特許第6490699号(P6490699)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ピアーブルグ パンプ テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツングの特許一覧

<>
  • 特許6490699-自動車用真空ポンプ 図000002
  • 特許6490699-自動車用真空ポンプ 図000003
  • 特許6490699-自動車用真空ポンプ 図000004
  • 特許6490699-自動車用真空ポンプ 図000005
  • 特許6490699-自動車用真空ポンプ 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6490699
(24)【登録日】2019年3月8日
(45)【発行日】2019年3月27日
(54)【発明の名称】自動車用真空ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/12 20060101AFI20190318BHJP
   F04C 25/02 20060101ALI20190318BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20190318BHJP
【FI】
   F04C29/12 J
   F04C25/02 L
   F04C29/00 B
   F04C29/00 C
【請求項の数】8
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2016-547523(P2016-547523)
(86)(22)【出願日】2015年2月2日
(65)【公表番号】特表2017-503965(P2017-503965A)
(43)【公表日】2017年2月2日
(86)【国際出願番号】EP2015052090
(87)【国際公開番号】WO2015124415
(87)【国際公開日】20150827
【審査請求日】2016年7月21日
(31)【優先権主張番号】14155617.5
(32)【優先日】2014年2月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】515069336
【氏名又は名称】ピアーブルグ パンプ テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Pierburg Pump Technology GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】デス, エンバー
(72)【発明者】
【氏名】ヨブ, モリッツ ヨハネス
【審査官】 谿花 正由輝
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−122287(JP,A)
【文献】 欧州特許出願公開第01953389(EP,A2)
【文献】 特開平09−291960(JP,A)
【文献】 特開2010−262860(JP,A)
【文献】 特開昭58−172482(JP,A)
【文献】 特開2001−221173(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 29/12
F04C 25/02
F04C 29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポンプ室(12)であって、該ポンプ室内にてポンプロータが圧縮態様で回転する、ポンプ室(12)と、
出口室(14)であって、該出口室内に前記ポンプ室(12)から圧縮ガスが排出する、出口室(14)と、
前記出口室(14)から前記ポンプ室(12)を分離する分離壁(22)と、
前記分離壁(22)上に逆止弁として形成された出口弁(20)であって、該出口弁を通じて前記圧縮ガスが前記ポンプ室(12)から前記出口室(14)に排出する、出口弁(20)と
を具備し、
前記出口弁(20)は、前記分離壁(22)の弁口(24)と、閉鎖体(42)を備えた弁体(40;40’)とで形成され、
前記分離壁(22)の外側にて前記弁口(24)の回りに平面からなる弁座(30)が設けられ、閉位置にて、前記弁体(40;40’)における前記閉鎖体(42)の対応する平面部分が前記弁座上に支持され、
前記弁座(30)の平面及び/又は前記閉鎖体(42)の前記平面部分は多数のマイクロ溝(32;32’)を含み、
これらマイクロ溝は側方に方向付けられており、
前記マイクロ溝(32;32’)の溝深さtは、0.2mmよりも浅く、
前記マイクロ溝(32;32’)の溝幅bは、0.5mmよりも狭く、
前記マイクロ溝(32;32’)の一方の長手方向端は前記弁口(24)に向けて開口し、他方の長手方向端は前記出口室(14)に向けて開口し、
前記弁座(30)の少なくとも半分では、前記マイクロ溝(32;32’)相互の平均離間距離dに対する前記マイクロ溝(32;32’)の長さlの比が1.0よりも大きい、自動車用真空ポンプ(10)。
【請求項2】
前記マイクロ溝(32;32’)の溝深さtは0.1mmよりも浅い、請求項1に記載の自動車用真空ポンプ(10)。
【請求項3】
前記マイクロ溝(32;32’)の溝幅bは0.25mmよりも狭い、請求項1又は2に記載の自動車用真空ポンプ(10)。
【請求項4】
前記マイクロ溝(32;32’)は互いに交差しない、請求項1〜の何れかに記載の自動車用真空ポンプ(10)。
【請求項5】
前記マイクロ溝(32;32’)は、前記弁座(30)又は前記閉鎖体(42’)のみに設けられている、請求項1〜の何れかに記載の自動車用真空ポンプ(10)。
【請求項6】
前記マイクロ溝(32;32’)の一方の長手方向端は前記弁口(24)に向けて開口し、他方の長手方向端は前記出口室(14)に向けて開口している、請求項1〜の何れかに記載の自動車用真空ポンプ(10)。
【請求項7】
前記マイクロ溝(32;32’)はレーザ彫刻又は打刻を使用して作られている、請求項1〜の何れかに記載の自動車用真空ポンプ(10)。
【請求項8】
前記弁体(40;40’)はリーフばねとして構成されている、請求項1〜の何れかに記載の自動車用真空ポンプ(10)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は例えばベーンポンプ等の容量ポンプとして構成された自動車用真空ポンプに関する。該自動車用真空ポンプは自動車内の補機であって、例えば内燃機関又は別個の電動モータによって直接に駆動される。
【背景技術】
【0002】
自動車用真空ポンプはポンプ室を備え、該ポンプ室内にてポンプロータが回転する。該ポンプロータはポンプ室内でガス、一般的には空気を圧縮し、該空気を出口弁を介して出口室に排出する。出口弁は前記出口室からポンプ室への圧縮ガスの戻り流を阻止する。簡単な構造且つ高い信頼性の故、出口弁としてリーフばね弁が屡々使用され、その弁体はリーフばねとして構成されている。該リーフばねは閉位置にて、弁口を囲む弁座に着座し、差圧が十分にあれば弁座から離座し、これにより、出口弁が開かれる。出口弁を有する真空ポンプの場合、ノイズの発生は問題であるか又は少なくとも望ましいものでない。該ノイズは弁体の急速な加速に実質的に由来し、潤滑される真空ポンプの場合、潤滑剤やガスの突然の圧縮又は減圧となる。
【0003】
機械的な自動車用真空ポンプはDE 102 27 772 A1から公知であり、該真空ポンプでは、ノイズの低減を目的として、出口弁近傍の圧力変動を徐々に低減すべく出口弁の近傍に通路又は開口が設けられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
また、機械的な自動車用真空ポンプはEP 1 953 289 A1からも公知であり、該真空ポンプでは、ノイズの低減を目的として、弁体がリーフばねとして構成されている。該リーフばねは、リーフばねの領域での圧力変動を徐々に低減すべく開口を備えて形成されている。このような手段はノイズを十分に低減させるが、出口弁が開く際の開動作やノイズの低減は特に、真空ポンプの高回転速度にて常に十分ではない。
【0005】
それ故、本願発明の目的はノイズの発生を低減した自動車用真空ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
該目的は、本発明に係る請求項1の特徴を備えた自動車用真空ポンプによって達成される。
【0007】
本発明によれば、平面からなる弁座及び/又は弁体、即ち、その閉鎖体の対応する平面部分多数のマイクロ溝を有する。これらマイクロ溝は例えば弁口が円形である場合、準星形をなすように側方に方向付けられ、殆ど径方向に配置されている。このようにしてマイクロ溝は出口弁の閉鎖面に排出路を形成し、出口弁が開かれる際、弁座と閉鎖体の対応部分との間の境界では前記排出路を通じて迅速な圧力補償がもたらされる。それ故、オイルで潤滑される真空ポンプの場合、特に、弁座と閉鎖体の対応部分の縁との間での粘着力に打ち勝つのに必要な分離力を大幅に低減可能とする。従って、閉鎖体の開動作がより適切なものなり、開動作中、ノイズの発生が低減される。また、閉動作もまたその理由から適切なものとなり、出口弁の閉作動中でのノイズの発生も低減される。
【0008】
好ましくは、マイクロ溝の溝深さは0.1mmよりも浅く、また、マイクロ溝の溝幅は0.25mmよりも狭い。比較的少ない数のマイクロ溝、例えば総計100個のマイクロ溝よりも少ない数のマイクロ溝がノイズの放出を大幅に低減することを既に試験が示している。マイクロ溝が比較的な小さい開口断面積を有しているため、個々又は総体的にマイクロ溝によって引き起こされる戻り流の損失は無視可能である。
【0009】
好ましくは、弁座の少なくとも半分で、マイクロ溝相互の平均離間距離dに対するマイクロ溝の長さの比は1.0よりも大きい。換言すれば、一般的に2つのマイクロ溝の平均離間距離はマイクロ溝の長さよりも短い。特に好適な実施形態において、マイクロ溝は互いに交差せず、星型に配置されている。弁座の直線領域において、マイクロ溝は互いに平行に配置されているのが好ましい。
【0010】
好ましくは、マイクロ溝は弁座又は閉鎖体何れかのみに設けられている。マイクロ溝が弁口を囲む弁座のみに設けられることは特に好適する。事実上、ノイズの放出に対する実際の効果は、弁座及び弁体の閉鎖体の両方にマイクロ溝を設けても大幅に増大可能でもなく、この結果、前記境界の片側のみにマイクロ溝を設けることは如何なる機能的な不利を伴わずに製造コストを比較的低く維持可能とする。
【0011】
好ましくは、出口弁の閉状態にて、マイクロ溝の一方の長手方向端は弁口に向けて開口し、マイクロ溝の他方の長手方向端は出口室に向けて開口する。また、出口弁が十分に閉じられているとき、即ち、閉鎖体が弁に十分に着座しているとき、マイクロ溝の両方の長手方向端は開口し、これにより、出口弁が完全に閉じられているときでさえも、最大限に可能な排出機能がマイクロ溝の長手方向にて得られる。
【0012】
好適な実施形態において、弁座は全体的に隆起した形状をなしている。この簡単な手段で、マイクロ溝が外側の長手方向端で出口室に向けて常時開口することを特に確実なものとする。
【0013】
好ましくは、マイクロ溝はレーザ彫刻又は打刻を使用して形成されている。従って、出口弁の開閉動作は比較的簡単な方法を使用して十分に改善可能となる。特に好適な実施形態において、弁体はリーフばねとして構成されている。このような弁体の構想は経済的且つ機械的に信頼性がある。
【0014】
本発明の2つの実施形態が添付図面を参照して以下に詳述される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】出口室からポンプ室を分離する分離壁を示し、該分離壁に出口弁が備えられている自動車用開放型真空ポンプを示す図である。
図2】前記出口弁の領域に弁座を含む分離壁の平面図である。
図3】ポンプ室側からの第1実施形態の弁体の平面図である。
図4】ポンプ室側からの第2実施形態の弁体の平面図である。
図5】出口弁の領域での分離壁の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は自動車の開放型真空ポンプ10を示し、ここでは分離壁22を見ることができ、該分離壁22は図5の断面図に示されるように、出口室14からポンプ室12を分離する。真空ポンプは所謂、機械式真空ポンプであって、内燃機関によって機械的に駆動される。即ち、真空ポンプは内燃機関の回転速度に比例した回転速度で回転する。例えば、その据え付け状態にて、真空ポンプ10は内燃機関のカム軸を介して直接に駆動される。
【0017】
真空ポンプ10は圧縮ポンプとして構成され、ガス、特に空気を不連続に圧縮する。2つの圧力間隔(pressure intervals)の間で出口室14からポンプ室12へのガスの戻り流を阻止するために、分離壁22は出口弁20を備えている。該出口弁20はポンプ室12内の対応した過度圧にて開かれ、過度圧が存在しないとき、出口室14からポンプ室12へのガスの戻り流を阻止する。
【0018】
図5において、出口弁20は分離壁22と一緒に断面で示されている。出口弁20は所謂、リーフばね弁として構成されている。分離壁22には楕円形に湾曲した弁口24が設けられている。分離壁22において、ポンプ室側の壁面21とは反対側の出口室側の壁面23には弁体40;41’が固定され、図3の第1実施形態及び図4の第2実施形態では、弁体40;41’はポンプ室側からみた平面図で示されている。弁体40;41’はその長手方向に3つの区域、即ち、閉鎖体区域43,43’、ヒンジ区域44及び固定区域46を有する。
【0019】
弁体40;41’はばねシートからなり、そのヒンジ区域44に括れ45を有する。これにより、弁体40;41’は隣接する区域43,46よりもヒンジ区域44にてより曲げ易く構成されている。固定区域46において、弁体40;41’は固定開口48及び凹所52を有する。弁体40は固定具50を介して固定され、該固定具50は分離壁22のボア28内にあって、該ボア28には雌ねじが設けられている。固定具50は螺子、リベットまたは他の好適な固定具である。凹所52は、分離壁22から鼻状に隆起した保持突起54を取り囲み、この結果、固定具50及び保持突出部54は分離壁22上に弁体40を明確且つ回転不能に固定する。弁体40のヒンジ区域44の領域にて、分離壁22はヒンジ凹所26を有する。
【0020】
弁体40;41’における他方の長手方向端には閉鎖体42,42’が配置され、該閉鎖体42,42’は図5に示された閉位置にて弁口24を完全に閉じている。
【0021】
分離壁22は出口室側の壁面23に弁座30を有し、該弁座30は分離壁22の基準面に対して隆起した平面で形成され、ポンプ室側における閉鎖体42,42’の対応するストリップ形状の縁部は図3,4に示されるように、閉位置にて弁座30上に着座している。ウエブ状をなす弁座30は隣接する領域に対して約1mmの隆起高さを有する。
【0022】
図3,5に示された第1実施形態において、弁座30は30〜50個のマイクロ溝32を有し、これらマイクロ溝32は側方に向けられている。即ち、マイクロ溝32は内側から外側に向けて星形状に延び、互いに交差することはない。マイクロ溝32は弁口24の開口縁とは殆ど垂直に方向付けされている。マイクロ溝32は弁座30にレーザ彫刻に依って形成されている。典型的には、マイクロ溝32は0.025mmの溝深さt、0.1mmの溝幅bを有する。マイクロ溝32の長さlは1.0〜2.0mm、隣接する2つのマイクロ溝間の離間距離は1.0mmよりも短い。如何なる場合でも、平均離間距離は常時、マイクロ溝32の長さlよりも短い。
【0023】
第2実施形態において、弁体40’は弁座30に面した側にマイクロ溝32’を有する。該マイクロ溝32’は弁座30のマイクロ溝32と同様な寸法及び方向付けを有する。マイクロ溝32’を備えた弁体40’はマイクロ溝無しの弁座、又は、図2,5に示されているようなマイクロ溝32を備えた弁座30と組み合わせ可能である。
【0024】
弁座30上のマイクロ溝32は2つの長手方向端で開口し、これにより、外側の長手方向端は出口室に向けて開口し、内側の長手方向端はポンプ室に向けて開口する。このようにして、流体流は各マイクロ溝における両方の長手方向端に対して常時流入出し、この結果、マイクロ溝内で対応した圧力補償が常時可能となる。弁座30からの排出は出口弁20の全ての作動状態にて保証されている。
【0025】
好ましくは、真空ポンプ10はオイルで潤滑され、これにより、特に、開閉作動中、マイクロ溝32;32’を通じてオイルが流入及び流出する。弁体40;40’には予荷重が付与され、弁体40;40’は約0.04バールの差圧にて開く。オイルは上述の差圧でもってマイクロ溝32;32’を通じて弁口の中心に向けて流れ、この結果、弁座30と閉鎖体42;43’との間の油膜は迅速に裂ける。これは、弁体40の適切な開動作を許容し、この結果、音の放出が大幅に低減される。このことは閉動作でも同様である。
図1
図2
図3
図4
図5