(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
外部環境に位置する作業者が無菌環境を維持した作業室の内部で作業するために、当該作業室の壁面に開口した作業用開口部に設けられた接続ポートから当該作業室の内部に向けて気密性を保持して取り付けられた作業用部材の前記外部環境側に接する面(内面)を除染するための装置であって、
前記接続ポートを前記外部環境側から封鎖して、当該接続ポートと前記作業用部材の内面とで囲まれた閉鎖空間を形成する接続ポート閉鎖部材と、
前記接続ポート閉鎖部材を介して、前記閉鎖空間の内部に除染液を供給する除染液供給手段と、
前記閉鎖空間の内部に供給される除染液を当該閉鎖空間の内部で霧化して前記作業用部材の内面に噴霧する除染液噴霧手段とを有することを特徴とする内面除染装置。
前記除染液噴霧手段は、圧縮空気を発生する圧縮空気発生装置と、当該圧縮空気発生装置と前記閉鎖空間の内部とを前記接続ポート閉鎖部材を介して連通する圧縮空気供給配管とを具備すると共に、前記閉鎖空間の内部において当該圧縮空気供給配管の延端部が前記作業用部材の内面に向けて開口する空気吐出口を形成し、
前記除染液供給手段は、前記除染液を収容する除染液槽と、当該除染液槽と前記閉鎖空間の内部とを前記接続ポート閉鎖部材を介して連通する除染液供給配管とを具備すると共に、前記閉鎖空間の内部において当該除染液供給配管の延端部が前記空気吐出口の吐出方向と交差する方向に開口する除染液供給口を形成し、
前記空気吐出口からの空気が、前記除染液供給口の上部に吐出されることにより、当該除染液供給口から供給される除染液が、前記空気吐出口から吐出される空気により吸い上げられ、前記作業用部材の内面に向けて霧状に噴射されることを特徴とする請求項1に記載の内面除染装置。
前記除染液供給手段は、前記除染液を収容する除染液槽と、当該除染液槽と前記閉鎖空間の内部とを前記接続ポート閉鎖部材を介して連通する除染液供給配管とを具備すると共に、前記閉鎖空間の内部において当該除染液供給配管の延端部が前記作業用部材の内面に向けて開口する除染液供給口を形成し、
前記除染液噴霧手段は、前記除染液供給口に配設された噴射ノズルと、圧縮空気を発生する圧縮空気発生装置と、当該圧縮空気発生装置と前記除染液槽の内部とを連通する圧縮空気供給配管とを具備し、
前記圧縮空気発生装置から前記圧縮空気供給配管を介して供給される圧縮空気が、前記除染液槽の内部を加圧することにより、当該除染液槽の内部の除染液が、前記除染液供給配管を介して前記噴射ノズルに供給され、当該噴射ノズルから前記作業用部材の内面に向けて霧状に噴射されることを特徴とする請求項1に記載の内面除染装置。
【背景技術】
【0002】
清浄な雰囲気で行われる作業、例えば、医薬品の製造段階の作業、或いは、半導体や電子部品の製造段階の作業においては、外部環境から汚染物質が入り込まないように内部を無菌・無塵状態に保った清浄な作業環境で作業が行われる。このような作業環境としては、一般にはクリーンルームが使用される。このクリーンルーム内では、無塵衣を身に付けた作業者が作業を行う。しかし、無菌性保証水準、無塵性保証水準を高めるためには、クリーンルーム内に更に高度なクリーン領域を構成して作業が行われる。
【0003】
高度なクリーン領域を構成する1つの方法として、アイソレーター装置又はグローブボックス(以下、統一して「アイソレーター装置」という。)が利用される。このアイソレーター装置は、外部環境から密閉されたチャンバーを使用し、作業者がこのチャンバーの外部から作業用グローブやハーフスーツを介して作業を行う。また、高度なクリーン領域を構成する他の方法として、RABS(アクセス制限バリアシステム)が利用される。このRABSは、クリーンルーム内の一部に下方部が解放された壁面で囲まれた領域を設け、その内部に上方から下方に流れる一方向流の清浄空気の層流(ラミナーフロー)を流すと共に、作業者の厳格なアクセス制限を行うようにしたものである。このRABSにおいては、作業者は壁面に設けられた作業用グローブやハーフスーツを介して作業を行う。
【0004】
一般に医薬品などを製造するアイソレーター装置やRABSの内部は、GMP(Good Manufacturing Practice)に即した高度な除染バリデーションを完了し、グレードA(厚生労働省・無菌医薬品製造指針)を保証している。この場合、アイソレーター装置やRABSの外部は、グレードB或いはグレードC、Dなどの状態に維持されている。このように、高度な無菌性保証水準を要求されるアイソレーター装置やRABSの内部だけでなく、その外部環境の無菌環境を維持することも重要である。
【0005】
ここで、アイソレーター装置やRABSの内部と外部との境界において、内部の高度な無菌環境を維持するために、特に重要と考えられるのが作業用グローブやハーフスーツ自体或いはその装着部分の気密性である。作業者が頻繁に使用する作業用グローブやハーフスーツにおいて、その本体に穴(ピンホール)や裂け目が発生し、或いは、これらの装着部分の気密性が破綻することにより、内部の高度な無菌環境を維持できなくなる。
【0006】
一方、作業用グローブやハーフスーツの内面、すなわち外部環境側(グレードB、C、D)に接する面は、外部環境側において最も無菌環境を維持し辛い部分である。すなわち、これらの内面は、作業者が頻繁に手や半身を出し入れする部分であり、袋状の内部にあり除染の効果が維持し辛いことによる。従って、作業用グローブやハーフスーツの内面は、外部環境を定期的に除染する際に特に念入りに除染される。更に、外部環境の定期的な除染よりも頻繁に除染されるべきである。仮に、この部分の無菌環境がアイソレーター装置やRABSの外部の無菌環境(グレードB、C、D)よりも低下していた場合には、作業用グローブやハーフスーツに穴(ピンホール)や裂け目が発生した場合、内部環境(グレードA)の汚染度が大きくなる。
【0007】
そこで、作業用グローブやハーフスーツ自体或いはその装着部分の気密性を管理するために、各種の気密性検査(以下「リーク検査」という)用の装置が提案され実際に使用されている。例えば、下記特許文献1においては、アイソレーター装置に作業用グローブを装着した状態で作業用グローブとその装着部分の気密性を検査する陰圧式グローブ気密性検査装置が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記特許文献1に提案されている陰圧式グローブ気密性検査装置などのリーク検査装置は、あくまでも作業用グローブとその装着部分の気密性を定期的に検査するものであって、気密性の異常を早期発見することを目的とする。従って、気密性の異常が発見された場合に、作業用グローブやハーフスーツの内面が汚染されていた場合には、アイソレーター装置やRABSの内部環境(グレードA)の汚染度が大きくなることを防止するものではない。
【0010】
そこで、本発明は、上記の諸問題に対処して、アイソレーター装置などの外部環境側において最も無菌環境を維持し辛い作業用グローブなどの内面をアイソレーター装置などに装着した状態で容易に除染することができる内面除染装置及びこれを用いた内面除染方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題の解決にあたり、本発明者らは、鋭意研究の結果、アイソレーター装置などに装着した作業用グローブなどの内部に圧縮空気などを注入し、作業用グローブを膨張させると同時に作業用グローブなどの内面に除染液を噴霧することにより、本発明の目的を達成できることを見出して本発明の完成に至った。
【0012】
即ち、本発明に係る内面除染装置は、請求項1の記載によれば、
外部環境に位置する作業者が無菌環境を維持した作業室(1)の内部で作業するために、当該作業室の壁面(2)に開口した作業用開口部(3)に設けられた接続ポート(10)から当該作業室の内部に向けて気密性を保持して取り付けられた作業用部材(11)の前記外部環境側に接する面(内面)(11b)を除染するための装置(20、30、40、50)であって、
前記接続ポートを前記外部環境側から封鎖して、当該接続ポートと前記作業用部材の内面とで囲まれた閉鎖空間(14)を形成する接続ポート閉鎖部材(21、31、41、51)と、
前記接続ポート閉鎖部材を介して、前記閉鎖空間の内部に除染液を供給する除染液供給手段(22、32、42、52)と、
前記閉鎖空間の内部に供給される除染液を当該閉鎖空間の内部で霧化して前記作業用部材の内面に噴霧する除染液噴霧手段(23、33、43、53)とを有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明は、請求項2の記載によれば、請求項1に記載の内面除染装置(20、40)であって、
前記除染液噴霧手段(23、43)は、圧縮空気を発生する圧縮空気発生装置(23a、43a)と、当該圧縮空気発生装置と前記閉鎖空間の内部とを前記接続ポート閉鎖部材(21、41)を介して連通する圧縮空気供給配管(23b、43b)とを具備すると共に、前記閉鎖空間の内部において当該圧縮空気供給配管の延端部が前記作業用部材の内面に向けて開口する空気吐出口(23c、43c)を形成し、
前記除染液供給手段(22、42)は、前記除染液を収容する除染液槽(22a、42a)と、当該除染液槽と前記閉鎖空間の内部とを前記接続ポート閉鎖部材を介して連通する除染液供給配管(22b、42b)とを具備すると共に、前記閉鎖空間の内部において当該除染液供給配管の延端部が前記空気吐出口の吐出方向と交差する方向に開口する除染液供給口(22c、42c)を形成し、
前記空気吐出口からの空気が、前記除染液供給口の上部に吐出されることにより、当該除染液供給口から供給される除染液が、前記空気吐出口から吐出される空気により吸い上げられ、前記作業用部材の内面に向けて霧状に噴射されることを特徴とする。
【0014】
また、本発明は、請求項3の記載によれば、請求項1に記載の内面除染装置(30)であって、
前記除染液供給手段(32)は、前記除染液を収容する除染液槽(32a)と、当該除染液槽と前記閉鎖空間の内部とを前記接続ポート閉鎖部材(31)を介して連通する除染液供給配管(32b)とを具備すると共に、前記閉鎖空間の内部において当該除染液供給配管の延端部が前記作業用部材の内面に向けて開口する除染液供給口(32c)を形成し、
前記除染液噴霧手段(33)は、前記除染液供給口に配設された噴射ノズル(33c)と、圧縮空気を発生する圧縮空気発生装置(33a)と、当該圧縮空気発生装置と前記除染液槽の内部とを連通する圧縮空気供給配管(33b)とを具備し、
前記圧縮空気発生装置から前記圧縮空気供給配管を介して供給される圧縮空気が、前記除染液槽の内部を加圧することにより、当該除染液槽の内部の除染液が、前記除染液供給配管を介して前記噴射ノズルに供給され、当該噴射ノズルから前記作業用部材の内面に向けて霧状に噴射されることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、請求項4の記載によれば、請求項1〜3のいずれか1つに記載の内面除染装置であって、
作業用部材内加圧設定手段(53a、53b)、作業用部材内圧力検知手段(54)、及び、制御手段を有して、
前記接続ポート閉鎖部材を介して前記閉鎖空間の内部に圧縮空気を供給し、前記作業用部材内加圧設定手段により当該閉鎖空間の内部の圧力を一定に維持し、前記作業用部材内圧力検知手段により継時的な圧力変化を検知することにより、
作業用部材のピンホールなどの不備を検査するための作業用部材用リーク検査装置の機能を併せ持つことを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、請求項5の記載によれば、請求項1〜4のいずれか1つに記載の内面除染装置であって、
前記作業用部材は、作業用グローブ又はハーフスーツであることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、請求項6の記載によれば、請求項1〜5のいずれか1つに記載の内面除染装置であって、
前記除染液は、エタノール又は2−プロパノールなどの消毒用アルコールであることを特徴とする。
【0018】
また、本発明に係る内面除染方法は、請求項7の記載によれば、
請求項1〜6のいずれか1つに記載の内面除染装置を用いて、前記作業用部材の内面に対して前記除染液の噴霧量を1μL/cm
2〜5μL/cm
2の範囲内とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
上記構成によれば、本発明に係る内面除染装置は、接続ポート閉鎖部材と除染液供給手段と除染液噴霧手段とを有している。接続ポート閉鎖部材は、無菌環境を維持した作業室の壁面に設けられた接続ポートを外部環境側から封鎖する。この接続ポートには、作業用部材が作業室の内部に向けて気密性を保持して取り付けられている。よって、接続ポートと作業用部材の内面とで囲まれた部分は、気密的に閉鎖された空間を形成する。この閉鎖空間における作業用部材の内面は、作業室の外部環境側において最も無菌環境を維持し辛い部分である。
【0020】
一方、除染液供給手段は、接続ポートと作業用部材の内面とで囲まれた閉鎖空間の内部に除染液を供給する。閉鎖空間の内部に供給された除染液は、除染液噴霧手段によって霧化され、作業用部材の内面に噴霧される。この霧化した除染液は、作業用部材の内面(作業室の外部環境側に接する面)を被覆して除染する。このことにより、最も無菌環境を維持し辛い作業用部材の内面が、接続ポートに装着した状態で容易に除染される。
【0021】
また、上記構成によれば、除染液噴霧手段は、圧縮空気発生装置と圧縮空気供給配管とを具備している。圧縮空気発生装置で発生した圧縮空気は、圧縮空気供給配管を介して閉鎖空間の内部に供給され、圧縮空気供給配管の延端部に開口する空気吐出口から作業用部材の内面に向けて吐出される。一方、除染液供給手段は、除染液槽と除染液供給配管とを具備している。除染液槽に収容されている除染液は、除染液供給配管を介して閉鎖空間の内部に供給され、除染液供給配管の延端部に開口する除染液供給口が空気吐出口に向けて開口している。
【0022】
この構成によれば、空気吐出口と除染液供給口とは互いに交差する方向に開口し、空気吐出口から吐出される高速の圧縮空気が除染液供給口の上部に吹き付けられる。その結果、ベンチュリ効果による負圧が発生して、除染液供給口から除染液が吸い上げられる。除染液供給口から吸い上げられた除染液は、高速で吐出される圧縮空気に乗って作業用部材の内面に向けて霧状に噴射される。このことにより、最も無菌環境を維持し辛い作業用部材の内面の各部位に除染液が噴霧され、接続ポートに装着した状態の作業用部材の内面が容易に除染される。
【0023】
また、上記構成によれば、除染液供給手段は、除染液槽と除染液供給配管とを具備している。除染液槽に収容されている除染液は、除染液供給配管を介して閉鎖空間の内部に供給され、除染液供給配管の延端部に開口する除染液供給口に供給される。一方、除染液噴霧手段は、除染液供給口に配設された噴射ノズルと圧縮空気発生装置と圧縮空気供給配管とを具備している。圧縮空気発生装置で発生した圧縮空気は、圧縮空気供給配管を介して除染液槽に供給され、除染液槽の内部を加圧する。
【0024】
この構成によれば、圧縮空気で加圧された除染液槽内の除染液が除染液供給配管を介して噴射ノズルに供給され、噴射ノズルから作業用部材の内面に向けて霧状に噴射される。このことにより、最も無菌環境を維持し辛い作業用部材の内面の各部位に除染液が噴霧され、接続ポートに装着した状態の作業用部材の内面が容易に除染される。
【0025】
また、上記構成によれば、本発明に係る内面除染装置は、上記各構成に加え、作業用部材内加圧設定手段、作業用部材内圧力検知手段、及び、制御手段を有して、作業用部材用リーク検査装置の機能を併せ持つようにしてもよい。このことにより、接続ポートに装着した状態の作業用部材のピンホールなどの不備を検査すると共に、作業用部材の内面が容易に除染される。
【0026】
また、上記構成によれば、本発明に係る内面除染方法は、上記構成の各内面除染装置を用いて、作業用部材の内面に対して除染液の噴霧量を1μL/cm
2〜5μL/cm
2の範囲内で噴霧するようにする。このことにより、最も無菌環境を維持し辛い作業用部材の内面の各部位に除染液が噴霧され、接続ポートに装着した状態の作業用部材の内面が容易に除染される。
【0027】
よって、上記各構成によれば、アイソレーター装置などの外部環境側において最も無菌環境を維持し辛い作業用グローブなどの内面をアイソレーター装置などに装着した状態で容易に除染することができる内面除染装置及びこれを用いた内面除染方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を詳細に説明する。ここで、
図1は、アイソレーター装置に作業用グローブを取り付けた状態を側面から見た断面図である。
図1においては、本発明に係る内面除染装置は、取り付けられていない。
【0030】
図1において、無菌環境(グレードB)を維持したクリーンルーム(図示しない)の内部に設置されたアイソレーター装置(図示しない)のチャンバー1の内部は、高度の無菌環境(グレードA)を維持している。このチャンバー1の正面の壁部(
図1は側面図)には、内部を視認できる透明なガラス窓2が設けられている。このガラス窓2は、外部環境(クリーンルーム内:グレードB)とチャンバー1の内部(グレードA)とを連通させる2つの円形の作業用開口部3を有する(
図1は側面図であり1つのみ示す)。
【0031】
これらの作業用開口部3には、それぞれ作業用グローブを気密的に装着するための接続ポート10と、この接続ポート10に装着された合成樹脂製の作業用グローブ11が取り付けられている。接続ポート10は、作業用開口部3に挿入してガラス窓2に固定された筒体からなり、接続ポート10の内周側部は、クリーンルーム内に位置する作業者が腕を挿入する挿入部を形成する。一方、接続ポート10のチャンバー1の内部側(図示左側)の外周側部には、筒体に装着する作業用グローブ11の基端部(上腕部)12が2本のオーリング13で気密的に固定されている。
図1においては、便宜的に作業用グローブ11を水平且つ拡張した状態で示している。
【0032】
接続ポート10に固定された作業用グローブ11の外表面11a(チャンバー1の内部側)は、アイソレーター装置のチャンバー1の内部を高度に除染する際に同時に除染され、グレードAに維持されている。一方、作業用グローブ11の内面11b(外部環境側)は、クリーンルームの内部を除染する際に同時に除染され、グレードBに維持されている。
【0033】
しかし、作業用グローブ11の内面11bは、作業者が頻繁に手を出し入れする部分であり、袋状に形成されていることから除染の効果が維持し辛い部分である。また、この部分は、作業者が頻繁に手を出し入れするために穴(ピンホール)や裂け目が発生し易い部分でもある。従って、この部分に穴(ピンホール)や裂け目が発生した場合には、アイソレーター装置のチャンバー1の高度な無菌環境(グレードA)が即座に汚染され、また、その汚染度が大きくなる。
【0034】
以下、本発明に係る内面除染装置を各実施形態により説明する。なお、本発明は、下記の各実施形態にのみ限定されるものではない。
【0035】
《第1実施形態》
図2は、本第1実施形態に係る内面除染装置をクリーンルームに配設されたアイソレーター装置の作業用グローブに取り付けた状態を側面から見た断面図である。なお、
図2においては、無菌環境(グレードB)を維持したクリーンルーム(図示しない)、高度の無菌環境(グレードA)を維持したアイソレーター装置(図示しない)のチャンバー1、チャンバー1のガラス窓2に開口した円形の作業用開口部3、作業用開口部3に取り付けられた接続ポート10、及び、接続ポート10に装着された合成樹脂製の作業用グローブ11については、上記
図1と同様である。
【0036】
図2において、本第1実施形態に係る内面除染装置20は、接続ポート閉鎖部材21と除染液供給手段22と除染液噴霧手段23とを有している。接続ポート閉鎖部材21は、作業用開口部3に取り付けられた接続ポート10の内周開口部を気密的に封鎖する蓋体であって、当該内周開口部を外部環境側から封鎖する蓋部21a、接続ポート10の内周側部に挿入される筒部21b、及び、接続ポート10の内周側部と筒部21bの外周側部とを気密的に密閉するパッキン21cとを具備している。この接続ポート閉鎖部材21が接続ポート10の内周開口部を気密的に封鎖することにより、作業用グローブ11の内面11bと接続ポート閉鎖部材21の筒部21bとで囲まれた部分が外部環境から気密的に閉鎖された閉鎖空間14を構成する。
【0037】
除染液供給手段22は、除染液槽22aと除染液供給配管22bとを具備している。除染液槽22aは、作業用グローブ11の内面11bを除染するための除染液を貯留している。なお、除染液は特に限定するものではないが、人体に影響が少なく作業用グローブ11の内面11bを損傷することがないものを採用することが好ましい。本第1実施形態においては、除染液としてエタノール又は2−プロパノールなどの消毒用アルコールを使用することが好ましい。また、除染液供給配管22bは、接続ポート10の蓋部21a及び筒部21bを貫通して、除染液槽22aと閉鎖空間14とを連通している。また、この除染液供給配管22bの閉鎖空間14側の延端部は、閉鎖空間14内に除染液供給口22cを開口する。除染液供給口22cの位置については後述する。
【0038】
除染液噴霧手段23は、圧縮空気発生装置23aと圧縮空気供給配管23bとを具備している。圧縮空気発生装置23aは、本第1実施形態が必要とする圧縮空気を供給できるものであれば特に限定するものではなく、例えば、コンプレッサーや送風ファン或いは圧縮空気ボンベ等であってもよい。本第1実施形態においては、圧縮空気発生装置23aとしてコンプレッサーを使用する。また、圧縮空気供給配管23bは、接続ポート10の蓋部21a及び筒部21bを貫通して、圧縮空気発生装置23aと閉鎖空間14とを連通している。また、この圧縮空気供給配管23bの閉鎖空間14側の延端部は、閉鎖空間14内に空気吐出口23cを開口する。この空気吐出口23cは、接続ポート10の筒部21bから延出する圧縮空気供給配管23bの先端部であって、筒部21b側から作業用グローブ11の先端の指部11cの内面11bに向かって開口している。
【0039】
一方、除染液供給配管22bの除染液供給口22cは、圧縮空気供給配管23bの空気吐出口23cと互いに交差する方向に開口している。
図2においては、空気吐出口23cが作業用グローブ11の先端に向かって水平方向左向きに開口している。一方、
図2においては、除染液供給口22cが空気吐出口23cに向かって垂直方向上向きに開口している。このような空気吐出口23cと除染液供給口22cとの位置関係は、ベンチュリ効果を構成する。
【0040】
具体的には、空気吐出口23cから吐出される高速の圧縮空気が除染液供給口22cの上部に吹き付けられる。その結果、この部分にベンチュリ効果による負圧が発生して、除染液供給口22cから除染液が吸い上げられる。この除染液供給口22cから吸い上げられた除染液は、高速で吐出される圧縮空気に乗って作業用グローブ11の内面11bを基端部(上腕部)12から先端の指部11cまでの全面に向けて霧状に噴射される(
図2の15)。このことにより、最も無菌環境を維持し辛い作業用グローブ11の内面11bの各部位に除染液が噴霧され、接続ポート10に装着した状態の作業用グローブ11の内面11bが容易に除染される。
【0041】
ここで、閉鎖空間14に噴射される除染液の量は、除染される作業用グローブ11の容量と内面11bの面積などにより異なる。また、空気吐出口23cから吐出される圧縮空気の吐出圧及び空気流量は、作業用グローブ11の容量と長さなどにより異なる。本第1実施形態においては、除染液としてエタノールを使用し、上腕部の内径210mm、腕の長さ800mmの作業用グローブ11の場合、吐出圧200〜400kPa、空気流量18〜38L/minの範囲内で、除染液の噴霧量を0.20〜0.95μL/cm
2の範囲内とすることにより、作業用グローブ11の基端部(上腕部)12から先端の指部11cまで良好な除染効果を確認した。
【0042】
ここで、本第1実施形態に係る内面除染装置20による除染操作について説明する。
図3は、本第1実施形態に係る内面除染装置20の操作を説明する工程図である(各部位の記号は
図2参照)。
図3(1)は、作業用グローブ11が装着された接続ポート10に内面除染装置20を取り付け、閉鎖空間14が構成された状態を示している。この状態において、閉鎖空間14の内圧は外部環境と同じであり、作業用グローブ11は垂れ下がった状態にある。この状態においては、作業用グローブ11の先端の指部11cの内面11bには部分的に接触する部分が生じることもある。この状態から除染液を噴霧するようにしてもよいが、本第1実施形態においては、作業用グローブ11をある程度膨張させた状態にしてから除染液を噴霧する。
【0043】
そこで、この
図3(1)の状態において、圧縮空気発生装置23aから圧縮空気供給配管23bを介して、閉鎖空間14の内部に圧縮空気を供給する。このとき、除染液供給配管22bの供給弁(図示せず)は閉鎖されており、閉鎖空間14の内部に除染液は供給されない。このことにより、閉鎖空間14の内圧が上昇し、
図3(2)に示すように作業用グローブ11が膨張する。この状態においては、作業用グローブ11は、図示左方向に立ち上がり先端の指部11cの内面11bには接触する部分がなくなっている。
【0044】
次に、この
図3(3)の状態において、閉鎖空間14の内部に圧縮空気発生装置23aから圧縮空気を供給した状態で、除染液供給配管22bの供給栓(図示せず)を開放する。このことにより、除染液槽22aから除染液供給配管22bを介して閉鎖空間14の内部に除染液が供給される。除染液の供給は、上述のベンチュリ効果によるものであって、供給された除染液は霧状となって作業用グローブ11の内面11bに噴霧される。
【0045】
閉鎖空間14の内部に圧縮空気と共に除染液が供給され、霧状となって噴霧されることにより、
図3(4)に示すように作業用グローブ11が更に膨張する。この状態においては、作業用グローブ11は、大きく膨張し図示左方向に水平に維持され作業用グローブ11の基端部(上腕部)12から先端の指部11cの内面11bまでの全面に亘り霧状の除染液が噴射される。この状態を所定時間継続することにより、作業用グローブ11の内面11bの除染に必要な除染液が均一に供給される。
【0046】
次に、除染液供給配管22bの供給栓(図示せず)を閉鎖し、圧縮空気発生装置23aからの圧縮空気の供給を停止する。その後、内面除染装置20を接続ポート10から取り外し、作業用グローブ11の内面11bの除染が完了する。
【0047】
以上のことから、本第1実施形態に係る内面除染装置20においては、アイソレーター装置などの外部環境側において最も無菌環境を維持し辛い作業用グローブなどの内面をアイソレーター装置などに装着した状態で容易に除染することができる。
【0048】
《第2実施形態》
本第2実施形態に係る内面除染装置は、上記第1実施形態と同様にクリーンルームに配設されたアイソレーター装置の作業用グローブに取り付けられている。
図4は、本第2実施形態に係る内面除染装置を作業用グローブに取り付けた状態を側面から見た断面図である。なお、
図4においては、無菌環境(グレードB)を維持したクリーンルーム(図示しない)、高度の無菌環境(グレードA)を維持したアイソレーター装置(図示しない)のチャンバー1、チャンバー1のガラス窓2に開口した円形の作業用開口部3、作業用開口部3に取り付けられた接続ポート10、及び、接続ポート10に装着された合成樹脂製の作業用グローブ11については、上記
図1と同様である。
【0049】
図4において、本第2実施形態に係る内面除染装置30は、接続ポート閉鎖部材31と除染液供給手段32と除染液噴霧手段33とを有している。接続ポート閉鎖部材31は、作業用開口部3に取り付けられた接続ポート10の内周開口部を気密的に封鎖する蓋体であって、当該内周開口部を外部環境側から封鎖する蓋部31a、接続ポート10の内周側部に挿入される筒部31b、及び、接続ポート10の内周側部と筒部31bの外周側部とを気密的に密閉するパッキン31cとを具備している。この接続ポート閉鎖部材31が接続ポート10の内周開口部を気密的に封鎖することにより、作業用グローブ11の内面11bと接続ポート閉鎖部材31の筒部31bとで囲まれた部分が外部環境から気密的に閉鎖された閉鎖空間14を構成する。
【0050】
除染液供給手段32は、除染液槽32aと除染液供給配管32bとを具備している。除染液槽32aは、作業用グローブ11の内面11bを除染するための除染液を貯留している。なお、本第2実施形態においては、上記第1実施形態と同様に除染液としてエタノール又は2−プロパノールなどの消毒用アルコールを使用することが好ましい。また、除染液供給配管32bは、接続ポート10の蓋部31a及び筒部31bを貫通して、除染液槽32aと閉鎖空間14とを連通している。また、この除染液供給配管32bの閉鎖空間14側の延端部は、閉鎖空間14内に除染液供給口32cを開口する。この除染液供給口32cについては後述する。
【0051】
除染液噴霧手段33は、圧縮空気発生装置33aと圧縮空気供給配管33bと噴射ノズル33cとを具備している。圧縮空気発生装置33aは、本第2実施形態が必要とする圧縮空気を供給できるものであれば特に限定するものではなく、本第2実施形態においては上記第1実施形態と同様にコンプレッサーを使用する。また、圧縮空気供給配管33bは、圧縮空気発生装置33aと除染液槽32aの内部の空気層とを連通している。また、噴射ノズル33cは、ごく小さな開口部を持つノズルであって、所定の流量及び圧力で供給された除染液を霧状に噴霧する。この噴射ノズル33cは、上述の除染液供給配管32bの除染液供給口32cに取り付けられて、筒部31b側から作業用グローブ11の先端の指部11cの内面11bに向かって配置されている。
【0052】
このような構成において、圧縮空気発生装置33aから圧縮空気供給配管33bを介して除染液槽32aに供給された圧縮空気は、除染液槽32a内を加圧する。その結果、除染液槽32a内の除染液が加圧された状態で、除染液供給配管32bを介して閉鎖空間14内の除染液供給口32cに供給される。この除染液供給口32cには、上述の噴射ノズル33cが取り付けられており、除染液が噴射ノズルから作業用グローブ11の内面11bを基端部(上腕部)12から先端の指部11cまでの全面に向けて霧状に噴射される(
図4の15)。このことにより、最も無菌環境を維持し辛い作業用グローブ11の内面11bの各部位に除染液が噴霧され、接続ポート10に装着した状態の作業用グローブ11の内面11bが容易に除染される。
【0053】
ここで、閉鎖空間14に噴射される除染液の量は、除染される作業用グローブ11の容量と内面11bの面積などにより異なる。また、噴射ノズル33cに供給される除染液の流量及び圧力は、特に限定するものではないが、上記第1実施形態と同様に除染液をエタノールとした場合には、除染液の噴霧量を0.20〜0.95μL/cm
2の範囲内とすることが好ましい。なお、本第1実施形態に係る内面除染装置30による除染操作については、基本的に上記第1実施形態と同様であり、ここでは説明を省略する。但し、本第2実施形態においては、作業用グローブ11が垂れ下がった状態(
図3(1)に対応する状態)にあるときから除染液を噴霧する。
【0054】
以上のことから、本第2実施形態に係る内面除染装置30においても、アイソレーター装置などの外部環境側において最も無菌環境を維持し辛い作業用グローブなどの内面をアイソレーター装置などに装着した状態で容易に除染することができる。
【0055】
《第3実施形態》
本第3実施形態に係る内面除染装置は、上記第1実施形態と同様にクリーンルームに配設されたアイソレーター装置の作業用グローブに取り付けられている。
図5は、本第3実施形態に係る内面除染装置を作業用グローブに取り付けた状態を側面から見た断面図である。なお、
図5においては、無菌環境(グレードB)を維持したクリーンルーム(図示しない)、高度の無菌環境(グレードA)を維持したアイソレーター装置(図示しない)のチャンバー1、チャンバー1のガラス窓2に開口した円形の作業用開口部3、作業用開口部3に取り付けられた接続ポート10、及び、接続ポート10に装着された合成樹脂製の作業用グローブ11については、上記
図1と同様である。
【0056】
図5において、本第3実施形態に係る内面除染装置40は、接続ポート閉鎖部材41と除染液供給手段42と除染液噴霧手段43とを有しているが、除染液供給手段42と除染液噴霧手段43とが接続ポート閉鎖部材41に組み込まれた一体型の装置である。接続ポート閉鎖部材41は、作業用開口部3に取り付けられた接続ポート10の内周開口部を気密的に封鎖する蓋体であって、当該内周開口部を外部環境側から封鎖する蓋部41a、接続ポート10の内周側部に挿入される筒部41b、及び、接続ポート10の内周側部と筒部41bの外周側部とを気密的に密閉するパッキン41cとを具備している。この接続ポート閉鎖部材41が接続ポート10の内周開口部を気密的に封鎖することにより、作業用グローブ11の内面11bと接続ポート閉鎖部材41の筒部41bとで囲まれた部分が外部環境から気密的に閉鎖された閉鎖空間14を構成する。
【0057】
除染液供給手段42は、除染液槽42aと除染液供給配管42bとを具備して、これらが接続ポート閉鎖部材41の蓋部41aの内部に収納されている。除染液槽42aは、作業用グローブ11の内面11bを除染するための除染液を貯留している。なお、本第3実施形態においては、上記第1実施形態と同様に除染液としてエタノール又は2−プロパノールなどの消毒用アルコールを使用することが好ましい。また、除染液供給配管42bは、接続ポート10の蓋部41aの内部から筒部41bを貫通して、除染液槽42aと閉鎖空間14とを連通している。また、この除染液供給配管42bの閉鎖空間14側の延端部は、閉鎖空間14内に除染液供給口42cを開口する。この除染液供給口42cの位置と構造は、上記第1実施形態と同様である。
【0058】
除染液噴霧手段43は、圧縮空気発生装置43aと圧縮空気供給配管43bとを具備して、これらが接続ポート閉鎖部材41の蓋部41aの内部に収納されている。圧縮空気発生装置43aは、本第3実施形態が必要とする圧縮空気を供給できるものであれば特に限定するものではないが、内面除染装置40が一体型の装置であることから、本第3実施形態においては小型の送風ファンを使用する。また、圧縮空気供給配管43bは、接続ポート10の蓋部41aの内部から筒部41bを貫通して、圧縮空気発生装置43aと閉鎖空間14とを連通している。また、この圧縮空気供給配管43bの閉鎖空間14側の延端部は、閉鎖空間14内に空気吐出口43cを開口する。この空気吐出口43cの位置と構造は、上記第1実施形態と同様であり、上記除染液供給口42cとの組み合わせによりベンチュリ効果を構成する。
【0059】
具体的には、空気吐出口43cから吐出される高速の圧縮空気が除染液供給口42cの上部に吹き付けられる。その結果、この部分にベンチュリ効果による負圧が発生して、除染液供給口42cから除染液が吸い上げられる。この除染液供給口42cから吸い上げられた除染液は、高速で吐出される圧縮空気に乗って作業用グローブ11の内面11bを基端部(上腕部)12から先端の指部11cまでの全面に向けて霧状に噴射される(
図5の15)。このことにより、最も無菌環境を維持し辛い作業用グローブ11の内面11bの各部位に除染液が噴霧され、接続ポート10に装着した状態の作業用グローブ11の内面11bが容易に除染される。
【0060】
ここで、閉鎖空間14に噴射される除染液の量は、除染される作業用グローブ11の容量と内面11bの面積などにより異なる。また、空気吐出口23cから吐出される圧縮空気の吐出圧及び空気流量は、作業用グローブ11の容量と長さなどにより異なる。本第3実施形態においても、上記第1実施形態と同様に除染液をエタノールとした場合には、除染液の噴霧量を0.20〜0.95μL/cm
2の範囲内とすることが好ましい。なお、本第3実施形態に係る内面除染装置30による除染操作については、基本的に上記第1実施形態と同様であり、ここでは説明を省略する。
【0061】
以上のことから、本第3実施形態に係る内面除染装置40においても、アイソレーター装置などの外部環境側において最も無菌環境を維持し辛い作業用グローブなどの内面をアイソレーター装置などに装着した状態で容易に除染することができる。
【0062】
《第4実施形態》
本第4実施形態に係る内面除染装置は、上記第1実施形態と同様にクリーンルームに配設されたアイソレーター装置の作業用グローブに取り付けられている。
図6は、本第4実施形態に係る内面除染装置を作業用グローブに取り付けた状態を側面から見た断面図である。なお、
図6においては、無菌環境(グレードB)を維持したクリーンルーム(図示しない)、高度の無菌環境(グレードA)を維持したアイソレーター装置(図示しない)のチャンバー1、チャンバー1のガラス窓2に開口した円形の作業用開口部3、作業用開口部3に取り付けられた接続ポート10、及び、接続ポート10に装着された合成樹脂製の作業用グローブ11については、上記
図1と同様である。
【0063】
図6において、本第4実施形態に係る内面除染装置50は、上記第1実施形態と同様の接続ポート閉鎖部材51と除染液供給手段52と除染液噴霧手段53とを有すると共に、データ発信機能付き内部圧力センサー54(以下「圧力センサー54」という)と制御装置(図示しない)とを有して作業用グローブのリーク検査の機能をも併せ持つ。
【0064】
接続ポート閉鎖部材51は、作業用開口部3に取り付けられた接続ポート10の内周開口部を気密的に封鎖する蓋体であって、当該内周開口部を外部環境側から封鎖する蓋部51a、接続ポート10の内周側部に挿入される筒部51b、及び、接続ポート10の内周側部と筒部51bの外周側部とを気密的に密閉するパッキン51cとを具備している。この接続ポート閉鎖部材51が接続ポート10の内周開口部を気密的に封鎖することにより、作業用グローブ11の内面11bと接続ポート閉鎖部材51の筒部51bとで囲まれた部分が外部環境から気密的に閉鎖された閉鎖空間14を構成する。
【0065】
除染液供給手段52は、除染液槽52aと除染液供給配管52bとを具備している。除染液槽52aは、作業用グローブ11の内面11bを除染するための除染液を貯留している。なお、本第4実施形態においては、上記第1実施形態と同様に除染液としてエタノール又は2−プロパノールなどの消毒用アルコールを使用することが好ましい。また、除染液供給配管52bは、接続ポート10の蓋部51a及び筒部51bを貫通して、除染液槽52aと閉鎖空間14とを連通している。また、この除染液供給配管52bの閉鎖空間14側の延端部は、閉鎖空間14内に除染液供給口52cを開口する。この除染液供給口52cの位置と構造は、上記第1実施形態と同様である。
【0066】
除染液噴霧手段53は、圧縮空気発生装置53aと圧縮空気供給配管53bとを具備している。圧縮空気発生装置53aは、本第4実施形態が必要とする圧縮空気を供給できるものであれば特に限定するものではなく、本第4実施形態においては上記第1実施形態と同様にコンプレッサーを使用する。また、圧縮空気供給配管53bは、接続ポート10の蓋部41a及び筒部41bを貫通して、圧縮空気発生装置53aと閉鎖空間14とを連通している。また、この圧縮空気供給配管53bの閉鎖空間14側の延端部は、閉鎖空間14内に空気吐出口53cを開口する。この空気吐出口53cの位置と構造は、上記第1実施形態と同様であり、上記除染液供給口52cとの組み合わせによりベンチュリ効果を構成する。
【0067】
具体的には、空気吐出口53cから吐出される高速の圧縮空気が除染液供給口52cの上部に吹き付けられる。その結果、この部分にベンチュリ効果による負圧が発生して、除染液供給口52cから除染液が吸い上げられる。この除染液供給口52cから吸い上げられた除染液は、高速で吐出される圧縮空気に乗って作業用グローブ11の内面11bを基端部(上腕部)12から先端の指部11cまでの全面に向けて霧状に噴射される(
図6の15)。このことにより、最も無菌環境を維持し辛い作業用グローブ11の内面11bの各部位に除染液が噴霧され、接続ポート10に装着した状態の作業用グローブ11の内面11bが容易に除染される。
【0068】
ここで、閉鎖空間14に噴射される除染液の量は、除染される作業用グローブ11の容量と内面11bの面積などにより異なる。また、空気吐出口23cから吐出される圧縮空気の吐出圧及び空気流量は、作業用グローブ11の容量と長さなどにより異なる。本第4実施形態においても、上記第1実施形態と同様に除染液をエタノールとした場合には、除染液の噴霧量を0.20〜0.95μL/cm
2の範囲内とすることが好ましい。
【0069】
ここで、本第4実施形態に係る内面除染装置50の特徴である作業用グローブのリーク検査の機能について説明する。作業用グローブやハーフスーツ自体或いはその装着部分の気密性を管理するためのリーク検査は、上記特許文献1において説明したように一般的に行われている。本第4実施形態の内面除染装置50においては、リーク検査の機能を接続ポート閉鎖部材51、圧力センサー54、制御装置(図示しない)、及び、除染液噴霧手段53が有する圧縮空気発生装置53aと圧縮空気供給配管53bにより操作することができる。
【0070】
図6において、圧力センサー54は、接続ポート閉鎖部材51の蓋部51a及び筒部51bの内部に収納されている。閉鎖空間14の内部側には、その圧力変化を測定する圧力センサー部54aを有し、外部環境側には、測定した圧力変化を制御装置に発信するアンテナ部54bを有している。
【0071】
このような構成において、接続ポート閉鎖部材51で密閉された閉鎖空間14の内部に圧縮空気発生装置53aから圧縮空気供給配管53bを介して圧縮空気を供給する。このとき、除染液の供給は停止している。閉鎖空間14の内部が所定の圧力(例えば、3kPa)になった時点で、圧縮空気の供給を停止する。その後、所定の時間、閉鎖空間14の内部の圧力の変化を圧力センサー部54aで検知し、そのデータをアンテナ部54bから制御装置(図示しない)に送信する。このとき、所定時間内の圧力低下が設定値よりも大きい場合には、作業用グローブ自体或いはその装着部分の気密性が破綻していることが分かる。なお、本第4実施形態に係る内面除染装置50においては、リーク検査と除染操作は別操作として行うことが好ましい。
【0072】
ここで、本第4実施形態に係る内面除染装置50による除染操作について説明する。
図7は、本第4実施形態に係る内面除染装置50の操作を説明する工程図である(各部位の記号は
図6参照)。
図7(1)は、作業用グローブ11が装着された接続ポート10に内面除染装置50を取り付け、閉鎖空間14のリーク検査(上述の操作)が終了した状態を示している。リーク検査においてリークが発見されなかった場合には、閉鎖空間14の内圧はリーク検査の圧力或いは若干の低下に留まっており、作業用グローブ11は大きく膨張した状態にある。
【0073】
次に、この
図7(1)の状態において、閉鎖空間14の内部の空気を一部抜いて内圧を低下させる。これは、続く除染液の噴霧がスムーズに行われるための操作であるが、圧縮空気の吐出圧が大きい場合には必要とされない。閉鎖空間14の内部の空気を一部抜いた場合には、閉鎖空間14の内圧が低下して、
図7(2)に示すように作業用グローブ11が若干萎む。しかし、この状態においても、作業用グローブ11は、図示左方向に立ち上がり先端の指部11cの内面11bには接触する部分は生じていない。
【0074】
次に、この
図7(3)の状態において、閉鎖空間14の内部に圧縮空気発生装置53aから圧縮空気を供給しながら、除染液供給配管52bの供給栓(図示せず)を開放する。このことにより、除染液槽52aから除染液供給配管52bを介して閉鎖空間14の内部に除染液が供給される。除染液の供給は、上述のベンチュリ効果によるものであって、供給された除染液は霧状となって作業用グローブ11の内面11bに噴霧される。
【0075】
閉鎖空間14の内部に圧縮空気と共に除染液が供給され、霧状となって噴霧されることにより、
図7(4)に示すように作業用グローブ11が再度膨張する。この状態においては、作業用グローブ11は、大きく膨張し図示左方向に水平に維持され作業用グローブ11の基端部(上腕部)12から先端の指部11cの内面11bまでの全面に亘り霧状の除染液が噴射される。この状態を所定時間継続することにより、作業用グローブ11の内面11bの除染に必要な除染液が均一に供給される。
【0076】
次に、除染液供給配管52bの供給栓(図示せず)を閉鎖し、圧縮空気発生装置53aからの圧縮空気の供給を停止する。その後、内面除染装置50を接続ポート10から取り外し、作業用グローブ11の内面11bの除染が完了する。
【0077】
以上のことから、本第4実施形態に係る内面除染装置50においては、アイソレーター装置などの外部環境側において最も無菌環境を維持し辛い作業用グローブなどの内面をアイソレーター装置などに装着した状態で容易に除染することができる。
【0078】
なお、本発明の実施にあたり、上記各実施形態に限らず、次のような種々の変形例が挙げられる。
(1)上記各実施形態においては、接続ポートに装着した作業用グローブの内面を装着した状態で除染するものであるが、これに限定するものではなく、接続ポートに装着したハーフスーツの内面を装着した状態で除染するようにしてもよい。
(2)上記各実施形態においては、アイソレーター装置の接続ポートに装着した作業用グローブの内面を装着した状態で除染するものであるが、これに限定するものではなく、RABS(アクセス制限バリアシステム)の壁面の接続ポートに装着した作業用グローブやハーフスーツの内面を装着した状態で除染するようにしてもよい。
(3)上記各実施形態においては、除染液としてエタノールを使用し、その適正噴霧量についても説明したが、これに限定するものではなく、2−プロパノールその他の除染液を使用し、当該除染液に適する量を噴霧するようにしてもよい。
(4)上記第3実施形態に係る一体型の内面除染装置は、噴霧機構として第1実施形態と同じベンチュリ効果を採用するものであるが、これに限定するものではなく、第2実施形態と同じ噴射ノズルを採用するようにしてもよい。
(5)上記第4実施形態に係るリーク検査機能を有する内面除染装置は、噴霧機構として第1実施形態と同じベンチュリ効果を採用するものであるが、これに限定するものではなく、第2実施形態と同じ噴射ノズルを採用するようにしてもよい。
(6)上記第4実施形態に係るリーク検査機能を有する内面除染装置は、第1実施形態と同じく除染液供給手段と除染液噴射手段を接続ポート閉鎖部材の外部に有するものであるが、これに限定するものではなく、第3実施形態と同じ一体型としたリーク検査機能を有する内面除染装置としてもよい。