提供により達成されることが今回見出された。
【0012】
したがって、本発明は、少なくとも80nmの層厚を有し、10V/cmの場で少なくとも10―5cm/Vsの電子移動度を有する電子輸送層が、発光層とカソードとに間に配置される、アノード、カソードおよび少なくとも一つの発光層を含む有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。
【0013】
本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子は、上記記載される層を含有する。有機エレクトロルミネッセンス素子は、有機もしくは有機金属材料から構築される層のみを含む必要は必ずしもない。したがって、アノード、カソードおよび/または一以上の層が無機材料を含むか、または無機材料からもっぱら構築されることも可能である。
【0014】
電子輸送層の電子移動度と層厚は、例部分において以下の一般的用語で説明されるとおりに決定される。
【0015】
本発明の好ましい具体例では、電子輸送層の層厚は、少なくとも100nm、特に、好ましくは、少なくとも120nm、非常に、特に、好ましくは、少なくとも130nmである。ここで示された120nmと130nmの限界は、緑色および赤色発光素子のために、特に、好ましく、非常に良好な結果が、80nm〜120nmの層厚を有する青色発光素子のために既に達成されている。
【0016】
本発明のさらに好ましい具体例では、電子輸送層の層厚は、500nmより厚くなく、好ましくは、350nmより厚くなく、特に、赤色発光OLEDのためには280nmより厚くなく、緑色発光OLEDのためには250nmより厚くない。
【0017】
本発明のさらに好ましい具体例では、電子輸送層の電子移動度は、10V/cmの場で、少なくとも5×10―5cm/Vs、特に、好ましくは、10V/cmの場で、少なくとも10―4cm/Vsである。
【0018】
ここで、電子輸送層は、純粋材料から成ることができるか、または二以上材料の混合物から成ることができる。
【0019】
さらに、電子輸送層は、唯一の層を有してもよいか、または、その合計厚さが少なくとも80nmで、個々の各層が10V/cmの場で少なくとも10―5cm/Vsの電子移動度を有する複数の個々の電子輸送層から成ってもよい。
【0020】
好ましい具体例では、電子輸送層は、有機もしくは有機金属材料のみを含み、ここで、本発明の意味での有機金属材料は、少なくとも一つの金属原子もしくは金属イオンと少なくとも一つの有機リガンドを含む化合物を意味するものと解される。したがって、本発明の好ましい具体例では、電子輸送層は、純粋金属を含まず、すなわち、たとえば、リチウム等の金属でドープされない。
【0021】
本発明のさらに好ましい具体例では、電子輸送層は、n-ドープ層ではなく、ここで、n-ドープは、電子輸送材料がn-ドーパントでドープされ、そのため還元されることを意味するものと解される。この型のn-ドーピングは、高い伝導性を生じるが、しかしながらいくつかの明らかな不利益を有する。このように、n-ドーパントは強力な還元剤であり、それゆえに、酸化に強く感受性であり、特別に注意して保護ガス下で加工する必要がある。工業的応用において、このような材料は、取り扱いが困難である。さらに、電子輸送層は多くの過剰電子を有することから、n-ドープ層を有する有機エレクトロルミネッセンス素子の電荷バランスを制御することは顕著により困難である。さらに、n-ドープ層は、エレクトロルミネッセンス素子の寿命を損なうことが多い。
【0022】
本発明のさらに好ましい具体例では、<−4eV(すなわち、4eV超の数値を有する)、特に、好ましくは、<−4.5eV、非常に、特に、好ましくは、<−5eVのHOMO(最高分子占有軌道)を有する材料だけが、電子輸送層に使用される。これは、これらの材料がn-ドーパントであることを排除しており、すなわち、還元反応を通じて電子輸送層材料に電子を開放する材料は排除している。
【0023】
本発明のなおさらに好ましい具体例では、>−3.5eV(すなわち、3.5eV未満の数値を有する)、特に、好ましくは、>−3eVのLUMO(最低空分子軌道)を有する材料だけが、電子輸送層に使用される。
【0024】
電子輸送層のために使用することができる材料は、さらには、制限されない。一般的に、電子輸送層中での電子移動度の上記条件を満足するすべての電子輸送材料が適切である。
【0025】
電子輸送層材料の適切な種の例は、トリアジン誘導体、ベンズイミダゾール誘導体、ピリミジン誘導体、ピラジン誘導体、ピリダジン誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、フェナントロリン誘導体、チアゾール誘導体、トリアゾール誘導体またはアルミニウム、リチウムもしくはジルコニウム錯体の構造種から選ばれる。これらの構造種の夫々において、層の正確な構造と組成に応じて、これらの材料が電子輸送層において本発明の電子移動度を有するか否かが決定されねばならない。電子移動度を予測することはできないが、その代わりに、電子移動度は、夫々の層中の材料毎に経験的に決定されねばならない。電子移動度は、層の正確な組成とその製造の両者に依存する。したがって、たとえば、昇華によって製造中の異なる気相堆積速度は、異なる電子移動度をもたらす。
また、層が溶液から製造されれば、異なる電子移動度が得られる。
【0026】
適切な電子輸送材料の例は、本願の実験例により、明らかにされる。
【0027】
電子輸送層材料は、電子輸送層中で有機アルカリ金属化合物と組み合わせて使用することもでき、その場合、混合層は、電子移動度のための上記条件を満足しなければならない。ここで、「有機アルカリ金属化合物と組み合わせて」は、トリアジン誘導体と有機アルカリ金属化合物が一層中で混合物の形態であるか、または、二個の連続する層中で別々に存在することの何れかを意味するものと解される。
【0028】
本発明の意味での有機アルカリ金属化合物は、少なくとも一つのアルカリ金属、すなわち、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたセシウムを含み、また、さらに、少なくとも一つの有機リガンドを含む化合物を意味するものと解される。
【0029】
適切な有機アルカリ金属化合物は、たとえば、WO 2007/050301、 WO 2007/050334 および EP 1144543に記載された化合物である。これらは、参照として、本願に組み込まれる。
【0030】
好ましい有機アルカリ金属化合物は、以下の式(1)の化合物である。
【化1】
【0031】
ここで、Rは、式(5)〜(8)のために以下に説明されるのと同じ意味を有し、曲線は、二もしくは三個の原子と、Mと共に五または六員環を形成する必要のある結合を表し、ここで、これらの原子は、一以上の基Rにより置換されてもよく、Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムまたセシウムより成る群から選ばれるアルカリ金属を表す。
【0032】
ここで、式(1)の錯体は、上記のとおり、モノマー形態であることができ、また、たとえば、二個のアルカリ金属イオンと二個のリガンド、四個のアルカリ金属イオンと四個のリガンド、六個のアルカリ金属イオンと六個のリガンドを含む凝集体の形態、または他の凝集体の形態であることができる。
【0033】
式(1)の好ましい化合物は、以下の式(2)および(3)の化合物である。
【化2】
【0034】
ここで、使用される記号は、式(5)〜(8)のために以下に説明されるのと上記式(1)と同じ意味を有し、mは、出現毎に同一であるか異なり、0、1、2または3であり、oは、出現毎に同一であるか異なり、0、1、2、3または4である。
【0035】
さらに好ましい有機アルカリ金属化合物は、以下の式(4)の化合物である。
【化3】
【0036】
ここで、使用される記号は、式(5)〜(8)のために以下に説明されるのと上記式(1)と同じ意味を有する。
【0037】
アルカリ金属は、好ましくは、リチウム、ナトリウムおよびカリウム、特に、好ましくは、リチウムおよびナトリウム、非常に、特に、好ましくは、リチウムから選ばれる。
【0038】
特に好ましい式(2)の化合物は、特に、Mがリチウムのものである。さらに、添え字mは、非常に、特に、好ましくは、0である。したがって、非常に、特に、好ましい化合物は、非置換リチウムキノリナートである。
【0039】
適切な有機アルカリ金属化合物の例は、以下の表に示される式(1)〜(45)の構造である。
【化4-1】
【化4-2】
【化4-3】
【0040】
本発明の好ましい具体例では、材料の混合物ではなく唯一の材料が、本発明による電子輸送層中に使用される。したがって、純粋層が好ましい。
【0041】
カソード、アノード、発光層と上記記載の本発明による電子輸送層とは別に、有機エレクトロルミネッセンス素子は、さらなる層を含んでもよい。これらは、たとえば、各場合に、一以上の正孔注入層、正孔輸送層、正孔障壁層、電子輸送層、電子注入層、電子障壁層、励起子障壁層、電荷生成層および/または有機あるいは無機p/n接合である。さらに、たとえば、素子の電荷バランスを制御する中間層が存在してもよい。特に、このような中間層は、二個の発光層の間の中間層として、特に、蛍光層と燐光層との間の中間層として適切である。さらに、層、特に、電荷輸送層は、ドープされていてもよい。しかしながら、上記各層は必ずしも存在する必要はなく、層の選択は、常に使用される化合物に依存することが指摘されねばならない。この型の層の使用は、当業者に知られており、先行技術にしたがって、この目的のために知られるすべての材料を、進歩性を必要とすることなく使用することができる。
【0042】
さらに、一以上の発光層、たとえば、好ましくは、異なる発光色で発光する二あるいは三個の発光層を使用することも可能である。本発明の特に、好ましい具体例は、白色発光有機エレクトロルミネッセンス素子に関する。これは、0.28/0.29〜0.45/0.41の範囲のCIE色座標を有する光で発光することを特徴とする。この型の白色発光有機エレクトロルミネッセンス素子の一般的構造は、たとえば、WO 2005/011013に開示されている。
【0043】
本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子は、頂上発光OLEDもしくは底部発光OLEDであってよい。改善された色座標の本発明による効果が、ここで特に明らかになることから、本発明の特に好ましい具体例では、底部発光OLEDである。頂上発光OLEDにおいては、色座標に関する本発明による素子構造の影響は、より明らかではないが、本発明による素子構造のその他の上記優位性は、頂上発光OLEDにおいても達成される。
【0044】
本発明によるエレクトロルミネッセンス素子のカソードは、好ましくは、低い仕事関数を有する金属、たとえば、アルカリ土類金属、アルカリ金属、主族金属あるいはランタノイド金属(たとえば、Ca、Ba、Mg、Al、In、Mg、Yb、Sm等)のような種々の金属を含む金属合金もしくは多層構造を含む。多層構造の場合、たとえばAgのような比較的高い仕事関数を有する金属を前記金属に加えて使用することもでき、たとえば、Ca/Ag、Mg/AgもしくはBa/Agのような金属の組み合わせが一般的に使用される。同様に好ましいものは、金属合金、特に、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属と銀を含む合金、特に、好ましくは、MgとAgの合金である。高い誘電定数を有する材料の薄い中間層を電子注入層として金属カソードと有機半導体との間に、特に、金属カソードと本発明による電子輸送層との間に、導入することも好ましいかもしれない。この目的のために適切なものは、たとえば、アルカリ金属もしくはアルカリ土類金属フッ化物だけでなく対応する酸化物もしくは炭酸塩等である(たとえば、LiF、LiO、CsF、CsCO、BaF、MgO、NaF等)。この目的のために適切なものは、また、たとえば、Liq(リチウムキノリナート)もしくはその他の上記化合物等のアルカリ金属またはアルカリ土類金属錯体である。この型の電子注入層の層の厚さは、好ましくは、0.5〜5nmである。カソードの光のカップリングアウトのために(頂上発光)、カソードは、500nmの波長で、>20%の透過率を有することが好ましい。頂上発光のための好ましいカソード材料は、マグネシウムと銀の合金である。
【0045】
本発明によるエレクトロルミネッセンス素子のアノードは、好ましくは、高い仕事関数を有する材料を含む。アノードは、好ましくは、真空に対して4.5eV超の仕事関数を有する。この目的に適切なものは、一方で、たとえば、Ag、PtもしくはAuのような高還元電位を有する金属である。他方で、金属/金属酸化物電極(たとえば、Al/Ni/NiO、Al/PtO)も好ましいかもしれない。頂上発光OLEDのために使用されるアノード材料は、好ましくは、ITO、たとえば、銀+ITOと組み合わせた反射層である。ここで、少なくとも一つの電極は、光のアウトカップリングを容易とするために、透明もしくは部分的に透明でなければならない。好ましい構成は、透明アノードを使用する(底部発光)。ここで、好ましいアノード材料は、伝導性混合金属酸化物である。特に、好ましいものは、インジウム錫酸化物(ITO)もしくはインジウム亜鉛酸化物(IZO)である。さらに好ましいものは、伝導性のドープされた有機材料、特に、伝導性のドープされたポリマーである。
【0046】
素子は、(用途に応じて)対応して構造化され、接点を供給され、この型の素子の寿命が水および/または空気の存在で徹底的に短くなることから、最後に密封される。
【0047】
一般的に、有機エレクトロルミネッセンス素子で先行技術にしたがって使用されるようなすべてのさらなる材料を、本発明による電子輸送層と組み合わせて使用することができる。
【0048】
発光層(もしくは、複数の発光層が存在するならば、複数の発光層)は、蛍光もしくは燐光であり得、任意の所望の発光色を有し得る。本発明の好ましい具体例では、発光層(もしくは、複数の発光層)は、赤色-、緑色-、青色-あるいは白色発光層である。
【0049】
赤色発光層は、そのフォトルミネッセンス最大が570〜750nmの範囲である層を意味するものと解される。緑色発光層は、そのフォトルミネッセンス最大が490〜570nmの範囲である層を意味するものと解される。青色発光層は、そのフォトルミネッセンス最大が440〜490nmの範囲である層を意味するものと解される。ここで、フォトルミネッセンス最大は、50nmの層厚を有する層のフォトルミネッセンススペクトルの測定により決定される。
【0050】
本発明の好ましい具体例では、発光層は、緑色発光層である。この選好は、色座標に関する電子輸送層の特に強い作用が、ここで観察され、特に、緑色発光に対しては、素子構造の変更により色座標を最適化することが特に困難であるという事実に基づいている。特に、燐光エミッターならば、緑色エミッターの選択により所望の色座標を達成することは現在技術的には実質的に不可能でもある。
【0051】
本発明の好ましい具体例では、発光層中の発光化合物は、燐光化合物である。
【0052】
本発明の意味での燐光化合物は、相対的に高いスピン多重度、すなわち、スピン状態>1の励起状態、特に、励起三重項状態から室温でルミネッセンスを呈する化合物である。
本発明の目的のために、第2および第3遷移金属系列からの遷移金属を含むすべてのルミネッセンス遷移金属錯体、特に、すべてのルミネッセンスイリジウム、白金および銅化合物が燐光化合物とみなされるべきである。
【0053】
本発明の好ましい具体例では、燐光化合物は、赤色燐光化合物もしくは緑色燐光化合物、特に、緑色燐光化合物である。
【0054】
適切な燐光化合物は、適切な励起により、好ましくは、可視域で発光し、さらに、20より大で、好ましくは、38より大で、84より小な、特に好ましくは、56より大で、80より小な原子番号を有する少なくとも一つの原子を含む化合物である。使用される燐光エミッターは、好ましくは、銅、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、イリジウム、パラジウム、白金、銀、金またはユウロピウムを含む化合物、特に、イリジウム、白金もしくは銅を含む化合物である。
【0055】
特に、好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、燐光化合物として、少なくとも一つの式(5)〜(8)の化合物を含む。
【化5】
【0056】
ここで、以下が、使用される記号に適用される。
【0057】
DCyは、出現毎に同一であるか異なり、それを介して環状基が金属に結合する、少なくとも一つのドナー原子、好ましくは、窒素、カルベンの形態の炭素もしくは燐を含む環状基であり、順に一以上の置換基Rを有してよく、基DCyとCCyは、共有結合を介して互いに結合し、
CCyは、出現毎に同一であるか異なり、それを介して環状基が金属に結合する炭素原子を含む環状基であり、順に一以上の置換基Rを有してよく、
Aは、出現毎に同一であるか異なり、モノアニオン性二座キレートリガンド、好ましくは、ジケトンリガンドであり、
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、F、Cl、Br、I、CHO、C(=O)Ar、P(=O)(Ar、S(=O)Ar、S(=O)Ar、CR=CRAr、CN、NO、Si(R、B(OR、B(R、B(N(R、OSO、1〜40個のC原子を有する直鎖アルキル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基、2〜40個のC原子を有する直鎖アルケニルもしくはアルキニル基、3〜40個のC原子を有する分岐あるいは環状アルキル、アルケニル、アルキニル、アルコキシもしくはチオアルコキシ基(夫々は、1以上の基Rにより置換されてよく、1以上の隣接しないCH基は、RC=CR、C≡C、Si(R、Ge(R、Sn(R、C=O、C=S、C=Se、C=NR、P(=O)(R)、SO、SO、NR、O、SもしくはCONRで置き代えられてよく、また、1以上のH原子は、F、Cl、Br、I、CNもしくはNOで置き代えられてよい。)、または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造、または、各場合に、1以上の基Rにより置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有するアリールオキシもしくはヘテロアリールオキシ基、またはこれらの構造の組み合わせであり;ここで、2以上の隣接する置換基Rは、互いに、モノ-あるいはポリ環状脂肪族もしくは芳香族環構造を形成してもよく;
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rにより置換されてよい5〜40個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造であり;
は、出現毎に同一であるか異なり、H、D、CNまたは1〜20個のC原子を有する脂肪族、芳香族および/または複素環式芳香族炭化水素基であり、加えて、H原子は、Fで置き代えられてよく;ここで、2以上の隣接する置換基Rは、互いにモノ-あるいはポリ環状、脂肪族もしくは芳香族環構造を形成してもよい。
【0058】
複数の基Rとの間の環構造の形成により、ブリッジは、基DCyとCCyとの間に存在してもよい。さらに、複数の基Rとの間の環構造の形成により、ブリッジは、2或いは3個のリガンドCCy−DCyとの間または1或いは2個のリガンドCCy−DCyとリガンドAとの間に存在してもよく、多座或いはポリポダルリガンド構造を生じる。
【0059】
上記のエミッターの例は、出願WO 2000/70655、WO 2001/41512、WO 2002/02714、WO 2002/15645、EP 1191613、EP 1191612、EP 1191614、WO 2004/081017、WO 2005/033244、WO 2005/042550、WO 2005/113563、WO 2006/008069、WO 2006/061182、WO 2006/081973、 WO 2009/118087、WO 2009/146770及び未公開出願DE 102008027005.9により明らかにされる。一般的には、燐光OLEDのための先行技術にしたがって使用され、有機エレクトロルミネッセンス素子分野の当業者に知られるようなすべての燐光錯体が適切であり、当業者は進歩性を必要とせず、更なる燐光化合物を使用することができよう。特に、当業者はどの燐光錯体がどの発光色で発光するかを知っている。
【0060】
本発明による化合物のために適切なマトリックス材料は、たとえば、WO 2004/013080、WO 2004/093207、WO 2006/005627もしくはWO 2010/006680にしたがうケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシドもしくはスルホン、トリアリールアミン、カルバゾール誘導体、たとえば、CBP(N,N-ビスカルバゾリルビフェニル)、m-CBPまたは、WO 2005/039246、 US 2005/0069729、 JP 2004/288381、 EP 1205527 、WO 2008/086851もしくはUS 2009/0134784に記載されたカルバゾール誘導体、たとえば、WO 2007/063754 もしくは WO 2008/056746にしたがうインドロカルバゾール誘導体、未公開出願DE 102009023155.2および DE 102009031021.5にしたがうインデノカルバゾール誘導体、たとえば、EP 1617710、EP 1617711、 EP 1731584、 JP 2005/347160にしたがうアザカルバゾール誘導体、たとえば、WO 2007/137725にしたがうバイポーラーマトリックス材料、たとえば、WO 2005/111172にしたがうシラン、たとえば、WO 2006/117052にしたがうアザカルバゾールもしくはボロン酸エステル、たとえば、WO 2010/054729によるジアザシロール誘導体、たとえば、WO 2010/054730にしたがうジアザホスホール誘導体、WO 2010/015306、WO 2007/063754もしくはWO 2008/056746にしたがうトリアジン誘導体、または、たとえば、EP 652273 もしくは WO 2009/062578にしたがう亜鉛錯体、たとえば、WO 2009/148015にしたがうジベンゾフラン誘導体またはUS 2009/0136779、 WO 2010/050778 もしくは未公開出願DE 102009048791.3、未公開出願DE 102009048791.3および未公開出願DE 102010005697.9にしたがう架橋カルバゾール誘導体である。
【0061】
複数の異なるマトリックス材料を混合物として、特に、少なくとも一つの電子伝導マトリックス材料と少なくとも一つの正孔伝導マトリックス材料を使用することも好ましいかもしれない。本発明による金属錯体のための混合マトリックスとして、好ましい組み合わせは、たとえば、トリアリールアミン誘導体もしくはカルバゾール誘導体との芳香族ケトンもしくはトリアジン誘導体の使用である。同様に好ましいものは、たとえば、電荷輸送マトリックス材料と、未公開出願DE 102009014513.3に記載されたような電荷輸送には関与しないか、顕著には関与しない電気的に不活性なマトリックス材料の混合物の使用である。
【0062】
本発明のさらに好ましい具体例では、有機エレクトロルミネッセンス素子は、特に、燐光発光層の使用の場合には、本発明による発光層と本発明による電子輸送層との間に正孔障壁層を含む。
【0063】
本発明のさらに好ましい具体例では、発光層は、蛍光層、特に、青色-、緑色-蛍光層である。
【0064】
蛍光エミッター層で使用することのできる好ましいドーパントは、モノスチリルアミン、ジスチリルアミン、トリスチリルアミン、テトラスチリルアミン、スチリルホスフィン、スチリルエーテルおよびアリールアミンの種から選択される。モノスチリルアミンは、1個の置換あるいは非置換スチリル基と、少なくとも1個の、好ましくは芳香族の、アミンを含む化合物を意味するものと解される。ジスチリルアミンは、2個の置換あるいは非置換スチリル基と、少なくとも1個の、好ましくは芳香族の、アミンを含む化合物を意味するものと解される。トリスチリルアミンは、3個の置換あるいは非置換スチリル基と、少なくとも1個の、好ましくは芳香族の、アミンを含む化合物を意味するものと解される。テトラスチリルアミンは、4個の置換あるいは非置換スチリル基と、少なくとも1つの、好ましくは芳香族の、アミンを含む化合物を意味するものと解される。スチリル基は、特に好ましくは、スチルベンであり、さらに置換されていてもよい。対応するホスフィンとエーテルはアミンと同様に定義される。本発明の目的のために、アリールアミンもしくは芳香族アミンは、窒素に直接結合した3個の置換あるいは非置換芳香族もしくは複素環式芳香族環構造を含む。これら芳香族もしくは複素環式芳香族環構造の少なくとも1個は、好ましくは、縮合環構造、特に、好ましくは、少なくとも14個の芳香族環原子を有する縮合環構造である。それらの好ましい例は、芳香族アントラセンアミン、芳香族アントラセンジアミン、芳香族ピレンアミン、芳香族ピレンジアミン、芳香族クリセンアミンもしくは芳香族クリセンジアミンである。芳香族アントラセンアミンは、一個のジアリールアミノ基が、アントラセンに直接、好ましくは、2-もしくは9-位で結合する化合物を意味するものと解される。芳香族ジアントラセンアミンは、二個のジアリールアミノ基が、アントラセンに直接、好ましくは、2-,6もしくは9.10-位で結合する化合物を意味するものと解される。芳香族ピレンアミン、ピレンジアミン、クリセンアミンおよびクリセンジアミンは、同様に定義され、ここで、ピレン上のジアリールアミノ基は、好ましくは、1位もしくは1.6-位で結合する。さらに好ましい蛍光ドーパントは、たとえば、WO 2006/122630にしたがうインデノフルオレンアミンあるいはインデノフルオレンジアミン、たとえば、WO 2008/006449にしたがうベンゾインデノフルオレンアミンあるいはベンゾインデノフルオレンジアミン、および、たとえば、WO 2007/140847にしたがうジベンゾインデノフルオレンアミンあるいはジベンゾインデノフルオレンジアミンから選択される。スチリルアミンの種からのドーパントの例は、置換あるいは非置換トリスチルベンアミンまたは、WO 2006/000388、WO 2006/058737、WO 2006/000389、WO 2007/065549およびWO 2007/115610に記載されるドーパントである。さらに好ましい蛍光ドーパントは、たとえば、WO 2010/012328に開示された化合物等のような縮合芳香族炭化水素である。特に、好ましい蛍光ドーパントは、少なくとも14個の芳香族環原子を有する少なくとも一つの縮合芳香族基と縮合芳香族炭化水素を含む芳香族アミンである。本発明のさらに好ましい具体例では、蛍光層のホスト材料は、電子輸送層材料である。これは、好ましくは、<−2.3eV、特に、好ましくは、<−2.5eVのLUMO(最低空分子軌道)を有する。ここで、LUMOは、例の部分で以下の一般的用語で記載されるとおりに決定される。
【0065】
蛍光ドーパントのための、特に、上記ドーパントのための適切なホスト材料(マトリックス材料)は、たとえば、オリゴアリーレン(たとえば、EP 676461にしたがう2,2’,7,7’-テトラフェニルスピロビフルオレンもしくはジナフチルアントラセン)、特に、縮合芳香族基を含むオリゴアリーレン、オリゴアリーレンビニレン(たとえば、DPVBiもしくはEP 676461にしたがうスピロ-DPVBi)、ポリポダル金属錯体(たとえば、WO 2004/081017にしたがう)、電子伝導化合物、特に、ケトン、ホスフィンオキシド、スルホキシド等(たとえば、WO 2005/084081およびWO 2005/084082にしたがう)、アトロプ異性体(たとえば、WO 2006/048268にしたがう)、ボロン酸誘導体(たとえば、WO 2006/177052にしたがう)、ベンゾアントラセン誘導体(たとえば、WO 2008/145239にしたがうか、未公開出願DE 10200903426.5.2にしたがうベンゾ[a]アントラセン誘導体)およびベンゾフェナントレン誘導体(未公開出願DE 102009005746.3にしたがうベンゾ[c]フェナントレン誘導体)の種から選択される。特に、好ましいホスト材料は、ナフタレン、アントラセン、ベンゾアントラセン、特に、ベンゾ[a]アントラセン、ベンゾフェナントレン、特に、ベンゾ[c]フェナントレンおよび/またはピレンを含むオリゴアリーレンもしくはこれら化合物のアトロプ異性体の種から選択される。本発明の目的のために、オリゴアリーレンは、少なくとも3個のアリールあるいはアリーレン基が互いに結合する化合物を意味するものと解されることを意図している。
【0066】
特に、好ましいスト材料は、は、以下の式(9)の化合物である。
【0067】
Ar-Ant-Ar2 式(9)
ここで、Rは上記に示される意味を有し、使用される他の記号は以下が適用される。
【0068】
Antは、9-あるいは10-位でArで置換されるアントラセン基であって、さらに一以上のRにより置換されてもよく、
Arは、出現毎に同一であるか異なり、1以上の基Rで置換されてよい5〜60個の芳香族環原子を有する芳香族もしくは複素環式芳香族環構造である。
【0069】
本発明の好ましい具体例では、少なくとも一つの基Arは、10個以上の芳香族環原子を有する縮合アリール基を含み、ここで、Arは、1以上の基Rで置換されてよい。好ましい基Arは、出現毎に同一であるか異なり、フェニル、1-ナフチル、2-ナフチル、アントラセニル、オルト-、メタ-あるいはパラ-ビフェニル、フェニルレン-1-ナフチル、フェニルレン-2-ナフチル、フェナントレニル、ベンズ[a]アントラセニルもしくはベンズ[c] フェナントレニルから選択され、夫々は、1以上の基Rにより置換されてよい。
【0070】
本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子の正孔注入層もしくは正孔輸送層もしくは電子輸送層で使用することができるような適切な正孔輸送材料は、たとえば、Y. Shirota et al., Chem. Rev. 2007, 107(4), 953-1010に開示された化合物または先行技術にしたがって、これらの層中で使用されるような他の材料である。
【0071】
本発明によるエレクトロルミネッセンス素子で正孔輸送層もしくは正孔注入層で使用することができる好ましい適切な正孔輸送材料の例は、インデノフルオレンアミンおよび誘導体(たとえば、WO2006/122630もしくはWO2006/100896にしたがう)、EP1661888に開示されたアミン誘導体、ヘキサアザトリフェニレン誘導体(たとえば、WO2001/049806にしたがう)、縮合芳香族環構造を含むアミン誘導体(たとえば、US5,061,569にしたがう)、WO 95/09147に開示されたアミン誘導体、(たとえば、WO2008/006449にしたがう)モノベンゾインデノフルオレンアミン、ジベンゾインデノフルオレンアミン(たとえば、WO2007/140847にしたがう)またはピペリジン誘導体(たとえば、未公開出願DE 102009005290.9にしたがう)である。さらに適切である正孔輸送および正孔注入材料は、JP 2001/226331、 EP676461、 EP650955、 WO2001/049806、 US4780536、 WO98/30071、 EP891121、EP1661888、JP 2006/253445、EP650955、WO2006/073054およびUS5061569に開示されたとおりの上記に示される化合物の誘導体である。
【0072】
適切な正孔輸送もしくは正孔注入材料は、さらに、たとえば、次の表に挙げられた材料である。
【化6】
【0073】
さらに好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、昇華プロセスにより適用されることを特徴とし、材料は、10−5mbar未満、好ましくは10−6mbar未満の初期圧力で、真空昇華ユニット中で気相堆積される。しかしながら、初期圧力が、たとえば、10−7mbar未満よりさらに低くてもよいことに留意しなければならない。
【0074】
同様に好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、OVPD(有機気相堆積)プロセスもしくはキャリアガス昇華により適用され、材料は、10−5mbar〜1barの圧力で、適用されることを特徴とする。このプロセスの特別な場合は、OVJP(有機気相ジェット印刷)プロセスであり、材料はノズルにより直接適用され、それにより構造化される(たとえば、M. S. Arnold et al., Appl. Phys. Lett. 2008, 92, 053301)。
【0075】
さらに、好ましい有機エレクトロルミネッセンス素子は、1以上の層が、溶液から、たとえば、スピンコーティングにより、もしくは、たとえばスクリーン印刷、フレキソ印刷あるいはオフセット印刷、特に、好ましくは、LITI(光誘起熱画像化、熱転写印刷)インクジェット印刷あるいはノズル印刷のような任意の所望の印刷プロセスにより製造されることを特徴とする。可溶性の化合物が、この目的のためには必要である。高い溶解度は、化合物の適切な置換により達成することができる。ここで、個々の材料の溶液だけでなく、複数の化合物、たとえば、マトリックス材料とドーパントを含む溶液からの適用も可能である。
【0076】
したがって、本発明は、さらに、少なくとも一つの層が昇華プロセスにより適用されるか、OVPD(有機気相堆積)プロセスもしくはキャリアガス昇華により適用されるか、たとえば、スピンコーティング等の溶液から、もしくは任意の所望の印刷プロセスにより適用されることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法に関する。
【0077】
有機エレクトロルミネッセンス素子は、一以上の層を溶液から適用し、一以上のさらなる層を気相堆積により適用することによるハイブリイド構造として製造することもできる。したがって、たとえば、発光層を溶液から適用することができ、本発明による電子輸送層は、気相堆積によりこの層に適用することができる。
【0078】
これらのプロセスは、当業者に一般的に知られ、発明性を要することなく、本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子に適用することができる。
【0079】
本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子は、先行技術を超える以下の驚くべき優位性を有する。
【0080】
1.本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子は、非常に高い効率を有する。ここで、効率は、より薄い電子輸送層の仕様の場合によりも良好である。
【0081】
2.本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子は、顕著に改善された色座標を有する。これは、特に、緑色発光エレクトロルミネッセンス素子にあてはまる。
【0082】
3.先行技術に比べて顕著により厚い電子輸送層にもかかわらず、本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子は、実質的に不変であるか、わずかに最小により高い駆動電圧を有し、エレクトロルミネッセンス素子のパワー効率は、それでも、先行技術と比べて改善される。
【0083】
4.本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子は、電極として使用される必須の透明伝導性酸化物が、電子輸送層を破壊することなく、スパッタリングにより厚い電子輸送層に適用することができることから、透明OLEDの製造が可能となる。
【0084】
5.本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子は、より厚い層に基づくより少ない短絡を生じることから、改善された生産効率で製造することができる。
【0085】
6.本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子の寿命は、より薄い電子輸送層を含む先行技術にしたがう有機エレクトロルミネッセンス素子のものと同等か、より良好である。
【0086】
本発明は、以下の例により、より詳細に説明されるが、それにより限定することを望むものではない。当業者は、発明性を要することなく、さらなる本発明による有機エレクトロルミネッセンス素子を製造することができる。
【0087】

電子移動度の一般的測定
本発明の意味での電子移動度は、以下に示される一般的方法により決定される。
【0088】
電子移動度は、この目的のために使用されることが多い「飛行時間」(TOF)法を使用して測定され、電荷キャリアーは、レーザーパルスにより調査されるべき材料の単一層成分中に生み出される。これらは、適用される場により分離される。正孔が成分を去り、ここで、電子は層中を移動し、電流を生じる。電子の遷移時間と移動性はその間の電流の変化から決定することができる。
【0089】
調査されるべき材料が、2μmの層厚に0.3nm/sの気相堆積速度で、150nmの厚さの構造化されたITOで被覆されたガラス基板に適用される。100nmの厚さのアルミニウム層が頂上に堆積される。形成された素子は、2×2mmの面積を有する。素子は、N2レーザー(波長337nm、パルス持続4ns、パルス周波数10Hz、パルスエネルギー100μJ)を使用して、ITO層を通じて照射される。適用される場Eの場強度は、10V/cmである。その間の光電流の変動は、オシロスコープを使用して記録される。時間の関数としての二重対数プロットにおいて、その交点が遷移時間tとして使用される二個の線形部分が得られる。移動度μは、そこからと適用場Eとμ=d/(t*E)としての層厚dで、もしくは、適用された電場E=105V/cmとμe=2μm/(t*105V/cm)としての層厚d=2μmにより生じる。方法のより詳細な説明は、たとえば、 Redecker et al., Applied Physics Letters, Vol. 173, p. 1565に記載されている。μ
層厚の一般的測定
本発明の意味での層厚は、以下に記載される一般的方法で測定される。
【0090】
個々の層の厚さは、製造されたOLED上で直接測定することはできないから、それらは、通常のとおり、気相堆積の間、水晶共鳴器によりモニターされる。このために、材料により幾分異なる気相堆積速度が必要となり、これが、気相堆積速度の較正が、OLED製造以前に実行される理由である。気相堆積速度が知られていれば、任意の所望の層厚が気相堆積プロセスの間にわたり設定することができる。
【0091】
気相堆積速度を較正するために、気相堆積されるべき材料の「試験層」がガラス基板に適用され、(未だ較正されていない)気相堆積速度が、気相堆積の間記録される。ここで、気相堆積時間は、約100μmの厚さの層が得られるように経験値を参照して選択される。次いで、試験層の厚さは、プロフィロメータ(以下参照)により測定される。現時点で知られた層厚は、較正された気相堆積速度を決定するために使用され、OLEDのさらなる製造に使用されることができる。
【0092】
試験層の厚さは、プロフィロメータ(Veeco Dektak 3ST)(接触圧4mg、測定速度2mm/30s)により測定される。(シャドーマスクの使用による)ガラス基板上の被覆領域と非被覆領域との間の境界で形成される層端のプロフィールは、ここで測定される。
試験層の層厚は、二個の領域間の高さの相違から決定することができる。この方法を使用する層厚の精度は、約+/−5%である。
【0093】
サイクリックヴォルタンメトリと吸収スペクトルからのHOMO、LUMOとエネルギーギャップの一般的測定方法
本発明の目的のために、HOMO、LUMO値とエネルギーギャップが、以下に記載される一般的な方法で測定される。
【0094】
HOMO値は酸化電位から生じ、サイクリックヴォルタンメトリ(CV)により室温で測定される。この目的のために使用される測定機器は、Metrohm 663 VA satandを有するECO Autolab system である。作業電極は、金電極であり、参照電極は、Ag/AgClであり、ブリッジ電極は、KCl(3モル/l)であり、補助電極は白金である。
【0095】
測定のために、まず、ジクロロタン中の0.11Mのテトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(NHPF)の伝導性塩溶液が調製され、測定セル中に導入され、5分間脱気される。二測定サイクルが、引き続き以下のパラメーターで実行される。
【0096】
測定技術:CV
初期パージ時間:300s
清浄電位:−1V
清浄時間:10s
堆積電位:−0.2V
堆積時間D:10s
出発電位:−0.2V
最終電位:1.6V
電圧ステップ:6mV
掃引速度除:50mV/s
1mlの試料溶液(1mlのジクロロタン中10mgの測定されるべき基板)が、引き続き伝導性塩溶液に添加され、再度、混合物は5分間脱気される。引き続き、五回のさらなる測定サイクルが、引き続き実行され、最後の三回が評価のために記録される。同じパラメーターが上記のとおりに設定される。
【0097】
0.1mlのフェロセン溶液(1mlのジクロロメタン中の100mgのフェロセン)が、引き続き溶液に添加され、混合物は1分間脱気され、測定サイクルは、引き続き以下のパラメーターで実行される。
【0098】
測定技術:CV
初期パージ時間:60s
清浄電位:−1V
清浄時間:10s
堆積電位:−0.2V
堆積時間D:10s
出発電位:−0.2V
最終電位:1.6V
電圧ステップ:6mV
掃引速度除:50mV/s
評価のために、最初の酸化最大電圧平均が順曲腺からとられ、関連する還元最大電圧平均が、同じ溶液とフェロセン溶液が添加された溶液に対する回帰曲腺(VとV)からとられ、ここで使用される電圧は、各場合にフェロセンに対する電圧である。EHOMOを調査される物質のHOMO値は、EHOMO=−[e・(V−V)+4.8eV]として生じ、ここで、eは、要素電荷である。
【0099】
たとえば、調査されるべき物質がジクロロタン中に溶解しないとき、または測定中に物質の分解が生じるときには、測定方法の適切な変更が個々の場合に実行される必要があり得ることに留意しなければならない。有意な測定が、上記方法を使用するCVにより可能でないならば、 HOMOエネルギーは、Riken Keiki Co. Ltd. (http://www.rikenkeiki.com/pages/AC2.htm)からのAC-2型光電子スペクトロメータによる光電子スペクトル法により測定されるだろうが、その場合、得られた値は、CVを使用して測定されたものよりも典型には約0.3eVマイナスであることに留意しなければならない。ついで、この出願の目的のために、HOMO値は、RikenAC-2型+0.3eVであることを意味するものと解される。したがって、−5.6eVの値が、たとえば、RikenAC-2型で測定されたならば、これは、CVを使用して測定された−5.3eVという値に対応する。
【0100】
さらに、−6eVより低いHOMO値は、上記CV法を使用しても、上記光電子スペクトル法のいずれかを使用しても、信頼できる測定をすることはできない。この場合には、HOMO値は、密度関数理論(DFT)による量子化学計算から決定される。これは、B3PW91 / 6-31G(d)法を使用する市販のソフトウエアGaussian 03W (Gaussian Inc.)により実行される。CV値への計算値の標準化は、CVから測定することのできる材料との比較により達成される。このために、一連の物質のHOMO値がCV法を使用して測定され、計算される。ついで、計算値は測定値により較正され、この較正ファクターは、すべての更なる計算に使用される。こうして、CVで測定されるものに非常によく対応したHOMO値を計算することができる。特定の物質に対するHOMO値が、上記のとおりのCVまたはRikenAC-2型で測定できないならば、本発明の目的のために、HOMO値は、上記のとおりにCVに較正されたDFT計算による説明にしたがって得られる値を意味するものと解される。いくつかの通常の有機材料に対してこうして計算された値の例は、NPB(HOMO−5.16eV、LUMO−2.28eV);TCA(HOMO−5.33eV、LUMO−2.20eV);TPBI(HOMO−6.26eV、LUMO−2.48eV)である。これらの値は、計算法の較正のために使用することができる。
【0101】
エネルギーギャップは、50nmの層厚を有するフィルム上で測定された吸収スペクトルの吸収端から決定される。ここで、吸収端は、直線が、吸収スペクトルの最大波長の落下勾配面で最大勾配で適合するときに得られる波長として定義され、この直線が、波長軸と交わる、すなわち、吸収値=0である値が決定される。
【0102】
LUMO値は、上記説明されたHOMO値へのエネルギーギャップの付加により得られる。
【0103】
OLEDの一般的製造と例の説明
本発明によるOLEDと先行技術によるOLEDが、WO 04/058911にしたがう一般的プロセスにより製造されるが、これは、ここに記載される状況(層の厚さの変化、使用材料)に対して適合される。
【0104】
以下の例1〜14は、種々のOLEDの結果を示す(表1〜4参照)。厚さ150nmの構造化されたITO(インジウム錫酸化物)で被覆された硝子板が、改善された加工のために、20nmのPEDOT(ポリ(3,4-エチレンジオキシ-2,5-チオフェン)水からスピンコート、H.C.Stack,Goslar独から購入。)で被覆される。これらの被覆されたガラス板はOLEDが適用される基板を形成する。OLEDは、基本的に、次の層構造から成る:基板/随意に、正孔注入層(HIL)/正孔輸送層(HTL)/随意に、中間層(IL)/電子障壁層(EBL)/発光層(EML)/随意に、正孔障壁層(HBL)/本発明による電子輸送層(ETL)/随意に、第2の電子輸送層(ETL2)/随意に、電子注入層(EIL)及び最後にカソード。カソードは、100nm厚のアルミニウム層により形成される。OLEDの正確な層構造は表1に示される。OLEDの製造のために使用された材料は、表3に示される。表2は、10V/cm(移動度の測定については例1参照。)の電場で使用される電子輸送材料の電子移動度を含む。電子輸送層での材料TPBI、Alq、ETM1およびETM2の使用の場合に、先行技術にしたがうOLEDが得られ、ETM3〜ETM6の使用の場合に、本発明による素子が得られる。
【0105】
OLEDの性能データが、表4に要約される。例は、より良い明確さために「a」と「b」に分けられ、「a」で終わるすべての例は、薄い電子輸送層を含み、「b」で終わるすべての例は、厚い電子輸送層を含む。使用される材料の電子移動性にしたがって、例1〜7(「a」と「b」両者)は、先行技術にしたがうOLEDである。同じことが「a」で終わる例8〜14にあてはまり、薄い電子輸送層を含み、本発明にしたがうOLEDとの比較として役立つ。ここで、対応する厚い電子輸送層に対応して高い電子移動度を有する材料が使用されることから、本発明にしたがうOLEDは、「b」で終わる例8〜14である。
【0106】
電子輸送層の厚さは、良好な性能データを得るためにすべてのOLEDで最適化される。これは、薄い電子輸送層を含むOLEDと厚い電子輸送層を含むOLEDの両者にあてはまる。そこで、ETLの厚さに関して最適化された素子は、以下で比較される。
【0107】
すべての材料は、真空室において、熱気相堆積により適用される。ここで、発光層は、常に、少なくとも一つのマトリックス材料(ホスト材料)と、共蒸発により一定の体積割合で、ホスト材料または材料と前混合されるドーパントとから成る。ここで、H3:CBP:TER1(55%:35%:10%)等の情報は、材料H3が55体積%の割合で層中に存在し、CBPが35%の割合で層中に存在し、TER1が10%の割合で層中に存在することを意味する。同様に、電子輸送層も、二種の材料の混合物から成ってもよい。
【0108】
OLEDは、標準方法により特性決定される。この目的のために、エレクトロルミネセンススペクトル、電流効率(cd/Aで測定)、電流-電圧-輝度特性線(IUL特性線)から計算した、輝度の関数としてのパワー効率(Im/Wで測定)、および寿命が測定される。寿命は輝度が一定の初期輝度から一定の割合で低下した時間として定義される。LD80は、前記寿命が、輝度が初期輝度の80%に低下した、たとえば、4000cd/m〜3200cd/mに低下した時間であることを意味する。同様に、LD50は、初期輝度の半分に低下した時間である。寿命の値は、当業者により知られた変換式の助けにより、他の初期輝度に対する値に変換することができる。
【0109】
短絡の割合の測定
大量生産における製造収率に期待される改善についてコメントするために、一定の駆動期間中内に短絡を生じるOLEDの割合が測定される。このようなOLEDは発光せず、それゆえ、大量生産の目的のための不良品として分類され、そのため製造収率を減少させる。
【0110】
各場合に、同一の層構造を有する32個のOLEDが製造される。それらの寿命は上記のとおり測定される。寿命測定の間に、100hの駆動時間後に短絡を有するOLEDの割合が測定される。短絡は、輝度が、突然非常に低い値かゼロに落ちることから認識することができる。表4は、32個のOLED中の何個がそのような短絡を有するかを示す。
0/32という値は、すべてのOLEDが100h後に未だ機能していることを意味する。
【0111】
青色発光蛍光OLED
厚いETLの使用に関して、青色発光のための色座標が改善され、短絡の数が同様に顕著に減少する(例6aと例6bおよび12aと12bとの比較)。Alq(先行技術)が青色蛍光発光層と組み合わせて使用されると、厚いETLの使用に関して、駆動電圧は6.4Vから13.3Vへと、非常に、明らかに、増加する(例6aと例6b)。電流効率(cd/Aでの)は、わずかに増加するが、これは、パワー効率が2.5から1.3lm/Wへと約半分であるという結果を有する。高い駆動電圧に基づいて、素子へのエネルギー入力は顕著に増加し、薄いETLと比べて寿命の顕著な悪化を引き起こす(160hから95hへと)。
【0112】
本発明による素子の場合には、状況は異なる。材料ETM3の厚い層が使用されると、電流効率の僅かな増加と組み合わせて、駆動電圧の穏やかな上昇のみが得られ、薄いETLと比べて同様であるパワー効率と寿命を生じる(例12aと12b)。したがって、本発明によるETLの優位性は、同等のパワー効率と寿命を有しての、改善された色座標とより少ない数の短絡である。
【0113】
赤色発光燐光OLED
赤色発光の場合、上記触れた青色発光と同様の場合が存在する。ここでも、本発明によるOLEDは、薄い電子輸送層の場合と同じレベルのパワー効率と寿命を有し、改善された色座標と減少した数の短絡を得るという事実により特徴付けられる(例7a、7bおよび13aと13b、ここで、13bは、本発明によるOLEDである。)。
【0114】
緑色発光燐光OLED
最大の優位性は、緑色燐光を示すOLEDでの本発明による電子輸送層の使用で生じる。これは、対応する厚い発光層の使用に関して、発光スペクトルがより狭くなるという事実に基づく。青色および赤色発光の場合、これは、色座標のわずかな改善を生じるだけであるが、この効果は、緑色スペクトル領域でより明らかとなる。さらに、電流効率のより顕著な増加が、緑色発光の場合に達成することができ、ややより高い駆動電圧にもかかわらず、薄いETLよりも本発明による電子輸送層により、さらに良好なパワー効率を達成するころができるという結果を有する。ここで、例11aと例11bに関して特別な言及がなされねばならず、本発明によるETLの使用について、10%のパワー効率の顕著な上昇を示す。同じ例で、寿命のわずかな増加も見られ、特に、本発明によるETLを含むOLEDのより良好な電流効率に基づいている。
【0115】
さらに、短絡の割合は、緑色発光の場合に厚い電子輸送層で顕著に減少することができる。青色および赤色に対して言及した優位性に加えて、パワー効率の上昇と寿命の穏やかな改善も、本発明による電子輸送層の使用の場合における緑色発光に対しても可能である。
【0116】
表1:OLEDの構造
【表1】
【0117】
表2:使用される電子輸送層の電子移動度
【表2】
【0118】
表3:使用される材料の構造式
【表3-1】
【表3-2】
【0119】
表4:種々のOLEDの性能データ
【表4】