(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6490698
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】リーンガスバーナ
(51)【国際特許分類】
F23D 14/22 20060101AFI20190318BHJP
F23D 14/24 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
F23D14/22 E
F23D14/24 A
【請求項の数】15
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-547240(P2016-547240)
(86)(22)【出願日】2014年10月6日
(65)【公表番号】特表2016-536562(P2016-536562A)
(43)【公表日】2016年11月24日
(86)【国際出願番号】FR2014052523
(87)【国際公開番号】WO2015055916
(87)【国際公開日】20150423
【審査請求日】2017年9月26日
(31)【優先権主張番号】1359968
(32)【優先日】2013年10月14日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514166676
【氏名又は名称】コージュバイオ
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】特許業務法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ルソー ルイ
(72)【発明者】
【氏名】レバ エティエンヌ
(72)【発明者】
【氏名】ベドローシャン クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ケウチェ アドリアン
【審査官】
渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】
仏国実用新案証公開第02465158(FR,A3)
【文献】
特開2013−177989(JP,A)
【文献】
実開昭60−055829(JP,U)
【文献】
実開昭48−087404(JP,U)
【文献】
特開平07−269817(JP,A)
【文献】
特開2009−299955(JP,A)
【文献】
特開平07−012314(JP,A)
【文献】
実開平01−081438(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0246387(US,A1)
【文献】
実開昭48−087403(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/22
F23D 14/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスのガス化から生じる合成ガスのような低発熱量のガスを燃焼させるための実質的に円筒形状に形成されたガス用のバーナであって、
上記バーナの外壁(16)と該外壁(16)に対して実質的に平行な、上記バーナの内壁(17)との間に形成された第1環状領域(5)と、
上記第1領域の下流側において上記バーナの上記外壁(16)と上記内壁(17)との間に形成された第2環状領域(8)と、
上記バーナの軸に対して実質的に平行であって、低発熱量のガスを供給するための管(1)と、
上記外壁(16)に形成されかつ上記第1環状領域(5)に開口し、一次空気を供給するための管(3)と、
上記外壁(16)に形成されかつ上記第2環状領域(8)に開口し、二次空気を供給するための管(4)と、
上記外壁(16)と上記内壁(17)の上流側端部(25)との間に形成され、上記第1環状領域(5)から燃焼領域(7)へ一次空気を導入するための環状スロット(6)と、
上記内壁(17)に貫通形成され、上記第2環状領域(8)から上記燃焼領域(7)へ二次空気を導入するためのオリフィス(9)とを備えており、
上記環状スロット(6)は、一次空気が円錐状空気層の形態で上記燃焼領域(7)に供給されるような形状を有し、かつ圧縮領域を作り、
上記オリフィス(9)は、二次空気の旋回を可能とするように配置されており、
上記バーナは、上記外壁(16)から上記内壁(17)まで延びて上記第1環状領域(5)と上記第2環状領域(8)とを互いに隔てる仕切り(20)を備える
ことを特徴とするバーナ。
【請求項2】
バイオマスのガス化から生じる合成ガスのような低発熱量のガスを燃焼させるための実質的に円筒形状に形成されたガス用のバーナであって、
上記バーナの外壁(16)と該外壁(16)に対して実質的に平行な、上記バーナの内壁(17)との間に形成された第1環状領域(5)と、
上記第1領域の下流側において上記バーナの上記外壁(16)と上記内壁(17)との間に形成された第2環状領域(8)と、
上記バーナの軸に対して実質的に平行であって、低発熱量のガスを供給するための管(1)と、
上記外壁(16)に形成されかつ上記第1環状領域(5)に開口し、一次空気を供給するための管(3)と、
上記外壁(16)に形成されかつ上記第2環状領域(8)に開口し、二次空気を供給するための管(4)と、
上記外壁(16)と上記内壁(17)の上流側端部(25)との間に形成され、上記第1環状領域(5)から燃焼領域(7)へ一次空気を導入するための環状スロット(6)と、
上記内壁(17)に貫通形成され、上記第2環状領域(8)から上記燃焼領域(7)へ二次空気を導入するためのオリフィス(9)とを備えており、
上記環状スロット(6)は、一次空気が円錐状空気層の形態で上記燃焼領域(7)に供給されるような形状を有し、かつ圧縮領域を作り、
上記オリフィス(9)は、二次空気の旋回を可能とするように配置されており、
上記環状スロット(6)が、上記バーナの上記内壁(17)の上記上流側端部(25)に位置するいわゆる「空気導入ピース」(14)によって形成され、
上記ピース(14)は、上記バーナの上記内壁(17)と20〜45°の角度αをなして下流側から上流側に向かって広がる円錐状部分(15)と、実質的に上記バーナの軸上に位置する圧縮領域を構成するために、必要とされるプロファイルにしたがって上記円錐状空気層を導く、いわゆる「吸入面」部分(13)とを有している
ことを特徴とするバーナ。
【請求項3】
請求項2において、
上記空気導入ピース(14)が、上記バーナの軸に対して垂直でありかつ上記バーナの上記外壁の平坦面に対して実質的に平行であり、よって上記バーナの軸に対して垂直な向きの空気流れを作り出す平坦上流縁部を有している
ことを特徴とするバーナ。
【請求項4】
請求項2または3において、
上記円錐状部分(15)には、曲率半径r1を有する丸み部(18)が続き、
上記丸み部(18)には、上記バーナの上記内壁(17)に対して実質的に垂直でありかつ上記バーナの上記外壁(16)によって形成されるシリンダの基部に対して実質的に平行である平坦上流縁部(19)が続き、
上記吸入面部分(13)が、上記平坦上流縁部(19)に続いていて、曲率半径r2を有する第1丸み部(21)によって形成され、
上記第1丸み部(21)には、それぞれが上記上流縁部(19)の平面と角度β1、β2およびβ3をなす3つの連続する平坦プロファイル(22,23,24)から構成される第2部分が続き、
上記角度β1、β2およびβ3は、それぞれ30〜80°である
ことを特徴とするバーナ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項において、
上記壁部(17)に貫通形成された上記二次空気導入オリフィス(9)が、円柱形状または長円形状の断面を有しかつ3〜15mmの直径を有している
ことを特徴とするバーナ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項において、
化石燃料を導入するための管(2)をさらに備えている
ことを特徴とするバーナ。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項において、
上記バーナに点火バーナ、口火または火炎検出器を取り付けるように意図された通路(10,11,12)をさらに備えている
ことを特徴とするバーナ。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項において、
メモリを有していて、該メモリにおいてパラメータ化されかつ記憶された動作点にしたがって、各燃焼速度と化石燃料に対するリーンガスの各比率とに応じて導入される空気流れを調節する制御手段を備えている
ことを特徴とするバーナ。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項において、
上記二次空気導入オリフィス(9)の軸は、上記バーナの軸に対して垂直な平面に対して15〜40°、好ましくは実質的に25°傾いている
ことを特徴とするバーナ。
【請求項10】
請求項9において、
上記二次空気導入オリフィス(9)の軸が、さらに、二次空気の最適な旋回を可能とするように、上記バーナによって形成されかつ上記オリフィスを通るシリンダの半径に対して10〜25°、好ましくは実質的に15°傾いている
ことを特徴とするバーナ。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1項において、
500〜2000kWの出力用の大きさである
ことを特徴とするバーナ。
【請求項12】
炉、ボイラまたは乾燥機における請求項1〜11のいずれか1項に記載のバーナの使用。
【請求項13】
請求項12において、
縁部または環状スロット(5)において一次空気の速度が20〜200m/sである
ことを特徴とする使用。
【請求項14】
請求項12または13において、
上記バーナにおけるリーンガスの導入速度が、5〜30m/s、好ましくは15〜25m/sである
ことを特徴とする使用。
【請求項15】
バイオマスガス化装置に関連する、請求項1〜11のいずれか1項に記載のバーナを備えた装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業用ガスバーナ、より具体的にはリーンガスの燃焼に適したガスバーナの分野に属する。
【背景技術】
【0002】
低発熱量のガスのためのバーナの必要性が存在している。これらは、通常、産業プロセス(溶鉱炉、バイオガス、排出ガス、様々なガス化プロセスから生じるガス、揮発性有機化合物を含む炉内ガス、等)から生じる回収ガスであり、その発熱量はそれらの高濃度の不活性ガスのために低い。これは特定のタイプの合成ガスの場合である。「合成ガス」(または「シンガス」)は、蒸気および/または必要に応じて酸素を多く含む空気の存在下における炭質物質のガス化から生じる一酸化炭素と水素の混合物を意味する。特に、多量の酸素を伴わないガス化装置におけるバイオマスの変換から得られる合成ガスは、化石燃料(特にプロパンおよびブタンガス)よりもはるかに低い発熱量を有する。これが「低発熱量のガス」である。
【0003】
「リーンガス」あるいは「低発熱量のガス」は、3000Kcal/m
3よりも低い発熱量(NCV)を有するガスを意味する。
【0004】
さらに、例えばバイオマスから生じる合成ガスのような、様々な成り立ちを有するこれらのガスは、しばしばタールおよび微粒子を含んでいる。このため、化石燃料のために通常使用されるバーナにおける合成ガスの使用は概して不可能であり、合成ガス(または他のリーンガス)のための特殊なバーナを開発する必要がある。そのような特殊なバーナは存在しているが、設計が複雑である。
【0005】
特に特許文献1には、リーン可燃ガスのためのバーナが記載されており、当該バーナは、中心軸上の燃焼ノーズと、可燃ガスおよび燃焼空気の混合気をバーナの中心軸回りに回転させながら供給するための手段とを有している。バーナは、燃焼ノーズの前方に、予め混合された空気および可燃ガスを含む不燃性予混合気の流れ、および燃焼ノーズの前で混合気の可燃性閾値に到達するような補完的な流れを導入するように構成されているという点において特徴付けられ、当該流れは、予混合気の流れの中心において中央の補完的な空気の流れによって、および/または、予混合気の流れの周辺において周縁部の補完的な空気の流れによって、放出される。この構成は組み立ておよび追加的な欠点を伴う使用される手段の調節の複雑性を有しており、当該欠点は、リーンガスがタールおよび微粒子を含んでいる場合、特に燃料の点火装置の手前の予混合領域において、装置が徐々に汚れることである。
【0006】
特許文献2には、低発熱量のガスの燃焼のためのバーナが記載されており、当該バーナは、バーナの軸に沿って延びる燃焼空気の供給のための流路と、可燃ガスのための流路とを備えており、当該流路は低発熱量の可燃ガスの、容量の点で大きな流れのために設計され、ガスのための流路および空気のための流路は混合領域に開口している。空気のための流路は混合領域に(流れ性能において)直接的に隣接するオリフィス領域を有しており、乱流の燃焼空気を作り出すための旋回要素がオリフィス領域に設けられ、旋回フィンが空気のための流路において旋回要素の上流側に配置されている。その構成のために、このバーナは窒素酸化物の生成を最小化せず、また炎の脈動のリスクが存在する。加えて、それは、タールが管の冷たい壁で凝縮しやすく、またリーンガスを導入する管(環状領域)が汚れに敏感であるため、タールを含むガスには適さない。空気とリーンガスとの混合気は無論かなり不均一である。
【0007】
特許文献3の主題は合成ガスバーナである。燃焼室の中心に向かって径方向において傾斜しかつ直径Dおよび導入角度αを有する孔を通って可燃ガスが導入される。これらの孔はバーナからの放出部に、すなわち旋回スペースの終端部に配置されている。直径Dおよび角度αは、異なる変数(特定のガス組成、放出量、等)にしたがって当業者により適切に選択される特別なパラメータである。このバーナは、リーンガスが孔を通って導入されるため汚れに対して非常に敏感であり、このために当該バーナはタールを含むリーンガスに適さない。それは口火の無いバーナであって、それは燃焼安定性を保証するための問題を提出する。その構成のために、このバーナは必ず大量の窒素酸化物を生成し、また炎の脈動のリスクが存在する。
【0008】
加えて、特許文献4には、複数のガス燃料を異なる発熱量で同時に燃焼させることができるバーナが記載されている。複数のガス燃料のためのバーナは、強制通風予熱空気を使用するものであって、円筒形の内側バーナ管と、選択温度まで予加熱されかつ選択圧力まで圧縮された燃焼空気を上流側端部を介して導入するための手段とを有している。内側バーナ管の下流側端部は閉じられており、複数の縦スロットが閉塞端部で管の壁部において円周方向に間隔をおいて配置されている。手段は、高濃度の可燃ガスを選択圧力において内側バーナ管にその軸に沿って導入する。外側バーナ管は、内側バーナ管を軸方向に取り囲んでいて、環状通路を形成している。手段は、また、低圧力のリーン可燃ガスを、環状通路に通し、そして炉の内部の外側バーナ管の端部の周縁スロットを介して外部に通す。このバーナは、リーンガスが孔を通って導入されるため汚れに対して非常に敏感であり、また当該バーナはタールを含むリーンガスに適さない。それは口火の無いバーナであって、それは燃焼安定性を保証するための問題を提出する。その構成のために、このバーナは必ず大量の窒素酸化物を生成し、また炎の脈動のリスクが存在する。よって、バーナは平坦な炎を作り出し、それが伸長する可能性はなく、そのことが当該バーナを特定の炉の用途に定める。
【0009】
特許文献5(アルストム社)には、管が続く旋回部を有するバーナが記載されており、この管自体には燃焼室が(ガス流れの方向において)続いている。管と燃焼室との間の接続領域(特許文献5の説明では「A」として言及されている)は、「分離縁部」の形成を可能とする特定の形態を有しており、当該分離縁部の役割は還流領域を安定させることである。この還流領域は「炎付加部」の役割を果たす。このバーナは、リーンガスが孔を通って導入されるため汚れに対して非常に敏感であり、また当該バーナはタールを含むリーンガスに適さない。それは口火の無いバーナであって、それは燃焼安定性を保証するための問題を提出する。その構成のために、このバーナは必ず大量の窒素酸化物を生成し、また炎の脈動のリスクが存在する。
【0010】
出願人は、合成ガスの燃焼に適した既存のバーナが複雑であり、調節および操作するのが困難であり、かつ概して汚れにさらされるということを見出した。したがって、製造が容易で、低コストで、信頼性が高く、調節が容易で、メンテナンスを全くあるいは少ししか必要としない、シンプルな設計のリーンガスバーナの必要性が存在している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】仏国特許第2889292号明細書
【特許文献2】欧州特許第1800062号明細書
【特許文献3】米国特許第7003957号明細書
【特許文献4】欧州特許第0008842号明細書
【特許文献5】欧州特許第0780630号明細書
【特許文献6】国際特許公開第2013/098525号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の第1の目的は、リーンガスの燃焼に適した、すなわち低いNCV(真発熱量)を有しかつそのNCVが供給ガスの組成にしたがって可変である産業用バーナを提供することである。ある場合には、このリーンガスは、また、(600℃に達する)高温で利用可能である。リーンガスは、加えて、タールおよび固体微粒子を含んでいてもよい。したがって、何らの障害物も無く、当該障害物の汚れを回避するように流れるための良好な空気と燃料の混合気を実現することが可能であるバーナを有する必要がある。
【0013】
本発明の別の目的は、特にバイオマスの空気中でのガス化から得られる合成ガスのためのものであって、施設に既に存在しているバーナを置換することができるリーンガスバーナを提供することである。特に、合成ガスバーナは、それが関連付けられている既存の燃焼室の形状にしたがって炎の長さおよび/または直径を調節できるような設計を有していなければならない。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの目的は、バイオマスのガス化から生じる合成ガスのような低発熱量のガスを燃焼させるための実質的に円筒形状に形成されたガス用のバーナによって達成される。当該バーナは、バーナの外壁と外壁に対して実質的に平行な、バーナの内壁との間に形成された第1環状領域と、第1領域の下流側においてバーナの外壁と内壁との間に形成された第2環状領域とを備えている。また、当該バーナは、バーナの軸に対して実質的に平行な低発熱量のガスを供給するための管と、外壁に形成されかつ第1環状領域に開口する一次空気供給管と、外壁に形成されかつ第2環状領域に開口する二次空気供給管と、外壁と内壁の上流側端部との間に形成され、第1環状領域から燃焼領域へ一次空気を導入するための環状スロットと、内壁に貫通形成され、第2環状領域から燃焼領域へ二次空気を導入するためのオリフィスとをさらに備えている。当該バーナは、環状スロットが、一次空気が円錐状空気層の形態で燃焼領域に供給されるような形状を有しかつ圧縮領域を作り、オリフィスが、二次空気の旋回を可能とするように配置されていることを特徴とする。このバーナは、本発明の第1の主題を表す。
【0015】
本発明に係るバーナの有利な実施形態では、環状スロットが、バーナの内壁の上流側端部に位置するいわゆる「空気導入」ピースによって形成されている。この空気導入ピースはリップ形状を有している。より具体的には、空気導入ピースは、バーナの内壁と20〜45°の角度αをなして下流側から上流側に向かって広がる円錐状部分と、バーナの軸上に位置する圧縮領域を構成するために、必要とされるプロファイルにしたがって円錐状になった環状空気層を導く、トレイリング端で終端するいわゆる「吸入面」部分とを有している。圧縮領域は、良好な空気と燃料の混合を可能とするために、リーンガスの流れと接触する。
【0016】
好ましくは、空気導入ピースは、バーナの軸に対して垂直でありかつバーナの外壁の平坦面に対して実質的に平行であり、よってバーナの軸に対して垂直な向きの空気流れを作り出す平坦上流縁部を有している。
【0017】
本発明に係るバーナの好ましい実施形態では、空気導入ピースの円錐状部分には、曲率半径r1をもって丸みを帯びた部分が続いており、当該部分には、平坦上流縁部が続いている。そして、吸入面部分が、平坦上流縁部に続いていて、曲率半径r2をもって丸みを帯びた第1部分によって形成されている。この第1部分には、それぞれが上流側縁部の平面と角度β1、β2およびβ3をなす3つの連続する平坦プロファイルから構成される第2部分が続いており、角度β1、β2およびβ3はそれぞれ30〜80°である。
【0018】
好ましい実施形態では、二次空気の流入のためのオリフィスが、円筒形状または長円形状の断面を有していて、バーナの内壁のうち二次空気が導入される領域に面する部分に分布し、かつ3〜15mmの直径を有しており、それにより10〜50m/sの速度での二次空気の導入が可能となる。
【0019】
さらに、好ましい実施形態では、二次空気導入オリフィスの軸は、バーナの軸に対して垂直な平面に対して15〜40°、好ましくは実質的に25°傾いている。好ましくは、オリフィスの軸は、また、バーナによって形成されかつオリフィスを通るシリンダの半径に対して10〜25°、好ましくは実質的に15°傾いており、それにより二次空気の最適な旋回が可能となる。
【0020】
本発明のさらに別の目的は、必要とされる真発熱量を増大させるため、もしくは供給される全出力を増大させるために追加的な化石燃料をバーナに供給できるようにすること、および/または、化石燃料で供給される口火を有し得るようにすることである。これらの目的は、少なくとも1つの化石燃料導入管の存在によって達成される。加えて、口火は主火炎の安定を提供する。
【0021】
本発明のさらに別の目的は、定格出力の100%において代替的な化石燃料で機能することを可能とすることである。バーナは、実際に、化石燃料の供給のみによって機能し得る。この動作モードは、リーンガス供給が中断された場合に有用であり得る。
【0022】
好ましい実施形態では、本発明に係るバーナは、メモリを有していて、当該メモリにおいてパラメータ化されかつ記憶された動作点にしたがって、各燃焼速度およびリーンガスと化石燃料との間の各比率に応じて導入される空気流れを調節する制御手段を備えている。
【0023】
本発明の別の目的は、バーナの内壁の熱疲労を制限するために、当該内壁の温度を低下させることである。本発明のさらに別の目的は、断熱の必要性を制限するために、バーナの外壁の温度を低下させることである。本発明のさらに別の目的は、燃焼の質を高めるために、一次空気および二次燃焼空気を予熱することである。これらの目的は、バーナの外壁と内壁との間に形成されかつ室温、すなわち約20℃の流入空気における一次空気および二次空気の循環を可能とする第1および第2環状領域の存在のために、本発明に係るバーナによって達成される。
【0024】
本発明の別の主題は、炉、ボイラまたは乾燥機における本発明に係るバーナの使用である。
【0025】
本発明のさらに別の主題は、バイオマスガス化装置に関連する、本発明に係るバーナを備えた装置である。
【0026】
本発明に係るバーナは、リーンガス、および特にバイオマスのガス化から生じる合成ガス(またはシンガス)の燃焼のために開発された。
【0027】
本発明に係るバーナは、多段燃焼のために2つの空気を組み合わせる。多段燃焼は、燃焼空気または燃料のいずれかを異なるステップで炎へ導入することからなる。空気のステージングによる多段燃焼の間には、燃焼空気の一部、典型的には5〜50%が全ての燃料とともに一次燃焼領域へ供給される。これにより、燃料を多く含む領域が得られ、窒素酸化物の生成が低減される。残りの空気は、さらに下流側で導入されて二次燃焼領域を形成し、そこで燃焼が完了する。本発明に係るバーナでは、一次および二次空気の流れは次のようにして形成される。すなわち、任意のタイプのガス燃料(合成ガス、天然ガスおよびプロパン)に炎をつけるのを可能とする軸方向の一次空気流れと、汚れにさらされる追加的な設備に頼ることなく炎を安定させる回転方向の二次空気流れとである。
【0028】
よって、本発明に係るバーナの炎の安定性は、一次および二次酸化空気流れのそれぞれの軸方向および回転方向モードの組み合わせによって、あらゆる燃焼速度において優れている。
【0029】
さらに、この燃焼モードは、様々な燃料、特に合成ガス、天然ガスおよびプロパンの相対的寄与率を、要求される出力および当該燃料の利用可能性にしたがって、変更することを可能とする。バーナは、リーンガスと化石燃料との混合供給を、100%のリーンガスから100%の化石燃料まで様々な比率で行い得る。
【0030】
燃焼の質は、特に未燃焼残留物および放出される汚染物質の質によって測定されるものであって、空気と燃料との混合気の質に依存することが知られている。より具体的には、高温部を制限してそれにより窒素酸化物の生成を最小化するために、可能な限り均一な空気と燃料との混合気を実現することが重要である。さらに、本発明に係るバーナにおいて用いられる多段燃焼は、また、燃料と空気との急速な混合を必要とする。そらせ板、フィン、多孔板または衝突板(「衝突板」は、流れの軸方向に対して垂直に配置された遮蔽板を意味する)のような様々な器具が、既存のバーナにおいて混合の質を高めるために使用されている。これらの器具の全ては、流れに対する障害物を構成し、したがって汚れに敏感であるという欠点を有している。本発明に係るバーナの1つの利点は、それが流れに対する障害物を全く伴わずに最適な空気と燃料との混合気を提供することである。混合の質は、特に一次空気流れの特殊な形態によって保証される。環状スロットは、一次空気が燃焼領域に燃料(リーンガスおよび化石燃料)の流れを連れて行くかあるいは一緒に運ぶ円錐状空気層の形態で供給されるような形状を有している。
【0031】
本発明に係るバーナは、主にリーンガスおよびより具体的にはバイオマスのガス化から生じる合成ガスを燃焼させられるように設計された。しかしながら、有利な実施形態では、本発明に係るバーナは、天然ガス、プロパンまたは家庭用燃料油のような従来の燃料を燃焼させるのにも適している。本発明に係るバーナは、したがって、合成ガス、天然ガスもしくはプロパンで、またはこれらの様々な燃料の混合物(特に合成ガスと化石燃料との混合物)で機能する混合バーナである。さらに、その特殊な設計はバーナに優れた使用柔軟性を与え、100%の化石燃料で機能する場合から100%のリーンガス、特にバイオマスの変換から生じるガスで機能する場合まで可変である。
【0032】
あらゆる燃焼速度において、酸化空気の量が、バーナによって取り入れられる燃料混合物に対して調節される。有利には、この調節は、メモリにおいてパラメータ化されかつ記憶された動作点にしたがって、各燃焼速度およびリーンガスと化石燃料との各比率に応じて算出される空気流れを供給することを可能とする自動制御器のような制御手段によって実現される。特定の実施形態では、酸素センサが、また、燃焼ガスの酸素含有量を測定し、そのことが酸化空気の流れの調節を精緻なものにすることを可能とする。好ましくは、空気流れの速度は全体的に(一次空気および二次空気の流れの全体で)調節される。
【0033】
有利には、本発明に係るバーナは、炎の点火および安全のための口火バーナを備えている。口火は、安全上の理由のために特定の場合において義務付けられている(EN746−2)。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】
図1は、本発明に係るバーナの正面図である。
【
図2】
図2は、本発明に係るバーナの
図1におけるA−A面に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係るバーナの実施形態について
図1、
図2および
図3を参照しつつ説明する。本発明に係るバーナは、実質的に円筒形状を有している。バーナは、外壁16と、この外壁16から分離された内壁17とを有しており、環状領域5,8が形成されている。これらの領域5,8は、仕切り20によって互いに隔てられている。第1環状領域5は、燃焼領域7に一次空気を導入するために使用される。第2環状領域8は、燃焼領域7に二次空気を導入するために使用される。
【0036】
図1および
図2を参照すると、管1によってリーンガスがバーナ内へと導入され得る。好ましくは、リーンガスを導入する管1は円筒形状であり、またその直径は受け入れるリーンガスの量にしたがって算出される。バーナ内へのリーンガスの導入速度は、概して5〜30m/sであり、好ましくは15〜25m/sである。
【0037】
管2によって化石燃料(特に天然ガス、プロパンまたは家庭用燃料油)が導入され得る。化石燃料を導入する管2は、好ましくは円筒形状である。その直径は、受け入れる燃料ガスの量にしたがって算出される。バーナ内への化石燃料の導入速度は、5〜30m/s(好ましくは15〜25m/s)である。液体燃料(家庭用燃料油)の場合には、これは特殊なインジェクタ(図示せず)によって噴霧される。
【0038】
管3によって、環状領域5へ一次空気が導入され得る。管3を通って環状領域へ導入された一次空気は、その後、領域7内に円錐状空気層および圧縮領域を形成する環状スロット6へ導かれる。一次空気と燃料との良好な混合をもたらすのは、本発明に係るバーナのこの特殊な構成である。一次空気の速度は、縁部または環状スロット6において20〜200m/sである。一次空気の流れは層流モードにおいて生じる。
【0039】
好ましくは、空気導入ピース14は、バーナの軸に対して垂直でありかつバーナの外壁16の平坦面に対して実質的に平行であり、よってバーナの軸に対して垂直な向きの空気流れを作り出す平坦上流縁部19を有している。空気導入ピース14の形状は空気流れを支配し、当該空気流れを、その層流モードを変更することなく、実質的にバーナの軸上に位置する領域へ導く。
【0040】
円錐状空気層は主に良好な空気と燃料の混合気を作り出すことを意図されているが、それはまた、特にリーンガスがタールおよび微粒子を含んでいる場合にバーナの内壁を保護する。
【0041】
管4によって、環状領域8へ二次空気が導入され得る。管4を通って環状領域8へ導入された二次空気は、二次空気を回転および旋回させるための一連の導入オリフィス9へ導かれる。二次空気の回転により、特に高出力での炎の分離を防止することが可能となる。それはまた、特定の出力および特定の空気/燃料比率において生じる得る振動現象に起因する炎の脈動を回避するのに役立つ。
【0042】
オリフィス9は、円柱形状または長円形状の断面を有するオリフィスである。バーナの内壁17に貫通形成された二次空気を導入するためのオリフィス9は3〜15mmの直径を有していて、よって10〜50m/s、好ましくは20〜40m/sの速度における二次空気の導入を可能とする。
【0043】
好ましくは、バーナの内壁17は、その下流側部分の二次空気導入領域において末広がりの円錐形状(すなわち、下流に向かって広がる形状)を有している。オリフィス9は、バーナの内壁17の円錐状部分に分布している。好ましくは、オリフィス9の軸は、バーナの軸に対して垂直な平面に対して15〜40°、より好ましくは実質的に25°傾いている。好ましくは、オリフィス9の軸は、「バーナによって形成されかつオリフィスを通るシリンダの半径」に対して10〜25°、より好ましくは実質的に15°傾いており、それにより二次空気の最適な旋回が可能となる。
【0044】
圧縮領域は、概して、実質的にバーナの軸上に位置する直線部分からなる。
【0045】
圧縮領域は層流モードにおける空気の流れにより得られ、その経路は縁部の形状によって(「吸入面」として)まっすぐにされている。空気のまっすぐな環状層は円錐を形成し、その厚みは頂点に近づくほど増大する。
【0046】
図2に描かれた通路10,11,12は、例えばイオン化プローブ、または口火もしくは火炎検出器を作り出すバーナ(図示せず)のような、従来の点火部材を取り付けることを可能とする。通路10,11,12は、また、本発明に係るバーナが広い出力範囲にわたって化石燃料で機能するように、1つ以上の補足的な化石燃料入口を備え付けるのに役立つ。これらの通路の数は限定されない。バーナの出力に基づいて、化石燃料、口火、および/または火炎検出器を供給するためのより多くの通路を想定することができる。
【0047】
図1の細部Bは、
図3において詳細に表されている。
図3には、一次空気を円錐状層の形態で燃焼領域に導入することができる環状スロット6の特定の形状が描かれている。
図3に描かれている環状スロット6の形状は、圧力損失を最小化するように設計されている。
【0048】
図3の実施形態では、環状スロット6は、バーナにおいて「一次空気導入ピース」として言及されるピース14と、バーナの外壁16の「基部」との間のスペースによって形成されている。一次空気導入ピース14は、バーナの内壁17の上流側端部25に配置されている。一次空気導入ピース14は、好ましくは、内壁17と一体に形成されている。
【0049】
一次空気導入ピース14は、バーナの内壁17と角度αをなして下流側から上流側に向かって広がる円錐状部分15を有しており、この円錐状部分15は空気層を作り出す。角度αは20〜45°である。円錐状部分15は環状領域における空気の大きな再循環を防止し、よって圧力損失を制限する。円錐状部分15には、好ましくは3〜15mmの曲率半径r1を伴う丸み部18が続いている。丸み部18は、また、環状領域5における空気の再循環を制限する。加えて、急なコーナーは圧力損失を増大させる乱流微小領域の生成を通じて空気の循環を阻害し、このため直角よりも丸み部18を使用することが好ましい。
【0050】
丸み部18それ自体には、バーナの外壁16の「基部」に対して実質的に並行な平坦上流縁部19が続いている。この平坦上流縁部には、さらに、バーナの軸上に圧縮領域を構成するために、必要とされるプロファイルで空気層を導くいわゆる「吸入面」形状を有する部分13が続いている。吸入面部分13は、好ましくは8〜30mmの曲率半径r2をもって丸みを帯びた第1部分21からなり、この第1部分21には平坦上流縁部19の平面とそれぞれ角度β1、β2およびβ3をなす3つの連続する平坦プロファイル22,23,24から構成される第2部分が続いており、角度β1、β2およびβ3は好ましくはそれぞれ30〜80°の範囲内にある。これらの連続する平坦プロファイルは吸入面の半径を徐々に増大させ、それにより縁部プロファイルまたは空気導入ピース14の終端部において空気流れを分離させる。角度β3は角度β2よりも大きく、角度β2は角度β1よりも大きい。
【0051】
本発明に係るバーナは、ガス化装置、特にバイオマスガス化装置と関連して、熱の発生のために固形バイオマスによる化石燃料(燃料油、天然ガス、プロパン)の置換を可能とする。バイオマスによって使用され得る燃料は、特に木材チップ、粉砕パレット、木材顆粒、および農業副産物を含む。
【0052】
コージュバイオ社の名の下に特許文献6に記載された並流固定床ガス化装置は、本発明に係るバーナと関連して機能するのに特に適している。この並流固定床ガス化装置は、反応器本体を備え、当該反応器本体は頂部および底部を有し、そしてバイオマスはガス化装置本体の頂部の上端部に位置する入口管を通って導入され、合成ガスは合成ガス放出管を通って放出され、灰は反応器本体の底部の下端部において灰放出管を通って放出される。当該ガス化装置は、頂部から底部にかけて、バイオマス熱分解領域と、バイオマス酸化領域と、還元領域と、灰が放出されるために通過する複数の開口を有するグリルとを備え、当該ガス化装置は、また、例えば空気または酸素のようなガス化剤を導入するための手段を備え、当該ガス化装置は、ガス化剤を導入するための当該手段が、ガス化装置の酸化領域の上端部および当該酸化領域の上側に位置するガス化剤拡散円錐部と、ガス化装置の酸化領域内に位置するガス化剤導入手段とを有していることを特徴とする。
【0053】
さらに、炉、ボイラまたは乾燥機に組み込まれている産業用バーナの大部分は、500〜2000kWの出力範囲において、本発明に係るバーナによって置換可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 リーンガスを導入するための管
2 化石燃料を導入するための管
3 一次空気入口管
4 二次空気入口管
5 一次空気のための環状領域
6 スロット
7 燃焼室
8 二次空気のための環状領域
9 二次空気導入オリフィス
10,11,12 点火部材または化石燃料入口の「埋設」を可能とする追加通路
13 「スロット」6(バーナへの一次空気入口)の吸入面形状
14 一次空気導入ピース
15 ピースの円錐状部分
16 バーナの円筒状外壁
17 バーナの内壁
18 ピース14の曲率半径r1を伴う丸み部
19 (壁部16と提携して環状スロットを形成する)ピース14の平坦上流縁部
20 一次空気入口5と二次空気領域8との間の仕切り
21 r2を伴う丸み部
22,23,24 部分19とそれぞれ角度β1,β2,β3をなす連続した平坦プロファイル
25 内壁17の上流側端部
26 外壁によって形成されるシリンダの基部