(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱可塑性ポリマーが、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリブチレンおよびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、ポリカーボネートおよびアミドのホモ−およびコポリマーから選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の材料。
エラストマー樹脂ベースが、フルオロカーボンまたはフルオロシリコーンエラストマー;無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸、アクリロニトリル(NBR)および/またはスチレン(SBR;SBS;SEBS)によって場合により官能化されている、ブタジエンのホモ−およびコポリマー;ネオプレン(またはポリクロロプレン);ポリイソブチレン(PIB);ポリイソプロピレン(PIP);ポリイソプレン;イソプレンと、スチレン、ブタジエン、アクリロニトリルおよび/またはメチルメタクリレートとのコポリマー;プロピレンおよび/またはエチレンに基づくコポリマー、エチレン、プロピレンおよびジエン(EPDM)に基づくターポリマー、およびさらにこれらのオレフィンとアルキル(メタ)アクリレートまたはビニルアセテートとのコポリマー;天然ゴム(NR);ハロゲン化ブチルゴム;シリコーンエラストマー);ポリウレタン(PU);C4、C5、C6、C8、C9またはC12オレフィンを含むプラストマー;ポリエステル;アクリル系ポリマー;およびこれらの変性または官能化誘導体、ならびにこれらのブレンドから選択されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の材料。
段階a)が、少なくとも2つの連続段階にて行われ、第1の段階により、2.5質量%から10質量%の炭素系ナノフィラーを含むプレ複合体をもたらし、第2の段階により、0.25質量%から3質量%の炭素系ナノフィラーを含むプレ複合体をもらすことを特徴とする、請求項5に記載の複合材料の調製方法。
段階c)に従うプレ複合体のポリマーマトリックスへの導入が、複合材料を形成するための機械にて直接、乾燥状態で行われることを特徴とする、請求項5から7のいずれか一項に記載の複合材料の調製方法。
自動車セクターまたは農地の保護のための農業分野における、光ファイバ導管、ケーブルの機械加工、廃水若しくは工業用水またはガス用のパイプ、押出または成形コーティング、射出成形、押出、圧縮または成形による製造品のために使用され得る、ヤーン、フィルム、チューブ、ファイバ、不織布、布地またはフェルトの製造における、
請求項1から4のいずれか一項に記載の複合材料の使用。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブ(またはCNT)は既知であり、炭素から得られた中空および閉じた管状形態を有する特定の結晶構造を有する。CNTは、一般に長手方向の軸の周りに同心円上に配列された1つ以上のグラファイトシートからなる。故に、シングルウォールナノチューブ(SWNT)とマルチウォールナノチューブ(MWNT)とは区別される。
【0003】
CNTは市販されているか、または既知の方法によって調製できる。幾つかの方法がCNTの合成に関して存在し、特に放電、レーザーアブレーションおよび化学気相成長法(CVD)がある。このCVD法は、具体的には、無機固体、例えばアルミナ、シリカまたはマグネシア上に支持された金属、鉄、コバルト、ニッケルまたはモリブデンからなり得る触媒上に相対的に高温で炭素供給源を注入することからなる。炭素供給源は、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、エタノール、メタノールを含むことができ、実際はさらに一酸化炭素および水素の混合物を含むことがある。
【0004】
機械的観点から、CNTは、極めて軽量であると同時に、鋼に匹敵する優れた剛性(ヤング率によって測定される。)の両方を示す。加えて、CNTは優れた電気伝導特性および熱伝導特性を示し、これにより種々の材料、特にマクロ分子材料、例えば熱可塑性ポリマー、エラストマーおよび他の熱硬化性ポリマーにこうした特性を付与するための添加剤として使用することが想定できる。
【0005】
しかし、CNTは、これらの小さいサイズ、これらの塵状性質および可能性としてCNTがCVD技術によって得られる場合にはこれらのもつれた構造のために、取扱いおよび分散が困難であることが判明しており、製造を改善し、残留アッシュ含有量を低減するために大量生産性を増大させることを所望する場合には、これらすべてが、一層あてはまる。ナノチューブ間の強いファンデルワールス相互作用の存在も、これらの分散性に有害であり、得られた複合材料の安定性にも有害である。
【0006】
CNTの不十分な分散性は、これらが導入されたポリマーマトリックスと共に形成される複合体の特徴に顕著な影響を与える。特にナノクラックの出現が観察されるが、これがナノチューブの凝集物において形成され、結果として複合体が脆化する。さらに、CNTの分散が不十分である限り、所与の電気伝導性および/または熱伝導性を達成するためにこれらの含有量を増大させる必要がある。
【0007】
このため今日では、CNTは、主にこれらの電気的特性のために相対的に高含有量、一般には0.5重量%以上で使用されている。
【0008】
ポリマーマトリックス中にCNTを導入する際の技術的な問題を考慮すると、これらの効果は完全に調査されていない。
【0009】
CNTが導入されるポリマーマトリックスの特徴に顕著な影響を与え得るCNTの不十分な分散性を克服するために、種々の解決策が最新の技術水準で提案されている。特に音波処理(しかし、これは一時的な作用のみである。)、または超音波処理(これはナノチューブを部分的に切断し、酸素を含む官能基を創出する作用があり、これらの特性の一部に影響を与え得る。)を挙げることができ、またはさらにCNTのグラフト化または官能化技術を挙げることができるが、一般に攻撃的条件下で行われるという欠点があり、ナノチューブを損傷、実際にはさらに破壊し得る。
【0010】
より最近では、最新の開発は、熱可塑性ポリマー、エラストマーまたは熱硬化性樹脂に基づくポリマーマトリックス中に、産業規模で効率良くおよび均質に分散された高含有量でのカーボンナノチューブを含むマスターバッチの調製に関するものである。例えばこうした方法を記載している出願人の会社の代理としての文書、EP1995274;WO2010/046606;WO2010/109118およびWO2010/109119を挙げることができる。
【0011】
高含有量のカーボンナノチューブを含むこれらのマスターバッチは、続いて容易に取り扱われることができ、次いでポリマーマトリックス中に希釈されて、複合部品の製造を目的とした低CNT含有量を有する完全に均質な複合材料を形成する。
【0012】
驚くべきことに、今般、炭素系ナノフィラー、例えばカーボンナノチューブをポリマーマトリックス中に、0.01重量%未満の極めて低含有量で組み込むことにより、これらの機械的特性、特にこれらの引張特性を改善でき、またはこれらの複合部品への転換中に新規な特性を付与できることを見出した。
【0013】
文書WO2004/097852、WO2005/015574およびWO03/085681には、ポリマーマトリックスおよび0.001%から50%の範囲に及び得る含有量でのカーボンナノチューブに基づく組成物が記載されている。これらは、ポリマーマトリックスに伝導性特性を付与することに関する。これらの教示において、0.01%未満の炭素系ナノフィラー含有量を有する複合材料の機械的特性を改善することは全く問題になっていない。
【発明を実施するための形態】
【0022】
複合材料
本発明に従う複合材料は、炭素系ナノフィラーおよびポリマー組成物を含む。ここで、これらの構成成分をより詳細に記載する。
【0023】
炭素系ナノフィラー
本発明によれば、炭素系ナノフィラーは、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、グラフェンまたはあらゆる割合におけるこれらの混合物から選択される。
【0024】
カーボンナノチューブは、シングルウォール、ダブルウォールまたはマルチウォールタイプであることができる。ダブルウォールナノチューブは、特にFlahaut et al.のChem.Comm.(2003),1442によって記載されるように、調製できる。マルチウォールナノチューブは、これらの一部に関して、文書WO03/02456に記載されるように調製できる。本発明によれば、特に出願人の会社の出願EP1980530に記載されるような、炭素供給源(好ましくは植物起源)の触媒分解による化学気相成長法(またはCVD)方法に従って得られるマルチウォールカーボンナノチューブが好ましい。
【0025】
ナノチューブは、通常、0.1から100nm、好ましくは0.4から50nm、さらに良好には1から30nm、実際にはさらに10から15nmの範囲の平均直径、および有利には0.1から10μmの長さを有する。これらの長さ/直径比は、好ましくは10を超え、一般に100を超える。これらの比表面積は、例えば100から300m
2/g、有利には200から300m
2/gであり、これらのバルク密度は、特に0.05から0.5g/cm
3、より好ましくは0.1から0.2g/cm
3であることができる。マルチウォールナノチューブは、例えば5から15シート(またはウォール)、より好ましくは7から10シートを含む。これらのナノチューブは、処理されてもよく、または処理されなくてもよい。
【0026】
粗製カーボンナノチューブの例は、特に商品名Graphistrength(登録商標)C100の下でArkemaから市販されている。
【0027】
これらのナノチューブは、本発明に従う方法において使用される前に精製および/または処理できる(例えば酸化できる。)および/または官能化できる。
【0028】
ナノチューブは、可能性としての残留無機不純物および金属性不純物、例えばこれらの調製方法に由来する鉄を含まないように、硫酸の溶液で洗浄することによって精製できる。ナノチューブと硫酸との重量比は、特に1:2から1:3であることができる。精製操作はさらに、90から120℃の範囲の温度にて、例えば5から10時間行うことができる。この操作は、有利には、水ですすぐ段階および精製されたナノチューブを乾燥する段階が続き得る。代替の形態において、ナノチューブは、高温、通常は1000℃を超える熱処理によって精製できる。
【0029】
ナノチューブの酸化は、有利には0.5から15重量%のNaOCl、好ましくは1から10重量%のNaOClを含む次亜塩酸ナトリウム溶液と、例えば1:0.1から1:1の範囲のナノチューブと次亜塩素酸ナトリウムとの重量比にて接触させることによって行われる。酸化は、有利には、60℃未満の温度、好ましくは周囲温度にて、数分から24時間の範囲の期間行われる。この酸化操作は、有利には、酸化ナノチューブの濾過および/または遠心分離、洗浄および乾燥する段階が続き得る。
【0030】
ナノチューブは、反応性ユニット、例えばビニルモノマーを、ナノチューブの表面にグラフトすることによって官能化できる。ナノチューブの構成材料は、表面から酸素を含む基を除去することを目的とする、無水の、酸素を含まない媒体中、900℃を超える熱処理に供された後にラジカル重合開始剤として使用される。故に、特にPVDFへのこれらの分散を促進する観点で、カーボンナノチューブの表面において、メチルメタクリレートまたはヒドロキシエチルメタクリレートを重合することができる。
【0031】
本発明において、粗製ナノチューブ、即ち酸化も精製も官能化もされておらず、いずれかの他の化学処理および/または熱処理に供されてもいないナノチューブを使用できる。代替形態において、精製されたナノチューブ、特に高温での熱処理によって精製されたナノチューブを使用できる。さらに、カーボンナノチューブがミル加工されていないことが好ましい。
【0032】
カーボンナノファイバは、カーボンナノチューブと同様に、炭素系供給源から化学気相成長法(即ちCVD)によって製造されたナノフィラメントであり、これは500から1200℃の温度にて、水素の存在下、遷移金属(Fe、Ni、Co、Cu)を含む触媒上で分解される。しかし、これら2つの炭素系フィラーは、これらの構造が異なる(I.Martin−Gullon et al.,Carbon,44(2006)1572−1580)。これは、カーボンナノチューブが、10から100nmの直径を有するシリンダを形成するために繊維の軸の周りに同心円状に巻き付けた1つ以上のグラフェンシートからなるためである。対照的に、カーボンナノファイバは、相対的に組織化されたグラファイト領域(または乱層スタック)を含み、この平面は、繊維の軸に対して変動性の角度で傾斜している。これらのスタックは、一般に100nmから500nm、実際にはさらにこれ以上の範囲の直径を有する構造を形成するために、スタックされたプレートレット、フィッシュボーンまたはディッシュの形態をとることができる。
【0033】
100から200nm、例えば約150nm
の直径、
および有利には100から200μmの長さを有するカーボンナノファイバ(昭和電工株式会社からのVGCF(登録商標))の使用が好ましい。
【0034】
用語「グラフェン」は、平坦で、単離され、分離したグラファイトシートだけでなく、さらに1つのシートから数十個までのシートを含み、平坦または相対的に起伏した構造を示すアセンブリを示す。グラフェンのそれぞれのシートは、sp
2タイプのC−C結合を介して互いに結合した炭素原子で形成され、2次元の六角形ネットワークを形成する。
【0035】
一般に、本発明に使用されるグラフェンは、15nm未満の厚さ、およびこの0.1μmから500μmの厚さに実質的に垂直な少なくとも1つの側部方向の寸法を示し、1から50個のシートを含むナノメートルサイズの固体粒子の形態で提供され、このシートは、例えば超音波を用いる処理の間、独立シートの形態で互いに分離できる。
【0036】
本発明の好ましい実施形態によれば、炭素系ナノフィラーは、カーボンナノチューブ、好ましくは化学気相成長法に従って得られたマルチウォールカーボンナノチューブを、単独でまたはグラフェンとの混合物として含む。
【0037】
本発明の複合材料の炭素系ナノフィラーの量は、0.1ppmから99ppm、好ましくは1ppmから95ppmである。
【0038】
ポリマー組成物
本発明によれば、ポリマー組成物は、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを、単独でまたはエラストマー樹脂ベースとのブレンドとして含むポリマーマトリックスを含む。
【0039】
用語「熱可塑性ポリマー」は、本発明の意味の範囲内において、加熱時に溶融し、溶融状態で成形および再成形され得るポリマーを意味すると理解される。
【0040】
この熱可塑性ポリマーは、特に:オレフィンのホモ−およびコポリマー、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリブチレンおよびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー;アクリル性ホモ−およびコポリマーおよびポリ(アルキル(メタ)アクリレート)、例えばポリ(メチルメタクリレート);ホモ−およびコポリアミド;ポリカーボネート;ポリ(エチレンテレフタレート);ポリ(ブチレンテレフタレート);ポリエーテル、例えばポリ(フェニレンエーテル)、ポリ(オキシメチレン)およびポリ(オキシエチレン)またはポリ(エチレングリコール);ポリスチレン;スチレンおよび無水マレイン酸のコポリマー;ポリ(ビニルクロライド);フルオロポリマー、例えばポリ(ビニリデンフルオライド)、ポリテトラフルオロエチレンおよびポリクロロトリフルオロエチレン;天然または合成ゴム;熱可塑性ポリウレタン;ポリアリールエーテルケトン(PAEK)、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)およびポリエーテルケトンケトン(PEKK);ポリエーテルイミド;ポリスルホン;ポリ(フェニレンスルフィド);セルロースアセテート;ポリ(ビニルアセテート);およびこれらのブレンドから選択される。
【0041】
本発明の1つの好ましい実施形態によれば、ポリマーは、オレフィンのホモ−およびコポリマー、特にポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリブチレンおよびアクリロニトリル−ブタジエン−スチレンコポリマー、ポリカーボネートおよびアミドのホモ−およびコポリマー、例えばポリアミド6、6.6、6.10、6.12、11、12、10.10、12.12、4.6から選択される。
【0042】
本発明によれば、ポリマー組成物は、エラストマー樹脂ベースとのブレンドとしての熱可塑性ポリマーを含むことができる。用語「エラストマー樹脂ベース」は、本説明において、有機またはシリコーンポリマーを意味することが理解され、これは加硫後に、実質的に可逆性様式において高い歪に耐えることができるエラストマーを形成し、即ち有利には、周囲温度(23℃)において、5分間この元々の長さの少なくとも2倍の一軸歪に供され、次いで応力が解放されたらこの初期サイズに戻る傾向があり、残留歪はこの初期サイズの10%未満である。
【0043】
構造上の観点から、エラストマーは、一般に互いに連結したポリマー鎖からなり、三次元ネットワークを形成する。より詳細には、ポリマー鎖が物理的結合、例えば水素または双極子−双極子結合を介して互いに連結される熱可塑性エラストマーは、化学架橋点を構成する共有結合を介して鎖が連結される熱硬化性エラストマーとは区別されることもある。これらの架橋点は加硫剤を使用する加硫方法によって形成され、この加硫剤は、例えばエラストマーの性質に依存して、ジチオカルバメート金属塩の存在下での硫黄系加硫剤;ステアリン酸と組み合わせた酸化亜鉛;塩化スズまたは酸化亜鉛の存在下での、場合によりハロゲン化された二官能性フェノール/ホルムアルデヒド樹脂;過酸化物;アミン;白金の存在下でのヒドロシランなどから選択できる。
【0044】
本発明は、より詳細には、場合により未反応性エラストマー、即ち非加硫性エラストマー(例えば水素化ゴム)との混合物としての熱硬化性エラストマーを含むまたはこれらからなるエラストマー樹脂ベースに関する。
【0045】
本発明に従って使用できるエラストマー樹脂ベースは、特に、これらのリストに限定されないが、以下から選択される1つ以上のポリマーを含むことができ、実際さらにこれらからなることができる:フルオロカーボンまたはフルオロシリコーンエラストマー;場合により不飽和モノマー、例えば無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸、アクリロニトリル(NBR)および/またはスチレン(SBR;SBS;SEBS)によって官能化されるブタジエンのホモ−およびコポリマー;ネオプレン(またはポリクロロプレン);ポリイソブチレン(PIB);ポリイソプロピレン(PIP);ポリイソプレン;イソプレンと、スチレン、ブタジエン、アクリロニトリルおよび/またはメチルメタクリレートとのコポリマー;プロピレンおよび/またはエチレンに基づくコポリマーおよび特にエチレン、プロピレンおよびジエンのターポリマー(EPDM)、さらにこれらのオレフィンと、アルキル(メタ)アクリレートまたはビニルアセテートとのコポリマー;天然ゴム(NR);ハロゲン化ブチルゴム;シリコーンエラストマー、例えばビニル末端を有するポリ(ジメチルシロキサン);ポリウレタン(PU);C
4、C
5、C
6、C
8、C
9またはC
12オレフィンを含むプラストマー;ポリエステル;アクリル酸ポリマー、例えばカルボン酸またはエポキシ官能基を保持するポリ(ブチルアクリレート);およびこれらの改質または官能化誘導体およびこれらのブレンド。
【0046】
本発明によれば、エラストマー樹脂EPDM、SBR、SBS、SEBS、NBR、NR、PIB、PIPまたはPU、もしくはC
4、C
5、C
6、C
8、C
9またはC
12プラストマーまたはあらゆる割合におけるこれらのブレンドを使用するのが好ましい。
【0047】
本発明の好ましい実施形態によれば、ポリマー組成物は、単独で使用される少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含む。
【0048】
本発明によれば、非常に低含有量の炭素系ナノフィラーを組み込むことにより、ポリマー組成物を伝導性にできるのではなく、想定される用途に必要とされる機械的特性を達成できる。
【0049】
他の構成要素
上述の構成要素に加えて、本発明に従う複合材料は、特に非ポリマー性添加剤またはポリマー性添加剤から選択される他の添加剤を含むことができる。
【0050】
場合により本発明に従う複合材料に含まれる非ポリマー性添加剤は、特に、非ポリマー性可塑剤、界面活性剤、例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、無機フィラー、例えばシリカ、二酸化チタン、タルクまたは炭酸カルシウム、UV遮断剤、特に二酸化チタンに基づくもの、難燃剤、ポリマーのための溶媒、熱または光安定剤、特にフェノールまたはホスファイトに基づくものおよびこれらの混合物を含む。
【0051】
ポリマー性添加剤として、分散化または可塑化ポリマー、特にポリマーマトリックス中のナノフィラーの分散を改善する分散ポリマーを挙げることができる。
【0052】
分散剤の化学的性質は、炭素系ナノフィラーによって強化されるべきポリマーマトリックスの化学的性質に依存する。例えば分散剤として、環状ブチレンテレフタレートオリゴマー(特にCyclicsからのCBT(登録商標)100樹脂)、天然ワックス、合成ワックス、ポリオレフィンワックス、脂肪酸およびこれらの誘導体、エステル/アミド、ケン化脂肪酸、ステアリン酸亜鉛、酸のソルビタンエステル、グリセロールエステル、有機酸の誘導体、オルガノシランの有機部分、例えばアミノシラン、(Struktol(登録商標)SCA1100)クロロプロピルシラン(Struktol(登録商標)SCA930)、エポキシシラン(Struktol(登録商標)SCA960)、メタクリロイルオキシシラン(Struktol(登録商標)SCA974)またはビニルシラン(Struktol(登録商標)SCA971およびSCA972)、グラフト化ポリマー(ポリマー−G−MAH、ポリマーG−GMA)、チタネートおよびジルコネート(Tyzor)、シルセスキオキサンオリゴマー(POSS)、分岐添加剤およびポリマー(商品名Boltorn H20、H30、H40、H20、H30、H40、S1200、D2800、P/S801200、DEO7508500、H1500、H/S801700、HV2680、P1000、PS1925、PS2550、H311、H2004、P500、P1000、W3000、U3000など、DSM Hybraneとして販売される。)、BYK−C8000(Byk Company製)などを挙げることができる。
【0053】
調製方法
本発明に従う、ポリマー組成物、およびカーボンナノチューブ、カーボンナノファイバ、グラフェンまたはあらゆる割合におけるこれらの混合物から選択される炭素系ナノフィラーを含む複合材料の調製方法をここでより詳細に記載する。
【0054】
この方法は、a)0.25%から3%の炭素系ナノフィラーを含むプレ複合体を得るために、ポリマーマトリックスに炭素系ナノフィラーが濃縮されているマスターバッチを希釈する第1の段階を含む。
【0055】
用語「炭素系ナノフィラーに濃縮されたマスターバッチ」は、熱可塑性ポリマー、エラストマー樹脂ベースおよび/または分散化ポリマーに基づくポリマーマトリックスに分散した5%から50%の炭素系ナノフィラー、特にカーボンナノチューブを含むマスターバッチを意味すると理解される。
【0056】
使用できるマスターバッチのうち、例えば特にCM12−30、CM13−30、CM1−20、CM2−20、CM3−20、CM6−20およびCM7−20等級において市販されている出願人の会社のGraphistrength(登録商標)CM等級を挙げることができる。
【0057】
希釈段階は、コンパウンドデバイスにおいて混錬によって行われることができ、結果として、0.25%から3%の炭素系ナノフィラーを含むプレ複合体を直接得る。
【0058】
代替形態において、希釈段階は、分散を精錬するために少なくとも2つの連続段階で行われ、第1の段階により、2.5質量%から10質量%、好ましくは2.5質量%から5質量%の炭素系ナノフィラーを含むプレ複合体をもたらし、第2の段階により、0.25質量%から3質量%の炭素系ナノフィラーを含むプレ複合体をもたらす。
【0059】
この代替形態によれば、分散物内の炭素系ナノフィラーのアグロメレーションのリスクを回避しながら、分散物中の非常に低含有量のナノフィラーを正確に得ることができる。
【0060】
用語「コンパウンドデバイス」は、本説明において、プラスチック産業で従来から使用されている器具を意味することが理解される。この器具において、ポリマー組成物およびマスターバッチは、高剪断デバイス、例えば同方向に回転するまたは反対方向に回転するツインスクリューを含む押出機または共混錬機を用いてブレンドされる。
【0061】
本発明に従って使用できる共混錬機の例は、Buss(登録商標)MDK46共混錬機およびBuss(登録商標)MKSまたはMXシリーズ(Buss AGが販売)であり、これらはすべてフライトを備えたスクリューシャフトを有し、これは幾つかの部品から場合によりなる加熱バレルに配置され、この内壁は、フライトと相互作用できる混錬ティースを備え、混錬された材料を剪断する。シャフトを回転させ、モーターによって軸方向の振動運動を与える。これらの共混錬機は、例えばこれらの出口オリフィスに適合されることができ、押出スクリューまたはポンプからなることができる顆粒製造用のシステムを備えることができる。
【0062】
本発明に従って使用できる共混錬機は、好ましくは7から22、例えば10から20の範囲のスクリューL/D比を有する一方で、同方向に回転する押出機は、有利には15から56、例えば20から50の範囲のL/D比を有する。
【0063】
コンパウンドデバイスとしては、特にポリマーマトリックスが固体エラストマー樹脂ベースを含む場合に、ロール(2つまたは3つのロール)ミキサまたはミルを使用できる。
【0064】
本発明に従う方法の段階a)によれば、濃縮されたマスターバッチおよびポリマーマトリックスのコンパウンドデバイスへの導入は、種々の方法で、2つの別個の導入手段で同時にまたはミキサの1つおよび同じフィードゾーンで連続的に行われることができる。
【0065】
ポリマーマトリックスは、濃縮されたマスターバッチを構成するポリマーマトリックスと同じ性質を有することができる。代替の形態において、濃縮されたマスターバッチは、分散剤を含み、ポリマーマトリックスは、濃縮されたマスターバッチを構成するポリマーマトリックスとは異なり得る。
【0066】
段階a)が完了したら、プレ複合体が、場合によりアグロメレートされた固体の物理的形態、例えば顆粒の形態またはミル加工された粉末またはロッド、ストリップもしくはフィルムの形態に変換され得る(段階b)。
【0067】
本発明に従う方法の段階c)によれば、プレ複合体は、熱可塑性ポリマーから選択される少なくとも1つのポリマーを、単独でまたは上記で記載されるようなエラストマー樹脂ベースとのブレンドとして含むポリマーマトリックスに組み込まれる。
【0068】
段階c)は、いずれかの従来のデバイスを用いて、特に内部ミキサまたはロール(2つまたは3つのロール)を用いて行うことができる。ポリマーマトリックスに導入されるプレ複合体の量は、得られた複合材料に所望される機械的特性を得るためにこのマトリックスに添加されることが所望される炭素系ナノフィラーの含有量に依存する。
【0069】
このポリマーマトリックスは、マスターバッチの製造にまたはプレ複合体の調製に使用されたものと同一である(または異なる)ことができる少なくとも1つのポリマー、および場合により種々の添加剤、例えば潤滑剤、顔料、安定剤、フィラーまたは補強剤、静電防止剤、防カビ剤、難燃剤、溶媒、発泡剤、レオロジー調整剤およびこれらの混合物を含む。
【0070】
得られた複合材料は、いずれかの適切な技術に従って、特に射出成形、押出、圧縮または成形、続いてポリマーマトリックスがエラストマー樹脂ベースを含む場合には加硫または架橋処理によって形成できる。
【0071】
代替形態において、段階c)に従うプレ複合体のポリマーマトリックスへの導入は、複合材料を形成するための機械、例えば射出成形デバイスに直接乾燥した状態で行われることができる。
【0072】
本発明に従うまたは本発明の方法に従って得ることができる複合材料は、改善された機械的特性、特に改善された引張特性を示す。
【0073】
0.1ppmから100ppm未満の低含有量での炭素系ナノフィラーの存在が、複合部品(繊維、フィルム、対象物など)の製造中に、これらの機械的特性に影響を与えることなく、ポリマーマトリックスの静電消散能を改善し、故に目的とする使用のために、これらをより容易に形成できる。加えて、炭素系ナノフィラーの存在が、本発明に従う複合材料から得られる最終製品の見栄えを、特に体裁、表面外観および光学的品質の観点において実質的に改善する。
【0074】
非限定であり、例示としてだけの以下の実施例に照らして本発明の理解を深める。
【実施例】
【0075】
[実施例1]:ポリプロピレンの機械的特性に対するCNTの効果
樹脂中に完全に分散した30%のCNT(MWNT)を含むArkemaからのGraphistrength(登録商標)CM12−30を使用した。
【0076】
0.5質量%のCNTを含むプレ複合体を得るためにBuss共混錬機を用いて、Graphistrength(登録商標)CM12−30をPPHポリプロピレン(20のMFIを有する。)中に分散させた。この分散物は2段階で製造されたが、第1段階は10%のCNTを含むプレ複合体をもたらし、第2段階では、20倍までPPH中に希釈することからなっていた。0.5%のCNTを含むプレ複合体を、重量で25ppm、50ppmおよび95ppmのCNTを含む複合材料(それぞれ複合体1、複合体2および複合体3と示され、これらは6×6×0.3cmのプレート、バーおよびダンベルの形態で提供される。)を得るために、複合生成物を注入することによって、形成ユニットにおいて乾燥状態で直接PPH(MFI20)で希釈した。
【0077】
これらの複合生成物を、Standard ISO572−2に従う引張試験に供したが、この試験は、CNTを含まないPPHの場合の機械的特性と比較するために、50mm/分の速度でMTS引張試験デバイスにて小さいダンベルH1から開始した。
【0078】
これらの試験の結果を以下の表1に並べる。
【0079】
【表1】
【0080】
周囲温度でのPPHの引張特性における強力な改善が、非常に低含有量のCNTに関して見出される。
【0081】
[実施例2]:押出方法における静電気に対するCNTの効果
ポリエチレン中に0.3%のCNTを含むプレ複合体を、PE中に2.5%のCNTを含むマスターバッチから、PEフィルムの製造用の押出機において配合及び95ppmで計量することによって調製した。
【0082】
400〜450W/m
2から、5〜9W/m
2のオーダーの値までの静電気の低下が観察されたが、これは、器具および人の安全レベルを大きく改善し、複合部品または対象物の製造中における、静電放電のための他のシステムの使用を不要にする。