特許第6490614号(P6490614)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6490614
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】インドキシル硫酸の測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/64 20060101AFI20190318BHJP
【FI】
   G01N21/64 Z
【請求項の数】5
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-54216(P2016-54216)
(22)【出願日】2016年3月17日
(65)【公開番号】特開2016-191707(P2016-191707A)
(43)【公開日】2016年11月10日
【審査請求日】2018年4月23日
(31)【優先権主張番号】特願2015-69347(P2015-69347)
(32)【優先日】2015年3月30日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517165494
【氏名又は名称】内田 景博
(73)【特許権者】
【識別番号】509349141
【氏名又は名称】京都府公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100100480
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100135839
【弁理士】
【氏名又は名称】大南 匡史
(72)【発明者】
【氏名】中西 守
(72)【発明者】
【氏名】内田 景博
【審査官】 吉田 将志
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/140022(WO,A1)
【文献】 特開2015−010053(JP,A)
【文献】 Sandeep Menon Perinchery,The influence of indoxyl sulfate and ammonium on the autofluorescence of human urine,Talanta,2010年 1月,Vol.80/Iss.3,PP.1269-1276
【文献】 Sandeep Menon Perinchery,The potential of autofluorescence spectroscopy to detect human urinary tract infection,Talanta,2010年 8月15日,Vol.82/Iss.3,PP.912-917
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/62−74
CAplus(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿を測定試料とするインドキシル硫酸の測定方法であって、
前記測定試料が尿そのもの又は尿の希釈物であり、
励起波長を260〜300nmの範囲から選択し、発光波長を、選択した励起波長よりも80〜180nm大きい波長としたときの前記測定試料の蛍光強度から、前記測定試料におけるインドキシル硫酸の濃度を算出することを特徴とするインドキシル硫酸の測定方法。
【請求項2】
前記発光波長を380〜420nmの範囲から選択することを特徴とする請求項1に記載のインドキシル硫酸の測定方法。
【請求項3】
前記励起波長を270〜290nmの範囲から選択し、前記発光波長を390〜410nmの範囲から選択することを特徴とする請求項1又は2に記載のインドキシル硫酸の測定方法。
【請求項4】
前記励起波長を270〜290nmの範囲から選択し、前記発光波長を400〜420nmの範囲から選択することを特徴とする請求項1又は2に記載のインドキシル硫酸の測定方法。
【請求項5】
インドキシル硫酸の濃度が0.2〜25μMの範囲内である前記測定試料を、蛍光測定に直接供することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のインドキシル硫酸の測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はインドキシル硫酸の測定方法に関する。本発明の方法は、尿などの体液中におけるインドキシル硫酸を迅速、簡便かつ正確に測定できるものである。
【背景技術】
【0002】
インドキシル硫酸はトリプトファンの代謝産物である。腸内細菌によりトリプトファンから産生されたインドールは、腸管から吸収され、肝臓においてインドキシルに代謝される。その後、さらに硫酸抱合を受けインドキシル硫酸となる。インドキシル硫酸は尿毒症物質として知られている。
【0003】
血中ではインドキシル硫酸の90%がアルブミンと結合している。そのため糸球体濾過は少なく、近位尿細管での尿中分泌が尿中インドキシル硫酸の主体である。また腎機能障害時には、糸球体・尿細管障害を反映して血中インドキシル硫酸濃度が上昇する。
【0004】
インドキシル硫酸の測定方法としては、比色法(非特許文献1)、クロマトグラフィー法(非特許文献2)による測定が主に行われている。特許文献1にはELISA法によるインドキシル硫酸の測定方法が開示されている。また特許文献2には、インドキシル硫酸から生成させたホルマザン色素を指標とした測定方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平10−265457号公報
【特許文献2】国際公開第2014/129460号
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Rylance HJ., "The estimation of indoxyl sulphate in urine", Clin Chim Acta. 1969 Oct;26(1):99-103.
【非特許文献2】Paul M.M. Van Haard et al., "Chromatography of urinary indole derivatives", J Chromatogr., 1988 Jul 29;429:59-94
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記した従来技術のインドキシル硫酸の測定方法では、検体の抽出操作や前処理等が必要であり、かつ操作が煩雑である等の問題がある。そこで本発明は、より迅速かつ簡便に体液中インドキシル硫酸を測定できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、ヒトから採取した尿検体におけるインドキシル硫酸の濃度を迅速かつ簡便に測定する技術について、鋭意検討を行った。その結果、特定範囲の励起波長及び発光波長の下で測定した尿の蛍光強度が、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)法によって正確に測定したインドキシル硫酸濃度と高い相関係数を示すことを見出した。すなわち、意外なことに、夾雑物を多く含む尿などの体液をそのまま蛍光測定に供することによって、当該体液中のインドキシル硫酸を迅速、簡便かつ正確に測定できることを見出した。
【0009】
上記した知見に基づいて提供される本発明の1つの様相は、体液を測定試料とするインドキシル硫酸の測定方法であって、励起波長を260〜300nmの範囲から選択し、発光波長を、選択した励起波長よりも10〜250nm大きい波長としたときの前記測定試料の蛍光強度を指標として、前記測定試料におけるインドキシル硫酸の濃度を測定することを特徴とするインドキシル硫酸の測定方法である。
【0010】
本発明は体液を測定試料とするインドキシル硫酸の測定方法に係るものである。本発明では、測定試料である体液の蛍光強度を指標としてインドキシル硫酸の濃度を測定する。本発明によれば、測定試料の蛍光強度を測定するだけでインドキシル硫酸の濃度を測定することができ、従来技術のような体液の抽出操作や前処理を必要としない。そのため、本発明によれば、体液中インドキシル硫酸を迅速、簡便かつ正確に測定することができる。
【0011】
好ましくは、前記体液が尿である。
【0012】
好ましくは、前記測定試料が尿そのもの又は尿の希釈物である。
【0013】
かかる構成により、尿中インドキシル硫酸を迅速、簡便かつ正確に測定することができる。
【0014】
好ましくは、前記発光波長を、選択した励起波長よりも80〜180nm大きい波長とする。
【0015】
好ましくは、前記発光波長を380〜420nmの範囲から選択する。
【0016】
好ましくは、前記励起波長を270〜290nmの範囲から選択し、前記発光波長を390〜410nmの範囲から選択する。
【0017】
かかる構成により、より高感度かつ高精度で体液中インドキシル硫酸を測定することができる。
【0018】
好ましくは、少なくとも0.2〜25μMの範囲を包含する既知濃度のインドキシル硫酸標準溶液の蛍光強度を測定し、当該測定値から作成した検量線に基づいて前記測定試料におけるインドキシル硫酸の濃度を算出する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、体液の蛍光強度を直接測定するだけでインドキシル硫酸の濃度を測定することができるので、体液中インドキシル硫酸を迅速、簡便かつ正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】尿検体の蛍光パターンを表すグラフである。
図2】インドキシル硫酸の測定範囲の検討結果を表すグラフである。
図3】実施例で作成したインドキシル硫酸の検量線を表すグラフである。
図4】本発明の方法とHPLC法との相関関係を表すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明のインドキシル硫酸の測定方法は、体液を測定試料とするインドキシル硫酸の測定方法であって、特定範囲の励起波長と発光波長における前記測定試料の蛍光強度を指標として、前記測定試料におけるインドキシル硫酸の濃度を測定するものである。
【0022】
測定試料となる体液の例としては、尿、血液が挙げられる。
【0023】
好ましい実施形態では、体液として尿を用いる。またこの場合、蛍光測定に供する測定試料として、尿そのもの又は尿の希釈物を用いることが好ましい。すなわち本発明においては、尿の抽出操作や前処理は特に必要なく、尿又は尿の希釈物を蛍光測定に直接供することができる。
【0024】
尿の希釈に用いる希釈液としては、蛍光測定に悪影響を及ぼさないものであれば特に限定はなく、水、生理食塩水、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、各種の緩衝液、有機溶媒(ジメチルスルホキシド等)、などを適宜用いることができる。希釈液のpHとしては、蛍光物質が安定に存在できるものであればよく、例えば、pH6.0〜8.0の範囲から選択することができる。希釈液におけるイオン種やイオン強度についても、蛍光物質が安定に存在できるものであればよい。例えば、タンパク質が変性しない程度のイオン種やイオン強度を選択すればよい。また希釈液は、蛍光物質を含まないものであることが好ましい。
【0025】
本発明では、励起波長を260〜300nmの範囲から選択し、発光波長を、選択した励起波長よりも10〜250nm大きい波長としたときの蛍光強度を指標とする。これらの発光波長と励起波長の下で蛍光強度を測定することにより、HPLC法との高い相関関係が保たれ、正確な体液中インドキシル硫酸の測定が可能となる。
【0026】
好ましくは、励起波長を260〜300nmの範囲から選択し、発光波長を、選択した励起波長よりも80〜180nm大きい波長とする。励起波長と発光波長をこれらの範囲から選択することにより、HPLC法とのより高い相関関係が保たれ、体液中インドキシル硫酸をより正確に測定することができる。
【0027】
より好ましくは、励起波長を260〜300nmの範囲から選択し、発光波長を380〜420nmの範囲から選択する。かかる構成により、HPLC法とのさらに高い相関関係が保たれ、体液中インドキシル硫酸をさらに正確に測定することができる。
【0028】
特に好ましくは、励起波長を270〜290nmの範囲から選択し、発光波長を390〜410nmの範囲から選択する。かかる構成により、HPLC法とのさらに高い相関関係が保たれ、体液中インドキシル硫酸をさらに正確に測定することができる。
【0029】
好ましい励起波長と発光波長の具体的な組み合わせを、以下に挙げる。
【0030】
・励起波長:260nm/発光波長270〜510nm
・励起波長:270nm/発光波長280〜520nm
・励起波長:280nm/発光波長290〜530nm
・励起波長:290nm/発光波長300〜540nm
・励起波長:300nm/発光波長310〜550nm
【0031】
・励起波長:260nm/発光波長340〜440nm
・励起波長:270nm/発光波長350〜450nm
・励起波長:280nm/発光波長360〜460nm
・励起波長:290nm/発光波長370〜470nm
・励起波長:300nm/発光波長380〜480nm
【0032】
・励起波長:260nm/発光波長380〜420nm
・励起波長:270nm/発光波長380〜420nm
・励起波長:280nm/発光波長380〜420nm
・励起波長:290nm/発光波長380〜420nm
・励起波長:300nm/発光波長380〜420nm
【0033】
・励起波長:260nm/発光波長400〜460nm
・励起波長:270nm/発光波長400〜460nm
・励起波長:280nm/発光波長400〜460nm
・励起波長:290nm/発光波長400〜460nm
・励起波長:300nm/発光波長400〜460nm
【0034】
・励起波長:260nm/発光波長400〜440nm
・励起波長:270nm/発光波長400〜440nm
・励起波長:280nm/発光波長400〜440nm
・励起波長:290nm/発光波長400〜440nm
・励起波長:300nm/発光波長400〜440nm
【0035】
・励起波長270nm/発光波長390〜420nm
・励起波長280nm/発光波長390〜420nm
・励起波長290nm/発光波長390〜420nm
・励起波長270nm/発光波長390〜410nm
・励起波長280nm/発光波長390〜410nm
・励起波長290nm/発光波長390〜410nm
・励起波長270〜290nm/発光波長390nm
・励起波長270〜290nm/発光波長400nm
・励起波長270〜290nm/発光波長410nm
・励起波長270〜290nm/発光波長420nm
・励起波長280nm/発光波長400nm
【0036】
本発明では、測定試料の蛍光強度を指標としてインドキシル硫酸を測定するが、その具体的操作の代表例は、検量線を用いてインドキシル硫酸の濃度を算出することである。例えば、段階希釈した濃度既知のインドキシル硫酸標準溶液の蛍光強度を並行して測定して検量線を作成し、当該検量線を用いて、測定試料の蛍光強度からインドキシル硫酸の濃度を算出することができる。インドキシル硫酸標準溶液は、例えば、精製されたインドキシル硫酸を水や緩衝液に溶解して作製することができる。
【0037】
尿又は尿の希釈物を測定試料とする場合には、必要に応じてクレアチニン補正等の濃度補正を行ってもよい。尿中クレアチニンの測定方法としては、有機化学的測定法、紫外部吸収法、酵素的測定法、質量分析、などの公知の方法を用いることができる。このうち、紫外部吸収法は、尿又は尿の希釈物をそのまま測定試料とすることができ、簡便である。
クレアチニンによる補正以外では、尿の比重によって補正してもよい。
【0038】
蛍光強度の測定は、公知の蛍光分析装置を用いて行うことができる。例えば、分光蛍光光度計を用いることにより、測定試料の蛍光強度を測定することができる。また、蛍光マイクロプレートリーダーを用いることにより、マイクロプレートの各穴に入れた複数の測定試料の蛍光強度を同時に測定することができる。
【0039】
さらに、マイクロデバイス(マイクロ流体デバイス、μTAS)を用いた微量分析技術を応用することもできる。例えば、試料導入部と、試料導入部に連通するマイクロ流路と、マイクロ流路に連通するとともに光学セルとして機能する検体収容部とを備えたマイクロデバイスを用意する。そして、試料導入部から検体(例えば、尿そのもの又は尿希釈物)を導入し、マイクロ流路を経由して検体収容部に収容する。そして、検体収容部(光学セル)に収容された検体が発する蛍光強度を、蛍光分析装置で測定する。
このとき、マイクロデバイスとして検体収容部(光学セル)を2つ設けたものを採用し、一方の検体収容部を蛍光強度測定用、他方の検体収容部をクレアチニン濃度測定用として用いてもよい。この際のクレアチニン測定法としては、例えば、前記した紫外部測定法(220〜250nm)を用いることができる。
本発明にマイクロデバイスを適用することにより、微量の検体(測定試料)で蛍光測定を行うことが可能となる。さらに、光学セルの光路長(セルの厚み、液厚)を小さくすることにより、濃い尿であっても希釈を行わずに、尿そのものを測定試料とすることが可能となる。この際のセルの厚みとしては、例えば100〜500μm程度とすることができる。
【0040】
本発明のインドキシル硫酸の測定方法によれば、測定試料に含まれる、少なくとも0.2μM〜100μMの濃度範囲のインドキシル硫酸を直接測定することができる。インドキシル硫酸濃度が0.2μM〜25μMの範囲である測定試料であれば、特に正確にインドキシル硫酸濃度を直接測定することができる。
【0041】
以下に、実施例をもって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0042】
ボランティア8名から採取した尿検体を用いて、以下の実験を行った。
【0043】
(1)HPLC法によるインドキシル硫酸測定
HPLC法(Clin Chem. 1988 Nov;34(11):2264-7. Accumulation of indoxyl sulfate, an inhibitor of drug-binding, in uremic serum as demonstrated by internal-surface reversed-phase liquid chromatography. Niwa T1, Takeda N, Tatematsu A, Maeda K)にて、各検体のインドキシル硫酸濃度を測定した。
【0044】
(2)本発明の方法による蛍光測定(直接蛍光法)
各尿検体をPBSで100倍に希釈し、蛍光測定用の検体(測定試料)を調製した。各測定試料200μLを前処理等することなくそのまま蛍光測定用マイクロプレート(Greiner bio-one、762077)の各穴に入れ、マイクロプレートリーダー(Spectra Max Gemini EM; Molecular Devices, Sunnyvale, CA)にて蛍光強度を測定した。励起波長を280nmとし、発光波長(蛍光波長)320nm〜500nmの範囲でスキャンした。図1に各測定試料の蛍光パターンを示す。いずれの測定試料でも発光波長390nmに蛍光強度のピークがあった。
【0045】
(3)測定範囲の検討
精製されたインドキシル硫酸(Aldrich社)を水に溶解して、濃度100μMのインドキシル硫酸標準原液を作製した。この標準原液を1/2倍ずつ段階希釈して、0.196μM〜100μMのインドキシル硫酸標準溶液を作製した。この標準溶液を上記(2)と同様の直接蛍光法(励起波長280nm、発光波長400nm)に供して蛍光強度を測定し、インドキシル硫酸濃度と蛍光強度との関係をグラフ化した。その結果、0.196μM〜100μMの範囲でインドキシル硫酸濃度と蛍光強度との間に相関関係があり、検量線を作成することができた。特に、0.196μM〜25μMの範囲において、高い直線性が得られた(図2)。
【0046】
(4)直接蛍光法とHPLC法との相関
精製されたインドキシル硫酸(Aldrich社)を水に溶解して、濃度10μMのインドキシル硫酸標準原液を作製した。この標準原液を1/2倍ずつ段階希釈して、0.156μM〜10μMのインドキシル硫酸標準溶液を作製した。この標準溶液を上記(2)と同様の直接蛍光法(励起波長280nm、発光波長320nm〜500nm)に供して蛍光強度を測定し、得られた蛍光強度から検量線を作成した。図3に、励起波長280nm、発光波長400nmの場合の検量線を示す。
各検体の100倍希釈液の蛍光強度を並行して測定し、検量線から各測定試料のインドキシル硫酸濃度を算出した。得られたインドキシル硫酸濃度値と、上記(1)で得られたHPLC法による測定値とを比較した。得られた蛍光強度の値について、発光波長ごとに直接蛍光法とHPLC法との相関係数を、EXCELソフトウェア(Microsoft社)のCORREL関数を用いて算出した。
【0047】
結果を表1に示す。表1に示すように、発光波長が330nm〜500nmの範囲で、0.8以上の相関係数が得られた。このうち、発光波長が380nm〜420nmの範囲で0.97以上の特に高い相関係数が得られ、410nmと420nmでHPLC法と最も近似した値が得られた。
【0048】
図4に励起波長280nm、発光波長400nmの場合における直接蛍光法とHPLC法による測定値との関係を示す。図4の縦軸は直接蛍光法(μM)、横軸はHPLC法によるインドキシル硫酸濃度の測定値(μM)である。
【0049】
【表1】
【0050】
以上のように、尿検体を特に前処理することなくそのまま蛍光測定することによって、尿中のインドキシル硫酸濃度を正確に測定できることが示された。
図1
図2
図3
図4