(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記射出成形する工程において、溶融状態のポリオキシメチレン樹脂組成物のフローフロントが、射出成形機のゲートを通過する際の速度が600mm/sec以下である、
請求項10又は11に記載のポリオキシメチレン樹脂成形体の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について、図を参照して詳細に説明する。
なお、本発明は、以下の記載に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
各図面中、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、各図面に示す位置関係に基づくものとし、さらに図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。
【0013】
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体、ポリオキシメチレン樹脂成形体の製造方法、ポリオキシメチレン樹脂成形体を構成するポリオキシメチレン樹脂組成物について、順次詳細に説明する。
【0014】
〔ポリオキシメチレン樹脂成形体〕
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、ポリオキシメチレン樹脂(A)と外観改良剤(B)とを含有するポリオキシメチレン樹脂組成物からなり、最薄部の厚さが0.3mm以上8mm以下であり、意匠面にウェルド部を有し、当該ウェルド部とその周辺部分の色差ΔE
*が10未満である。
以下、ポリオキシメチレン樹脂成形体の構成、その使用態様、その用途について、順次詳細に説明する。
【0015】
(ポリオキシメチレン樹脂成形体の構成)
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、後述するポリオキシメチレン樹脂組成物を成形することで得られる。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、意匠面にウェルド部を有する。
前記ポリオキシメチレン樹脂成形体の「意匠面」とは、主として外側に装備され使用される部品の面、及び/又は使用者から見えるところに装備されている部品の面である。また、これに準じて色調や異物、例えばブラックスポットやブラウンスポットが成形体の外観品質に影響を与え得る部品や、これらの検査が行われる部品の面を含む。
また、意匠面とは、意匠性が求められる部品の面全てを含んでいてもよく、また、意匠性が求められる面の一部を意味するものであってもよい。
【0016】
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体の意匠面の「ウェルド部」とは、成形時に溶融し、金型内を流動する樹脂が、何らかの原因で幾つかの流れを形成し、それらが再度融合するときに生じる境界部分を言う。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体における「ウェルド部」としては、例えば、ボス穴や溝部で溶融樹脂の流路が分かれ、再度流動末端が突き当たる部位や、ゲート部のようにスネーキングや流動方向の変化で固化のタイミングに差が生じる部位等が挙げられる。
また、フローマーク発生部のような、表面のシボ、樹脂成形体の厚み、金型表面温度、樹脂の転写の変化等の影響により流動速度に変化が生じる部分等も「ウェルド部」の具体例として挙げられる。
【0017】
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、ボス穴を有していてもよい。
ポリオキシメチレン樹脂成形体のボス穴とは、軸であるボスの相手となる軸穴を言う。
また、樹脂の流動が変化するような穴、すなわち開口部や窪み部もボス穴に含まれる。
【0018】
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、外観の改善効果が高いため、当該本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体を観察してもウェルド部が確認されにくい場合がある。その場合は、意匠面の裏面を観察したり、ショートショット成形体により樹脂の流れを把握したり、あるいはCAE(Computer Aided engineering)による流動解析、顕微鏡による結晶観察等を行うことにより、ウェルド部を確認することができる。
【0019】
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、厚みが一定であってもよく、一定でなくてもよい。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、最薄部の厚さが、0.3mm以上8mm以下であり、0.4mm以上6mm以下が好ましく、0.5mm以上5mm以下がより好ましい。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体の最薄部の厚さが前記範囲内であることにより、意匠性を改善し、実用上十分な生産性を維持し、耐久性を高めることができる。
【0020】
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、外観への影響が特に顕著となる、偏肉部やリブを有していてもよく、厚さが0.5mm以上変動する厚み変化部を有する成形体であることが好ましい。
また、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、あらゆる角度から使用者による観察が可能な形状であることも外観への影響が顕著となるため、意匠面に曲面を有する成形体であることが好ましい。
さらに、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、成形時の樹脂の流動速度が不安定になり易く、外観への影響が顕著となるため、シボ面を有する成形体であることが好ましい。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体が、上述したような構成を有する成形体であるとき、特に意匠性を改善する効果が大きく、実用上十分な生産性を維持しつつ、耐久性を高めることができる傾向にある。
【0021】
上述したように、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、ウェルド部を有する。ウェルド部は、射出成形時のゲートが多点であったり、成形体にボス穴や溝などが存在したりすることによって、形成される。
【0022】
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、ウェルド部とその周辺部分の色差ΔE
*が10未満である。ウェルド部とその周辺部分の色差ΔE
*は、好ましくは8未満であり、より好ましくは5未満である。
ウェルド部とその周辺部分の色差ΔE
*を10未満にすることにより、ウェルド部とその周辺部分の樹脂の流れや外観改良剤の分散状態の急激な変化を抑制できるため、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、意匠性を改善し、実用上十分な生産性を維持しつつ耐久性を高めることができる。
ウェルド部とその周辺部分の色差は、後述する特定の添加剤、メルトフローレート、結晶化開始温度を有する組成物を用いたり、成形時に樹脂に加わる圧力(射出圧力)、流れる速度(射出速度)、冷却時の温度(金型温度)を調整したりすることにより制御することができる。
【0023】
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、ウェルド部の幅が60μm未満であることが好ましい。より好ましくは50μm未満であり、さらに好ましくは40μm未満である。
ウェルド部の幅を60μmにすることにより、溶融樹脂を適正に融合させたり、外観改良剤の凝集を抑制したりすることができるため、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、意匠性を改善し、実用上十分な生産性を維持しつつ耐久性を高めることができる。ウェルド部の幅は、後述する特定の添加剤、メルトフローレート、結晶化開始温度を有する組成物を用いたり、成形時の樹脂に加わる圧力(射出圧力)、流れる速度(射出速度)、冷却時の温度(金型温度)を調整したりすることにより制御することができる。
【0024】
ウェルド部は、通常、溶融樹脂が融合することで形成する。
図1に、ポリオキシメチレン樹脂成形体のウェルド部及びその周辺部分のマイクロスコープ写真の一例を示す。
図1に示すように、外観改良剤の濃度に差異が生じたり、厚み方向に盛り上がりが生じたりすることにより、ウェルド部の周辺部分と比較して、色調が不連続で色目の変化が生じていることが確認できる。
ウェルド部の幅とは、
図1に示すように、周辺部分と比較して色目が変わっている部分の幅をいい、具体的には、周辺部との色差ΔE
*が、5以上の部分の幅をいう。
また、ウェルド部の周辺部分とは、ウェルド端部から100μm以上離れた色目が安定した部分をいう。
ウェルド部とその周辺部分との色差ΔE
*と、ウェルド部の幅の測定は、マイクロスコープ(例えば、(株)キーエンス製:VHX−5000)により得られた画像から求めることができる。
色差の測定には、分光色彩計(例えば、BYK−ガードナー社製:スペクトロガイド(登録商標)45/0グロス)を用いることができる。
具体的には、ウェルド部とその周辺部分において、それぞれ10か所以上のa、b、Lを測定し、各々の平均a
W、b
W、L
Wとa
N、b
N、L
Nから、下記式より色差ΔE
*を求めることができる。
ΔE
*=((a
W−a
N)
2+(b
W−b
N)
2+(L
W−L
N)
2)
0.5
ウェルド部の幅はマイクロスコープの画像解析にて測定することができる。
具体的には
図1に示す写真から幅の測定を行うことができる。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体の色差ΔE
*が前記であることにより、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、意匠性を改善し、実用上十分な生産性を維持しつつ耐久性を高めることができる。
【0025】
図1〜
図4に、ウェルド部のマイクロスコープ写真の具体例を示す。
図1のウェルド部とその周辺部分の色差ΔE
*は10以上であり、幅は100μm以上である。
また、
図2は、ウェルド部のマイクロスコープ写真の他の一例を示す。
図2に示すウェルド部は、幅が100μm未満であり、色差ΔE
*は10以上である。
図3は、ウェルド部のマイクロスコープ写真の他の一例を示す。
図3に示すウェルド部は二本の筋が確認できる。これは、材料の組成やウェルドの形成時の圧力や速度などから二本の筋が形成されたものである。
図4に、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体のウェルド部とその周辺部分のマイクロスコープ写真の一例を示す。
図4においては、ウェルド部とその周辺部分の色差に大きな差がなく、明確な不連続部が確認されない。
【0026】
(ポリオキシメチレン樹脂成形体の使用態様)
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、通常のポリオキシメチレン樹脂が使用される部品に使用することができる。
例えば、常時使用温度が−50℃〜140℃であり、駆動時や固定時等に負荷がかかる機構部位、他材料又は同材料と擦れ合う摺動部位、耐薬品性を必要とする容器類、これらの機能に加え意匠性を必要とする部位を有する成形体が挙げられる。
【0027】
(用途)
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体の用途としては、例えば、電気機器、自動車部品やその他の種々の機構部品、また容器、カバー、ケース、扉等の一部に可動機能を有した部品が挙げられる。
特に、摺動を行う軸部、軸受け部、軸穴部、ローラ部、ブッシュ部、ワッシャー部、ベルト部、締結部等に使用される部品であることが好ましい。
さらに、
図5に示すようなレバー・ペダル、ハンドル類のような正転・反転部品、車輪や歯車のような回転部品;
図6に示すようなボタン・クリップ類;
図7に示すようなリング類;
図8に示すようなカバー類、その他、ベルト・ロープ類の巻出し・巻き取りなどのガイド部品;組み付け・取り外しといった嵌合部品に使用されることが好ましい。
なお、
図5〜
図8中の矢印に示す部位が、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体によって形成された部位である。
さらに、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、上記のような機能性を有する部品であり、さらに同時に意匠性を必要とする外観部品に使用されることが特に好ましい。
【0028】
〔ポリオキシメチレン樹脂成形体の製造方法〕
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、後述するポリオキシメチレン樹脂組成物を成形することにより製造することができる。
成形方法としては射出成形法が好ましい。
射出成形法としては、例えば、多色成形、複合成形、射出圧縮成形、ガスアシスト射出成形、発泡射出成形等の種々の射出成形法が挙げられる。
【0029】
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、ポリオキシメチレン樹脂組成物が溶融し、溶融樹脂のフローフロントがゲート通過時600mm/sec以下の速度で射出成形して得られることが好ましく、さらに好ましくは400mm/sec以下、より好ましくは200mm/sec以下である。
従来は、生産性を高めようとすると、単位時間に多くの成形体を得るために、射出速度を大きくして成形サイクルの短縮を行うことが多かった。本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体の製造方法においては、射出成形時にフローフロントがゲート通過する射出速度を600mm/sec以下とすることにより、意匠性を改善し、実用上十分な生産性を維持し、耐久性を高めることができる傾向にある。
【0030】
ここでいうゲートとは、射出成形機ノズルから射出され溶融した樹脂が、スプール、ランナーを通り、成形体となる金型空洞へ入る入口のことをいう。
ゲートの種類には、以下に限定されるものではないが、例えば、ダイレクトゲート、サイドゲート、ピンゲート、フィルムゲート、バルブゲート等が挙げられる。
タブゲートやファンゲート等についても製品に流入する入口部を指す。
生産性を考慮すると、ピンゲートや、金型開放時に自動でゲートが切れる金型構造が好ましい。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、多点ゲートにて射出成形することが好ましい。多点ゲートにすることで、流動長が短くなり、成形体の末端まで圧力を十分に伝えることが可能となる。これにより意匠性を改善し、実用上十分な生産性を維持し、耐久性を高めることができる傾向にある。
【0031】
ポリオキシメチレン樹脂組成物の溶融したフローフロントのゲート通過時の速度は、射出成形機の特性及び設定した射出速度、金型形状より算出してもよい。
例えば、シリンダー径が25mmΦ、射出効率が0.9、設定した射出速度が20mm/sec、金型のゲート数2個、ゲート径2.5mmΦとすると、溶融したフローフロントのゲート通過時の速度は、900mm/sec((20×25
2×π/4)×0.9/(2×2.5
2×π/4))となる。
【0032】
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体を射出成形する際、金型温度は、用いる成形機のシリンダーやマニホールド、成形機射出可能容量と成形体の容積のバランスなどにより異なるが、95℃以上145℃以下が好ましく、100℃以上140℃以下がより好ましく、105℃以上135℃以下がさらに好ましい。
従来は、生産性を高めようとすると、金型温度を70℃以下にし、固化を早めゲートシール時間を短くすることで成形体を取り出すまでの成形サイクルを短縮する傾向にあった。
一方で、ウェルド部の外観等を考慮すると融点近傍にすることが有効である。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体の製造方法においては、金型温度が前記範囲内であることにより、意匠性を改善し、実用上十分な生産性を維持し、耐久性を高めることができる傾向にある。
【0033】
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、射出成形時の最大射出圧力(一次圧力)から、クッションを残し、かつ保圧時も一次圧力の80%、又は成形体の形状やゲートの形状によってはそれ以上の圧力でポリオキシメチレン樹脂組成物の充填を継続して製造することが好ましい。
すなわち、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、射出成形時の保圧力を最大射出圧力(一次圧力)の80%以上として充填を継続し製造されることが好ましい。
従来の射出成形では、金型内に溶融樹脂が十分に充填された瞬間に圧力をかけ、保圧時は最大射出圧力から60%以下に下げて暫くその圧力を維持することで、ゲート付近の変形やクラックを抑制することが多かった。
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体の製造方法においては、バリが発生していないことを確認しながら、収縮を考慮し金型転写を高めるため、保圧時も高い圧力を維持することが好ましい。
【0034】
〔ポリオキシメチレン樹脂成形体を構成するポリオキシメチレン樹脂組成物〕
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体を構成するポリオキシメチレン樹脂組成物は、ポリオキシメチレン樹脂(A)と、外観改良剤(B)を含む。
【0035】
前記ポリオキシメチレン樹脂組成物は、メルトフローレート(MFR)(ASTM1238、温度190℃)の上限値が、35g/10min以下であることが好ましく、32g/10min以下であることがより好ましく、30g/10min以下であることがさらに好ましい。
また、メルトフローレートの下限値は、2.5g/10min以上であることが好ましく、3g/10min以上であることがより好ましく、4g/10min以上であることがさらに好ましい。
ポリオキシメチレン樹脂組成物のメルトフローレートMFRを上記範囲内とすることにより、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、意匠性を改善し、実用上十分な生産性を維持し、耐久性を高めることができる傾向にある。
【0036】
前記ポリオキシメチレン樹脂組成物は、結晶化開始温度が141℃以上146℃以下であることが好ましい。
結晶開始温度は、141.5℃以上145.5℃以下であることがより好ましく、142℃以上145℃以下であることがさらに好ましい。
ポリオキシメチレン樹脂組成物の結晶化開始温度Cpを上記範囲内とすることにより、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、意匠性を改善し、実用上十分な生産性を維持し、耐久性を高めることができる傾向にある。
結晶化開始温度は、示差式走査熱量計DSC(例えば、Parkin Elmer社製:DSC−2C)を用いて測定することができる。
測定条件としては、表示温度50℃でサンプルをセットし、320℃/分で220℃まで昇温し、220℃で1分間保持する。その後80℃/分で140℃まで降温し、5分間保持する。さらに20℃/分で210℃まで昇温し、210℃で5分間保持する。20℃/分で100℃まで降温し、このときの補外開始温度(オンセット)をCpとする。
【0037】
以下、ポリオキシメチレン樹脂組成物の構成材料、ポリオキシメチレン樹脂組成物の特性、ポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法について、順次詳細に説明する。
(ポリオキシメチレン樹脂組成物の構成材料)
ポリオキシメチレン樹脂組成物は、以下に示すポリオキシメチレン樹脂(A)、外観改良剤(B)を含有し、その他、必要に応じて添加剤(C)を含んでもよい。
【0038】
(ポリオキシメチレン樹脂(A))
前記ポリオキシメチレン樹脂組成物は、主成分として、ポリオキシメチレン樹脂(A)を含む。
前記ポリオキシメチレン樹脂(A)としては、オキシメチレン基のみを主鎖に有するポリオキシメチレンホモポリマー(a−1)、又は、好ましくは分子中に炭素数2以上のオキシアルキレンユニットを有する、ポリオキシメチレンコポリマー(a−2)が挙げられる。
特に、本実施形態においては、ポリオキシメチレン樹脂(A)に含まれるコモノマーユニットを含有量が、オキシメチレンユニット100molに対して、0〜3.0molであることが好ましい。より好ましくは0〜2.5mol、さらに好ましくは0.3〜2.0molである。ここでコモノマーユニットが“0”である場合は、ホモポリマーを示す。
オキシメチレンユニット以外のコモノマーユニットの含有量が前記範囲内であることにより、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、意匠性を改善し、実用上十分な生産性を維持し、耐久性を高めることができる傾向にある。
前記コモノマーユニットの定量については、
1H−NMR法を用いて、以下の手順で求めることができる。すなわち、ポリオキシメチレン樹脂(A)を、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)により濃度1.5質量%となるように24時間かけて溶解させ、この溶解液を用いて
1H−NMR解析を行い、オキシメチレンユニットと、オキシメチレンユニット以外のコモノマーユニット(例えば、オキシアルキレンユニット)との帰属ピ−クの積分値の比率から、オキシメチレンユニット100mol(x)に対するコモノマーユニット(y)のmol割合(y/x)を求めることができる。
【0039】
前記ポリオキシメチレンホモポリマー(a−1)を得る方法としては、公知の重合法が適用できる。
例えば、特公昭47−6420号公報又は特公昭47−10059号公報に記載の方法等を用いることにより、末端が安定化されていない粗ポリオキシメチレンが得られ、この粗ポリオキシメチレンの末端を安定化させることにより、ポリオキシメチレンホモポリマー(a−1)が得られる。
末端安定化の方法としては、公知の方法が適用でき、例えば、特公昭63−452号公報に記載又は米国特許第3,459,709号明細書、米国特許第3,172,736号明細書に記載の方法等を用いて実施することができる。
前記ポリオキシメチレンコポリマー(a−2)を得る方法としては、公知の重合法が適用できる。例えば、米国特許第3027352号明細書又は米国特許第3803094号明細書、独国特許発明第1161421号明細書、独国特許発明第1495228号明細書、独国特許発明第1720358、独国特許発明第3018898号明細書、特開昭58−98322号公報、及び特開平7−70267号公報に記載の方法等を用いることにより、ポリオキシメチレンコポリマー(a−2)の末端が安定化されていない状態の粗ポリマーが得られる。
末端安定化の方法としては、公知の方法が適用でき、例えば、国際公開第98/42781号公報、特開2000−063463号公報、特開2000−063464号公報、特開2007−112959号公報、特開2006−299107号公報、特開2006−282836号公報、特開2006−257166号公報に記載された方法等を用いて実施することができる。
【0040】
ポリオキシメチレン樹脂(A)は、安定剤を含むことが好ましい。安定剤を含むことにより、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、意匠性を改善し実用上十分な生産性を維持し耐久性を高めることができる傾向にある。
安定剤の含有量は、ポリオキシメチレン樹脂(A)100質量部に対し、0.005質量部以上5質量部未満が好ましく、0.01質量部以上2質量部未満がより好ましく、0.02質量部以上1質量部未満がさらに好ましい。
前記安定剤としては、ポリオキシメチレン樹脂組成物やこれを用いたポリオキシメチレン樹脂成形体を生産する上で、残留するホルムアルデヒドやこれが変性して生じる蟻酸等の、樹脂成形体の生産性や耐久性に悪影響を与える生成物を捕捉又はその影響を抑制する機能を有するものが好ましい。
このような安定剤としては、例えば、反応性窒素含有化合物、無機酸の金属塩、金属酸化物及び有機酸の金属塩等が挙げられる。
これらの中でも、不純物として酸を極力含まない、及び/又は酸を発生し難い化合物が好ましく、このような安定剤を全安定剤中の50質量%以上含むことが好ましい。安定剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、反応性窒素含有化合物が挙げられ、具体的には、ポリアミド系樹脂、アクリルアミド系重合体等が挙げられる。
安定剤は1種類のみを単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0041】
(外観改良剤(B))
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体を構成するポリオキシメチレン樹脂組成物は、外観改良剤(B)を含有する。
外観改良剤とは、着色に用いる物質のことであり、特定の波長の光を選択的に吸収、反射、散乱させたり、新たな波長の光を生み出したりすることで、成形体の外観に変化をもたらす機能を有する物質である。
【0042】
ポリオキシメチレン樹脂成形体を構成するポリオキシメチレン樹脂組成物中の外観改良剤(B)の含有量は、ポリオキシメチレン樹脂(A)100質量部に対し、10質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であることがより好ましく、6質量部以下であることがさらに好ましい。
また、ポリオキシメチレン樹脂(A)100質量部に対し、0.001質量部以上であることが好ましく、0.005質量部以上であることがより好ましく、0.01質量部以上であることがさらに好ましい。
外観改良剤(B)の含有量を上記範囲にすることにより、ポリオキシメチレン樹脂組成物を用いて製造された樹脂成形体は、意匠性を改善し、実用上十分な生産性を維持し、耐久性を高めることができる傾向にある。
外観改良剤(B)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0043】
外観改良剤(B)には分散性に劣るものがあり、外観改良剤とポリオキシメチレン樹脂の組合せ、配合濃度や成形条件等により、目視による外観観察で、
図9の実態写真で確認できるような色ムラがみられることがある。
よって、ポリオキシメチレン樹脂組成物中に外観改良剤(B)を均一に分布させるため、分散助剤をさらに配合してもよい。
また、高濃度の外観改良剤をポリマー状キャリヤー等に混合することにより得られた着色剤濃縮物(マスターバッチ)を用いてもよい。
また着色時のポリオキシメチレン樹脂組成物の安定性を高めるために外観改良剤に熱安定剤を含んでもよい。
【0044】
外観改良剤(B)としては、無機顔料や有機顔料、染料等が挙げることができる。
無機顔料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、白色顔料(例えば、ルチル、アナターゼ又は板チタン石の3つの変形における二酸化チタン、鉛白、亜鉛白、亜鉛スルフィド又はリトポン;黒色顔料(例えば、カーボンブラック、黒色酸化鉄、鉄マンガンブラック又はスピネルブラック);酸化クロムのようなクロム顔料、酸化クロム水和物グリーン、コバルトグリーン又はウルトラマリーングリーン、コバルトブルー、鉄ブルー、ミロリブルー、ウルトラマリーンブルー又はマンガンブルー、ウルトラマリーンバイオレット又はコバルト又はマンガンバイオレット;赤色酸化鉄、カドミウムスルホセレニド、モリブデートレッド又はウルトラマリーンレッド;褐色酸化鉄、混合ブラウン、スピネル相及びコランダム相又はクロムオレンジ;黄色酸化鉄、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、カドミウムスルフィド、カドミウム亜鉛スルフィド、クロムイエロー、亜鉛イエロー、アルカリ土類金属クロメート、ナポリ黄;ビスマスバナデート、干渉顔料のようなエフェクト顔料、珪酸亜鉛や硫化ストロンチウム等の蛍光顔料、アルミニウム粉、ブロンズ粉、銅粉等の金属粉顔料が挙げられる。
その他の無機顔料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、顔料ホワイト6、顔料ホワイト7、顔料ブラック7、顔料ブラック11、顔料ブラック22、顔料ブラック27/30、顔料イエロー34、顔料イエロー35/37、顔料イエロー42、顔料イエロー53、顔料ブラウン24、顔料イエロー119、顔料イエロー184、顔料オレンジ20、顔料オレンジ75、顔料ブラウン6、顔料ブラウン29、顔料ブラウン31、顔料イエロー164、顔料レッド101、顔料レッド104、顔料レッド108、顔料レッド265、顔料バイオレット15、顔料ブルー28/36、顔料ブルー29、顔料グリーン17、顔料グリーン26/50等が挙げられる。
【0045】
有機顔料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、アニリンブラック、アントラピリミジン顔料、アゾメチン顔料、アントラキノン顔料、モノアゾ顔料、ジアゾ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、キナクリドン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、フラバントロン顔料、インダントロン顔料、インドリノン顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、チオインジゴ顔料、金属錯体顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、ピラントロン顔料、フタロシアニン顔料、チオインジゴ顔料、トリアリールカルボニウム顔料、又は金属錯体顔料等が挙げられる。
【0046】
その他の有機顔料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、C.I.(色指数)顔料イエロー93、C.I.顔料イエロー95、C.I.顔料イエロー138、C.I.顔料イエロー139、C.I.顔料イエロー155、C.I.顔料イエロー162、C.I.顔料イエロー168、C.I.顔料イエロー180、C.I.顔料イエロー183、C.I.顔料レッド44、C.I.顔料レッド170、C.I.顔料レッド202、C.I.顔料レッド214、C.I.顔料レッド254、C.I.顔料レッド264、C.I.顔料レッド272、C.I.顔料レッド48:2、C.I.顔料レッド48:3、C.I.顔料レッド53:1、C.I.顔料レッド57:1、C.I.顔料グリーン7、C.I.顔料ブルー15:1、C.I.顔料ブルー15:3、C.I.顔料バイオレット19等が挙げられる。
【0047】
染料としては、以下に限定されるものではないが、例えば、樹脂用に使用される分散染料、油性染料等が挙げられる。
【0048】
特に本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体を構成するポリオキシメチレン樹脂組成物に含まれる外観改良剤(B)として効果が大きく好ましいものは、無機顔料、特に金属粉顔料、中でもアルミニウム粉顔料である。
【0049】
(その他の添加剤(C))
本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体を構成するポリオキシメチレン樹脂組成物は、上述したポリオキシメチレン樹脂(A)、外観改良剤(B)に加え、必要に応じてその他の添加剤(C)を含有してもよい。
その他の添加剤(C)としては、以下に限定されるものではないが、例えば、酸化防止剤、耐候(光)剤、潤滑剤、無機・有機の充填剤、結晶核剤、離型剤、帯電防止剤、顔料や染料といった外観改良剤、導電剤、難燃剤等が挙げられる。
ポリオキシメチレン樹脂組成物中の添加剤(C)の含有量は、ポリオキシメチレン樹脂(A)100質量部に対し、50質量部以下であることが好ましく、40質量部以下であることがより好ましく、30質量部以下であることがさらに好ましい。
添加剤(C)の含有量を上記範囲にすることにより、ポリオキシメチレン樹脂組成物を用いて製造された本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、意匠性を改善し実用上十分な生産性を維持し、耐久性を高めることができる傾向にある。
添加剤(C)は、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0050】
ポリオキシメチレン樹脂組成物は、添加剤として、ヒンダードアミン系添加剤(C1)を含有することが好ましい。
ポリオキシメチレン樹脂成形体を構成するポリオキシメチレン樹脂組成物中のヒンダードアミン系添加剤(C1)の含有量は、ポリオキシメチレン樹脂(A)100質量部に対し、0.1質量部以上1.5質量部以下であることが好ましく、0.2質量部以上1質量部以下であることがより好ましく、0.3質量部以上0.8質量部以下であることがさらに好ましい。
ヒンダードアミン系添加剤(C1)の含有量を上記範囲にすることにより、ポリオキシメチレン樹脂組成物を用いて製造された本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体は、意匠性を改善し、実用上十分な生産性を維持し、耐久性を高めることができる傾向にある。
上記ヒンダードアミン系添加剤(C1)はそれぞれ1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0051】
ヒンダードアミン系添加剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、
4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、
4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、
4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、
4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、
4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、
4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、
4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、
4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、
4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、
4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、
4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、
4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、
4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−カーボネイト、
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−オキサレート、
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−マロネート、
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−アジペート、
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−テレフタレート、
1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、
α,α’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルトリレン−2,4−ジカルバメート、
ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、
トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、
トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、
1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、
1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物等が挙げられる。
【0052】
(ポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法)
ポリオキシメチレン樹脂組成物は、上述のように、ポリオキシメチレン樹脂(A)と外観改良剤(B)、必要に応じて上記その他の添加剤(C)を含有する。
以下においては、ポリオキシメチレン樹脂(A)、外観改良剤(B)及びその他の添加剤(C)を全て含有するポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法を示す。
ポリオキシメチレン樹脂組成物は、ポリオキシメチレン樹脂(A)、外観改良剤(B)、必要に応じてその他の添加剤(C)を混合することにより得られる。
ポリオキシメチレン樹脂(A)、外観改良剤(B)、及びその他の添加剤(C)の混合は、ポリオキシメチレン樹脂(A)の造粒時に(B)成分、(C)成分を添加し、溶融混練することにより行ってもよい。また、(A)成分の造粒後に、ヘンシェルミキサー、タンブラーやV字型ブレンダーを用いて、(A)成分、(B)成分、(C)成分を混合した後、ニーダー、ロールミル、単軸押出機、二軸押出機や多軸押出機を用いて溶融混錬することにより、ポリオキシメチレン樹脂組成物を得ることもできる。
また、ポリオキシメチレン樹脂(A)に対する(B)成分や(C)成分の分散性を高めるために、混合するポリオキシメチレン樹脂(A)のペレットの一部又は全量を粉砕して予め混合した後、溶融混合してもよい。
この場合、展着剤を用いてさらに分散性を高めてもよい。このような展着剤としては、以下に限定されるものではないが、例えば、脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素、これらの変性物及びこれらの混合物、並びにポリオールの脂肪酸エステル等が挙げられる。
前記溶融混練の温度は、ポリオキシメチレン樹脂(A)の融点の30〜50℃高い温度であることが好ましい。さらに、品質や作業環境を保持する観点から、不活性ガスによる置換や、一段又は多段ベントで脱気することが好ましい。
さらに、本実施形態に用いるポリオキシメチレン樹脂組成物は、本実施形態のポリオキシメチレン樹脂成形体をリサイクルすることによっても得られる。例えば、ポリオキシメチレン樹脂成形体を粉砕し、得られた樹脂フレークをペレットの代わりに使用してもかまわない。また粉砕した樹脂フレークの一部を上記より得られたペレットに混合してもよい。
【実施例】
【0053】
以下、本発明を、実施例と比較例を挙げて説明するが、本実施形態は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0054】
実施例及び比較例におけるポリオキシメチレン樹脂成形体を構成するポリオキシメチレン樹脂組成物(P)、ポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法、ポリオキシメチレン樹脂組成物の特性、ポリオキシメチレン樹脂成形体の製造方法、ポリオキシメチレン樹脂成形体のウェルド部と周辺部分の色差、ウェルド部の幅、ポリオキシメチレン樹脂成形体の評価について順次説明する。
【0055】
〔ポリオキシメチレン樹脂組成物(P)〕
ポリオキシメチレン樹脂組成物(P)、その製造方法、及びその特性について説明する。
(ポリオキシメチレン樹脂組成物(P)の原料)
ポリオキシメチレン樹脂組成物(P)を調製するための原料として、下記に示すポリオキシメチレン樹脂(A)、外観改良剤(B)、及びその他の添加剤(C)を用いた。
【0056】
<1.ポリオキシメチレン樹脂(A)>
ポリオキシメチレン樹脂(A)としては、ポリオキシメチレンコポリマー(A−1〜A−5)を用いた。
(A−1〜A−5)ポリオキシメチレンコポリマーの合成
[重合工程]
ポリオキシメチレンコポリマーは、以下のようにして調製した。
まず、熱媒を通すことのできるジャケット付セルフ・クリーニングタイプの二軸パドル型連続混合反応機(スクリュー径3インチ、径に対する長さの比(L/D)=10)を80℃に調整した。
主モノマーとしてトリオキサンを3750g/hr、コモノマーとして1,3−ジオキソランを25〜150g/hrを用い、かつ、連鎖移動剤としてメチラールを2.0〜8.0g/hrの範囲で調整を行い、前記連続混合反応機に連続的にフィードした。
また、重合触媒として三フッ化ホウ素ジ−n−ブチルエーテラートの1質量%シクロヘキサン溶液を、当該触媒がトリオキサン1molに対して2.0×10
-5molになるように、前記連続混合反応機に添加して重合を行い、ポリオキシメチレンコポリマー(A−1)の重合フレークを得た。
後述するように、外観改良剤(B)等を混合することにより得られるポリオキシメチレン樹脂組成物のメルトフローレートは、連鎖移動剤の添加量を、結晶化開始温度はコモノマーの添加量をそれぞれ制御することにより行った。
メルトフローレート、結晶化開始温度の制御以外、上記同様の操作を行い、下記表1に示すように(A−2)〜(A−5)の重合フレークを得た。
得られた重合フレークを粉砕した後、トリエチルアミン1質量%水溶液中に、前記粉砕物を投入して撹拌し、重合触媒を失活させた。
その後、重合フレークを含むトリエチルアミン1質量%水溶液を濾過し、洗浄及び乾燥を順次行い、粗ポリマーを得た。
[末端安定化工程]
得られた粗ポリマー1質量部に対し、第4級アンモニウム化合物としてトリエチル(2−ヒドロキシエチル)アンモニウム蟻酸塩を、下記数式(α)を用いて窒素の量に換算した場合に20ppmとなる量相当を添加し、均一に混合した後120℃で3時間乾燥し、乾燥ポリマーを得た。
第4級アンモニウム化合物の添加量=P×14/Q ・・・(α)
(式(α)中、Pは第4級アンモニウム化合物の粗ポリマーに対する濃度(質量ppm)を表し、「14」は窒素の原子量であり、Qは第4級アンモニウム化合物の分子量を表す。)
次に、得られた乾燥ポリマーを用いて末端安定化を以下のとおり行った。
ベント付きスクリュー型二軸押出機((株)プラスチック工業研究所製:BT−30、L/D=44、設定温度=200℃、回転数=80rpm)の前段部分に、得られた乾燥ポリマーを添加し、さらに当該乾燥ポリマー100質量部に対して0.5質量部の水を添加し、ポリマー末端を安定化させつつ減圧脱気を行って、安定化ポリマーを得た。
[造粒工程]
次に、上記安定化ポリマー100質量部に対し、安定剤としてアクリルアミド・メチレンビスアクリルアミド共重合物H−3(旭化成ファインケム(株)製)0.2質量部とを予めヘンシェルミキサーにて1分間混合した。
得られた混合物を、上記ベント付きスクリュー型二軸押出機の後段部分にあるサイドフィーダーから添加し、シリンダー温度を200℃に設定、スクリュー回転数80rpmとし、24アンペアで溶融混練してポリオキシメチレンコポリマーのペレットを得た。
原料投入からポリオキシメチレン樹脂ペレット採取まで、酸素の混入を避けるように操作を行った。
【0057】
<2.外観改良剤(B)>
外観改良剤として、以下のものを用いた。
(B−1):旭化成メタルズ(株)製アルミニウム シルビーズ(登録商標)M050−AP(無機顔料/金属粉顔料)
(B−2):BASF社製カーボンブラック 00−6005C4(無機顔料/黒色顔料)
(B−3):旭化成メタルズ(株)製アルミニウム シルビーズ(登録商標)M200−BP(無機顔料/金属粉顔料)
(B−4):BASF社製ヘリオゲンブルー K6911D(有機顔料/フタロシアニン顔料)
【0058】
<3.その他の添加剤(C)>
その他の添加剤(C)として、以下のヒンダードアミン系添加剤を用いた。
(C−1):(株)アデカ製 アデカスタブ(登録商標)LA−63
(C−2):三共ライフテック(株)製 サノール(登録商標)LS−770
(C−3):(株)アデカ製 アデカスタブ(登録商標)LA−68
【0059】
〔ポリオキシメチレン樹脂組成物の製造方法〕
ポリオキシメチレン樹脂(A)100質量部、外観改良剤(B)、必要に応じて添加剤(C)を、下記表1に示す組成に従い混合した。
その後、ベント付きスクリュー型二軸押出機((株)プラスチック工業研究所製:BT−30、L/D=44、設定温度=200℃、回転数=100rpm)を用いて、24アンペアで前記混合物を溶融混練して、ポリオキシメチレン樹脂組成物(P)のペレット状サンプルを得た。
【0060】
〔ポリオキシメチレン樹脂組成物の特性〕
得られたポリオキシメチレン樹脂組成物について、メルトフローレート(MFR)と結晶化開始温度Cpを評価した。
得られた特性を下記表1に示す。
(メルトフローレート/MFR)
ポリオキシメチレン樹脂組成物のメルトフローレートの測定は、得られたペレットを測定前に80℃、2時間オーブン(エスペック(株)社製、GPH−102)にて乾燥し、メルトインデクサ(東洋精機(株)社製、F−W01)を用いて、ISO1133(条件D・温度190℃)に準拠して測定した。
(結晶化開始温度/Cp)
ポリオキシメチレン樹脂成形体の結晶化開始温度の測定は、示差走査熱量計DSC(Parkin Elmer社製:DSC−2C)を用いた。
測定は次の条件で行った。
表示温度50℃でサンプルをセットし、320℃/分で220℃まで昇温し、220℃で1分間保持した。その後80℃/分で140℃まで降温し、5分間保持した。さらに20℃/分で210℃まで昇温し、210℃で5分間保持した。20℃/分で100℃まで降温し、このときの補外開始温度(オンセット)をCpとした。
【0061】
【表1】
【0062】
〔ポリオキシメチレン樹脂成形体の製造方法〕
上記ポリオキシメチレン樹脂組成物(P)を、射出成形機(日本製鋼所(株)製J110AD−K、スクリュー径35mm)を用いて、
図10(a)〜(c)、
図13(a)〜c)、
図14(a)〜(c)、
図15(a)〜(c)、
図16(a)〜(c)に示すポリオキシメチレン樹脂成形体(S−1)〜(S−5)を製造した。
ポリオキシメチレン樹脂成形体の製造に用いる型は、
図10、
図13〜16のBの部分に、
図11(a)に示すようにサイドゲートを設け、3種類のゲートサイズ(
図11(b−1、2)に示す3mm幅×1mm厚、
図11(c−1、2)に示す3mm幅×2mm厚、
図11(d−1、2)に示す6mm幅×3mm厚)に変更できるようにした。
なお、ポリオキシメチレン樹脂成形体においては、
図11(a)の実線に囲まれた領域が意匠面であり、破線部にウェルド部が形成されているものとする。
図11(b−1)は3mm幅×1mm厚のゲートの概略正面図を示し、
図11(b−2)は概略断面図を示す。
図11(c−1)は3mm幅×2mm厚のゲートの概略正面図を示し、
図11(c−2)が概略断面図を示す。
図11(d−1)は6mm幅×3mm厚のゲートの概略正面図を示し、
図11(d−2)は概略断面図を示す。
射出成形機のシリンダー温度を210℃、最大射出圧力500kgf/cm
2、保圧時間40秒、冷却時間20秒に設定し、フローフロントがゲートを通過した後の射出速度は400mm/sec〜800mm/secに調整した。
用いるゲート、設定した射出速度に関する条件、及びこのときの溶融樹脂のフローフロントがゲート通過する速度を下記表2に示す。
また後述する〔参考例〕、〔実施例〕、及び〔比較例〕のポリオキシメチレン樹脂成形体を製造した際の樹脂速度の条件、保圧力及び金型温度等については、下記表3、表4に示す。
ポリオキシメチレン樹脂成形体の製造の際には、上記ポリオキシメチレン樹脂組成物が十分に充填され、バリが発生していないことを確認しながら行った。
【0063】
〔ポリオキシメチレン樹脂成形体のウェルド部と周辺部分の色差、ウェルド部の幅〕
上記各例で得られたポリオキシメチレン樹脂成形体においては、
図11に示すように、ウェルド部とその周辺部分を意匠面とした。
ウェルド部とその周辺部分の色差ΔE
*と、この色差が異なるウェルド部の幅を測定した。
色差ΔE
*とウェルド部の幅の測定は、マイクロスコープ((株)キーエンス製:VHX−5000)により得られた画像から求めた。
ウェルド部の色差ΔE
*の測定は、分光測色計(BYK−ガードナー社製:スペクトロガイド45/0グロス)を用いた。
測定結果を下記表3、表4に示す。
ここでウェルド部とその周辺部分の色差とは、ウェルド部とウェルド端部より100μm離れた箇所の色差を言う。
またウェルド部の幅とは、この色目が変わっている部分をいい、具体的には、周辺部との色差ΔE
*が、5以上の部分の幅をいう。
【0064】
〔ポリオキシメチレン樹脂成形体の評価〕
ポリオキシメチレン樹脂成形体について、以下のとおり、成形体の生産性として、ポリオキシメチレン樹脂組成物の生産性と、併せて意匠性であるポリオキシメチレン樹脂成形体の外観を評価し、強度評価を行い、かつ耐久性として耐候変色及びクリープ特性を評価した。
評価結果を、下記表3、表4に示した。
【0065】
(ポリオキシメチレン樹脂成形体の生産性の評価)
ポリオキシメチレン樹脂成形体の生産性の評価を、以下のポリオキシメチレン樹脂組成物の生産性とポリオキシメチレン樹脂成形体の外観評価により行った。
<ポリオキシメチレン樹脂組成物の生産性評価>
ポリオキシメチレン樹脂組成物の生産性評価は、押出機のトルクを24アンペアで一定となるように調整して造粒したときの、ポリオキシメチレン樹脂組成物の単位時間当たりの平均造粒量、ストランドの状態、並びにペレットの外観及び臭気により、総合的に行った。
評価基準としては、市販されている一般中粘度ポリオキシメチレン樹脂(テナックC4520)をポリオキシメチレン樹脂(A)の代わりに用いて押出し機に通したとき(P0)の生産性評価と比較して、以下のように規定した。
以下の評価基準に従って、ポリオキシメチレン樹脂組成物の生産性評価を行った。
評価基準
○:旭化成ケミカルズ(株)製テナック(登録商標)C4520を用いた生産性に比して、良好の場合
◇:旭化成ケミカルズ(株)製テナック(登録商標)C4520を用いた生産性と同等のレベルであった場合
△:旭化成ケミカルズ(株)製テナック(登録商標)C4520を用いた生産性に比して、若干低下した場合
×:旭化成ケミカルズ(株)製テナック(登録商標)C4520を用いた生産性に比して、大きく低下した場合
なお、上記「良好」とは、テナックC4520を用いた場合と比較し、単位時間当たりの平均造粒量の増加が10%以上であった状態を言う。
また、上記「同等」とは、テナックC4520を用いた場合と比較し、単位時間当たりの平均造粒量の増加及び低下が10%未満であった状態を言う。
上記「若干低下」とは、テナックC4520を用いた場合と比較し、単位時間当たりの平均造粒量の低下が10%以上30%未満である、又は得られたペレットに多くの切粉や臭気が確認されるようなペレットの品位の低下が確認された状態を言う。
上記「大きく低下」とは、テナックC4520を用いた場合と比較し、単位時間当たりの平均造粒量の低下が30%以上である、又はストランドにフクレや切れがあり安定して巻き取りができなかった、又はペレットの品位が大きく低下した状態を言う。
【0066】
<ポリオキシメチレン樹脂成形体の外観評価>
ポリオキシメチレン樹脂成形体のウェルド部とその周辺部分を中心に、ポリオキシメチレン樹脂成形体全体の外観を目視にて確認し総合的に評価を行った。
評価はポリオキシメチレン樹脂成形体のサンプル数N=3で行った。
評価基準
○:色ムラがなく、光沢や平滑性が良好の場合
◇:色ムラがなく、若干光沢や平滑性が低下する場合
△:色ムラや曇り、フローマークが確認されたり、光沢性や平滑性が低下したりする場合
×:色ムラや肌荒れ、フローマークが著しい場合
【0067】
(ポリオキシメチレン樹脂成形体の強度評価)
ポリオキシメチレン樹脂成形体の強度評価は、万能試験機(島津製作所(株)社製オートグラフAGS−X)により、試験速度50mm/minで、
図12に示すように矢印方向に力を加えて強度試験を行ったときの最大発生荷重を断面積で除して算出した応力により評価を行った。
詳細には、ポリオキシメチレン樹脂成形体の強度評価は、万能試験機(島津製作所(株)社製オートグラフAGS−X)により、
図12に示すように試験速度50mm/minで矢印方向に力を加えて引張試験により行った。例えば
図10に示す成形体を用いた場合、図中上部(A側)と下部(A’側)の全体をチャックで掴み、上下に引張り、このとき得られた最大発生荷重(N)を試験前の成形体の中央部断面積(3×30×2=180mm
2)で除して算出した応力(Pa)を用いて評価を行った。
評価はポリオキシメチレン樹脂成形体のサンプル数N=3で行い、その平均をとった。
評価基準
◎:旭化成ケミカルズ(株)製テナック(登録商標)C4520を用いた場合(P0)より応力が10%以上向上した場合
○:旭化成ケミカルズ(株)製テナック(登録商標)C4520を用いた場合(P0)より応力が5%以上10%未満向上した場合
◇:旭化成ケミカルズ(株)製テナック(登録商標)C4520を用いた場合(P0)と同等の応力であった(58MPaより5%未満向上したか、10%未満低下した)場合
△:旭化成ケミカルズ(株)製テナック(登録商標)C4520を用いた場合(P0)より応力が10%以上低下した場合
【0068】
(ポリオキシメチレン樹脂成形体の耐久性評価)
ポリオキシメチレン樹脂成形体の耐久性の評価は、以下の耐光耐久性評価とクリープ耐久性評価により行った。
<ポリオキシメチレン樹脂成形体の耐光耐久性の評価>
ポリオキシメチレン樹脂成形体の耐光耐久性の評価を、アイスーパーUVテスター(登録商標)(岩崎電気(株)製SUV−W151)により、放射照度1000W/m
2(300〜400nm)、ブラックパネル温度63℃、湿度50%RHで50時間照射を行い、ポリオキシメチレン樹脂成形体のウェルド部とその周辺部分を中心に、ポリオキシメチレン樹脂成形体全体の外観変化の評価を行った。
評価はポリオキシメチレン樹脂成形体のサンプル数N=3で行った。
評価基準
◎:光沢低下や退色などの外観変化がほとんど確認されなかった場合
○:旭化成ケミカルズ(株)製テナック(登録商標)C4520を用いた場合(P0)より、光沢低下や退色などの外観変化が少なかった場合
◇:旭化成ケミカルズ(株)製テナック(登録商標)C4520を用いた場合(P0)と、同等の外観変化であった場合
△:旭化成ケミカルズ(株)製テナック(登録商標)C4520を用いた場合(P0)より、光沢や退色などの外観変化が大きかった場合
【0069】
<ポリオキシメチレン樹脂成形体のクリープ耐久性評価>
ポリオキシメチレン樹脂成形体の機械的耐久性の評価を、全自動クリープ試験機((株)東洋精機社製クリープ試験機C200−6)を用い、
図12に示すように、120℃で矢印方向に応力6MPaの負荷を与えて試験を行った。
このときの破壊時間(伸び切り又は破断)で評価をした。
評価はポリオキシメチレン樹脂成形体のサンプル数N=3で行い、その平均をとった。
評価基準
◎:旭化成ケミカルズ(株)製テナック(登録商標)C4520を用いた場合(P0)より破壊時間が50%以上向上した場合
○:旭化成ケミカルズ(株)製テナック(登録商標)C4520を用いた場合(P0)より破壊時間が20%以上50%未満向上した場合
◇:旭化成ケミカルズ(株)製テナック(登録商標)C4520を用いた場合(P0)と同等の破壊時間であった(50時間より20%未満向上したか、20%未満低下した)場合
△:旭化成ケミカルズ(株)製テナック(登録商標)C4520を用いた場合(P0)より破壊時間が20%以上低下した場合
【0070】
〔実施例1〜3、比較例1、参考例〕
表3に示すポリオキシメチレン樹脂組成物を用い、表3に示す製造条件に従い、
図10(a)〜(c)に示す形状のポリオキシメチレン樹脂成形体(S−1)を製造した。
なお、
図10(a)は成形体(S−1)の概略正面図を示し、
図10(b)は概略側面図を示し、
図10(c)は一点鎖線A−A’における概略断面図を示す。
実施例1〜3、比較例1、参考例のポリオキシメチレン樹脂成形体の評価結果を表3に示す。
これらの評価結果より、本実施形態が規定するウェルド部とその周辺部分の色差とし、好ましいウェルド部の幅とすることにより、ポリオキシメチレン樹脂成形体は意匠性を改善し実用上十分な生産性を維持し耐久性を高めることができることがわかった。
【0071】
〔比較例2、3〕
比較例2、3においては、それぞれ、
図13(a)〜(c)、
図14(a)〜(c)に示すような、ウェルド部の周辺部分の厚みが0.2mm、10mmのポリオキシメチレン樹脂成形体(S−2)、(S−3)を製造した。
なお、
図13(a)は成形体(S−2)の概略正面図を示し、
図13(b)は概略側面図を示し、
図13(c)は一点鎖線A−A’における概略断面図を示す。
また、
図14(a)は成形体(S−3)の概略正面図を示し、
図14(b)は概略側面図を示し、
図14(c)は一点鎖線A−A’における概略断面図を示す。
比較例2、3のポリオキシメチレン樹脂成形体の評価結果を表3に示す。
ポリオキシメチレン樹脂成形体(S−2)は、成形体の充填が十分でなく製造が困難であった。
実施例2、比較例2、3、参考例の評価結果より、本実施形態が規定する最薄部の厚さとすることにより、ポリオキシメチレン樹脂成形体は意匠性を改善し、実用上十分な生産性を維持し、耐久性を高めることができることがわかった。
【0072】
〔実施例4〜6〕
実施例4、5においては、それぞれ、
図15(a)〜(c)、
図16(a)〜(c)に示すような、ポリオキシメチレン樹脂成形体(S−4)、(S−5)を製造した。
なお、
図15(a)は成形体(S−4)の概略正面図を示し、
図15(b)は概略側面図を示し、
図15(c)は一点鎖線A−A’における概略断面図を示す。
また、
図16(a)は成形体(S−5)の概略正面図を示し、
図16(b)は概略側面図を示し、
図16(c)は一点鎖線A−A’における概略断面図を示す。
実施例6は、
図10に示す成形体(S−1)と形状は同様だが、表面にシボ((株)棚沢八光社;シボパターンH−189、シボ深さ10μm)を施した金型を用いてポリオキシメチレン樹脂成形体(S−6)を製造した。
実施例4〜6のポリオキシメチレン樹脂成形体の評価結果を表3に示す。
実施例2、4〜6、参考例の評価結果より、本実施形態の好ましい形状とすることにより、ポリオキシメチレン樹脂成形体は、意匠性を改善し、実用上十分な生産性を維持し、耐久性を高めることができる傾向にあることがわかった。
【0073】
〔実施例7〜10〕
実施例7〜10においては、表3に示すポリオキシメチレン樹脂組成物を用い、表3に示す製造条件に従い、
図10(a)〜(c)に示す形状のポリオキシメチレン樹脂成形体(S−1)を製造した。
実施例7〜10のポリオキシメチレン樹脂成形体の評価結果を表3に示す。
実施例2、7〜10、参考例の評価結果より、ゲートを通過する溶融樹脂の射出速度を本実施形態の好ましい範囲にすることで、ポリオキシメチレン樹脂成形体は、意匠性を改善し、実用上十分な生産性を維持し、耐久性を高めることができる傾向にあることがわかった。
【0074】
〔実施例11、12、比較例4〕
実施例11、12、比較例4においては、表3に示すポリオキシメチレン樹脂組成物を用い、表3に示す製造条件に従い、
図10(a)〜(c)に示す形状のポリオキシメチレン樹脂成形体(S−1)を製造した。
実施例11、12、比較例4のポリオキシメチレン樹脂成形体の評価結果を表3に示す。
実施例2、11、12、比較例4、参考例の評価結果より、成形時の保圧力を本実施形態の好ましい範囲にすることで、ポリオキシメチレン樹脂成形体は、意匠性を改善し、実用上十分な生産性を維持し、耐久性を高めることができる傾向にあることがわかった。
【0075】
〔実施例13〜17〕
実施例13〜17においては、表4に示すポリオキシメチレン樹脂組成物を用い、表4に示す製造条件に従い、
図10(a)〜(c)に示す形状のポリオキシメチレン樹脂成形体(S−1)を製造した。
実施例13〜17のポリオキシメチレン樹脂成形体の評価結果を表4に示す。
実施例2、13〜17、参考例の評価結果より、本実施形態の好ましい外観改良剤種及び外観改良剤の濃度としたポリオキシメチレン樹脂組成物で構成されたポリオキシメチレン樹脂成形体は、意匠性を改善し、実用上十分な生産性を維持し、耐久性を高めることができる傾向にあることがわかった。
【0076】
〔実施例18〜21〕
実施例18〜21においては、表4に示すポリオキシメチレン樹脂組成物を用い、表4に示す製造条件に従い、
図10(a)〜(c)に示す形状のポリオキシメチレン樹脂成形体(S−1)を製造した。
実施例18〜21のポリオキシメチレン樹脂成形体の評価結果を表4に示す。
実施例2、18〜21、参考例の評価結果より、本実施形態の好ましい添加剤及び添加剤の濃度としたポリオキシメチレン樹脂組成物で構成されたポリオキシメチレン樹脂成形体は、意匠性を改善し、実用上十分な生産性を維持し、耐久性を高めることができる傾向にあることがわかった。
【0077】
〔実施例22、23〕
実施例22、23においては、表4に示すポリオキシメチレン樹脂組成物を用い、表4に示す製造条件に従い、
図10(a)〜(c)に示す形状のポリオキシメチレン樹脂成形体(S−1)を製造した。
実施例22、23のポリオキシメチレン樹脂成形体の評価結果を表4に示す。
実施例2、22、23、参考例の評価結果より、本実施形態の好ましいメルトフローレート(MFR)のポリオキシメチレン樹脂組成物で構成されたポリオキシメチレン樹脂成形体は、意匠性を改善し、実用上十分な生産性を維持し、耐久性を高めることができる傾向にあることがわかった。
【0078】
〔実施例24、25〕
実施例24、25においては、表4に示すポリオキシメチレン樹脂組成物を用い、表4に示す製造条件に従い、
図10(a)〜(c)に示す形状のポリオキシメチレン樹脂成形体(S−1)を製造した。
実施例24、25のポリオキシメチレン樹脂成形体の評価結果を表4に示す。
実施例2、24、25、参考例の評価結果より、本実施形態の好ましい結晶化開始温度(Cp)のポリオキシメチレン樹脂組成物で構成されたポリオキシメチレン樹脂成形体は、意匠性を改善し、実用上十分な生産性を維持し、耐久性を高めることができる傾向にあることがわかった。
【0079】
【表2】
【0080】
【表3】
【0081】
表3中、「◆」は、ウェルド部の確認が困難であることを示す。
また、「−」は、成形体の外観が悪く、ウェルド部周辺の色差及びウェルド幅の測定が不可能であったことを示す。
【0082】
【表4】