(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記主軸に垂直な方向(Y軸方向)に対する前記副羽根の傾斜角Bと、前記主軸の軸方向に対する前記ハブの前記外周面の傾斜角Hとにより表される前記副羽根の勾配比(B/H)が、0.25〜1.5の範囲となるように構成されていることを特徴とする請求項8に記載の船舶の推進装置。
前記副羽根の半径長さAと、前記ダクトの全長Cとにより表される前記副羽根の半径比(A/C)が、0.3〜0.7の範囲となるように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の船舶の推進装置。
【背景技術】
【0002】
船舶の操縦性能及び推進効率に対する関心が増大するにつれて、船舶に搭載された主推進装置及び補助推進装置に対する関心も増大しつつある。例えば、ドリルシップ(掘削船)などの船舶には、高速又は低速で航行する航海中に位置を精密に制御したり他の船舶を曳引したりするためにスラスト(推力)を発生させるアジマススラスタが備えられている。
【0003】
アジマススラスタは、その用途に応じて、ダクトを有しない開放型スラスタ(例えばプロペラ)と、翼形状の断面(翼形断面)を有するダクトをプロペラの周囲に設けたダクト型スラスタが挙げられる。
【0004】
これらのアジマススラスタは、船体内部に配置され水平方向に回転可能なギアを具備するため、あらゆる方位角、即ち、全方位に対してスラストを発生させることができる。また、ドリルシップが波漂流力、風による外力、潮流による外力などの環境荷重に対抗して掘削作業を行うためには、ダイナミックポジショニング(DP:自動船位保持)が不可欠である。
【0005】
また、ドリルシップが掘削現場まで運航するために、補助推進装置としてアジマススラスタを用いることで、アジマススラスタの一般的な航行条件も非常に重要となり、航行中に大きな曳引力が必要になるとき、曳引条件に応じて大きな曳引力を発生させることも非常に重要となり得る。
【0006】
特に、プロペラが回転するときにプロペラの後方中央に渦が集中して発生するが、これらの渦は、プロペラに流入する流体の圧力を低下させ、船体の抵抗方向に力を発生させることになるので、プロペラの推進効率が低減し得る。
【0007】
これに関連して、『ダクト付きスラスタ及びそれを備えた船舶』(韓国公開特許第10−2012−0098941号公報)(特許文献1)を参考にすることができる。
【0008】
特許文献1では、ダクトの断面形状は、高速航行時にダクト前端の外面における圧力変化を抑制するように標準翼形から外方に円弧状断面で膨出する膨出部を備え、該ダクトは、低速作業時に所定の曳引力を発揮するように前縁方向が広がる開き角を有していることを特徴としている。
【0009】
しかし、特許文献1には、ダクト軸心(X軸又はプロペラの中心軸)に平行なダクト内面の平行部からノーズ及びテールまでの各距離が開示されておらず、プロペラの羽根の先端部が回転しながら描くスラスタ面(Y−Z平面:プロペラの回転面)の位置を基準にして平行部の前方領域及び後方領域がどの数値範囲内にあるかについての重要設計因子も開示されていない。そこで、そのような重要設計因子が全推力、プロペラトルク及びスラスタ全体の単独効率にどのような影響を及ぼすのか分からず、その上、特許文献1の内容だけでは、より高い推進効率を有しかつ高精度の位置調整性能及び高効率の曳引性能を発揮し得る推進装置を開発することができなかった。
【0010】
また、特許文献1には、単に外方に膨出する膨出部と、前縁方向が広がる開き角とが開示されているだけで、プロペラによって発生する渦を低減させるための如何なる技術も開示されていない。よって、船舶又は海洋構造物がほぼ停止した状態でプロペラのみが定格RPMで回転するボラード状態でプロペラ後流の回転成分を吸収することは困難であり得る。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態について、添付された図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明を説明するにあたって、公知の構成又は機能に関する具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にするおそれがあると判断された場合には、その詳細な説明を省略する。
【0021】
また、本発明の一実施形態に対する比較例は標準翼形であって、ダクト型アジマススラスタのような種類のダクトに対する製作性が高いため一般的に採用されているマリン19A(marin 19A)翼形(以下、比較例と呼ぶ)である。
【0022】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る推進装置のダクトを示す例示図であり、
図2は、
図1に示したダクトの2次元CFD(数値流体力学)計算による流線分布を示す図である。
【0023】
図1を参照すると、第1の実施形態に係る推進装置は、船体側のギアケース及び回転シャフトから動力を伝達するハブ200と、ハブ200の外周面に沿って並ぶ複数枚の羽根からなるプロペラ300と、プロペラ300の周囲の環状のダクト100とを含み得る。
【0024】
ダクト100の断面形状は、プロペラ300の回転軸(X軸)を基準にしてダクト100の全周囲に沿って同一の断面形状を有し得る。
【0025】
例えば、ダクト100の断面形状は、ドリルシップや海洋構造物のような船舶の運航特性、船舶の位置制御特性、又は氷海に閉じ込められた他の船舶を曳引する特性を全て考慮して、ダクト型推進装置の効率を向上させ得るように最適化された設計因子を有するダクト100の外面G1及び内面G2を有することができる。
【0026】
ダクト100の断面形状は、ベルヌーイの定理に則して揚力を発生させるための翼形状の断面を有し、ダクト100の翼形断面の前方頂点であるノーズ104及び後方頂点であるテール108と、ノーズ104とテール108とを結ぶ直線分である翼弦線(ノーズテールライン)105とを含み得る。
【0027】
ダクト100の断面形状は、翼弦線105の前端から上方向に凸に形成された前方部分113と、翼弦線105の後端から下方向に凹に形成された後方部分112とを有するダクト100の外面G1を含み得る。
【0028】
ここで、ダクト100の外面G1の前方部分113は、翼弦線105がダクト100の外面G1に接する点からノーズ104までの曲面を意味し得る。
【0029】
また、ダクト100の外面G1の後方部分112は、翼弦線105がダクト100の外面G1に接する点からテール108までの曲面を意味し得る。
【0030】
前方部分113及び後方部分112は、翼弦線105がダクト100の外面G1に接する点において途切れなく互いに連結され得る。
【0031】
上述の通り、ダクト100の外面G1の前方部分113は、翼弦線105の前端から上方向に凸に形成されている。
【0032】
図2を参照すると、ボラード状態において、前方外側領域における流動を表す図中の符号「J1」は、ダクトのノーズ側への流れのパターンを示している。よって、ダクトの外面の前方部分は翼弦線の上方向に凸に形成されているため、プロペラへの流速が加速されることを示している。このような加速効果によって、ダクトのスラストを向上させ、かつプロペラのトルクを減少させることができる。
【0033】
一方、再び
図1を参照すると、ダクト100の外面G1の後方部分112は、翼弦線105の後端から下方向に凹に形成されている。
【0034】
再び
図2を参照すると、ボラード状態において、符号「J2」で示した後方外側領域における流動はダクトのテール側に滑らかに流れ、テールの周囲で渦を形成してダクトのスラストを向上させるという効果を奏する。
【0035】
また、
図1を参照すると、ダクト100の断面形状は、プロペラ300の回転軸(X軸)と翼弦線105とのなす角度である迎え角(α)を有し得る。ここで、ダクト100の迎え角(α)は5〜20°の範囲から選択された何れかの角度を有し得る。
【0036】
また、ダクト100の断面形状は、プロペラ300の回転軸(X軸)に平行な平行部111と、平行部111からノーズ104までのY軸方向の第1の距離Fに対応する範囲内で平行部111の始端109からノーズ104まで徐々に突出した曲面をなすダクト内面前方部分106と、第1の距離Fよりも小さい平行部111からテール108までのY軸方向の第2の距離Kに対応する範囲内で平行部111の終端110からテール108まで徐々に突出した曲面をなすダクト内面後方部分107とを有するダクト100の内面G2を含み得る。
【0037】
また、平行部111は、プロペラ300が回転しながら描く円形面であるプロペラ面(Y−Z平面)の位置103を基準にして前方領域M及び後方領域Nを有する。平行部111の前方領域M及び後方領域Nは、船舶の運航特性、位置制御特性及び曳引特性を全て考慮した重要なダクト設計因子であって、3次元CFD計算によるスラスト性能を極大化するために全長Cに対する比率%の範囲(M/C,N/C)に限定され得る。
【0038】
図3は、
図1に示したダクトにおいて、プロペラ面の位置を基準にして全長に対する平行部の前方領域及び後方領域の比率の範囲による推進効率の変化の傾向を示すグラフである。
【0039】
図1及び
図3を参照すると、3次元CFD計算を用いて、プロペラ300が装着された船舶の位置制御特性及び曳引特性を確認することができるよう、ボラード状態におけるダクト100の推進効率(η
0,Merit coefficient)(グラフの縦軸)、全長Cに対する平行部111の前方領域Mの範囲(M/C)(グラフの横軸)及び全長Cに対する平行部111の後方領域Nの範囲(N/C)(グラフ中の複数の曲線)が示されている。
【0040】
ここで、推進効率(η
0)は、ダクト型プロペラ、アジマス型プロペラ等のように曳引又は位置制御の条件での性能を重要な設計条件として考慮して、次式1で求められることができる。
【0041】
比較例として、特許文献1では、スラスタ全体の単独効率[=KttJ/(2πKq)]を求めたのに対して、本実施形態では、次式1によって求められ、プロペラスラスト、ダクトスラスト、プロペラトルク、プロペラ直径、プロペラ回転数及び流体密度(例えば、清水密度)のを変数とする曳引及び位置制御の条件が考慮される。
【0043】
上式1において、η
0は推進効率、T
Pはプロペラスラスト、T
Dはダクトスラスト、Qはプロペラトルク、D
Pはプロペラ直径、nはプロペラ回転数、ρは流体密度(例えば、清水密度)である。
【0044】
図1及び
図3を参照すると、本実施形態におけるダクト100の断面形状は、プロペラ面の位置103から全長Cに対する−4.0%〜14.0%の範囲(M/C)となる平行部111の前方領域Mと、プロペラ面の位置103から全長Cに対する−30.0%〜−10.0%の範囲(N/C)となる平行部111の後方領域Nとを含み得る。ここで、(−)値とは、X軸方向においてプロペラ面の位置103を原点としたときの(−)方向をいう。即ち、M/C値が−4.0%であることは、
図1において、平行部の始端109がプロペラ面の位置103から右側に全長Cの4%だけ離れていることを意味する。つまり、X軸方向の(+/−)の基準点はプロペラ面の位置103であるため、ダクトの形状が同一であってもダクト100又はプロペラの設置位置が変われば基準点の位置も変わる。この結果、M/C及びN/Cの値が変わり、効率も変わる。
【0045】
特に、ダクト100において、プロペラ300に隣接する平行部111を一定の長さに維持することで、効率を向上させることができる。よって、全長Cに対する平行部111の前方領域Mの比率であるM/C値が−4.0%未満であるか、または全長Cに対する平行部111の後方領域Nの比率であるN/C値が−10.0%超である場合には、平行部111の長さが短く、効率の向上効果は僅かである。
【0046】
また、
図1を参照すると、平行部111からノーズ104までのY軸方向の第1の距離F及び、平行部111からテール108までのY軸方向の第2の距離Kは、船舶の運航特性だけでなく、位置制御特性及び曳引特性を全て考慮した重要なダクト設計因子であって、3次元CFD計算によるスラストの性能を最大化するための全長に対する比率%の範囲(F/C,K/C)に限定され得る。
【0047】
図4は、
図1に示したダクトにおいて、全長に対する平行部からノーズまでの第1の距離の比率の範囲と、全長に対する平行部からテールまでの第2の距離の比率の範囲による推進効率の変化の傾向を示すグラフである。
【0048】
図4のグラフの縦軸は、ボラード状態での推進効率(η
0)を示している。また、
図4のグラフの横軸は、全長Cに対する第1の距離Fの比率%の範囲(F/C)を示している。更に、
図4のグラフ中には、全長Cに対する第2の距離Kの比率%の範囲(K/C)が示されている。
【0049】
図1及び
図4を参照すると、本実施形態におけるダクト100の断面形状は、全長Cに対する比率で、18.0%〜30.0%の範囲(F/C)となる平行部111からノーズ104までのY軸方向の第1の距離Fと、全長Cに対する比率で、4.0%〜10.0%の範囲(K/C)となる平行部111からテール108までのY軸方向の第2の距離Kとを含み得る。
【0050】
図5は、
図1に示したダクトと比較例とのボラード状態での性能曲線(Power-thrust)を示すグラフである。
【0051】
図5に示した結果を導出するために、上記したダクトの翼形断面を用い、ボラード状態での性能を比較するために比較例としてマリン19A翼形を用いた。また、本実施形態及び比較例による各翼形断面に対するボラード状態での性能曲線(Power-thrust)は、模型試験(水槽試験)を通じて得られる。
【0052】
このようなボラード状態での性能曲線(Power-thrust)より、本実施形態によるダクトの翼形断面は、比較例に比べて約6.0%程度、ボラード状態でのスラスト向上が図れたことが分かる。
【0053】
図6は、
図1に示したダクト及び比較例の線速度及び必要馬力の相関関係曲線を示すグラフである。
【0054】
図6に示した比較例及び本実施形態の翼形断面の線速度及び必要馬力の相関関係曲線から分かるように、一般的な航行条件でも約4.6%程度性能が改善された。
【0055】
例えば、本実施形態では、同一の必要馬力(DHP)において比較例よりも速い速度が得られるか、同一の速度において比較例よりも小さい必要馬力が要求されることから、性能が改善されたことが分かる。
【0056】
図7は、
図1に示したダクト及び比較例の性能を比較検証するために、水槽試験を通じて得られた各々の推進性能特性曲線を示すグラフである。
【0057】
図7のグラフの横軸はスラスタ前進係数Jの変化傾向を示し、縦軸は、スラストKt、トルク10Kq、効率η
0を示している。
【0058】
図7を参照すると、本実施形態のダクトは、全ての前進係数J領域において、トルク10Kqが比較例のマリン19A翼形よりも減少した。
【0059】
特に、ボラード領域(J=0)における10Kq、Kt結果を同一のエンジン馬力の計算に用いたとき、約6%のスラストを更に発生させ(Kqは約7%減少、Ktは約1%減少)、前進係数Jが0.4以上の一般的な航行条件では、4.0%〜7.0%の単独効率(η
0)の向上が図れた。つまり、ダクトの吸引力の増加によりプロペラに流入する流速が増加し、これがプロペラのトルク10Kqを減少させて全ての前進係数J領域において効率の向上が図れたことが分かる。
【0060】
図8は、本発明の第2の実施形態に係る船舶の推進装置を示す斜視図であり、
図9は、本発明の第2の実施形態に係る船舶の推進装置を示す正面図であり、
図10は、本発明の第2の実施形態に係る船舶の推進装置を示す側面図であり、
図11は、本発明の第2の実施形態に係る推進装置のダクトを示す例示図である。
【0061】
図8〜
図11を参照すると、第2の実施形態に係る推進装置は、船体の主軸(図示せず)から動力を伝達するハブ200と、ハブ200の外周面に設けられた主羽根310及び副羽根320を含むプロペラ300と、プロペラ300の周囲を囲むように設けられたダクト100とを含み得る。
【0062】
具体的には、ハブ200は、主軸により回転可能であるように船体の主軸が組み込まれたギアケース10に係合され、船体の主エンジン(図示せず)から動力を伝達され、主軸を介してプロペラ300にスラストを与えることができる。
【0063】
ハブ200は、推進装置の後方に向かって半径が漸減するテーパ形状をなし、ハブ200の後端部にはキャップ210を結合することができる。キャップ210は後方に向かってテーパ形状をなしているため、プロペラ300を介してキャップの側面に沿って流体を滑らかに流動させることができる。
【0064】
ハブ200の外周面には、ハブ200の周囲に誘起される渦Wを効率良く低減させるためのプロペラ300を設けることができる。
【0065】
プロペラ300は、ハブ200の外面上に主軸の軸方向(X軸方向)に沿って離間して配置された主羽根310及び副羽根320を含み得る。
【0066】
主羽根310は、ハブ200の前方側の外周面に放射状に離間して配置された複数枚の翼であり得る。この主羽根310は翼形状の断面を有することができ、主羽根310の形状及び枚数は、スラスタ効率(プロペラ効率)、荷重による空洞現象(キャビテーション)及び周辺環境などによって様々に変更することができる。
【0067】
副羽根320は、主羽根310から主軸の後方に離間されたハブ200の後方側の外周面に主羽根310と交互に配置されるように放射状に離間して配置された複数枚の翼であり得る。但し、副羽根320は、主羽根310から主軸の後方に離間された位置であれば、ハブ200だけでなく、キャップ210、ハブ200とキャップ210との間の空間など任意の場所に設置することができる。
【0068】
副羽根320は、主羽根310よりも小さな翼からなり、主軸の後方に傾設され得る。ここで、後方に傾設されるとは、副羽根320の先端よりも後端が主軸の後方に配置されることをいう。
【0069】
上述の副羽根320は、プロペラのみが定格RPMで回転するボラード状態と同様に、小さな前進係数で回転成分を吸収し得るため、ハブ200の周囲に誘起される渦Wを効率良く低減させることができ、かつハブ200のトルクを減少させることにより推進効率を向上させることができる。
【0070】
例えば、副羽根320は、主軸に垂直な方向に対して後方に0.1〜27°の範囲で傾斜する傾斜角(B)を有することができ、ハブ200は、ハブ200の外周面が、主軸の軸方向(−X軸方向)に対して10〜18°の範囲で傾斜する傾斜角(H)を有することができる。
【0071】
図12は、本発明の第2の実施形態に係る副羽根の勾配比(B/H)による効率の変化曲線を示すグラフである。
【0072】
特に、
図12を参照すると、副羽根320の勾配比(B/H)が0.25〜1.5の範囲において、スラスタ効率を向上させることができる。例えば、副羽根320の勾配比(B/H)が0.25未満であるか又は1.5を超過する場合には、ハブ200の周囲に誘起される渦Wを効率良く低減させることが難しくなり、この結果、向上されたスラスタ効率の効果は僅かであり得る。
【0073】
ここで、スラスタ効率(η
0,Merit coefficient)は、例えば、ダクト型プロペラ、アジマス型プロペラなどのように曳引や位置制御の条件での性能を重要な設計条件として考慮して、上式1により求めることができる。
【0074】
図13は、本発明の第2の実施形態に係る副羽根の半径比(A/C)による効率の変化曲線を示すグラフである。
【0075】
図13を参照すると、模型試験及びCFD計算を用いて、副羽根320の半径変化によるボラード状態でのスラスタ効率を考察した結果、副羽根320の半径比(A/C)が0.3からグラフは上昇曲線を描き、0.5でスラスタ効率が最大となり、0.7を超えると急激に低下することを確認できる。
【0076】
例えば、副羽根320の半径比(A/C)は、0.3〜0.7の範囲において最適化されたスラスタ効率の向上効果を発揮することができる。ここで、
図11を参照すると、Aは副羽根320の半径長さ、Cはダクト100の全長と定義することができる。
【0077】
図14は、本発明の第2の実施形態に係る副羽根の位置(E/C)の範囲による効率の変化曲線を示すグラフである。
【0078】
図14を参照すると、ダクト100の前方頂点から主羽根310の位置までの軸方向(−X軸方向)の距離をEPと定義した場合、副羽根320の位置(E)が、主羽根310の位置EPから主軸の後方に0.5C(ダクト全長の半分)以内の範囲(EP〜EP+0.5C)に位置する場合に優れた性能を示すことが確認できる。つまり、副羽根320の軸方向(−X軸方向)の位置(E)が主羽根の位置(EP)から主軸の後方へEP+0.5Cの位置まではグラフは緩やかな下降曲線を描き、それ以降は急激な下降曲線を描く。ここで、Eは副羽根320のX軸方向の位置、EPは主羽根320のX軸方向の位置、Cはダクト100の全長と定義され得る。
【0079】
図15は、第2の距離Kの分布を比較するために、
図8に示した推進装置との比較を行うための比較例による船舶の推進装置を示す斜視図であり、
図16は、
図8の推進装置及び
図15の推進装置のボラード状態での性能曲線(Power-thrust)を示すグラフであり、
図17は、
図8の推進装置及び
図15の推進装置の性能を比較検証するために、水槽試験を通じて得られた各々の推進性能特性曲線を示すグラフである。
【0080】
図15〜
図17を参照すると、ボラード状態での性能を比較するために、比較例としてダクト型アジマストラスタと同種のダクト100であるマリン19A翼形が用いられた。また、本実施形態及び比較例における各翼形断面に対するボラード状態での性能曲線(Power-thrust)は、模型試験(水槽試験)によって得ることができる。
【0081】
図15に示したように、比較例に係る推進装置においてCFD計算によるボラード状態でプロペラ300及びハブ200の周囲に誘起される渦Wを考察してみると、本実施形態の
図8に示した推進装置よりも、比較例のプロペラ300及びハブ200の周囲に誘起される渦Wが更に増加したことを確認することができる。
【0082】
図16に示したように、ボラード状態での性能曲線(Power-thrust)を考察してみると、副羽根320を設けた本実施形態は、副羽根320を設けなかった比較例に比べて、ボラード状態でのスラストが約4.0%程度向上したことを確認することができる。
【0083】
また、本実施形態のように副羽根320を設けた場合、スラスタの全推力を維持したまま、プロペラ300のトルクが全ての前進係数にわたって減少することを確認することができる。
【0084】
図17に示したように、本実施形態のダクト100は、比較例の19A翼形に比べて全ての前進係数(J)の領域においてトルクKqが減少した。
【0085】
特に、本実施形態の推進装置は、ボラード領域(J=0)におけるKq結果を用いて同一のエンジン馬力で計算した場合に更に約2.5%のスラストを発生させ、一般的な航行条件である前進係数(J)0.4以上の領域では、効率(η
0)を5.0%向上させることができた。つまり、副羽根320及びダクト100の吸引力の増加により、プロペラ300に流入する流速が増加し、この結果、プロペラ300のトルクKqを減少させて全ての前進係数(J)の領域にわたって効率が向上したことが分かる。
【0086】
上述の通り、本発明は、プロペラによって発生する渦を低減させ、かつプロペラを回転させるのに必要なトルクを減少させるために、ハブに主羽根及び副羽根を設けてダクト及びプロペラの周囲の流動を改善することにより、推進効率を向上させることができる。また、ボラード状態でのスラストを向上させることにより、ハブの周囲に誘起される渦を効率良く低減させるとともに、主軸のトルク減少によって推進効率を向上させることができる。
【0087】
図18は、本発明の第3の実施形態に係る推進装置のダクトを示す例示図である。
【0088】
図18を参照すると、第3の実施形態に係るダクト100は主軸の軸方向に配列され、主軸の軸方向(X軸方向)を基準にハブ200を囲むように設けられ、ダクト100の全周囲に沿って同一の断面形状を有し得る。
【0089】
ダクト100は、例えば、ドリルシップや海洋構造物のような船舶の運航特性、船舶の位置制御特性、又は氷海に閉じ込められた他の船舶を曳引する特性を全て考慮して、ダクト型推進装置の効率を向上させ得るように最適化された設計因子を有するダクト100の外面G1及び内面G2を有することができる。
【0090】
特に、ダクト100の断面形状は、翼形断面の前方頂点であるノーズ104及び後方頂点であるテールと、ノーズ104とテール108とを結ぶ直線分である翼弦線105とを含み得る。また、ダクト100の断面形状は、翼弦線105の前端から上方向に凸に形成された前方部分113と、翼弦線105の後端から下方向に凹に形成された後方部分112とを有するダクト100の外面G1を含み得る。
【0091】
ここで、ダクト100の外面G1の前方部分113は、翼弦線10がダクト100の外面G1に接する点からノーズ104までの曲線を意味し得る。また、ダクト100の外面G1の後方部分112は、翼弦線105がダクト100の外面G1に会う点からテール108までの曲面を意味し得る。
【0092】
前方部分113及び後方部分112は、翼弦線105がダクト100の外面G1に接する点において途切れなく互いに連結され得る。このように、ダクト100の外面G1の前方部分113は、翼弦線105の前端から上方向に凸に形成されている。
【0093】
上述の通り、ダクト100の外面の前方部分が翼弦線から上方向に凸に形成されるため、プロペラ300に流入する流体の流れを加速させることができる。かかる加速効果によって、ダクト100のスラストを向上させ、かつプロペラ300のトルクを減少させることができる。また、ダクト100の外面G1の後方部分112が翼弦線105の後端から下方向に凹に形成されているため、後方の外側領域で流体がダクト100のテール方向に滑らかに流れ込んで、テールの周囲で渦を形成してダクト100のスラストを向上させることができる。
【0094】
また、ダクト100の断面形状は、主軸の軸方向(X軸方向)に平行な平行部111と、平行部111からノーズ104までのY軸方向の第1の距離Fに対応する範囲内で平行部111の始端109からノーズ104まで徐々に凸に形成された曲面をなすダクト100の内面前方部分106と、第1の距離Fよりも小さい平行部111からテール108までのY軸方向の第2の距離Kに対応する範囲内で平行部111の終端110からテール108まで徐々に凸に形成された曲面をなすダクト100の内面後方部分107とからなる内面G2を含み得る。
【0095】
更に、本実施形態のダクト100の断面形状は、上述した第1の実施形態のダクト断面形状と同一の形状を有し得る。
【0096】
本実施形態のダクト100の断面形状は、プロペラ面の位置103から全長Cに対して−4.0%〜14.0%の範囲(M/C)となる平行部11の前方領域Mと、プロペラ面の位置103から全長Cに対して−30.0%〜−10.0%の範囲N/Cとなる平行部111の後方領域Nとを含み得る。
【0097】
ダクト100においてプロペラ300に隣接する平行部111が一定の長さを維持すれば、効率を向上させることができる。全長Cに対する平行部111の前方領域Mの比率であるM/C値が−4.0%未満であるか、または全長Cに対する平行部111の後方領域Nの比率であるN/C値が−10.0%超である場合には、平行部111の長さが短く、効率の向上は僅かである。
【0098】
また、本実施形態のダクト100の断面形状は、全長Cに対して18.0%〜30.0%の範囲(F/C)となる平行部111からノーズ104までのY軸方向の第1の距離Fと、全長Cに対して4.0%〜10.0%の範囲(K/C)となる平行部111からテール108までの第2の距離(K)とを含み得る。
【0099】
以上のように、添付図面を参照して本発明の実施形態を説明したが、当業者は、本発明がその技術的思想や必須の特徴を変更することなく他の具体的な形態で実施できるということを理解できるであろう。例えば、当業者は、各構成要素の材質、大きさなどを適用分野に応じて変更し、あるいは複数の実施形態を組合せまたは置換するなどして本発明の実施形態に明確に開示されていない形態で実施することができるが、これもまた本発明の範囲から逸脱するものではない。したがって、上述した実施形態は、全ての面において例示的なものに過ぎず、限定的なものではないと理解されるべきであり、このような変形実施形態は、本発明の特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれているものであるといえる。