特許第6490696号(P6490696)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6490696
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】固体絶縁機器の放熱装置
(51)【国際特許分類】
   H02B 1/56 20060101AFI20190318BHJP
【FI】
   H02B1/56 B
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-543789(P2016-543789)
(86)(22)【出願日】2015年2月23日
(86)【国際出願番号】JP2015000883
(87)【国際公開番号】WO2016027386
(87)【国際公開日】20160225
【審査請求日】2018年2月21日
(31)【優先権主張番号】特願2014-167697(P2014-167697)
(32)【優先日】2014年8月20日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(73)【特許権者】
【識別番号】598076591
【氏名又は名称】東芝インフラシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】特許業務法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 純一
(72)【発明者】
【氏名】浅利 直紀
(72)【発明者】
【氏名】宮内 康寿
(72)【発明者】
【氏名】久保田 信孝
【審査官】 太田 義典
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−321096(JP,A)
【文献】 実開昭60−55207(JP,U)
【文献】 特開2003−333715(JP,A)
【文献】 特開2002−271919(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/024256(WO,A1)
【文献】 米国特許第5753875(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02B 1/46− 7/08
H01H 33/662
H02B 1/00− 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定面積を有する金属材料からなる放熱部材と、
前記放熱部材に固定されるとともに、固体絶縁機器の主回路に接続される接続導体と、
前記放熱部材と前記接続導体との周りに設けられた絶縁層と、
前記接続導体端を露出させた界面接続部と、
前記絶縁層の外周に設けられた接地層と、
を備えたことを特徴とする固体絶縁機器の放熱装置。
【請求項2】
前記放熱部材は、複数枚の放熱板を所定間隔に並べたものであることを特徴とする請求項1に記載の固体絶縁機器の放熱装置。
【請求項3】
前記放熱部材は、複数枚の放熱板を放射状に組み合わせたものであることを特徴とする請求項1に記載の固体絶縁機器の放熱装置。
【請求項4】
前記放熱部材は、筒状であり、その底部に開口孔を設けたものであることを特徴とする請求項1に記載の固体絶縁機器の放熱装置。
【請求項5】
前記放熱部材、前記絶縁層のいずれか一方の表面に波形を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の固体絶縁機器の放熱装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、スイッチギヤを構成する電気部材を絶縁材料でモールドした固体絶縁機器の放熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、真空バルブや主回路導体のようなスイッチギヤを構成する電気部材をエポキシ樹脂のような絶縁材料でモールドした固体絶縁機器では、絶縁層の外周にリング状のヒートシンクを設け、温度上昇を抑制するものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、絶縁層の外側に板状に突出した樹脂フィンを設け、放熱特性を向上させるものが知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
これらにより、電気部材の温度上昇を抑制することができ、大容量化を図ることができるものの、上記のヒートシンクや樹脂フィンは絶縁層を介しての間接的な放熱であり、放熱効率の向上には限界があった。
【0005】
このため、温度上昇する電気部材の主回路に直接、接続することができ、放熱効率を向上させることができる放熱専用の機能を持ったものが望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011−200043号公報
【特許文献2】特開2012−119102号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、絶縁材料でモールドされた固体絶縁機器の主回路に直接、接続することができ、放熱効率を向上させることのできる固体絶縁機器の放熱装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、実施形態の固体絶縁機器の放熱装置は、所定面積を有する金属材料からなる放熱部材と、前記放熱部材に固定されるとともに、固体絶縁機器の主回路に接続される接続導体と、前記放熱部材と前記接続導体との周りに設けられた絶縁層と、前記接続導体端を露出させた界面接続部と、前記絶縁層の外周に設けられた接地層と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1A】固体絶縁機器の構成を示す正面断面図。
図1B】固体絶縁機器に接続される実施例1に係る放熱装置の構成を示す正面断図。
図1C図1BのA−A矢視断面図。
図2A】実施例2に係る放熱装置の構成を示す上面断面図。
図2B図2Aの正面断面図。
図3A】実施例3に係る放熱装置の構成を示す上面断面図。
図3B図3Aの正面断面図。
図4A】実施例4に係る放熱装置の構成を示す上面断面図。
図4B図2Aの正面断面図。
図5】実施例5に係る放熱装置の構成を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0011】
実施例1
先ず、実施例1に係る固体絶縁機器と放熱装置を図1A乃至図1Cを参照して説明する。図1Aは固体絶縁機器の構成を示す正面断面図、図1Bは固体絶縁機器に接続される実施例1に係る放熱装置の構成を示す正面断図、図1C図1BのA−A矢視断面図である。
【0012】
図1Aに示すように、固体絶縁機器14は、真空バルブのような電気部材をモールドしたものである。
【0013】
この固体絶縁機器14には、主回路に接続された主回路導体7が設けられ、その外周に絶縁層4と同様材料の絶縁層8が設けられている。
【0014】
この図1Aにおいて、主回路導体7は、分岐部7a,7b,7cに分岐しており、分岐部7aの端には凹部が設けられている。この凹部には接続導体3が接続されるようになっている。
【0015】
分岐部7b,7cの端部は、突出した円錐状の界面接続部となっており、それぞれ電気機器が接続される。
【0016】
また、分岐部7aの端には絶縁層8は、窪んだ円錐状の界面接続部9となっており、可撓性材料を介して界面接続部5が密着されるようになっている。
【0017】
界面接続部9を除く絶縁層8の外周には、接地層6と同様材料の接地層10が設けられている。界面接続部5、9の突出、窪みの形状は、逆でもよい。
【0018】
図1Bおよび図1Cに示すように、放熱装置15は、図1Aに示した固体絶縁機器14の主回路に接続される電気銅、アルミなどの金属材料からなる金属部1aと、金属部1aをエポキシ樹脂のような絶縁材料でモールドした絶縁部1bとを有する。
【0019】
金属部1aは、所定面積を有する板状の放熱板2と、放熱板2の一方の端面に固定された円柱状の接続導体3とで構成されている。
【0020】
放熱板2の横幅、縦幅などは、図示しない固体絶縁機器14の外形形状よりも小さくしている。
【0021】
板厚は、自立する程度の機械的強度を有するものとし、必要に応じ、周縁部に電界緩和リングを設けるものとする。
【0022】
絶縁部1bには、放熱板2と接続導体3の一部とを一体でモールドした絶縁層4が設けられている。
【0023】
換言すると、放熱板2は全体が絶縁層4で覆われている。接続導体3の反放熱板側は、突出した円錐状の界面接続部5となっており、接続導体3の端が露出している。
【0024】
界面接続部5を除く絶縁層4の外周には、導電性塗料を塗布した接地層6が設けられている。絶縁層4は、固体絶縁機器14に課せられる絶縁耐力に耐え得る所定の絶縁厚さを有している。
【0025】
エポキシ樹脂は、一般的なものでもよいが、充填剤にシリカとともに熱伝達率のよいマグネシアを充填してもよい。マグネシア:シリカ=50〜85:50〜15の範囲とする。
【0026】
このように構成されることにより、固体絶縁機器14を流れる電流は、例えば、一方の電気機器から、分岐部7c、分岐部7bを介して他方の電気機器に至る(図1中、実線矢印B)。
【0027】
一方、主回路で発生した熱は、分岐部7a、接続導体3を介して放熱板2から放出される(図1中、破線矢印C)。
【0028】
固体絶縁機器14側の界面接続部9に放熱装置側の界面接続部5を接続することにより、固体絶縁機器14の主回路に直接、放熱板(放熱部材)2を接続することができるので、放熱効率を向上させることができる。
【0029】
即ち、熱伝導率のよい金属材料よりなる放熱部材を固体絶縁機器14の主回路に接続しているので、固体絶縁機器14の温度上昇を大幅に抑制することができる。
【0030】
なお、絶縁層4にマグネシアを充填すると、更に放熱効率を向上させることができる。
【0031】
また、放熱板2を固体絶縁機器14の横幅、縦幅よりも小さくしているので、放熱装置によってスイッチギヤの例えば盤幅を広げる必要がなく、小型化に逆行するものとはならない。
【0032】
なお、固体絶縁機器14を小容量で使用する場合には、放熱装置を取外し、固体絶縁機器14側の界面接続部9に図示しない絶縁栓を取付けるものとする。
【0033】
これによって、固体絶縁機器14の通電条件に合わせて放熱装置を用いることができ、固体絶縁機器14の適用拡大を図ることができる。
【0034】
上記実施例1の放熱装置15によれば、固体絶縁機器14側に設けた界面接続部9に放熱装置側に設けた界面接続部5を接続することによって、固体絶縁機器14の主回路に直接、放熱板(放熱部材)2を接続することができるので、モールドした電気部材の温度上昇を大幅に抑制することができる。
【0035】
この放熱装置15は、放熱専用の機能を持ったものであり、着脱自在であるので、固体絶縁機器14の適用範囲の拡大を図ることができる。
【0036】
実施例2
次に、実施例2に係る放熱装置15を、図2Aおよび図2Bを参照して説明する。図2Aは本発明の実施例2に係る放熱装置15の構成を示す上面断面図、図2B図2Aの正面断面図である。
【0037】
なお、この実施例2が実施例1と異なる点は、放熱板を複数枚としたことである。
【0038】
図2において、実施例1と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0039】
図2A図2Bに示すように、接続導体3には、複数の放熱板(放熱部材)2a、2b、2cを接続している。
【0040】
放熱板2a、2b、2c間は、空気の流通を妨げないように数mmの所定間隔を持ち平行配置となっている。
【0041】
なお、図示のように両端の放熱板2a、2cの端面を外側に曲折させると、空気の流通を促進させることができる。
【0042】
上記実施例2の放熱装置15によれば、実施例1による効果のほかに、放熱面積が拡大され、固体絶縁機器14の温度上昇を更に抑制することができる。
【0043】
実施例3
次に、実施例3に係る放熱装置15を図3Aおよび図3Bを参照して説明する。図3Aは実施例3に係る放熱装置15の構成を示す上面断面図、図3B図3Aの正面断面図である。
【0044】
なお、この実施例3が実施例1と異なる点は、放熱板を十字状としたことである。
【0045】
図3Aおよび図3Bにおいて、実施例1と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0046】
図3Aおよび図3Bに示すように、放熱板(放熱部材)2dを上面から見ると十字状になるように組み合わせている。なお、複数枚を放射状に組み合わせてもよい。
【0047】
上記実施例3の放熱装置15によれば、実施例2と同様の効果を得ることができる。
【0048】
実施例4
次に、実施例4に係る放熱装置15を、図4Aおよび図4Bを参照して説明する。図4Aは実施例4に係る放熱装置15の構成を示す上面断面図、図4B図4Aの正面断面図である。
【0049】
なお、この実施例4が実施例1と異なる点は、放熱板を筒状にしたことである。
【0050】
図4Aおよび図4Bにおいて、実施例1と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0051】
図4Aおよび図4Bに示すように、放熱板(放熱部材)2eを筒状とし、接続導体3側を塞いで接続導体3に固定している。
【0052】
反接続導体側は、開放した開口部となっている。筒状の放熱板2の底部には、空気を流通させるための複数の開口孔11a、11b、11c、11dを設けている。
【0053】
上記実施例4の放熱装置15によれば、実施例3と同様の効果を得ることができる。
【0054】
実施例5
次に、実施例5に係る放熱装置15を、図5を参照して説明する。図5は実施例5に係る放熱装置15の構成を示す断面図である。
【0055】
なお、この実施例5が実施例4と異なる点は、放熱板と絶縁層に波形を設けたことである。
【0056】
図5において、実施例4と同様の構成部分においては、同一符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0057】
図5に示すように、放熱板(放熱部材)2eの内外周面には、凸凹状の波形12aを設け、表面積を増大させている。
【0058】
絶縁層4の内外周面にも、波形12bを設けており、これに伴って接地層6も波形12cとなっている。
【0059】
放熱板2eの波形12aと、絶縁層4の波形12bは、いずれか一方に設けるものとする。両方に設ける場合には、互いの山部と谷部を合わせると、電界的に好ましい。
【0060】
上記実施例5の放熱装置15によれば、実施例4と同様の効果を得ることができる。
【0061】
以上述べたような実施例の放熱装置15によれば、電気部材をモールドした固体絶縁機器14の主回路から直接、熱を引っ張ることができるので、温度上昇を大幅に抑制することができる。
【0062】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0063】
1a 金属部;2b 絶縁部;2、2a、2b、2c、2d、2e 放熱板;3 接続導体;4、8 絶縁層;5、9 界面接続部;6、10 接地層;7 主回路導体;7a、7b、7c 分岐部;11a、11b、11c、11d 開口孔;12a、12b、12c 波形;14 固体絶縁機器;15 放熱装置。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図5