【実施例】
【0195】
以下の実施例は、特許請求される本発明をよりよく例示するために提供されるものであり、本発明の範囲を限定するものとして解釈すべきではない。具体的な材料が言及される程度において、単に例示を目的とするものであり、本発明を限定することを意図するものではない。当業者は、発明能力の行使を伴わず、かつ、本発明の範囲から逸脱することなく、同等の手段または反応物質を開発することができる。
【0196】
(実施例1)
マウス抗BDCA2抗体の重鎖および軽鎖のクローニング
24F4マウスハイブリドーマ(IgG1、κ)は、全長ヒトBDCA2 cDNAおよびFcεRIγ cDNAを共発現させる哺乳動物用の発現ベクターである、プラスミドpEAG2456を用いての遺伝子銃により免疫したBalb/cマウスから導出した。(実施例17を参照されたい)。
【0197】
製造業者の推奨プロトコールに従い、Qiagen RNeasy miniキットを使用して、24F4マウスハイブリドーマ細胞に由来する細胞内全RNAを調製した。プライミングのためにランダムヘキサマーを使用する、製造業者の推奨プロトコールに従い、GE Healthcare First Strand cDNA Synthesisキットを使用して、RT−PCRにより、重鎖および軽鎖の可変領域をコードするcDNAを、細胞内全RNAからクローニングした。
【0198】
インタクトなシグナル配列を伴うマウス免疫グロブリン可変ドメインをPCR増幅するために、複数のマウス免疫グロブリン遺伝子ファミリーのシグナル配列とハイブリダイズする縮重フォワードプライマーのカクテルと、Current Protocols in Immunology(Wiley and Sons、1999年)において記載されているマウス定常ドメインの5’端に特異的な単一のバックプライマーとを使用した。24F4重鎖可変ドメインは、以下のプライマー:5' ACT AGT CGA CAT GRA CTT TGG GYT CAG CTT GRT TT 3'(R=A/G、かつ、Y=C/T)(配列番号25)および5' AGG TCT AGA AYC TCC ACA CAC AGG RRC CAG TGG ATA GAC 3'(R=A/G、かつ、Y=C/T)(配列番号26)により増幅した。そのシグナル配列を伴う24F4軽鎖可変ドメインは、以下のプライマー:5' ACT AGT CGA CAT GGA GWC AGA CAC ACT CCT GYT ATG GGT 3'(W=A/T、かつ、Y=C/T)(配列番号27)および5' GCG TCT AGA ACT GGA TGG TGG GAG ATG GA 3'(配列番号28)により増幅した。
【0199】
製造業者の推奨プロトコールに従い、Qiagen Qiaquickゲル抽出キットを使用して、PCR産物をゲル精製した。精製されたPCR産物を、製造業者の推奨プロトコールに従い、それらのTOPOクローニングキットを使用して、Invitrogen製のpCR2.1TOPOベクターへとサブクローニングした。複数の独立のサブクローンに由来する(pYL647と命名された重鎖クローンおよびpYL651と命名された軽鎖クローンに由来する)インサートを配列決定して、コンセンサス配列を確立した。
【0200】
クローン間の配列の変動は、プライマーの縮重位置と一致した。可変ドメイン配列についてのBLAST解析により、それらの免疫グロブリンの実体(identity)が確認された。推定成熟軽鎖および成熟重鎖のN末端配列は、Edman分解データに由来する真正の24F4鎖のN末端配列とマッチする。クローニングされたBalb/c IgG1の重鎖cDNAおよびκ軽鎖cDNAから推定される定常ドメイン配列を、推定成熟可変ドメイン配列へと付加することによりアセンブルされた仮説的配列から推定されるインタクトな質量は、質量分析により決定される、精製ハイブリドーマに由来する24F4のインタクトな質量と一致した。
【0201】
マウス24F4重鎖可変ドメイン(VH)は、マウス亜群III(D)のメンバーである。CDR H1、CDR H2、およびCDR H3にこの順で下線を付した、マウス24F4成熟重鎖可変ドメインの配列を下記に示す:
【化5】
マウス24F4軽鎖可変ドメイン(VL)は、マウスκ亜群IIIのメンバーである。CDR L1、CDR L2、およびCDR L3にこの順で下線を付した、マウス24F4成熟軽鎖可変ドメインの配列を下記に示す:
【化6】
対合しないシステインは、上記のマウス24F4 VL配列のCDRL3内の残基95に存在する(Kabatによる命名法では、このCysは、残基91である)。
【0202】
(実施例2)
マウス24F4抗体のキメラ化
マウス24F4可変ドメインをコードするcDNAを使用して、mu24F4可変領域を、ヒトIgG1およびヒトκ定常領域へと連結したマウス−ヒトキメラ体(ch24F4)を発現させるためのベクターを構築した。
まず、PCRにより可変ドメインを操作して、5’側Kozak配列を付加して、ヒト配列および新たな制限部位を、ヒト免疫グロブリン定常ドメインへと融合させるためのFR4/定常ドメイン接合部に導入した。結果として得られるプラスミド内の可変領域cDNA配列は、DNA配列決定により確認した。プラスミドであるpYL647内の重鎖可変ドメインは、PCRのための鋳型として、プライマー5' GAT CCG CGG CCG CAC CAT GGA CTT TGG GTT CAG CTT G 3'(配列番号31)(NotI部位およびKozak配列を付加する)および5' GAT GGG CCC TTG GTG GAA GCT GCA GAG ACA GTG ACC AGA G 3'(配列番号32)(FR4/定常ドメイン接合部におけるヒトIgG1 CH1配列およびApaI部位を付加する)と共に使用し、0.45kbの断片を増幅し、これを精製し、Invitrogen pCRBluntIITOPOクローニングベクターへとサブクローニングすることから、pYL668を生成した。重鎖キメラ体を構築するために、24F4重鎖可変ドメイン構築物であるpYL668に由来する0.45kbのNotI−ApaI断片と、pEAG1325(配列が確認されたhuIgG1重鎖定常ドメインcDNA(IgG1のC末端リシン残基を遺伝学的に除去した)を含有するプラスミド)に由来する0.98kbのApaI−BamHI断片とを、発現ベクターであるpV90(その中の異種遺伝子の発現は、CMV−IEプロモーターおよびヒト成長ホルモンポリアデニル化シグナルにより制御され、それはdhfr選択マーカーを保有する;米国特許第7,494,805号を参照されたい)のベクター骨格へとサブクローニングして、発現ベクターであるpYL672を作製した。結果として得られるプラスミドであるpYL672内の重鎖cDNA配列は、DNA配列決定により確認した。pYL672によりコードされる、推定成熟ch24F4−huIgG1重鎖タンパク質配列を、下記に示す:
【化7】
また、ch24F4の、エフェクター機能が小さい非グリコシル形態も、24F4重鎖可変ドメイン構築物であるpYL668に由来する、0.45kbのNotI−ApaI断片と、pEAG2412(IgG1のC末端リシン残基を遺伝学的に除去した、配列が確認されたS228P/N299Q huIgG4/IgG1ハイブリッドの重鎖定常ドメインcDNAを含有するプラスミド)に由来する0.98kbのApaI−BamHI断片とを、発現ベクターであるpV90のベクター骨格へとサブクローニングし、プラスミドであるpYL670を生成することにより構築した。結果として得られるプラスミドであるpYL670内の重鎖cDNA配列は、DNA配列決定により確認した。pYL670によりコードされる、推定成熟agly ch24F4−huIgG4/G1ハイブリッド重鎖タンパク質配列を、下記に示す:
【化8】
プラスミドであるpYL651内のκ軽鎖可変ドメインは、PCRのための鋳型として、プライマー5' GAT CCG CGG CCG CCA CCA TGG AGA CAG ACA CAC TCC TG 3'(配列番号35)(5’側NotI部位およびKozak配列を付加する)および5' CCA CCG TAC GTT TGA TTT CCA GCT TGG TGC 3'(配列番号36)(FR4/定常ドメイン接合部におけるヒトκ定常ドメイン配列および3’側のBsiWI部位を付加する)と共に使用し、0.4kbの断片を増幅し、これを精製し、Invitrogen pCRBluntIITOPOクローニングベクターへとサブクローニングすることから、pYL669を生成した。プラスミドであるpYL669内の可変領域cDNA配列は、DNA配列決定により確認した。軽鎖キメラ体を構築するために、pYL669に由来する0.4kbのNotI−BsiWI軽鎖可変ドメイン断片と、プラスミドであるpEAG1572(配列が確認されたヒトκ軽鎖定常ドメインcDNAを含有する)に由来する0.34kbのBsiWI−BamHI断片とを、pV100(その中の異種遺伝子の発現は、CMV−IEプロモーターおよびヒト成長ホルモンポリアデニル化シグナルにより制御され、それはネオマイシン選択マーカーを保有する)のベクター骨格へとサブクローニングして、発現ベクターであるpYL671を作製した。結果として得られるプラスミドであるpYL671内の軽鎖cDNA配列は、DNA配列決定により確認した。pYL671によりコードされる、推定成熟ch24F4−ヒトκ軽鎖タンパク質配列を、下記に示す:
【化9】
【0203】
発現ベクター(ch24F4重鎖ベクターであるpYL670またはpYL672およびch24F4軽鎖ベクターであるpYL671)を、293−EBNA細胞へと共トランスフェクトし、トランスフェクトされた細胞を、抗体の分泌および特異性について試験した(空ベクター(および分子クローニングされた非関与mAbベクター)をトランスフェクトされた細胞を対照として用いた)。馴化培地についてのウェスタンブロット解析(抗ヒト重鎖抗体および抗ヒト軽鎖抗体により発色される)により、ch24F4をトランスフェクトされた細胞は、重鎖および軽鎖を合成し、効率的に分泌させることが示された。表面ヒトBDCA2への直接的なFACS結合により、ch24F4の特異性が確認された。希釈滴定FACSアッセイにより、ch24F4の両方の変異体の結合についてのEC50は、マウス24F4 mAbの、表面において発現したヒトBDCA2への直接結合によるEC50と同等であった。pYL672/pYL671およびpYL670/pYL671のそれぞれを伴う共トランスフェクションにより、ch24F4−huIgG1 κmAbおよびagly ch24F4−huIgG4/G1ハイブリッド κmAbを分泌する安定的なCHO細胞系を作製した。
【0204】
(実施例3)
キメラ24F4抗体のCDRL3内の対合しないシステイン残基の除去
露出したCDR内の、対合しないシステインは、産物の不均一性または不安定性をもたらしうるので、ch24F4の変異体であるC95SおよびC95Tを、ch24F4軽鎖の発現ベクタープラスミドであるpYL671を鋳型として使用する、部位特異的変異誘発により構築した。
【0205】
部位特異的変異誘発は、製造業者の推奨プロトコールに従い、Agilent製のQuikChange II変異誘発キットを使用して実施した。C95S変異体は、変異誘発プライマー5' GCA ACC TAT TAC TGT CAA CAA AGT AAT GAG GAT CCT CGG AC 3'(配列番号38)および新たなHincII部位を導入したその逆相補体を使用し、プラスミドであるpEAG2678を作製して構築した。C95T変異体は、変異誘発プライマー5' CAA CCT ATT ACT GTC AGC AAA CTA ATG AAG ATC CTC GGA CGT TCG 3'(配列番号39)およびBamHI部位を除去したその逆相補体を使用し、プラスミドであるpEAG2679を作製して構築した。変異させたプラスミドは、導入された制限部位の変化についてスクリーニングすることにより同定した。結果として得られるプラスミド内の全長軽鎖cDNA配列は、DNA配列決定により確認した。野生型のch24F4ならびにC95S変異体mAbおよびC95T変異体mAbは、pYL672およびpYL671、pEAG2678またはpEAG2679の共トランスフェクションにより、293E細胞内で一過性に発現させた。馴化培地は、トランスフェクションの2日後に採取した。両方の変異体の力価(Octetにより、抗ヒトFcチップ上でアッセイされた)も、野生型ch24F4の力価と同様であり、非還元型SDS−PAGEのウェスタンブロットは、野生型ch24F4 mAbと比べて、粗大な凝集または明らかなクリッピングを示さなかった。FACSによる表面BDCA2上の直接結合は、C95S変異体による結合についての見かけのEC50が、野生型ch24F4の見かけのEC50と同等であるのに対し、C95T変異体の結合についてのEC50は、数分の1であることを示した。ch24F4およびC95変異体mAbを含有する馴化培地を、Octetにより、ヒトBDCA2外部ドメインへの結合についてアッセイした。一過性にトランスフェクトされた細胞に由来する馴化培地に由来する抗体を、抗ヒトFcチップへと結合させ、次いで、単量体のhuBDCA2に、Octetチップ上を流動させて、結合および解離について試験した。野生型ch24F4およびC95S変異体についての、Octetによる結合反応速度および解離反応速度は同等であったが、C95T変異体の解離速度は、野生型ch24F4の解離速度より速かった。これらの結果に基づき、C95Sを、ヒト化24F4軽鎖CDRL3へと組み込んだ。
【0206】
(実施例4)
例示的なヒト化24F4重鎖およびヒト化24F4軽鎖
7つのヒト化(hu)24F4重鎖(huIGHV3−21
*01フレームワーク/24F4 VH CDR)およびそれらの対応するDNA配列の例を下記に示す。各重鎖内のCDR1、CDR2、およびCDR3には、その順に下線を付す。フレームワークの復帰変異は、小文字の太字体で示す。マウス24F4に由来するCDR残基に対する変化は、CDR配列内に影を付すことにより示す。可変重鎖のCDR1(CDR H1)を、Chothia定義に従い定義するが、これは、Kabat定義より5アミノ酸長く、CDR H1内の斜字体の残基により、Chothia CDR H1を形成する、さらなる5つのアミノ酸(すなわち、GFTFS(配列番号12))を確認する。可変重鎖ドメインの最N末端のアミノ酸(すなわち、変化形であるH0内、H1内、H2内、およびH3内のグルタミン酸、ならびに変化形であるH4内、H5内、およびH6内のアスパラギン酸)は、抗原に直接接触し、結合アフィニティーに影響を及ぼし得る。Kabatによる49位の埋もれた残基は、重鎖(変化形であるH0、H1、H2、およびH3におけるセリン;ならびに変化形であるH4、H5、およびH6におけるアラニン)のCDR2のコンフォメーションに影響を及ぼしうる。Kabatによる93位の残基は、重鎖−軽鎖間対合(変化形であるH0、H1、H2、およびH3におけるアラニン;ならびに変化形であるH4、H5、およびH6におけるトレオニン)に対する効果を及ぼしうる。マウス24F4のCDR H1、CDR H2、およびCDR H3と異なるCDR H1領域、CDR H2領域、およびCDR H3領域におけるアミノ酸残基に影を付す。
【化10-1】
【化10-2】
変化形であるH0〜H6のアミノ酸配列のアライメントを下記に示す:
【化11】
【0207】
3つのヒト化24F4軽鎖(huIGKV1−13
*02フレームワーク/24F4 VL CDR)およびそれらの対応するDNA配列の例を下記に示す。各軽鎖内のCDR1、CDR2、およびCDR3には、その順に下線を付す。全ての軽鎖におけるCys91を置換したSer91(Kabatの番号付けに従う)を強調する。可変軽鎖ドメインの最N末端のアミノ酸(すなわち、変化形であるL0内のアラニン、ならびに変化形であるL1およびL2内のアスパラギン酸)は、抗原に直接接触し、結合アフィニティーに影響を及ぼし得る。フレームワークの復帰変異は、小文字の太字体で示す。第1の変化形(L0)の含有する復帰変異は最も少なく、第3の変化形(L2)の含有する復帰変異は、最も多い(すなわち、「ヒト化」が最小限である)。
【化12】
変化形であるL0〜L2のアミノ酸配列のアライメントを下記に示す:
【化13】
【0208】
上記のヒト化VHアミノ酸配列およびヒト化VLアミノ酸配列は、潜在的なN結合グリコシル化部位またはAsn−Gly脱アミド化部位を含有しない。生殖細胞系列の配列では、VHドメインおよびVLドメインのいずれにおけるメチオニンも観察されており、表面に露出していないので、メチオニン酸化の危険性は最小限であると考えられる。
【0209】
タンパク質の溶解度は、それらのpIと相関しうる。デザインされた構築物のpIは、Bjellqvistら(Electrophoresis、14巻:1023〜31頁(1993年);Electrophoresis、15巻:529〜39頁(1994年))におけるアミノ酸のpKを使用して計算した。下記に示す値は、ヒトIgG1重鎖を使用して計算した。ヒト化抗体の各々のpIは、7を著明に上回り、したがって、中性のpHにおいて著明な陽性電荷を有することが期待される。表中の各数値は、完全組合せ抗体の計算されたpI値であり、括弧内に正味の電荷を記す。
分子 pIの計算値(正味の電荷)
キメラ24F4 6.94 (−2)
ヒト化H4L1 7.26 (0)
【0210】
(実施例5)
Hx/L1のBDCA2への結合
hu24F4重鎖およびhu24F4軽鎖の21の可能な変異体の全て(実施例4において記載されている)ならびにch24F4は、重鎖プラスミドと軽鎖プラスミドとの共トランスフェクションにより、293E細胞内で一過性に発現させた。hu24F4の全ての変化形は、ch24F4の力価(Octetの抗ヒトFcチップへの結合による、馴化培地中のmAbの定量化により決定される)を超える力価でアセンブルし、分泌させた。キメラ24F4 mAbおよびヒト化24F4 mAbについての非還元型SDS−PAGE解析のウェスタンブロットは、ch24F4と比べて、粗大な凝集または明らかなクリッピングの証拠を示さなかった。
【0211】
馴化培地は、全長BDCA2とFcεRIγ cDNA(ヒトまたはカニクイザル)とを共発現させる(関連する発現ベクターは、ヒトBDCA2/FcεRIγがpEAG2456であり、カニクイザルBDCA2/FcεRIγがpEAG2668である)、安定的にトランスフェクトされたDG44 CHO細胞についての直接結合FACSによりアッセイした。表面ヒトBDCA2または表面カニクイザルBDCA2への直接結合では、hu24F4変異体のH0シリーズ、H1シリーズ、およびH2シリーズについて、結合の完全な喪失が観察され、hu24F4変異体のH3シリーズについて、結合アフィニティーの有意な喪失が観察され、hu24F4変異体のH4およびH5のいずれのシリーズについても、アフィニティーの良好な保持が観察され、hu24F4変異体のH6シリーズについて、結合の中程度の喪失が観察された(
図2および3)。直接結合FACS解析における力価および見かけのEC50値に基づき、H4/L1およびH5/L1を、hu24F4の「最良の」変異体と決定した。
【0212】
ch24F4および全てのhu24F4変異体mAbを含有する馴化培地を、ヒトBDCA2外部ドメインへの結合について、Octetによりアッセイした。単量体のhuBDCA2外部ドメインは、タンパク質分解性切断により、精製muIgG2a Fc−huBDCA2融合タンパク質(関連するプラスミド:pEAG2423)から調製した。一過性にトランスフェクトされた細胞に由来する馴化培地に由来する抗体を、抗ヒトFcチップへと結合させ、次いで、単量体のhuBDCA2を、Octetチップ上を流動させて、結合および解離について試験した。hu24F4変異体のH4およびH5のシリーズは、huBDCA2に対する最良のアフィニティーを示した。
【数2】
【0213】
(実施例6)
hu24F4のアフィニティーの増強
【0214】
24F4の変化形であるL1のCDR L3の対合しないシステイン位置における置換(hu24F4軽鎖の発現ベクターであるpYL740内のC95S)により、hu24F4のアフィニティーを増強する可能性を調べるため、変化形であるいくつかのL1変異体を、部位特異的変異誘発により構築した。対合しないシステインへの復帰変異、すなわち、S95Cは、プラスミドであるpYL749をもたらす部位特異的変異誘発により構築した。変異体であるS95T、S95A、およびS95Vは、プラスミドであるpYL750、pYL751、およびpYL752のそれぞれをもたらす部位特異的変異誘発により構築した。結果として得られるプラスミド内の全長軽鎖cDNA配列は、DNA配列決定により確認した。C95変異体であるhu24F4 mAbは、hu24F4 H4重鎖のpYL746プラスミドまたはhu24F4 H5重鎖のpYL747プラスミドの、hu24F4 L1変異体軽鎖内のC95SのpYL740プラスミド、S95CのpYL749プラスミド、S95TのpYL750プラスミド、S95AのpYL751プラスミド、またはS95VのpYL752プラスミドとの共トランスフェクションにより、293E細胞内で一過性に発現させた。馴化培地は、トランスフェクションの2日後に採取した。全ての変異体の力価(Octetにより、抗ヒトFcチップ上でアッセイされた)は同様であり、非還元型SDS−PAGEのウェスタンブロットは、粗大な凝集または明らかなクリッピングを示さなかった。C95変異体mAbを含有する馴化培地を、ヒトBDCA2外部ドメインへの結合について、Octetによりアッセイした。一過性にトランスフェクトされた細胞に由来する馴化培地に由来する抗体を、抗ヒトFcチップへと結合させ、次いで、単量体のhuBDCA2を、Octetチップ上に流動させて、結合および解離について試験した。C95A変異体の解離速度が最も遅かった。
【数3】
【0215】
これらの結果に基づき、見かけの解離速度が最も遅いhu24F4 H4/L1 C95T変異体およびH4/L1 C95A変異体ならびにH5/L1 C95T変異体およびH5/L1 C95A変異体のための、安定的なCHO細胞系を作製した。精製hu24F4 mAbのために、Octet結合研究を繰り返した。hu24F4 H4/L1 C95A変異体を、最有力候補変異体として選択した。プラスミドであるpYL746(hu24F4 H4重鎖)およびpYL751(hu24F4 L1軽鎖)の配列は、CHO産生細胞系を生成するための発現ベクターの再コードおよび構築のために使用した。
【0216】
pYL751によりコードされる、推定成熟hu24F4 L1 C95A軽鎖のアミノ酸配列を下記に示す(CDR L1、CDR L2、およびCDR L3に下線を付す):
【化14】
【0217】
pYL746によりコードされる、推定成熟hu24F4 H4−huIgG1重鎖のアミノ酸配列を下記に示す(CDR H1、CDR H2、およびCDR H3に下線を付す):
【化15】
【0218】
上記で列挙した成熟重鎖(配列番号4)および成熟軽鎖(配列番号3)からなる抗体を、BIIB059と称する。
【0219】
(実施例7)
重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子の再コード
発現を潜在的に改善するため、アミノ酸配列を変化させずに、軽鎖遺伝子および重鎖遺伝子のヌクレオチド配列を再コードさせた。抗BDCA2軽鎖遺伝子の改変DNA配列を下記に示す。アミノ酸1〜240は、軽鎖配列を含有する。アミノ酸1〜22(小文字のヌクレオチド)は、天然軽鎖シグナルペプチドを含有する。成熟N末端は、アミノ酸23(D)で始まる。
【化16】
【0220】
抗BDCA2重鎖遺伝子の改変DNA配列を下記に示す。アミノ酸1〜470は、重鎖配列を含有する。アミノ酸1〜19(小文字のヌクレオチド)は、天然重鎖シグナルペプチドを含有する。成熟N末端は、アミノ酸20(D)で始まる。
【化17-1】
【化17-2】
【化17-3】
【0221】
(実施例8)
発現カセットおよび発現ベクター
重鎖遺伝子および軽鎖遺伝子を切り出し、個別の発現ベクターへとライゲーションした。各遺伝子は、ヒトサイトメガロウイルス前初期プロモーターおよびヒト成長ホルモン遺伝子ポリアデニル化配列の転写制御下にある。
【0222】
軽鎖を発現させるプラスミドであるpJP009はまた、マウスホスホグリセリン酸キナーゼ(muPGK)初期プロモーター配列およびmuPGKポリアデニル化配列を含有するネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(neo)のための発現カセットも含有する(
図4)。重鎖を発現させるプラスミドであるpJP010はまた、選択マーカーおよびメトトレキサート増幅マーカーとして使用した、dhfr遺伝子のための発現カセットも含有する。プラスミドpJP009およびpJP010の鍵となる特色を下記にまとめる。
【数4】
【0223】
略号:ヒトサイトメガロウイルス前初期(hCMV IE)、サルウイルス40初期(SV40E、マウスホスホグリセリン酸キナーゼ(muPGK)、ヒト成長ホルモン(hGH)、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子(G418耐性)、ジヒドロ葉酸レダクターゼ遺伝子(dhfr)、アンピシリンに対する耐性のための細菌遺伝子(β−ラクタマーゼ)。
【0224】
プラスミドpJP009の完全ヌクレオチド配列を下記に示す。3つのオープンリーディングフレームは、24F4軽鎖、ネオマイシンホスホトランスフェラーゼ、およびβ−ラクタマーゼである。
【化18-1】
【化18-2】
【化18-3】
【化18-4】
【0225】
プラスミドpJP010の完全ヌクレオチド配列(
図5)を下記に示す。3つのオープンリーディングフレームは、24F4重鎖、マウスジヒドロ葉酸レダクターゼ、およびβ−ラクタマーゼである。
【化19-1】
【化19-2】
【化19-3】
【化19-4】
【0226】
(実施例9)
細胞系の構築
使用した宿主細胞は、チャイニーズハムスター卵巣ジヒドロ葉酸レダクターゼ(dhfr)欠損宿主細胞系である、CHO−DG44であった。DG44宿主細胞バンクについて試験し、使用前に、外来作用物質の存在について陰性であることを見出した。抗BDCA2を発現する細胞系を構築するために、DG44宿主(CER−00−05−01)を使用した。
【0227】
再コードさせた抗BDCA2の軽鎖および重鎖のそれぞれを発現させるプラスミドであるpJP009およびpJP010を、電気穿孔により宿主細胞系へとトランスフェクトした。αヌクレオシドを欠損させた培地を使用して、dhfrを発現させるトランスフェクト体の細胞を選択した。上記で記載したαMEMヌクレオシド非含有培地中の選択の後、蛍光活性化細胞分取とGenetix Clonepix FL測定器(CER−00−09−03)との組合せを使用して、トランスフェクトされたプールを、発現の高度な細胞系について富化した。ClonePix FLにより単離された細胞コロニーを、半固体培地から96ウェルプレートへと採取した。個々のウェルを増殖させ、生産性を評価した。特徴付けのための材料を生成するための、10Lのバイオリアクター内で成長させるために、振とうフラスコによる流加培養解析において最高の力価を示す細胞系(#49)を、研究用動物発酵(Research Animal Fermentation)へと移した。
【0228】
初回の細胞系スクリーニングをした後、増幅のために、最高の産生細胞系を選択した。最高の細胞系を、メトトレキサート(MTX)増幅にかけた。ウェル1つ当たりの細胞0.5個の理論的密度の限界希釈を使用して、増幅されたプールを、384ウェルプレートへとサブクローニングした。Cellavista測定器(Innovatis)を使用して、384ウェルプレートの個々のウェルを、ウェル1つ当たり単一の細胞の存在についてイメージングし、クローン性であることを検証した。
【0229】
スケールダウン流加培養振とうフラスコおよび産物品質解析に基づき、増幅が最良の4つのクローン細胞系を選択した。バイオリアクター内で評価したこれらの増幅が最良の4つの細胞系から、プレマスター細胞バンク(Pre−MCB)を作製した。バイオリアクターでの性能および産物品質解析に基づき、1つの最有力のサブクローンを選択した。最有力の細胞系のPre−MCBバイアルを、マスター細胞バンク生成のための製造へと移した。
【0230】
(実施例10)
抗BDCA2抗体であるBIIB059の翻訳後修飾
a)酸化
抗BDCA2であるBIIB059抗体を、エンドLysCペプチドマッピングにかけたところ、重鎖のMet−257、Met−433、およびTrp−163は、酸化を受けやすい部位であることが明らかになった。レベルは、4〜7%の範囲にわたった。実験データは、酸化の大半は、試料調製に関連することを示す。
b)脱アミド化
BIIB059抗体のエンドLysCペプチドマップ解析により、重鎖内のAsn−389、Asn−394、およびAsn−395の各々のうちの約2.5%が、脱アミド化され(脱アミド化とスクシンイミド形成との組合せ)、重鎖内のAsn−320のうちの約2.5%が脱アミド化された(スクシンイミド形態で)ことが示された。軽鎖内のAsp−32およびAsp−34についてのスクシンイミド形態の総量は、約3%であった。軽鎖内のAsp−32およびAsp−34の組合せによる異性体化は、約5%であった。酸化と同様、これらの修飾のうちの一部は、試料調製に関連しうる。
c)糖化
糖化とは、タンパク質上のアミノ基の、培養培地の成分であるグルコースとの反応により引き起こされる非酵素的修飾である。糖化は、タンパク質内で日常的に検出され、レベルは、細胞培養条件に応じて広範に変化する。BIIB059抗体では、非還元タンパク質のインタクト質量解析により測定される糖化のレベルは、約10%であった。ペプチドマッピング解析では、軽鎖のLys−107における約0.46%の糖化、軽鎖のLys−103における0.28%の糖化、およびO結合重鎖のLys−295における約0.2%の糖化が明らかとなった。
d)グリコシル化
BIIB059の検出可能なO結合グリコシル化は認められなかった。
e)他の修飾(例えば、ヒドロキシリシンなど)
解析により、BIIB059抗体の重鎖のうちの<1%が、非グリコシル形態にあることが示された。解析は、抗体内のAsnからSerへの置換を示さず、抗体内で、未知の修飾または変異が、≧1%のレベルで認められることもなかった。
【0231】
(実施例11)
BIIB059の、形質細胞様樹状細胞の細胞表面への直接的な結合
フローサイトメトリーによる全血アッセイを開発して、BIIB059の、ヒト形質細胞様樹状細胞(pDC)またはカニクイザルpDC上のBDCA2への結合を評価した。カニクイザル末梢血(Toxikon,Inc、Bedford、MA)またはヒト末梢血(Biogen Idec)を、ヘパリンナトリウムを伴う回収試験管内に回収し、室温で維持した。pDCを同定するためのFACS染色用抗体カクテルを、各全血アリコートへと添加し、CD20抗体、CD14抗体、CD123抗体、およびHLA−DR抗体を取り込ませた。Alexa647で標識されたBIIB059(Biogen Idec、ロット番号17073−057)、またはAlexa647で標識されたhIgGアイソタイプ対照を、FACS染色カクテルへと、0〜40μg/mLの濃度で添加した。血液を、光から保護された氷上で、30分間にわたりインキュベートした。30分間後、各々500μLずつの全血アリコート(カニクイザル)または各々100μLずつの全血アリコート(ヒト)を、1倍濃度のEasy Lyse Buffer(Leinco Technologies)10mL(カニクイザル)または2mL(ヒト)で処理し、37℃で少なくとも1時間にわたりインキュベートした。室温で10〜15分間にわたるインキュベーションの後、試料を、1400rpmで5分間にわたり遠心分離した。上清をデカントし、白血球(WBC)のペレットだけを残した。各WBCペレットを、5mLのFACS緩衝液(PBS中に1%のBSA+0.002%のアジ化Na+1mMのCaCl
2+1mMのMgCl
2)で洗浄し、1400rpmで5分間にわたり遠心分離した。上清をデカントし、各WBCペレットを、200μLのFACS緩衝液中に再懸濁させ、96ウェル丸底プレート(Fisher Scientific)へと移した。プレートを、1400rpmで5分間にわたり遠心分離した。上清をプレートから放出し、各WBCペレットを、200μLのFACS緩衝液で洗浄した。プレートを、1400rpmで5分間にわたり遠心分離し、上清をプレートから放出した。洗浄の後(上記の通り)、WBCを、PBS中の1%のパラホルムアルデヒド(PFA)200μL中に再懸濁させ、光から保護して、4℃で一晩にわたり固定した。フローサイトメトリー解析の直前に、60ミクロンのナイロンメッシュフィルタープレート(Millipore)を使用してWBCを濾過した。次いで、各ペレットを、新規の96ウェル丸底プレートへと移し、1400rpmで5分間にわたり遠心分離した。各WBCペレットを、250μLのFACS緩衝液中に再懸濁させ、蛍光強度を、LSRII 4カラーFACSマシン上で測定した。単色補正は、抗マウスIg Compensation Particleビーズセット(BD Biosciences)を使用して収集した。解析は、FlowJoソフトウェアおよびGraphPad Prismソフトウェアを使用して実施した。BIIB059は、カニクイザル細胞およびヒト細胞に、1〜2μg/mL(7〜13nM)のEC
50値で同様に結合した(
図6)。
【0232】
(実施例12)
BIIB059の自己会合の評価
AlphaScreenアッセイとは、ヒトFcRIIa(CD32a)GSTに結合する、グルタチオンドナーおよびアクセプタービーズ(Perkin Elmer)を活用する、ホモジニアス近接アッセイである。多様な濃度の試験抗体をこの混合物に添加した。抗体のFcRIIaへの結合は、一価であるので、シグナルを生成するための方法は、ドナービーズおよびアクセプタービーズの両方が抗体を結合させ、次いで会合して、ビーズを200nm以内に近づけ、一重項酸素の生成および結果としての光の発光を可能とする場合に限られる。Envision(Perkin Elmer)測定器により検出される発光のレベルは、自己会合の程度に比例する。
【0233】
図7は、BIIB059についてのAlpha Screenの結果を、5c8(陰性対照)およびLT105(強力な自己会合を伴う陽性対照)と比較して示す。
【0234】
(実施例13)
BIIB059の非特異的結合の評価
交差相互作用クロマトグラフィー(CIC:cross−interaction chromatography)とは、mAb候補の粘着性について予備評価するためのハイスループット法(Jacobsら、Pharm Res.、27巻(1号):65〜71頁(2010年))である。この方法では、バルクのポリクローナルヒトIgGを、NHS活性化クロマトグラフィー樹脂へと化学的にカップリングさせる。次いで、非誘導体化カラム上およびIgG誘導体化カラム上のBIIB059の保持時間を、挙動が良好なmAbおよび挙動が不良なmAbの対照パネルと比較した。この方法では、BIIB059は、その短い保持時間および小さなK’値により証明される通り、非特異的結合の証拠を示さなかった。
【数5】
【0235】
(実施例14)
BIIB059の安定性の評価
示差走査蛍光測定を使用して、BIIB059の安定性を、緩衝液条件の範囲にわたり、初期研究用処方について試験した。タンパク質のアンフォールディングを、10倍濃度(Invitrogenの在庫表示の1000倍濃度に基づく)の最終濃度でSYPROオレンジフルオロフォアを補充した50μLのPBS(pH7.0)中の10μgのタンパク質を使用して、96ウェルフォーマットのMx3005pリアルタイムPCRシステム(Agilent Technologies)上でモニタリングした。試料を、1℃/分で、25℃から95℃へと加熱し、1℃ごとに3回ずつ蛍光強度を測定した。蛍光強度は、温度の関数としてプロットした。Tmは、負の導関数(Mx3005pソフトウェアにおける「−R’(T)」)を取り、導関数プロットの極小値を選択することにより、これらの曲線から導出した。20mMクエン酸ナトリウムの基礎緩衝液を使用したところ、pHは、5.0〜7.5で変化し、NaCl濃度およびスクロース濃度は、50〜250mMで変化した。
【0236】
安定性は、これらの緩衝範囲を通して同様であった。
図8は、150mMのNaClおよび250mMのスクロースによるデータを、pHの関数として示す。研究用遠心分離濃縮器を使用して、スクロースにより高濃度に到達することは困難であるために、スクロースではなく、20mMのクエン酸ナトリウム、150mMのNaCl、pH6.0を、研究用処方として選択した。
【0237】
(実施例15)
BIIB059の撹拌安定性の評価
体積0.2mLのBIIB059 mAb溶液を、20mMのクエン酸ナトリウム、pH6.0、150mMのNaCl中に1mg/mLで、600rpmに設定したLab−Line Instrumentsモデル4626 Titer Plate Shakerを使用して、2mLのガラス製バイアル(Waters;WAT270946C)内、室温で、反転振とうにかけた。凝集は、Beckman DU640分光光度計を使用して、320nmにおける濁度の増加をモニタリングすることにより評価した。BIIB059は、時間に依存する凝集を示した。通常、野生型のヒトIgG1抗体は、これらの撹拌条件下では凝集しない。
図9に示す通り、一般的な製剤賦形剤である、0.03%のTween 80を添加することにより、凝集は完全に抑制された。撹拌により誘導される凝集は、場合によって、高度にpH依存的でありうる。非グリコシルIgG4/IgG1は、BIIB059より急速でより広範な凝集を示した。また、非グリコシルIgG4/IgG1の凝集も、Tween 80を添加することにより抑制された。
【0238】
(実施例16)
BIIB059の粘度の評価
BIIB059試料の安定性および粘度を、150mg/mL以上の高濃度で測定して、皮下投与のための生成物の潜在的な開発を裏付けた。BIIB059の溶液を、超遠心分離濃縮管(ultra−concentrator tube)内で遠心分離して、体積を縮減し、達成された濃度を、UVスキャンにより決定した。安定性は、2〜8℃で1週間および2週間にわたり保管した後で、サイズ排除クロマトグラフィーにより決定した。20mMのクエン酸塩、pH6、150mMのNaClによる緩衝液中に、200mg/mLを超えるタンパク質濃度が、少量のタンパク質に対してたやすく達成され、2〜8℃で2週間後においても、凝集物は、低量にとどまった(0.68%)。粘度は、Viscopro 2000測定器(Cambridge Viscosity)を使用して測定した。クエン酸塩/食塩緩衝液中に150mg/mLのときの粘度は、8cPに過ぎなかった。これらの結果は、高濃度のBIIB059処方が達成可能であることを裏付ける。
【0239】
(実施例17)
ヒトBDCA2遺伝子のクローニング
全長ヒトBDCA2(huBDCA2)のcDNAを、Open Biosystemsからの、InvitrogenのpCR4TOPOクローニングベクター内にサブクローニングし、このプラスミドをpEAG2367と命名した。DNA配列決定により、そのcDNAは、参照のGenbank受託番号NM_130441における全長ヒトBDCA2のcDNAと同一であることが確認された。pEAG2420によりコードされるhuBDCA2の全長オープンリーディングフレームを下記に示し、TM−HMMにより予測される膜貫通ドメインに下線を付す:
【化20】
【0240】
Genbank受託番号NP_004097内の参照配列と同一な、pEAG2413によりコードされるhuFcεRIγ全長オープンリーディングフレームを、下記に示す:
【化21】
【0241】
ヒトBDCA2 cDNAおよびヒトFcεRIγ cDNAの両方を、タンデムの転写単位で共発現させるCHO発現ベクターは、pEAG2413に由来する2.11kbのSpeI断片を、pEAG2420の、ホスファターゼ処理された線状化6.71kbのSpeIベクター骨格へとサブクローニングすることにより構築する結果として、pEAG2456と命名された「ユニベクター」をもたらした。pEAG2420内のヒトBDCA2 cDNAおよびFcεRIγ cDNAを配列確認した。BDCA2 cDNAおよびFcεRIγ cDNAを安定的に共発現させる、安定的なCHO細胞系は、pEAG2456によるトランスフェクションにより作製した。
【0242】
(実施例18)
カニクイザルBDCA2遺伝子およびアカゲザルBDCA2遺伝子のクローニング
pEAG2384およびpEAG2383内で観察されるSNP形態のうちの1つによりコードされる、推定マカクザルBDCA2のオープンリーディングフレームを下記に示す。下記では、このSNP形態を、カニクイザルBDCA2のE73 SNP形態と称する。アカゲザルでも、カニクイザルBDCA2のE73 SNP形態と同一な単一の配列が観察された。
【化22】
【0243】
カニクイザルBDCA2の第2のSNP形態では、上記で強調した残基73(GAA=Glu、E)が、リシン(AAA=Lys、K)である。この第2のSNP形態を、カニクイザルBDCA2のK73 SNP形態と称する。ヒトBDCA2では、残基73は、グルタミン酸である。90.6%の同一性を共有する、ヒトBDCA2配列(上)と、マカクザルBDCA2配列(下)との、ギャップ処理されたアライメントを、下記に示す。潜在的なN結合グリコシル化部位に影を付す。マカクザルBDCA2は、ヒトにおいて存在する1つの潜在的なN結合グリコシル化部位を欠く(ヒトの137〜139におけるNSS対マカクザルにおけるNSA)。
【化23】
【0244】
コンセンサスのカニクイザルFcεRIγオープンリーディングフレームを下記に示す:
【化24】
【0245】
カニクイザルFcεRIγ cDNA配列は、Genbank受託番号XM_001115585において記載されている、予測されるアカゲザルcDNAの配列(ゲノムの短い読取りに基づく)、およびGenentechの科学者により、Genbank受託番号AF485816として寄託されたカニクイザル配列との完全なマッチ配列である。カニクイザルFcεRIγタンパク質配列がヒトFcεRIγタンパク質と共有する同一性は、98.9%であり、単一の保存的置換だけで異なる。ヒトFcεRIγ(上)と、カニクイザルFcεRIγ(下)との間のアライメントを下記に示す:
【化25】
【0246】
BDCA2 cDNAおよびFcεRIγ cDNAの両方のカニクイザルE73 SNP形態をタンデムの転写単位で共発現させるCHO発現ベクターは、pCN652に由来する2.11kbのSpeI断片を、pCN654の、ホスファターゼ処理された線状化6.72kbのSpeIベクター骨格へとサブクローニングすることにより構築する結果として、pEAG2668と命名された「ユニベクター」をもたらした。pEAG2668内のカニクイザルBDCA2 cDNAおよびFcεRIγ cDNAを配列確認した。BDCA2 cDNAおよびFcεRIγ cDNAを安定的に共発現させる、安定的なCHO細胞系は、pEAG2668によるトランスフェクションにより作製した。
【0247】
(実施例19)
ヒトBDCA2とカニクイザルBDCA2との交差反応性
カニクイザルE73/K73 BDCA2 SNPが、抗BDCA2抗体の結合に影響を及ぼしたのかどうかを決定するために、293E細胞に、EGFPレポーターを保有する発現ベクター(pEAG1458)ならびにBDCA2 cDNAおよびFcεRIγ cDNAを保有する発現ベクター(ヒトBDCA2:pEAG2420およびヒトFcεRIγ:pEAG2413;カニクイザルE73 BDCA2:pCN652またはカニクイザルK73 BDCA2:pCN656およびカニクイザルFcεRIγ:pCN652)を、1:1:1のモル比で共トランスフェクトした。トランスフェクションの3日後、細胞を採取し、直接結合希釈滴定FACSにおいて、PE結合体化Miltenyi抗ヒトBDCA2 AC144 mAb(Miltenyi Biotec;型番130−090−511)で染色し、緑色のEGFP陽性細胞に対してゲートをかけた。
図10は、AC144の、ヒト表面BDCA2およびカニクイザル表面BDCA2への直接結合を示す。
【0248】
見かけのEC50は、ヒトBDCA2ならびにカニクイザルBDCA2のE73 SNP形態およびK73 SNP形態の両方について本質的に同等である。この結果を踏まえ、ヒトBDCA2/FcεRIγ発現ベクターであるpEAG2456およびカニクイザルE73 SNP BDCA2/FcεRIγ発現ベクターであるpEAG2668を使用して、全長表面BDCA2のための安定的なCHOトランスフェクト体を生成した。これらの細胞系を、ヒト/カニクイザル交差反応性の抗BDCA2抗体のトリアージに使用した。
【0249】
(実施例20)
ヒトおよびカニクイザルBDCA2外部ドメインのFc融合構築物
ヒトおよびカニクイザルBDCA2 ECDの5つのFc融合構築物を操作した。構築物のうちの3つでは、BDCA2を、G4Sリンカー配列を介して、ヒトIgG1ヒンジおよびヒトIgG1 FcのC末端へと結合させた。構築物のうちの2つでは、G4Sリンカーを、TEVプロテアーゼ切断部位であるENLYFQCで置きかえた。
【0250】
BDCA2は、II型膜タンパク質(C末端は、細胞の外側にある)であるので、可溶性Fc融合タンパク質のデザインは、BDCA2のC末端外部ドメイン(ヒトBDCA2では、残基45〜213)を、操作されたIgG FcのC末端へと付加することを伴い、その分泌は、インフレームのマウスκ軽鎖シグナル配列により駆動された。全長huBDCA2構築物であるpEAG2367は、PCRのための鋳型として、プライマー5' CAG TGT CTG TTT CAC TCC CGG GGG TGG CGG TGG TAG CAA TTT TAT GTA TAG C 3'(配列番号74)(5’側XmaI(Pro−Gly)およびGly4Serリンカーを、huBDCA2外部ドメインの5’末端の直前に付加する)および5' CCA GGG AGA ATA GGA TCC TTA TAT GTA GAT CTT 3'(配列番号75)(3’側のBamHI部位を、huBDCA2ターミネーターの直後に付加する)と共に使用した。0.56kbのPCR産物を精製し、InvitrogenのpCRBluntIITOPOクローニングベクターへとサブクローニングし、pEAG2417を作製し、そのインサートのcDNA配列を確認した。pEAG2417に由来する、0.53kbのXmaI−BamHI断片と、pEAG1397に由来する、0.75kbのNotI−XmaI断片(その分泌が、インフレームの操作されたマウスκ軽鎖シグナル配列により駆動される、操作されたhuIgG1 Fcを保有する)とを、発現ベクターであるpV90に由来する、1.89kbのBamHI−XbaIベクター骨格断片および4.17kbのXbaI−NotIベクター骨格断片によりライゲーションし、huIgG1 Fc−huBDCA2融合タンパク質の発現ベクターであるpEAG2421を作製し、そのcDNAインサート配列を確認した。pEAG2421によりコードされる、推定オープンリーディングフレームを、下記に示す:
【化26】
κ軽鎖シグナル配列:上記の残基1〜19(斜字体)
ヒトIgG1 Fc:上記の残基20〜250
G4Sリンカー:上記の残基251〜255(太字体)
huBDCA2外部ドメイン:上記の残基256〜424(下線を付した)。
【0251】
muIgG2a Fc−huBDCA2融合タンパク質のための発現ベクターを構築するために、pEAG2417に由来する、0.53kbのXmaI−BamHI断片と、pEAG1442に由来する、0.75kbのNotI−XmaI断片(その分泌が、インフレームの操作されたマウスκ軽鎖シグナル配列により駆動される、操作されたマウスIgG2a Fcを保有する)とを、発現ベクターであるpV90に由来する、1.89kbのBamHI−XbaIベクター骨格断片および4.17kbのXbaI−NotIベクター骨格断片によりライゲーションし、pEAG2423を作製し、そのcDNAインサート配列を確認した。pEAG2423によりコードされる、推定オープンリーディングフレームを、下記に示す:
【化27】
κ軽鎖シグナル配列:上記の残基1〜19(斜字体)
マウスIgG2a Fc:上記の残基20〜251
G4Sリンカー:上記の残基252〜256(太字体)
huBDCA2外部ドメイン:上記の残基257〜425(下線を付した)。
【0252】
Fc−huBDCA2融合タンパク質を産生する、安定的なCHO細胞系を、発現ベクターであるpEAG2421およびpEAG2423によるトランスフェクションにより作製した。これらの融合タンパク質を、候補をスクリーニングする間の、抗体トリアージのためのELISAアッセイおよびOctet結合アッセイにおいて使用した。
【0253】
カニクイザル(cyno)BDCA2を操作して、Fc融合タンパク質を作製するために、構築物pCN648内のカニクイザルBDCA2の全長E73 SNP変異体を、プライマー5' CTC TGT GTC TGT TTC ACT CCC GGG GGT GGC GGT GGT AGC AAT TTT ATG TAT AGC 3'(配列番号78)およびその逆相補体による部位特異的変異誘発にかけて、5’側XmaI(Pro−Gly)およびGly4Serリンカーを、huBDCA2外部ドメインの5’端の直前に付加することから、構築物であるpEAG2675を作製し、そのcDNAインサート配列を確認した。muIgG2a Fc−カニクイザルBDCA2融合タンパク質のための発現ベクターを構築するために、pEAG2675に由来する、0.53kbのXmaI−BamHI断片と、pEAG1442に由来する、0.75kbのNotI−XmaI断片(その分泌が、インフレームの操作されたマウスκ軽鎖シグナル配列により駆動される、操作されたマウスIgG2a Fcを保有する)とを、発現ベクターであるpV90に由来する、1.89kbのBamHI−XbaIベクター骨格断片および4.17kbのXbaI−NotIベクター骨格断片によりライゲーションし、pEAG2677を作製し、そのcDNAインサート配列を確認した。pEAG2677によりコードされる、推定オープンリーディングフレームを、下記に示す:
【化28】
κ軽鎖シグナル配列:上記の残基1〜19(斜字体)
マウスIgG2a Fc:上記の残基20〜251
G4Sリンカー:上記の残基252〜256(太字体)
カニクイザルBDCA2外部ドメイン:上記の残基257〜424(下線を付した)。
【0254】
Fc−カニクイザルBDCA2融合タンパク質を産生する、安定的なCHO細胞系を、発現ベクターであるpEAG2677によるトランスフェクションにより作製した。
【0255】
muIgG2a Fc−BDCA2融合タンパク質を、限定タンパク質分解にかけて、単量体のBDCA2外部ドメインタンパク質を単離した。組換え可溶性BDCA2外部ドメインの単離を容易とするため、新たなFc融合構築物を構築し、そのFcのC末端と、BDCA2外部ドメインのN末端との間に、TEVプロテアーゼ切断部位を挿入した。FcのC末端へと融合させるための5’側XmaI部位(Pro−Gly)に続いて、BDCA2配列の残基45へと融合させたインフレームのTEV切断部位(ENLYFQG)、およびBDCA2のターミネーターに続く3’側BamHI部位を伴う、操作されたヒトまたはカニクイザルBDCA2外部ドメインを保有するSyngeneをデザインし、それらの独自のpUC57−ampクローニングベクター内のXmaI−BamHIインサートとしてのGeneWizにより送達した。操作されたXmaI−BamHI TEV−BDCA2外部ドメインcDNA構築物であるpEAG2917(ヒト)内およびpEAG2918(カニクイザル)内のインサートの配列を確認した。huIgG1 Fc−TEV−BDCA2融合タンパク質のための、pV90−IRES−dhfrベースのCHO発現ベクターを構築するために、pEAG1397の0.75kbのNotI−XmaI断片、およびpEAG2917またはpEAG2918のいずれかに由来する0.54kbのXmaI−BamHI断片を、pXJC194の5.4kbのBglII−NotIベクター骨格断片へとサブクローニングすることから、pEAG2937(Fc−huBDCA2)またはpEAG2938(Fc−カニクイザルBDCA2)を作製した。pEAG2937内およびpEAG2938内のインサートcDNAを配列確認した。安定的なCHO細胞系を、pEAG2937およびpEAG2938によるトランスフェクションにより生成した。pEAG2937によりコードされる、huFc−TEV−huBDCA2融合タンパク質の推定オープンリーディングフレームを、下記に示す:
【化29】
κ軽鎖シグナル配列:上記の残基1〜19(斜字体)
ヒトIgG1 Fc:上記の残基20〜250
TEV切断部位:上記の残基251〜257(太字体)
huBDCA2外部ドメイン:上記の残基258〜426。
【0256】
pEAG2938によりコードされる、huFc−TEV−カニクイザルBDCA2融合タンパク質の推定オープンリーディングフレームを、下記に示す:
【化30】
κ軽鎖シグナル配列:上記の残基1〜19(斜字体)
ヒトIgG1 Fc:上記の残基20〜250
TEV切断部位:上記の残基251〜257(太字体)
カニクイザルBDCA2外部ドメイン:上記の残基258〜425(下線を付した)。
【0257】
(実施例21)
BIIB059のBDCA2−Fc融合タンパク質への結合
溶液中のhuBDCA2−Fcに結合するBIIB059の能力を、SECにより評価した(
図11)。単独で解析したところ、BIIB059(上パネル)およびhuBDCA2(中パネル)は、約150kDaの分子質量を伴う単一の鋭利なピークとして溶出した。BIIB059とhuBDCA2−Fcとを併せて混合し、解析した(下パネル)ところ、クロマトグラムのより前の位置におけるそれらの溶出から明らかな通り、BIIB059およびhuBDCA2−Fcの、>550kDaというより大きな質量へのシフトが見られた。溶出ピークの不均一性はおそらく、BIIIB059およびBDCA2−Fcの両方とも、各々が2つの結合部位を含有し、その結果、化学量論が異なるBIIB059およびBDCA2の多数の複合体が形成されるという事実により引き起こされる。
【0258】
カニクイザルBDCA2 ECDの、BIIB059への結合を、SECによってもまた評価したところ、より大きな分子質量複合体への定量的シフトが同様にもたらされた。
【0259】
(実施例22)
カルシウムは、BIIB059の、BDCA2への結合を増強する
カルシウムまたはEDTAの存在下における、BIIB059の、マウスFcへと融合させたヒトBDCA2(huBDCA2−muFc)への結合を、Octet結合アッセイにおいて研究した。huBDCA2−muFcタンパク質を、抗マウスFcバイオセンサー上で捕捉した後、BIIB059の会合ステップおよび解離ステップを行った。全てのステップは、10mMのCaCl2または10mMのEDTAのいずれかを含有する、50mMのHEPES、pH7、100mMのNaCl、1mg/mlのBSA、0.02%のTween 20、および0.001%のアジド中で行った。
【0260】
図12は、BIIB059の結合が、EDTAと比べたカルシウムの添加により増強され、約2倍のシグナルをもたらすことを示す。会合速度および解離速度のいずれも、カルシウムの影響を受けた。
【0261】
(実施例23)
結合の測定
Octetを使用して、BIIB059の、BDCA2−Fc融合タンパク質およびBDCA2 ECDへの結合をモニタリングした。
図13は、BIIB059を、20μg/mLの濃度で、抗ヒトFc Octetチップへとロードした、Octet実験を示す。会合ステップのために、ヒトBDCA2 ECDおよびカニクイザルBDCA2 ECDを、2μg/mLの濃度で添加した。この実験のための緩衝液は、50mMのHEPES、pH7、100mMのNaCl、5mMのCaCl2、1mg/mLのBSA、0.02%のTween 20および0.001%のアジドであった。これらの条件下で、BIIB059の、ヒトBDCA2 ECDへの結合と、カニクイザルBDCA2 ECDへの結合とは、同等であった。
【0262】
(実施例24)
TLR9誘導IFNα産生の阻害についての、BIIB059のIC50値を決定するPBMCアッセイ
BDCA2とのライゲーションはBCR様シグナル伝達カスケードを活性化させることが示されており、これにより、TLRリガンドに応答してI型IFNおよび他のサイトカインを産生するpDCの能力を強力に抑制する(Cao W.ら、PLoS Biol.、5巻(10号):e248頁(2007年))。PBMCによる、TLR9誘導IFNα産生の阻害を、スクリーニングのための初代細胞アッセイとして使用した。
【0263】
健常ドナーのヘパリン添加静脈血に由来するPBMCは、Ficoll上の不連続勾配遠心分離により単離し、PBS中で洗浄し、完全培養培地(3%FBSを伴うRPMI)中で再懸濁させた。ウェル1つ当たり1×10
6個の細胞を播種し、ウェル1つ当たり200μLの総アッセイ体積中に10μg/mL〜1pg/mLの範囲の、BIIB059および24F4A−Agly(BIIB059のFcの無能化変化形)またはアイソタイプ対照mAbの存在下で、10μg/mLのTLR9リガンド(CpG−A ODN2216)により刺激した。プレートは、37℃で一晩(18時間)にわたりインキュベートし、IFNα ELISAアッセイ(PBL InterferonSource)において評価するために、上清を回収した。製造業者のプロトコールに従い、アッセイを実施した。BIIB059および24F4A aglyの力価を試験して、TLR9誘導IFNα産生の阻害についてのIC
50を決定した。のべ12回の独立の実験により、平均IC
50を0.001μg/mLとするBIIB059がもたらされた。非グリコシル化mAbは、それほど強力ではなく、平均IC
50を0.007μg/mLを有した(
図14)。
【0264】
また、生理学的に関連するリガンド、すなわち、SLEを伴う患者に由来する血清による刺激の後におけるIFNα産生を阻害する抗BDCA2 mAbの能力についても試験した。SLE血清は、TLR9を刺激する、抗DNA自己抗体と免疫刺激性低メチル化DNAとの複合体を介して、I型IFNを誘導すると考えられている。PBMCを、SLE患者に由来する血清(Dr.Gregg Silverman、NYUから提供された)で刺激し、1/5の最終希釈率で使用した。BIIB059と1アミノ酸残基異なる、抗体24F4S H4/L1C95Sは、SLE血清で刺激されたpDCからのIFNα産生を完全に阻害した(
図18)。
【0265】
(実施例25)
全血アッセイにおける、TLR9誘導IFNα産生
BIIB059の活性はまた、TLR9誘導IFNα産生の全血アッセイでも評価した。
【0266】
全血は、健常ドナーのヘパリン添加静脈血から採取した。BIIB059および24F4A−Aglyの用量は、ウェル1つ当たり200μlの総アッセイ体積中に10μg/mL〜1pg/mLの範囲にわたった。CpG−Aは、全血中のIFNα産生を刺激するのに最適であると決定される、200μg/mLで添加した。プレートは、37℃で18時間にわたりインキュベートし、上清は、IFNα ELISAアッセイ(PBL InterferonSource)における使用のために回収した。製造業者のプロトコールに従い、アッセイを実施した。
図15Aに、実施された6回の独立の実験のうちの代表的な実験を示す。全血中のTLR9誘導IFNαアッセイにおけるBIIB059の阻害効力は、PBMCアッセイにおいて認められる効力と同様であった。pDC由来サイトカイン(IFNα、IL−6)の阻害に加えて、BIIB059処置はまた、多くのサイトカインおよびケモカインの阻害ももたらした(
図15C)。
【0267】
以下の実験を実施して、BIIB059が、SLE患者に由来する全血においても、健常ボランティアに由来する全血と同様に、TLR9誘導IFNα産生を阻害しうるのかどうかを決定した。この目的で、2例のSLE患者または2例の健常対照に由来する全血を、10μg/mlのBIIB059の存在下で、200μg/mlのCpGAにより刺激し、IFNα産生は、ELISAにより評価した。具体的に、2例のSLE患者または2例の健常ドナーに由来する全血は、一晩にわたる配送を介して、Bioreclamation LLCにより提供された。着荷したら、血液を、10μg/mLのBIIB059またはアイソタイプ対照で処理し、200μg/mLのCpG−Aにより刺激し、96ウェルプレートにまいた。プレートは、37℃で18時間にわたりインキュベートし、上清は、IFNα ELISAアッセイ(PBL InterferonSource)における使用のために回収した。製造業者のプロトコールに従い、アッセイを実施した。
【0268】
図15Bに示す通り、BIIB059は、SLE患者に由来する全血中でも、健常ボランティアと比較して同様の効力を示した。
【0269】
(実施例26)
BIIB059を媒介するI型インターフェロンの阻害の評価
BIIB059の阻害活性はまた、合成TLRアゴニスト(CpG−A)またはより生理学的な刺激(SLE血清)により刺激された精製pDCを使用しても確認した。また、他のpDCに由来するサイトカイン(IL−6)に対するBDCA2架橋結合の阻害効果も決定した。定性的ポリメラーゼ連鎖反応およびELISAなどの様々な手法を使用して、BIIB059活性を確認した。
【0270】
a)Q−PCR
ヒトには、13のIFNαサブタイプおよびIFNβの単一のメンバーが存在する。TLR9アゴニストによる刺激は、大半のI型IFNの上方調節を結果としてもたらす(Ito T.ら、Blood、107巻(6号):2423〜31頁(2006年))。個々のI型IFN遺伝子の阻害は、定性的ポリメラーゼ連鎖反応(Q−PCR)アッセイを使用して評価した。
【0271】
pDCは、2ステップの磁気ビーズ分離手順(MACSキット;Miltenyi Biotec)を使用して精製した。ウェル1つ当たり5×10
4個のpDCを、濃度を増加させたBIIB059または10μg/mLのアイソタイプ対照の存在下または非存在下において、5μMのCPG−Aで刺激した。総アッセイ体積は、ウェル1つ当たり200μlとした。プレートは、37℃で18時間にわたりインキュベートし、RNAは、Trizol試薬(Invitrogen社)を使用して、細胞から抽出し、RNeasy miniカラム(Qiagen Sciences)を使用して、さらに精製した。全てのプライマーおよびプローブは、Applied Biosystems Inc.から購入した。Sequence Detection Software(Applied Biosystems Inc.)を使用して、オリゴヌクレオチド検量線と比較することにより、各試料について、相対転写物量を決定し、対照(GAPDH)に対して正規化した。
【0272】
BIIB059による処理は、試験した全てのI型IFNの転写を阻害し、これにより、抗BDCA2抗体であるクローンAC144を使用する前出のデータが総括された(Cao W.ら、PLoS Biol.、5巻(10号):e248頁(2007年))。
【0273】
b)ELISA
ELISAを使用して、BIIB059の、pDCサイトカインの阻害に対する効果について、タンパク質レベルで試験した。ウェル1つ当たり5×10
4個の精製pDCを、濃度を増加させたBIIB059または10μg/mLのアイソタイプ対照の存在下または非存在下において、5μMのCPG−Aで刺激した。
図17に、3例の試験した健常ドナーのうちの代表的なドナーから測定される、分泌したIFNαおよびIL−6の量を示す。
【0274】
BDCA2を、BIIB059とライゲーションすることにより、IFNα産生が強力に阻害され、CpG−A刺激により誘導されるIL−6の産生が大幅に低減された。
【0275】
(実施例27)
BIIB059に媒介される受容体の内部移行
BDCA2を、抗BDCA2 mAb(クローンAC144、Miltenyi)とライゲーションすることにより、受容体の内部移行が急速に誘導されることが示されている(Dzionek A.ら、J. Immunol.、165巻(11号):6037〜46頁(2000年))。以下の実験は、BIIB059に媒介されるBDCA2の内部移行の反応速度を決定することを対象とした。
【0276】
ヒト全血を、37℃で、示される期間にわたり、10、1、0.1、または0.01μg/mLのBIIB059またはアイソタイプ対照(10μg/ml)により処理し、次いで、FITCで標識された非交差遮断型抗BDCA2 mAb(クローン2D6)、抗HLADR、抗CD123、抗CD14、および抗CD20と共に、4℃で30分間にわたりインキュベートした。赤血球(RBC)は、1倍濃度のEasy−lyse緩衝液(BD Bioscience)を使用して溶解させ、残存する細胞を固定した。
図19Aに、ゲートをかけたCD14−CD20−HLA−DR+CD123+pDCについての2D6−FITC染色の平均蛍光強度(MFI)値を示す。FMO(蛍光マイナスワン対照)は、2D6−FITCを差し引いたFACS染色カクテルからなった。この図中のデータは、実施された3回の独立の実験のうちの代表的な実験である。
【0277】
図19Aに示す通り、1μg/mlのBIIB059と共にインキュベートしたところ、FITCで標識された2D6染色の強度は急速に低下し、37℃でのインキュベーションの1時間以内に、バックグラウンドレベルに到達した。10分の1のBIIB059濃度(0.1μg/ml)で、エンドサイトーシスの反応速度に影響が及び、エンドサイトーシスを、2時間遅延させた。これは、BIIB059とライゲーションすると、BDCA2が、用量依存的反応速度で内部移行されることを裏付ける。
【0278】
以下の実験は、BIIB059に媒介される受容体の内部移行が、IFN阻害に影響を及ぼすのかどうかを確認するために実行した。全血を、健常ドナーのヘパリン添加静脈血から回収し、BIIB059(受容体の内部移行を可能とするために)またはアイソタイプ(isotope)と共に、示される持続期間にわたりプレインキュベートした。プレインキュベーション後の各時点において、細胞を、200μg/mLのCpGAでチャレンジし、37℃でさらに18時間にわたりインキュベートした。IFNα ELISAアッセイ(PBL InterferonSource)における使用のために、上清を回収した。製造業者のプロトコールに従い、アッセイを実施した。
図19Bは、実施された3回の独立の実験のうちの代表的な実験である。
図19Bに示す通り、9時間後、刺激前の、BIIB059を伴うプレインキュベーション(最大の内部移行に対応する)は、IFN阻害に影響を及ぼさなかったことから、BDCA2のエンドサイトーシスと、TLR9の阻害とが、潜在的に関連していることが示唆された。この仮説について試験するために、IFN阻害を媒介することが不可能な抗BDCA2 mAbを使用し、内部移行の欠如を裏付けた。加えて、本発明者らは、二価結合が、抗BDCA2抗体に媒介されるIFN阻害に必要であることも既に示した。実際、Fab断片は、内部移行もIFN阻害ももたらさなかった。まとめると、これらのデータは、BDCA2に媒介されるTLR9阻害が、エンドサイトーシスおよびTLR9を含有するエンドソーム区画への局在化を必要とする可能性を提起する。この仮説は、BIIB059のライゲーションの後における、BDCA2の内部移行および細胞における輸送を追跡する、生体イメージングを使用して試験することができる。
【0279】
(実施例28)
抗体のエフェクター機能
BIIB059のFcドメインは、完全にグリコシル化されたヒトIgG1であり、細胞のFcγ受容体および補体のいずれに対しても結合能を有し、抗原依存性細胞傷害作用(ADCC)および補体依存性細胞傷害作用(CDC)の両方を介する、細胞エフェクター免疫細胞応答の誘導能を有する。BIIB059の、Fc受容体への結合を確認するために、Perkin Elmer由来の増幅型ルミネッセンスプロキシミティホモジニアスアッセイ(Amplified Luminescent Proximity Homogeneous Assay)(ALPHA)技術を使用して、相対結合アフィニティーを測定した(
図20)。アッセイは、試験抗体の段階希釈物を、96ウェルプレート内、4℃で一晩にわたり、受容体−GST融合タンパク質および抗GSTアクセプタービーズと共にインキュベートする、競合的フォーマットで実施した。また、ストレプトアビジンドナービーズおよびビオチニル化野生型IgG1も、個別の試験管内で、4℃で一晩にわたりインキュベートし、次いで、翌日、アッセイプレートに添加した。プレートは、静かに振とうしながら、室温で2時間にわたりインキュベートし、Envisionプレートリーダー(Perkin Elmer)により読み取った。相対結合アフィニティーを決定するために、データは、Graphpad Prismソフトウェアを使用して、4パラメータ曲線の当てはめに対してプロットして、IC50値を計算した。FcγRI:0.03μg/mL、FcγRIIa:11μg/mL、FcγRIIb:17μg/mL、およびFcγRIIIa:3μg/mLに対するBIIB059のIC50値を計算した。これらの値は、このアッセイにおける他のヒトIgG1抗体について観察される値と一致する。また、カニクイザル研究において使用した、24F4の、エフェクター機能が小さいG4P/G1 aglyについてのIC50値も決定した。予測される通り、FcγRIIa、FcγRIIb、およびFcγRIIIaに対する結合は、検出されず、FcγRIへの結合は、100倍低減された。アッセイでは、IgG1 WTフレームワークおよびG4P/G1 aglyフレームワークのいずれにも、5c8抗体を比較物(comparator)として含ませた。
【0280】
(実施例29)
補体結合
抗体による標的のコーティングは、ADCCまたはCDCを介する、強力な死滅化機構を媒介することが示されている。抗体のこれらのエフェクター機能は、抗体のFc領域により媒介される。この実験は、ELISAによりBIIB059のC1qへの結合について試験することにより、補体を動員するBIIB059の能力について試験することを対象とした。
【0281】
C1q結合アッセイは、Maxisorb ELISAプレートを使用して、96ウェルELISAフォーマットで実行した。2〜8℃で一晩にわたり、15μg/mLに始まる、PBS中に3倍の希釈系列の試験抗体をコーティングし、次いでウェルを、PBS、0.05%のTween 20で洗浄し、0.1Mのリン酸Na、pH7.2、0.1MのNaCl、0.1%のゼラチン、0.05%のTween 20 200μlでブロッキングした。その後、ブロッキング/希釈緩衝液中で希釈された、ウェル1つ当たり50μlの2μg/mLの、Complement Technology製のヒトC1q(A099)を添加し、室温で2時間にわたりインキュベートした。吸引および上記の通りに洗浄した後、ブロッキング/希釈緩衝液中で8,000倍に希釈された、ウェル1つ当たり50μlのニワトリIgY抗ヒトC1q(SigmaのヒトC1q:C0660を使用する、Aves Labs,Incによる注文生産)を添加した。室温で1.5時間にわたるインキュベーションの後、ウェルを吸引し、上記の通りに洗浄した。次いで、ブロッキング/希釈液中で5,000倍まで希釈されたロバF(ab’)2抗ニワトリIgY HRPコンジュゲート(Jackson ImmunoResearch;703−030−155)を、ウェル1つ当たり50μlで添加し、室温で1時間にわたりインキュベートした。吸引および上記の通りに洗浄した後、100μlのTMB基質(0.1Mの酢酸ナトリウム/クエン酸緩衝液、pH4.9中に420μMのTMB、0.004%のH
2O
2)を添加し、2分間にわたりインキュベートしてから、100μlの2N硫酸で停止させた。Softmax PRO測定器で、450nmにおける吸光度を読み取り、Softmaxソフトウェアを使用して、4パラメータの当てはめにより、相対結合アフィニティー(C値)を決定した。
【0282】
図21は、BIIB059が、C1qに結合することが可能であるのに対し、24F4A IgG4.P/IgG1 aglyは、C1qへの結合を本質的に欠くことを示す。
【0283】
(実施例30)
細胞枯渇研究
BIIB059は、BDCA2とのライゲーションの後、I型IFNおよびIL−6の産生を強力に阻害する。これらの実験を実行して、そのアゴニスト活性に加えて、その機能的Fcによって、BIIB059により、BDCA2を保有するpDCを枯渇させうるのかどうかも評価した。BIIB059の細胞傷害効力を調べるために、ADCCアッセイおよびCDCアッセイにおけるその活性について試験した。
【0284】
a)ADCCアッセイ
ADCCとは、免疫系のエフェクター細胞が、その表面受容体に抗体が結合した標的細胞を活発に溶解させる機構である(
図22)。
【0285】
CHO細胞系(EAG2456 T1F2 クローン 34.16.7)を標的細胞として使用した。CHO細胞の表面におけるBDCA2の発現レベルは、APCで標識された抗BDCA2 mAb(クローンAC144、Miltenyi)を使用するFACSにより決定した。NK細胞を、エフェクター細胞として使用し、RosetteSep(商標)Human NK Cell Enrichment Cocktail(Stem Cells Technologies)を使用する陰性選択により、全血から分離した。室温で20分間にわたる、カクテルを伴うインキュベーションの後、NK細胞を、ficoll上の不連続勾配遠心分離により単離した。CHO細胞およびヒトNK細胞を、5:1(NK:CHO)の比で播種した。エフェクター機能保有抗BDCA2 mAb(24F4SおよびBIIB059)、Fcの無能化mAb(24F4S−Aglyおよび24F4A−Agly)、またはIgG1アイソタイプ対照の存在下、37℃で4時間にわたりインキュベートした。陰性対照は、抗体を伴わずに、CHO細胞およびNK細胞を含有するウェルからなった。Tx−100で溶解させたNK細胞およびCHO細胞は、最大死滅化を決定するのに使用した。ADCCは、製造業者の指示に従い、Vybrant Cytotoxicity Assayキット(Invitrogen)を使用して評価した。アッセイでは、530nmにおける励起の後で、590nmにおいて蛍光を発するレサズリンのG6PD依存性還元に基づき、損傷細胞に由来するG6PDを検出する。
図22のパネルAで示されるADCCアッセイを、BDCA2発現が多いCHO細胞を使用して実施する(パネルC)一方で、
図22のパネルBにおけるADCCアッセイでは、BDCA2発現が少ないCHO細胞を使用した(パネルD)。
【0286】
24F4Sは、triton Xによる溶解と同様に、BDCA2を保有するCHO細胞の100%の死滅化をもたらした。予測される通り、mAbの非グリコシル化変化形(24F4S−agly)は、ADCCをもたらさなかった(
図22A)。24F4Sと比較したところ、BIIB059のADCC活性は同一であった(
図22B)。死滅化効率がCHO細胞上のBDCA2発現のレベルと相関したことは注目に値する(
図22Cおよび
図22D)。
【0287】
b)CDCアッセイ
補体依存性細胞傷害作用(CDC)では、C1qが抗体に結合することで、補体カスケードが作動し、細胞溶解をもたらす(
図23)。実施例29の節において示される通り、BIIB059は、補体成分C1qに効率的に結合しうる。この実験は、BIIB059は、CDCを媒介しうることを確認するために実施した。
【0288】
安定的なCHO−BDCA2/FcεRIγトランスフェクト体の細胞(EAG2456 T1F2 クローン 34.16.7)を、96ウェルコラーゲンブラックウェルプレート内に細胞5×10
4個で播種し、37℃で48時間にわたりインキュベートした。次いで、プレートを洗浄し、エフェクター機能保有抗BDCA2 mAb(24F4SおよびBIIB059)、エフェクター機能欠損mAb(24F4S−Aglyおよび24F4A−Agly)、またはIgG1アイソタイプ対照の存在下で、ウサギ血清補体およびヨウ化プロピジウム(PI)と共に、37℃で1時間にわたりインキュベートした。陰性対照は、抗体を伴わずに、CHO細胞、ウサギ血清補体、およびPIを含有するウェルからなった。T−100xで溶解させたNK細胞およびCHO細胞は、最大死滅化を決定するのに使用した。プレートは、Cytoflour Fluorescenceプレートリーダー(ex530/em645)を使用して読み取った。抗BDCA2 mAb(BIIB059および24F4S)は、Tritonによる溶解と同様に、CDCによる細胞の死滅化をもたらした。予測される通り、エフェクター欠損非グリコシル化mAb(24F4S−Aglyおよび24F4A−Agly)は、CDCを媒介しなかった(
図23)。その機能的IgG1 Fc領域により、BIIB059は、BDCA2を保有するpDCを枯渇させる潜在力を有する。BIIB059は、BDCA2を過剰発現する細胞において細胞傷害活性を及ぼすことが可能であるが、BIIB059のライゲーションの後における、急速で、持続的で、ほぼ完全な受容体の内部移行に起因して、in vivoでの枯渇はないと予測される。
【0289】
(実施例31)
ラットBDCA2相同体のクローニングおよびBIIB059による結合についてのスクリーニング
ヒトBDCA2のcDNA配列を、NCBIデータベース内のラット配列に対して、BLASTにかけたところ、最も近縁の相同体は、Genbank受託番号NM_001005896において記載されている、ラットClec4b2である。最有力のhu24F4 H4/L1 C95A mAbが、ヒトBDCA2のラット相同体への結合が可能であるのかどうかを決定するために、cDNAをクローニングし、ラットClec4b2およびラットFcεRIγのための発現ベクターを構築した。全長ラットClec4b2タンパク質配列がヒトBDCA2と共有する同一性は、51.0%に過ぎない。ヒトBDCA2(上)とラットClec4b2(下)との、ギャップ処理されたアライメントを下記に示す:
【化31】
【0290】
ラットClec4b2は、プライマー5’GAC CTT CTG AAT ATA TGC GGC CGC CAT GAT GCA GGA AAA AC 3'(配列番号83)(5’側のNotI部位およびKozak配列を、Clec4b2のイニシエーターであるメチオニンの直前に付加する)および5' CCC ACA GCC ATG GAG GAC AGG ATC CTC ATA AGT ATA TTT TC 3'(配列番号84)(3’側のBamHI部位を、Clec4b2ターミネーターの直後に付加する)を伴うRT−PCRにより、ラット脾臓の第1鎖cDNAからクローニングした。0.64kbのRT−PCR産物を精製し、InvitrogenのpCR2.1TOPOクローニングベクターへとサブクローニングし、構築物pCN815を作製し、そのインサートを配列決定した。部位特異的変異誘発は、鋳型であるpCN815上で、プライマー5' CAG GAT TTC ATC AAC GGA ATC CTA GAC ACT CGT TGG G 3'(配列番号85)およびPCRエラーを補正するためのその逆相補体により実施し、構築物であるpCN822を結果としてもたらし、そのClec4b2の推定タンパク質配列が、NM_001005896におけるタンパク質配列と同一であることを確認した。ラットClec4b2全長cDNAのための哺乳動物用発現ベクターは、pCN822に由来する、0.64kbのNotI−BamHI断片を、発現ベクターであるpV90に由来する、1.89kbのBamHI−XbaIベクター骨格断片および4.17kbのXbaI−NotIベクター骨格断片とライゲーションすることにより構築して、発現ベクターであるpCN834を作製し、そのcDNAインサート配列を確認した。
【0291】
ラットFcεRIγ cDNAは、Genbank受託番号NM_001131001において記載されている。ラットFcεRIγタンパク質配列がヒトFcεRIγと共有する同一性は、90.7%である:ヒトFcεRIγタンパク質配列(上)とラットFcεRIγタンパク質配列(下)とのアライメントを下記に示す:
【化32】
【0292】
ラットFcεRIγ cDNAは、プライマー5' CCC AGC GCT GCA GCC CGC GGC CGC CAT GAT CCC AGC GGT 3'(配列番号87)(NotI部位およびKozak配列を、FcεRIγのイニシエーターであるメチオニンの直前に付加する)および5' GAA CAC GTG TTG GGA TCC TAT TGG GGT GGT TTC TC 3'(配列番号88)(3’側のBamHI部位を、FcεRIγターミネーターの直後に付加する)を伴うRT−PCRにより、ラット脾臓の第1鎖cDNAからクローニングした。0.27kbのRT−PCR産物を精製し、InvitrogenのpCR2.1TOPOクローニングベクターへとサブクローニングし、構築物pCN816を作製し、そのインサートを配列決定し、そのインサートが、NM_001131001におけるインサートと同一であることを確認した。pCN816に由来する、0.27kbのNotI−BamHI断片を、pBHS103に由来する、0.66kbのBamHI−XhoIベクター骨格断片および4.16kbのXhoI−NotIベクター骨格断片とライゲーションして、哺乳動物発現ベクターであるpCN844を構築し、そのラットFcεRIγcDNAインサート配列を確認した。
【0293】
最有力のhu24F4 H4/L1 C95A mAbが、表面ラットClec4b2への結合が可能であるのかどうかを決定するために、293E細胞に、EGFPレポーター発現ベクター(pEAG1458)、およびヒトBDCA2/FcεRIγベクター(pEAG2420およびpEAG2413)、またはラットClec4b2/FcεRIγベクター(pCN834およびpCN844)のいずれかを、1:1:1のモル比で、一過性に共トランスフェクトした。トランスフェクションの3日後、細胞を採取し、希釈滴定直接結合FACSアッセイ(dilution titration direct FACS binding assay)において、最有力のhu24F4 H4/L1 C95A mAbで染色し、生存EGFP陽性細胞に対してゲートをかけた。hu24F4の、表面ヒトBDCA2への高アフィニティー結合が観察されたが、表面ラットClec4b2への結合は、検出されなかった。これにより、hu24F4は、ヒトBDCA2の最も近縁のラット相同体に対する交差反応性を有さないことが示される。
【0294】
(実施例32)
BIIB059の、健常カニクイザルへの投与は、おそらく内部移行を介して、BDCA2の、形質細胞様樹状細胞表面からの喪失を結果としてもたらす
BIIB059を、カニクイザルへと投与したときに、BDCA2の表面レベルが変化したのかどうかを評価するために、2つのアッセイを使用した。いわゆる「直接的」方法である、第1のアッセイでは、抗ヒトPEで標識された二次抗体による、表面結合BIIB059を検出する。BDCA2に対する非交差遮断型抗体を使用して、総BDCA2を検出することが理想的であるが、このような抗体は存在しない。したがって、いわゆる「間接的」方法である、第2のアッセイでは、A647とコンジュゲートさせたBIIB059を添加することにより、占有されていないBDCA2を検出する。
【0295】
任意の試験品を投与する前に、各カニクイザルについて、BIIB059のpDCへの結合についての最大平均蛍光強度(MFI)を、3つの異なる時点(BIIB059の単回の注射前である、−3、−2、および−1週目)において確立した。各時点において、滴定量の、標識されていないBIIB059(40〜0.04μg/mLの最終濃度)を、血液のアリコートへと添加し、BIIB059を、PEで標識された二次抗体を使用して検出するか(「直接的」方法)、または遊離BDCA2を、BIIB059−A647により評価した(「間接的」方法)。最大値は、各アッセイのプラトー状態における値から得た(
図24および25)。値を評価することにより、各カニクイザルについての最大MFIのゆらぎは極めてわずかであるが、カニクイザル間の変動は大きいと明らかになったことから、カニクイザルにおけるpDC上のBDCA2密度は変動性であることが示された(表2)。
【表2】
【0296】
全血を、12例のカニクイザルから、週に1回のべ3週間にわたり採取した。血液を、多様な濃度のヒトIgG1であるBIIB059(0.04〜40ug/mL、6点曲線、1:4倍の希釈物)と共にインキュベートした。フローサイトメトリーを使用して、pDCを、CD20−CD14−CD123+HLA−DR+として同定し、抗ヒトIgG PE標識二次抗体で処理して、BIIB059の、pDC上のBDCA2受容体への結合を検出した。PEのMFIは、FlowJoソフトウェアにより計算し、GraphPad PrismソフトウェアによりEC50曲線を作成した。
【0297】
予測される通り、媒体の投与後、BIIB059は、見出されず、BIIB059−A647(10μg/ml)の結合により評価される通り、BDCA2レベルの有意な変化も見出されなかった(
図26)。
【0298】
BIIB059を、10mg/kgまたは1mg/kgで静脈内(IV)投与した後、BIIB059注射の1時間後という早期であってもなお、BIIB059は、表面上で検出されなかった(
図27および28)。また、BIIB059−A647の欠如により評価される通り、38日間を通して、カニクイザル5を除く全ての処置されたカニクイザルについて、遊離BDCA2はなかった;このカニクイザルにおける血清濃度は、10日目に急速に降下したが、BIIB059に対して発生した免疫原性に起因する可能性があった。
【0299】
低用量(0.2mg/kg)のBIIB059を皮下投与した後、BIIB059は、短時間はpDCの表面上で観察された(1時間後における;6時間後までに消失した)。同じ時点(1時間)において、ある程度の遊離BDCA2が観察された(ベースラインMFIの13%、74%、72%)。ここでもまた、研究の残りを通して、薬物は検出されず、BIIB059の注射後14日目まで、遊離BDCA2受容体は検出されなかった(
図29)。
【0300】
全てのカニクイザルにおいて、遊離BDCA2の再出現は、血清中の薬物レベルの、1μg/mlを下回る降下と一致した(
図30および31)。したがって、1μg/mlが、全ての表面BDCA2の内部移行を媒介するのに必要とされるBIIB059の最低濃度であると考えられる。
【0301】
表3は、カニクイザル全血におけるBIIB059とライゲーションされたときの、pDC上のBDCA2受容体の内部移行についてのEC
10、EC
50、およびEC
90をまとめる。4パラメータによる当てはめを使用する、GraphPad Prismソフトウェアにより、EC
10−50−90曲線を生成した。
【数6】
【0302】
まとめると、この実施例において記載されている実験は、BIIB059の、in vivoにおける高用量(10および1mg/kg)のIV投与により、利用可能なBDCA2および結合薬物の両方の、細胞表面からの急速な消失がもたらされることを示し、これにより、受容体の内部移行が示唆される。低用量(0.2mg/kg)のBIIB059の皮下投与は、pDC表面におけるBIIB059のごく一過性の(1時間における)検出を結果としてもたらした。pDC細胞表面上では、6時間までに、BIIB059は、検出可能でなくなった。細胞表面における、利用可能なBDCA2の再出現は、薬物への曝露が、1μg/mLを下回って低下したときに生じた。
【0303】
(実施例33)
BIIB059は、全ての種類のI型IFNに加えて、炎症促進性メディエーターも阻害する
BDCA2のライゲーションは、TLRリガンドに応答してI型IFNを産生するpDCの能力を抑制する(
図16を参照されたい)。抗BDCA2mAbであるBIIB059の阻害活性を確認するため、健常ヒトドナーに由来する精製pDCを、10μg/mLのBIIB059またはアイソタイプ対照mAbの存在下で、合成のTLR9リガンドであるCpG−Aにより刺激した。具体的には、ヒト健常ドナーに由来するpDCは、2ステップの磁気ビーズ分離手順(MACSキット;Miltenyi Biotec)を使用して単離した。ウェル1つ当たり5×10
4個の精製ヒトpDCを、10μg/mLのBIIB059(CpG−A+BIIB059)、またはアイソタイプ対照(CpG−A+Iso)のいずれかの存在下で、非処理(培地)のまま放置するか、または1μMのTLR9リガンド(CPG−A)により刺激した。pDCを含有するプレートは、37℃で18時間にわたりインキュベートし、炎症性サイトカインおよびケモカインの濃度を測定するELISAアッセイまたはマルチプレックスアッセイにおける使用のために、上清を回収した。これらの実験は、BIIB059が、TLR9誘導IFNαならびにTNFαおよびIL−6など、他のpDCに由来するサイトカインのほか、CCL3、CCL4、CCL5など、TLR−9誘導ケモカインを強力に阻害することを示した(
図32)。
【0304】
また、生理学的に関連するリガンドである免疫複合体による刺激の後における、IFNαおよび炎症促進性メディエーターの産生を阻害するBIIB059の能力も調べた。具体的には、Sm/RNP免疫複合体(IC)は、ウシ胸腺に由来するsm−RNPと、SLE患者の血清から精製された抗RNP抗体とを、無血清培地中で1時間にわたり混合することによりあらかじめ形成した。ヒト健常ドナーに由来するpDCは、2ステップの磁気ビーズ分離手順(MACSキット;Miltenyi Biotec)を使用して単離した。ウェル1つ当たり5×10
4個のpDCを、10μg/mLのBIIB059(IC+BIIB059)、またはアイソタイプ対照(IC+Iso)のいずれかの存在下で、非処理(培地)のまま放置するか、またはあらかじめ形成されたSm/RNP ICにより刺激した。pDCを含有するプレートは、37℃で18時間にわたりインキュベートし、炎症性サイトカインおよびケモカインの濃度を測定するELISAアッセイまたはマルチプレックスアッセイにおける使用のために、上清を回収した。これらの研究は、BIIB059は、Sm/RNP免疫複合体により誘導されるIFNαならびにTNFαおよびIL−6など、他のpDCに由来するサイトカインを強力に阻害することを示した。BIIB059は、CCL3およびCCL4など、Sm/RNP免疫複合体により誘導されるケモカインも阻害した(
図33)。
【0305】
(実施例34)
BIIB059は、精製ヒトpDCによる、I型IFNサブタイプのSm/RNP IC誘導転写を阻害する
ヒトには、13のIFNαサブタイプおよびIFNβの単一のメンバーが存在する。BIIB059の、Sm/RNP ICで刺激された、健常ヒトドナーに由来するpDCにおけるI型IFNサブタイプの転写に対する効果は、定性的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)アッセイを使用して評価した。
【0306】
Sm/RNP免疫複合体(IC)は、ウシ胸腺に由来するsm−RNPと、SLE患者の血清から精製された抗RNP抗体とを、無血清培地中で30分間にわたり混合することによりあらかじめ形成した。ヒト健常ドナーに由来するpDCは、2ステップの磁気ビーズ分離手順(MACSキット;Miltenyi Biotec)を使用して単離した。ウェル1つ当たり7.5×10
5個の精製ヒトpDCを、10μg/mLのBIIB059(IC+BIIB059)、またはアイソタイプ対照(IC+Iso)のいずれかの存在下で、非処理(培地)のまま放置するか、またはあらかじめ形成されたSm/RNP ICにより刺激した。pDCを含有するプレートは、37℃および5%のCO2で16時間にわたりインキュベートした。pDC細胞を回収し、qPCR反応において評価するために、pDCに由来するRNAを単離した。
【0307】
この実験は、BIIB059による処理が、試験した全てのI型IFNサブタイプの転写物レベルを阻害することを示した(
図34)。
【0308】
(実施例35)
BIIB059は、健常ドナーおよびSLE患者に由来するヒトPBMCによる、TLR9誘導IFNα産生を阻害する
pDCは、TLR7およびTLR9による刺激に応答する、IFNの主要な産生体である。pDCは、他の任意の細胞型よりも1,000倍多くのIFNを産生しうる。この実験は、pDCの単離の必要なしで、BIIB059により、末梢血単核細胞(PBMC)培養物における、TLR9誘導IFNα産生を阻害し得たかどうかを調べる。健常ヒトドナーまたはSLE患者に由来するPBMCを、1または5μMのTLR9リガンド(CpG−A)で刺激し、ウェル1つ当たり250μLの総アッセイ体積中に10μg/mL〜2ng/mLの範囲の濃度のBIIB059で処理した。プレートは、37℃および5%のCO2で、一晩(18時間)にわたりインキュベートした。IFNα ELISAアッセイにおいて評価するために、上清を回収した。
【0309】
この実験は、BIIB059が、健常ドナーに由来するPBMCによる、TLR9誘導IFNα産生を、0.04±0.05μg/mLの平均IC
50で阻害することを示した(
図35Aおよび35C)。BIIB059は、SLE患者に由来するPBMCによる、TLR誘導IFNα産生の阻害においても、平均IC
50を0.03±0.01μg/mLとする同様の効力を示した(
図35Bおよび35C)。
【0310】
(実施例36)
BIIB059は、TLR9リガンドにより刺激される、全血中のIFNα産生を阻害する
BIIB059の活性はまた、全血アッセイ(WBA)においても評価した。健常ヒトドナーに由来する全血を、濃度を増加させたBIIB059の存在下で、TLR9リガンドにより刺激し、阻害のIC50を、各個別のドナーについて計算した。具体的には、健常ヒトドナーに由来する全血を、ウェル1つ当たり200μlの総アッセイ体積中に10μg/mL〜2ng/mLの範囲で濃度を増加させたBIIB059またはアイソタイプ対照と共にインキュベートした。CpG−Aは、全血中のIFNα産生を刺激するのに最適であると決定される、75μg/mLで添加した(白色四角)。プレートは、37℃で18時間にわたりインキュベートし、IFNα ELISAアッセイ(PBL InterferonSource)における使用のために、上清を回収した。
【0311】
BIIB059は、全血アッセイにおいて、TLR9誘導IFNα産生の用量依存的阻害を示し、PBMC培養物で認められたたものと同様のIC50を示した(
図36)。
【0312】
(実施例37)
BIIB059は、健常ヒトドナーに由来するヒトPBMCによる、TLR3誘導IFNα産生を阻害しない
この実験は、異なるTLRリガンドにより誘発される他の細胞型が、BIIB059の存在下でもなお、I型IFNをやはり産生することが可能であるのかどうかを決定するために実施した。TLR3は、pDC内で発現せず、したがって、TLR3リガンドは、pDCによるIFN産生を誘導しない。ヒト健常ドナーに由来するPBMCを、主に単球によるI型IFN産生を強力に誘導しうるTLR3リガンドであるポリ:ICで刺激した。具体的には、健常ヒトドナーに由来するPBMCを、1μMのTLR3リガンド(ポリI:C)で刺激し、96ウェルプレート内のウェル1つ当たり250μLの総アッセイ体積中に10μg/mL〜0.5ng/mLの範囲の濃度のBIIB059で処理した。プレートは、37℃および5%のCO2で、一晩(18時間)にわたりインキュベートした。ELISAによりIFNαレベルを評価するために、200μLの上清を回収した。
図37に示す通り、BIIB059は、健常ヒトドナーに由来するPBMCによる、TLR3誘導IFNα産生に影響を及ぼさなかった。
【0313】
まとめると、実施例33〜37は、BIIB059は、精製pDC培養物、PBMC培養物、および全血培養物による、TLR9刺激I型インターフェロンを強力に阻害しうることを示す。BIIB059は、健常ヒトドナーおよびSLE患者に由来するpDCによる、TLR9誘導I型インターフェロンの阻害においても同等に強力である。I型IFNの阻害に加えて、BIIB059は、他のpDC由来サイトカインおよびケモカインの産生も阻害しうる。BIIB059は、pDCによる、TLR9誘導I型IFNを特異的に阻害するが、異なるTLRリガンドにより誘発される、他の細胞型によるIFN産生には、影響を及ぼさない。したがって、本明細書で提供されるin vitroデータは、pDCによる、TLR7/9誘導I型IFN産生に対するその特異性に加えて、BIIB059の薬理学的活性および効力も裏付ける。
【0314】
(実施例38)
BIIB059は、ヒトpDCにおけるBDCA2の内部移行を媒介する
BIIB059は、BDCA2の内部移行を誘導するのかどうかを決定するために、10例の健常ヒトドナーに由来するヒト全血を、濃度を増加させたBIIB059と共に、37℃で16時間にわたりインキュベートした。残存する細胞表面BDCA2は、FITCで標識された非交差遮断型抗BDCA2 mAb(クローン2D6)を使用して検出した。
【0315】
具体的には、10例の健常ヒトドナーに由来する全血を、濃度を増加させたBIIB059または10μg/mlのアイソタイプ対照抗体と共に、37℃および5%のCO2で16時間にわたりインキュベートし、次いで、4℃で30分間にわたり、FITCで標識された非交差遮断型抗BDCA2 mAb(クローン2D6)、抗HLA−DR、抗CD123、抗CD14、および抗CD20と共にインキュベートした。次いで、全血を、4℃で30分間にわたり、以下のmAb:FITCで標識された非交差遮断型抗BDCA2 mAb(クローン2D6)、抗HLA−DR mAb、抗CD123 mAb、抗CD14 mAb、および抗CD20 mAbを含む50μLの染色溶液と共にインキュベートした。赤血球(RBC)は、1倍濃度の溶解/固定緩衝液(BD Bioscience)を使用して溶解させた。
図38に示す通り、BIIB059は、FITCで標識された2D6染色の強度の用量依存的減少を、0.017±0.005μg/mLの平均EC
50でもたらした。
【0316】
(実施例39)
BIIB059とライゲーションすると、BDCA2は、急速に内部移行される
BIIB059により誘導されるBDCA2内部移行の反応速度を決定するために、ヒト全血を、異なる濃度のBIIB059と共に、37℃で多様な期間にわたりインキュベートした。具体的には、全血を、10、1、0.1、もしくは0.01μg/mLのBIIB059またはアイソタイプ対照抗体(10μg/ml)により、37℃で示される期間にわたり処理した。次いで、全血を、4℃で30分間にわたり、以下のmAb:FITCで標識された非交差遮断型抗BDCA2 mAb(クローン2D6)、抗HLA−DR mAb、抗CD123 mAb、抗CD14 mAb、および抗CD20 mAbを含む50μLの染色溶液と共にインキュベートした。赤血球(RBC)は、1倍濃度の溶解/固定緩衝液(BD Bioscience)を使用して溶解させ、固定させた。
図39に示す通り、1μg/mlのBIIB059と共にインキュベートしたところ、FITCで標識された2D6染色の強度は急速に低下し、インキュベーションから1時間以内に、バックグラウンドレベルに到達した。BIIB059濃度を10分の1(0.1μg/ml)とするインキュベーションにより、BDCA2の内部移行は2時間遅延した。このデータは、BDCA2内部移行の速度が、BIIB059の用量に依存することを示す。
【0317】
(実施例40)
BIIB059は、ヒト形質細胞様樹状細胞におけるBDCA2の内部移行を誘導する
BIIB059とのライゲーションの後におけるBDCA2の内部移行を視覚化するために、精製pDCを、A647で標識されたBIIB059と共にインキュベートし、共焦点顕微鏡法により解析した。予測される通り、BDCA2は、4℃で、pDCの細胞表面上に局在化した。37℃の短いインキュベーションの後、BDCA2は、細胞内で明確に検出された(
図40)。
【0318】
(実施例41)
内部移行は、BIIB059に媒介される、IFN−α産生の阻害を変化させない
この実験では、BDCA2の内部移行が、pDCによる、TLR9誘導IFNα産生を阻害するBIIB059の能力を変化させるのかどうかについて調べた。細胞を、BIIB059と共に、37℃で、最大のBDCA2内部移行に対応する多様な期間にわたりプレインキュベートし、次いで、TLR9リガンドにより、さらなる18時間にわたり刺激した。具体的には、全血を、健常ドナーのヘパリン添加静脈血から回収し、BIIB059またはアイソタイプ対照抗体と共に、表示される持続期間にわたりプレインキュベートした。プレインキュベーション後の各時点において、細胞を、200μg/mLのTLR9リガンド(CpG−A)で刺激し、37℃でさらに18時間にわたりインキュベートした。IFNα ELISAアッセイ(PBL InterferonSource)における使用のために、上清を回収した。
図41に示す通り、BIIB059を伴うプレインキュベーション(最長で9時間)は、健常ヒトドナーに由来する全血アッセイにおける、TLR9誘導IFNα産生を阻害するBIIB059の能力を変化させなかった。これらのデータは、BDCA2の内部移行は、TLR9シグナル伝達の阻害に必要とされうることを示唆する。
【0319】
(実施例42)
pDCにおけるBIIB059に媒介されるBDCA2の内部移行についてのEC50は、全血アッセイにおいて、pDCによる、TLR9誘導IFNα産生と、BIIB059に媒介される阻害についてのIC50とが相関する
【0320】
BDCA2の内部移行と、TLR9シグナル伝達の阻害との間の関連をさらに調査するため、BIIB059に媒介される、pDC上のBDCA2の内部移行の効力と、pDCによる、TLR媒介IFNα産生の阻害とを、10例の健常ヒトドナーにおいて比較した。
【0321】
BIIB059に媒介されるBDCA2の内部移行を評価するため、全血を、BIIB059と共に、16時間にわたりインキュベートした。次いで、全血を回収し、溶解させ、BDCA2発現を、FITC結合体化非交差遮断型抗体である2D6を使用するフローサイトメトリーにより評価した。BIIB059に媒介される、pDCによる、TLR9誘導IFNα産生の阻害を評価するため、全血を、濃度を増加させたBIIB059と共に、16時間にわたり、TLR9リガンドの存在下でインキュベートした。上清を採取し、IFNαについて、ELISAにより評価した。BIIB059に媒介されるBDCA2の内部移行についてのEC50は、0.02μg/mLであった。BIIB059に媒介される、TLR9誘導IFNαの阻害についてのIC50は、0.07μg/mLであった。BIIB059に媒介されるBDCA2の内部移行についてのEC50と、BIIB059によるIFNαの阻害についてのIC50との相関を、0.57のR二乗値により観察した(
図42)。
【0322】
(実施例43)
TLR9の活性化は、BDCA2の、TLR9とのおよびリソソームマーカーであるLAMP1との共局在化を誘導する
BIIB059に媒介されるTLR9阻害が、BDCA2の、TLR9を含有するエンドソーム/リソソーム区画への内部移行および局在化を必要とするという仮説について試験するために、共焦点顕微鏡法を使用して、BIIB059のライゲーションの後におけるBDCA2の細胞内分布を追跡した。精製されたヒトpDCを、7日間にわたり培養し、A647で標識されたBIIB059と共に、37℃で15分間にわたりインキュベートした。インキュベーションのうちの最後の10分間の間に、細胞を、1μMのTLR9リガンドであるCpG−Aで処理するか、または非処理のまま放置した。細胞を、TLR9に対する蛍光標識抗体および後期エンドソーム/リソソームマーカーであるLAMP1で染色し、共焦点顕微鏡法により解析した。
【0323】
TLR9の、LAMP1との共局在化の増加により証明される通り、TLR9は、TLR9リガンドによる刺激の後で、後期エンドソーム/リソソーム区画へと動員された(
図43)。TLR9の刺激はまた、TLR9およびLAMP1と共局在化するBDCA2画分も有意に増加させた。これらの結果は、BIIB059は、BDCA2に結合すると、活性化TLR9が存在する細胞内区画へと優先的に局在化することを示唆する。
【0324】
まとめると、実施例38〜43は、BDCA2に対するヒト化モノクローナル抗体であるBIIB059は、BDCA2に結合し、その内部移行をもたらすことを示す。刺激されると、BDCA2は、エンドソーム/リソソーム区画でTLR9と共局在化し、そこで、TLR9シグナル伝達の阻害を媒介する。これらのデータは、BDCA2の内部移行が、pDCによる、TLR9誘導炎症促進性メディエーターの阻害を媒介するのに必要なステップであることを示唆する。
【0325】
(実施例44)
BIIB059の、CD62Lレベルに対する効果
循環pDCは、高レベルのCD62L(L−セレクチン)を発現させ、高内皮細静脈(HEV)含有リンパ系組織へとホーミングする。PNAdとは、HEV上で構成的に発現し、CD62L発現細胞の、組織化されたリンパ系組織へのホーミングを媒介するCD62Lに対するリガンドである。PNAdは、皮膚エリテマトーデス病変内の皮膚内皮細胞により発現することが見出された。それらのCD62L発現のために、pDCは、PNAdを発現させる炎症性末梢組織へと動員されうる。
【0326】
BIIB059が、ヒトpDCの表面におけるCD62Lの発現に影響を及ぼすのかどうかを決定するために、全血を、刺激なしで、種々の濃度のBIIB059により、37℃で1時間にわたり処理した。具体的には、健常ヒトドナーに由来する全血を、濃度を増加させたBIIB059により、37℃および5%のCO2で1時間にわたり処理した。CD62LのMFIは、CD14−、CD20−、HLA−DR+、およびCD123+により定義されるとおりのpDCにゲートをかけることにより決定した。
【0327】
フローサイトメトリーにより評価される通り、BIIB059は、ヒトpDCの表面におけるCD62L発現の、用量依存的減少を引き起こした(
図44)。pDCの、TLRリガンドによる刺激は、CD62Lの発現に影響を及ぼさなかった(
図44A)。
【0328】
(実施例45)
PBMCの、GM6001による処理は、ヒトpDCの表面からの、BIIB059に媒介されるCD62Lの脱落を阻害する
メタロプロテイナーゼは、免疫細胞の表面からのCD62Lの脱落を誘導することが公知である。メタロプロテイナーゼが、BIIB059に媒介される、表面CD62Lの減少に関与するのかどうかを調べるために、PBMCを、健常ヒトドナーから調製し、GM6001(メタロプロテイナーゼ阻害剤)で、37℃および5%のCO2で30分間にわたり前処理した後、10μg/mLのBIIB059を、1時間にわたり添加した。CD62Lの表面発現は、フローサイトメトリーによりアッセイした。GM6001は、BIIB059に媒介される、CD62Lの下方モジュレーションを、用量依存的に阻害した(
図45)。これらのデータは、BIIB059が、CD62Lの脱落を、メタロプロテイナーゼ依存的に誘導することを示唆する。
【0329】
まとめると、実施例44および45は、BIIB059が、ヒトpDCの表面におけるCD62Lの発現を減少させることを示す。BIIB059に媒介される、CD62Lの下方モジュレーションが、メタロプロテイナーゼ阻害剤(GM6001)により阻害されることから、BIIB059が、少なくとも部分的に、メタロプロテイナーゼの活性化を介して、CD62Lの、ヒトpDCの表面からの脱落を誘導することが示される。したがって、BIIB059処置は、SLEにおける、pDCの、標的臓器への輸送を低減または防止することが期待される。
【0330】
(実施例46)
免疫複合体に媒介される、形質細胞様樹状細胞によるIFN産生に対する、BIIB059のFc領域の影響
Fcγ受容体IIA(CD32a)とは、IgGに低アフィニティーで結合する、細胞表面タンパク質である。ヒト形質細胞様樹状細胞は、CD32aである、Fcγ受容体IIAをもっぱら発現させる。pDCの、免疫複合体による刺激は、CD32に依存することが示されている。免疫複合体は、CD32により内部移行され、エンドソームのTLR7/9を刺激して、pDCによるIFN産生を誘導する。
【0331】
BIIB059の、CD32a表面発現に対する効果を決定するために、単離pDCを、濃度を増加させたBIIB059、または抗体の非グリコシル化形態である24F4−Aにより処理し、37℃で16時間にわたりインキュベートした。次いで、pDCを、FITCで標識されたBDCA2およびPEで標識された抗CD32(クローンAT10)で染色し、BDCA2およびCD32の表面発現を、フローサイトメトリーにより評価した。BIIB059およびagly変化形である24F4−Aは、BDCA2の内部移行を誘導するそれらの能力において、同等に強力であった(
図46A)。CD32の平均蛍光強度(MFI)の、用量依存的減少により示される、pDCの細胞表面におけるCD32の下方モジュレーションを誘導することが可能なのは、BIIB059だけであった(
図46B〜D)。エフェクター機能保有アイソタイプ(istoype)対照による処理は、CD32の表面レベルに対して効果を及ぼさなかった(
図46)。これらのデータは、BIIB059に媒介される、pDCの表面におけるCD32aレベルの下方モジュレーションが、BIIB059のFc領域の結合に特異的であることを示す。
【0332】
BIIB059のFc領域の結合が、FITCで標識された抗CD32 mAbにより認識されるCD32のエピトープを単に遮蔽するわけではないことを確認するために、pDCを、10μg/mLのBIIB059により、4℃または37℃で1時間にわたり処理し、次いで、標識された抗CD32で染色した。
図46Eに示す通り、4℃でのBIIB059による処理が、CD32のMFIを低下させなかったことから、BIIB059による処理は、標識された抗CD32 mAbの結合に干渉しないことが示される。CD32aの下方モジュレーションが、37℃でBIIB059と共にインキュベートしたときに限り生じたという事実は、CD32aが、pDCの細胞表面から失われた可能性があることを示唆する。
【0333】
BIIB059によるCD32aの下方モジュレーションが、生物学的影響を及ぼすのかどうかを決定するために、pDCを、濃度を増加させたBIIB059、または非グリコシル化形態である24F4A−Aglyの存在下でインキュベートし、免疫複合体または合成のTLR9リガンド(CPG−A)で刺激した。予測される通り、BIIB059と、24F4A−Aglyとは、CD32非依存性の、pDCによる、CPG−A誘導IFNαを阻害するそれらの能力では識別不可能であった(
図47A)。pDCを免疫複合体で刺激したところ、BIIB059と24F4A−aglyとの間では、効力の明確な隔たりがあった。BIIB059は、免疫複合体により誘導されるIFNαを、24F4A−Aglyによる1.4μg/mLのIC50と比較して、0.04のIC50で阻害した(
図47B)。これらのデータは、BIIB059が、その機能的Fcのために、CD32aを下方モジュレートし、したがって、免疫複合体によるpDCの刺激を阻害することを示す。
【0334】
CD32aの下方モジュレーションが、BIIB059に固有であることを確認するため、本発明者らは、完全ヒト化抗CD40抗体の、CD32レベルと、免疫複合体に媒介される、pDCによるIFNα産生とに対する効果を調べた。CD40とは、pDC上で発現する細胞表面タンパク質である。完全に機能的なFcを伴う抗CD40抗体は、CD40に結合し、かつ、pDCの表面のCD32に結合する能力を有する。抗CD40 mAbによる処理は、CD32の表面発現に対して効果を及ぼさず、免疫複合体で刺激されたpDCからのIFNα産生に対しても有意な効果を及ぼさなかった(
図48AおよびB)。抗CD40 mAbの結合は、抗CD40で処理された細胞における、CD40への最大の結合を裏付けることにより確認した(
図48C)。
【0335】
既に示した通り、BDCA2を、BIIB059または非グリコシル化形態である24F4A−Aglyとライゲーションすることにより、受容体の内部移行と、pDCによる、TLR9誘導IFNαの阻害とがもたらされる。この研究において、本発明者らは、BIIB059が、pDC上のCD32aの下方モジュレーションと、pDCによる、免疫複合体刺激IFNα産生の阻害とを、Fc依存的に引き起こすことを示す。BIIB059により誘発される、CD32aの下方モジュレーションは、単にpDC上で発現する細胞表面分子に結合することが可能な機能的Fcを有する任意の抗体から生じるわけではない。この研究は、有効性の増強をもたらす、そのFab’2領域およびFc領域の両方を介して、pDC応答を低下させうる、エフェクター機能保有抗BDCA2 mAbの、新規の治療的潜在能力を強調する。
【0336】
(実施例47)
BIIB059の、ヒドロキシクロロキン(HCQ)との相互作用
SLEの処置では、ヒドロキシクロロキン(HCQ)などの抗マラリア剤が使用されてきた。HCQで処置されたSLE患者に由来するpDCは、TLR7リガンドおよびTLR9リガンドで刺激したときにIFNαを産生する能力を低下させた。BIIB059およびHCQのいずれも、TLR7/9により誘導される、pDCにおけるIFNαに影響を及ぼすので、BIIB059の効果とHCQの効果とが冗長性でありうるのかどうかを調べた。
【0337】
この問題に取り組むため、ヒトPBMCを、健常ドナーに由来する血液から調製し、種々の濃度の、BIIB059単独、HCQ単独、またはHCQと組み合わせたBIIB059の存在下で、TLR7リガンドまたはTLR9リガンドのいずれかにより刺激した。18時間後に上清を採取し、ELISAによりIFNαについてアッセイした。HCQの添加は、BIIB059の効力を増大させ、健常ヒトドナーに由来するPBMCによる、TLR7およびTLR9誘導IFNα産生に対するさらなる阻害効果をもたらした。これらのデータは、BIIB059の活性とHCQの活性とが冗長性ではなく、HCQなどの抗マラリア化合物と共に投与される場合の、BIIB059のさらなる治療的利益を強調することを裏付ける。
【0338】
(実施例48)
in vivoにおける、BIIB059の、BDCA2を発現するpDCに対する効果
この研究の目的は、BIIB059の、カニクイザルへの投与が、末梢血中のpDCの枯渇を媒介するのかどうかを決定することであった。
【0339】
4回分のBIIB059投与前採血物を、毎週の間隔で、12例のカニクイザルから回収して、ベースラインのpDC頻度を、各動物について確立した(表3)。
【表3】
【0340】
全血を、12例のカニクイザルから、週1回のべ4週間にわたり採取した。フローサイトメトリーを使用して、pDCを、CD20−CD14−CD123+HLA−DR+として同定した。CD20−CD14−細胞のパーセントとしてのpDCは、FlowJoソフトウェアにより計算した。
【0341】
全ての統計学的解析では、pDC頻度を対数変換して、歪度を低減した(
図51)。
図51の左側のパネルにおけるpDC頻度の元の分布は、大きく右側に歪んでいた。しかし、対数変換の後、変換されたpDC頻度の分布(
図51、右パネル)は、ほぼ正規分布に従った。これらの対数変換データは、全ての統計学的解析法に使用した。
図52は、pDCレベルを、各カニクイザルについて、IV注射前の4つの時点にわたり、対数スケールで示す。固定係数としての4つの時点およびカニクイザルについてのランダム切片を伴う線形混合効果モデルを使用して、本発明者らは、全てのサルについてのpDC百分率の幾何平均が、4つの投与前時点にわたり等しいことを結論付けた(
図53、F検定に基づく時間についてのp値:0.67)。この解析により、循環pDCの百分率の幾何平均は、カニクイザルについて、ある時間にわたり、比較的安定であることが示された。
【0342】
これら12例のカニクイザルのうちの9例を、3つの群(群1つ当たり3例ずつ)へと分け、各群内で等しいBDCA2密度およびpDCパーセントの表示を含むように無作為化した。カニクイザルには、媒体(クエン酸ナトリウム)、10mg/kgのBIIB059、または1mg/kgのBIIB059のうちのいずれかの単一静脈内注射を施した。フローサイトメトリーを使用して、全血中の循環pDCを、CD20−CD14−CD123+HLA−DR+として同定し、各時点におけるpDC頻度(対数スケールで)を、Rソフトウェアによりグラフ化した(
図54)。カニクイザルについてのランダム切片ならびに投与群および期間:1時間、6時間、1〜27日間、および28日間超についての固定効果を使用して、線形混合効果モデルを、対数(pDC)頻度へと当てはめた。pDCが、異なる期間において、異なる投与群の間で変化したのかどうかを評価するために、予備モデルにはまた、投与群および異なる期間についての相互作用項も組み入れた。0に等しい全ての相互作用項を検定するためのF検定に基づくp値は、0.81であり、これは、pDCの変化については、異なる投与群の間で差異がないことを示す。よって、最終的な当てはめモデルには、期間の係数および投与群の係数についての統計学的に有意な効果だけを組み入れた(表4)。
【0343】
表4:単回の静脈内BIIB059注射または媒体注射の後の時点についての、モデルの当てはめによる推定値
【0344】
カニクイザルにおけるクエン酸ナトリウム媒体、1mg/kgのBIIB059、または10mg/kgのBIIB059のIV投与の前および後における、対数スケールによる循環pDCパーセントについての、カニクイザルについてのランダム切片と、投与群ならびに1時間、6時間、および28日間超の時点レベルについての固定係数とを使用する、線形混合効果モデルを使用する、固定効果の推定値
【表4】
【0345】
固定係数についてのパラメータ推定値を指数化して、それらを、BIIB059投与前と比較した、これらの期間におけるpDC頻度の比として解釈した。IV注射の1時間後におけるpDC頻度を、投与前におけるpDC頻度と比較したところ、総じて、比は、有意に1未満であった(95%CI:0.43〜0.77、p値:0.0003)。IV注射の6時間後におけるpDC頻度を、投与前におけるpDC頻度と比較したところ、比は、有意に1を超えた(95%CI:1.18〜2.12、p値:0.003)。IV注射の1〜28日後におけるpDC頻度を、投与前におけるpDC頻度と比較したところ、比は、1と有意に異ならなかった。IV注射後の28日後におけるpDC頻度を、投与前におけるpDC頻度と比較したところ、比は、有意に1未満であった(95%CI:0.55〜0.70、p値:<0.0001)。最終的な当てはめモデルを、
図55にプロットした。結果から、IV注射の1時間後に、カニクイザルのin vivoにおける循環pDCの有意な枯渇があり、6時間後に、循環pDCの有意な増加があり、28日後に、有意な循環pDCの枯渇があるが、時間全体にわたるpDCパーセントの変化は、全ての処置群について同じであることが明らかになった。
【0346】
加えて、IV研究時点の完了後、これらのカニクイザルのうちの3例(4、6、および12)に、0.2mg/kgのBIIB059の単回皮下投与を施して、循環pDC頻度に対する低用量の効果を評価した。各時点におけるpDC頻度(対数スケールで)を、Rソフトウェアによりグラフ化した(
図56)。線形混合効果モデルは、固定係数としての連続時間および1時間の時点、ならびにランダム切片としてのカニクイザルを使用して当てはめた。結果を、表5に示す。
【0347】
表5:単回の皮下BIIB059注射の後の時点についての、モデルの当てはめによる推定値
カニクイザルにおける0.2mg/kgのBIIB059の単回皮下注射の前および後における、対数スケールによる循環pDCパーセントについての、固定係数としての連続時間および1時間の時点、ならびにランダム切片としてのカニクイザルを使用する、線形混合効果モデルを使用する、固定効果の推定値
【表5】
【0348】
前出の結果と同様、本発明者らは、IV注射の1時間後に、カニクイザルのin vivoにおける循環pDCの有意な枯渇(95%CI:0.34〜0.55、p値<0.0001)を観察したが、3例のカニクイザルについてのpDC%の幾何平均は、時間が延長されるにつれて、着実に増加した(95%CI:1日当たり1.00〜1.03倍の変化、p値<0.0001)。当てはめモデルを、
図57にプロットした。
【0349】
結論として述べると、これらのデータは、試験用量で投与された場合に、BIIB059が、カニクイザルの血液中の、pDCの持続的な枯渇を媒介しないことを示す。これは、BDCA2の内部移行に起因する可能性がある。
【0350】
(実施例49)
BIIB059のカニクイザルへの投与は、ex vivoの全血アッセイにおける、TLR9誘導IFNα産生の阻害を結果としてもたらす
この研究の目的は、in vivoにおいてカニクイザルへと投与された場合のBIIB059が、ex vivoの全血アッセイ(WBA)において、TLR9による刺激に応答して、IFNαの産生を変化させうるのかどうかを決定することであった。
【0351】
静脈内投与経路および皮下投与経路を、
図58に概括される実験計画に従い、MxAバイオアッセイを使用して測定される、IFNαの誘導に影響を及ぼすそれらの能力について評価した。TLR9リガンド(CpG−A)が、全ての時点にわたり、全てのカニクイザルの全血培養物中で、測定可能量のIFNαを誘導したのに対し、対照の、PBSで処理された培養物中では、IFNαは検出されなかった(データは示さない)。
【0352】
静脈内投与されたカニクイザルでは、処理後のIFNα値を、各動物についての投与前平均値の百分率として計算した。この時点以後、10mg/kg BIIB059群については全血アッセイを実施しなかったので、14日目以降の採血についてのデータは、解析から除外した。1mg/kg BIIB059投与群および10mg/kg BIIB059投与群における薬物投与の数日後において、IFNα%の、投与前平均値と比べた低減への傾向が、媒体群と比較して観察された(
図59)。
【0353】
二元混合効果分散分析(ANOVA)を使用して、データについてのより包括的な解析を実施して、IV研究における各投与群についての平均IFNαおよび投与前と対比した投与後の差異を推定した。投与後最初の24時間におけるデータは、末梢血形質細胞様樹状細胞百分率において減少が観察されたために除外した。投与後31日目以降の採血についてのデータは、この時期に観察されるBDCA2発現の復帰のために、解析から除外した。媒体投与群では、投与前のIFNαの幾何平均は、1mL当たり362単位(U/mL)であり、投与後のIFNαの幾何平均は、314U/mLであり、1mg/kg投与群では、投与前の幾何平均は、399U/mLであり、投与後の幾何平均は、237U/mLであり、10mg/kg群では、投与前のIFNαの幾何平均は、211U/mLであり、投与後のIFNαの幾何平均は、102U/mLであった(
図4)。平均log10 IFNαの投与後−投与前の差異は、媒体群が−0.061(p=0.511)であり、1mg/kg群が−0.226(p=0.016)であり、10mg/kg群が−0.317(p=0.004)であった。常用対数の真数変換(anti−log10 transformation)の後、これらの結果から、媒体群の、投与前と比較した投与後のIFNα濃度は、10
−0.061=87%(95%CI:57%〜133%)であり、1mg/kg群の、投与前と比較した投与後のIFN濃度は、10
−0.226=59%(95%CI:39%〜91%)であり、10mg/kg群の、投与前と比較した投与後のIFN濃度は、10
−0.317=48%(95%CI:29%〜79%)であることが明らかになった(
図60)。
【0354】
皮下投与されたカニクイザルコホートでは、ランダム効果を伴う一元分散分析(ANOVA)を使用して、全群についての平均IFNαおよび投与前と対比した投与後の差異を推定した。投与後最初の24時間におけるデータは、末梢血形質細胞様樹状細胞百分率において減少が観察されたために除外した。投与後33日目以降の採血についてのデータは、この時期に観察されるBDCA2発現の回復のために、解析から除外した。皮下投与群では、投与前のIFNαの幾何平均は、1243U/mLであり、投与後のIFNαの幾何平均は、812U/mLであり、65%の投与後/投与前比をもたらした。平均log10の投与後−投与前の差異は、−0.185(p=0.059)であると推定され、これは、常用対数の真数変換の後、投与前幾何平均の10
−0.185=65%に対応し、この効果についての95%CIは、41%〜102%である(
図61)。
【0355】
実験では、ごく少数のカニクイザルを使用したので、各サルについて決定されるIFNα濃度は、その群の結果に高度に影響を及ぼす。静脈内研究における動物の差異に起因する変動の比率は、変動性全体の69%であり、残りは主に、カニクイザルの中の時点間の差異に起因し(26%)、少量がアッセイにおける変動源に起因した(<6%)。カニクイザル間の変動は、カニクイザルの中の時点間の変動よりはるかに大きいことから、この実験には、より多くの採血時点を追加するよりも、カニクイザルを追加することにより、研究の検定力が増大することが示唆される。皮下研究におけるカニクイザルの差異に起因する変動の比率は、変動性全体の45%であった。残りは大半が、カニクイザルの中の時点間の差異に起因し、わずかな量がアッセイにおける変動源に起因した(<2%)。
【0356】
カニクイザル全体にわたり観察される変動性およびカニクイザルの中で観察される変動性は、カニクイザルの生理学的状態のゆらぎ、血液の細胞組成のゆらぎ、細胞の分子組成のゆらぎ、および機能アッセイの精度のゆらぎを含むいくつかの因子に起因しうる。
【0357】
ある時間にわたる、各動物における形質細胞様樹状細胞百分率には、ある程度のゆらぎがあるが、血液中のpDC%は、BIIB059による処置の影響を受けず(Rsch−2013−046を参照されたい)、IFNα産生との一貫した相関を示さなかった。加えて、BDCA2の、細胞表面からの、急速かつ持続的な喪失も、BIIB059のIV投与およびSC投与の後におけるpDCにおいて観察されたことから、高レベルの受容体占有が示唆される(Rsch−2013−043を参照されたい)。カニクイザルに由来するpDCの、TLR9による刺激に対する応答性の、高レベルの変動性を考慮しても、BIIB059の静脈内投与および皮下投与の後では、IFNα応答の低下への傾向があり、10mg/kgのIV投与群における最大の低減に、0.2mg/kgのSC群が続き、次いで、1mg/kgのIV群が続いた。
【0358】
結論として述べると、カニクイザルへとin vivoで投与した場合のBIIB059は、ex vivo WBAにおいて、TLR9誘導IFN産生の阻害への傾向を示した。
【0359】
他の実施形態
その詳細な記載と共に、本発明について記載してきたが、前出の記載は例示することを意図するものであり、付属の特許請求の範囲の範囲により定義される、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。他の態様、利点、および改変も、以下の特許請求の範囲の範囲内にある。