(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6490547
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】乗物用シート
(51)【国際特許分類】
H02G 3/30 20060101AFI20190318BHJP
B60R 16/02 20060101ALI20190318BHJP
B60N 2/68 20060101ALN20190318BHJP
【FI】
H02G3/30
B60R16/02 610J
!B60N2/68
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-175484(P2015-175484)
(22)【出願日】2015年9月7日
(65)【公開番号】特開2017-55472(P2017-55472A)
(43)【公開日】2017年3月16日
【審査請求日】2018年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】308011351
【氏名又は名称】大和化成工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森 猛
(72)【発明者】
【氏名】清水 浄司
(72)【発明者】
【氏名】平川 勝也
【審査官】
久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】
特開2011−060538(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0158983(US,A1)
【文献】
特開2013−249036(JP,A)
【文献】
特開2013−107541(JP,A)
【文献】
特開2010−215127(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/30
B60R 16/02
B60N 2/68
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物用シートであって、
クッションフレームの側部を構成する前後方向に延びるフレーム部材と、電装品を支持して前記フレーム部材に対して取付けられるブラケットと、を備えており、
前記フレーム部材には、衝突時の荷重によって折れ曲がる弱体化部が設けられており、
前記弱体化部より前部又は後部のいずれか一方の領域において、前記フレーム部材が前記弱体化部で折れ曲がったときに前記フレーム部材から前記ブラケットが離脱しないように、前記フレーム部材に対して前記ブラケットが固定されており、
前記弱体化部より前部又は後部のいずれか他方の領域において、前記フレーム部材が前記弱体化部で折れ曲がったときに前記フレーム部材から前記ブラケットが離脱可能に、前記フレーム部材に対して前記ブラケットが取付けられている乗物用シート。
【請求項2】
請求項1において、
前記他方の領域において、前記ブラケットから前記フレーム部材に向かって突出する挿入部が前記フレーム部材に形成された第1貫通孔に対して緩嵌合されることにより、前記フレーム部材に対して前記ブラケットが取付けられており、
前記挿入部、又は、前記第1貫通孔の内周面、には、前記フレーム部材が前記弱体化部で折れ曲がったときに前記挿入部が前記第1貫通孔から離脱し易いように面取りが施されている乗物用シート。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記一方の領域において、前記ブラケットから前記フレーム部材に向かって突出する長軸が前後方向に延びる楕円柱状の固定部が前記フレーム部材に形成された第2貫通孔に対して嵌合されることにより、前記フレーム部材に対して前記ブラケットが固定されている乗物用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗物用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
電装品を備えた乗物用シートが知られている。このタイプの乗物用シートでは、クッションフレームの側部を構成する前後方向に延びるフレーム部材に対して電装品を固定するために、電装品をブラケットに支持させたのち、このブラケットをフレーム部材に対して取付けることがある。特許文献1に開示されたブラケットは、細長い板状部の長手方向両端部に対して厚み方向一方側へ向けて延びる突起部が設けられた構造であり、他の部品に形成された貫通孔に対して上記突起部を挿入することにより、上記突起部の先端部に形成された返しが他の部品に対して係止されて、ブラケットが固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−59958号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フレーム部材の前後方向の2点に貫通孔を設けて、特許文献1に開示されたブラケットの突起部を上記貫通孔に対して挿入することにより、フレーム部材に対してブラケットを固定する、という構造も考えられる。この構造では、フレーム部材に対してブラケットをしっかり取付けることができるが、乗物の衝突等によって過大な荷重がフレーム部材に印加され、ブラケットの取付け位置である前後方向の2点間でフレーム部材が折れ曲がった場合、ブラケットが破損するおそれがあった。係る現象を回避するためには、フレーム部材が衝突時に折れ曲がることがないように高強度のものにするか、フレーム部材のブラケットの取付け位置以外の部位に弱体化部を設けてブラケットの取付け位置ではフレーム部材の折れ曲がりが生じないようにする必要があった。前者においては、フレーム部材の大型化や厚肉化等により重量増を招き、後者においては、設計の自由度が損なわれるという問題があった。
【0005】
このような問題に鑑み、本発明の課題は、乗物の衝突等によって過大な荷重がフレーム部材に印加され、ブラケットの取付け位置である前後方向の2点間でフレーム部材が折れ曲がった場合であっても、ブラケットが破損することを抑制できる乗物用シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1発明は、乗物用シートであって、クッションフレームの側部を構成する前後方向に延びるフレーム部材と、電装品を支持して前記フレーム部材に対して取付けられるブラケットと、を備えており、前記フレーム部材には、衝突時の荷重によって折れ曲がる弱体化部が設けられており、前記弱体化部より前部又は後部のいずれか一方の領域において、前記フレーム部材が前記弱体化部で折れ曲がったときに前記フレーム部材から前記ブラケットが離脱しないように、前記フレーム部材に対して前記ブラケットが固定されており、前記弱体化部より前部又は後部のいずれか他方の領域において、前記フレーム部材が前記弱体化部で折れ曲がったときに前記フレーム部材から前記ブラケットが離脱可能に、前記フレーム部材に対して前記ブラケットが取付けられていることを特徴とする。
【0007】
第1発明によれば、ブラケットが弱体化部より前部又は後部のいずれか一方の領域においてフレーム部材に対して固定されているため、常にフレーム部材に対するブラケットの面内方向への移動及び剥離方向への移動とも抑制できる。また、ブラケットが弱体部より前部又は後部のいずれか他方の領域においてフレーム部材の折れ曲がり時に離脱可能に取付けられているため、通常時はフレーム部材に対するブラケットの面内方向への移動を抑制できる。両者が相俟って、通常時には、ブラケットをフレーム部材に対しガタ無く取付けることができる。一方、乗物の衝突等により過大な荷重がフレーム部材に印加され、フレーム部材が弱体化部で折れ曲がった場合には、弱体化部より前部又は後部のいずれか一方の領域では、ブラケットがフレーム部材に対して固定された状態に保持されるが、前部又は後部のいずれか他方の領域では、ブラケットが破損する前にブラケットがフレーム部材から離脱することになる。このため、フレーム部材が折れ曲がった場合には、ブラケットの破損を抑制することができる。
【0008】
本発明の第2発明は、第1発明において、前記他方の領域において、前記ブラケットから前記フレーム部材に向かって突出する挿入部が前記フレーム部材に形成された第1貫通孔に対して緩嵌合されることにより、前記フレーム部材に対して前記ブラケットが取付けられており、前記挿入部、又は、前記第1貫通孔の内周面、には、前記フレーム部材が前記弱体化部で折れ曲がったときに前記挿入部が前記第1貫通孔から離脱し易いように面取りが施されていることを特徴とする。
【0009】
第2発明によれば、挿入部、又は、第1貫通孔の内周面、に対して面取りを施すという簡潔な構造によって、フレーム部材が弱体化部で折れ曲がった際に挿入部が第1貫通孔の内周面と過剰な干渉をせずに第1貫通孔から離脱し易くなり、フレーム部材が折れ曲がった場合のブラケットの破損を抑制することができる。
【0010】
本発明の第3発明は、第1発明又は第2発明において、前記一方の領域において、前記ブラケットから前記フレーム部材に向かって突出する長軸が前後方向に延びる楕円柱状の固定部が前記フレーム部材に形成された第2貫通孔に対して嵌合されることにより、前記フレーム部材に対して前記ブラケットが固定されていることを特徴とする。
【0011】
第3発明によれば、固定部の外周面と第2貫通孔の内周面との当接により、固定部を中心とした前後方向回転の荷重を効率的に受け止めることができる。これによって、ブラケットに対して回転方向の力が印加された場合であっても、一方の領域における固定は維持され、ブラケットがフレーム部材から離脱することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の一実施形態である自動車用シートの斜視図である。
【
図2】上記実施形態に係るプロテクタブラケットと、左側サイドフレームと、を分離した分解斜視図である。
【
図3】上記実施形態に係るプロテクタブラケットの斜視図である。
【
図4】上記実施形態に係るプロテクタブラケットと左側サイドフレームとの取付け構造を示す図である。
【
図6】乗物の衝突時に過大な荷重が印加されて左側サイドフレームが折れ曲がった状態を、
図5に対応させて示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1〜
図6は、本発明の一実施形態を示す。本実施形態は、自動車用シートのシートクッションに本発明を適用した例を示す。各図中、矢印により自動車用シートを自動車に取付けたときの自動車の各方向を示している。以下の説明において、方向に関する記述は、この方向を基準として行うものとする。
【0014】
図1に示すように、自動車用シート1は、シートバック2と、シートクッション10と、を備えている。
【0015】
図1に示すように、シートクッション10は、その骨格をなす金属製のクッションフレーム20の上に、クッション材であるクッションパッドCPを載置して、その上から表皮材であるクッションカバー(図示しない)で覆った構造をしている。
【0016】
図1に示すように、クッションフレーム20は、枠体部30と、スライドレール40と、リフタ機構50と、から構成されている。
【0017】
図1に示すように、枠体部30は、上面視で略四角枠状に構成された構造体であり、左右2つのサイドフレーム31(右側のサイドフレームは図示しない)と、左右のサイドフレーム31の前端部の間に架け渡されて取付けられるフロントパイプ33と、左右のサイドフレーム31の後端部の間に架け渡されて取付けられるリヤパイプ34と、を備えている。また、枠体部30は、サイドフレーム31のフロントパイプ33よりも若干後方の位置に一端部が取付けられたパネルアーム321(右側のパネルアームは図示しない)と、左右のパネルアーム321の他端部側を連結するフロントパネル322と、も備えている。パネルアーム321の一端部は、サイドフレーム31に対して上下方向に回動可能に枢支されている。これにより、フロントパネル322が、サイドフレーム31に対して傾き角度の調節が行える状態になっている。フロントパイプ33及びリヤパイプ34は、サイドフレーム31に対して回転自在な状態で取付けられている。フロントパイプ33及びリヤパイプ34の左右両端部には、リフタ機構50の後述するリフタリンク51の上端部が、フロントパイプ33及びリヤパイプ34に対して相対回転不可能な状態で取付けられている。また、サイドフレーム31の後端部上方は、シートバック2の下端部に、リクライナ(図示しない)を介して連結されている。これにより、シートバック2が、シートクッション10に対して傾き角度の調節が行える状態になっている。
【0018】
図2及び
図4に示すように、左側サイドフレーム31Lの前後方向中央部には、後述するプロテクタブラケット80の挿入部82を挿通可能な貫通孔である第1貫通孔311と、固定部83を挿通可能な貫通孔である第2貫通孔312と、が貫通形成されている。第1貫通孔311は、長軸が前後方向に延びる楕円状の長孔であり、第2貫通孔312は、長軸が第1貫通孔311の長軸より前後方向に長く延びている楕円状の長孔である。また、
図4〜
図6に示すように、左側サイドフレーム31Lは、乗物の衝突時に過大な荷重が印加されると、その前後方向中央部近傍で上下方向に延びる線状部分が、右側に凸となるように折れ曲がる。すなわち、上記した前後方向中央部近傍で上下方向に延びる線状部分が、弱体化部313とされている。弱体化部313は、第1貫通孔311と第2貫通孔312との間を通っている。左側サイドフレーム31Lが、特許請求の範囲の「フレーム部材」に相当する。
【0019】
図1に示すように、スライドレール40は、フロアFに固定された前後方向に延びるロアレール41と、ロアレール41に対して摺動可能に組み付けられたアッパレール42と、を備えている。アッパレール42の上面部の前後2箇所には、ブラケット43(後側のブラケットは図示しない)が取付けられている。ブラケット43には、リフタ機構50の後述するリフタリンク51のフロントリンク511の下端部が上下方向に回転自在な状態で枢支されている。また、後側のブラケットには、リフタ機構50のリフタリンク51のリヤリンク(図示しない)の下端部が上下方向に回転自在な状態で枢支されている。即ち、枠体部30のサイドフレーム31は、リフタリンク51を介してスライドレール40と連結している。
【0020】
図1に示すように、リフタ機構50は、主として、リフタリンク51と、枠体部30のフロントパイプ33及びリヤパイプ34と、ブレーキ機構(図示しない)と、から構成されている。リフタリンク51は、前側左右2つのフロントリンク511(右側のフロントリンクは図示しない)と、後側左右2つのリヤリンク(図示しない)と、を備えている。上記したように、フロントリンク511は、その上端部が、フロントパイプ33に対して相対回転不可能な状態で連結されており、その下端部が、ブラケット43に上下方向に回転自在な状態で枢支されている。そして、リヤリンクは、その上端部が、リヤパイプ34に対して相対回転不可能な状態で連結されており、その下端部が、後側のブラケットに上下方向に回転自在な状態で枢支されている。リヤパイプ34における左側サイドフレーム31Lの右面部の近傍には、セクタギヤ52がリヤパイプ34に対して相対回転不可能な状態で取付けられている。このセクタギヤ52は、左側サイドフレーム31Lに取付けられたブレーキ機構のピニオンギヤ(図示しない)と歯合している。ブレーキ機構のピニオンギヤが回転すると、セクタギヤ52が回転して、リヤパイプ34が回転する。リヤパイプ34が回転すると、リヤリンクがリヤパイプ34を中心に上下方向に回転しようとするため、フロントリンク511がリヤリンクと同期して前後に揺動する。これにより、枠体部30のフロアFに対する高さ位置の調節が行える状態になっている。
【0021】
図1及び
図2に示すように、左側サイドフレーム31Lの左側には、スイッチ部材60が配設されている。スイッチ部材60は、着座者が操作可能なボタンやレバー等からなる操作部(図示しない)を備えており、操作部が操作されたことを検知すると、ワイヤハーネス70を介して信号を送ることができるように構成されている。
【0022】
図1及び
図2に示すように、ワイヤハーネス70は、複数の電線を束ねて一体化したケーブル材であり、複数本(本実施形態では、第1ハーネス71、第2ハーネス72、第3ハーネス73、第4ハーネス74、第5ハーネス75の計5本)に分岐して配索されている。第1ハーネス71は、左側サイドフレーム31Lの右側から下側を通って左側に取り回されており、その先端部に設けられたコネクタ71Aがスイッチ部材60の後端部に形成された連結孔(図示しない)に対して連結されている。第2ハーネス72〜第5ハーネス75は、それぞれ、パネルアーム321、スライドレール40、リクライナ、リフタ機構50等を動作させる駆動モータ(図示しない)の電子制御ユニット(図示しない)に対して連結されており、それらに対して電源を供給したり、第1ハーネス71から送られてきたスイッチ部材60の信号を伝えたりすることができる。ワイヤハーネス70が、第1〜第5ハーネス71〜75に分岐される分岐部76は、プロテクタブラケット80により覆われている。
【0023】
図1〜
図3に示すように、プロテクタブラケット80は、下方へ開口する略椀状の本体部81に、本体部81の下方を塞ぐ蓋部85が取付けられた箱形構造をしている。本体部81には、その左壁部81Lの上下方向中央部後側から左側へ向けて突出する水平な略板状の突出部811と、その前壁部81Fの左側の下端部を略逆U字状に切り欠いた形状である前方切り欠き部812と、その右壁部81Rの後側の下端部を略逆U字状に切り欠いた形状である右方切り欠き部813と、その後壁部81Bの下端部を略逆U字状に切り欠いた形状である後方切り欠き部814と、が形成されている。また、本体部81には、その前壁部81Fにおいて前方切り欠き部812の左上端近傍から前方に向かって延びる前方規制部815と、その右壁部81Rにおいて右方切り欠き部813の上端近傍から右方に向かって延びる右方規制部816と、も形成されている。蓋部85は、水平な板状部851の左後端部から、左右方向に対して垂直な面で切った断面が上方へ開口する略U字状となる受け口部852が左上方へ延びている構造である。本体部81に対して蓋部85を取付けると、突出部811の左端部に形成された切り欠き部811Aと受け口部852との間に左方開口部861が形成され、前方切り欠き部812と板状部851の前端部との間に前方開口部862が形成され、右方切り欠き部813と板状部851の右端部との間に右方開口部863が形成され、後方切り欠き部814と板状部851の後端部との間に後方開口部864が形成される。プロテクタブラケット80が、特許請求の範囲の「ブラケット」に相当する。
【0024】
図3〜
図5に示すように、プロテクタブラケット80の左壁部81Lには、左右方向(シート幅方向)に延びる突起状の挿入部82、固定部83、が設けられている。挿入部82は、左壁部81Lの前上端部に設けられており、左方に延びる丸テーブル状の台座部822の左面に挿入部本体821が設けられた構造となっている。挿入部本体821は、前後方向に若干長尺な直方体の左端部(先端部)前側が面取りされた構造である。すなわち、挿入部本体821の前壁部821Aは、右前方から左後方へ向けて傾斜して延びているが、後壁部821Bは、左右方向に延びている。台座部822は、その前後上下の寸法が左側サイドフレーム31Lの第1貫通孔311の前後上下の寸法より大きいが、挿入部本体821は、その前後上下の寸法が第1貫通孔311の前後上下の寸法より小さく、第1貫通孔311に対して緩嵌合可能となっている。固定部83は、左壁部81Lの突出部811より若干上側部分に設けられており、長軸が前後方向に延びる楕円柱状である固定部本体831の上下の壁部に、係止爪部832が設けられた構造である。固定部本体831は、その右側部の前後上下の寸法が左側サイドフレーム31Lの第2貫通孔312の前後上下の寸法よりわずかに小さく、第2貫通孔312に対して嵌合可能となっている。
【0025】
図1〜
図3に基づいて、プロテクタブラケット80をワイヤハーネス70に対して組付ける手順を示す。まず、ワイヤハーネス70の分岐部76に対して、プロテクタブラケット80の本体部81を上方から被せる。このとき、第1ハーネス71をプロテクタブラケット80の突出部811の切り欠き部811A内にセットし、第2ハーネス72を前方切り欠き部812内の前方規制部815の左側にセットし、第3ハーネス73を前方切り欠き部812内の前方規制部815の右側にセットし、第4ハーネス74を右方切り欠き部813内にセットし、第5ハーネス75を後方切り欠き部814内にセットする。次に、本体部81に対して蓋部85を取付ける。これにより、第1ハーネス71はプロテクタブラケット80の左方開口部861に、第2ハーネス72及び第3ハーネス73は前方開口部862に、第4ハーネス74は右方開口部863に、第5ハーネス75は後方開口部864に、通された状態になる。
【0026】
図2及び
図3に基づいて、ワイヤハーネス70を収納したプロテクタブラケット80を、左側サイドフレーム31Lに対して組付ける方法を示す。まず、プロテクタブラケット80の左壁部81Lを左側サイドフレーム31L側へ向けた状態で、プロテクタブラケット80の挿入部82及び固定部83を、それぞれ第1貫通孔311及び第2貫通孔312に対して挿入していく。このとき、固定部83の係止爪部832が第2貫通孔312の上下周縁部に当接して上下方向に縮むように撓む。この状態からさらに、挿入部82及び固定部83をそれぞれ第1貫通孔311及び第2貫通孔312に対して挿入していき、挿入部82の台座部822の左面が左側サイドフレーム31Lの右面に当接すると、固定部83の係止爪部832が弾性復元力により元の状態に戻り、左側サイドフレーム31Lに対して係止される。これにより、固定部83が左側サイドフレーム31Lに対して固定される。
図4及び
図5に示すように、固定部83が左側サイドフレーム31Lに対して固定された状態では、挿入部82の挿入部本体821が、部分的に第1貫通孔311の内周面に対して当接する。より詳細には、挿入部本体821の後壁部821Bの上端部及び下端部が、第1貫通孔311の内周面に対して当接する。このため、挿入部82及び固定部83の働きにより、左側サイドフレーム31Lに対するプロテクタブラケット80の面内方向の移動を抑制できる。なお、挿入部本体821の後壁部821Bの上下両端部以外の部分、前壁部821A及び上下の壁部は、第1貫通孔311の内周面から離隔した状態にある。
【0027】
図5に示すように、通常の状態では、左側サイドフレーム31Lは前後方向に延びている。このとき、上記したように、挿入部82は、挿入部本体821の後壁部821Bの上下両端部のみで第1貫通孔311の内周面に当接している。この状態から、乗物の衝突時に過大な荷重が左側サイドフレーム31Lに対して印加されると、
図6に示すように、左側サイドフレーム31Lは、弱体化部313が右側(シート幅方向内側)へ凸となるように折れ曲がる。このとき、第1貫通孔311の内周面は、上面視において弱体化部313を中心とする仮想円弧上を移動する。すなわち、挿入部本体821の後壁部821Bの上下両端部と当接していた第1貫通孔311の内周面は略左後方に移動するため、挿入部本体821の後壁部821Bから離隔する。そして、挿入部本体821の前壁部821Aは、上記したように、右前方から左後方へ向けて傾斜して延びているため、第1貫通孔311の内周面の前側部分が略左後方に移動する際に当該内周面と当接しない。よって、挿入部本体821は、折れ曲がっていく左側サイドフレーム31Lと干渉することなく、第1貫通孔311から離脱できる。
【0028】
以上のように構成される本実施形態は、次のような作用効果を奏する。プロテクタブラケット80が弱体化部313より後部の領域において左側サイドフレーム31Lに対して固定されているため、常に左側サイドフレーム31Lに対するプロテクタブラケット80の面内方向への移動及び剥離方向への移動とも抑制できる。また、プロテクタブラケット80が弱体化部313より前部の領域において左側サイドフレーム31Lの折れ曲がり時に離脱可能に取付けられているため、通常時は左側サイドフレーム31Lに対するプロテクタブラケット80の面内方向への移動を抑制できる。両者が相俟って、通常時には、プロテクタブラケット80を左側サイドフレーム31Lに対しガタ無く取付けることができる。一方、乗物の衝突等により過大な荷重が左側サイドフレーム31Lに印加され、左側サイドフレーム31Lが弱体化部313で折れ曲がった場合には、弱体化部313より後部の領域では、プロテクタブラケット80が左側サイドフレーム31Lに対して固定された状態に保持されるが、前部の領域では、プロテクタブラケット80が破損する前にプロテクタブラケット80が左側サイドフレーム31Lから離脱することになる。このため、左側サイドフレーム31Lが折れ曲がった場合には、プロテクタブラケット80の破損を抑制することができる。また、挿入部82に対して面取りを施すという簡潔な構造によって、左側サイドフレーム31Lが弱体化部313で折れ曲がった際に挿入部82が第1貫通孔311の内周面と過剰な干渉をせずに第1貫通孔311から離脱し易くなり、左側サイドフレーム31Lが折れ曲がった場合のプロテクタブラケット80の破損を抑制することができる。また、固定部83の外周面と第2貫通孔312の内周面との当接により、固定部83を中心とした前後方向回転の荷重を効率的に受け止めることができる。これによって、プロテクタブラケット80に対して回転方向の力が印加された場合であっても、一方の領域における固定は維持され、プロテクタブラケット80が左側サイドフレーム31Lから離脱することを抑制できる。
【0029】
以上、特定の実施形態について説明したが、本発明は、それらの外観、構成に限定されず、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更、追加、削除が可能である。
【0030】
例えば、本実施形態においては、特に言及しなかったが、プロテクタブラケット80内に、適宜の電子制御ユニット77を配置することもできる。この構造では、電子制御ユニット77は、プロテクタブラケット80内でワイヤハーネス70の分岐部76と接続される。
【0031】
また、本実施形態においては、左側サイドフレーム31Lは、乗物の衝突時に過大な荷重が印加されると、弱体化部313が右側(シート幅方向内側)へ凸となるように屈曲する構造とした。しかし、これに限定されず、左側サイドフレーム31Lは、乗物の衝突時に過大な荷重が印加されると、弱体化部313が左側(シート幅方向外側)へ凸となるように屈曲する構造でもよい。この構造では、左側サイドフレーム31Lの左側(シート幅方向外側)にスペースの余裕があれば、そのスペースにプロテクタブラケット80が配設されることになる。
【0032】
また、本実施形態においては、プロテクタブラケット80の左壁部81Lにおいて、挿入部82が前側に配設され、固定部83が後側に配設されている構造を示した。しかし、これに限定されず、挿入部82が後側に配設され、固定部83が前側に配設されている構造でもよい。この構造では、挿入部本体821の左端部(先端部)後側が面取りされることになる。
【0033】
また、本実施形態においては、プロテクタブラケット80の挿入部本体821に、面取りが施されている構造を示した。しかし、これに限定されず、左側サイドフレーム31Lの内周面に、左側サイドフレーム31Lが弱体化部313で折れ曲がったときに挿入部82が第1貫通孔311から離脱し易いように面取りが施されている構造であってもよい。
【0034】
また、本実施形態においては、本発明を自動車のシートに適用したが、飛行機、船、電車等に搭載されるシートに適用してもよい。
【符号の説明】
【0035】
1 自動車用シート(乗物用シート)
20 クッションフレーム
31L 左側サイドフレーム(フレーム部材)
311 第1貫通孔
312 第2貫通孔
313 弱体化部
70 ワイヤハーネス(電装品)
80 プロテクタブラケット(ブラケット)
82 挿入部
83 固定部