(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、真空バルブや主回路導体のようなスイッチギヤを構成する電気部材をエポキシ樹脂のような絶縁材料でモールドした固体絶縁機器では、絶縁層の外周にリング状のヒートシンクを設け、温度上昇を抑制するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、絶縁層の外側に板状に突出した樹脂フィンを設け、放熱特性を向上させるものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
これらにより、電気部材の温度上昇を抑制することができ、大容量化を図ることができるものの、上記のヒートシンクや樹脂フィンは絶縁層を介しての間接的な放熱であり、放熱効率の向上には限界があった。
【0005】
このため、温度上昇する電気部材の主回路に直接、接続することができ、放熱効率を向上させることができる放熱専用の機能を持ったものが望まれていた。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0011】
実施例1
先ず、実施例1に係る固体絶縁機器と放熱装置を
図1A乃至
図1Cを参照して説明する。
図1Aは固体絶縁機器の構成を示す正面断面図、
図1Bは固体絶縁機器に接続される実施例1に係る放熱装置の構成を示す正面断図、
図1Cは
図1BのA−A矢視断面図である。
【0012】
図1Aに示すように、固体絶縁機器14は、真空バルブのような電気部材をモールドしたものである。
【0013】
この固体絶縁機器14には、主回路に接続された主回路導体7が設けられ、その外周に絶縁層4と同様材料の絶縁層8が設けられている。
【0014】
この
図1Aにおいて、主回路導体7は、分岐部7a,7b,7cに分岐しており、分岐部7aの端には凹部が設けられている。この凹部には接続導体3が接続されるようになっている。
【0015】
分岐部7b,7cの端部は、突出した円錐状の界面接続部となっており、それぞれ電気機器が接続される。
【0016】
また、分岐部7aの端には絶縁層8は、窪んだ円錐状の界面接続部9となっており、可撓性材料を介して界面接続部5が密着されるようになっている。
【0017】
界面接続部9を除く絶縁層8の外周には、接地層6と同様材料の接地層10が設けられている。界面接続部5、9の突出、窪みの形状は、逆でもよい。
【0018】
図1Bおよび
図1Cに示すように、放熱装置15は、
図1Aに示した固体絶縁機器14の主回路に接続される電気銅、アルミなどの金属材料からなる金属部1aと、金属部1aをエポキシ樹脂のような絶縁材料でモールドした絶縁部1bとを有する。
【0019】
金属部1aは、所定面積を有する板状の放熱板2と、放熱板2の一方の端面に固定された円柱状の接続導体3とで構成されている。
【0020】
放熱板2の横幅、縦幅などは、図示しない固体絶縁機器14の外形形状よりも小さくしている。
【0021】
板厚は、自立する程度の機械的強度を有するものとし、必要に応じ、周縁部に電界緩和リングを設けるものとする。
【0022】
絶縁部1bには、放熱板2と接続導体3の一部とを一体でモールドした絶縁層4が設けられている。
【0023】
換言すると、放熱板2は全体が絶縁層4で覆われている。接続導体3の反放熱板側は、突出した円錐状の界面接続部5となっており、接続導体3の端が露出している。
【0024】
界面接続部5を除く絶縁層4の外周には、導電性塗料を塗布した接地層6が設けられている。絶縁層4は、固体絶縁機器14に課せられる絶縁耐力に耐え得る所定の絶縁厚さを有している。
【0025】
エポキシ樹脂は、一般的なものでもよいが、充填剤にシリカとともに熱伝達率のよいマグネシアを充填してもよい。マグネシア:シリカ=50〜85:50〜15の範囲とする。
【0026】
このように構成されることにより、固体絶縁機器14を流れる電流は、例えば、一方の電気機器から、分岐部7c、分岐部7bを介して他方の電気機器に至る(
図1中、実線矢印B)。
【0027】
一方、主回路で発生した熱は、分岐部7a、接続導体3を介して放熱板2から放出される(
図1中、破線矢印C)。
【0028】
固体絶縁機器14側の界面接続部9に放熱装置側の界面接続部5を接続することにより、固体絶縁機器14の主回路に直接、放熱板(放熱部材)2を接続することができるので、放熱効率を向上させることができる。
【0029】
即ち、熱伝導率のよい金属材料よりなる放熱部材を固体絶縁機器14の主回路に接続しているので、固体絶縁機器14の温度上昇を大幅に抑制することができる。
【0030】
なお、絶縁層4にマグネシアを充填すると、更に放熱効率を向上させることができる。
【0031】
また、放熱板2を固体絶縁機器14の横幅、縦幅よりも小さくしているので、放熱装置によってスイッチギヤの例えば盤幅を広げる必要がなく、小型化に逆行するものとはならない。
【0032】
なお、固体絶縁機器14を小容量で使用する場合には、放熱装置を取外し、固体絶縁機器14側の界面接続部9に図示しない絶縁栓を取付けるものとする。
【0033】
これによって、固体絶縁機器14の通電条件に合わせて放熱装置を用いることができ、固体絶縁機器14の適用拡大を図ることができる。
【0034】
上記実施例1の放熱装置15によれば、固体絶縁機器14側に設けた界面接続部9に放熱装置側に設けた界面接続部5を接続することによって、固体絶縁機器14の主回路に直接、放熱板(放熱部材)2を接続することができるので、モールドした電気部材の温度上昇を大幅に抑制することができる。
【0035】
この放熱装置15は、放熱専用の機能を持ったものであり、着脱自在であるので、固体絶縁機器14の適用範囲の拡大を図ることができる。
【0036】
実施例2
次に、実施例2に係る放熱装置15を、
図2Aおよび
図2Bを参照して説明する。
図2Aは本発明の実施例2に係る放熱装置15の構成を示す上面断面図、
図2Bは
図2Aの正面断面図である。
【0037】
なお、この実施例2が実施例1と異なる点は、放熱板を複数枚としたことである。
【0038】
図2において、実施例1と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0039】
図2A、
図2Bに示すように、接続導体3には、複数の放熱板(放熱部材)2a、2b、2cを接続している。
【0040】
放熱板2a、2b、2c間は、空気の流通を妨げないように数mmの所定間隔を持ち平行配置となっている。
【0041】
なお、図示のように両端の放熱板2a、2cの端面を外側に曲折させると、空気の流通を促進させることができる。
【0042】
上記実施例2の放熱装置15によれば、実施例1による効果のほかに、放熱面積が拡大され、固体絶縁機器14の温度上昇を更に抑制することができる。
【0043】
実施例3
次に、実施例3に係る放熱装置15を
図3Aおよび
図3Bを参照して説明する。
図3Aは実施例3に係る放熱装置15の構成を示す上面断面図、
図3Bは
図3Aの正面断面図である。
【0044】
なお、この実施例3が実施例1と異なる点は、放熱板を十字状としたことである。
【0045】
図3Aおよび
図3Bにおいて、実施例1と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0046】
図3Aおよび
図3Bに示すように、放熱板(放熱部材)2dを上面から見ると十字状になるように組み合わせている。なお、複数枚を放射状に組み合わせてもよい。
【0047】
上記実施例3の放熱装置15によれば、実施例2と同様の効果を得ることができる。
【0048】
実施例4
次に、実施例4に係る放熱装置15を、
図4Aおよび
図4Bを参照して説明する。
図4Aは実施例4に係る放熱装置15の構成を示す上面断面図、
図4Bは
図4Aの正面断面図である。
【0049】
なお、この実施例4が実施例1と異なる点は、放熱板を筒状にしたことである。
【0050】
図4Aおよび
図4Bにおいて、実施例1と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0051】
図4Aおよび
図4Bに示すように、放熱板(放熱部材)2eを筒状とし、接続導体3側を塞いで接続導体3に固定している。
【0052】
反接続導体側は、開放した開口部となっている。筒状の放熱板2の底部には、空気を流通させるための複数の開口孔11a、11b、11c、11dを設けている。
【0053】
上記実施例4の放熱装置15によれば、実施例3と同様の効果を得ることができる。
【0054】
実施例5
次に、実施例5に係る放熱装置15を、
図5を参照して説明する。
図5は実施例5に係る放熱装置15の構成を示す断面図である。
【0055】
なお、この実施例5が実施例4と異なる点は、放熱板と絶縁層に波形を設けたことである。
【0056】
図5において、実施例4と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0057】
図5に示すように、放熱板(放熱部材)2eの内外周面には、凸凹状の波形12aを設け、表面積を増大させている。
【0058】
絶縁層4の内外周面にも、波形12bを設けており、これに伴って接地層6も波形12cとなっている。
【0059】
放熱板2eの波形12aと、絶縁層4の波形12bは、いずれか一方に設けるものとする。両方に設ける場合には、互いの山部と谷部を合わせると、電界的に好ましい。
【0060】
上記実施例5の放熱装置15によれば、実施例4と同様の効果を得ることができる。
【0061】
以上述べたような実施例の放熱装置15によれば、電気部材をモールドした固体絶縁機器14の主回路から直接、熱を引っ張ることができるので、温度上昇を大幅に抑制することができる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。